草加の爺の親世代へ対するボヤキ

草加の爺の親世代へ対するボヤキ

PR

×

プロフィール

草加の爺(じじ)

草加の爺(じじ)

サイド自由欄

カレンダー

フリーページ

2017年05月20日
XML
カテゴリ: カテゴリ未分類

第 百四十四 回 目

 今回は「狂言」を取り上げます。狂言はご承知の如くに能・謡曲などとともに、室町時代、今から

およそ六百年ほど前に成立したとされています。但し、私たちの目指している「読み聞かせの会」の

延長線上でのパフォーマンスとしては、専門的であり過ぎ、馴染みにくい点が多々ありますので、おもい

切った翻案なり、現代化を施した、新しいジャンルを創設する気組と心意気で、これに当たりたいと

考えております。現代で申せば、掛け合い漫才とかコント、ナンセンス・コメディーの様な仕上がりに

なると想定しておりますよ。ぞうぞ、ご期待下さいませ。


         「 蚊 ずもう 」 ( 狂言の 蚊相撲 より )

   場所と時代 : 中世の日本

   人 物 : 大名 、 太郎冠者(大名の召使) 、 蚊の精(一種の化物) 、ナレーター

 大名(だいみょう)とその家来の太郎冠者(たろう かじゃ)が登場する。

 ナレーター「 舞台に登場したのは、この周辺では誰からも知られた、有名なお殿様の大名と

       その下級の家来である 」

 大名「世の中が平和になり、実に有難い時代が到来したので、昨今では各地方で格闘技の相撲の大会

    が、盛大に挙行されている。それで、拙者も早速に多くの相撲取りを召抱えようと思う。先ず

    太郎冠者を呼び出して、命令したいと考える。ヤイヤイ、たろうかじゃ、太郎冠者はいないか」

 太郎「(立ち上がり)はァー」

 大名「そこに、居ったか」

 太郎「おん前に、居りまする」

 大名「おお、其処に居ったか。思いの外に早かったな。まず、立て」

 太郎「かしこまりました」

 大名「お前を呼び出したのは、特別の事でもない。戦乱の無い平和な時代を迎えて、世の中では

   相撲の競技会が盛んに行われているではないか」

 太郎「仰せの通りで御座います。世の中では昨今、相撲大会が盛んに行われておりまする」

 大名「それそれ、その事につき、拙者も有能な相撲取りを大勢召抱えたいと考えたが、どうだろうか」

 太郎「御命令がない場合には、私の方から御提案申し上げようと考えておりました。大変に結構な

   お考えかと存じまする」

 大名「それで、相撲取りは何人くらい召抱えたら良いであろうかな?」

 太郎「それは御主人様のお考え次第で御座いましょう」

 大名「うーん、拙者の考え次第だと申すか?」

 太郎「御意(ぎょい)にござりまする」

 大名「それならば、いっそ大きな大名らしく最初から、大勢を召抱えることにしようか」

 太郎「結構で御座いまする。して、何人ほどに致しましょうか?」

 大名「そうじゃな、あれ、あれ、あれ程に致そうか…」

 太郎「ハァ、何人ほどで御座いましょうか?」

 大名「エーイ、三千人程も採用いたそうか」

 太郎「それでは、余りにも数が多すぎるでありましょう」

 大名「それでは、五百人ではどうじゃ」

 太郎「それでも、経費が嵩(かさ)んで賄い切れないで御座いましょう」

 大名「経費というのは、召抱えた者達の食事のかかりの事を言うのか?」

 太郎「左様で…」

 大名「それならば、彼らには水だけを飲ませておけ」

 太郎「いや、申し、人間が水ばかり飲んで、命が保てるものでは御座いますまい」

 大名「それでは人数を減らそう」

 太郎「それが宜しでしょう。そして何名ほどに?」

 大名「エーイ、二人置こうか…」

 太郎「減らしついでに、もう一人減らすのが良いでしょう」

 大名「お前を入れて、都合二人と言うことじゃよ」

 太郎「それならば、宜しいでしょう」

