東方見雲録

東方見雲録

2025.03.12
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カテゴリ: 文化




日本郵便、日本電信電話(NTT)、日本電気(NEC)、近畿日本鉄道、日本通運、日本武道館、日本体育大学はニッポン。日本航空、日本大学、日本経済新聞、日本たばこ産業、日本交通はにほん。なんとも適当です。どこかが上場企業名の読み方を調査したところ、にほんが60パーセント、ニッポンが40パーセントでした。

いったい「にほん」と「ニッポン」の使い分けはどうなっているのか。こういうことはどこかで決めているのか。決まっていないとしたら、ほったらかしなのか。決めなくていいのか。多くの日本人もそんな疑問をもっていることでしょう。国名が「にほん」でも「ニッポン」でもいいだなんて、これこそは日本人の「いいかげんさ」や「あいまい性」を根本からあらわしているのかもしれません(あるいはこういうところにデュアリティがあらわれているのです)。

桃山時代にポルトガル人が編纂した『日葡辞書』には、すでに“Nifon”と“Nippon”の両方が記載されています。かなり昔から2通りに呼ばれていたのです。そのころ「日本橋」という呼び名は江戸ではニホンバシだけれど、大坂ではニッポンバシになっていました。そんなところから、東西での言い方のちがいがあって、それを温存したので併称されたのではないかという意見もあります。

詳しいことは省きますが、江戸の文芸や歌舞伎や浄瑠璃の作品名や文中呼称などでも、ニホンとニッポンは混在してつかわれています。それが明治維新以降、一君万民の「大日本帝国」が登場するに及んで、少しニッポンが強くなった。念のために書いておくと、昭和九年の文部省臨時国語調査会は日本の読み方を「にっぽん」に統一するという答申をしました。けれども、すでに巷にはニホンとニッポンが混在していたので、こういうお達しも効果をもてなかったようです。

引用サイト:松岡 正剛   こちら

関連サイト:世界でも珍しい国号「日本」をめぐる謎   講談社   こちら
言語学ではメジャーな「ニホンとニッポン」問題
質問の顛末をお答えする前に、そもそもの疑問から。
日本の国名は、ニホンなのかニッポンなのか。この話題は、言語学ではメジャーなトピックスとして扱われてきました。
世界では、国民が呼んでいる自国名と国際的な通称が全然違うのは珍しいことではありません。たとえば「Deutschland(ドイチュラント)」と「Germany」、「Suomi(スオミ)」と「Finland」、「Misr(ミスル。sの下に半円)」と「Egypt」、「韓国(ハングク)」と「Korea」といった具合。自国語音と英語音が似ていなければ当然そうなります。とはいえ、国号名称が自国内でも決まっていない、というケースはさすがに珍しいのではないでしょうか?

古来からの「日本」の呼び名についての論説は、古くは南北朝時代の武将・北畠親房による『神皇正統記』にその記述が見え、江戸時代では国学者・本居宣長、『解体新書』で有名な蘭学者・前野良沢などが自説を披露しています。現在でも論争が繰り広げられていますので、いくつかご紹介していきましょう。
まず、「日本」という漢字表記について。国内の公式文書で最初に確認できるのは、教科書でおなじみの、720(養老4)年成立、国史第一号の『日本書紀』です。
同書の文中では、これまで中国から呼ばれていた「倭(わ)」という国名をすべて「日本」と書き直し、かつ、これを「やまと(耶麻騰)」と呼ぶ、と注意書きがなされています。日本と書いて「やまと」と読むんですね。「日本」を「ニホン」と読むのは、漢字の中国語発音にそった読み方で、いわば外来語のようなものなんです。
「ニホン」という音は、『日本書紀』の時代の中国=唐の公用語(中古代中国語「漢音」)よりも古い、「呉音」由来とされています。『三国志』でおなじみの「呉」が存在したのは西暦250年前後。日本列島に邪馬台国の卑弥呼がいた時代で、中国南方系の言葉です。呉音では「日」という字を「ニチ」と読み、「ニチホン」→「ニホン」となったのではという説です。
また、近年の音韻学・言語学の研究では、奈良以前の日本人は「h」音を「p」音で発声していた、というのが定説です。つまり私たちが今、話している「は、ひ、ふ、へ、ほ」を、卑弥呼や聖徳太子、あるいは時代が降って天智天皇の頃までは「パ、ピ、プ、ペ、ポ」と発音した。とすると成立時には『日本書紀』の音読みも「ニホンショキ」でなくて、「ニポン(一説ではニエットプァン)ショキ」だったのではないかとされています。
しかし平安時代になると、「ハ」行の発音は、p音からh音へと変化し、「ニホン」という読みが優勢になり、この頃には「ニホンショキ」と呼んだことが仮名文字から確認できています。たしかに紫式部や清少納言の王朝文学や平安貴族たちの詠む和歌に「パピプペポ」の撥音はちょっと似合わない感じがします。
国名として「ニッポン」という言い方が広まったのは、もっと後代、関東武士たちの勃興と都への進出によって室町頃に“関東なまり”が都に流れ込み、「日本=ニッポン」となったのだという説を唱える研究者もいます。

「ジャパン」はどこから来たのか?
「日本」をなんと言ったのか。さらに有力な表音文字の手がかりがあります。それは16世紀、戦国時代の南蛮人宣教師たちによるポルトガル語表記です。現在に伝わっている『日葡辞書』によれば、「日本」を表すアルファベットとしては「Nippon」が一番多いものの、「Niffon」「Nifon」さらには「Jippon」という表記もあり、この頃、各地で「日本」の発音は入り乱れていたようなのです。
え、「ジッポン」? でも「日本」という漢字を逆さにしたらどうでしょう。「本日」=「ほんじつ」ですね。「日」を「ジツ」と読むのは、唐以降に中国で定着する北方系の「漢音」由来です。
『東方見聞録』中の日本表記「ジパング」は、現在の世界における通称「ジャパン」の原型ですが、この読み方はマルコポーロが中国(当時の王朝は元)に到着した頃、中国人が「日本(国)」を「ジッペン(グオ)」と呼んでいたのを耳にしたのだとされています。ですが、その後、鎖国された江戸時代の日本国内では「ジッポン」という言葉は衰退していき、次第に平板化した「ニホン」読みがまた優勢になっていきました。
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Last updated  2025.03.12 08:00:15
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