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2007年11月17日
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≪この人・この本・この言の葉≫

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                   夫 婦 (一)


                                    母衣崎 健吾



光太郎と智恵子(4)


明け方未明、体の異常な感触に目を覚ました。全身水に濡れていた。何が起きたのか咄嗟には理解できなかった。ヘッドランプを照らして始めて気付かされた。昨夜来の雨がテントのなかにまで浸水していたのである。
これまで台風に何度直撃されても浸水したことはなかったので信じられなかった。寝袋も、替えの下着までもずぶぬれにしてしまった。この状況で明日からの本格的な登山をどうするか、考えあぐねていたら、朝が明けた。


横尾は槍ヶ岳と穂高岳への登山の分岐点に位置しているので、朝はこれから登る人、下山の人でいつもごった返しているが、今日は下山の人が圧倒していた。
今週は天候はだめね、一週間待ったけど悪天候で諦めて下山してきたわ、と、疲れきった表情と無事下山できた安堵感が交錯していた。
《山頂で友が待っている、行かない訳にはいかない》
 一人は槍ヶ岳から、一人は西穂高から奥穂高岳の山小屋で会う約束だった。
雨が小降りになったのを機にテントを撤収し、山頂を目指した。涸沢に着く直前から雨が再び激しくなり、風も強烈に吹きつけてきた。
《これ以上の前進は命取りになる》

涸沢で天候の回復を待つことにした。
いつもなら、こんな風も雨もたいしたことではない。しかし、昨夜で状況は一変していた。濡れていない衣類は一枚もない。寝袋までも濡れたままだ。晴れなくても、風だけならなんとかなるが、雨は断続的に降り、益々激しさを増していた。そのうち風もテントを吹き飛ばしかねない程の脅威になり、テントを守るフライシートの張綱を固定していた石をも度々動かした。何度もその補強のため、テントの外に出なければならなかった。
これでだめなら諦めようと一本の張綱に大石を載せて顔を上げたときだった。
山頂で会う予定の友がきょろきょろしているのが見えた。
「豪、こっちだ」

北海道の最奥の山、トムラウシに一緒に登って以来だから十年近く会っていなかった。
「おまえもな、無事でよかった」
「今日は南岳に登ったのだが、稜線はひどい風で縦走は無理だったので止めにして、横尾まで引き返し、ここまで登ってきた。ここにくればおまえが必ず居ると思ったよ」
「嬉しいね」
 二十キロを超えるテントを背負って、山を走って登るパワーを持ち合わせている万年青年の登場は心強い限りだった。


「明日、またな」
 友のテント設営の位置を確認してテントに戻った。濡れた衣類を着たまま眠りに就いた。
《人間は簡単には死なない》























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最終更新日  2007年11月18日 13時46分48秒
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