 大名「ご苦労であるが、これから京の都に出入りする街道筋に出向いて、相撲取りを召抱えて来てく          

     れ」
 太郎「畏まりました」、大名「エーイ」、太郎「ハアー」、大名「エーイ」、太郎「ハアー」

 大名「もう戻ったか」、太郎「いえいえ、まだ少しも動いては居りませぬ」、大名「お前に油断を

させないように、申しただけじゃ。急げ、急げ」、太郎「畏まって御座る」、大名「早く戻れよ」、

太郎「心得ました」

 太郎「さてさて、急な用事を言いつけられた。今から街道筋に参って、相撲取りを召抱えて来いとの

    ご命令であるから、急いで参ろう。これまでは実際、某(それがし)一人であったから、大変に

    苦労致した。今度、新人を採用したなら、あれこれと彼に命じて、ゆっくりと休息を取ることに

    致そう」

 ナレーター「此処は京の都に通じる大きな街道の、出入り口近い場所。これから登場するのは、

普通の人間ではなくて、蚊の精、つまり虫が人間の姿に化けた変化(へんげ)の者である」

 蚊の精「我は、東海道の宿駅・江州守山(ごうしゅうもりやま)に住む者である。平和な時代を迎えて

     京都では相撲が流行していると聞くので、相撲取りに化けて都に上り、人間に近づき、思う

     存分に血を吸ってやろうと計画している。先ず、そろりそろりと参ろうか」

 太郎「(蚊の姿を見て)いや、あそこから非常に奇妙な、風変わりな者がやって来る。急いで言葉を掛け

    てみよう。いや、のうのう、申しあなた」

 蚊「ヤアヤア、私のことで御座いますか?」

 太郎「いかにも、あなたの事だ。突然の声掛けではあるが、あなたは何処から来て、何処へ行かれる

    つもりなのじゃ」

 蚊「私は相撲取りで、奉公口を探しに京都に行くところです」

 太郎「それは好都合であった。採用いたそうではないか」

 蚊「あなたが、ですか?」

 太郎「不審なのはもっとものこと。拙者が抱えるのではなく、ご主人様が採用致すのだ。ご主人は

    非常に有力な大名で、今度相撲取りを大勢召抱えられるにつき、お前さんが望みとあらば、

    紹介いたして進ぜよう」

 蚊「それは有難い。是非にご紹介を願いたい」

 太郎「左様か。それでは早速、一緒に付いて来てくれないか」、蚊「それでは、早速に参りましょ

う」、太郎「(歩き出し)さあさあ、いらっしゃい、いらっしゃい」、蚊「(後に続き)参ります、参りま

す」、太郎「さて、この様に突然に声を掛けて、同道致すのも前世からの縁というものであろうか」、

蚊「左様で。この様に参りますからには、あなた様を親同然と頼りに致しますので、万事良きように

引き回して下されい」、太郎「心得た。万事に抜かりなく致そう。(立ち止まり)所で、あんたの出身地

はどちらなのかな」、蚊「江州守山です」、太郎「守山は相撲所だと噂に聞いている。さあさあ、行こう

、行こう」、蚊「参りましょう、参りましょう」

 ナレーター「やがて二人は元の大名の屋敷に戻って来た」

 太郎「いや、申し、ご主人様はいらっしゃいますか。太郎冠者が戻りました」

 大名「(立ち)声が致す。太郎冠者、戻ったか戻ったか」、太郎「只今、戻りました」、大名「ヤレヤレ

大儀であった。そして、言い付けた相撲の者を召抱えて参ったか」、太郎「はい、仰せの如くに」、

大名「でかした、主人は大名だと申し聞かせたか」、太郎「確かに、非常に有力な大名様だと伝えまし

た」、大名「よく言った。そして、その者は何処に居るか」、太郎「まだ門の外に待たせております

る」、大名「なんと、まだ門外にいるだと。そうか、コレコレ、総じて初めが肝心だと心得よ。だから

そやつが聞くように大きな声で、大仰な事柄を言おうと思う。お前も又大袈裟に返事を致せ、良いか」、

太郎「承知致しました」、大名「(殊更に大きな声を出して)コレコレ太郎冠者、腰掛け・床机(しょうぎ)

