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ホテルのカーテンから朝の日差しがこぼれてサトミは目を覚ました。横には寝息をたててまだ眠っているミケがいた。昨夜の事を思い出すと全身が熱った。気持ち良さそうに眠っているミケの髪をなでる。暫くするとミケも目を覚ました。「おはよう。」サトミが言うとミケは挨拶代わりにキスをした。そして2人は昨夜のように堕ちていった。掴み合ったり放したり今お互いの目の前にいるのはお互い以外何者でもなかった。時を貪る様に深い深い渦に飲み込まれるようだった。ミケは煙草は吸わない。2人してベッドでシーツに包まって横たわっているとミケが抱きついてきた。力強く抱きしめると、身体の中から搾り出すようにミケは言った。「好きだ、好きだ、好きだ。」サトミはミケのそんな声が切なく感じた。2人がホテルをチェックアウトし外に出ると太陽は頭の天辺まで昇っていた。全てが眩しくて恥ずかしくなった。軽く言葉を交わしただけで人ごみに紛れていった。サトミは人の流れに逆らうように自分のマンションへ向かう。時間が経てば経つほど自分の行動に恥じた。いつもはエレベーターを乗るのだが、今日は階段を一段一段ゆっくりと踏みしめた。3階まで上ると目に飛び込んできたのはコウジだった。驚きのあまりサトミは身体が凍り付いてしまった。「どこ行ってたんだよ。」一歩づつコウジが近づいてくる。「携帯見てみろよ。」慌ててバッグから携帯を取り出して開いた。メールと着信が何件も入っていた。この分だと部屋の電話にも何度か電話したに違いない。途中でバイブにしていた事をサトミは思い出した。コウジはサトミの右頬をぶった。サトミの目から涙がこぼれた。こぼれ落ちる涙はますます激しい濁流のように止めどなく流れた。そんなサトミの姿を見てコウジは我に返った。「ゴメン。打つ気はなかったんだ。話し合おう。」頷きながらバッグから鍵を取り出してドアを開け、部屋に入った。留守電のランプが静かに点滅していた。暫く涙が止まらなくてサトミの泣き声だけが部屋に響いていた。「さっきはごめん。サトミの話も聞かずに自分のイメージだけでカッとなってしまった。」ううん、と頭を振った。「私も悪いの・・・昨日は。」「いいよ。具体的に言わなくても。多分俺の思っている通りなんだろ。」「・・・でも、コウジだって昨日は私と同じような事していたんでしょ?私、洗面に置いてあったハートのピアス知ってるんだよ。」コウジは顔色を変えずに話し始めた。「俺達、1回別れてるだろ。別れてから気になってて、また会えるようになったら今度は上手く行くように、って思ってたんだ。だけど、お前態度が全然変わっちまってて、何考えてるのか分らなくなっちまった。前はもっとぶつけて来てくれたじゃないか。だから俺も適当な女と寝た。サトミ、知ってたんだね。」そんな風に思っていたなんてサトミはショックだった。私自身、コウジを苦しめていたなんて。苦しいのは自分だけだと思っていた。「私、また壊れるのが怖かったし、そう思うと自分の気持ちも言えなかった。自分の気持ちも分らなくなっちゃった。」沈黙が続いた。この沈黙は永遠に続くように思えた。「私達、こんなの可笑しいよね。別れようか。」沈黙を破ったのはサトミだった。2人は目と目を見詰め合ってコウジは小さく頷いて部屋を出て行った。それから1週間、サトミは淡々としたOL生活を送っていた。不思議と涙はもう出なかった。ブログの日記もチャット部屋にも行かず、好きな音楽を聴いたり、DVDを観たりして時は過ぎて行った。コウジの事もミケの事も頭にはなかった。無理やり追い出していた。そろそろ寝ようかと思って電気を切った。携帯が鳴った。 <つづく>面白かったらクリックしてください → 人気blogランキング+ちょっと一言+修羅場です。(笑)
2005/02/28
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改札口から出て階段を上って地上に出る。今日は土曜日だった事に改めて気づかされる。人が溢れていた。「観覧車乗りたいな。」ポツリとミケが言った。「案外かわいいこと好きなんだね。」「あの、新しく出来たビルの・・・何て言うビルだっけ・・・観覧車がビルにくっ付いてるさ・・・。」そこは3ヶ月前にオープンしたビルと観覧車が合体したオアシスの事だ、とサトミは思った。「オアシス?」「!! そうそう!行ったことある?」コウジとオープンしたての頃行ってみたものの長い行列を見てうんざりして帰ってしまった。「ない。」「行ってみない?」「いいよ。」行ってみるとそんなに待たずに乗れそうだった。チケットを買って並ぶ。ファーストフードの持ち込みがO.K.なのでコーラとポテトを買って並んだ。サトミ達の順番になり足場以外スケルトンの観覧車に乗り込んだ。乗り込むと、視界全体に街の夜景が飛び込んでくる。ビルの明かり、車のヘッドライトの帯それはだんだん小さくなり宝石のようなきらめきとなって行く。「きれいだね。」思わずサトミがため息とともにこぼした。「そうだね。」知らず知らずのうちに同じ窓に顔を寄せ合っていた。サトミはミケを意識して咄嗟に反対の席に座ってコーラを飲んだ。ミケはそのまま窓を眺めていた。サトミも美しい街の夜景を眺めるのに夢中になった。もうすぐ頂上になろうとしている。ミケはサトミを見つめていた。一瞬の出来事だった。ミケはサトミにキスをした。サトミは突然の事にびっくりして目を大きく見開いたまま、ミケに抱きしめられていた。「ごめん。今だけこうさせて。」サトミはミケの言葉に何も言えないまま、身動きも出来なかった。こうなる予感もしていた、とサトミもミケの背中をぎゅっと抱きしめた。観覧車は1周し2人は無言で降りた。サトミは頭の中で何故か歩数を数えていた。この場の雰囲気が耐えられなかった。134歩歩いたところで少し前を歩いていたミケがうつむきながら半分振り返って沈黙を破った。「今日はありがとう。楽しかった。」「私も楽しかった。」今度は顔をちゃんと向けてミケが言う。「今日会ってみてコウジと俺、どっちが良かった?」初めてミケの口から今日コウジの名前が出てサトミはミケの視線を逸らしうつむいた。「冗談だよ。彼氏がいなかったら、本気に好きになるのは残念ながら俺の方だ。」とミケは苦笑いした。「会えて良かった。もう帰ろう。」と、言うとミケはサトミが帰るべき方向とは逆に向かって歩き出した。サトミも背を向けて歩き出した。切符を買うために並んでいると右方をグッと引き寄せられた。息を軽く切らしたミケがいた。「やっぱり、俺、このまま帰れない。」サトミの心は揺れ動いていた。 <つづく>面白かったらクリックしてください → 人気blogランキング
2005/02/27
