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星河长明 Shining Just For You第1話…天地開闢(カイビャク)より前のこと混沌とした世に真師(シンシ)が現れる不思議な力を持つ真師一族は俗世と隔絶し、謎に包まれていたその後、人族と羽(ウ)族が交互に大地を支配しながら争いが続き、夸父(コホ)族や河洛(カラク)族も巻き込まれてしまうしかし燹(セン)朝の末期、突如、ひとりの若き将軍が世に現れた将軍は五族を統一、他に類を見ない王朝・晁(チョウ)を建て、今や鳥の飛来する場所すべてが晁の領土となるただし夜北(ヤホク)と呼ばれる地だけが未だ晁に帰属せず、雄大な自然の中で7つの部族が争いを続けていた…夜北には誰からも愛される朱顔(シュガン)公主・七海蕊(チーハイルイ)がいた。七海蕊にはかけがえのない親友・葉凌霜(イェリンシュァン)がいたが、彼女は皆から″疫病神″と忌み嫌われ、父の大淵古・葉景清(イェケイセイ)まで娘を不吉だと言ってはばからない。そんなある日、凌霜は父に封印を解いて欲しいと頼んだ。「7歳の時に星辰(セイシン)の力を封じたでしょう?ずっと苦しかったの、早く解いて」「もしや…また災いを予知したのか?」「だから何?災いは勝手に起こるものよ?私は予知できるだけ! 私が疫病神なら占術師は?宮廷の欽天監(キンテンカン)は?疫病神なの?!」「声が大きい!決して外では口にするな!今度、妄言を吐けば懲らしめるぞ?!」年に一度の秋の大祭に夜北七部族が集結した。大会で優勝すれば夜北一の勇士と称えられる。しかし大会が始まろうとしたまさにその時、狼の王と崇められる巨大な雪狼(セツロウ)王が現れた。会場は騒然、凌霜は七海蕊を逃したが転倒し、雪狼の標的となってしまう。すると突然、見知らぬ男が現れ、雪狼王を蹴り飛ばし、凌霜を救った。「姑娘(グゥニャン)、雪狼はそなたを狙っている、どうする?」「だったら…あいつを殺す!」「はお!実に勇敢だ!」凌霜は護身用の短剣を抜き、無謀にも男と協力して雪狼に立ち向かった。男は向こう見ずな娘に驚きながらも凌霜の短剣で雪狼を退治する。しかし雪狼王は夜北の狼神、苗黎(ビョウレイ)王子は激怒して男に斬りかかったが、その時、軍隊が駆けつけ男を守った。「私は晁の藍衣(ランイ)軍の統領・謝雨安(シャウアン)、婚姻の交渉に参った」夜北七部族首領・七海震宇(チーハイシンウ)は使者を天幕の中へ案内することにした。しかし狼神が殺された民は納得できず、このままでは夜北に天罰が下ると嘆く。するとこれも疫病神である葉凌霜のせいだと罪をなすりつけ、生贄にして狼神の怒りを鎮めるべきだと訴えた。謝雨安はよってたかって娘を責め立てる部族に呆れ果て、凌霜に晁の忠勇(チュウユウ)符を授けるという。「受け取れば今後、そなたを虐げる者を我が晁の敵とみなす、生きるか死ぬか、自分で選べ」凌霜は困惑して父や大王の顔色をうかがったが、思い切って忠勇符をつかんだ。しかし緊張が解けたのか、急に倒れてしまう。その夜、夜北は謝将軍のため歓迎の宴を開いた。七海蕊はようやく目を覚ました凌霜を宴会に連れ出したが、踊りの輪に加わってしまう。仕方なく独り酒を飲み始めた凌霜、そこへ恩人の謝雨安がやって来た。「姑娘、ここの者は皆、そなたを疎んじているようだ、一緒に晁へ来ないか?」「行かない、あなたのような偉ぶった人は苦手だしね、私に構わないで …どうせ運命は決まってる」「生来の疫病神などいるものか、運命を切り開くのは自分だ」「(はっ)そうね…ありがとう!」すると凌霜は急に笑顔になってどこかへ行ってしまう。界諸嬰(カイショエイ)は主(アルジ)が7枚しかない忠勇符の1枚を躊躇なく渡したことから、凌霜を見初めたと誤解した。しかし謝雨安は晁の皇后が誰にでも務まると思うかと冷笑する。「それより想い女に会わなくてよいのか?」「″陛下″、ご存知でしたか…」実は夜北の長公主・七海怜(チーハイリアン)は青蘅(セイコウ)という名で4年間、晁の都・天啓(テンケイ)で学び、界諸嬰と恋仲になっていた。翌日、七海大王は晁との和親を快諾、長公主の七海怜を同席させた。謝雨安は特別な結納品としてあらゆる美女を映すという神鏡を携えていたが、晁に迎えるのは長公主ではなく朱顔公主だという。突然の縁談に七海蕊は動揺し、悲しみに暮れた。凌霜は七海蕊を救うべく謝将軍の天幕を訪ね、自分が代わりに晁へ行くと申し出る。「皇帝は占星術を重んじているとか、私は父に学び占星術に詳しいわ それに…私なら公主より陛下の歓心を買えます」「そなたは幼少より災いを予言し、疫病神だと疎まれている 生き延びてこられたのは公主の後ろ盾ゆえ…かような娘が皇后に相応しいと?」「天啓にまで私の悪い噂は届いていないはずよ?」凌霜は晁の皇帝が残虐で嫁いだ者が皆、殺されると聞いていた。しかし謝雨安は誤解だと否定し、婚姻は和親のためで、皇帝も暴君ではないという。「とにかく…私の望みはただひとつ、阿蕊を守ることなの」追い詰められた凌霜は差し入れの乳茶を謝雨安に勧めた。すると茶を飲んだ謝雨安は急に立ちくらみを起こしてしまう。凌霜は隠し持っていた短剣を謝雨安に突きつけ、朱顔公主を絶対に嫁がせないと脅した。「解毒薬は私が持ってる、よく考えるのね」その時、謝雨安が凌霜の腕をつかみ、呆気なく形勢を逆転させてしまう。つづく※このドラマも九州シリーズです九州シリーズとは中国のファンタジー小説の作家たちが共通の世界観をベースに描いた物語ちなみに6つの種族があり、今回の話に登場した人族・羽族・夸族・河洛族の他に魅族・鮫族があります
2024.06.09
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星河长明 Shining Just For You第8話白露(バイロウ)こと葉凌霜(イェリンシュァン)から突然、皇帝に届いた贈り物。彧修明(ユーシューミン)は何か仕掛けがあると疑ったが、ふたを開けてみると思いがけず遊戯が入っていた。「″演兵棋(エンヘイキ)″だと?」白露の読み通り皇帝が演兵棋に食いつき、広陽(コウヨウ)宮に呼ばれた。すると白露が贈った遊戯を巨大化した盤上が床に広がっている。彧修明は″演兵棋″改め″逐鹿(チクロク)九州″だと自慢し、遊び方を説明するよう命じた。「1000人の手兵で戦い、天啓(テンケイ)を制した方が勝者です」「で、この印は何だ?」「それは″真師(シンシ)″を表します、真師を得たら兵力は10倍になります…多過ぎますか?」白露はこの遊戯の基となる″九衡(キュウコウ)推演″の考案者は真師だと明かした。「真師は天と地を逆にすることもできる、10倍では少な過ぎるくらいだ」こうして皇帝と白露の勝負が始まった。この遊戯で皇帝と真師の関係を探るつもりだった白露。結局、収穫は得られずに終わったが、思いがけず皇帝から雲笈(ウンキュウ)楼の出入りを認められた。凌霜は七海怜(チーハイリアン)を訪ね、皇帝の不死身の理由はまだ解明できないと報告した。「ただ真師と関係ありそうです」「時間がないから急いで調べて」聞けば七海怜たちに霍陸(カクリク)という協力者が現れたという。霍陸は恩人である界海天(カイカイテン)の死に義憤を抱き、星瀚(セイカン)大典で直訴する計画だった。「私たちはその騒動に紛れて潜入するわ」宮中に戻った白露は早速、霍陸について調べ始めた。確かに謝雨安(シャウアン)は霍陸という配下がいると認めたが、界海天の腹心でもなければ、界家のために義を尽くすような男ではないという。また天(テン)妃・冷天曦(レイテンギ)の話では界海天と親交のあった者は少なく、それも西江(セイコウ)での戦友ばかり、多くはすでに亡くなっていると分かった。「界海天は堅物で、禁軍の将領たちも私的な交流は持たなかったの」「これまで界監正から恩を受けた者はいませんか?」「私の知る限りいないわ」白露はちょうど挨拶に来た顧惘然(コボウゼン)にあばら屋へ文を届けて欲しいと頼んだ。「誰もいなかったら置いて帰って」白露は霍陸が怪しいことを伝えたが、七海怜はこれが最後の機会になると警告を無視した。…命を捨てる覚悟で天啓に来たわ、だからあなたの忠告には従わない…七海怜の返信を受け取った白露は久しぶりに災いの予知夢を見た。どうやら七海怜の暗殺計画は失敗に終わるらしい。「見て見ぬふりはできない、そうだ、氷玦(ヒョウケツ)で逃げ道を作る!」すると雲紋(ウンモン)は天啓で氷玦の売買が禁じられているため、手に入らないと教えた。氷玦を探して街に出かけた白露。すると見月楼(ケンゲツロウ)の前を通りかかった時、最上階の露台から鈴の音が聞こえてきた。白露は夜北で翼無憂(イーウーユー)からもらった風鐸(フウタク)を思い出し、まさかと思って店に入ってみる。すると鶴瑾(カクキン)が出迎えた。「葉姑娘、待っていたわ」翼無憂は生きていた。「帰って来たのね…」凌霜は感激のあまり思わず翼無憂に抱きつき、無事を喜んだ。しかし朱顔(シュガン)公主・七海蕊(チーハイルイ)が一緒ではないと知る。あの時、翼無憂は深手を負って体力を失い、ひとまず公主と洞窟に隠れて休んでいた。公主は足手まといになると考えたのか、翼無憂が目覚めた時には姿がなかったという。「未だ行方不明だ、それから大淵古(ダイエンコ)を見つけた その時すでに虫の息で、介抱したが亡くなったよ」凌霜は父の死を知ったが、今は悲しんでいる時間もなかった。「とにかく氷玦が手に入る場所があったら教えて欲しいの、じゃあ帰るわ」「私がここにいる時はこの風鐸を吊るしておく、何があろうと私は君の味方だ」翼無憂と鶴瑾は氷玦探しに出かけた。するとある街で偶然にも静雲(セイウン)の琴を持った娘と再会する。娘の名は棠縁(トウエン)、棠家と言えば翼氏の料理番の家系だった。棠縁の両親は静雲の降嫁に同行し、婚家でも料理番だったという。「静雲郡主はお子に恵まれず、寂しく暮らしていました 晁軍が城下に迫り、雪(セツ)氏が投降したあと、郡主が仰ったのです ″私は誇りは高いけれど父と兄は軟弱で、嫁いだ夫も不甲斐ない 果たしてどの国に殉ずるべきか″と…そして琴を残し、自害されました」すると翼無憂は静雲と同族だと明かし、自分の酒楼へ身を寄せるよう勧めた。翼無憂は西市の彩鐙(サイトウ)舗という店で氷玦を見つけた。その帰り道、追っ手から逃げる羽(ウ)人の娘を見かけ、物陰に引き込み助ける。「殿下?!」「殿下と呼ぶな、羽氏は滅びたのだ、早く去れ」しかし鶴雪(カクセツ)の天英(テンエイ)は四皇子の力になりたいと嘆願した。※鶴雪=飛翔術を用いる羽族の武人一方、七海怜は霍陸に利用されているとも知らず、軍装を受け取った。これで兵士になりすまし、当日は禁軍に紛れ込む。いざとなると急に怯える仲間もいた。そんな中、青詹(セイセン)は術が使えない弟・青夙(セイシュク)を残して行くと決める。「明日、城門が開いたら天啓を出ろ、私たちが仕損じた時は夜北に戻るな」「哥…」翼無憂は氷玦を手に入れたものの、夜北に暗殺計画があると聞いてぴんと来た。そこで凌霜を呼び出し、関わるべきではないと反対する。しかし凌霜は七海蕊のために彼女の最愛の姉を助けたいと訴えた。「私の好きにさせて、もう行くわ」翼無憂は説得に失敗、仕方なく鶴瑾に氷玦と凌霄焔火(リョウショウエンカ)を欽天監に届けるよう頼んだ。その夜、凌霜は天妃に贈る錦嚢(キンノウ)作りに没頭していた。雲紋は翼無憂が正しいとたしなめたが、凌霜は聞く耳を持たない。「私が心配なのね?」「心配なもんか…勝手にしろ」凌霜は雲紋を守るため、琥珀石を分波盅(ブンパチュウ)にしまうことにした。翌日、白露は天妃を訪ねた。明日はいよいよ星瀚大典、実は夜北では彩纓(サイエイ)節を祝い、女子は親しい人に手製の品を贈る日だという。「私は天妃娘娘に錦嚢を作りました」「家族のいない私たちは似た者同士ね」冷天曦は喜んで受け取ったが、刺繍の図柄が草花や虫ではなく変わった模様だった。「幼い頃、真師に会ったことがあるのです、それで真師の錦嚢の図案を真似てみました 中の香料を楽しんでください、星辰力を封じられた苦痛を癒してくれる香りです 私は幼い頃、よく変な夢を見て不吉な者だと思われ、力を封印されました」「本当に私たちは似た者同士なのね」その夜、界諸嬰(カイショエイ)は隠れ家に七海怜を訪ねた。しかし七海界はもう会うのをやめようという。「星瀚大典が終わったら君が陛下に拝謁できるよう取り計らうよ、約束しただろう?」「…もういいの」すると七海怜は屋敷に入ってしまう。一方、暗衛統領・風隠(フウイン)は七海怜たちが蘭心巷(ランシンコウ)の空き家に潜伏中だと皇帝に報告していた。彧修明は白露を将棋に誘い、七海怜がどんな人物か聞いた。驚いた白露だったが平静を装い、父の占いでは″天の加護がある者″だという。「でも苦労の多い人です、幼くして生母を亡くし、父君はよそ者を略奪して妻にした それでも人を恨まず、夜北で最高の公主になろうと努力していました」「朕と七海怜なら…そなたはどちらの味方をする?」「それは難問ですね」白露は言葉に詰まってしまう。「まあよい、答えを出す日は近い…夜も更けた、早く休め」しかし彧修明は下がろうとした白露を思わず呼び止めた。「白露?朕に話すべきことがあるのでは?」「話すべきことは天妃娘娘に伝えました、知りたくば天妃娘娘にお尋ねください」「はお、大典を終えたらこの勝負の続きを…」「機会があれば是非」白露は欽天監に戻ると、翼無憂から届いた化粧箱を開けた。「…凌霄焔火だわ」つづく( ๑≧ꇴ≦)羽族皇子に似合わない麺類!からの箸のパスタ巻きwそれにしても話が所々つながっていない気が…いや私だけか?( ̄▽ ̄;)
2024.06.18
