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「ありさ!」 わたし、後ろの美桜に肩を叩かれてハッとして振り返る。「大丈夫?テスト、終わったけど?」「あっ、うん……」 しまった!最終確認してないし……はぁ……本当に散々な結果になりそう。 今回の模試の結果は大体予測がつく。 こんな状態じゃ、受けても受けなくても一緒だよ……。 とりあえず、模試は終わった。わたしは慌てて筆記用具を片付ける。 公園で健と待ち合わせしてるんだ、先週の花火大会が今日、開催される。健と一緒に行く事になってるんだ。 でも、時間がないからわたしは制服で模試が終わり次第、駆けつけることになっている。 本当は、もうちょっとオシャレして行きたかったんだけどな……。 あっ、けど、髪くらい、上げていこうかなぁ……。せっかくだしね。 カバンの中からポーチを出した時だった。「ねぇ、今日、花火大会って知ってる?」 親友の美桜が私の隣に座る。「……うん」「一緒に行かない?」「えっ……?」「実はさ、涼介に誘われたんだ」「マジ?よかったじゃん」 美桜と涼介くんは幼なじみで、美桜は涼介くんのこと、好きなんだよね。 わたしには強引なのに、涼介くんのこととなると受け身になっちゃうんだよね。 涼介くんの話をする美桜は本当に女の子になってて、かわいらしい。「でね、涼介が康くん連れてくるから、わたしはありさを連れてくる事になって……」「えっ?」>>>つづく
2008.01.03
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『花火大会』 先週の大雨で雨天順延になった花火大会。 からっと晴れた今日。わたしは受験生ともあって、学校で模試を受けている。 朝から始まった模擬試験。やっと、あと5分後のチャイムで終わりを告げる。 あ~この模試もきっと、散々な結果なんだよ……。 わたし、教室からさんさんと照りつける太陽の光を浴びながら目を閉じた。 勉強になんて手がつかないよ……。 先週の出来事が脳裏に浮かび上がる。 楽しみにしてた花火大会が雨で中止になって、がっかりしたわたしを喜ばせようと健が花火を買ってきてくれた。 何年かぶりに健と庭先で花火をすることになるなんで……。 しかも、わたしは花火に夢中になってるのに、健ってば、ろうそくに火をつけたり、バケツ持ってきたり……本当、性格でてる。 よく気が利く奴……ううん、気が利きすぎるんだよ! あのロケット花火はわたしも、ビックリした。 まさか、わたしの手元で暴発するなんて……そして、その後にとった健の行動。 ちゃんと手当てしてくれて……ううん。そんなことじゃないの! その後なのッ!! 急に健てば、わたしの手を握ってきて……本当、最近の健の行動、意味が分からない。 そうかと思えば、火傷してるのに、力強く握りしめるし……。 わたしに対する嫌がらせ? とも思ったけど、そうでもないみたいで……。 久しぶりに握った健の手は男の子の手になってた。 やさしく包み込んでくれそうな大きな手 。>>>つづく
2007.02.09
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がちゃ「あれ?花火はもう終わったの?」 母が入って来た。「救急箱?あ、どっちか火傷したの?大丈夫?」 俺達は慌てて離れた。「うん。私が火傷しちゃって。でも健が薬塗ってくれたからもう大丈夫」 姉が平然と答える。さっきまでの沈黙が嘘みたいだ。「そう?すいか切ろうと思うんだけど食べる?」「食べる×2♪」 姉は母の方へと歩いて行ってしまった。 何も無かったかのように。 俺はまだドキドキしている。落ち着かない。 さっきの感情は何だったんだろう? アレはきっと……。 自覚してしまった。 俺は姉が好きなのだ という事を。 もう 姉と弟 には戻れないのだ という事を……。 母と姉が切って持って来てくれたすいかは いつもより切ない味がした。>>終わり
2006.12.12