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晴れたいい天気だ。サトミは非現実的な空間に包まれていた。アクセルを踏み込むと爆発音のような音をマフラーからばら撒きながら一直線の高速を走っている。サトミは心地よかった。前の車が車線変更して私達の前は果てしなく続く1本の道のように思えた。ミケはどんどんアクセルを踏み込んだ。サトミは引力が重くのしかかって来るのをどんどん感じた。メーターは200以上になっていた。ミケが笑い始めた。サトミはミケの表情にゾクっと感じる物があった。危険をかえりみない様なその行動。自由とは違う、狂気的に見えた。「アリス、怖いか?」「危ないよ。」ニヤリとミケは笑って「大丈夫だよ。」珍しい物を見せてやってる、と言う様な自慢気な顔で言った。サトミは引力を感じるたびにギュと両足のつま先に力を込めた。終点の出口で一気に速度を落とすと、今までの暴走が嘘のようだった。「あ~あ・・・楽しかった。乗り納め式はこれで終了。怖かっただろ、アリス。」頷いた。「でも、きっと二度と乗れないよ、こんなのには。」少し寂しそうに言った。10分ほど走ると堤防沿いの道に出た。海が太陽の光を反射してキラキラ光っている。海なんて久しぶりに見た。サトミには新鮮だった。ミケと一緒にいる事が全て新鮮な出来事だった。細い道を左に入っていくと看板が見えた。パーツ高価買取 ジャック「着いた。」ミケはドアを開けて車を降りると店から店主が出てきた。「お久しぶりです。」「待ってましたよ。警察に捕まりませんでした?あれ?そちらは?」サトミを見て言った。「こんにちは。」サトミが挨拶すると店主は二コリと会釈し、それ以上は何も聞かなかった。「ちょっと時間かかるよ。どうする?」「うん・・・海近いから散歩してくる。」サトミは海岸の方に向かって歩き出した。歩いて10分で堤防に着いた。階段があったので下りてみる事にした。風も無く、暖かく、春を予感させる穏やかな海だった。一人になるとコウジの事が頭に浮かんでくる。でも、暖かな今日の陽気と穏やかな海の波音を聞いていると少し和らいでいくのを感じていた。「おーい。」ミケの呼ぶ声で引き戻される。「終わったよ。・・・駅まで歩こうか。わりと近いんだよ。」「うん。」堤防沿いの歩道を歩いた。15分ほどで無人駅が見えてきた。切符を自動販売機で買ってホームに行くとホームから海が見えた。「ホームから海が見えるんだね。」サトミは純粋に感激していた。「うん。いい場所だろ?穏やかで。気持ちが和らぐ。この駅が好きでたまに電車で来たりしてるんだ。」2人は風や太陽の光、波の音をゆったりとした気持ちで受け止め楽しんでいた。20分後に1時間に1本の貴重な電車がやってきた。乗り込むと車両にはほとんど人が無くガラガラだった。鈍行電車はカタコトと心地よい規則的な音を出しながら走り始めた。サトミは気になっていたことをミケに聞いた。「ねえ。なんでミケは三毛猫の肉球なんてハンドルネーム付けたの?」ブッとミケは吹き出した。「あれね。もうちょっと考えとけばよかったと思う。まさか会うなんて思ってなかったし。アリスならまだいいよね。本名でも行けるし。」サトミも吹き出した。「三毛猫、飼ってたんだ。子どもの頃。学校の帰りにまだ産まれて間もない赤ちゃんの猫が置き去りにされてたのを拾って俺の家族で育てたんだ。人間でもそうだけど、猫の赤ちゃんもプニョプニョで気持ちいいんだよね、肉球が。それが忘れなくて、思わず付けたんだ。」「その猫はどうしたの?」「ある日突然いなくなった。猫って死に際は他の物に見せないように消えちゃうみたいだね。」「ちょっと寂しいね。」「まあね。アリスはなんでアリスなの?」「単純よ。不思議の国のアリスが小さい頃から好きだったの。」「まあ、そんなもんだよな。」クスクスと笑いながら喋った。たわいも無いお喋りに時間を忘れた。駅に着くと日が暮れていた。駅員のアナウンスに2人は現実に引き戻された。改札口を出るまで沈黙が続く。人ごみの駅の中、2人にだけはそのざわめきも聞こえなかった。ミケが急に振り向いて言った。「もう少し一緒にいて欲しい。」サトミはドキリとしたが、小さく頷いた。 <つづく>面白かったらクリックしてください → 人気blogランキング
2005/02/26
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サトミは待ち合わせの駅に着いた。駅に着くと土曜日という事もあり、思っていたよりも人が多かった。北口のアンティークなポストの前が待ち合わせ場所だ。このポストを目印に待ち合わせをする人も少なくは無い。ポストに寄りかかってメールを打った。今着きました。もういますか? アリスすぐに返答は無かった。待つ事5分。待ち合わせの相手が来て去っていく人の人数を数えていた。この5分で5組がカップルになって街へ消えていった。コウジの事が頭をかすめた。急に後ろめたくなって、帰ろうかと思い始めた。メールが来た。今着きました。北口のポストの辺りに来たけど、ポストの横にいる髪の長い人がアリスかな?声かけようと思うんだけど何か急に照れくさくなってきた。(^^;; ミケ辺りを見回すと一人の男と目が合った。お互いに直感で待ち合わせの本人である事が分かった。軽く会釈をして男は近づいてきた。「初めまして。アリスさんですか?」男は細身でソフトな印象を与える人だった。「はい。そうです。」「はぁ~~~~。良かった。緊張したぁ。」ミケは少し大げさにそう言った。「私も。」今までチャットやメールで頻繁にコミュニケーション取っていたせいか一気に打ち解けた。「こっちに車あるから。ちょっと駅前じゃ恥ずかしくって。」ついて行くと細い路地に車が置いてあった。車を見るとギョッとした。車高は落としていないもののボディーにはステッカーがたくさん貼ってあり、F1カーのようだと思った。「あぁ・・・やっぱり。この車まずかったかなぁ・・・。」ミケが苦笑いする。「でもさ、今から売りに行っちゃうから。知り合いの買取屋さんが海の近くなんだ。だから高速乗って、売って、帰りは電車。で、いい?」「うん。いいよ。」車に乗り込んだ。「うるさいよ、この車。」ミケは少し申し訳なさそうに言う。こんな車乗ってるのに、なんだかあんまり気を使うのでそのギャップが可笑しくなって笑った。「なに笑ってんだよ。」と言うとエンジンをかけた。「ほんじゃ、行くよ。」アクセルをふかすと物凄い騒音だと思った。一番近い高速の乗り口に入る。「本当は、この車公道は走っちゃいけなんだよねぇ。」「は?」「サーキット使用に改造してるからね。」いろいろ説明されたがアリスはチンプンカンプンだった。「車で最高何キロまで出した事ある?」「私、車持ってないから。」「免許は?」大声じゃないと聞き取れないから叫びながら会話した。「持ってるけどペーパーよ。オートマ車限定だし、こんな車は運転しろって言ったって運転できないから~。」絶叫に近かった。「あははは。アリス大声出して気持ちよくない?」「気持ちいい~!」久しぶりにサトミは思いっきり笑っていた。 <つづく>面白かったらクリックしてください → 人気blogランキング
2005/02/25
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コウジの隣で小さく笑っていた女の声がサトミは頭の中から離れなかった。これから繰り広げられるコウジとその女の事が頭の中で膨らんでいく。明日ではなく、今日からコウジは都合が悪いのだ。絶望と憎しみ。でも、だからと言って何か仕出かす様なエネルギーはサトミには無かった。1度目の別れで使い切って無くなってしまったのかもしれない。ますます自己嫌悪に陥っていった。もがけばもがくほど、自分が空回りして身も心も擦り減って行くのをひしひしと感じていた。コウジへの曖昧で、しかし強烈な執着はまるで呪縛のようにサトミをがんじがらめにさせていた。涙が枯れてふと我に戻った。PCの画面にはミケからのメッセンジャーがあった。 アリス:ゴメン。お開きになっちゃったね。まだミケはまだ起きてる? ミケ:起きてるよ。 アリス:なんか、疲れちゃった。 ミケ:どうした?また、彼のこと? アリス:正解。 ミケ:言ってみ。聞いちゃるから。 アリス:電話で女の声がした。 ミケ:アリス、それで何もできなかったんだな。 アリス:うん。バカみたい。 ミケ:そやね。 アリス:このまま続くのかな。 ミケ:それはアリスが決める事だ。