東方見雲録

東方見雲録

2026.05.24
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カテゴリ: まちづくり
ブルームバーグのインタビュー記事が日本建築界に一石を投じた。「建築界のノーベル賞」こと2024年プリツカー賞受賞者・山本理顕氏が、日本外国特派員協会での講演で、東京の再開発を「富裕層、より正確には新自由主義者がつくった植民地」 と断じたのだ。

山本氏は開発そのものを否定しているわけではない。「ディベロッパーは必要だ」と前置きした上で、問題は「最近の東京で推進されている大型プロジェクトの性格」 だと指摘する。特に標的となったのが、森ビルが六本木から麻布にかけて造成した「ヒルズ」シリーズだ。ショッピング・業務・居住機能を一体化したこれらの施設は、外形上は都市のランドマークのように見えるが、一般市民が日常的に利用するには難しい構造になっているという。
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山本理顕が問う「建築家の役割」と「公共性の再建」

ここまで見てきたように、山本氏の批判は単なる「開発反対」ではない。彼自身、「ディベロッパーは必要だ」と認めている。

では、何が問題なのか。それは、「誰のためのまちづくりか」という根本的な問いが置き去りにされていることだ。

山本氏の代表作に、広島県の消防署がある。透明な外装にガラス製ルーバーを用い、地域住民が消防士の日常活動や訓練を見られるようにした建物だ。また現在は、カラカスのスラム街の再生に取り組み、コミュニティの生活様式を維持する方法を模索している。

この姿勢に一貫しているのは、「建築はコミュニティのためにある」という信念だ。

山本氏は言う。「デベロッパーが来てすべての土地を買い占め、さらに別の『ヒルズ』が反復的に建つだろう。専門家が前面に立ち、東京の未来をいかに設計するかについて社会的合意を形成すべきだ」。




ブルームバーグのインタビューで山本理顕氏が放った言葉は、建築界の内輪の議論にとどまらず、都市に生きるすべての市民に向けられた公共哲学の問いだ。

データが示すように、東京は確かに変貌している。タワーマンションが立ち並び、大規模オフィスが供給され、歴史ある街並みが「高級複合施設」に置き換わっていく。その結果、都市は「富裕層の植民地」と化し、一般市民が日常的に使える空間は減少している。

一方で、新宿駅前の「空白地帯」や神宮外苑の反対運動が示すように、従来型の再開発モデルは行き詰まりを見せ始めている。建設コストの高騰、人材不足、地権者の権利意識向上、行政の規制強化─これらの構造的要因は、私たちに「開発のあり方そのもの」を再考する時間的猶予を与えているのかもしれない。

山本氏の問いかけは、私たち一人ひとりにも向けられている。「専門家」と呼ばれる人々だけに委ねるのではなく、市民として都市の未来をどう設計するか、社会的合意を形成すべき時が来ているのではないか。

私達は、第二の「何とかヒルズ」がまた建つのを見届けるだけの市民で終わるのか。それとも、真に公共的な、コミュニティのための都市を構想する当事者になるのか?
引用サイト: こちら

関連サイト:建築家・山本理顕が、名指しで批判した隈研吾と激突対談 こちら

木造都市の経済圏
 山本 大規模な再開発が行われると、それをきっかけに経済も動く。こう言うと開発によるお金儲けを批判していると思われるかもしれませんが、別に私は都市開発で経済活動を行うなとは言っていません。昔からベネチアにしろパリにしろ、都市開発こそ経済活動の中心です。未来のためにも停滞していいわけでなく、経済を成長させるためには都市改革は常に必要です。

 ただ、そこで生まれた利潤を都市に住むコミュニティーの人々に還元する必要がある。原研時代に私たちが世界各地を実際に訪ねて行った集落調査でも、生活者中心に経済活動をすることで多くの都市が形作られてきた様子が明らかになりました。日本でも京都などがそうですが、律令制の中国の影響を受けて平らな場所に格子状、つまりグリッド状の都市が設計された。それはそこで働く職人や商人にとってとても効率の良い都市だったのです。住居と職能が近接しながら同じ区域で効率的に生産性を上げていた。住民自治もしっかり確立され、各々の都市が小さな経済圏を確立していたのです。

 隈 日本がその経済圏を維持できたのは木造建築であったことも大きかったでしょう。木造は色んな意味ですごく「造りやすい」。時代の社会経済や環境にあわせて柔軟に形を変えられました。また、改築しやすいだけでなく、寸法も材料となる木の大きさに制約されるから、コンクリートみたいに100メーター級のタワーは造れないかわりに、必然的に道も建築もヒューマンスケールになっていく。日本の都市に漂うある種の人間らしさ、親密さのような雰囲気は、木造であることによって担保されていました。鎖国の時代もあって別の資材が長く輸入されず、自分たちで調達できる材料で町を形成していたのです。



 隈 ですね。石で造ろうと思えばできたと思います。でも西洋のように道をバンと通して都市をつくり上げるのではなく、木という素材を大事にしていれば町という空間が自然と保てることを日本人は知っていた。山林の多い日本は消費しながら植林することで山林も守れるし。持続可能な循環システムの重要性が日本人の肌身に染みていて、戦前までは木造の町並みがもつ世界に類のない独特の趣が色濃くありました。

 山本 米軍によってそんな日本の伝統的な都市は隅々まで壊され、伝統的な経済システムも破壊された。アメリカをモデルとする新たな都市は経済成長に大いに貢献しましたが、逆に自然を破壊するような都市経済システムになってしまったのです。

 町と経済、そして町と都市計画は非常に密接な関係がある。にもかかわらず、今、問題なのはディベロッパーが町を壊してそこでの利益を自分たちで独占していることです。原研究室があった六本木も、六本木ヒルズのぶっといビルが建って、今では景観が全く変わってしまいました。

関連日記:2025.09.29の日記 山本理顕の代表作   こちら
関連日記:2025.03.16の日記 東京をリデザインする   こちら



引用サイト: こちら





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Last updated  2026.05.24 08:00:06
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