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月升沧海 Love Like the Galaxy (第9話)第36話「負けず嫌いの涙」凌不疑(リンブーイー)は宮中に留まる程少商(チォンシャオシャン)を気遣い、曲陵(キョクリョウ)侯府から少商の荷物を運び込んだ。少商は届いた荷物を見ると家が恋しくなる一方だとぼやいたが、皇后は単に宮中での暮らしが窮屈なだけだと見抜く。思わず顔を見合わせて失笑する皇后と少商、しかしそこへ五公主が現れ、寝殿のなごやかな空気は一変した。五公主は珍しく殊勝な様子だった。「どんな貴重な礼品も父皇と母后の権勢を借りて得たもの そこで自ら舞人を招いて演舞を編成し、長く練習しました」「母后はあなたの孝心を知っているわ」少商の前で褒められ得意げな五公主、しかし喜んだのも束の間、母后から弘農(コウノウ)郡で広大な田畑を荘園にしたことを咎められてしまう。「でも放置されている荒れ地です 荘園にして水路を開き流民に開墾させれば、食糧も増え、民も安心かと…」「天下は王の領地ゆえおのずと開墾する民もいる、心配には及ばない」しかし五公主は少商のすることには援助しても自分は叱責されると恨み言を漏らした。皇后は少商なら自腹であり私欲でもないと呆れ果て、話をそこで終わらせてしまう。病み上がりの皇后は五公主が宴に招いた世家の息女たちが煩わしく、越(ユエ)妃の永楽宮へ預けることにした。少商は駱済通(ルオジートン)と一緒に五公主たちを瓏園(ロウエン)まで案内することになったが、庭園の橋を渡っている時、五公主の取り巻きに突き飛ばされて池に落ちてしまう。すると五公主は少商を怖がらせようと池に蛇を投げ込ませた。驚いた少商は必死に逃げ惑いながら岸に上がったものの、足首をかまれてしまう。蛇には毒がなく少商は無事だった。五公主はびしょ濡れのまま逃げるように長秋宮へ戻った少商の姿を見て溜飲を下げ、駱済通に口止めしておく。「嫁ぐ前に公主を怒らせて騒ぎを起こせばどうなるかしら…」思わず口ごもる駱済通、その時、物陰から音が聞こえた。「何の音?!出て来なさい!」全てを見ていた五皇子は申し訳なさそうに姿を現したが、嫡子の五公主には頭があがらない。五公主も父皇が過って宮人に産ませた五皇子など歯牙にも掛けず、余計なことは言うなと釘を刺しておいた。少商が湯浴みから上がる頃にはすでに夜になっていた。すると急に凌不疑が訪ねてくる。「宮中なら昼夜、会えると思ったが、君はずっと忙しくて差し入れも使いをよこす 以前よりも会うのが難しくなるとはな…それで今夜はどうにも恋しくなって会いに来た」少商はかろうじて笑みを浮かべたが、涙があふれそうになって背を向けた。「今や朝堂では誰もが私を羨む、賢恵な女子を妻にできると… 陛下すらも君が賢く有能だと褒めた、長秋宮を見事に差配しているとね 君は誰かに尽くすと決めたら全身全霊でその人のために献身する、たとえ自分が辛くても…」不疑の称賛の言葉を聞いた少商はかえって悔しさと惨めさが募り、ついに泣き出した。「嫋嫋(ニャオニャオ)?どうした?」少商は思わず不疑に抱きつき、泣きじゃくってしまう。驚いた不疑は少商を強く抱きしめながら理由を聞いたが、少商は家が恋しいだけだと嘘をついた。凌不疑はそれ以上、追求しなかった。その代わり少商を抱き寄せる口実に、背中にある急所・命門(メイモン)の場所を教える。「…他に教えられることがある?例えば誰かに虐げられた時、応戦する方法よ」「私がいる、誰も虐げない」「でもいない時は?!」「何を学びたい?」「こんな風に後ろから押されたら?」少商が不疑の背中を押そうとすると、不疑はあっさり避けて少商の腕をつかんで見せる。「じゃあこうしたら?」すると不疑は攻撃を華麗にかわし、少商を捕まえて寝台の上に押し倒した。「どうだ?」「…使えるのは手一本よ」「はお」不疑は片手だけでも軽々と少商の手を封じてしまう。「手一本も使わないで」そこで不疑は両手を使わず、少商に覆い被さった。思いがけず唇と唇が触れ合いそうなほど接近してしまう2人…。少商は恥ずかしくて視線をそらしたが、その時、不疑が少商の手を取って自分の背中に回した。「この先、私の命門は君に託した…嫋嫋、何が起きたんだ?」「…ひとつお願いがあるの」「君が望むなら全て叶える」皇后の寿誕を祝う宴、少商は見事に取り仕切って見せた。最初の余興は意表をついて凌将軍が琴を披露、実は不疑は皇帝に頼まれても腕が鈍っているからと断り続けて来たという。どうやら不疑を弾かせる気にさせるのは少商だけらしい。次に三皇子がちょうど皇后の寿誕前に封土で新たな鉱脈を発見したと報告した。「これも母后の福がもたらしたものでしょう」皇帝が上機嫌になったところで今度は皇太子と皇太子妃が西域で購入した玉麒麟(ギョクキリン)一対を献上した。しかし皇太子妃がうっかり銀銭をつぎ込んだと口を滑らせ、失笑を買ってしまう。倹約を推奨する皇帝の前での失言に顔を引きつらせる皇后と皇太子、その時、少商が助け船を出した。少商は皇太子妃の隣にひざまずき、皇太子からの祝いは他にもあると上奏した。実は今日の酒は皇太子が西域から取り寄せた種から実った果実で作ったという。「果実酒なら浪費にならず存分に飲めます」また料理も皇太子が求めた胡桃の油を使っていた。「胡桃は腹持ちするため欠かせぬ食物なのです、太子に感謝します」少商の機転で皇太子は面目を保ち、皇帝も民の心が分かる皇太子だと喜んで褒賞を授けた。安堵して席に戻った皇太子、しかしふいに向かいの席にいる想い人に気づく。2人はしばし見つめあったが、それを見た皇太子妃は激しい嫉妬に苛まれた。五公主は二公主と駙馬(フバ)が奏でる音楽に合わせて群舞を披露した。しかし人数が多すぎたせいか途中でぶつかり合い、転んでしまう。皇帝は意気消沈する小五を慰めるため褒美を出すと言ったが、宴席は何とも言えない微妙な雰囲気に包まれた。凌不疑と少商からの祝いの品は書簡だった。皇后は献上された書簡を早速、開いてみると、それが亡き父が記した詩文だと分かり、思わず涙ぐむ。宣(シュエン)太公は詩文を好んでいたが、記した詩文を惜しむことなく友に贈り、屋敷には書簡が残っていなかった。「…父の墨宝は2度と見られないと思っていたわ」皇帝は心がこもった礼品だと感激し、皇后も子晟(ズーション)と少商が自分を心から気にかけていることを知っていると感謝した。宴席で並んで座る凌不疑と少商はすでに夫婦のように仲睦まじかった。皇帝はそんな2人の様子を見て目を細めたが、袁慎(ユエンシェン)や駱済通は内心、穏やかでない。そうとは知らず、少商と不疑は同じ杯の酒を分け合いながら飲んでいた。その時、少商は不疑の右薬指に巻いた包帯に気づき、琴の練習のせいかと尋ねる。しかし不疑はなぜか黙ったまま何も答えなかった。少商はふいに昨夜、不疑が自分を押し倒した時のことを思い出し、何とも言えない愛おしさが湧き上がる。すると少商は衝動的に不疑の横顔に口づけし、照れくさそうに宴席を出て行った。駱済通の侍女・春笤(チュンティアオ)は五公主が取り巻きの娘を呼んで悪巧みしていることに気づいた。すると令嬢が早速、五皇子に何やら耳打ち、五皇子は千鳥足で宴席から出て行ってしまう。春笤はこっそりあとをついていくと、五皇子が庭園で少商を待ち伏せしていた。五皇子は酔った勢いで少商にちょっかいを出そうとしたが、少商は凌不疑を真似て五皇子の腕をつかむと池に落としてしまう。「俺は泳げないんだぞ!助けてくれ!」しかし少商は泳げなくても岸へたどり着けることを知っていた。すっかり酔いが覚めた五皇子は激怒、少商の悪辣さは凌不疑と同じだと批判した。実は五皇子は幼い頃から凌不疑にいじめられていたという。「奴は陰湿で必ず報復する、手段も選ばない、そなたとお似合いだな!冷酷で無慈悲だ!」出自のせいで卑屈な五皇子は少商まで軽視すると嘆いたが、少商は五皇子が独特な見解を持っていると知っていた。「五皇子は異国の風土の話がお好きだとか? …朝堂に無益と知りながら探求しようとするのは純粋な心からです 誰にも称賛されないからって何です?自分が好きならそれでいい その点で私と五皇子はよく似ています」「…そこまで言うならもう難癖はつけまい」「はお、では今日から私たちは友ですね」駱済通はせめてもの思い出に凌不疑と別れの杯を交わしたかった。そこでちょうど少商が席を離れた隙に凌将軍に声をかける。「北西に嫁いだら今度はいつ会えるか…私から将軍に一献を…」すると春笤が慌てた様子で戻ってきた。「大変です!…五皇子と程娘子が鏡心(キョウシン)池で密会しています!」つづく。゚(∩ω∩`)゚。 にゃおにゃお〜それにしても3も5も声が上手いわ、意地悪だけどw
2023.10.16
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月升沧海 Love Like the Galaxy (第10話)第37話「報復の流儀」程少商(チォンシャオシャン)は池に落ちてびしょ濡れになった五皇子を長秋(チョウシュウ)宮で着替えさせることにした。五皇子は誰かに見られたらあらぬ誤解を受けると心配したが、嫌な予感は的中する。「あらあら、本当に皇兄と程娘子が密会していたのね~」五公主の勝ち誇った顔を見た少商はこれが五公主の仕業だとすぐに分かった。五公主は父皇と母后の前で五皇子と少商を追及した。焦った五皇子は五公主の取り巻きから鏡心(キョウシン)池で佳人が待っていると聞いたと訴えたが、肝心の証人の姿がない。少商も池に落ちた五皇子を助けただけだと釈明したが、五公主はそんな言い訳を誰が信じるかと鼻で笑った。「ごぅら(够了)っ!」皇后は思わぬ騒ぎに不快感をあらわにし、宴に戻らず長秋宮に帰ってしまう。皇帝は祝宴を台無しにされ怒り心頭だった。しかし皇后の寿誕に免じて今日のところは不問に付すという。こうして一同が引き上げ、五皇子も逃げるように帰って行った。すると凌不疑(リンブーイー)がやっと少商に声をかける。「大丈夫か?」「私を信じる?」「もちろん」「よかった、私は皇后のところへ行くわね」少商はそれ以上、何も言わずに急いで戻って行った。皇后は結局、寝付けないまま朝を迎え、付き添ってくれた皇帝を見送りに出た。するとまだ夜が明けたばかりというのにどこへ出かけていたのか、少商が長秋宮に戻ってくる。「少商、宴の準備で大変だったわね…早く支度して家に帰りなさい」「ありがとうございます、陛下、皇后」その時、五公主が凄まじい剣幕で長秋宮に乗り込んできた。「程少商!殺してやる!」五公主はなぜかびしょ濡れで、全身が真っ黒に汚れていた。五公主は息女たちと飲み明かし、朝方に瓏園(ロウエン)へ戻った。しかし息女が扉を開けた途端、仕掛けてあった桶が飛び出し汚水をぶちまけ、さらに勢いよく放たれた荊が身体を打ち、最後には灰を浴びせられたという。五公主は全て少商の仕業だと訴えたが、皇后は証拠がないと退けた。これに五公主は憤怒、なぜ娘ではなく少商の肩を持つのかと嘆く。そこへ越(ユエ)妃が現れた。「母后の干渉を嫌がって公主府で悠々自適に暮らし、孝行することもなかったくせに 何を今さら…」越姮(ユエホン)は自分の瓏園で起きた騒ぎのため座視できないという。すると五公主は日頃の越妃への鬱憤が爆発、暴言を吐いた。「母が皇后だと忘れている!四六時中、父皇と睦み合い、長秋宮を…」その時、越妃が五公主を平手打ちした。「私を叩いたわね…ワナワナ」「母親の寿誕の宴で程少商を陥れたのよ?ぶたれて当然では?」「嘘よ!証拠があるの?!」「あるとも!」凌不疑が五皇子を池に誘い出した息女を連行した。すでに息女は全て五公主の所業だと白状したという。「五公主は我が新婦が池に行くと知り、五皇子を誘い出して彼女の名声を辱めようとしました」しかし御前に突き出された息女は恐怖のあまり、証言する前に気絶してしまう。五皇子は全て五妹の指示だったと告発した。これに激怒した五公主は兄である五皇子を″雑種″呼ばわりしてしまう。「父皇、私は長秋宮の嫡出、なぜ卑しい者の言葉を信じるのですか?!」皇后は傍若無人な娘の姿に唖然とし、全ては自分の過ちだと嘆いた。「余は若い頃、苦労を重ねた分、子には楽をさせたかった…まさかここまで思い上がるとは… 兄弟への情がなく、越妃に不敬を働き、父皇も尊ばない しかも余の寿誕の宴で少商を陥れるなんて…誰かっ!」驚いた五公主はひざまずき、悪いのは何の因縁もない自分に報復した程少商だと訴えた。しかし五皇子が因縁ならあるとばらしてしまう。「先日、息女たちと程少商を池に落としたくせによく言うよ」何も知らなかった凌不疑は驚愕、少商がまた独りで行動を起こしたと知った。少商は自分が罠を仕掛けたと認めて謝罪した。確かに五公主に池に落とされたが、皇后の寿誕の宴を目前に控えていたため、終わるのを待って報復したという。「池に落とされたから汚水をかけ、宴をぶち壊しにしたから″荊の杖を背負う罰″を負わせたのです 五公主、少しは目が覚めました?…どうやら無駄だったようですね」「程少商っ!こんなことなら毒蛇を放って殺しておけば良かった!(はっ!)」激情に駆られた五公主はうっかり口を滑らせたが、開き直って武将の娘など死なせれば済むことだと言い放った。「公主の私が殺すのは蟻を潰すも同じ、彼らの命に価値はない! 父皇、母后、娘ではなく他人に味方するのですか?!」「…お前はどうかしている、どうかしているぞ!」増長した五公主の悪辣な行動は皇帝と皇后の逆鱗に触れた。皇后はすぐに消えろと叫び、怒りのあまり卒倒してしまう。そこで皇帝は五公主を皇陵に閉じ込め半日ほど反省させるよう命じ、今後は許可なく公主府を出るなと厳命した。皇帝は人払し、皇后を心配して寝殿に入った。