自分の人生は自分ね歩かなきゃいけない。決めれないのは、アリスが今決めれない、って選択をしているってことだ。 アリス:そうか。サトミはその言葉で気持ちが落ち着いていた。自分を見失っているのではないと、ミケの言葉はそう心に響いた。 アリス:明日、ミケは何してるの? ミケ:明日は車を売ろうと思ってる。 アリス:売っちゃうの? ミケ:う~ん。引退。サーキットに行ったりしてたけど金もかかるし。 アリス:よくわかんないけど、すごい車なんだよね。 ミケ:バリバリ改造してるからねぇ~♪ アリス:なんか勿体ないね。 ミケ:あはは。アリスが言う事無いじゃん。 アリス:だって、愛着がものすごくあるんでしょ? ミケ:そりゃそうだけど、いつかはどんな事でも別れる時がくるもんさ。 アリス:ミケは大人なんだね。 ミケ:アリスよりも少しだけ、ね。(笑) ミケ:明日、どうせ暇なんだろ?俺の愛車のお別れ会にアリス来てみるか?少し躊躇った。 アリス:見てみたい。 ミケ:よし、決まり。お互いに携帯メールを教えあってPCを切った。半分冗談、半分勢いであった。本当に明日・・・。約束をしてサトミは少し不安に思った。朝、携帯にメールが届く。アリス、準備はOK?今から行くから。 ミケサトミは身支度をすると待ち合わせ場所に向かった。 <つづく>面白かったらクリックしてください → 人気blogランキング+ちょっと一言+今日聴いてたCD鈴木雅之 マティーニ2 鈴木雅之 MARTINI2-CD-〔送料無料キャンペーン中〕久々に奥から出して聴きました。恋人・もう涙はいらない・ガラス越しに消えた夏、好きです。このコーナーいいなぁ。今日から始める事にしました。
2005/02/24
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お気に入りからチャットルームをクリックする。自動ログインして「気楽に行こう」のいチャットルームに入る。部屋にはミケ、ピーターパン、白雪姫がいた。 アリス:こんばんは~>オール ミケ:こんばんは>アリスピーター:こんばんは>アリス 姫:こんばんは>アリス ミケ:もうそろそろお開きにしようかって言ってたとこだよ>アリスピーター:でも、せっかくだからもう少し話そっか 姫:ゴメン。私、明日早いから抜けます>オール ミケ:うん。おやすみな~>姫ピーター:おやすみ>姫 アリス:おやすみ>姫 姫:(*^ー^)ノ☆。・:*:.・★,。・:*:.☆またね♪ピーター:今日はでぇとぉ?>アリス アリス:うん。まあね>ピータ ミケ:あの彼氏と?>アリス アリス:そそ。あの1回別れた彼氏と>ミケピーター:上手くいってるの??>アリス アリス:微妙かも(^^;;>ピーターピーター:経験上、精神衛生上よくない、よ。そういう付合い方は>アリス アリス:私もそう思う。特に最近>ピーターピーター:自分の気持ちに正直にならなきゃ・・・って私も人の事言えないけどさ~>アリス アリス:自分の気持ちもよく分かってないかも>ピーター ミケ:なんじゃい、そりゃ?>アリス アリス:ダメな雰囲気は感じるんだけど、別れを言い出すまでにはならない>ミケ ミケ:好きなんだね>アリスピーター:自分自身も分からないのね。私もあったわ~。そういうの。でもちゃんと整理しないと大変になるわよ>アリス アリス:そうだね>ピーターピーター:そろそろ私も抜けるわね>オール ミケ:おやすみ>ピーター アリス:おやすみ>ピーターピーター:おやすみ>おおる ミケ:いっちゃったな~ アリス:だね ミケ:まだ大丈夫? アリス:目が冴えてきたかも ミケ:じゃ、オールで行こう♪ アリス:無理。それは無理。(-.-;; ミケ:でもさ、ピーターの行ってた通りだと思うよ アリス:え? ミケ:そんな状態終わってるっちゅーの アリス:でも・・・ ミケ:他の男も見たほうがええで。俺とかな。 アリス:ぷぷぷ ミケ:なに笑っとんじゃい アリス:ゴメン、ゴメンあんまり唐突で ミケ:マジで。俺とそのコウジ?ってやつどっちがええ男か確かめてみたらええんや アリス:頭に入れとく ミケ:遊びはこれまで。ふぁ~寝よか アリス:うん。おやすみ ミケ:おやすみ顔も知らない文字だけの世界。実生活に直接関わり合いの無い、空想のようなものだ、とサトミは思ったりする。でも、だからこそ、心のうちをさらけ出せたり出来る。ミケの言う事も一理あるかもしれない、と思いつつ眠りについた。1週間に1回のペースでコウジに会う。これといって普通のデートをする。新しいカフェが出来たら覗きに行く。ウインドウショッピング、映画、公園を散歩、コウジの部屋に行ったり・・・。その日もビデオをレンタルしてコウジの部屋に行った。部屋に入るとコウジが絡み付いてきた。そしてそのままソファーに倒されキス。キスをされると身体の緊張も解けてコウジを許してしまう。コウジと交わると全て溶けてなくなりそうになる。何もかも忘れて頭の中が真っ白になる。この一瞬がコウジから離れられない原因なのかもしれない。だるかった。コウジは煙草をふかしている。そしてソファで一緒にビデオを見た。シャワーを浴びにバスルームに行く。洗面台に小さなハート型のピアスがあった。サトミのものではない。でも、コウジに問いただす事も出来なかった。自分の存在の位置を確認するのが怖いと思った。何事もないようにコウジの部屋を出た。あのピアスを見てからサトミの心は今まで以上に揺らいでいた。以前のように狂ったように攻め立てるサトミではなかった。どうせなら本当に狂っちゃえばいいのに、そう思ったりした。サトミはまたアリスになっていた。ピーター:それって浮気の証拠じゃないの?>アリス 姫:どうして突き止めなかったの?>アリス アリス:怖かったから ミケ:怖いって?>アリス アリス:また前みたいに崩れるのが怖い携帯が鳴った。コウジからだ。 アリス:ゴメン。ちょっとロム「もしもし」「あ、俺だけど。」「何?」「あのさ・・・明日、会う約束してたけど、高校の時の友達が急にこっち来る事になったから。ゴメン。」「う、うん。分かった。」「じゃ。」 クス クス クス クス ・・・電話の切れ際に女の笑う声が聞こえた気がする。いや、聞こえた。聞こえた気がするって気のせいにしたかった。PCにはミケからメッセンジャーが来ていた。 お~い。まだロムってるの? 早く戻っておいでよ。サトミは、そのメッセージを目にする事無くPCの前で泣いていた。 <つづく>面白かったらクリックしてください → 人気blogランキング
2005/02/23