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沈黙。 こんな姉は知らない。 こんな自分も知らない。 姉が分からない。 自分が分からない。 俺は無意識に姉の手を握った。 姉が握り返して来る。 自分の感情が分からない。 どうしたらいいのか分からない。 自分がどうしたいのか分からない。 自分の心臓の音だけが聞こえている気がする。 姉の手を握る手に力が入る。「痛い……」「あっゴメン」 俺は火傷をした方の手を握ってしまったらしい。姉が少し顔をしかめた。 でも離したくないのだ。 力を緩める。 姉が軽く微笑みながら俺を見た。 そして「こっち」 と言って逆の手を差し出す。 俺は今握っている方の手を離し、差し出された手を握ろうと近づけた……。>>つづく
2006.12.12
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「ほら手出して?」「うん……」 姉の指先に薬を塗ってやる。 男とは違う白くて華奢な指先に ちょこっと出来た赤いやけど「本当に大丈夫なのに……」「せっかく綺麗な指してるのに、痕になったら大変だろ?」 その台詞を聞いて姉は黙り込んでしまった。 薬を塗り終わり姉の顔を見ると真っ赤になっていた。 俺はまだ姉の手を持っている事に気付きぱっと離した。「ご、ごめん」「ううん。有り難う……」 姉はちょっと困ったような顔をして笑った。 まただ。最近の姉は俺が何かしてあげるとこんな顔をする。嬉しいのか何か悩んでいるのか複雑な表情だ。 そんな顔をされると俺も困ってしまう。 血は繋がっていないがずっと一緒に暮らしてきた。ホントの姉弟みたいなもんだ。姉の事は分かっているつもりでいた。 でも最近の姉は何を考えてるのか分からない時が有る。 知らない女の人みたいだ。 そんな時……。俺は姉にどう接していいのか分からなくなる。 気付かない振りをしなきゃいけないのか……。 ちゃんと話を聞かなきゃいけないのか……。 考えながら姉の顔を見つめる。 姉が不思議そうな顔をして見つめ返して来た。>>つづく
2006.11.20
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なんで!ロケット花火は宮内の方に入れたはずなのに!店員め!間違えたな! 姉はロケット花火が大好きだ。特に手に持ち俺にめがけて撃ってくるのが大好きだ。 ちくしょう!ドキドキして損した!結局姉は姉じゃないか!「に、庭だし近所迷惑だからロケット花火は止めとこうよ。な?」「うっふっふ♪さっすが健だねぇ。ちゃんと買って来てくれたんだぁ」 姉は俺の話なんか全然聞いちゃいなかった。 ライターでロケット花火に火をつけ……。 俺の方に向けた パン! ロケット花火は俺をめがけて飛んで来なかった。姉の手元で暴発したようだ。俺はちょっとほっとしたのだが……。「あつっ」 姉はロケット花火を放り出した。「火傷したのか!」「え?たいした事無いと思うけど」 俺は姉の言葉を聞かずに花火を持っていたのとは逆の手を握りしめ早足で歩き出した。「け、健?」 姉がビックリしたように俺の名前を呼ぶ。 そんな事はおかまい無しに俺はグイグイと姉をひっぱって行き、水道まで連れて来ると勢いよく水を出した。 姉の手を水に突っ込む。 突然の俺の行動に姉はビックリしているようだ。黙って従っている。 勢い良く流れる水で姉の手を冷やす。 薬も持って来た方がいいかな?確か救急箱に火傷の薬が有ったはずだ。「そのまま冷やしてろよ?今薬持って来るから」「薬なんて大げさだよ?ちょこっと赤くなってるだけだから」「いいから。言う事を聞きなさい」 まだ姉は何か言いたげだったが無視して俺は薬を取りに向かった。>>つづく
2006.11.12
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戻って来ると姉は二本目の花火に火をつけていた。俺の顔を見るなりくすくすと笑った。「なんだよ」「いや。よく気がつくなぁと思って……。そんな弟を持っておねーちゃんは嬉しいぞ」 その言葉にちょっと俺はむっとした。姉は気付かず花火にはしゃいでいる。「ほら!健も早く一緒にやろうよ♪」「はいはい」 俺は姉から手渡された花火に火をつける。「綺麗だね」「うん……」 姉と花火をするなんて何年ぶりだろう。小学生以来じゃないか? ちらっと姉を見る。 花火に照らされた姉の顔はいつもと違って見えて……。 ドキドキした。「健?」「え!」 突然声をかけられてビックリする。返事の声が裏返った。「何ぼーっとしてるの?ほら花火もう終わっちゃってるよ」「あ、うん」 俺はドキドキしたまま次の花火に火をつけた。 色とりどりの光が地面に落ちる。 本当に綺麗だ。