草加の爺の親世代へ対するボヤキ

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2017年09月22日
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第 二百六十 回 目


 今回は、婆もの の会話劇で、「目には目を」を創作して御目に掛けたいと

思います。

 時と場所は現代の或る場所で、登場人物はババと中年の女性

 誰か人を待っているらしい中年の女性が、時折周囲に視線を向けながら立って

いる。そこへ急いでババ登場 ― 

 ババ 「これはこれは、大変お待たせして申し訳ありません」

 女性 「(ババを全く無視して、横を向いてしまう)」



 女性 「(無言のままで、ババを無視したまま、手振りであっちへ行けと示す)」

 ババ 「本当に、三時間もお待たせしたのでは、お怒りは無理もないことで」

 女性 「あッ。このクソ婆あ、とっとと消えてしまいな」

 ババ 「あーよかった、言葉が喋れるのですね」

 女性 「何だと、あー良かった、言葉が喋れるだって。ちょームカつくよ」

 ババ 「あの、私、佐藤さんから大切な品物をお預かりして来たのですが…」

 女性 「あれー、何だ。そうだったのですか。これは、これは、ご苦労様で

御座いました(手の裏を返したように態度が変化している)」

 ババ 「やっぱり佐藤さんが言っていたように、優しいお方だった。私は又

てっきり人違いをしてしまったかと」

 女性 「私ですよ、この私。間違いないのですから、早くその品物をこっちに



 ババ 「はぁー、何でしょうか一体、このお手々の意味は?」

 女性 「佐藤さん、あの爺さんから預かった物が有るのでしょ。それを早く

出しなさいと言うのですよ」

 ババ 「ああ、その事ですか。あなた様は急に優しい言葉を使ったかと思うと、

また急に乱暴な、邪険な態度をとる。私は根が臆病なものですから、高飛車な態度



ぞお手柔らかにお願い致したいものです」

 女性 「(精一杯のお愛想笑いを浮かべながら)これはこれは、私としたことが、

気持ちが急いているものだから、つい乱暴な言葉や態度になってしまって。本当に

御免なさい、優しいお婆さん」

 ババ 「いえいえ、そう素直に受け入れて頂くと、とても恐縮してしまいます。

貴女は私が考えていた程の悪人では、ないかもしれませんね、本当は」

 女性 「私が悪人ですって。誰がそんなことをお婆さんに言ったのですか、

この私が、悪人だなんて」

 ババ 「いえね、こうして目の前に貴女を置いて親しくお話をさせていただいて

いると、そんな考えは何処かに吹き飛んでしまうのですが、あの善人のお年寄り、

佐藤さんのお話を伺っていると、随分と酷いことをする人非人・冷血漢も、この

世の中には居るものだと、随分と腹が立ったのですが。全部が誤解だったと分かり

ました」

 女性 「(ええ、その通り、と大きく頷いた後で)所で、あれは、大切な品物は何

処ですか?お婆さんは手には何もお持ちでは無いようですが…」

 ババ 「(指で背中にしょっているランドセルの様なカバンを示して)ここに

入れてありますよ、何しろ大金ですからね」

 女性 「(ニンマリとして)お婆さん、ご苦労様でした。そのお金を早くこちらに

渡して下さい。後は私が良き様に取り計らいますからね」

 ババ 「ところが、そうは問屋が卸さないのですよ。(横を向いて独り言を言う)

