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年末、知人より段ボール箱にて本が送られてくる。ここ最近に読んだ本を送るよ、というのである。ありがたいことだ。箱の中には、荒川洋治、色川武大、宮本常一、田山花袋、室生犀星、志賀直哉、町田康、梅崎春生、三木卓、吉田修一、それに姜戎という中国の作家のものもあった。この人は荒川洋治ファンで、「荒川洋治の本だけ読んだらもどして」と書かれた原稿用紙がメモ代わりに入っていた。人が選ぶ本というのはつくづく面白いと思う。本を送ってくれた人は私よりたぶん10歳ほど年長だ。信州にある大学のたしか土木科を出ている。それから紆余曲折を経て、いまでは専門誌の編集長のような仕事をしている。その雑誌は技術系である。付き合っていると、この人は、人と人をつなぐような仕事をよくする。気がつくと人の懐にすいっとはいっていく。そうしていつの間にか原稿を書かせてしまう。まあいい。それにしてもこの作家の選び方はどう言えばいいだろう。一見、なんの脈絡もないけれど、どこかで筋が通っているようにもみえる。
2009年01月31日
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デニス・ルヘインの『運命の日』を読んでいた頃に大統領の就任式の様子がテレビから流れる、そんなことがあって、考えされられた。1910年代のアメリカの労働争議、これに関わる白人警官と、成り行きで殺人を犯すことになった黒人青年の物語、とひとくくりにするのもなんだけれど。文学的修辞おおありの文体がちょっと鼻についたりもするのだが、最後まで読ませた。この人の力量は好き嫌いはともあれ、間違いがない。まだ若かりしベーブ・ルースが遠征移動中の列車故障で、ふらり車両を離れる。ベースボールをしているに違いない音に導かれるようにして林を抜けると、そこでは黒人達がゲームに興じている。ここで示されるのどかな風景がベーブ・ルースと、その後にやってきた白人選手達の「参加」で歪んでいく様子を描きだす冒頭の章は短編小説のようで、秀逸だ。それはともかくこの小説で描かれる貧富の格差、そして人種差別は圧倒的なものがあり、2009年に黒人の大統領が誕生することにつながる時間の流れは、海の向こうのことと言っても感慨深い。テレビ映像は編集されているのだし、そのことを頭にいれて考えなければならないにしても、たとえばアメリカからの映像に涙するパリの黒人老婦人の涙、などをここ日本にいて見ている自分もふとぼんやりとしてしまうのだ。正月には韓国歴史ドラマ『朱蒙』を見ていた。ただそのまま楽しめる作品だけれど、あれほどまでに本国で支持されたのは、漢の支配を打ち破り朝鮮民族の国家を打ち立てようとする主人公に、つねに他国の干渉を受け続けてきた民族の歴史的な記憶が投影されているからに違いない。そのように考えれば、ひるがえって「私」のなかに埋め込まれるようにしてある記憶はどのようなものなのか。電車の行き帰りには、大切な人にいただいた鶴見俊輔の『悼詞』をぽつりぽつりと読んでいる。黒川創氏が編んだ、鶴見俊輔が折々に書いた追悼文集である。先日、知人にその話をしたならば、その人もこれを読んでいて、「鶴見さんの日本語は、普通の人とは別のところから生まれるようだ。他の誰のものでもなく」という。鶴見さんのこの本も、深く「記憶」にかかわるものだ。巻頭の詩の一部。人は死ぬからえらいどの人も死ぬからえらい。
2009年01月22日
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