すると越姮が引き上げようとした駱済通(ルオジートン)を引き止める。「五公主は帝后が罰する、では密会だと騒ぎ立てた春笤(チュンティアオ)は?」「心ある奴婢を留めて置くことはできません、父兄に頼んで辺境へ売ってもらいます」「ふっ…あなたを侮っていたわ、これほど果敢だったとはね」凌不疑は少商を連れて長秋宮を出た。「あの夜、泣いていたのは辱められて悔しかったからだったのか…いつまで隠すつもりだった? なぜ自分だけで動く?私が信じられないのか?」不疑は縁談が決まった時、これからは少商の後ろ盾となり、知己となって、少商の恐怖や孤独を共有しようと思っていたという。しかし結局、少商にとって自分は恐れ多く、近づきがたい存在のままだった。「楼垚(ロウヤオ)なら君は怯えずに済み、自由気ままでいられた だが私は君を宮中に閉じ込め、恐れを抱かせてしまう…嫌悪感すらも…」不疑は今さらながら少商を留めるべきではなかったと後悔し、独りで行ってしまう。「凌子晟(ズーション)!私は一匹狼、やられたらやり返す!そんな私が好きなのよね?! なのになぜ急に変われと強いるの?!私は程少商よ!凌子晟の新婦というだけじゃない!」すると不疑がふと立ち止まって振り向いた。「分かっている、そのままでいい」少商は皇宮も不疑も受け入れているつもりだった。…それなのになぜこのままの私を受け止めてくれないの?…少商は長秋宮に戻り、改めて皇帝と皇后に謝罪した。すると自分がめちゃくちゃにした瓏園を凌不疑がすでに配下に命じて修復させたと知る。驚いた少商は自分で責任を取ると言ったが、その時、ふせっていた皇后が身体を起こした。「少商、子晟があなたの未婚夫なら余と陛下はあなたの君姑(クンコ)であり君舅(クンキュウ) 誰かに陥れられたのに相談もせず自分で動くとは… 私や陛下を親とも思わず、子晟に愛も注がぬのなら、皆の心を失望させるだけよ?」「…もっと早く教えてくださればいいのに、今さら手遅れです(ボソッ」少商は思わず恨み言を漏らしたが、皇帝は不疑への真心を学ぶことなら今からでも間に合うと諭した。一方、凌不疑は五皇子を待ち伏せし、少商を池に落とした息女たちを全て教えるよう迫った。すると不疑は宮中にいる息女の父親を次々と捕らえ、引き回しの刑にしてしまう。「世に知らしめなければならぬ、これが我が子を躾けぬ親の末路だとな」その夜、曹(ツァオ)常侍(ジョウジ)は皇帝の命で五公主を公主府まで送り届けた。しかし五公主に反省の色は見えず、父皇と母后の容赦ない罰もしょせんは自分を怯えさせたいだけだと侮っている。その余裕も屋敷に入るまでだった。前庭には公主をそそのかして愚行たらしめた罪により死を賜った幕僚たちの亡骸が並んでいる。五公主はようやく自分の過ちの大きさに気づき、その場で泣き崩れた。五公主の″情夫″に死を賜るよう上奏したのは凌不疑だった。そのせいで都中に五公主が情夫を囲っていたと噂が広まり、小越侯は将来の君舅として面目丸潰れとなる。怒り心頭で酒楼に閉じこもった小越侯、すると番頭の田朔(ティエンシュオ)が現れ、いずれ吉報が届くとなだめた。「三皇子は品行方正で厳正中立、陛下も絶賛しておられるとか 君子とは真っ直ぐで邪のない者、三皇子は天子になる運命かと…」「…だが太子という邪魔者がいるかぎり、吉報が届くのは無理だろうな」皇太子と皇太子妃は母后を見舞った。すると皇太子妃が五妹の悪い噂が都に広まっていると報告、皇太子と少商は眉をひそめる。「…母后、どうか気に留めないでください」皇太子は五妹も少しずつ改めるはずだと安心させたが、皇太子妃は罰してこそ教訓になるため溺愛は禁物だと諫言した。「儲妃、少し遠慮しては?良かれと思っても、その言い方は人を不愉快にさせるだけ 慈悲深い皇后は怒りませんが、もし越妃だったらどうなると?」見かねた少商が釘を刺すと、皇太子妃は気まずくなって口をつぐんだ。皇太子妃は東宮に戻ってから皇太子に叱責された。いくら五妹と確執があるとは言え、父母が娘のことで胸を痛めている時に火に油を注ぐなという。皇太子妃は失言を詫びたが、皇太子はあきらかに悪意があったと指摘した。すると皇太子妃は報復するとすれば相手は五妹ではなく、我が子を死なせた曲泠君(チューリンジュン)だという。「曲泠君と殿下が怪しい仲でなければ、私も体調を崩して子を失いませんでした… 彼女は宴であなたに何度か視線を向けた、それだけでこの数日、殿下は心ここにあらずです」皇太子妃はそもそも自分を娶ったのが間違いだと嘆いた。曲泠君に未練があるなら入内(ジュダイ)させて良娣(リョウテイ)に封じれば自分も苦しまずに済むという。皇太子は疑心暗鬼に陥った皇太子妃を持て余し、無益な争いは好まないと言い捨て出て行った。つづく( ゚ェ゚)え?また振り出しに戻るの?ってか今さら阿垚を持ち出すとかエェェェ…そもそも不疑ソックの不具合が原因なのに…w
2023.10.22
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星河长明 Shining Just For You第7話天啓(テンケイ)のあばら家に潜伏する夜北(ヤホク)の長公主・七海怜(チーハイリアン)と勇士たち。するとその夜、侵入者が現れる。物陰に潜んでいた楚夜(ソヤ)は背後から剣を突きつけたが、侵入者はあの疫病神・葉凌霜(イェリンシュァン)だった。凌霜は長公主と再会、これまでの経緯を説明した。今は朱顔(シュガン)公主・七海蕊(チーハイルイ)の行方を探るため欽天監(キンテンカン)に入り、主事になったという。楚夜は葉凌霜が晁(チョウ)皇に寝返ったと誤解、始末しようと言ったが、公主にたしなめられて引き下がった。七海怜は夜北を救うため、晁(チョウ)皇・彧修明(ユーシューミン)を暗殺するために来たと明かした。「危険は承知の上よ…」実は晁皇は大淵古(ダイエンコ)が放った″衡辰天火(コウシンテンカ)″でも無傷だったという。七海怜は晁皇の鎧に秘密があると疑っていた。すると凌霜は天妃から聞いた話を思い出し、確かにあり得るという。「天妃娘娘いわく晁皇の鎧は夸父(コホ)族の鉄で河洛(カラク)族が仕立てたとか 他人には決して触れさせないそうです」「だとしたら勝ち目はある、星瀚(セイカン)大典に紛れて闇討ちを…」七海怜は礼服姿の晁皇なら自分の星辰の力で倒せると期待した。凌霜は傲慢な晁皇を警戒し、まず自分が下調べをすると申し出て帰ることにした。すると七海怜は凌霜を見送りがてら、これからは公主ではなく姉と呼んで欲しいという。「阿蕊がいない今、代わりに私を姐姐と呼んで」宮中に戻った凌霜は早速、雲紋(ウンモン)に彧修明が天火を浴びても無傷だった理由を聞いた。しかし雲紋の話では晁皇の強さは当世最大の謎であり、解き明かせる者などいないという。「いるとすれば君しかいない」「でも雲笈(ウンキュウ)楼は警備が厳しくて皇帝の許可がないと入れない 欽天監でも太史局の官吏だけなのよ?」墨(ボク)石の件が尚書僕射(ショウショボクシャ)・樊如晦(ハンジョカイ)の耳に入った。そこで樊如晦は皇帝に謁見し、国威を示す星瀚大典をできる限り盛大に行いたいと上奏、さらに金12万銖(シュ)、銀1000万毫(コウ)を工面して充当するよう進言する。彧修明は尚書に任せ、あらゆる苦難に遭った十数年を思えば金銭の心配など取るに足らないと笑った。さらに樊如晦に故郷である衛(エイ)の風物・静炎盞(セイエンサン)を下賜する。「衛の地が懐かしい…朕は12歳の時、そなたの家に預けられたな、これを贈ろう」彧修明はひとしきり樊如晦をおだててから、本題に入った。「そうだ、星瀚大典の工事で欽天監と司空監が黒曜石の代わりに墨石を用い、差額を横領している 調べはついている、首謀者は管宜(カンギ)だ、任せたぞ?」管宜が横領罪で捕まった。欽天監の監正(カンセイ)・狄蘭章(テキランショウ)は凌霜に仕事を引き継がせることにしたが、凌霜は新任の自分より適任者がいるという。「司空監の主事・顧惘然(コボウゼン)は正直もので仕事ぶりも緻密です 能力に見合う責務を任せてはどうですか?」「君の判断で決めれば良い」司寇(シコウ)監に汚職事件を裁くよう勅命が下った。家職から報告を聞いた樊如晦だったがすでに了承済み、皇帝の″明察″により管宜が首謀と調べがついているという。司寇監にもこれ以上、追及しないようすでに手を打っていた。樊征(ハンセイ)はまた父のおかげで難を逃れたが、激高した父に追いやられてしまう。するとその夜、樊昌(ハンショウ)から賂をもらった牢兵が管宜を始末、骸を梁から吊るして自害に見せかけた。宮中は激しい雨になった。界諸嬰(カイショエイ)はびしょ濡れになりながら嘆願を続けていたが、それを見た皇帝は流石に胸が痛む。「あやつを帰らせよ、明日の午後に出直させろ」翌日、界諸嬰はようやく皇帝と謁見した。皇帝は詳細を明かさなかったが、界諸嬰を禁軍に戻し、屋敷に霊安の間を設けることを許してくれる。しかし大罪を犯して死罪になった父を弔いに来てくれたのは謝雨安(シャウアン)だけだった。界諸嬰は心から感謝したが、その時、家族ぐるみの付き合いだった樊如晦が樊平(ハンヘイ)と一緒にやって来る。すると樊如晦は皇帝が界海天(カイカイテン)に積年の恨みがあったと吹き込み、今後は自分を頼れと励ました。界諸嬰は友である樊平から父の遺書を受け取った。訃報を聞いた樊平が急いで界府に駆けつけたところ夫人が服毒しており、遺書を託されたという。「樊兄、かたじけない」「会いに行きたかったが父に止められていた、陛下に知られたらお前に不都合になるからと」「ごもっともだ、母を看取ってくれて感謝する」界海天は永遠の別れに際し、息子が健康で良き妻子に恵まれるよう願った。…己の決断を悔いたことはない、この結末は予想していた…すると父の手紙を読んだ界諸嬰はそのまま泣き崩れてしまう。そこへ七海怜が現れ、黙ってそばに寄り添った。「父は陛下を恨むなと…では誰を恨めばいいのだ?」「分からないなら誰も恨まないで、楽しいことだけ思い出すの」「今の私には無理だ…」「でも私たちの思い出を忘れないで、約束よ」七海怜が帰る頃には雨が病んだ。すると帰路で霍陸(カクリク)と名乗る男が現れ、自分も晁皇に恨みを持っているという。霍陸は子供の頃、苦役を課された末に殺されそうになったところを界監正に救われていた。「星瀚大典が近い、根回しも済ませた、祭典の席上で界大人の無実を訴えるつもりだ」実は霍陸は鎮北大将軍・蔡驂(サイサン)の配下だった。「七海怜は誘いに応じました」「はお、腰抜けの界諸嬰より夜北の長公主が使えるとはな」当時、彧修明を卑賎出身の子供と侮っていた蔡驂。まさか長年、戦を勝ち抜きながら、最後は夢破れて自分が彧修明の臣となるとは予想外だった。「樊如晦が大典でお前に便宜を図る、彧修明が死ねば我が軍が1日で天啓に攻め入るだろう 天下は我ら蔡家のものだ!」蔡驂は功を立てた霍陸に何が欲しいか聞いたが、霍陸は恩人の力になれただけで十分だと言った。白露は立ち入り禁止の雲笈楼に何とか忍び込むことにした。警備が厳しいのは正門だけ、そこで裏から入り込めそうな場所を探してみる。するとちょうど応急措置した壁の穴を見つけ、蹴飛ばして忍び込むことに成功した。まさか皇帝が中にいたとも知らず…。広い殿内には珍しい書物が並び、白露は目を輝かせた。「雲紋、帝星宜鑑(テイセイギカン)が全巻、揃ってるわ!」その時、突然、誰かの声がする。「雲笈楼に侵入したのは何者だ?」彧修明は声色を変え、背後からそっと白露に近づいた。「私は書物泥棒を捕まえに来たのよ!」白露は急に振り返って曲者の胸ぐらをつかんだが、皇帝だと気づいて驚愕した。「そなた、誰と話していた?雲紋とは?」すると琥珀石の雲紋は自分の声なら聞こえていないと教え、しらばくれるよう助言する。「何のことやら、私には全然、分かりません」白露は独り言を言う癖があると嘘をつき、尊敬する皇帝の偉功(イコウ)を知りたくて来たとごまかした。白露が自分に関心があると知って悪い気はしない彧修明。そこでなぜ自分を尊敬するのか聞いた。「陛下は17歳にして夸父族と巨石で戦い、単身、谷に乗り込んで60人余りを血祭りに その後、自ら奚(ケイ)・唐(トウ)・曹(ソウ)・欒(ラン)の4つの地へ征戦 夜北の戦も含め、17年の不敗を誇るからです!ʕ•̀ω•́ʔキリッ✧ つまり…ご年齢は30代半ばかと」「計算が早いな」しかし巨石の戦いでは巨人の夸父族に囲まれ、皇帝を除き全滅したという。「そなたが目にするのは記された結果のみ、誰も過程を気に留めぬ」皇帝に見逃してもらった白露は遅くまで雲笈楼で書物を読みあさった。するとある橋に関する記述を見つける。″眠師橋(ミンシキョウ)は含真(ガンシン)の地に架けられ、傍に古い宮殿がある、そこは歴史ある土地、言い伝えでは古代は真師(シンシ)の神通力により守られていた、噂によればこの地ではよく不思議なことが起きる″とある。「雲紋、眠師橋って真師と関係があるの?真師って?」「真師は伝説に登場する種族だ、不死身で数百年を経ても老いることがない 全知全能であらゆる神秘に通じている」白露はもし彧修明に真師の力があれば衡辰天火の術も逃れられるのではと考えた。しかし雲紋はなぜか憶測に過ぎないと冷たい。そこで白露は皇帝に探りを入れることにした。翌日、皇帝に白露から箱が届いた。侍衛の凌雲(リョウウン)は贈り物なので中を確認していないという。「朕を謀殺する仕掛けかもしれぬ…ふん、あんな小娘など恐るに足らぬわ」とは言ったものの、彧修明は恐る恐るふたを開けた。つづく( ゚ェ゚)それにしても若いわ… ( °◊° )え? ←視聴者
2024.06.18
