草加の爺の親世代へ対するボヤキ

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2025年11月12日
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第  二  幕

 ヘンリー・ハーコート・ライリー卿の診察室。ロンドンにある。朝。數週間後、ヘンリー卿だけが机に

向かっている。彼は電気のボタンを押した。女性秘書が予約ノートを手に入って来る。

ライリイ  今朝のこの三つの予約に関して、バラウェイさん、私はざっと自分の指示をお浚いしておき

たいので、お判りですね、勿論、面接を避けたのです。

女性秘書  畏まりましてございます、ヘンリー卿。最初の予約は十一時です。彼は小待合室に通して御

座います。そして、何時でも診察が可能です。

ライリー  直ぐに診察しよう、そして、二番目は。

女性秘書  二番目は別の部屋に案内してあります。いつも通りに彼女は十五分過ぎには到着していま



ライリイ  或いは、彼女は私を待たせても気にしないでしょうね。しかし、彼女は常に時間厳守です

ね。

女性秘書  彼女が到着した時には私は電話で話をしていたのです。彼女を待たせておきます、三度、合

図をなさるまで。

ライリイ  そして、三番目の患者は…。

女性秘書  三番目の患者さんは小待合室に案内します。そして私は彼女が到着したことをお知らせする

必要はありません。それから、合図が有りましたなら、他の患者達を外に案内して、彼等が家を後にし

た後だけに…。

ライリイ  大変に結構、バラウェイさん。今は、それで充分です。

女性秘書  ギブス氏がいらっしゃいました、ヘンリイ卿。

ライリイ  直接に中に入るよう伝えなさい。 (女性秘書は退場する)  (その直後にアレックスが入っ



アレックス  チェンバレンの予約は何時ですか。

ライリイ  十一時ですが…。普段と変わらない時刻です。それほど多くの時間は要りません。言ってく

ださいさあ、何か困難な事はありましたか。私が彼の担当をするのだと説得すのに。

アレックス  困難ですって! いいえ、ただ彼は予約の日を待つのに四日間もあるのがじれったいよう

でしたが。



のは、彼はあなたの判断を信用していますか。

アレックス  ええ、全面多岐に。それは僕が非常に知性的であるからではなくて、僕が非常な情報通で

あるからなのですよ。有能な医者をよく知っている種類の人物としてね。買い物に適した店を知っている

と同時にね。その上に、彼は自分の妻以外の者が推薦する医師なら、誰にでも診療を受けたいと思ってい

るのです。

ライリイ  私は既に彼女に私の名前を口にしないようにと強く念を押しておいたのです。

アレックス  あなたのいつもの先見の明で、彼は今や、全く意気揚々としている。何故なら妻を上手く

出し抜いたと思っているから。そして医師が彼をサナトリアムに送り込んだりしたら、そこは彼女が彼を

探し出せない場所なので、そうであれば、彼は信じている、彼女は深く後悔するだろうし、彼は自分の病

気を楽しめるのだと。

ライリイ  病気は彼に二重の意味の優先権を与える。詰まりは、自身から逃げるのと、妻をよりよくで

きる。

アレックス  彼の妻から逃げるのではないのですか。

ライリイ  彼は彼女から逃げたいとは欲していない。

アレックス  彼は今、自分のクラブに滞在している所です。

ライリイ  そうです、彼は其処から手紙を寄越しています。  (自宅用の電話が鳴る)もしもし、かれ

を通しなさい。

アレックス  あなたは多忙な朝をすごされるのですね。僕は補助階段を利用して外に出ますよ。そして

彼等が帰った時に戻ります。

ライリイ  そうです、彼等がいなくなってからです。 (アレックスは脇階段から退場する)  (エドワ

ードが女性秘書に案内され来る)

エドワード  ヘンリイ・ハーコートライリイ卿…。 (立ち止まり、相手を凝視する)

ライリイ  (書類から眼を離さずに) お早うございます、チェンバレンさん、どうぞ、お座りくださ

い、お手間は取らせませんよ。…、さてと、チェンバレンさん…?