たまには花火も悪くないなぁ。 コレで姉が浴衣だったらもっと楽しかったかも? 俺はそんな事を考えていた……。って浴衣!楽しい!?なんで俺は姉にドキドキしてるんだ!?姉だぞ?あの我侭で暴力的な姉だぞ!気の強い、俺をいじめてばかりの! でも……。 またちらりと姉を見る。 花火のちらちらした光の中の姉は……。 今考えた欠点を忘れてしまうほどに綺麗で……。 どうしよう。またドキドキしてきた。 正直花火どころではない。 そんな俺なんかおかまいなしに姉は花火に夢中だ。さっき出した花火をやりつくしてしまったらしくビニール袋の中をガサガサと探し始めた。 ん?今姉がにやっと笑った気がする……。気のせいかな? 姉が嬉しそうにビニール袋から取り出した物は……。 ロケット花火だった。>>つづく
2006.10.30
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夕方雨は小降りになっていた。コレなら軒下で花火をやっても差し支えないかな? 姉を花火に誘おうと思い部屋のドアをノックする。「何?」 不機嫌そうに姉が顔を出した。「勉強中だった?」「当たり前でしょ?何の用?」 うわぁ。誘うの止めとこうかなぁ……。でもまぁせっかく買って来たんだし。勿体無いか。 俺は手に持ったビニール袋を姉の顔の前に差し出し軽く振った。「花火買って来たんだけどやらない?」 俺がそう言うと姉の表情がぱあっと明るくなった。げんきんな奴だなぁ。ちょっと前まであんなに不機嫌そうな顔してたくせに。 姉は嬉しそうに部屋から出て来ると俺の手をひいて歩き始めた。「嬉しいな♪ちょうど気分転換したかったんだよね~」 鼻歌を歌いながら階段を下りてく。少しでも喜んでもらえてよかった。嬉しそうな姉の顔を見て俺もちょっと嬉しくなった。 庭の軒下に出て俺はろうそくに火をつけた。姉はそんな俺を待ちきれないようでじーっと見ていた。緊張するでしょう!まったく。 ぼんやりとした明かりが灯る。 姉はさっそく手持ち花火に火をつけた。 あたりが一瞬で明るくなる。キラキラとした光が地面に落ちる……。 あ、バケツ×2。 俺は消火用のバケツを準備していない事に気付き取りに行った。>>つづく
2006.10.24
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「はい。もしもし」「やっほぅ♪健君元気ぃ?」 電話の相手は友達の宮内だった。「おう。で、何の用よ?」「今日の花火大会誘おうと思たんだけど、雨で中止じゃんねぇ。会人とかとさぁ橋の下で花火みんなで持ち寄ってやらねぇ?って話になったんだけどどうよ?」 花火か……。姉に買って来てやったら喜ぶかな?「今日は止めとくわ。サンキュ」「あらそうぉ?残念だわぁ。じゃまた遊ぼうねぇ」「また誘ってくれよな」「うぃ。じゃぁねぃ」 そう言うと宮内は電話を切った。相変わらず明るい奴だ。「電話……。誰から?」「宮内から。ちょっと俺でかけてくるわ」「そう?気をつけてね」「うん」 俺はカップを片付け財布を持って部屋を出た。 傘をさし、近所のコンビニを目指して歩く。雨は若干弱まってきたみたいだ。 コンビニについて花火を探す。季節がらかレジ前に特設コーナーが出来ていた。色々な種類があり目移りしてしまいそうだ。 手に持ったカゴに入れていく。せっかく誘ってくれた宮内に悪い事をしたので少し差し入れをしておこうと思い、多めに買っておく事にした。帰りに寄って渡して行こう。 ビニール袋に家用と分けて入れてもらい俺はコンビニを出て、宮内の家に向かった。 宮内の家につくと会人がもう来ていた。 二人に誘ってもらったお礼を言い花火を渡す。「気を使わなくても良かったのにぃ。お前は本当にマメだねぇ」 宮内がちゃかすように言った。その瞬間に会人が宮内を ぽか っと殴り「お前は気がつかなさ過ぎだ。健、気にするなよ。花火ありがとうな」 と言った。いいコンビだよまったく。「じゃ、また誘ってくれよな」「うん。まったねぇ」 俺は二人に見送られながら家路についた。>>つづく
2006.10.16