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月升沧海 Love Like the Galaxy(第29話)最終話「輝く星河の下」程少商(チォンシャオシャン)は梁邱起(リャンチゥチー)たちと郭(カク)村に入った。郭村は天下の食糧庫、1年の生産でいくつもの都城を養うことができる。少商は貯蔵された油を回収して水源を探すよう命じたが、ふと王延姫(ワンイエンジー)の言葉が頭をよぎった。…皇太子が訪ねる郭村の道中に油を撒いたわ…少商は火が起これば高所から吹いてくる風に煽られ、村だけに留まらないと気づく。「田朔(ティエンシュオ)は峪(ヨク)州の食糧を焼き尽くし、民を飢えさせて国の根幹を崩すつもりね」その時、突然、村に火矢が飛んできた。一方、霍不疑(フォブーイー)は梁邱飛(リャンチゥフェイ)たちと皇太子を援護し、田朔を追いつめていた。しかし山の向こうから黒い煙が上がるのが見える。「霍不疑、私の術中にハマったな? 郭村には勇者200人がいる、油で広大な田畑を焼けば天下の民は死ぬしかない、ふふ 確か皇帝は仁義に篤いのであろう? 息子を救って民を見捨てたとなれば、衆口にどう向き合うのか見ものだな!」田朔は勝ち誇ったように笑ったが、不疑は郭村なら少商が守ると自信を見せた。驚いた皇太子は再び少商を失えば一生、後悔すると訴えたが、不疑は退こうとしない。「霍不疑…国や民を思う忠良を気取りながら、結局、権貴を選ぶのか?! 文(ウェン)賊に取り入り、無能な太子は救うが自分の女は見殺しか?!この偽善者め!」「少商と約束した、天下を第一に夫婦で肩を並べ戦うと… 少商は知恵と勇気で必ず郭村を守り抜く、私はそう信じている」不疑は田朔に襲いかかり、胸を突き刺した。「グッ…お前の手で死ねたら忠義の名に恥じぬ」「殺せと挑発を?…戻帝が臨終の際、名のある官員や宮人は全て殉死したな お前が生き延びたのは無名の虫ケラに過ぎぬからでは?」「黙れ!忠臣が虫ケラなわけがない!敵討ちのために私を生かしたのだ!」田朔は不疑を出し抜いたつもりだったが、逆に足下を見られ激しく動揺してしまう。「敵討ちを託したか…それとも名を覚えていないだけか?」結局、不疑は止めを刺さず、田朔から剣を引き抜いた。「郭村へ!」その頃、焼き討ちをかけられた郭村では少商や梁邱起たちが身を挺して民を守っていた。じりじりと迫る残党たち、しかし間一髪のところで知らせを受けた程家が駆けつける。「嫋嫋(ニャオニャオ)に指一本、触れるな!」少商が父の声に気づいて振り返ると、激しい煙の合間から両親や兄夫婦たちの姿が見えた。「嫋嫋!阿母が来たわ!」こうして程家は一丸となり郭村の民と田畑を守り抜く。霍不疑は必死に郭村まで馬を駆けたが、到着した時にはすでに戦いが終わっていた。「郭村は無事よ、私たちは勝った…」「勝ったんだな」再会を果たした2人は固く抱き合い、ようやく夫婦一心となった。深傷を負った袁慎(ユエンシェン)は軍営で静養していた。すると幕舎に不疑が現れ、いつまで寝ているのかとしつこく聞いてくる。「私はお前の家の居候か?口うるさいぞ?」「妻を心配させるからだ」袁慎は大事ないと安心させたが、最後に伝えたいことがあった。「私と少商は似ていると思って来たが、間違いだった 両親の影響で私は深い情愛を嫌悪していた 幼心にも誠実すぎる情愛は刃や劇毒も同じだと感じたのだ 前途ある己の足を引っ張り、志を奪ってしまうと… だが少商は違った、だからお前たちは情愛が深いのだな」「…お前が気に食わなかった、だがこの5年、少商が最も辛い時に見守ってくれた だが安心してくれ、もう彼女を辛い目には遭わせない」「どうだかな、さもなくば…」「その心配はない」袁慎は即答する不疑に失笑し、これで少商への想いにけじめをつけた。子晟(ズーション)と少商の復縁は皇帝の耳にも届いた。その夜、皇帝は越(ユエ)皇后と夜空を見上げながら、これも宣神諳(シュエンシェンアン)が静かに2人を見守ってくれたおかげだと感慨深い。一方、軍営でも少商と不疑が満天の星空を見上げていた。「故人は本当に星になるの?」「昔、私もこうして星河を見上げたものだ、父母や兄妹が星に姿を変えて私を見ていないかと… それで分かったんだ、彼らに語りかけていると、声が届いた時には星が瞬く」「…皇后?私です、少商です、聞こえますか?」すると驚いたことにある星が瞬いた。「皇后だ…阿父、阿母、彼女が一生を共にする相手です、見えますか?」不疑が家族に少商を紹介すると、いくつもの星が一斉に輝いた。「皇后は私たちの復縁を望んでいたわ、だからきっと喜んでいるはずよ」不疑は少商の手を取り、愛おしそうに見つめた。すると少商は不疑の手首にある″少商の弦″に目を留め、これを見るたびに胸が熱くなるのを感じたと明かす。「子晟、あなたは情が深く感情豊かで純粋な心を持っている、この天下で一番の郎君だわ あなたとの出会いはこの上ない幸せよ」「少商、君は最も純粋で善良だ、確固たる意志を持ち、この天下で誰より勝る女子だ 君に出会えて私もこの上なく幸せだ」2人は互いの真心を捧げ合い、唇を重ねた。しかしちょうど幕舎から出て来た程始(チォンシー)と蕭元漪(シャオユエンイー)に見られてしまう。程始は父として何とも複雑な気持ちだったが、愛妻に諌められて目をつぶるしかなかった。「えっへん…霍不疑よ、娘を託したぞ だがうちの嫋嫋に不義理をしたら程家が一丸となって殴り込む」「…ぜひ」その時、程頌(チォンソン)と万萋萋(ワンチーチー)、程少宮(チォンシャオゴン)、程姎(チォンヤン)、青蓯(チンツォン)も天幕から出て来た。曲陵(キョクリョウ)侯府では老夫人が夜空に手を合わせ、天の加護に感謝していた。少宮の手紙によれば大郎と嫁が再び功績をあげ、頌児夫妻まで手柄を立てたという。しかも霍将軍と四娘子はそのまま驊(カ)県で成婚するとあった。「婚約ではない、成婚よ?これで聘礼(ヘイレイ)の品も逃げないわね、ぶははははは~! 孫娘の成婚を阻む度胸のある者はいるかしら?!」実は2人の成婚を阻む者が宮中にいた。「驊県で成婚だと?!だが朕がその場におらぬぞ?!無効だ!絶対に許さぬ! 今すぐ2人を呼び戻せ!都で再度、婚礼をやり直す! あんまりではないか!この日のために長年、苦心して来たのは朕だ!」すると越皇后は呆れ果て、寝殿に戻ってしまう。そんな皇帝の嘆きなど知る由もなく、程家は揃って星河を見上げながら幸せに包まれた。完( ˙꒳˙ )終わった…ここはやはり不疑と少商の復縁てめでたしめでたし~♪と納得すべきでしょうかしかし管理人はそんな多数派の歓喜とは裏腹に…( ˙꒳˙ )え?こんな感じ?管理人的最終話は54となりました追憶のような最後を期待していたので、この安易なまとめ方にちょっと肩透かし途中でまさかの必殺早送りが出そうになりましたが、ここでウマーで駆けるウーレイ登場!ウーレイがコーナー攻める!攻める!wwwなるほど、全てはこの瞬間のためにあったのね! ←いや違うwもう内容はどうでもいい! ←え?wだってウーレイがカッコいいんだもの♡( ˶´꒳`˵ )
2024.01.03
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风起霓裳 Weaving a Tale of Love最終話「嫁ぐ日」上元節、庫狄琉璃(コテキルリ)と裴行倹(ハイコウケン)は一緒に過ごせない代わりに手作りの切り絵を交換した。于(ウ)夫人はこれでは自分がまるで2人の仲を引き裂く西王母(セイオウボ)だと苦笑い、そこへ蘇定方(ソテイホウ)がやって来る。「実は守約(シュヤク)と賭けをした、守約が勝てば2人で外出してもいいぞ」蘇定方は琉璃と背格好が同じ侍女を4人ほど集めさせた。そこで琉璃を入れて5人にすっかり同じ白い外套を着せ、仮面をつけさせる。一見すると誰が琉璃か全く分からないが、これが裴行倹との賭けだった。「誰がお前か見抜ければ守約の勝ちだ」すると于夫人は琉璃のかんざしを外し、別の娘の髪に挿してしまう。蘇家は揃って灯籠祭りに出かけた。仮面のせいで美しい夜景が堪能できず落胆する琉璃、その時、舞を披露する一団が一行を取り囲む。その時、蘇定方は琉璃を連れ去ろうとする裴行倹に気づいた。「(はっ)こわっぱめ!」蘇定方は見事な軽功で裴行倹の行く手を阻んだが、仮面を剥ぎ取ってみると裴行倹の従者・阿成(アセイ)だと知る。実は本物の裴行倹はすでに琉璃を連れて姿を消していた。琉璃は裴行倹がなぜかんざしを挿していなくても自分だと見抜けたのか不思議だった。しかし裴行倹はどんな格好をしていようと琉璃の姿はすぐ分かるという。「君に会えない苦痛に耐えて来たが、こうして会うともっと苦しくなる…」「苦しい?苦しいなら耐えなければいいわ」すると裴行倹は琉璃に口づけした。裴行倹は臨海(リンカイ)大長公主が琉璃に屋敷を贈ったことを知っていた。確執があるとは言え河東(カトウ)公府に恩があるのも事実、別に屋敷を買えば盾をつくことになってしまう。何より吏部(リブ)に移動すれば配下の宿舎も必要になり、今の屋敷ではまかなえなかった。「屋敷を買おうと思っていたが手間が省けた、この件は私に任せてくれ」屋敷も決まり婚礼を待つだけとなった琉璃、しかしまだ側仕えの侍女が見つからなかった。そこで顔の広い伯父・安四郎(アンシロウ)に相談する。確かに中眷裴(チュウケンハイ)家の一族と河東公府の難しい関係を思えば如才ない侍女が必要だった。さらに琉璃は洛陽にある裴行倹の資産を密かに調査して欲しいと頼む。一覧を見た安四郎は莫大な資産に驚いたが、洛陽で長年、店を営んでいる琉璃の大叔父に現状を調べてもらうと安心させた。琉璃は実家から嫁ぐため、婚礼の前日に庫狄府に戻った。河東公府に嫁ぐと決まった珊瑚(サンゴ)は媵妾(ヨウショウ)とは言え県令の妻より上だと無視していたが、曹(ソウ)氏が娘の尻を叩く。「大長公主の命があるでしょう?」「(はっ!)そうだった!忘れてた!」庫狄延忠(コテキエンチュウ)は今頃になってやっと珊瑚が裴如琢(ハイジョタク)に嫁ぐと伝えた。琉璃は父が決めれば良いことだとあえて何も言わなかったが、珊瑚には嫁いでも分を守るよう釘を刺しておく。すると曹氏がこれまでの償いとして婚礼祝いに侍女を贈ると言い出した。しかし阿春(アシュン)と阿桃(アトウ)は身なりも身のこなしも上品で明らかにただの奴婢ではない。珊瑚は伯父が探してくれたと嘘をついたが、琉璃はこれが珊瑚に縁談を持ち込んだ大長公主の目的だと分かった。「伯父上が仕込んだ侍女なら琉璃が頂くわけにはいかないわ、珊瑚が連れて行くべきです」その時、安四郎が琉璃を訪ねて来た。明日の婚礼を前に安四郎も琉璃に侍女2人を贈った。焦った珊瑚は反対したが、安四郎になぜだめなのかと怪しまれ、口ごもってしまう。その時、琉璃は侍女が阿霓(アゲイ)と小檀(ショウダン)だと気づいて驚いた。阿霓は如意衣装店の番頭、琉璃は侍女にできないと断ったが、安四郎は阿霓が自ら申し出たと教える。実は阿霓は以前、高陽(コウヨウ)公主の側仕えの宮女として公主府を管理していた。しかし駙馬(フバ)の夜伽を断ったせいで不興を買い、人買いに売られたところを安四郎に救われたという。臨海大長公主は琉璃が自分の間者となる侍女を断ったと聞いて激怒した。崔(サイ)夫人はこれで珊瑚との縁談を破棄できると期待したが、大長公主は琉璃と犬猿の仲なら使い道があるという。「どうやら庫狄琉璃は痛い目に遭いたいようね…」翌日、裴行倹は花嫁を迎えに庫狄府へ向かった。琉璃は皇帝から賜った宝飾品で美しく着飾ったが、最後に母の形見である腕輪と耳飾りをつける。…喜びの日なのに阿母がそばにいないなんて、この心の痛みは言葉にできない…天から見守っていてね、愛する人と出会えて私は幸せよその頃、花婿一行が庫狄府に到着した。しかし花婿が迎えに来ても、慣例によりなかなか花嫁とは会わせてもらえない。まずは花嫁の部屋を探し出し、次に立派な雁(カリ)を贈る。そして美しい詩を詠んで客人たちが認めると、やっと美しい花嫁が姿を現した。裴行倹と琉璃は裴府に入り、拝礼の儀が執り行われた。そこへ宮中から孫徳成(ソントクセイ)と順子(ジュンシ)が駆けつけ、昭儀・武媚娘(ブメイニャン)からの祝辞と祝いの品を届ける。「しっかりやるのだぞ、もう義父も武昭儀もいないのだからな」「ご安心を、琉璃はこの裴行倹が守ります」琉璃は義父に拝礼して感謝を伝えることにしたが、孫徳成はひざまずこうとした琉璃を止めた。琉璃と裴行倹は晴れて夫婦となった。2人は固い絆で結ばれ、永遠に離れることはない。終わり終わった~!・:*+.\(( °ω° ))/.:+/.*・ って…え?!終わってねぇぇぇぇ~!そうです!実は2季があるんです!しかしまだ配信されていない?もしかすると裴行倹が実在の人物だけに検閲でダメだったのかもしれませんねえ~( ゚ェ゚)ま、いいか ←いいのかいw
2023.08.20
