東方見雲録

東方見雲録

2026.01.19
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カテゴリ: 政経

中国に対し国内タカ派を中心に強硬的な言論・姿勢が目立つが、現実を理解し、平和的な国家を考えての発言なのか(Tsubaki/PIXTA)
© 東洋経済オンライン
高市首相が台湾有事を日本の「存立危機事態」に該当しうるとの認識を国会で示してから、2カ月が過ぎた。中国はこの間、台湾問題を「核心中の核心」と位置づけているだけに、「戦後、日本の指導者が対外的な武力行使の意思を示したのは初めてだ」「日本は一線を越えた」などと強く反発している。
外交的な牽制に始まり、日本への旅行自粛を含む非公式な圧力、軍事的示威行動、さらには輸出規制といった経済措置に至るまで、中国はあらゆる手段を講じ、日本への圧力を一段と強めている。
現実を見ず、爽快感さえ感じればいいのか
こうした中国の反発を受け、日本国内のタカ派保守層では、「中国の恫喝に屈するな」「毅然と対応せよ」といった強硬論が勢いを増している。例えば、保守系オピニオン誌『WiLL』の2026年2月号は、「戦狼外交を黙らせる高市戦略」「もう許せない! 中国という悪党」と題した記事を掲載した。
むしろそこには、日本がいまだに拭いきれずにいる「大国日本」という幻影が色濃く反映されているように見える。そして、中国の軍事的・経済的台頭をなかなか正面から受け入れられない(認められない)、複雑な心理的葛藤が透けて見える。
テレビのニュースや情報番組では、アメリカ、中国、日本を並べた図が頻繁に使われる。3カ国が対等に配置され、「米中対立の中で日本はどうするのか」とよく語られる。しかし、残念ながら、これは国際政治経済の実像から大きく乖離した表現だ。
アメリカと中国は、軍事、経済、技術、外交のあらゆる領域で世界秩序の行方を左右する明確な「大国」(グローバルパワー)である。一方、日本はその範疇には属していない。
「米中日同列」というメディアの錯覚
かつて中曽根康弘元首相が位置づけたように、日本は核を持たない「非核中級国家(ミドルパワー)」であり、その立場は過去も現在も変わっていない。それにもかかわらず、国内では日本を無意識のうちに米中と同格の存在として扱う言説が、なお根強く残っている。
この「大国日本」という虚像は、高度経済成長期から世界第2位のGDP(国内総生産)を誇った時代の成功体験に深く根差している。しかし、現実と乖離した自己認識は、ときに外交や安全保障政策の判断を誤らせる。大国意識に突き動かされた政策は、国内向けの自己満足にとどまるならまだしも、国家全体を危うい方向へ導きかねない。
現実を直視するためには、感情ではなく数字を見る必要がある。1980年、日本の名目GDP(国内総生産)は中国の約4倍に達していた。バブル経済の絶頂期である90年には、その差は約10倍にまで拡大した。中国の人口が日本の約10倍であることを考えれば、当時の日本人1人当たりのGDPは、中国人100人分に相当する計算になる。この圧倒的な経済格差が、日本社会に強固な「大国意識」を刻み込んだ。
しかし、21世紀に入ると状況は一変する。中国経済の急成長により日中のGDP比は再び4倍程度に縮小し、10年にはついに逆転された。現在では、中国のGDPは日本の約5倍に達している。わずか40年の間に、日本は「10倍の差で中国を引き離していた側」から、「5倍の差をつけられる側」へと立場を大きく変えたのである。
なお、日本は中国に抜かれるまで、長らく世界第2位の経済大国と位置づけられてきた。しかし、26年にはGDPでインドに抜かれ、世界5位へと後退する見通しである。
軍事面でも日中の差は明白だ。中国の国防費は25年時点で、日本の防衛予算の4倍以上に上る。しかも、中国が公表している国防費は、実際の軍事支出の一部にすぎないとの見方が根強い。人員面でも、中国人民解放軍が約200万人規模の現役兵力を有するのに対し、自衛隊は現員で約22万人にとどまる。
また、中国は核戦力の増強を急速に進めている。25年9月に北京で行われた軍事パレードでは、地上発射型大陸間弾道ミサイル(ICBM)、潜水艦発射型大陸間弾道ミサイル(SLBM)、空中発射弾道ミサイル(ALBM)といった、核弾頭搭載が可能な陸海空の「核の三本柱」を内外に誇示した。一方、日本は非核三原則を堅持しており、核戦力という選択肢を持たない。
こうした圧倒的な国力差を直視せず、国の指導者が軍事的なパワーゲームの文脈で中国をわざわざ刺激するような言動を取ることは、戦略的合理性を欠いた危険な行為と言わざるをえない。


関連サイト:中国は涙目?「レアアース輸出規制」で日本勝利と浮かれる人が繰り返す15年前の大失敗  こちら
「自国ファースト報道」とは真逆の言説に、気分が暗くなった人もいるだろう。こんな記事を書くライターは「親中」や「反日」に違いないと憎悪が込み上げた人もおられるかもしれない。

 ただ、筆者がこのような話をしているのは「日本サゲ」をしたいからではなく、日本がこの問題を乗り越えるためには、これくらいシビアな視点も必要だと思っているからだ。

 先の戦争後、アメリカ側による日本の敗因分析にもあるが、我々は「敵」を過小評価する癖がある。多くの日本人が口にしないが、心のどこかで中国の技術力や産業を「下」に見ている。

 しかし、中国の都市部の発展やハイテク分野の最新技術を見たら、もう日本が抜かれているのは明らかだ。まず、この厳しい現実を直視することから始めなくては、本当の意味での日本の発展もない。

 レアアースに関しても、これを中東の石油のような「戦略資源」にしていくという方針は、1980年代の最高指導者・鄧小平氏が示している。

 今の中国が好き勝手に振る舞えるのは、ハイテク産業が隆盛となれば、この資源と精製を支配した国が世界を支配するという長期的ビジョンに沿っている。つまり、非常に悔しい話ではあるが、中国は半世紀前に「先手」を打っていたのだ。

 では翻って我々はどうか。1980年代に「世界一のものづくり大国」と胸を張っていたとき、レアアース確保のためにどれだけ動いたのか。15年前、「オールジャパンで中国依存を減らした」と勝利に酔いしれた後、中国の「レアアース精製支配」を防ぐために何をしたのか。

 もちろん、2010年に89.8%だった依存度を、2024年に62.9%まで減らしたというのはオールジャパンの努力でありそれ自体は素晴らしい。しかし、昨年秋に重希土をオーストラリアから初輸入したり、海底6000メートルのレアアースを調査したくらいで「先手を打った」などと浮かれるのは、さすがに平和ボケがすぎる。






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Last updated  2026.01.19 08:00:13
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