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『花火』 姉が一緒に行こう と誘ってくれた花火大会当日。朝から生憎の雨。 気落ちしている姉の為に俺はホットの紅茶を入れた。もちろんオレンジの輪切りも忘れない。自分のマメさに自分で感心してしまいそうだ。 自分用にもホットミルクを入れ、クッキーを食べながら姉と話す。この雨だと花火大会は来週に延期しそうだな。「花火大会なら来週に延期だろ?来週じゃ駄目なの?」「だって、来週は模試があるんだもん……」「でも花火大会って夜だろ?模試は夕方には終わらないの?」「……終わるけど」 じゃあ充分行けるじゃないか。なんでしぶってるんだ?「だったらそれでよくない?」 姉の表情が暗い。何を悩んでるんだろう?ん?ひょっとして……。「あっ!もしかして!浴衣着てこうかとか考えてる?」 驚いた顔で姉が俺を見た。当たったかな? 浴衣かぁ……。良いんだけどねぇ~。むしろ見たいけどねぇ~。ちょっと困った事が有る。「……今度は遠いからさ……」「ほら、おんぶされるほうもなぁ……」「何?重いって言いたいわけ?」「俺はそんなこと一言も……」「言ってるじゃないの!いいっ!じゃあ行かないっ」 重いなんて思ってないって!ちょっと待ってよ!「……浴衣の裾がさ……あの距離だったからいいけど、あれ以上歩いたらさ……」 おんぶだから乱れたのか?でもまさかお姫様だっこは出来ないからなぁ。 その台詞を聞いて姉が赤面する。 俺も恥ずかしくなり黙り込んでしまう。 二人して赤面して沈黙する。 あぁ!気まずい! ピピピピピ! 突然の電子音が沈黙を破った。犯人は俺の携帯電話。正直助かった。>>つづく
2006.10.10
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「何よ?」「……今度は遠いからさ……」 遠いから?だったら何?「ほら、おんぶされる方もなぁ……」「何?重たいって言いたいわけ?」「オレはそんなこと一言も……」「言ってるじゃないの!いいっ!じゃあ行かない!」 思わず机をドンッと叩いて立ち上がる。 カップに入っていた紅茶が波を打つ。 あぁ……売り言葉に買い言葉だ、わたし……。すごく気が短い自分がイヤになる。 こんな事言いたいわけじゃないんだけど。「ちょっ……落ち着いて!なっ!」 健が焦ったようにわたしの隣にやってきて、そおっと後ろから肩に手を置く。「そうじゃなくて……」 健がコホンと咳払いをひとつすると、わたしはストンと椅子に腰を下ろした。「その……予想以上だったんだよ」「何が?」 振り向いて、わたしの後ろに立っている健を見上げた。 健は窓の外を見ながら口を開いた。「……浴衣のすそがさ……あの距離だったからいいけど、あれ以上歩いたらさ……」 ほんのり健の顔が赤い気がして……。「やっ……そんなの、見ないでよね!」 再びわたしは健に背を向けた。 わたし、あの日の帰りを思い出す。そういえば……。 浴衣のすそがひらひらしてた。わたしの素足が見え隠れしてたのかも……。 ああっ。そんなこと、あの時は考えてもなかった。わたしは赤面せずにはいられなかった。 そんな顔の赤いふたりを見守るかのように金魚鉢の出目金はひらひら泳いでいた?。 花火大会と浴衣【ありさside】終わり
2006.10.07
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「花火大会なら、来週に延期だろ?来週じゃダメなの?」「だって、来週は模試があるんだもん……」 これが受験生の辛いところ。現実を考えさせられる。「でも、花火大会って、夜だろ?模試は夕方には終わらないの?」 健は食卓の上に置かれたクッキーに手を伸ばす。「……終わるけど」「だったらそれでよくない?」 あくまでも涼しい顔の健。 もー本当に分かってない!よくないからこれだけへこんでるんでしょ! 模試が終わってから浴衣に着替えて、メイクして、髪もセットして……どれだけ時間かかると思ってるのよ! 半日がかりなんだから!1回でうまくいくとも限らないし……。「あっ!もしかして!浴衣着てこうとか考えてる?」 クッキーに伸びていた健の手が止まる。「なっ、何で?」「別に……」 ちょっと困ったような苦笑いの健。>>つづく
2006.10.05