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皎若云间月 Bright as the moon第40話「時を超えて」…時をさかのぼるには3つの宝を集めるべし…醒世異聞録(セイセイイブンロク)を読んだ雲浅月(ウンセンゲツ)は″白玉の神龍″と″千年の寒鉄″を手に入れたが、最後の宝が何か分からず断念していた。しかしついに3つ目の宝が鳳凰のかんざしだと判明する。それは容景(ヨウケイ)が折ってしまった母の形見のかんざしだった。その夜、浅月と容景は思い出の裏山に席を設け、別れを惜しんだ。容景はやはり浅月と離れたくないと本音を漏らしたが、息子を放り出して後を追うこともできないという。「君に生きていて欲しい…」「でも私が去ったら、残されたあなたはどうするの?」「辛い…胸が張り裂けそうだ、しかし君が生きていると思えば支えになる 浅月、どこへ行っても忘れないでくれ、君を愛している どんなに遠く隔てられ、未来永劫めぐり会えずとも、私は君と孤独を分かち合う」「全ての出会いは深い縁があるからこそ…だからきっとまた会えるわ」「思いが通じていれば千年の時を隔ててもこの愛は変わらない…心はひとつだ」その時、浅月の全身が急に消えかかった。容景は一刻の猶予もないと知り、慌ててかんざしの片割れを取り出す。「約束してくれ、必ずしっかり生きると…」すると浅月もかんざしの片割れを手にした。「容景、あなたを愛している、千年後の世界で待っているわ」2人は折れたかんざしをつなげて鳳凰のかんざしを復活させると、浅月の身体は光となって消散した。容景は浅月を失い、その場で泣き崩れた。すると走馬灯が回り始め、2人の思い出が帳(トバリ)に映し出される。…容景、あなたとの思い出をすべてこの走馬灯に刻んでおくわ…私からの最後の贈り物よ、元気で、悲しまないでそれは浅月が密かに作っておいた走馬灯だった。浅月が消えて10年が経った。皇太后は景世子に後添いを迎えるよう勧めたが、容景は辞退して隠居を申し出る。「栄王府の妃は生涯、雲浅月ひとりです」「容景っ?!…はっ!」李蕓(リウン)はマンションの寝室で目を覚ました。…何てこと?夢だったなんて…すると消し忘れたPCに穆小七(ボクショウシチ)の失踪を伝えるニュースが映っている。…もう二度と会えないのね、とても長くて悲しい夢だった…李蕓は孤独を紛らすように執筆に没頭した。こうして書き上げた″紈絝(ガンコ)世子妃″は新人賞を獲得、李蕓は時の人となる。容景と浅月を題材にしたラブストーリーは映画化も決定したが、その版権を買ったのは穆グループの映画会社だった。「この作家に投資だと?…金をドブに捨てるようなものだ!」失踪と報道された穆小七は無事だった。何も聞いていなかった秘書が勝手に誘拐と誤解して大騒ぎになったが、実は施工停止の大損で父から3ヶ月の外出禁止を言い渡されただけだった。缶詰生活に飽きた穆小七は秘書に頼んで気晴らしに外へ出た。すると驚いたことに李蕓が現れる。「あの日のダサい格好とは大違いだな」李蕓はこの機会を利用してライブ配信を始めると、小説の容景のモデルは穆小七だと明かした。このライブ動画がSNSで大バズり、映画の効果的な宣伝となったが、秘書はこの件で奇華(キカ)グループの社長が怒っていると報告する。「縁談と提携に影響が出てはまずいと…」「分かった、ではスキャンダルを事実に変えよう」穆小七は李蕓のマンションを訪ねた。「あなたの失踪で大変な目に遭ったのよ?」「あの件か、思いがけず迷惑をかけて悪かったね」「もういいわ」すると小七は動画のせいで自分の名声が傷ついたと難癖をつけ、恋人契約を結びたいという。しかし条件は李蕓が自分の家に同居することだった。「心配ない、君を女として見ていないから…ただ両親が身を固めろとうるさくてな」2人は会社公認のカップルとして1ヶ月の契約を結び、李蕓は小七の豪邸に引っ越すことになった。穆小七は李蕓との交際を公にし、奇華グループの令嬢との縁談を破談することに成功した。こうして始まった李蕓と小七の同居生活、2人は容景と浅月がそうだったように反発し合いながらも惹かれていく。「以前のことはすまなかった、よく考えると君も悪くはないな」「あなたこそ噂ほどひどくないわ」すると小七は家族さえ自分を見る目は世間と大差なく、もう慣れっこだという。しかし李蕓は小七の本当の姿を知っていた。「あなたは陰で正しいことをしている、知っているの…タネを明かすわ」実は小七の友人・林(リン)社長は李蕓の親戚だった。李蕓は林社長から穆小七の情報を集めていた。小説が現実になったのは小七の行動を事前に知っていたからだという。「段取りは全部、従兄が組んでくれたの、もちろんあの偶然の出会いも…」「最初から計画していたと?」「そうよ、わざと近づいた、あなたが好きだから」李蕓は小七が恋人を取っ替え引っ替えしているのはスキャンダルで縁談を流すためだと分かっていた。しかし一方で忙しい中、毎月、複数の施設へ慰問しているのも知っている。「遊び人に見せているけれどあなたは善良な人よ、父親の決めた道を歩くのが嫌なだけ …私はあなたを理解している、だって知り合ったのはずっと昔だから」かつて李蕓はアルバイト先のバーで客にからまれているところを小七に助けられていた。「…私は人にはめられるのが大嫌いだ、李蕓小姐、私たちの契約は今日で終わりだ」「ごめんなさい、騙して…でもこれだけは言わせて、小説のモデルは本当に私とあなたなの …帰るわね、この本は置いていくわ、最後のプレゼントよ」李蕓と穆小七はそれぞれの生活に戻った。小七は仕事に復帰、漢代の墓が出土して頓挫した計画を変更し、文化遺産を保護して再開発を進める。そんな忙しい毎日の中、暇を見つけては李蕓が置いていった″紈絝世子妃″を読みふけった。一方、李蕓は執筆活動を続け、新刊も売り切れとなった。するとある日、麗麗(レイレイ)から連絡があり、良い男を紹介するという。「今度は間違いないわ、私の顔を潰さないでよね」「いいわ、どこへ行けばいいの?」李蕓が指定された場所で待っていると、ランボルギ〇ニが停まった。「穆小七?…私をブロックしたくせに、なぜあなたがここに?」「いいから乗れ」「なぜ今頃になって誘いに来たの?」「…あんなゲームを仕組まれてやられっぱなしじゃ男として失格だ」「もう許してくれないかと…」すると小七はこれから民政局に行くという。「えっ?!…結婚登記?!」喜んだ李蕓は思わず運転中の小七にしがみついて怒られてしまう。「″私から3尺離れるのだ、よいな?″」その時、李蕓は流れる景色の中で、巨大スクリーンに映し出された容景と息子の姿に気づいた。…ディエディエ、きれいな蛍がいっぱいだね、にゃんちんもどこかで見ているかな?…そうだな、どこかで見ている「…どうした?何かあったのか?」小七はイタズラっぽく笑うと、李蕓はそっと小七の肩に頭を乗せた。おわり( ๑≧ꇴ≦)ちょwwwwwかんざし版″トモダチ″で現代に戻ったぁぁぁ〜久しぶりにミルクティ吹き出したわ(´゚艸゚)∴ブッちょっと最終回は肩透かしを食ったような…まあ〜折り返しからエグい展開だったので、これくらいライトな終わり方でもいいのかも?
2023.02.19
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月升沧海 Love Like the Galaxy (第8話)第35話「月と星の関係」袁慎(ユエンシェン)は程少商(チォンシャオシャン)と凌不疑(リンブーイー)の婚約の宴から追い出される汝陽(ジョヨウ)王妃と城陽(ジョウヨウ)侯夫人を目の当たりにした。「程娘子の婚約は慶事と言えなくもないが、汝陽王にとっては大慶事だな…」「″言えなくもない″って何よ?」少商は回廊にいた袁慎の失礼な物言いを聞き逃さなかった。「そんなに嫌味ったらしいのは嫉妬しているから?前の縁談が潰れてもすぐ次が決まった 善見(シャンジエン)公子なんて子晟(ズーション)と同年代なのに妻もいない 今日は世家の娘が大勢来ているから私が取り持ってあげましょうか?」すると憤慨した袁慎は低俗だと言い捨てて行ってしまう。万松柏(ワンソンバイ)が凱旋、匪賊を討伐して無事に人質だった王隆(ワンロン)を解放した。事情を聞かれた王隆は、持ち場を勝手に離れたのも父・王淳(ワンチュン)の軍令に従ったからだと釈明したという。皇太子は自分が慎重に調査すると申し出たが、その時、廷尉(テイイ)府・紀遵(ジーズン)が自分たちに任せて欲しいと嘆願した。「善見、陛下にご挨拶を…」仕官した袁慎は御前で拝礼し、見解を述べようとした。すると凌不疑が話を遮り、実は昨夜のうちに調査を済ませたという。実は王隆への軍令は文修君(ウェンシウジュン)が夫の文として偽造し、印章も偽物だった。しかも文修君は寿春(ジュシュン)にいる弟・小乾安(ケンアン)王を援助するため、銭の鋳造をそそのかしたという。皇帝もこれ以上かばい立てできず、文修君の封号を剥奪して自害を命じ、また王父子は官位を剥奪され庶民に落とされた。朝議が散会した。すると朝堂を出た凌不疑に少商からの差し入れが届く。何とも微笑ましい様子に紀遵は目を細めたが、袁慎は内心、面白くなかった。「善見、お前もいい年だ、身を固めないのか?」「縁談に興味はありません」↓善見ザマアァァァwww王姈(ワンリン)は長秋(チョウシュウ)宮へ駆けつけ、皇后に母の命乞いを続けた。しかしちょうど母の見舞いに来ていた五公主が現れ、立ち去らなければ宮廷を騒がせた罪で打ち据えると脅す。驚いた少商はそこまでせずとも自分が追い払うと約束し、王姈を助けた。「死にたくなければ黙って…事は重大よ、私たちでは何もできない」その夜、少商は寿春料理を作って皇帝に届けた。皇帝は舌鼓を打ちながら老乾安王を懐かしんだが、少商が遠回しに嘆願に来たと見抜く。すると少主は嘆願が皇后のためでもあると言った。「皇后は乾安王に養育されました 文修君がどれほど横暴で不敬な態度でも耐えて来たのは、ひとえに故人を偲んでのこと 文修君が死を賜ることになり、皇后はまた病に伏されました、きっとお辛いはずです」皇帝は子晟からも同じことを言われたと明かした。老乾安王は霍(フォ)兄のために亡くなり、文修君と弟はその乾安王が残した唯一の血脈だという。「…いいだろう、幸いひどい事態は招いておらぬ、死は免じよう」 王姈は彭坤(ポンクン)へ嫁ぐことが決まり、その前に生涯軟禁となった母を訪ねた。夫や娘を顧みず大罪を犯した母、しかし未だ過ちを認めず、気概がない娘を引っ叩いてしまう。すると王姈はついに母を見限った。「阿母、舅父は陛下への書状で全ての罪を阿母に着せたわ 自分は貨幣のことも知らず、軍を動員したこともないと… 最初、陛下は自害を命じた、でも皇后に免じて監禁に留めてくださったのよ」結局、文修君は自分が守ろうとした弟に裏切られ、恨んでいた相手に命を救われることになった。それでも文修君は弟をかばい、全ては大局を考えてのことだと訴える。王姈は哀れな母に深くし失望し、寿春へ行ったら毎日、皇帝と皇后のために祈ると言った。「あなたは永遠に実現しない夢を見ながら、この部屋で一生、過ごすのね」五公主は病み上がりの母后を訪ね、寿誕の宴を自分に任せて欲しいと頼んだ。父皇は少商を指名したが、母后から推薦して欲しいという。しかし皇后は娘が宴の予算に目をつけ、自分の懐を潤すつもりだと分かっていた。五公主は悪びれる様子もなく、幕僚たちを養う元金が必要だと訴える。その時、どこからともなく甘い匂いが漂って来た。「(クンクンクン…)何の匂いですか?」少商が新しい甘味を作っていると、皇后と五公主が様子を見にやって来た。「また子晟に食べ物を?」実は大臣たちも少商が子晟の馬車に差し入れを運ばせているのを目撃し、今や賢妻と評判になっているという。「でも孝行者とは聞かないわね~」皇后が遠回しに嫉妬すると、少商は今回の試作が皇后のためだと教えた。早速、試食した皇后は甘くて美味しいと笑顔、そこへ皇帝が凌不疑を連れてやって来る。「…誰かさんは朕より皇后を喜ばせられるようだな」少商は皇帝にも新しい甘味を勧めた。飴糖(イトウ)は高価なため甘蔗(カンシャ@サトウキビ)を絞り、小豆と糖汁を煮詰めたという。すると少商は五公主を尻目に不疑にも甘味を渡した。「ご安心を、甘蔗は自腹で買いました、皇后を喜ばせるため一文なしです、ふふふ~」「そなたは孝行者だな、子晟、お前の新婦は出来がいい」皇帝は喜んで不疑に食邑200戸を授けたが、少商はなぜ自分ではなく不疑が褒美をもらえるのか分からなかった。↓(๑・᷄ὢ・᷅๑)何でなん?五公主は娘の自分を差し置いて父皇と母后に寵愛される少商が面白くなかった。すると帰りの道すがら回廊で偶然、駱済通(ルオジートン)と出くわす。「あなたは私の伴読を務め、翟(ジャイ)媪(ウバ)を支えて宮中の雑務を行って来たわ でも母后は差配を程少商に任せるそうよ? …母后はあなたを十一郎に与えると思ったのに、まさか先を越されてしまうなんてね~」駱済通は寛容な対応を見せたが、内心は少商に激しく嫉妬していた。その気持ちを見透かすように侍女の春笤(チュンティアオ)は皇后の寵愛があっさり少商に移ったことに不満を漏らす。しかし何にせよ誰が皇后の意向に異論を唱えられるというのか。その夜、少商は皇后に今日の皇帝の褒賞について尋ねた。「陛下は私を褒めたのに、子晟に褒美を与えました… 200戸が惜しいわけではなく、私の出来が良かったのになぜ子晟の手柄になるのですか?」すると皇后はかつて楼(ロウ)家で少商が皇帝から表彰されたのは子晟が願い出たからだと明かした。当時、子晟は自分の褒賞を求めず、少商が楼家で見下されぬよう嘆願したという。何も知らなかった少商は驚いたが、ただ周りから子晟の妻としか見られず、自分自身がないことに納得できなかった。皇后はならば皇帝の麾下(キカ)である将士や大臣たちなど自分の居場所すらなくなるという。「良策を立て戦に勝利しても陛下の領土を広げただけ、自分たちとは何も関係ない 策が悪く、破れれば陛下の落ち度になる…でも古(イニシエ)よりこの満天の星の下では 合従(ガッショウ)や連衡を唱えて来た名将や策士も同じ星の河に名を連ね、明るくその輝きを放つ…」皇后は孤独に育った少商がこれまで自分の栄辱ばかり考えて来たが、成婚すれば別のやり方が必要だと諭した。「…皇后の言うとおりです、郎君が陽光で万里を照らすなら、私たち女は明るい星、星河に輝く」少商は日月と星河に高低は関係なく、互いが欠かせない、共存することでこの天地を成すのだと理解した。程家では一家が宮中から戻らない嫋嫋(ニャオニャオ)を恋しがっていた。嫋嫋がいない食卓は火が消えたようだったが、老夫人だけは気にかける様子もなく食欲が落ちることもない。すると朝餉の時間というのに突然、凌不疑が尋ねて来た。実は少商が皇后の寿誕の宴を仕切ることになり、皇帝に命じられて宮中に留まることになったという。「宴が終われば帰れるかと… それで少商が暮らしに困らぬよう、使い慣れた小物を取りに伺いました」程始(チォンシー)は了承したが、凌将軍は全ての荷物を運び出し、少商の部屋は空っぽになってしまう。つづく( ゚ェ゚)そしてまた独り消えた…ようやく原題の意味が出て来ましたね
