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戻って来ると姉は二本目の花火に火をつけていた。俺の顔を見るなりくすくすと笑った。「なんだよ」「いや。よく気がつくなぁと思って……。そんな弟を持っておねーちゃんは嬉しいぞ」 その言葉にちょっと俺はむっとした。姉は気付かず花火にはしゃいでいる。「ほら!健も早く一緒にやろうよ♪」「はいはい」 俺は姉から手渡された花火に火をつける。「綺麗だね」「うん……」 姉と花火をするなんて何年ぶりだろう。小学生以来じゃないか? ちらっと姉を見る。 花火に照らされた姉の顔はいつもと違って見えて……。 ドキドキした。「健?」「え!」 突然声をかけられてビックリする。返事の声が裏返った。「何ぼーっとしてるの?ほら花火もう終わっちゃってるよ」「あ、うん」 俺はドキドキしたまま次の花火に火をつけた。 色とりどりの光が地面に落ちる。 本当に綺麗だ。たまには花火も悪くないなぁ。 コレで姉が浴衣だったらもっと楽しかったかも? 俺はそんな事を考えていた……。って浴衣!楽しい!?なんで俺は姉にドキドキしてるんだ!?姉だぞ?あの我侭で暴力的な姉だぞ!気の強い、俺をいじめてばかりの! でも……。 またちらりと姉を見る。 花火のちらちらした光の中の姉は……。 今考えた欠点を忘れてしまうほどに綺麗で……。 どうしよう。またドキドキしてきた。 正直花火どころではない。 そんな俺なんかおかまいなしに姉は花火に夢中だ。さっき出した花火をやりつくしてしまったらしくビニール袋の中をガサガサと探し始めた。 ん?今姉がにやっと笑った気がする……。気のせいかな? 姉が嬉しそうにビニール袋から取り出した物は……。 ロケット花火だった。>>つづく
2006.10.30
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夕方雨は小降りになっていた。コレなら軒下で花火をやっても差し支えないかな? 姉を花火に誘おうと思い部屋のドアをノックする。「何?」 不機嫌そうに姉が顔を出した。「勉強中だった?」「当たり前でしょ?何の用?」 うわぁ。誘うの止めとこうかなぁ……。でもまぁせっかく買って来たんだし。勿体無いか。 俺は手に持ったビニール袋を姉の顔の前に差し出し軽く振った。「花火買って来たんだけどやらない?」 俺がそう言うと姉の表情がぱあっと明るくなった。げんきんな奴だなぁ。ちょっと前まであんなに不機嫌そうな顔してたくせに。 姉は嬉しそうに部屋から出て来ると俺の手をひいて歩き始めた。「嬉しいな♪ちょうど気分転換したかったんだよね~」 鼻歌を歌いながら階段を下りてく。少しでも喜んでもらえてよかった。嬉しそうな姉の顔を見て俺もちょっと嬉しくなった。 庭の軒下に出て俺はろうそくに火をつけた。姉はそんな俺を待ちきれないようでじーっと見ていた。緊張するでしょう!まったく。 ぼんやりとした明かりが灯る。 姉はさっそく手持ち花火に火をつけた。 あたりが一瞬で明るくなる。キラキラとした光が地面に落ちる……。 あ、バケツ×2。 俺は消火用のバケツを準備していない事に気付き取りに行った。>>つづく
2006.10.24
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「はい。もしもし」「やっほぅ♪健君元気ぃ?」 電話の相手は友達の宮内だった。「おう。で、何の用よ?」「今日の花火大会誘おうと思たんだけど、雨で中止じゃんねぇ。会人とかとさぁ橋の下で花火みんなで持ち寄ってやらねぇ?って話になったんだけどどうよ?」 花火か……。姉に買って来てやったら喜ぶかな?「今日は止めとくわ。サンキュ」「あらそうぉ?残念だわぁ。じゃまた遊ぼうねぇ」「また誘ってくれよな」「うぃ。じゃぁねぃ」 そう言うと宮内は電話を切った。相変わらず明るい奴だ。「電話……。誰から?」「宮内から。ちょっと俺でかけてくるわ」「そう?気をつけてね」「うん」 俺はカップを片付け財布を持って部屋を出た。 傘をさし、近所のコンビニを目指して歩く。雨は若干弱まってきたみたいだ。 コンビニについて花火を探す。季節がらかレジ前に特設コーナーが出来ていた。色々な種類があり目移りしてしまいそうだ。 手に持ったカゴに入れていく。せっかく誘ってくれた宮内に悪い事をしたので少し差し入れをしておこうと思い、多めに買っておく事にした。帰りに寄って渡して行こう。 ビニール袋に家用と分けて入れてもらい俺はコンビニを出て、宮内の家に向かった。 宮内の家につくと会人がもう来ていた。 二人に誘ってもらったお礼を言い花火を渡す。「気を使わなくても良かったのにぃ。お前は本当にマメだねぇ」 宮内がちゃかすように言った。その瞬間に会人が宮内を ぽか っと殴り「お前は気がつかなさ過ぎだ。健、気にするなよ。花火ありがとうな」 と言った。いいコンビだよまったく。「じゃ、また誘ってくれよな」「うん。まったねぇ」 俺は二人に見送られながら家路についた。>>つづく
2006.10.16