この極悪人が、地獄に落ちろ!」

 女性 「極悪人って、一体誰のことですか、お婆さん」

 ババ 「こっちのことですよ、わたしゃそんな猫なで声には騙されませんよ。

ああ、胸糞が悪くなった、もう我慢の限界だわ」

 女性 「さっきから何を言っているのか、本当に理解に苦しんでしまう…。兎に

角、預かってきた物をこっちに寄越しなさい。それは私が受け取る権利のある物な

のだから」と、無理やりババからランドセルを奪い取ろうとする。それに抵抗しな

がら、

 ババ 「(首に巻いていたスカーフを手に取って)これを三回振って合図すると、

向こうに待機しているお巡りさんが、私を助けてくれる手筈になっているのです

よ…」

 その言葉を聴いて、忽ちに固まってしまう女性。

 女性 「お巡りがいる。やばいッ、いつの間にババア、じゃなかったお婆さん、

そんな準備がしてあったのですか、手回しよく」

 ババ 「悪質な詐欺だって、わたし佐藤さんのお話を聞き終わった瞬間に、ピン

と来たんですよ。第六感てやつですかね、ピンピーンとね」

 女性 「(警戒するように周囲を見回しながら)何処に居るのですか、お巡り、い

え、警察のお方は?」

 ババ 「それは言えませんよ、何しろあんたは質(たち)の悪い悪党ですからね。

人の善いご老人を色仕掛けで罠にかけて、大切な老後の生活資金を欺し取ろうと言

うのですからね」

 女性 「お婆さん、滅相もないことです。私が、この私が悪人だなんて、とんだ

誤解です。何かの間違いですよ、親切なお婆さん」

 ババ 「(デレデレとだらしなくニヤけてしまい)親切だなんて、そんな本当の

事を言われると、私、本当に困ってしまう…」

 女性 「ここはお互いに、一人の品位ある女性、つまり淑女・レディーとして

ゆっくりとお話し合いを致しましょうよ、ねっ、お婆さん」

 ババ 「はい、はい、はい。話し合いは大切ですからね。私にも異存はございま

せん、はい」

 女性 「お婆さんは私に対して何か大きな誤解をなさっている。そこを先ず

解決しておかないと、話が先に進みませんので…」

 ババ 「お言葉ですが、わたしゃ何も誤解などしておりませんよ。悪い事を

する酷い人間を 悪党 と呼んでいるだけのことですから」

 女性 「さあ、そこがそもそもの大間違いなので、私は世にも稀なほどの大善人

を自認する、大和撫子の代表の様な素晴らしい女性。まあ、謂わば真の意味のファ

ーストレディの見本そのもの」

 ババ 「(横を向いて、独り言の如くに言い放つ)大和撫子、ファーストレディ。

ふん、開いた口が塞がらないとはこの事だわ。全く世も末の末、呆れた悪の怪物が

出現したもんだ、こりゃ」

 女性 「これ、婆さん、じゃなかったお婆さん。誰のことを言っているのです

か、何か聞き捨てには出来ないセリフ、悪口雑言ですが…」

 ババ 「聞こえましたか、当然あんたのことですよ。当たり前でしょう」

 女性 「それじゃあ言わせてもらいますが、私は何も悪いことはしていません

よ、何も」

 ババ 「ふん、盗人猛々しいとはこの事だわ。全く呆れ返って、開いた口が塞が

らないよ」

 女性 「そんなに無責任なことを口からでまかせに言うのだったら、警察に名誉

毀損で訴えてやりますよ、聞き捨てにならない」

 ババ 「警察に訴える。寅さんだったら言ったでしょうよ、結構毛だらけ、猫

灰だらけってね」

 女性 「一体、何のことです。古臭いことを持ち出して…」

 ババ 「どうせ私は女の古くなった、成れの果ですから、言うことも古いです

よ。でもね、あんたの様な悪事だけは働いたためしが無いのが、自慢なのさ」

 女性 「言わせておけば付け上がって、もう我慢ができない」と握り拳を振り上

げて婆を打とうとする。ババはさっきのハンカチーフを相手の目の前に示し、

 ババ 「警察、警察。お巡りさんを呼ぶよ」

 女性 「(忽ちに固まってしまう)」

 ババ 「(勝ち誇った如くに)へん、どんなもんだい。因果応報ってね、悪いこと

をするということは、天に向って唾を吐きかけるような行為ですからね、結局は

自分の所に報いが来るのですよ。様(ざま)を見ろっ言うの」と、溜飲を下げたよう

なババに対して、歯噛みして悔しがる女性。

 ババ 「念の為に最後に教えてあげますが、お巡りさんの事以外は、全部嘘です

よ。詰まり、佐藤さんから大切な物を預かってなど来ていません。第一に、佐藤さ

ん自体があんたの話を信じてはいませんから。私は暇つぶしに、あんたをからかっ

てやっただけの事。あー、清々した」とババは意気揚々と退場。ギャフンとなる

女性。





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最終更新日  2017年09月22日 16時41分15秒
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