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『花火大会と浴衣』 あの夏祭り以来から私の心の中でしっかり根を張り始めた健。 どうしようもないよなぁ……。 この受験生の心の中に入り込んでくるなんて。 わたしは夏祭りの夜に決心したように、二週間後にある予定だった花火大会に健を誘った。「どういう風の吹き回し?」 そう驚いた健だったけど、別にいいよってわたしの誘いを嫌がらずに受け入れてくれたんだ。 また、浴衣が着れるなぁ~と楽しみにしていた二週間。 花火大会の当日はドシャ降りの雨だった……。「はぁ~せっかく楽しみにしてたのに……」 わたし、食卓に頬杖をつきながら窓の外を見る。 家の中にまで聞こえてくる雨の音。バケツをひっくり返したとまではいかないけど、それに近い雨。 夕方までにやむ気配は全くない。 昨日まではからっと晴れてすっごい暑かったのに……。 間違いなく、花火大会は中止だ。「仕方ないよ。雨なんだし」 健が私のお気に入りのマグカップに紅茶を入れてくれる。「夏なのにホット?」 わたし、驚いておもわず健を見てしまう。「いらない?」 健がムッとした顔でわたしを見た。「雨でちょっと小寒いから温かいのがいいかなと思って入れたのに。いらないならいいよ。オレが飲む」「わっ。だ、誰もいらないなんて言ってないし!」「だったら文句言わない」 健は自分の為に入れたホットミルクをおいしそうに飲む。 何なのよ。めずらしいこともあるのね。健が紅茶を入れてくれるなんて……。 しかも、わたしの好きなオレンジの輪切りまで入ってる! 香りもいいし、レモンとはまた違ったまろやかな酸味があって紅茶にオレンジを入れるのはわたしのお気に入り。 おいしい~。ココロも体も温まる。>>つづく
2006.10.02
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『金魚』 夏祭りの翌朝、俺は居間の窓辺に置かれた金魚鉢の中をひらひら泳ぐ出目金を見つめていた。 昨日の姉の浴衣姿みたいだなぁ…。 そんな事をぼんやりと考えていると、姉が起きてきた。もう十一時だ。寝すぎだろう。 昨夜の事を思い出し、ちょっと緊張する俺に姉がかけてきた言葉は「金魚に餌あげてくれた?」 だった…。昨夜とはうってかわっていつもどうりの姉。意識してたのは俺だけか とちょっと悲しくなる。「まだだけど…。そういえばこいつの名前は決めたの?」「健でいいじゃない。似てるんだから」「昨日から思ってたんだけどどこが似てるっていうんだよ?」 昨日からいまいち納得できない俺は聞いてみた。「ふわふわしてて、何考えてるかわかんないとこなんてそっくりじゃない」「な!ど、どちらかと言うと俺より姉さんに似てると思うけど!?」 俺がそう言うと姉はビックリした顔をした。まさか自分に似てると言われるなんて思ってなかったのだろう。「私のどこが出目金に似てるのよ!?どこ見てるかわかんないとこなんか健そっくりよ!」「俺のどこがどこ見てるかわかんないんだよ!」「いつもどこ見てるかわかんないじゃない!」 なんて失礼な事を言うんだ!俺は頭に血が上り、自分が何を言っているのか分からなくなり言ってしまった。「ひらひら泳いでる姿が昨日の姉さんの浴衣姿みたいなの!」 その言葉を聞いた姉さんの顔がみるみる赤くなった。そして「き、金魚に餌あげといてよね!」 と言うとバタバタと自分の部屋に戻っていってしまった。 俺は自分が何を言ってしまったのか気づき真っ赤になった。言うつもりなかったのに~。 ちらり と金魚を見る。「お前がいけないんだぞ」 と言い、指先でコツンっと金魚鉢をはじいた。 真っ赤になった姉さんはちょっと可愛かったな と思わずつぶやいた。 周りをきょろきょろと見回し、誰もいないことを確認し金魚にそっと話しかける。「今の台詞は姉さんには内緒だぞ?」 姉が気になるなんて誰にも相談できない…。「これからもいろいろ聞いてくれよな?」 金魚は聞いているのか聞いていないのか分からないが金魚鉢の中で くるり と方向転換した。「今ご飯あげるからな」 頼もしい相談相手の為に俺は餌をとりに行った…。 金魚【健side】終わり
2006.09.28