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『花火』 姉が一緒に行こう と誘ってくれた花火大会当日。朝から生憎の雨。 気落ちしている姉の為に俺はホットの紅茶を入れた。もちろんオレンジの輪切りも忘れない。自分のマメさに自分で感心してしまいそうだ。 自分用にもホットミルクを入れ、クッキーを食べながら姉と話す。この雨だと花火大会は来週に延期しそうだな。「花火大会なら来週に延期だろ?来週じゃ駄目なの?」「だって、来週は模試があるんだもん……」「でも花火大会って夜だろ?模試は夕方には終わらないの?」「……終わるけど」 じゃあ充分行けるじゃないか。なんでしぶってるんだ?「だったらそれでよくない?」 姉の表情が暗い。何を悩んでるんだろう?ん?ひょっとして……。「あっ!もしかして!浴衣着てこうかとか考えてる?」 驚いた顔で姉が俺を見た。当たったかな? 浴衣かぁ……。良いんだけどねぇ~。むしろ見たいけどねぇ~。ちょっと困った事が有る。「……今度は遠いからさ……」「ほら、おんぶされるほうもなぁ……」「何?重いって言いたいわけ?」「俺はそんなこと一言も……」「言ってるじゃないの!いいっ!じゃあ行かないっ」 重いなんて思ってないって!ちょっと待ってよ!「……浴衣の裾がさ……あの距離だったからいいけど、あれ以上歩いたらさ……」 おんぶだから乱れたのか?でもまさかお姫様だっこは出来ないからなぁ。 その台詞を聞いて姉が赤面する。 俺も恥ずかしくなり黙り込んでしまう。 二人して赤面して沈黙する。 あぁ!気まずい! ピピピピピ! 突然の電子音が沈黙を破った。犯人は俺の携帯電話。正直助かった。>>つづく
2006.10.10
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「何よ?」「……今度は遠いからさ……」 遠いから?だったら何?「ほら、おんぶされる方もなぁ……」「何?重たいって言いたいわけ?」「オレはそんなこと一言も……」「言ってるじゃないの!いいっ!じゃあ行かない!」 思わず机をドンッと叩いて立ち上がる。 カップに入っていた紅茶が波を打つ。 あぁ……売り言葉に買い言葉だ、わたし……。すごく気が短い自分がイヤになる。 こんな事言いたいわけじゃないんだけど。「ちょっ……落ち着いて!なっ!」 健が焦ったようにわたしの隣にやってきて、そおっと後ろから肩に手を置く。「そうじゃなくて……」 健がコホンと咳払いをひとつすると、わたしはストンと椅子に腰を下ろした。「その……予想以上だったんだよ」「何が?」 振り向いて、わたしの後ろに立っている健を見上げた。 健は窓の外を見ながら口を開いた。「……浴衣のすそがさ……あの距離だったからいいけど、あれ以上歩いたらさ……」 ほんのり健の顔が赤い気がして……。「やっ……そんなの、見ないでよね!」 再びわたしは健に背を向けた。 わたし、あの日の帰りを思い出す。そういえば……。 浴衣のすそがひらひらしてた。わたしの素足が見え隠れしてたのかも……。 ああっ。そんなこと、あの時は考えてもなかった。わたしは赤面せずにはいられなかった。 そんな顔の赤いふたりを見守るかのように金魚鉢の出目金はひらひら泳いでいた?。 花火大会と浴衣【ありさside】終わり
2006.10.07
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「花火大会なら、来週に延期だろ?来週じゃダメなの?」「だって、来週は模試があるんだもん……」 これが受験生の辛いところ。現実を考えさせられる。「でも、花火大会って、夜だろ?模試は夕方には終わらないの?」 健は食卓の上に置かれたクッキーに手を伸ばす。「……終わるけど」「だったらそれでよくない?」 あくまでも涼しい顔の健。 もー本当に分かってない!よくないからこれだけへこんでるんでしょ! 模試が終わってから浴衣に着替えて、メイクして、髪もセットして……どれだけ時間かかると思ってるのよ! 半日がかりなんだから!1回でうまくいくとも限らないし……。「あっ!もしかして!浴衣着てこうとか考えてる?」 クッキーに伸びていた健の手が止まる。「なっ、何で?」「別に……」 ちょっと困ったような苦笑いの健。>>つづく
2006.10.05
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『花火大会と浴衣』 あの夏祭り以来から私の心の中でしっかり根を張り始めた健。 どうしようもないよなぁ……。 この受験生の心の中に入り込んでくるなんて。 わたしは夏祭りの夜に決心したように、二週間後にある予定だった花火大会に健を誘った。「どういう風の吹き回し?」 そう驚いた健だったけど、別にいいよってわたしの誘いを嫌がらずに受け入れてくれたんだ。 また、浴衣が着れるなぁ~と楽しみにしていた二週間。 花火大会の当日はドシャ降りの雨だった……。「はぁ~せっかく楽しみにしてたのに……」 わたし、食卓に頬杖をつきながら窓の外を見る。 家の中にまで聞こえてくる雨の音。バケツをひっくり返したとまではいかないけど、それに近い雨。 夕方までにやむ気配は全くない。 昨日まではからっと晴れてすっごい暑かったのに……。 間違いなく、花火大会は中止だ。「仕方ないよ。雨なんだし」 健が私のお気に入りのマグカップに紅茶を入れてくれる。「夏なのにホット?」 わたし、驚いておもわず健を見てしまう。「いらない?」 健がムッとした顔でわたしを見た。「雨でちょっと小寒いから温かいのがいいかなと思って入れたのに。いらないならいいよ。オレが飲む」「わっ。だ、誰もいらないなんて言ってないし!」「だったら文句言わない」 健は自分の為に入れたホットミルクをおいしそうに飲む。 何なのよ。めずらしいこともあるのね。健が紅茶を入れてくれるなんて……。 しかも、わたしの好きなオレンジの輪切りまで入ってる! 香りもいいし、レモンとはまた違ったまろやかな酸味があって紅茶にオレンジを入れるのはわたしのお気に入り。 おいしい~。ココロも体も温まる。>>つづく
2006.10.02
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