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コウジとの交際はもう終わりそうだと感じていた。と、言ってもコウジとは一度別れているのだ。コウジの事が好きで、朝も夜も一緒にいたくて・・・。結婚したい気持ちが最高潮に達していた。もう、その気持ちを抑え切れなくて狂ったように気持ちをぶつける事が多くなった。そして、その日はやってきた。いつものように、言い争いになってしまった。「もう、いいかげんにしてくれよ。」「だって、もう2年も付き合ってるし、もう私だって来年25になるんだよ。なのに、コウジは何にも考えてくれてないじゃない。私と一緒にいたくないの?。ねぇ?!」強い口調で攻め立てると「今はサトミとは結婚できない。もう、別れよう。」そして、私は駅に一人ぼっちにされたのだった。それから半年、未練タラタラで携帯の電話番号も消せずに、そして自分からも電話をかけれずに毎日泣く日々だった。ところが、ある日突然コウジから電話がかかってきたのである。携帯電話は登録されたコウジの名前がコールするたびに浮き上がった。嬉しい気持ちと、1年も経つのに未練たらしい気持ちを持っている自分に嫌気を感じた。コールは5回鳴っている。あと2回で留守電に変わってしまう。コウジは留守電には入れずにいつも切ってしまう。6回目のコールが鳴って深呼吸して電話に出た。「もしもし。俺、誰だか分かる?」1年も苦しまされた相手の言葉は胡散臭いナンパ師のような言葉だった。それから、ポツリポツリとお互いの今までの事を話し合って、また会うようになったのである。以前の気持ちとは明らかに違うとサトミは感じていた。一歩遠くから眺めながら付き合っている、そんな感じだ。私は、自分を納得させたかったのかもしれない。お互いの間にはに過去の話は避ける空気が流れている。サトミは本当の所で結び合ってない寂しさを感じていた。そこまで分かっているのに自分から別れを切り出す事も出来ずにいた。「どうかしたの?」ボーとそんな事を考えていたのでコウジが顔を覗き込んで言った。「ううん。別に。」とだけ短くサトミは答えた。恋人のいない期間が長いといろいろな新しい物を覚えたり、挑戦したりする事が多い。サトミはコウジと別れてからパソコンをいじる事が多くなった。あまり得意ではなかったが今ではHPを持っているくらいだ。そして、今の密かな楽しみはブログに日記を書く事だった。始めは大手のブログに登録していたが、はまりすぎるのが怖くなって、今は会員数の少ないブログで細々とやっている。それでも、仲の良い人は10人前後いる。家に帰ると11時を少し過ぎていた。お風呂に入ってPCを開ける。数人からメッセージが届いている。日記の感想とかだ。同じような気持ちや考えを持って生活している人は私だけではない。コウジと別れて間もない頃は同じような境遇の人がこんなにいるんだ、と知っただけでも少し癒される気がした。メッセージを読んでいくとアリスさん、暇だったらチャット部屋でお話しませんか~?皆さん誘っています。来てね~♪お開きになってたらごめんちゃい。(>
2005/02/22
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3年前の11月22日2年の交際を経て私は結婚した。それまで働いていた私は結婚を機に退職し今は1児の母である。平凡な専業主婦だ。私の1日は主人の弁当作りから始まる。独身の頃は冬は寒くていつまでも布団の中でグズグズしていたものだが、結婚してからいつも決まって6時半に目が覚めるようになった。今朝はとびきり寒かった。エアコンとファンヒーターを点けるがすぐには暖かくならない。弁当作りが終わる頃主人は起きてくる。「おはよ~。」寝癖でぼさぼさの頭をかきながら、まだ眠そうな顔でのこのことキッチンへやってくる。「菜々美はまだ寝てる?」「まだ寝てたよ。」菜々美はまだ10ヶ月の赤ちゃんだ。「今日は早く帰って来れそう?」「多分8時頃には帰れると思うよ。遅くなるようだったらいつものように電話かメールするから。」「お願いね。」「菜々美のお風呂だろ?」私は頷いた。ご飯とお味噌汁の朝ごはんを主人と一緒に食べる。「じゃ、行って来るね。」「いってらっしゃい。」主人を送り出すと今度は菜々美が起き出す。「ななちゃん、おはよう。」菜々美は寝起きは悪くない。大抵いつもニコニコしている。「ご飯食べようか。」離乳食の準備をする。お粥はまとめて炊いて冷凍している。丁度3分でいい具合に温まるのである。今日は、昨日の残りのシチューがおかずだ。美味しそうに食べてくれると私は嬉しくなる。食べ終わると次はミルクを飲むだけ与える。次は洗濯。スタートボタンを押してから、菜々美をベビーカーに乗せ近くの公園へ散歩しに行く。公園に行くと数人のママとそのこどもが砂場やブランコで遊んでいる。菜々美よりもすこし大きい子ども達が遊んでいた。まだハイハイしかしないので、元気に動き回っている子供達を見ると早く歩き出して欲しいと思う。家に帰ると洗濯出来ているのでベランダに干す。そこまでが午前中の私の仕事だ。菜々美も寝始めたので紅茶を入れて昨日の本の続きを読む事にした。お昼ごはんを簡単に済ませて、お昼のメロドラマを見ていると菜々美が起き出した。ご飯の時間になると自然と目が覚めるものなんだなぁ、といつも私は感心する。朝と同じように離乳食をやり、4時ごろスーパーに買い物に行く。今日の晩ご飯は何にしようかしら・・・。スーパーをゆっくり回りながら今日の献立を考える。結局まとまらなかったので広告の品を適当に買って来てしまった。私は適当に買ってきた食材から料理を作るのが得意なのだ。帰ってくるとスーパーで買った物を冷蔵庫にしまっていく。豆腐、ひき肉、ねぎ、白菜4分の1、いちご、人参、大根2分の1・・・今日は豆腐ハンバーグにしよう。普通のハンバーグを作る要領で水切りした豆腐も加える。大根おろしを添えて和風ハンバーグにした。あと、コンソメスープとサラダも付けた。6時半に料理は出来上がってしまった。菜々美はスヤスヤと眠っている。寝顔を見るのが私は好きだ。なんて罪のない顔をして眠っているのだろう。かわいくて目が離せなくなる。そうやっていると菜々美が起きて3度目の離乳食だ。8時まであと少し。電話もないのでもうすぐ帰ってくるだろう。今日も1日は穏やかに過ぎていった。8時15分、主人が帰ってきた。「ただいま。」「おかえりなさい。」ネクタイを緩めながら寝室へ服を着替えに行った。その間に作っておいた晩ご飯を電子レンジで温めておく。主人と一緒に遅めの晩ご飯を食べる。「先に食べてても良かったのに。」「もう少し遅かったら食べようと思ってたところよ。」食べながら主人から今日の会社での出来事をああでもない、こうでもないと話すのを聞いてた。10時菜々美は主人と一緒にお風呂に入ってまた眠りにつく。私もお風呂に入って眠りにつく。こんな日々の繰り返しだが、私は幸せである。主人が後から寝室にやってきて布団に入ると私の手を握った。あなたの手があるから、私はいつも幸せなんです。「純子・・・。」直志はそういって病室のベッドで3年前から植物状態の妻の手を握っていた。 <おわり>面白かったらクリックしてください → 人気blogランキング
2005/02/21
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可南子に後押しされたように、サチコはもうどうにもならなかった。Bar D に着いた。あの細い階段を地下へ進む。階段で中年の男性とすれ違った。2人がすれ違うのがやっとと言うほどの幅だ。小さく D とだけ書いてある扉を一気に開けた。2回目に訪れた時のような戸惑いは無かった。しかし、鼓動はあの時と同じように高鳴っていた。「いらっしゃいませ。」カウンターの中で永井はグラスを拭きながら、少し驚いたようにサチコに言った。「結婚式の帰りですか。」コートを羽織ってはいるがパンプスや髪型、それに何よりブライダルブーケを右手にサチコは握り締めている。どう見ても結婚式の帰りだ。「そうなんです。親友が結婚したので。」客はサチコ一人だった。さっきすれ違った中年の男が最後の客だった。今日は日曜日だ。「何か飲まれますか。」「ドライマティーニ」勢いで注文した。永井はちょっと怪訝そうな顔で「今までたくさん飲まれてきたのではないですか。」「大丈夫です。」と、言い切った。カクテルがサチコの前に差し出されると一気に飲み干した。その行動に永井はまたまた驚いた。「どうかされたんですか?無茶な飲み方はよくないですよ。もし何かあったなら僕でよければ聴きますよ。」「じゃ、聞いてくださいますか。」永井はサチコの視線に向かい合って屈んだ。「親友の結婚式は名古屋でした。