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わたしたちは童心に戻って、夏祭りを楽しんだんだ。 というか…健だったから楽しめたのかもしれない。 健だから…大好きな健だから…。 えっ? 大…好き…? ガバッ。 わたしは勢いよく掛け布団を押し上げた。 ドクドクドク…。 けたたましくなる鼓動。治まるどころか油を継ぎ足したかのように燃え上がる。 なっ、何? 今…一瞬でも、健のこと、大好きって……。 わたし、慌てて布団の上で体育すわりをして顔を埋めた。 健はわたしの弟なんだって! 血は繋がってないけど、わたしの大切な弟なの。家族なの。大好きな……。 でも…その大好きとは違う気がする。 健のことを考えると、こんなにドキドキして体が熱くなるなんて…。 わたしより小さくて泣きべそばっかりかいてたのに、いつの間にかわたしをおぶっちゃうくらい大きく強くなって…。 ちょっぴり強引なところが大人っぽく感じた。 あの時の健の背中は温かかった。すごく心地よかった。正直に言っちゃえば、この背中、離したくなかった。「あーっ、もう!」 何なのよ! 受験勉強に集中できないし、寝られもしない。 受験勉強の息抜きのつもりで行った夏祭りが息抜きになってないのよ!「もぉ~勘弁して…」 わたし、そう小さくつぶやくと部屋のドアを見つめた。 ドアの向こうには廊下を挟んで健の部屋がある。 今頃、ぐっすり寝てるんだろうな…。イヤミなやつ! 人にこれだけ勉強の邪魔をしといて…。 はぁ~どこからわたしの中の歯車が狂ったんだろうか…? こんな受験戦争の最中、わたしは何をやってんだか…。 でも、芽生えてしまった感情はどうにも出来ない。抜いてもまた、芽が出てくるんだよ。どんな花よりも早く…。 そうだ! 来週、花火大会があった。いつもは家から見てるんだけど、今年は近くまで行こうって健を誘ってみようかなぁ。 あいつ、どんな反応するだろう…。 しばらくして(いや、だいぶかかって)わたしは深い眠りに落ちた。 おかげでわたしは寝不足。みんな、勉強のせいだと思ってるんだろうけど…。 翌朝の健は無邪気な健に戻っていた。また、それも妙にドキドキしちゃうのはわたしだけなんだろうけどさ…。 夏祭り【ありさside】終わり
2006.09.26
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高鳴る鼓動が抑えられない。 お天道様の光をたくさん浴びたオレンジ色の布団に潜り込む。 いつもとおなじ布団なのに、布団が温かいからか、わたしの体は熱くて仕方がない。 どっ、どうしよう…。 火照る顔を両手で挟む。 夏祭りだった今日。 珍しく弟、健がわたしを誘い出した。 予想外のことで、うれしさを隠すのに精一杯だったわたしだけど、顔は気持ちのまま、出てた気がする。 それでもいいんだ。 すごくうれしかったんだって! 夏祭りがあるのはわたしも知っていた。 こういうイベント好きなわたしは、行きたくて仕方がなかったんだけど、受験生ということもあって、自粛してたんだ。 本当は、浴衣着て屋台でおいしいものいっぱい食べて、金魚すくいとか輪投げとかみんなで騒いで受験気分を取っ払いたかったんだ。 それを知ってか知らずか、健はわたしを家から連れ出してくれたんだ。 目を閉じると今でもまぶたに浮かぶ夏祭りの風景。 いつも見かけるシインとした厳粛な神社はどこにもなかった。 まるでおもちゃ箱をひっくり返したような賑やかさ。 わたしの好きなオレンジ色の明かりが夏祭り独特の雰囲気を醸し出していた。 一番奥に社までにおいしそうな臭いや目を奪われるようなものばかりが並ぶ屋台が軒をそろえる。 子供じゃなくても目移りしちゃう。 そう。 わたしの隣にいる健も…。 危うくぶつかりそうになって、わたしは健の腕を引き寄せた。 わたしのその行動に驚いた感じの健。 でも、決して嫌がるそぶりはなくて…だからわたしも腕を放すタイミング、逃しちゃったんだ。 だから、わたしはこの雰囲気に任せようと思ったのが間違いだった。 ただでさえ薄手の浴衣。 素肌と素肌が触れ合ってるわけじゃないのに、無性にドキドキしてしまう。 こんなにわたしはドキドキしているのに普段と何も変わらない健。 それが寂しくも感じた。 >>>つづく
2006.09.24
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神社の参道を出て、家までの道を歩く。姉の歩くスピードがちょっと遅くなってきたので疲れたのかと思い立ち止まる。「疲れた?」「ううん違うの」 と言い、姉は首をふった。俺はひょっとして、と思い姉を街灯の下まで連れて行った。「やっぱり、鼻緒のところが赤くなってるじゃないか。慣れないかっこするから」 姉はむきになって言い返してくるだろうと思ったのだが俯いたままだ。よっぽど足が痛いのだろうか?「しょうがないなぁ。おぶっていってやるよ」 俺はしゃがんで背中を姉に向けた。「い、いいよ。恥ずかしいし、浴衣のすそがはだけちゃう」「大丈夫だって。