を持って来い」、太郎「ハアー、お床机で御座います」、大名「太郎冠者、これへ出ろ」、太郎「畏まっ

てござる」、大名「(小声で)どうだ、いまの遣り取りはあいつに聞こえたたであろうか」、太郎「大層

大きなお声でありましたので、きっと聞こえましたでしょう」、大名「そいつに、こう言え。新参の者

よ、遠い所をご苦労であった。ご主人様におかれては偶々(たまたま)ご機嫌が麗しく、奥の間から表の方

にご出御(しゅつぎょ)遊ばされた。中庭の白洲(しらす)に出向いて、ご挨拶の対面を致せ。その際に

御主人さまの視線が向いたならば、御意に叶ったのだと思え。そうでない場合には、五日でも十日でも

逗留する必要がある。そう言って、汝の考えとして恐れさせておけ」

  ナレーター「太郎冠者は屋敷の門の外に出て来た」

 太郎「ノウノウ、居るかな」、蚊「此処に控えておりました」、太郎「どうだ、今のお声を聞いたであ

ろう」、蚊「確かに、お聞きいたしましたが、あのお声はどなた様で御座いましょうか?」、太郎「

あれが御主人様のお声である」、蚊「先ずお声からして、大層なお大名とお聞きいたしました」、太郎「

大名仲間でも非常に有力なお方でいらせられる。さて、ご主人様におかせられては、幸いなことに奥の間

から表の方に、御機嫌宜しい状態でお出ましになられた。お前は直ぐに中庭のお白洲に行き、ご主人様の

御目通りを致すがよい。それも御目が、視線が向いた際には即座に、採用が決まる。しかし、そうでない

場合には五日も十日も逗留する必要がある。そのように心得ておけ」、蚊「何とぞ、お目が向くように

お願い申し上げます」、太郎「そのままずっと、奥の方にお入りなさい」、蚊「承知致しました」と二人

は屋敷の中に入る。

 ナレーター「この様子を覗っていた大名が、頃合を見計らって声を掛けた」

 大名「ヤイヤイ、誰か居ないか」、太郎「ハアー」、大名「表に居る侍共に言え、只何もせずにいない

で、弓矢の手入れなどをしろ、と」、太郎「畏まりました」、大名「それから、先日遠くから引き連れ

上らせて来た多くの馬を、全部厩(うまや)から引き出してお湯で洗ってやるように、命令せよ」、太郎「

承知致しました」、大名「(空を仰ぎ見て)ハハア、今日は良い天気であるな」、太郎「左様で御座います

ナ」、大名「夕方近くなったなら、皆が広場に出て来て蹴鞠の稽古をするであろうから、例の場所に打水

をさせ、掃除をさせるように、係りの者達に言いつけよ…」、太郎「新参の者で御座る(と、蚊の精を手

で指し示す)」

 ナレーター「大名の視線を感じた瞬間に、蚊は身を翻す如くに素早く、その場から退いている」

 大名「ヤイ太郎冠者、今のが、新参の者であるか?」、太郎「御意にござりまする」、大名「さてさて

珍奇な珍しい顔をしているな」、太郎「珍しい顔で御座います」、大名「あ奴が相撲を取るのか?」、

太郎「そのように申しております」、大名「それで、国は何処じゃと申しておるのか?」、太郎「江州

守山だと言っておりまする」、大名「ウーン、守山は相撲所と聞いておる。それならば、早速相撲ぶりが

みたいので、此処に出て来て、相撲を取れと命じよ」、太郎「畏まりました」とその場を退く。

 ナレーター「太郎冠者は新参の者を探し出して声を掛ける」

 太郎冠者「これこれ、ご主人様がすぐさまお前の相撲ぶりが見たいので、御前に出て相撲を取れと命令

されて居るぞ」、蚊「相撲の相手を与えて下さるように、お伝えください」、太郎「それは、もっともな

事である」と又大名の前に来て、「ハア、相手が欲しいと申しております」、大名「相手などいるもの

か、一人で取れと言え」、太郎「それでは、勝ち負けが分からないでしょう」、大名「なる程、勝ち負け

が分からないな。誰に相手をさせようか」、太郎「だれが良いでしょうか」、大名「風呂焚き係りの者は

どうじゃな」、太郎「あいつは年寄りですから、足に力が無く、ふらふらして相撲は無理でしょう」、

大名「なる程。それでは、誰にしようか?」、太郎「誰に致しましょうか」、大名「イヤ、誰彼と言って

いるよりも、汝が取れ」、太郎「私は一度も相撲を取ったことが御座いませんので…」、大名「ウーン、

取ったことがなくては、無理であるな。相撲は見たし、相手は無しか…。よしよし、拙者が相手をしよ

う」、太郎「アノ、あなた様がですか?」、大名「お前が不審に思うのはもっともだ。行って、こう言

え。相撲の者は沢山居るのだが、方々に使いに出していて、一人もこの場にいない。だから、座興の為に

ご主人様自身が相手をする。そのように伝えよ」、太郎「畏まりました」と、その場を去る。

 ナレーター「太郎冠者は主人の意向を新参の者に伝えた」

 太郎「(再び御前に出て)甚だ意外で、吃驚致しましたが、御主君様のご命令次第に致しましょうと、申

して居りまする」、大名「それでは相手をするというのであるな」、太郎「左様に御座いまする」、大名

「ヘエ、あいつの相撲の腕も大したものではないな。下手に相違ない」、太郎「何故、そうなのでござい

ましょうか?」、大名「ハテ、拙者を投げ捨てて、誰が給料を与えるであろう」、太郎「これは、ごもっ

ともで」、大名「そうではあるが、相撲が見たいので、どうしても取る。支度をして、此処に来いと言

え」、太郎「心得ました」と退く。

 ナレーター「この様な次第で、大名と蚊の精とが、太郎冠者の行司役で、相撲の取り組みをすることになった」


 これから以後は大名、太郎冠者、蚊の精の三者がパントマイム風に滑稽な演技を展開する。

大名は新参者と取り組むが、血を吸われて直ぐにフラフラになってしまう。それで、相手が「蚊」だと

見抜き、風を嫌う蚊の習性を考え、太郎冠者に大きな団扇(うちわ)で蚊を煽がせ、弱った相手から血を

吸い取る管(くだ)を抜き取ってしまう。最後は、フーフー、フーと元気のない悲鳴を挙げながら蚊の

退場で終わりとなる。






お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2017年05月20日 07時35分33秒
コメント(0) | コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: