東方見雲録

東方見雲録

2026.02.15
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カテゴリ: まちづくり
不偏的な複数の正義の存立可能性についてセンの挙げている「三人の子どもと笛」の例は示唆に富む。

 アン、ボブ、カーラの三人が一本の笛を取り合って争っている。

「誰であれ、その物から最大の喜びを引き出すことのできる者にその物を与えるべきである」という理論は不偏的である。笛を吹くことができるのがアンだけだとすると(他の二人はそれを認めている)、アンが笛を取るのが正しい。
「誰であれ、経済的格差が最も小さくなるような者にその物を与えるべきである」という理論は不偏的である。三人のうち最も貧しいのがボブだとすると(他の二人はそれを認めている)、ボブが笛を取るのが正しい。
「誰であれ、労働を注ぎ込んでその物を作った者がその物を取るべきである」という理論は不偏的である。その笛を作ったのがカーラだとすると(他の二人はそれを認めている)、カーラが笛を取るのが正しい。
 アンだけが笛を吹けること、ボブが最も貧しいこと、カーラが笛を作ったこと、そして笛の所有が望ましいことであることについて、当事者に意見の相違はない。そして三つの理論はいずれも、誰と誰の立場が入れ替わったとしても適用可能であるから、不偏的である。以上の条件が揃っているにもかかわらず、この事例では紛争を解決できない。
引用サイト:正義のアイデア こちら

ルールと現実
センはインドの古い言葉を使って、正義には二つの側面があると言いました。


組織のルールや法律が正しく整っていること

ニヤーヤ (Nyaya)
人々が実際にどんな生活を送れているかという「現実」

例えば、法律(ニティ)で「全員に教育を受ける権利がある」と決まっていても、実際には貧しくて学校に行けない子がたくさんいるなら、それは正義(ニヤーヤ)が実現しているとは言えません。

センは、ルールを整えること以上に、人々の生活が実際にどうなっているかを重視すべきだと説いています。
・・・・
センは、正義を測る基準として所得(お金)ではなく、ケイパビリティという考え方を提唱しました。

これは、その人が自分が価値があると思う生活を、実際に送ることができる自由(能力)のことです。

例えば、同じ1万円を持っていても、体が健康な人と、車椅子が必要な人では、そのお金でできること(移動の自由など)の範囲が違います。

「みんなに同じお金を配る」のが正義ではなく、一人ひとりが自分の人生を自由に選べる状態(ケイパビリティ)を広げていくことこそが、本当の正義への道だとセンは考えました。

民主主義は話し合いのためにある


彼の有名な研究に「自由な報道や野党がある民主主義の国では、一度も大規模な飢饉(ききん)が起きたことがない」というものがあります。

なぜなら、困っている人の声がニュースになり、国民が議論し、政府が批判される仕組みがあれば、政府は急いで対策を打たざるを得ないからです。

つまり、みんなで自由に話し合い、不正を指摘し合うことが、最悪の不正を防ぐ最大の武器になるのです。
引用サイト:「正解」がなくても、世界は変えられる。ノーベル賞学者アマルティア・センが教える「正義のアイデア」 こちら

「自由」とは生活、人生における選択肢の広さのことである

ex.たとえば政治参加するためには、投票の権利を持つことだけでなく政治の知識が必要
「自由」の範囲を公平にするためには、「財」を活用できるための、教養や知識などの「潜在能力(ケイパビリティ)」を高めることが必要




人生や生活における選択肢の広さ(自由)は、持っている財だけでなくそれを活用する潜在能力(ケイパビリティ)によっても決まる
財を提供するだけで「あとは自己責任」にしてしまうと、自由を実現できない人々が生まれる
結果の平等は目指さないが、政府はケイパビリティにもコミットすることが大事
引用サイト:センのケイパビリティとは こちら

関連サイト:潜在能力(Capability)から考える新しい豊かさ こちら
GDP指標の限界
国の豊かさを測る指標としてよく使われるGDP(国内総生産)ですが、これは経済活動の総量を示すだけで、個々人の生活の質や自由度を必ずしも反映しません。GDPが高くても、一部の社会集団が深刻な貧困に苦しむ国は多く存在します。
センは、こうした「数値指標の偏重」が、真の意味での豊かさや不平等の深刻度を見落とす原因になると警鐘を鳴らしました。

所得指標の限界
個人レベルでも、所得(収入)だけでは豊かさを正確に測ることは難しいとされます。たとえ同じ収入であっても、医療や教育インフラが整った地域に住む人と、整備されていない地域に住む人とでは、実際に得られるケイパビリティ(潜在能力)に大きな差が生まれるからです。
こうした状況を把握するために、「潜在能力としての豊かさ」を評価することが重要だと、ケイパビリティ理論は訴えます。

ケイパビリティ理論が重視する「質」の次元
ケイパビリティ理論は、「人々が何を実際に選び、どのように行動できるか」という質的な側面を強調します。たとえば、「健康状態」「教育の機会」「社会参加の自由」など、多元的かつ多次元的な豊かさを評価する視点が不可欠だというわけです。
これは地域や文化、個人の価値観によって重要とされる活動が異なることも踏まえ、一律の数値だけで測れない多様性を尊重しようとするアプローチでもあります。

関連日記:2024.10.24の日記  GDPは時代遅れ ブループラネット賞   こちら
関連日記:2026.02.14の日記  オストロムの原則    こちら

参考サイト:力は正義なり   こちら
参考サイト:力による平和   こちら





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Last updated  2026.02.15 21:10:27
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