誰も見てないから」「……」 俺は無理矢理姉を背負うと歩き出した。背中で姉がちいさく ごめんね、ありがとう と言ったので 気にするなよ。 と言っておいた。「久し振りのお出かけだし…。可愛い格好したかったんだもん」 姉がちょっとふてくされたように言った。出かけるのが久し振りだからなのか、俺とのお出かけが久し振りだからなのかは分からなかったが俺は嬉しかった。背中の姉の体温が熱いのに心地良い。こんなしおらしい姉を見るのは初めてで…。俺は心から可愛いと思った。 次の朝起きると姉はもういつもどうりだった。勝気でちょっと憎たらしい。昨日の姉が嘘のようだ。 でも金魚鉢にはあの出目金がいる。ひらひらと泳ぐ姿は昨日の姉の浴衣姿のようだ。いつかまたあんな姉の姿を見てみたい と思った。 コレが俺の姉への恋心の始まりだった。 まだ恋とは言えないかもしれないけれど……。夏祭り【健side】終わり
2006.09.21
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姉が俺の頭をなでる。くそう、子供あつかいしやがって。 お参りが終わり、姉が腕をつかみなおしてきた。もうつかまないものと思っていた俺はビックリした。「帰ろっか?」「う、うん」 姉はスタスタと歩き出した。もう何も食べないのかな?と思っていると姉がピタッと足を止めた。「ねぇ、金魚すくいやっていかない?」 姉はそう言うと俺の返事も待たずに金魚すくいの屋台のほうに歩いて行ってしまった。引っ張られていく俺。「おじさん、一回ね」 姉はおじさんからポイをひとつ買うと金魚のいる水槽の前にしゃがみこんだ。 その時にちらっと見えた白くて細い足に俺はドキドキした。「あ~もう!!絶対あの子が欲しいのに!おじさん!もう一回!」 どうやら狙っている金魚がいるらしい。必死になって追いかけている。可愛いな…。って俺は何を考えてるんだ!?「また破れた!もう一回!」 なんでそんなに必死なんだ?「しょうがないなぁ、かしてみろよ」「あっ、あの子よあの子。赤い出目金」「はいはい」 俺は姉のために赤い出目金を捕ってやった。こーゆーくだらないことはうまいんだよね。俺。「お、おじょうちゃん彼氏さんが捕ってくれてよかったねぇ。はい」 おじさんが出目金をビニール袋に入れて姉に渡していた。か、彼氏じゃないっつーの!「うん。有り難う」 姉が笑顔で受け取る。否定しろよお前も。「さ、帰ろうか」 姉が俺を引っ張る。俺も姉に引っ張られるがまま屋台から離れる。「金魚…。捕ってくれて有り難う」「どう致しまして。なんでそんなにそいつにこだわったんだ?」 俺がそう聞くと姉は恥ずかしそうに言った。「だってちょっとあんたに似てたんだもん」 び、びっくりしたぁ。そんな台詞が出てくるとは思わなかった。俺は顔が赤くなってしまった。「何よ?悪い?」「いや別に…」>>つづく
2006.09.21
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神社に着くと思ったより人がいっぱいで、夜店もたくさん出ていた。夏祭りなんて久々過ぎて新鮮だった。 アレも食べたい。コレもおいしそうときょろきょろしていると姉に グイっと腕を引っ張られた。「もう。人にぶつかるよ?」 ふと気づくとぶつかりそうな距離に人がいた。しまった…。 姉はそんな俺の様子をみると ふう っとため息をつき 仕方ないなぁと言って俺の腕をとったまま歩き出した。 姉の体温が伝わってくる。俺はちょっとドキドキした。「こういうとき親が違っててよかったなぁと思うわ。だって一応カップルに見えるじゃない?釣り合いはとりあえず無視しておいて」 ドキドキして損した。一言多いんだってば! その後も姉は俺の腕を離すことなく歩き回った。 りんご飴が食べたいと言っては俺をひっぱって行き、焼きとうもろこしが食べたいと言ってはひっぱって行く。でも楽しそうに俺をひっぱって行く姉の顔を見ていると俺もなんだか楽しかった。 社が近くなり、人が多くなってきた。俺と姉はさっきよりもますます接近して歩かねばならなくなった。久々に間近で見る姉の顔は何時もと何か違って見えて恥ずかしくて目をそらした。「どうする?せっかくきたんだしお参りしておく?」「うん…」 姉とくっつきながらお賽銭を入れる。横を見ると姉が一生懸命祈っていた。 何を祈ってるんだろう?俺はどうしよう…。とりあえず 家族みんなが健康でいられますように と、初詣か俺はι「何をお祈りしたの?どーせ家族みんなが健康でいられますように でしょ?」「っべ、別にいいだろ?」「やっぱりそうなんだ~。可愛いねあんたは」 姉が俺の頭をなでる。くそう、子供あつかいしやがって。>>つづく
