草加の爺の親世代へ対するボヤキ

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2017年01月09日
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第 百十九 回 目


 今日は落語や講談、浪曲などで大評判だった「庶民のヒーロー」の左 甚五郎の

エピソードを取り上げて見たいと思います。

           「 ねずみ 」

 奥州の仙台の宿屋でのお話です。或る旅人が、客引きに出ていた小さな少年の頼みで

鼠屋という宿に、宿泊することになったのですが、この宿屋が非常に貧乏で、布団も粗末ならば

食事に出すお米さえ、碌にないという有様。

 旅人が理由をきいてみると、誠に気の毒としか言いようのない事情でした。

 この宿の主人は元、向かいの立派な宿屋・虎屋の大旦那だったのですが、先妻が病で



なって病身の亭主を追い出してしまった。仕方なく主人は、幼い子供を連れて、道の

向こう側に在った物置小屋を改造して、新しい宿として出直しを図ったのですが、なかなか

上手くいかない。

 この話を聞いた旅人は、自分の正体を明かした。あの有名な彫り物の巨匠・左 甚五郎で

あると。そして、庭の片隅に置かれていた木片で、小さなねずみを彫り出して宿の主人に

与えると、立ち去って行った。

 さて、甚五郎に言われた通りに、店先に飾ったねずみの彫り物が、日暮れになると本物

同様に、元気に動き出すというので、たちまちに周辺の評判を呼び、鼠屋には次々と客が

押し寄せ、大繁盛するようになった。それに引き比べて、虎屋は元の主人を騙して身代を

乗っ取った悪人だとの評判が、人々の間に広まり、客足が激減してしまった。

 そこで虎屋では、対抗策をひねり出しました。仙台に住む、大巨匠と自称する彫り物の



大金を出して注文を出したのですが、師匠という人がペテン師で、弟子の一人に注文の

彫り物を作らせ、大金だけ自分の懐に入れてしまった。

 虎屋では、虎の置物が出来上がってきたので、宿の店の前に、鼠屋のねずみを睨みつける

ような格好で、飾り付けたのです。

 すると、その日から鼠屋のねずみの彫り物が、全く動かなくなってしまった。それで、あれほど



遣って甚五郎を探し出し、これこれだと事情を伝えます。

 やがて、甚五郎がやって来ました。聞いた通りに元気だったねずみは、ぴくりとも動きません。

 甚五郎は言いました。「これ、ねずみよ。わしは腕によりをかけて、お前を彫り上げたのだ

ぞ。どうして、自分に自信が持てなくなってしまったのだ」

 そして、虎屋の虎の飾り物を改めて、見てみました。それは、実にくだらない下手な作品です。

虎を証明する額の王の字のシワも、施されてはいないという、お粗末極まりない代物。

 甚五郎は更にねずみに言います、「なんだ、あんなボンクラな虎に、怯えるなどと、お前は

全く見る目がないな」と。

 すると、ねずみがただ一言、「えっ、あれは虎だったのですか、猫だとばかり思ってた」。

 えっ、お粗末さまでした ― と言うのが落語のオチでありましたよ。


 世の中は強い者が勝ち、勝った者が「正義」なのでありましたね。しかし、庶民感情と言う

「声なき神の声」はそれでは納得しません、いや、絶対に承知出来ないのであります。

 正義は、やはり最後には勝って欲しいのでありますよ、何が何でも…。

 そこで、神信心に向かう場合もあるし、自分たちの心の底からの願望を、架空の、フィクション

のヒーロー達に託すことになる。その一人が、伝説の 飛騨の匠・名工・左 甚五郎 ですね。

 現代でも、俺々詐欺などが横行して、実に醜悪極まりない、嫌な世の中を (それにつけても

平和な日本、世界一安全な日本社会、などと自画自賛する御仁が数多く見られますが、本当に

あなたはご自分の目で、自身の頭で現実を直視しているのですかね? と、皮肉の一つも

投げかけずにはいられない、実に、嫌な、嫌な、世の中でありますね、困ったことに… )

象徴しているかの様な、世相でありますよ。

 大泥棒の石川五右衛門が、五右衛門風呂で責め殺された際に、「石川や、浜の真砂は尽きるとも

世に泥棒(ぬすっと)の種は、尽きまじ」と言い残したと伝えられますが、泥棒どころか、悪党の種は

益々、世に蔓延る「悪貨は良貨を駆逐する」最悪の事態は、急坂を駆け下るが如き観を呈して、

とどまるところを知らぬ気、なのですから手の施しようも無い、実際のところ。

 昔は「衣食足って、礼節を知る」、つまり、つまり物質的な条件が満足に整えば、人間らしく

立派な行動が伴うようになれる、と教えれば事が済んでいた。ところが、現代では、物質的には

昔と比べて格段に豊かになったと、誰もが認める社会が実現している筈、なのにもかかわらず、

心の、精神的な貧しさや、メンタルなプア・貧困現象が、顕在化して久しいのです。何をか

言わんやでありますね、戦争や原子力の脅威という 前門の虎 にばかり人々が気を取られ

ている隙に乗じて、人間精神の病、心の貧困、メンタルイルネスの悪化が嵩じに、嵩じるという

後門の狼が、恐ろしい牙を剥いて、私たちに迫って来ているではあるませんか。呉呉も、ご用心

ご用心。老婆心ながら、草加の爺も世の 名も無き人々の良心 に訴えかけずにはいられません。

 お願いですから、無辜の民として、自分たちの孫子の為に、何がしかの貢献を、焼け石の水

かも知れない、ささやかな努力を、怠らないで下さい。政治に期待できない大切な、心の問題

をば、大切に考え、今すぐに、ご自分の出来る範囲内で、例えば可能な限り周囲には、明るく

印象の良い表情をむける、とかの行動を、心がけて頂きたい。そのほんの僅かな個人の善意が

人間の社会を、根底の、ギリギリの所で支えている事を、固く信じて…。お願いいたします。





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最終更新日  2017年01月09日 14時08分38秒
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