彼女は帰り際このブーケを私にくれたんです。そしたら急にあなたの顔が浮かんでもう私の中で消せなくなってしまいました。私は、今日ここに、あなたに逢いに来ました。だって、偶然にまた会いたいと思っても会えないし、ここしかないんですもの。」ああ、何だか何を言っているのか分からなくなってきてしまった。「だって・・・ずるいじゃないですか。あんなに人懐っこい笑顔見せておいて。気まぐれだったとしても、ただのBarの客とバーテンの関係にしても、今日は私の気持ちを受け止めて欲しい。もっとあなたの事知りたいんです。」なんだか、どうしてなのか涙が出てきた。多分、初めてここに来た時もこんな感じだったんだろうな。だんだん情けなくなって来てしまう。どうしてこんな風になってしまうのだろう。ユミが見たらきっとびっくりするだろう。仕方ない。この場所と彼がそうさせるのだ、きっと。瞬時にいろいろな事がサチコの頭の中を駆け抜けていった。「幸子さん。すみません。僕が臆病だったから。僕も同じような事考えていました。」顔をあげると屈託の無い永井の笑顔があった。「実は、これ・・・。」と言って永井が1枚の写真をサチコに見せた。「これって!」モノクロのサチコの写真だった。乾いた涙の後を残してBarの机に寄りかかっている。「初めてここに来た日、幸子さん酔って今までの事すっかり吐き切ったら寝始めちゃったんですよ。覚えてないと思いますけど。悪いな、って思ったんですけど、撮らせてもらっちゃいました。いつも、これ、持ってるんで。」とカウンターの下からコンパクトカメラを取り出してサチコに見せた。「でも、この写真、すごく幸せそうな顔していると思いませんか?幸せな子、幸子さん。」幸子と永井は顔を見合わせて笑い始めた。何時までも二人のの笑いは続いていた。 <おわり>面白かったらクリックしてください → 人気blogランキング※後書き※最初に、こんな駄文、最後まで読んでくださった方、もしみえましたら、本当に本当にありがとうございました。育児の合間に1日1回ちょっとした小話程度のものを気分転換に書いて行こうかな~と思って始めたブログでしたが、書き始めたらなんかダラダラと続いてしまいました。書いているうちに話の方向がドンドン変わってしまってもっとドロドロしたものを書きたかったのですが、資料不足と文章力がないので途中で無理だと気づきました。(笑)もうちっときちんとした資料の整理が出来たらこの話を書いている時に浮かんだ話を書いてみようと思います。本当はもっと院長やレストランのマスターにも登場させたかったのですが、ダラダラしそうでうぜぇ~と自分自身に嫌気が差してこんなラストにしちゃいました。基本的にハッピーエンドは好きです。あははははー(^^;;酷評も受け付けますが、あまりいじめないで下さいね。(ボソッ)ではでは、またー☆
2005/02/20
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サチコは新幹線に乗って名古屋に向かっていた。可南子の結婚式に行くためだ。爽やかないい天気だった。可南子と会うのはずっと楽しみにしていた。高校の時、席が隣で話すようになった。気さくで、世話好きで、好奇心のある目をいつもキョロキョロさせていた。そして、とても優しかった。時々、私よりも可南子のような人の方が看護師に向いていそうだと思ったりする。高校2年の時育ての祖父が亡くなった。そして、看護師になって2年目祖母も亡くなった。地元の大学を卒業すると、いつまでも祖母には頼れないと思い東京のS大学病院に就職したのだが、祖母の側にいればよかった、と後悔した。その時、可南子はいつも側にいてくれた。祖母が亡くなって、とても心細く思う時期があって、よく可南子に電話をかけたものだった。可南子は、ずっと話を、うんうん、と聞いてくれた。そんな優しさを可南子は持っている。可南子の存在にとても感謝しているのである。ユミとBar D に行ってから1ヶ月、サチコは週1回のペースでBar D に通っていた。だからと言ってサチコと永井はBarに通う客とバーテンと言う関係でしかなかった。永井もそれ以上サチコに踏み込んでくる気配も無かった。それでもいいや、とサチコは思ったりした。可南子に話すと、何やってるのよ、と叱られそうである。新幹線の中で2時間、サチコはいろいろな思いを巡らせていた。名古屋駅に着くと何となく帰ってきた気がする。そのまま地下鉄東山線に乗り込んだ。そして星が丘で降りた。招待状の地図に沿って歩いて行くと結婚式場があった。結婚式場、と言うよりも邸宅のようだ。ハウスウエディングかぁ・・・。入り口から入ると受付を済ませた。式は人前式だった。可南子は綺麗だった。新郎は優しそうな感じでいいパパになりそうなタイプだった。披露宴もカジュアルな感じで立食パーティー風だった。親戚の人達は用意されたテーブル席に固まっていた。新郎、新婦はそれぞれ動き回って友達に囲まれていた。可南子に近づいて「おめでとう」と言った。「幸子、ありがとう!会いたかったわ。元気だった?3年くらい会っていなかったものね。」「本当におめでとう。綺麗よ。」「そういう幸子はどうなの?結婚はまだ?」「今はそんな人いないし。」苦笑しながら答えた。「でも、気になる人くらいいるんでしょ?」「まあ・・・ね。」「話し聞かせてよ。」会社の同僚が可南子と写真を撮りに来た。せっかくなのでサチコがシャッターを押した。次々友達や親戚が可南子との写真を求めて近づいて来た。サチコは遠巻きにそんな状態を眺めていた。「後でちゃんと聞かせてね!今日は帰さないから。」と可南子がサチコに向けて言った。サチコはご両親へ挨拶をしに行く事にした。「この度はおめでとうございます。」「幸子さんね。遠いところから来て下さって、ありがとうございます。」「とてもいいお式に招待していただいて、こちらこそありがとうございました。」「可南子も幸子さんの事とても楽しみにしていましたから。今日はゆっくりしていって下さいね。」そう可南子の母が言うと両親そろって軽く会釈し親戚や会社の上司への挨拶回りに行ってしまった。2次会もここですると言う。2次会の時間になると親戚や会社関係の人達は帰って行った。入れ替わるように懐かしい顔がちらほらやって来た。2次会、3次会とサチコは流れていった。人もだんだん少なくなってやっと可南子とゆっくり話せるようになった。「幸子、話の続き聞かせなさいよ。」可南子がニヤニヤしながら言った。サチコはBar Dの事、バーテンの永井の事、永井と偶然会った事、などこれまでの事を話した。聞き終わった可南子は「それから?」と聞くと「それだけ。」と答えた。「なにやってんのよ。」思った通りの返事が返ってきた。「だいたい幸子は自分の気持ちを抑えすぎなのよ。そんなに気になって通っちゃってるくらいなら、自分から気持ち伝えちゃえばいいじゃない。行動しなきゃ、何にも始まるものも始まらないのよ。」「分かってるけど・・・。」花嫁に説教されてしまった。帰り際、可南子がサチコを呼び止めた。何かと思ったら、結婚式で使ったブーケをサチコに渡した。「私、幸子より先に結婚したらブーケは幸子に渡そうって思ってたの。」胡蝶蘭の小ぶりだが上品で豪華なブーケだった。「幸子も頑張って。幸せになって欲しい。」本当に幸せそうな笑顔だった。「ありがとう。ありがとう。ありがとう・・・。」涙で目が少し滲んでいた。 名古屋駅に着いた。始まりが早かったせいか、3次会まで行っても最終の新幹線に間に合う時間だった。もしも、と思って帰れなかったら駅前のビジネスホテルにでも泊まろうかと思っていた。新幹線の中でサチコは可南子からもらったブーケを握り締めながら、永井のことが頭の中でグルグル回っていた。0時少し前に東京駅に着いた。サチコはそのまま心の赴くまま永井のいるBar D へ向かっていた。 <つづく>面白かったらクリックしてください → 人気blogランキング