2023.10.14
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风起霓裳 Weaving a Tale of Love第21話「再会のよろこび」皇太子の酒席で泥酔してしまった豆子(トウシ)こと庫狄琉璃(コテキルリ)。裴行倹(ハイコウケン)は玉児(ギョクジ)が失態を演じないよう咄嗟に連れ帰り、途中で酔いを覚まさせることにした。「酒には気をつけろ、女の身だと忘れるな…それからもう一つ、太子殿下とは距離を取れ」琉璃は裴行倹も義父と同じように権力争いに巻き込まれることを恐れているのだと分かった。しかし裴行倹は困った様子で他にも理由があるという。まさか嫉妬だとは言えない裴行倹、そこで皇太子が玉児を気に入って側仕えに望んでいると教えた。やはり玉児は不禄(フロク)院で男として育ったせいか男女の別に疎く、隙が多い。「玉児、男と女は距離を保つものなんだ」「阿母や阿翁みたいに優しいのね、親身になって案じてくれるなんて…」すると裴行倹は玉児の母がどんな罪を犯したのか教えて欲しいと頼んだ。これも玉児を守るためだったが、琉璃は裴行倹を巻き込みたくないと口をつぐむ。裴行倹はそれ以上、玉児を追求せず、自分の力で突き止めることにした。尚服局は盂蘭盆会(ウラボンエ)用の衣の準備に追われていた。ようやく夕餉の時間となり引き上げた繍女たち、しかし卓錦娘(タクキンジョウ)は未だ楊(ヨウ)妃の衣の図案が思い浮かばず行き詰まっている。すると鄧七娘(トウシチジョウ)が夜食の差し入れに来た。七娘から工房に残っているのが豆子だけだと聞いた卓錦娘はようやく才人の衣を作り始めたと気づき、慌てて七娘に偵察に行かせる。「詳しく見てくるのよ!」琉璃は工房で図案を描いていた。すると七娘は″百鳥朝鳳(ヒャクチョウチョウホウ)図″だと気づき、その精密さに感嘆の声を上げる。「師父が一目置くはずね、あなたの腕前は尚服局のどの宮女よりも上だわ」琉璃は卓錦娘が聞き耳を立てていると気づき、わざと大声で言った。「楊妃のお気持ちを考えたのです 皇后の座は空位のまま、皇帝の寵愛を受ける楊妃は皇后に最も近い存在でしょう ご自分からは言えませんが、私たちがお気持ちをくんで知恵を出さなくては…」その時、卓錦娘が何やら興奮しながらやって来た。どうやら卓錦娘は豆子がこの図案で楊妃に取り入るつもりだと誤解したらしい。しかし琉璃は卓大家の力になりたくて描いたと訴え、卓大家に渡すつもりだったと釈明した。翌朝、卓錦娘は楊妃に百鳥朝鳳図の衣の図案を届けた。さらに楊妃が唯一の存在であると示すため、百鳥と孔雀の羽根で装飾を作ってはどうかと提案する。ようやく楊妃を満足させた卓錦娘、一方、才人・武媚娘(ブメイニャン)も豆子と図案の相談を始めていた。楊妃の間者となった松濤(ショウトウ)は才人に薬湯を届けながら図案を盗み見ると、早速、丹青(タンセイ)に情報を流す。すると武才人は豆子の図案から牡丹柄を選んだと分かった。花弁には金の生糸、葉には天山の玉を使い、優美に仕上げるよう指示していたという。実は牡丹は長孫(チョウソン)皇后が愛した柄、才人の分際で牡丹を選べば傲慢だと非難されるのは必至だ。裴行倹が左衛率府に戻ると、副率に引き立てられた莫坤(バクコン)がすでに到着していた。この移動は皇太子のたっての希望で、着任を楽しみに待っているという。今はまだ手続き中のため、裴行倹は数日ほど休むよう勧めたが、莫坤は何か手伝えることがないか聞いた。すると裴行倹は実は内密に調べて欲しいことがあるという。「庫狄延忠(コテキエンチュウ)という男と宮中の関わりを知りたい 確信はないが公文書に手がかりがあるやも… 助けたい友のゆかりのある人物なのだ、事情を話そうとせぬゆえ、密かに支えてやりたい」不禄(フロク)院の順子(ジュンシ)は使いを頼まれ甲庫に帳簿を届けた。李(リ)内侍は順子の無事な姿に安堵し、ひさしぶりに話し相手になってもらう。すると順子は書卓にあった安(アン)氏の文書を訝しんだ。「もう11年も経ったのに、なぜこんな古い記録を?」「左衛率府が急に求めてきたのだ、その前に大理寺と掖庭(エキテイ)を訪ねたらしい」そこへちょうど莫副率が現れ、安氏の記録を借りて読み始めた。順子から報告を聞いた孫徳成(ソントクセイ)は豆子に関わりがありそうだと心配した。聞けば信任の左衛率は豆子が城外で出会った裴行倹だという。順子は豆子に恩がある裴行倹なら安心だと思ったが、孫徳成は警戒を強めた。すると順子が安氏の事件と関係があるのは楊妃だと思い出し、裴行倹は皇太子のために楊妃の弱みを握りたいのではと考える。「いずれにせよ豆子が危険だ…裴行倹の目的が何であれ守らなくてはならぬ 順子、お前は楊妃側に目を光らせてくれ、豆子は我らを気遣い何かあっても知らせてこない」「分かりました」莫坤は調査を終えて裴行倹に報告した。「庫狄延忠を調べる狙いは楊妃だったのですね?」11年前、皇帝が楊妃を立后しようとしたが廷臣の反対に遭って諦めた騒動があった。裴行倹はその時、ちょうど科挙で上京していたため、よく覚えているという。「庫狄延忠はごく普通の庶民でした、しかし妻は違った、″天下第一針″と称された安氏です」実は安氏は当時、楊妃に独断で褘衣(キイ)を贈り、謀反の罪で投獄され、自害していた。延忠は事件の前に離縁状を書いて難を逃れたが、それ以来、正室は娶っておらず、妓女だった側室の曹(ソウ)氏だけだという。「安氏には娘がいたか?!」「琉璃という娘が1人、当時7歳でしたが、母親と共に捕らえられました 安氏は娘の首を絞めて殺害、その後、首を吊っています」裴行倹は玉児が安氏の娘・琉璃だと気づいた。それにしてもなぜ本来なら尚服局が作る衣を安氏が手がけることになったのか。莫坤もその点が不思議だった。記録によれば安氏が楊妃に取り入ろうとして衣を作ったとあったが、安氏は宮中暮らしに疲れて役職を辞している。そもそも先の皇后に重用されていた大家なら下策に出ずとも喜んで復帰できただろう。まさか楊妃が安氏に罪をなすりつけたか、あるいは誰かが楊妃におもねって安氏に強要したのか。すでに時が経って証拠も少なかったが、莫坤は安氏の兄が古商で、西市(セイシ)で衣装店を営んでいると教えた。「如意衣装店か?!」「よくご存知で」裴行倹は確信した。…玉児こそ安氏の娘・琉璃だ…玉児があの時、武才人が私に逃がせと託した娘だったとは…自由になれたのに戻ったのは母親の敵の手がかりを見つけたからか「やっと正体が分かった」裴行倹はちょうど咸池(カンチ)殿から出て来た琉璃を捕まえた。「実は君に伝えたいことがあるんだ、また君に会えて嬉しいよ!」「酒席で会ったばかりだけど?」「あることが分かって嬉しいんだ、場所を変えて話したい 君が喜ぶものを持って明日の夕方、会いに行くよ! それから…私たちには縁があるようだ」その夜、屋敷に戻った裴行倹はあの時、琉璃が己を犠牲にしてまで守った化粧箱を取り出した。…琉璃、君を探して11年、やっと返せるよ…化粧箱の中には琉璃が刺繍した手巾と″天下第一針″、そして″安氏刺繍奥義″が入っていた。裴行倹は仕事の合間に琉璃の居所を訪ねることにした。すると豆子の部屋で武才人の衣を探している卓大家と七娘を目撃する。裴行倹は12話で琉璃が″母のある宝物を狙う刺客に襲われた″と話していたことを思い出した。恐らくこの金針と奥義書を手に入れるため安大家を陥れ、琉璃も狙ったのは卓錦娘だろう。…気がついて良かった、これを返したら琉璃が危ないところだった…そこで裴行倹はちょうど工房を出て来た琉璃を引き止め、卓錦娘が何か探しているとだけ知らせた。「戌時に暢春(チョウシュン)湖のほとりで待っている」「分かった、行くわ」順子は楊妃が最近、人が変わったように言動に遠慮がなくなったと報告した。そう言えば廷臣が楊妃側に付こうと鳥の羽根を買い集めているそうで、都の鳥の値段が高騰しているという。すると孫徳成は楊妃の変化が豆子と関係がありそうな気がして不安になった。その夜、裴行倹は暢春湖で琉璃を待っていた。つづく( ゚ェ゚)もう折り返したのにまだ男装のナザェェェ___
2023.07.06
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月升沧海 Love Like the Galaxy (第11話)第38話「愛を叫んで」凌不疑(リンブーイー)の企みにより情夫を囲っていたことが都中に知れ渡ってしまった五公主。程少商(チォンシャオシャン)は五公主の噂をわざわざ皇后の耳に入れた皇太子妃に憤ったが、皇后は皇太子妃の胸中をおもんばかった。思えば皇太子妃は五公主から日常的に侮辱を受けており、平静でいられないのも仕方がない。何より寿誕の宴で美しい曲泠君(チューリンジュン)の姿を見れば心中、穏やかではいられないだろう。実は皇太子にはもともと想い人がいた。曲泠君は皇太子妃より家柄や品格に優れ、当時は頻繁に宮中に来て皇太子ら兄妹と遊んでいたという。「2人が想い合っていることは誰の目にも明らかだった ただ陛下が故郷にいた頃に婚約を決めていたの、権力を得た後に破棄すれば信用を失う だから太子は約束通り孫(スン)氏を娶るしかなかった」「太子は約束を守らなければ良かったのに…」「子晟(ズーション)も同じことを言ったわ… 幼いながらも私や陛下にこの縁談は太子にとって害になるとね」しかし結局、皇太子は孫氏を娶り、曲泠君も別の人に嫁いでしまう。「聞くけれどあなたは心から子晟のことが好きなの?」「…好きです、以前は彼のことを天上の明月のような遠い存在だと思っていました でも彼も私と同じように血が通い、喜怒哀楽もある、想いは深まりました」「陛下は子晟が身を固めぬことを案じ続け、余は子晟を理解できる者が現れるだろうかと案じた 子晟があなたを選んだのは正解だったわ」その時、翟(ジャイ)媪(ウバ)が血相を変えて寝所に駆けつけた。「皇后!大変です!十一郎が陛下を怒らせ、杖(ジョウ)刑に処されると…」少商が駆けつけるとちょうど凌不疑が皇帝から叱責されていた。何でも不疑は少商を落水させた八家の息女を突き止め、その父兄を殴打したという。実は皇帝は五公主に加担した息女たちが普段から傍若無人に振る舞っているのではと懸念した。そこで父兄らが権勢を笠に着ていないか調査させていたが、賄賂をもらっていたことが発覚する。すると不疑はこの機会を利用し、廷尉府を無視して自ら制裁を加えていた。皇帝は皇権を乱用した私刑だと激怒、厳しく罰すると怒号を響かせた。驚いた少商は許しを乞うたが、不疑は嘆願なら必要ないと冷たい。「己の罪は己で償う…君と同じように私にも矜持(キョウジ)がある、これが凌不疑だ」少商は自分への当てつけだと気づき、無茶をして婚約を台無しにするつもりかと言いかけた。その時、不疑の口から思わぬ言葉が飛び出す。「辞官して君と隠居したい、君の求める田舎でな」凌不疑の無謀な行動は全て少商のためだった。そこで少商は昨日、自分と言い争ったことが原因だとかばったが、かえって皇帝からなぜ喧嘩ばかりするのかと責められてしまう。「今度、言い争ったら何だ、朕の崇徳(スウトク)殿を襲うのか?!」すると皇帝は罰として杖刑100回後、流刑に処すと命じた。少商は何とか見逃してもらおうと必死だったが、不疑はあっさり拝命すると告げて出て行ってしまう。「ちょ…凌不疑っ!」刑場はちらちらと雪が舞い始めた。少商は皇帝と共に城楼から刑の執行を見守ったが、やがて耐えられなくなり刑場へ降りてしまう。すると知らせを聞いた皇后と越(ユエ)妃が城楼へ駆けつけた。皇后は皇帝の非情な仕打ちに心を痛めたが、越姮(ユエホン)はこれが皇帝の謀だと気づく。実は軍営での杖刑には一見、血みどろに見えても大して支障のない打ち方があった。そうとは知らず刑場に入ろうとした少商は衛兵に止められながら、なりふり構わず叫んでいる。「子晟!誓うわ!2度とあなたと喧嘩しない! いくら私に怒っていても自分の身体を犠牲にしてまで意地を張るなんて馬鹿なことしないで!」そこで皇帝は少商を止めている衛兵の手を緩ませ、子晟に近づかせるよう命じた。少商は執行台へたどり着くと、杖を振り下ろそうとした衛兵を突き飛ばして刑を止めた。「子晟、今後は何事もあなたに相談すると約束するから… これからは真心をあなたに捧げる、私のために馬鹿な真似はやめて、いいわね?」すると少商は思わず凌不疑を抱きしめた。「もうとっくにあなたを愛していた…なぜ気づかないの?」「…今、何と言った?朕は聞こえなかったぞ?!何だって?!」城楼では皇帝が少商の気持ちを確認しようと必死だった。しかし越姮は聞こえずとも見れば分かると呆れる。安堵した皇帝は刑の中止を命じたが、皇后は皇帝のやり方に反発して帰ってしまう。凌不疑は幼い頃に過ごした長秋宮で静養することになった。夜になっても不疑が心配で落ち着かない少商、しかし皇后は医官がついているとなだめる。「翟媪に安神薬を用意させたわ、ずっと泣き続けて声も枯れたでしょう? 薬を飲んで早く眠りなさい」しかし少商は矢も盾もたまらず、こっそり不疑の部屋へ行ってしまう。不疑は少商の姿を見ると嬉しそうに身体を起こした。