2006.09.20
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二日後 十六時までに部活から帰り、俺はシャワーを浴びて着替えた。姉に 汗臭いだの汚いだの言われるのが嫌だったからだ。 十五分前までには準備をして居間で姉の来るのを待った。「ごめんごめんお待たせ」 その声と共に五分前に現れた姉は 浴衣 を着ていた。「何ビックリしてるのよ?」 ビックリしないほうが無理だ。普段おろしっぱなしの髪の毛も今日はしっかり結って上げてありうなじが見える。正直綺麗だった。「何よ?なんとか言ったらどう?」「いや…。あの…。馬子にも衣装だなと思って」「莫迦!」 俺は手持ちの鞄?でポカリと殴られた。「もうっ。せっかく着たのにやんなっちゃう。コレだから弟は面白くないのよねぇ。さっさと行くよ」 ぷりぷりと怒った姉はさっさと出て行ってしまった。慌てて後を追いかける。 姉の下駄がカラコロと音をたてる。結構行く人がいるみたいでちらほらと浴衣姿の女性を見かけた。 身内の贔屓目か姉が一番綺麗に見えた。いつもは活発な姉も浴衣という普段着慣れないものを着ているせいだろうか?動きにくいのかおとなしい。それが新鮮でちょっと女の子らしく感じた。「さてと、今日は何を食べようかな~」 ううんι前言撤回。やはり姉は姉だ。ちょっとでも女の子らしく感じた俺が莫迦だった。>>つづく
2006.09.20
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『夏祭り』 夏休み中の部活からの帰り道。俺は電柱に貼られたポスターを見つけた。『2005年度○○神社夏祭り』 と書いてあるそれはいかにも手作り風で、日付と時間が書いてあるだけのシンプルなモノだった。 夏祭りなんて最近行ってないなぁ と思い、ポスターを確認すると日付は明後日の土曜日。友達を誘うには急すぎるし…。姉でも誘ってみるか。確かあいつはこういう類のイベントが好きだったはずだ。 俺にはひとつ上の姉がいる。姉といっても両親の再婚で出来た姉なので血は繋がっていない。しかし小学生の頃の再婚なので身内のようなものだ。 今日は確か 家で受験勉強する と言っていたのでいるはずだ。後で誘ってみよう。 部活の鞄から手帳を取り出すと俺は日時と場所をメモしておいた。家に帰ると姉が「暑かったでしょう?」 と言い、麦茶をついでくれた。グラスに入れられた氷がカラカラと涼しげな音をたてる。俺はそれをいっきに飲み干すとさっそく夏祭りの話を姉にした。「誘ってくれるの?彼女いないもんねぇ。う~ん…。あんたと行くのちょっと恥ずかしいけどなぁ…。まぁいいか。知らない人からみたら姉弟には見えないし、受験勉強の気晴らしにもなるし行こうかな♪」 まったく一言多い姉である。最初から素直に行くって言えばいいのに…。でも誘った時に姉がちょっと嬉しそうな顔をしていたからまあいいか。誘ってよかった。「じゃ明後日、十七時ぐらいからでいいかな?」「家族なのにそんな時間までしっかり決めるわけ?性格が出てるねぇ」 むっ。時間にしっかりしてるのはのは良い事じゃないか。姉はちょっと時間にルーズなのだ。 俺の不機嫌そうな顔を見て姉は笑いながら言った。「わかりました、十七時ね?ちゃんと間に合うように準備しておくからそう怒らないの」 くそう…。俺は姉を誘った事をちょっと後悔していた。 >>つづく
2006.09.19
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ありさ(18歳)高校3年。大学受験を控え、勉強中。父の連れ子。健(17歳)高校2年。金魚の世話係。母の連れ子。ありさ6歳、健5歳の時に、両親が再婚し、姉弟になる。べたべたな設定。光流が仕事中(夜勤)に書き、じゅんちに渡したのが始まり。夏祭りがテーマの短編のはずが…。べたべたな展開で進んでいく煮え切らない二人の恋物語を見守ってあげてください。
2006.09.19
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