2005/02/19
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カメラマンの、と言うかバーテンの永井哲也に偶然会って2週間がたった。時間が過ぎると夢だったような気持ちになる。ビデオ屋にも2回ほど訪れたが会わなかったし、近くに住んでいると言うのに1度も見かけなかった。Barで見せた無駄の無い動きと精悍な顔立ちと、ビデオ屋でバッタリ会った人懐っこい顔とが、ふとした時に交互に現れた。また偶然に会えることを期待してしまうが、現実はそう上手く行かないらしい。連れて行ってもらったレストランも一人で行くのはなんだかおこがましい気がした。唯一、繋がる場所と言えば、あの Bar D だけなのである。でも、一人で行く気にはなかなかなれなかった。それに仕事が忙しくて出かける気も起きなかった。準夜勤務は4時半からである。サチコはいつも30分早く出勤する。この30分で準夜帯で使用する抗生剤の点滴など細々したものを準備するのである。病棟に着くとユミが先に準備していた。「今日は宜しくお願いします。」「平穏な準夜だといいわねぇ・・・。」「ほんとですよね。」そんな会話をしながら準備を進めた。ここのところバタバタしていたが久しぶりに静かな夜である。ここのところ、本当に忙しかった。急変に急患にどの時間帯でも忙しく、おまけに他の科の患者がベットがないという理由で4Aに運び込まれて、もともと混合病棟であるのにさらに輪を掛けてごちゃ混ぜ病棟化していた。急に忙しくなるかと思えば、急に静かになったり、この繰り返しだ。1時までが勤務時間だ。あと30分。深夜勤務の看護師が次々やって来る。「こんなに静かだとなんか気味悪いですね。今までが忙しすぎたからかなぁ~。」ユミが言う。「まあ、たまにはこんな日も無いと。」何事もなく1時になった。サチコとユミはロッカーへ向かった。「先輩、先輩。今日また行きません?」サチコはユミのその言葉を待っていたような気がしていた。2人はタクシーでBar D へ向かった。第一カワカミビルの細い階段を下りると、そこにBar Dはある。永井哲也に会える事がサチコは素直に嬉しかった。ドアを開けると長身な永井が飛び込んできた。以前来た時よりも混んでいた。右隅の席が2つ空いていたので座った。注文を聞く永井の目は明らかにサチコを意識していた。サチコはスプモーニをユミはモスコミュールを注文した。サチコはユミに聞いた。「ここは、どうやって知ったの?」「K大学病院で勤めてる友達がいるんです。結構近いでしょ?1回連れて来てもらって落ち着いたお店だし良かったな、って思って。先輩に前、銀座のルパンに連れて行ってもらったでしょ?私が太宰と同じ席で飲みたい、って言ったから。結局その席は先客がいて座れなかったけど。」「そんなことあったわね。」サチコはユミの目を盗んで永井を見つめていた。「そのお礼じゃないですけど、先輩と一緒に来たかったんですよねぇ~。」カクテルを2~3杯飲んで少し酔ってきた様だ。「先輩。先輩は辛い事無いんですか?」「どうして?」「先輩見てると仕事はテキパキしてるし患者さんが急変してもすごく冷静じゃないですか。プライベートだって他の先輩はホントなのかウソなのか分からないような見栄張ってるような話するけど、先輩はさらっとしてて、なんて言うかキチッとしてるって感じがするんですよね。落ち着いてるって言うか。私から見ると大人だな~って思うんですよね。私、先輩みたいになりたいって思っているんですよ。」まんざら、おべっかでもなさそうだった。「私だっていろいろあるのよ。」店の客は私達を含めて3人になっていた。今日は平日だし、もう3時を過ぎている。左端の席で飲んでいた中年の男も席を立って身支度をし始めた。「あの、ここは何時までですか?」サチコは永井に聞いた。「まだ大丈夫ですよ。お客様がいる間は店は閉めませんから。」そう言ってくれたが結局帰ることにした。ユミは少し酔っていたので代わりにタクシーを呼んで先に乗せた。ユミは自宅通勤でサチコとは方向が違うからだ。サチコの乗るタクシーを待っていた。待ちながら思った。物足りない、と。サチコはもっと永井哲也と話したいと思うし、もっと彼のことを知りたいと思った。そんな思いがはっきりしてくるのを感じていた。すぐタクシーはやって来た。乗り込もうとした時、永井が階段を駆け上ってサチコの方に駆け寄ってきた。「サチコさん、忘れ物ですよ。」永井の手にはマフラーが握られていた。「すみません。ありがとう。」「また来てください。実は来るの待っていたんです。おやすみなさい。」そう言ってサチコのタクシーが見えなくなるまで見送ってくれた。後ろ髪を惹かれるようにサチコは車の窓から小さくなる彼を眺めていた。 <つづく>面白かったらクリックしてください → 人気blogランキング
2005/02/17
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「あ・・・すみません。」サチコとバーテンの男との身長差は30cmはあると思われる。サチコは見下ろされてやっとサチコであることに気づかれた。「あなたは・・・。」さすがにびっくりしたようである。「こんばんは。」少しの沈黙の後、お互いに噴出してしまった。「こんな所で会うなんて。近くに住んでいるんですか?」「歩いて5分です。」「僕もなんですよ。歩いて5分。」右手に持ったビデオにお互い目が行った。「・・・良かったら先に観ますか。」「いえ。いいですよ。どうぞ先に観て下さい。」「なんなら一緒に観ますか?」サチコはドキリとした。「あはは。冗談ですよ。じゃ、僕が先に観させてもらいます。じゃ、ビデオじゃなくて食事一緒にどうですか?まだでしたら、何か食べに行きません?」「・・・そういえば今日夜勤明けで何も食べてなかった。」「それじゃ、決まりですね。」半ば強引な感じで一緒に食事をする事になってしまった。こんな人懐っこい人なんだ・・・とサチコは思った。ビデオ屋を出て5分くらい歩いた所に小さなレストランがあった。中に入るとカントリー調でまとめられた気取りの無い雰囲気のお店だった。こんな所にこんなお店があったなんて知らなかった。「いらっしゃいませ。な~んだ。てっちゃんじゃないかい。」優しい風貌の初老のマスターに出迎えられた。「こんばんは。閉店間際に悪いけど何か食わせてもらえない?」時計はもうすぐ9時になるところだった。客は私達だけだった。ここのマスターととても親しそうである。「おや。彼女を連れてきたのかい?」「違うよ。Barのお客さんで、ちょとそこでたまたま偶然に会ったから。」マスターはニヤニヤ笑ってコップに水を注いでいた。「てっちゃんはいつものでいいのかい?お嬢さんはご注文はなににされますか?」「いつものって何ですか?」「ここの従業員が食べる賄いだよ。」「賄いですか。裏メニューって事ですよね。私もそれお願いします。」「はいはい。」マスターは奥のキッチンで作り始めた。「あの・・・。名前なんて言うんですか。」ハッとしたように「永井哲也って言います。僕の事は何にも知らないんですものね。」「今日はお休みなんですか?」「バーテンは副業なので・・・。本業はカメラマンなんです。って言ってもグルメ雑誌にちょこっと載るようなものしか撮ってませんけどね。仕事もあまり来ないので、最近はどっちが本業かわかりませんけどね。」と苦笑した。