負傷した割には元気そうな不疑、少商は思えばあの時、子晟があまりにあっさり皇帝の罰を拝命したことに気づく。「負傷したのは芝居なの?」「なぜ芝居だと?」「私が心を傷めれば目的を果たせる」「…少商に心を痛めてもらえるなんて、こんな幸せはない」少商は子晟が愛しくなり、おでこに口づけした。すると2人は見つめ合い、自然と顔を近づけて唇を重ねる。「こんなことは成婚まで待つべきか?」「それは私の台詞でしょう?」少商は子晟に笛を吹いて聴かせた。すると不疑は灯会(トウエ)で初めて少商の顔を見た時のことを思い出す。「あの時も今のように君は美しかった」「だったらなぜ後日、会いに来なかったの?」「あることを遂げるまで娶る決断ができなかった」「一目見ただけで娶ると?」「一目で十分だ…一度、見ただけで分かった、余生を共にするのは君だけだとね」「この先、欺かれない限りこの少商、あなたを裏切らないわ」こうして何度もぶつかり合いながら愛が深まった少商と不疑。その頃、曲陵(キョクリョウ)侯府では蕭元漪(シャオユエンイー)がなかなか戻ってこない嫋嫋(ニャオニャオ)に苛立っていた。少商は皇后から賜った外套を母に届けたが、蕭元漪は皇后に懐いてすっかり母を忘れた娘からの贈り物に見向きもしない。程始(チォンシー)は思わず失笑し、会えなくなると気がかりになるのかと揶揄した。「夫人、嫋嫋は凌不疑と一緒になってから、さほど問題は起こしていない」「そうね、誰が予測できた?凌不疑の方が嫋嫋より常軌を逸しているなんて…」凌不疑が報復した八家のひとりは御史中丞だった。皇帝は不疑が乗り込んでめちゃくちゃにした御史台の修理を命じたが、不疑はこの機に乗じて15年前の越氏の軍報を持ち出すことに成功する。すると予想通り軍報には戦馬の損傷は記載されていなかった。「恐らく兵の死因も瘴気ではない、小越侯は嘘をついている」しかし証人の軍医が死んで韓武(ハンウー)も殺され、当の小越侯は狡猾でなかなか尻尾を出さない。「奴がボロを出さねば…仕向けるまでだ」つづく( ˘ω˘ )さすがに真心うんぬんはもう飽きてきた…それにしても今回は上手い人が多いね~
2023.10.24
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斛珠夫人 Novoland:Pearl Eclipse最終話「終わらない伝説」淑容(シュクヨウ)妃・緹蘭(テイラン)が誘拐された。やきもきしながら一報を待つ旭(キョク)帝・褚仲旭(チョチュウキョク)、すると捜索していた陳哨子(チンショウシ)が戻って来る。陳哨子は昶(チョウ)王府で監禁されている淑容妃を発見していた。しかし中には大勢の反乱軍がおり、淑容妃が身重のため下手に動けなかったという。「淑容妃は無事です、首謀者は索蘭(サクラン)王子でした」褚仲旭は自ら緹蘭を救出に向かうと決めた。陳哨子と穆徳慶(ボクトクケイ)は皇宮で待つよう諌めたが、褚仲旭は2度と妻を失えないという。そこで皇宮の指揮を陳哨子に任せ、意表をついて裏門から20人の精鋭だけ連れて出ることにした。褚仲旭はこれまで尽くしてくれた穆徳慶に別れを告げ、万一の時は財宝を持って故郷へ戻れという。しかし穆徳慶は最後まで皇帝に仕える覚悟だった。「陛下…私は長年、陛下のおそばで過ごし、故郷などとうに忘れてしまいました 帰る場所などありません」緹蘭の侍女・碧紫(ヘキシ)は注輦(チュウレン)王に命じられ、公主の情報を密かに送っていた。実は宮女が落とした薬に毒を入れたも碧紫だという。あの時、皇帝が懐妊した淑容妃を守るため愈安(ユアン)宮を禁足とした。注輦に知らせを送れなくなった碧紫は気が急き、毒騒ぎを起こせば皇帝が公主を移動させると考えたという。「信じられないかもしれませんが何もかも公主のためです! 公主を大徴(ダイチョウ)で最も尊い女性にすると言われて…それで王子に手を貸したのです まさか謀反のために公主を利用するなんて…」緹蘭は浅はかな碧紫に激高したが、今は逃げ道を探すことが先決だった。「…碧紫、まだ私の命に従う気はある?」碧紫は見張り番に公主が苦しんでいると訴えた。驚いた兵士が中へ入ると、碧紫が後ろから殴りつけて倒すことに成功する。しかし物音に気づいたもう1人の兵士が駆けつけた。緹蘭と碧紫は呆然、すると兵士は突然、矢に射られて死んでしまう。その時、驚いたことに褚仲旭が自ら緹蘭を助けにやって来た。「びーしゃあ?!」褚仲旭は緹蘭を馬車に乗せて皇宮へ急いだ。しかし反乱軍を率いた施霖(シリン)が現れ、道をふさぐ。実は施霖は注輦の人間、今日のためにこれまで屈辱に耐え忍んできたという。「旭帝よ、もう逃げられぬぞ…殺(シャー)っ!」褚仲旭はわずかな精鋭たちと反乱軍に応戦した。その時、白い影が飛び込んで来たかと思うと、敵を蹴散らして褚仲旭の隣に方鑑明(ホウカンメイ)が立つ。生きてたのかーい!>ʕ•̫͡•ʕ*̫͡*ʕ•͓͡•ʔ-̫͡-ʕ•̫͡•ʔ*̫͡*ʔ-̫͡-ʔ<ザワザワ…死んだはずの清海公(セイカイコウ)の姿にその場は騒然となった。すると馬車の中から緹蘭の悲鳴が聞こえる。「お急ぎください、ここは私が」方鑑明は施霖たちを引き受け、褚仲旭を先に逃した。↓\\\\٩( ‘ω’ )و ////バーン!褚仲旭は産気づいた緹蘭を民家に避難させた。しかし安心したのも束の間、索蘭率いる注輦軍が追いついてしまう。覚悟を決めた褚仲旭は穆徳慶と碧紫に緹蘭を任せ、戦いの渦へ飛び込んだ。わずかな精鋭たちが全滅、褚仲旭は孤軍奮闘した。やがて日も暮れる頃、民家から元気な産声が聞こえる。緹蘭は産後の身体を引きずりながら何とか外へ出たが、そこには致命傷を負って血まみれとなった褚仲旭がいた。驚いた緹蘭は褚仲旭に抱きつくと、褚仲旭は碧紫の腕に抱かれた元気そうな男の子に気づく。「…我らに…そっくりだ…」その時、索蘭はこの機に姉と子を奪えと命じた。褚仲旭は緹蘭を守ろうとしたが、緹蘭が身を挺してかばい、褚仲旭の代わりに刺されてしまう。「緹蘭?…緹蘭!!うわあぁぁぁぁーっ?!」その時、白い影が現れ、一瞬の隙に索蘭の首をかっ切った。方鑑明は一刻も早く褚仲旭を皇宮へ連れ帰ろうとした。しかし褚仲旭は絶命した緹蘭を離そうとしない。「緹蘭が言った…朕のいない世を生きるつもりはないと… もう疲れた…このまま何もしたくない…」すると褚仲旭は大徴の民と息子を方鑑明に託し、愛する緹蘭と一緒に旅立った。城門を死守していた張承謙(チョウショウケン)だったが、いよいよ限界に近づいていた。その時、夜空に照明弾が上がる。反乱軍を指揮していた湯乾自(トウカンジ)は後ろを振り返り、先頭を駆けてくる方海市(ホウハイシー)の姿に気づいて驚愕した。援軍の到着に気づいた張承謙は開門を指示、突撃を命じて援軍と合流する。海市たちは城外で反乱軍と交戦し、湯乾自を生捕りにして決着した。すると任勇(ジンユウ)が駆けつけ、城内の状況を報告する。「索蘭が死にました!しかし…淑容妃も争いの中でお亡くなりに…」海市は任勇から龍尾神の護符を受け取り、湯乾自を激しく責めた。「お前は索蘭と手を組み、緹蘭を死に追いやって天啓の民を不安にさせた!」その時、愛する緹蘭の死に絶望した湯乾自は兵士の長槍を握って自ら身体を突き刺し、自害した。緹蘭の子供は早産のせいか生まれつき身体が弱く、李(リ)侍医は長くは生きられないと診断した。一方、海市はようやく皇宮に駆けつけ、城門で待っていた穆徳慶から旭帝の崩御を知る。「陛下は淑容妃と旅立たれました、混乱と動揺を招かぬよう清海公がまだ内密にせよと… しかも清海公は皇子のため、再び柏奚(ハクケイ)の契りを結ばれたのです」海市は無我夢中で昭明宮に向かった。すると憔悴した方鑑明が寝台に寄りかかって座っている。「来てくれたのか…」海市は鑑明の隣に腰を下ろしたが、何も言えずにいた。「越(エツ)州には戻れない…皇子がお生まれになった…朝廷が不安定な今、正当な補佐が必要になる」「…斛珠(コクジュ)夫人として私が支えるわ」「優しいのだな」鑑明はしみじみ海市にもっと早く会いたかったと漏らした。「私が若い頃に出会えていたら…良かったのに…」「ある書物で読んだわ、この世界には並行する別の世界が存在していると… 別の世界では私たちは同じくらいの年でもっと早くに出会っているかもしれないわ」…別の世界にいる海市と鑑明は宮中で行われた投壺(トウコ)の試合で初めて出会った海市の投げた矢が鑑明の頭を直撃、負けず嫌いの2人は言い争いになってしまう初めこそ鑑明は海市に意地悪だったが、やがて互いを意識するようになり、年頃になると2人は婚姻を約束した…「そして私は何人か子供を産むの、2人で子供を育てゆっくり年老いて行く」「卓英(タクエイ)を忘れているぞ?」「忘れていないわ、この世界では私が年上だから…卓英には師娘(シジョウ)と呼ばせる」鑑明は出会いが遅くなったことを謝り、まだやり残したことがたくさんあると言った。しかし自分でもこれからどうなってしまうのか分からないという。「…海市、少し疲れた、眠らせてくれ」鑑明は横になり、愛する海市の膝枕で眠ることにした。「必ず起こしてくれ…長く眠らないように…」天享(テンキョウ)16年、大徴の順武(ジュンブ)帝が崩御、元号は景恒(ケイコウ)と改められた。忘れ形見となった皇子・惟允(イイン)は淳容(ジュンヨウ)妃を皇太后と呼んで敬っている。やがて順武皇帝は陵墓に葬られ、宗廟の前で大徴高祖の名が贈られた。一方、鵠庫(コクコ)では右王の額爾済(ガクジセイ)が病で逝去した。後継者の奪罕(ダツカン)は他部の帰順を受け入れ瀚(カン)州を統一、自ら渤拉哈汗(ボツラコウハン)と名乗る。″渤拉哈″とは黒いたてがみ″烏鬃(ウソウ)″を意味していた。奪還は早速、大徴と同盟を結びたいと書簡を届け、摂政である皇太后宛に直筆の文を送る。「そうだ、哥哥からひとつ知らせがある」実は方卓英はついに鞠柘榴(キクシャリュウ)と再会を果たしていた。それから5年が経った。惟允は母后がかつて龍尾神を天啓に呼んだと師匠から聞いたが、鮫が怖くなかったかと尋ねる。「鮫人のいるところには鮫が出没するとか、鮫は怒ると船まで噛んで壊すそうですね」「鮫は怖いわ、でも守りたい人がいたから仕方がなかったの」海市は惟允にも困難や危険に立ち向かい、自分の信念に従って民を守って欲しいという。すると惟允は師匠と同じ言葉だと笑った。「今から老師に会いに行きます、母后も一緒に行きましょう!」「老師はお身体の具合が悪い、独りで行きなさい」「以前より回復されました…母后が行けば老師も喜びますよ?」「そうね」その頃、昭明宮では仮面をつけた老師が満開の霽風の花をながめていた。完( ̄▽ ̄;)意地でも海市と師父を一緒にしないという執念だけは伝わったw何だかんだ言いながらも、いざ終わってみると寂しい〜(´・ω・)
2022.12.16
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月升沧海 Love Like the Galaxy (第12話)第39話「積もる痴情のもつれ」皇帝に呼ばれて参内した小越(ユエ)侯。すると崇徳(スウトク)宮には杖刑で負傷した凌不疑(リンブーイー)の姿もあった。「越卿、実はそちに相談があってな…五公主とそちの末息子を早く成婚させたい」小越侯は困惑した。今や都中が五公主の噂でもちきり、そんな中で成婚すれば越氏まで影響を受け兼ねない。しかし皇帝は越氏があえて今、五公主を嫁に迎えることで噂が嘘だと示し、五公主の名誉を守りたいという。小越侯は皇帝の命に背くこともできず拝命するしかなかったが、これが凌不疑の差し金だと分かった。一方、皇太子の想い人だった曲泠君(チューリンジュン)は旧友と積もる話もできないまま慌ただしく宮中を出た。夫・梁尚(リャンシャン)が曲泠君をぞんざいに扱う様子を目の当たりにした五皇子妃は、かつて仲良く遊んでいた友の境遇が気がかりでならない。しかし程少商(チォンシャオシャン)は常識的で誠実だと評判の梁(リャン)州牧(シュウボク)が義兄なら夫人も大丈夫だと安心させた。その頃、梁尚は苛立ちながら曲泠君を連れて城門を出ようとしていた。すると東宮の使いが現れ、辞別の品を届ける。曲泠君は夫の手前、辞退したが、使いは皇太子が別れを惜しんで自ら授けた品だと釘を刺した。そこで代わりに梁尚が化粧箱を受け取ったが、中身が皇太子の手巾だと知るや馬車に乗り込むなり曲泠君に暴行してしまう。走り去る馬車から漏れ聞こえる曲泠君の悲鳴、皇太子妃はその声を城楼で耳にしながらほくそ笑んでいた。そんなある日、凌不疑が長秋宮にやって来た。少商はちょうど皇后や皇太子夫妻と談笑していたが、驚いたことに曲泠君が夫を殺したという一報が入ったという。「廷尉府が捕らえに向かいました、殺めたのは昨日の午の時の頃だとか 曲泠君が食事を届け、その後、刺された梁尚を下僕が発見しました」しかし皇太子が殺したのは曲泠君ではないと断言した。実はその時間、皇太子と曲泠君は紫桂(シケイ)別院で会っていたという。一方、梁府では廷尉府侍郎である袁慎(ユエンシェン)が舅父・梁無忌(リャンウージー)と対峙していた。袁慎は不明な点が多いため廷尉府が遺体と容疑者を預かると決めたが、公にしたくない舅父に邪魔されてしまう。「お前の母も梁家の嫡女だ、母方の名声にも関わる、連行はさせられん」結局、袁慎は伯父に阻まれ断念、改めて人を遣わすことにした。皇太子妃は皇太子と曲泠君が密会していたと知り深く傷ついた。「それほど彼女は魅力的ですか?再会しただけで理性を失わせ、醜聞を引き起こすとは… しかも死人まで出して、とても取り繕えない」皇太子妃は曲泠君が皇太子と復縁するため夫を殺したと決めつけると、ついに皇太子は堪忍袋の尾が切れた。