エドワード  ドアを入る際に、あなたではないかとひらめくものがありました。でも、僕は別の兆候だ

と無視した。そう、僕はもっとよりよく事態を知るべきだったのです、あなたを知らない人間に勧められ

て此処に来る以前に。しかも、アレックスはこれにふさわしい人物ですからね。そして彼の名店の推薦は

いつだって的を射るものだった。お許し願えれば、彼は粗忽ものでもあるので、出来れば知りたいのです

が、…、何の役に立つでしょうか、直ちにお暇をしたいと思うのですが。

ライリイ  いいえ、宜しければ、座りなさい、チェンバレンさん。あなたは立ち去っては行かないので

す。そうしてどうぞお座りください。あなたはひとつ質問をすることになります。

エドワード  あなたが私の部屋に来た時には来客として妻から招待を受けていたのでしょうか。そう、

私は考えるのですがね。…、彼女はお見送りしたのでしょか。

ライリイ  私は招待されていたとは言えないのです。チェンバレン夫人は私が来るだろうとは知らなか

った。しかし私はあなたがあの場にいるだろうことはしっていましたし、誰々と一緒かも承知はしていた

のですよ。

エドワード  でも、家内とは面識があったのでしょう。

ライリイ  はい、その通りです。

エドワード  それじゃあ、これは罠なのだ!

ライリイ  罠などと言わないようにしましょう。しかし、仮に罠だったとしても、あなたはもう逃げら

れませんよ。そして、ですから…、お座りください。あなたはその椅子が快適な事を知るでしょうよ。

エドワード  あなたは知っていた、あなたに私が話をする前に、何が起こってしまっていたのです。

ライリイ  それはそれです、それは、それです。しかし、全てがよい都合に行っている。その質問はし

ばらくの間は忘れておきましょう。最初に、困難についてお話しください、私の職業的な意見を望んでい

る難問について。

エドワード  私は、家内を連れ戻した事であなたを非難したりはしない。そう思っている。あなたは私

を説得したがっているみたいですね、私は家内がいなくても上手くやっていけると。でも、ありのままを

知って貰いたい、私は何科の決断をする心理状態にはないことを。

ライリイ  もしも私があなたの奥さんを連れ戻して来なかったとして、チェンバレンさん、事態はより

よく運んでいたでしょうかね、今現在…。

エドワード  解りません、確信がない。事はむしろより悪化していたでしょう。

ライリイ  さらに事態は更に悪化していたかも知れない。あなたは三人の命を破滅させてしまったかも

知れない、その不決断によって。今はただ二人だけ…、その破滅から救い出せるチャンスを有している。

エドワード  あなたはまるで、私が行動できるかのように話されている。もし、そうであるならば、私

はあなたに、或いはほかの誰かに相談する必要はないのです。私は患者としてここに来ています。もしあ

なたが私の症例に興味がないのであれば、私は別の所に行くでしょう。

ライリイ  あなたは御自分が非常な重症の病気を患っていると信じる分別をお持ちです。

エドワード  医者と言う者は自分でそれを診立てることが出来るものと思うべきでした。或いは少なく

とも彼は諸兆候について探るのではないかと。二人の人々が最近私に助言している、殆ど同じ文言で、私

が医者に診断を仰ぐべきだと。彼等は、言った、再び殆ど同じ文言で、私が神経衰弱の瀬戸際に瀕してい

ると。私はその時は自分では分からなかった、しかし彼等にそれが見えたのなら、医者ならそれを察知す

る筈だと思ったのでした。

ライリイ  神経衰弱は、私が使った事の無い用語です。それは殆ど何にでも当てはまるのです。

エドワード  それ以来、私は自分の病状は非常に稀なものなのだと自覚したのです。

ライリイ  全部のケースが独自のものであり、お互いが非常に似ている点もある。

エドワード  どこかに療養所はありますかね、あなたが僕のような患者を送り込んだ、あなたの個人的

な診断に基づいて。

ライリイ  あなたはとても性急な性格の方だ。チェンバレンさん。色々の患者に合わせて、様々な療養

所があります。しかも、その療養所が患者にとって考え得る最悪の場所である場合もある。まず手始めに

我々は貴方のどこが悪いのか、あなたにどう対処すべきかを決める前に、発見しなければいけません。

エドワード  私の様な症例を診察した経験はあるのでしょうか。私は自分の人格を信じるのを辞めてし

まっています。

ライリイ  ああ、そうですね。これは重症です。非常に普通の疾病です。実に流行しているそれです。

エドワード  記憶しているのですが、少年時代に…。

ライリイ  私は出来るだけ最近の状態から始めるのが常です。そして必要に応じて過去にさかのぼる。

お判りですか、あなたの少年時代の記憶、つまり、現在の心理状態、その大部分は仮想のもので、そして

あなたの夢想など、あなたは途轍もない空想を描いたりする。私を満足させようとして。私には自分の好

き放題にあなたに夢想させる事も可能だ。そしてそれは、あなたの虚栄心をおだて上げて一時的な刺激を

与えて興味を感じさせるのも自在にできる。

エドワード  でも、私は自分の無意味さを思うと押しつぶされそうになっているのです。





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最終更新日  2025年11月13日 19時44分39秒
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