「そうだったんですか。」バターのいい匂いが食欲をそそる。「はい、おまたせ。」テーブルにはオムライスとクリームコロッケ、ミニサラダにオニオンスープが置かれた。結構なボリュームである。「今日はオムライスなんだね。いつもよりサービスいいんじゃないの?」「てっちゃんが、お嬢さん連れてきてくれたからね。」「いただきます。」一口ほおばると口の中に外を覆ったとろとろの卵がバターの風味と共に広がり、チキンライスと混ざり合って幸せな気持ちになった。「おいしい。」「うん。うまい。」2人は黙々と料理を食べつくした。そしてお店を後にした。「また来てくださいね。」とマスターが見送ってくれた。来た道を戻ってビデオ屋の前に来た。「今日は一緒に食事が出来て良かったです。いつも独りなもので・・・。またBarにも来て下さい。副業の割りにほとんどいつも居ますから。」「今日はご馳走様でした。Barにも近いうちに寄らせてもらいます。」「じゃ、僕はこっちなので。」とサチコとは反対に向かって指を指した。そして、にこやかに手を振って歩いていった。 <つづく>面白かったらクリックしてください → 人気blogランキング
2005/02/16
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冬の朝は遅い。その日サチコは深夜勤務で日が昇る頃には今日オーダーされている採血を手際よくこなしていた。この時間になると院長が病棟を回ってくる。6時から2時間かけて病棟を挨拶して回ってくるのだ。他の病院もそういうものなのだ、と新人の頃は思っていたが、他の病院に就職した友達に聞くとこの病院の院長が名物院長である事が分かった。人望も厚く、この院長が居るから、と就職してくるのももいる事を後で知った。「おはよう。内山さん。」「おはようございます。」スタッフの名前を覚えているところがこの院長の凄いところでもある。院長が病棟に来ると何だかホッとする。そして、あともう少しだ、とその日いくら急患や急変で忙しかったとしても残りの時間を頑張れる気がするのだ。以前、院長が4Aの忘年会にちょこっと顔を見せた事があった。うちの婦長は副看護部長も兼任している為、ということもあり院長とも顔お合わせる機会が多く仲がよいのだ。どうも、婦長が院長を呼んだらしいのである。気さくな院長は少し遅れてやってきてみんなを驚かせた。私はその時お酒を注ぎながら、毎朝院長がスタッフを名前で呼んで挨拶して回って来るのが楽しみで頑張れます、名前を覚えているのはすごいと思います、といった事があった。すると院長は、「皆さん面接の時に会っていますからね~。」と言って笑っていた。仕事は朝9時にピタリと終わった。夜勤は基本的に2人で仕事する。もう一人の相手はだいたい2年目か1年目の若い看護師と一緒に組むように勤務表が組まれている。今日の相手は1年目のクミコだ。「あと、何が残ってる?」「あと記録が・・・。」「記録だけ?」「はい。」「じゃ、頑張ってね。記録も時間内に出来るように頑張るのよ。」なかなか記録まで時間内に出来るようになるのは難しい。「はい。お疲れ様でした。」クミコはちょっと顔を上げて会釈をするとすぐカルテに向かっていた。1日の始まりの朝だが、サチコは眠るためマンションに向かっていた。若い時はそのまま遊びに行ったりもしたが、今は無理になってきた。年とは思いたくないが、身体は正直だ。マンションのエントランスのドアを開け、ポストを確認する。封筒が1通入っていた。結婚式の招待状みたいだ。裏を見ると、相田可南子とあった。可南子は高校時代からの友達である。何でも話せる親友だ。結婚、するんだ・・・。部屋に入ると早速携帯メールを打った。可南子、今日招待状届いたよ。結婚おめでとう。是非、出席させてもらいます。会うの、楽しみです。そう、メールを打ってシャワーを浴びて眠りについた。目が覚めると辺りは薄暗く時計は6時を示していた。たまに夕方なのか朝なのか分からなくてびっくりする事がある。でも、大抵夕方の6時だ。携帯に新着メールが来ていた。ありがとう。私も会うのが楽しみです。幸子が東京に行ってからあまり会っていないから。 可南子可南子・・・。高校の時いろいろ話し合った。今まで可南子だけだった。大学は別々になって、学生の頃は夏休みや冬休みに一緒に旅行とかいったけな。もう3年は会ってないな。その間に素敵な人を見つけたのね。羨ましいけど、幸せになって欲しい。本当にそう思う。私はまだ一人。こんな風に夜勤明けでも一人で過ごして終わっちゃうのよ。こんな時間から出かけるのも面倒なので、出かけると言えばレンタルビデオか本屋くらいである。ジーンズにコートを羽織ったカジュアルな服装で近くのビデオ屋に歩いていく。1階は本屋、2階はレンタルビデオになっている。ここが一番近くて大きい店なのでよく来てしまう。新作コーナーからサスペンスのコーナーへ入っていく。結構見尽くしているので、重箱の隅を突く感じでビデオを物色していく。あ、これ面白そう。とサチコが手を伸ばした途端先に他の手が伸びて取られてしまった。「あ!」見るとあのBarのバーテンだった。 <つづく>面白かったらクリックしてください → 人気blogランキング
2005/02/14
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「どうぞ。」サチコの前にオレンジ色のカクテルが差し出された。一口飲むと乾いていた喉が潤っていった。おいしかった。すこし落ち着いてきた。と同時にいろいろな事が頭の中でグルグル回っていた。どうしてこの人名前覚えていたのかしら・・・・。このお店何となく来た事ある、って感じだけど・・・って実際に来たのよね。やっぱり酷く酔ってしまったんだわ・・・。きっとお店の人に迷惑かけたのかもしれないわ・・・。客が一人、また一人と帰っていき、サチコ一人になってしまった。「もう一杯いかかですか。」気づくとグラスは空になっていた。時計を見るともうすぐ8時だった。「じゃ、アプリコットクーラーを」バーテンの動作は無駄が無かった。190cm近くある長身な身体はカウンターの中で存在感を持っていた。精悍な顔立ちに見惚れそうだった。思い切って2日前の事を聞いてみよう、と思った。「どうぞ」2杯目のカクテルがサチコの前に差し出された。「あの・・・。どうして私の名前覚えていてくださったんですか?」「幸せな子、と書いて幸子。サチコです。2日前にお客様が私にそう教えてくださいました。」顔面が赤面してくるのを感じた。「私、あの日、かなり酔ってしまったみたいで何かご迷惑かけませんでしたか。」「いえ。」動作もそうだが、言葉にも無駄が無い。「私、何を話していたんでしょう?さっぱり覚えていないんです。こんな事初めてで。実はここのお店の場所も覚えていなくて。同僚に教えてもらって、また来たんです。覚えていないなんて、なんだか気になってしまって。」一気にそこまで言うと、少し沈黙が続いた。「お客様、あの日は気持ちよく酔っていらっしゃっいました。30を迎えたのに今は恋人も居ない。あと、お仕事の事とか。生い立ちについてもお話してくださいました。産まれてすぐ、ご両親が事故でお亡くなりになって、祖父母に育てられたが、その祖父母も今はいない、と。」バーテンは簡潔に教えてくれた。そうか・・・。そうだったんだ。私は自分をさらけ出してしまったのだ。普段閉めていた重い扉を、お酒と、この人によって開けられてしまったのだ。きっと、泣いて崩れてボロボロになったしまったに違いない。サチコは後悔した。恥ずかしさと悔しさと・・・いろいろな感情が入り混じった気持ちになった。サチコはうなだれた。「お客様。人は誰かにいつも話を聞いて欲しいという願望があるのです。ずっとその扉に鍵を掛けている人ほどその欲求は強いのです。お客様。あの日の事はお客様の失敗ではありませんよ。」その声は優しかった。「ありがとう。」サチコはそう言って立ち上がった。「またいらしてください。」バーテンは優しい目をしていた。哀れみでも同情でもない、優しい目だった。「今日は来てよかったです。また来ます。」サチコはそう言って店を後にした。外はいつも通りの寒さだったが、それぼど寒さは気にならなかった。 <つづく>面白かったらクリックしてください → 人気blogランキング
2005/02/13
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S大学病院の近くのマンションにサチコは住んでいる。数年前まで寮にいたが5年までしか入れないので近くのマンションに引っ越したのだ。院内に寮があったので寮に居た時は白衣のまま病棟まで行けたが、今はそうはいかない。最近めっきり寒くなって手袋とマフラーも欠かせなくなった。救急用の入り口から入りロッカーで白衣に着替え4A病棟に向かう。朝のこの時間は静かである。点滴棒を引きながら患者さんが朝の散歩をしたりしている。「先輩。おはようございます。」背後から元気な声だ。ユミだ。「おはよう。」「あの・・・先輩。これ。」ポケットから手のひらサイズの2つ折りにされた紙を差し出した。「ありがとう。昨日はゴメンね。外出中だったでしょ?」苦笑いで受け取った。「いえ。私もそこのお店また行きたいです。バーテンさん渋くてカッコ良かったし。」ユミはそういうと舌を出して笑った。ユミは2年目の看護師である。よく働くし、イージーミスはたまにするが、勤務態度は真面目で勉強もきちんとしているようである。4A病棟は大学病院では珍しく内科の混合病棟である。他の病棟は科ごとになっているのだが、4Aは内科系のどんな疾患でも詰め込まれてしまう。便利病棟などど言うスタッフもいたりする。新人の間では一番配属されたくないとささやかれている。技術が未熟である上に幅広い知識も必要とされるからである。毎年4~5人新人が配属されてくるがユミの同期はみんな退職してしまった。私の同期も今はいない。新人の頃は私も辛かった。辞めたいと何度も思った。ユミはそんな素振りは見られない。見せないようにしているだけかもしれないが、もう不安定な時期を乗り切ったのかもしれない。たぶん、ユミならこれからもこの病院で看護師としてやっていけるだろう。と、一人昼休みに食堂でランチを食べながらそんな事を思っていた。ユミからもらったメモをポケットから出して眺める。Bar D03-XXXX-XXXX第一カワカミビル地下1F地図を見ると浅草線三田駅が近そうだったが、駅から少し離れているようだ。しばらくサチコは地図を眺めていた。勤務終了間近、緊急入院があり時計を見ると6時半を回っていた。疲れた・・・。心の中でつぶやいた。自分の仕事は終わっているのでやっと帰れる。ユミはまだ記録が残っているらしくPCに向かっていた。スタッフに「お先です」と声を掛けてロッカーに向かった。私服に着替えて病院を出ると身にしみる寒さだ。-行ってみようか-ふいに心の中で思った。私はBar D へ向かった。三田駅で降り地図通りに歩いた。駅からは7~8分歩いた所に第一カワカミビルを見つけた。地下に続く細い階段が見えている。何だかサチコは鼓動がしてくるのを感じていた。階段を下りる。階段を下りて右側に D とだけ小さく書かれたドアがあった。鼓動が最高潮に高まっていた。ドアを開けた。店内はやや暗いが暗すぎる事も無い。こじんまりとしたカウンターのみのショットバーだ。家具はアンティークな感じでまとめられており暖かい感じのする店だと言うのが第一印象だ。客はまだ少ない。「いらっしゃいませ」バーテンが声をかけた。「どうぞ」バーテンは少し微笑んで目の前の席を手でさした。「あの・・・。」「サチコさんでしたよね。」「あ・・・あの・・・。」「・・・ご注文はどういたしましょう。」名前を覚えていられて言葉に詰まってしまう・・・。「カンパリオレンジ」分かりました、とシェイカーに準備するバーテンの姿をサチコはボーと見ていた。 <つづく>面白かったらクリックしてください → 人気blogランキング
2005/02/12
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小さな女の子が泣いている。ずっと泣き止まない。どうしたんだろう。お母さんはどこにいるんだろう。私は心配そうに見ている。寂しい・・・・悲しい・・・辛い・・・女の子の気持ちが伝わってくるみたいだ。早く来て欲しい。あれはお母さんだ。女の子なのか、私なのか、シンクロすると言うのはこういうことなのか?私を呼んでいる。そうだ、あれは私だ。声がする。「さっちゃ~ん。さっちゃ~ん。どこにいるの~?」「さちこ~。どこにいるんだ~?」お父さんだ。私はここだよ。ここにいるんだよ。泣いているのは私。早くその暖かい腕の中に包まれたい。眩しい! まぶしい・・・ マブシイ・・・けたたましいベルの音で目が覚めた。最近よく見る夢だ。汗でパジャマがぐっしょりしている。昨日で私は30歳になった。誕生日と言っても一緒に祝ってくれる特別な人もいず、昨日は準夜勤だった。急患もなく比較的落ち着いた準夜勤だった。そうだ、昨日定時で終わったから帰りにユミとBarに寄った気がする・・・。「あいたたっ!」ひどい頭痛。二日酔いだ・・・。こんなにひどいのは初めてかも。今日は休みで良かった。どこのBarだっけ・・・。思い出せない。ユミに連れられて行ったのだっけな・・・。でも、本当にどこのBarだっけ?思い出せないのがすごく気になる。ユミに聞いてみよう。ユミも今日は休みのはずだ。3回コールが鳴ったところで繋がった。「もしもし、お休みのところごめんね。内山ですけど。」私は相手に間髪居れず喋る癖がある。人にはいろいろ間合いがある、と電話をするときいつも思う。「先輩。昨日はお疲れ様でした。あの~・・・。私何か昨日しちゃいました?」「ごめん。違うのよ。ちょっと聞きたいことがあって。昨日ね、仕事終わってからどこのBarに行ったっけ?」「やだ~先輩。そんなこと?でも良かった~。事故報告書かと思いましたよ。」ユミの声が頭に響く。事故報告書とは始末書のことだ。患者が勝手にベッドから落ちても看護師のミスになって始末書を書かされるのだ。「先輩もしかして覚えてないんですか?」「そうじゃないんだけど、また行こうかな、と思ったんだけど場所がよく分からなくて・・・。」酔っ払って記憶が無いから教えてくれ、だなんて恥ずかしくて言えないだろう。それに、そこまで仲が良い間柄でもない。職場でうわさが広まっても困る。「あぁ。ちょっと分かりづらいですからね。あそこ。今度の勤務一緒の時また行きましょうよ。あ・・・それとも彼氏とですか~?それだったら明日地図とお店のTelメモってあげますよ。先輩、あのお店気に入ったんですね。昨日も先輩一人でもう少し飲んでいくって・・・。ちょっと心配だったんですけど先に帰っちゃいました。でも一人でBarで飲むなんて大人って感じでしたよ。それじゃ、明日必ず持って行きますから。」「ありがとう。」そうだ一人で飲んでいたんだ・・・。ユミに電話しておぼろげながら昨日の記憶が少しずつ蘇ってきたようだ。 <づつく>面白かったらクリックしてください → 人気blogランキング
2005/02/11
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