「彼女と会ったのは梁尚から十余年も乱暴されていたからだ 曲泠君の悲惨な境遇もそなたのせいだ!答えよ、余の手巾がなぜ曲泠君の手に?」実は皇太子妃の嫌がらせは今日に限ったことではなかった。皇太子は皇太子妃がこの十余年、自分の名義で梁家に事ありげな品を贈り続けていたことを把握していたという。これでは梁尚が自分たちの関係を疑い、乱暴するのも当然だった。少商は衝撃の事実に驚愕、その時、初めて東宮を訪れた時のことを思い出し、はっとする。あの時、確かに皇太子妃は自分のかんざしを外し、梁夫人に渡すよう指示していた。しかし皇太子妃は原因なら皇太子にあると反発する。「曲泠君にとってこの十余年は生き地獄だったしょう、では私はどうだったと? 枕を同じくしても殿下の心は遠く離れていた…私の心が痛まないとでも思いますか?」「縁は切れたと言ったであろう?!成婚した時に誓った、そなたと余生を歩むと… だかそなたは改めもせず、結果、今に至り、余が好まぬばかりか、宮中の誰にも尊敬されぬ」すると皇太子は皇太子妃に最後の機会を与えた。「望むなら曲泠君のために陛下の前で余と一緒に嘆願するのだ 望まぬのならすぐに消えうせろ!」「…曲泠君はまるで私と殿下の心に刺さる棘のよう あんな女、今すぐ廷尉府の牢に入れられ死ねばいいのよ!絶対に嘆願などしない」皇太子妃は積年の恨みをぶちまけ、皇后に拝礼して長秋宮を出た。その夜、皇太子は父皇に事情を説明し、廷尉府に曲泠君の潔白を証明してほしいと嘆願した。皇帝は臣下の妻と密会していた皇太子に激怒、すぐ廃することもできると怒号を響かせる。「男女が別院で密かに会いながら潔白だと主張して誰が信じるというのだ?! 天下の見本になるべき太子が男女の情などで己の名声を壊すとは!」すると皇后が矢も盾もたまらず、涙ながらに母として子を信じると訴えた。「陛下は父として息子を信じてくださいますか?」結局、皇帝は東宮と天下のために示しをつけるとし、子晟(ズーション)に真相解明を命じた。凌不疑は拝命して寝殿を出た。すると物陰で聞き耳を立てている少商を見つける。ばつが悪い少商だったが、調査に行くなら一緒に行きたいと頼んだ。本当のところ不疑は嫁選びを誤り、自分の首を絞める結果になった皇太子に呆れているという。しかし少商は皇太子の果敢な決断に敬服すると言った。「太子が自分の名誉のために曲泠君の苦難を見過ごせば、それこそ失望するわ …ねえ、行ってもいいでしょう?」「分かった、だがかき乱さないと約束してくれ」「いつ私がかき乱したの?」「いつもだろう?」凌不疑は黒甲衛(コクコウエイ)を引き連れ、梁家の捜査にやって来た。梁州牧と梁尚の同腹の弟・梁遐(リャンシア)が現場となる部屋に案内したが、まだ生々しい血の痕が残っている。不疑は同行した少商を気遣い、曲泠君の様子を見て来るよう頼んで外へ出した。「私は梁州牧に話がある、事は梁府の男全員に関わる…全員に同席してもらおう」その頃、曲泠君は子供たちと引き離され、君姑から容赦ない制裁を受けていた。「お前を打ち殺してくれる!息子の敵討ちだ!」驚いた侍女・幼桐(ヨウトン)は咄嗟に主に覆い被さってかばったが、そこへ少商が駆けつけ止めた。「老夫人、調査中なのに私刑に処すとは…」しかし老夫人は少商が皇后付きだと知り、皇后が息子を助けるため送り込んだと誤解してしまう。「自分の息子は大事で、私の息子は死ねばいいというの?そんな理不尽なことがあると?」老夫人は興奮して再び曲泠君を打ち据えろと叫んだが、その時、袁慎が母を連れてやって来た。袁夫人は早速、長老を呼び集め、嫡女として一族の掟に従い審理を始めた。当時はまだ父の側女だった庶母、寒門の出なのはともかく、狭量で私心しかなく、到底、父の妻とは認められないという。すると老夫人は正妻となっても一族に見下されていたと不満を漏らした。溺愛する梁遐を仕官させたくても一族が推挙してくれず、家主にしようとしても年功序列だと言って機会を与えてくれなかったという。しかし袁夫人はそもそもこんな騒動となった発端は老夫人にあると指摘した。実は老夫人が正妻になったのは梁尚を産んだ時ではなく、梁遐を産んだ時だったという。そのため老夫人は梁尚が庶出だと知られるを嫌って梁遐にばかり目をかけ、そのせいで梁尚は神経質で疑り深い性格に育っていた。「末子に家主を継がせたいから曲泠君の断罪を急いだのね 梁家がなければ甲斐性なしの2人の息子の命など何の価値もないけれど…」袁夫人は聡明な曲泠君がなぜ虐げられても訴え出なかったのか訝しんだ。実は曲泠君は何度か離縁を申し出たが、梁尚から皇太子との醜聞を言いふらすと脅され断念したという。子ができてからも離縁を考えたが、出て行くなら子を置いて行けと迫られ諦めていた。すると袁夫人は事件当日、梁尚に食事を届けたのは誰なのか確認する。「侍女の幼桐です」その頃、凌不疑は梁家の男たちを集め、この中に犯人がいると踏んでいた。女が背後から一太刀(ヒトタチ)で胸を刺し、命を取るのは難しい。しかも梁尚は交友がなく、終日、部屋に閉じこもって金石の彫刻に没頭していた。「彼に恨みがあり、利害を争うのは外部の人間ではない、梁家の者だけだ 本件は太子に関わり、たった1日で都中に広まった 犯人の手際がいいのも呼応する者がいたからだ それに梁尚は梁家家主、家主が死んで夫人が犯人となれば梁尚の子は家主の座を継げない つまり取って代われる者こそ、犯人の可能性がある…梁州牧、あなたが真犯人では?」つづく( ゚ェ゚)… ←皇后も所在なさげw
2023.10.28
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风起霓裳 Weaving a Tale of Love第20話「惹かれ合う心」才人・武媚娘(ブメイニャン)は皇帝の妃として宮中での日々が残りわずかだと覚悟していた。「もうすぐ感業(カンギョウ)寺で御仏にお仕えすることになるでしょう‥わびしい余生ですわ 殿下は青春を無駄にすることなく、本懐を遂げてください」すると皇太子・李治(リチ)はいつか力になれる時が来たら寺から救い出すと約束した。武媚娘は心から感謝したが、皇太子の言葉にいささか落胆してしまう。「あなたは″姉″も同然、陛下以外で私を心配してくれる唯一の人だ」その夜、裴行倹(ハイコウケン)はうなされながら玉児(ギョクジ)の名を呼んでいた。「玉児…私が君を助ける」一方、罰を受けた豆子(トウシ)こと庫狄琉璃(コテキルリ)は今日の仕事を片付けてから居所へ戻った。裴行倹を心配しながら眠れない夜を過ごす琉璃、そこでしんこ細工の人形を自分と裴行倹に見立て、何もできなかったことを詫びる。翌朝、琉璃は思い立って東宮へ見舞いに行った。すると王伏勝(オウフクショウ)が豆子を案内しながら、玉児という名を知っているか尋ねる。驚いた琉璃は知らないと言ったが、王内侍の話では裴行倹がうわごとでその名を呼んでいたという。「その女子のことが心配でならぬようだった、きっと想い人だな」裴行倹はまだ意識が戻っていなかった。すると急ぎの仕事がある王内侍は医官の豆子に包帯の交換を頼んで出て行ってしまう。琉璃は困惑しながらも裴行倹の手の包帯を換えたが、その時、ようやく裴行倹が目を覚ました。「具合は?!つらくない?!」「玉児…なぜ来たんだ?私は大丈夫、心配するな」「うん」2人はしばし見つめ合い、互いに相手の無事を喜んだが、その時、皇太子が現れた。李治は守約(シュヤク)が目を覚ましたと気づいて安堵した。「豆子が福を運んでくれたようだな」すると皇太子はよほど豆子が気に入ったのか、頭を優しく撫でてやる。裴行倹は相手が皇太子でも、やはり想い人が他の男に触れられるのは面白くなかった。「豆子、持ち場へ戻れ、叱られるぞ?」そこで李治はいつでも好きな時に見舞いに来れば良いと認めた。しかし裴行倹は皇太子の寵臣だと誤解されたら妬まれると反対する。李治はならば用事を作って豆子を呼んでやると約束、豆子は喜んで帰ることにした。孫徳成(ソントクセイ)は琉璃の好物を持って宮道で待っていた。そこへ東宮から戻ってきた琉璃が現れる。孫徳成は琉璃が東宮に出入りしていると知り、世継ぎ争いに巻き込まれるのを心配した。「宮中で生きるには保身を図ることが大切だ」「だからこそ太子殿下を曹王の陰謀から守りたいの、太子殿下は善良で名君になるはずよ きっと阿娘の事件を調べ直して冤罪を晴らしてくれるわ、駄目だとしても太子殿下を助ける 考えたの、保身を図るより実直な人が多ければ阿娘の最期は違っていたかもしれないって…」孫徳成は素性を隠した一介の医官に何ができるのかと呆れたが、琉璃は失敗しても後悔しないという。「全く頑固だな」咸池(カンチ)殿に尚服局の鄧七娘(トウシチジョウ)がやって来た。盂蘭盆会(ウラボンエ)当日の衣に何か要望があるか聞きたいという。しかし武媚娘は高位の妃嬪の衣を先に作ってからでいいと断った。「確かに熟練の宮女は人気なのでしょうね、そうだ、新人の豆子に頼むわ」実は媚娘は最近の楊妃の態度が変わったことに気づいていた。腕比べの時も明らかに皇太子を敵視し、最近では自分を皇帝に近づけまいとしている。わざわざ尚服局から使いが来たのは楊妃が自分の衣に探りを入れているからだろう。媚娘は早く作れば悪巧みの時間を与えてしまうと考え、慌てずとも豆子の腕ならすぐできると分かっていた。卓錦娘(タクキンジョウ)は繍女たちに担当の妃嬪を振り分けることにした。誰もが権勢にあやかりたいと高位の妃嬪を狙っていたが、そんな中、阿碧(アヘキ)は何年も担当してきた武才人のためにすでに図案を考えたという。しかし武才人は豆子を指名していた。武才人が存在感を増してきた途端、新人に横取りされた阿碧は面白くない。今も豆子はまた皇太子に呼ばれて東宮へ出かけていた。「ふん!豆子は刺繍より権力者にすり寄るのが忙しいみたいですね~師父も安心できませんよ?」「お黙りっ!」今日は裴行倹の仕官初日だった。皇太子の気遣いで東宮に呼んでもらった琉璃はすっかり元気になった裴行倹の姿に安堵する。すると裴行倹は玉児を送りながら、左衛率(サエイリツ)の就任祝いに欲しいものがあると切り出した。「実は君が作った肌着は着心地が良いと太子殿下が褒めているそうだ 着古したあとも取ってあるらしい…」「それなら遠慮はいらないわ」そこで琉璃は裴行倹に抱きつき、自分の指を使って採寸を始めた。驚いた裴行倹は皇太子にも同じことをしたのかと焦ったが、琉璃は皇太子の寸法なら尚服局にあると呆れる。「私にはいいが、他の者にはするなよ?」「ふふ、いつもは物差しを使ってる」「そうか(ホッ)じゃあ続けて…」「もう終わったわ!」(´・∀・)お、おう…一方、楊妃は卓錦娘の図案を気に入らなかった。「どれも古臭い…いっそ大家の席を譲ったら?」「どうかお鎮まりください!必ず満足される衣をお作りいたします!」卓錦娘は図案を引き取り帰ることにしたが、その時、楊妃が武才人の衣はどうなっているのか聞いた。しかしまだ製作が始まっておらず、ただ担当だけは豆子を指名したという。卓錦娘は図案の着想が浮かばず、繍女たちに妙案を出せと迫った。苛立つ大家の様子を見て良い気味だとほくそ笑む琉璃、しかし楊妃も楊妃で動き始める。武才人の侍女・松涛(ショウトウ)は御花園の築山で郎(ロウ)侍衛と密会していた。しかし楊妃の侍女・丹青(タンセイ)に見つかってしまう。侍女と侍衛の密通は死罪、松濤はひざまずいて命乞いした。「楊妃のためにひと肌ぬいでくれるなら、″郎″侍衛との不始末は秘密するわ」「郎侍衛?」松濤は丹青と郎侍衛に面識があると気づき、罠にはめられたと分かった。激怒した松濤は郎侍衛を引っ叩いて縁を切ると宣言、かくなる上は何でも申しつけてくれという。皇太子は曹王から守ってくれた裴行倹と豆子を酒席に招いた。すると王内侍が裴行倹を案内しながら玉児の件を持ち出し、想い人がいるなら皇太子に頼めば婚姻が叶うと助言する。「それは…その…話せば長くなるのでやめましょう」一方、琉璃はすでに皇太子に謁見していた。「今日は無礼講だ、くつろいでくれ」李治は2人に葡萄酒を振る舞いたいと話した。葡萄酒と聞いた琉璃は子供の頃、初めて見た葡萄酒の色に心を奪われ、ある日、母の目を盗んで飲んだことがあったという。「実は飲み過ぎて瓶を抱いたまま眠ってしまい、阿母に見つかってひどく怒られたんです」皇太子が豆子の思い出話に笑っていると、そこへちょうど裴行倹が到着した。裴行倹は琉璃が酔っ払うのではないかと気が気でなかった。そこで葡萄酒は後から酔いが回るため飲みすぎるなと釘を刺したが、皇太子から興が覚めると叱られてしまう。裴行倹の心配をよそに葡萄酒を飲み続ける琉璃、やがて皇太子もろれつが回らなくなってきた。琉璃もいよいよふらふらになり、慌てた裴行倹は酔い潰れる前に玉児を送って行くことにする。つづく( ;∀;)あ__私のイチオシ松濤ががが___
2023.07.05
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皎若云间月 Bright as the moon第1話「目覚めたら天聖王朝」…私は李蕓(リウン)、ネット小説家よごく普通に暮らしているけれど、実はベストセラー作家なのランキングの常連でファンも多いわそれなのにまさか私の人生が代表作と一緒に″更新″されてしまうなんて…李蕓の小説【俺様社長の指導帳】がランキング1位を獲得した。ファンが更新を今か今かと待ち望んでいる中、そんな人気小説に眉をひそめる男がいる。ある日、穆(ボク)グループの工事現場で漢代の墓が出土、計画が頓挫した。不運続きの穆小七(ボクショウシチ)は責任を負わされ、ついに父から副総裁を解任されてしまう。その時、ちょうど【俺様社長の指導帳】の更新の知らせが鳴った。「まただ…絶対におかしい…」更新された第30章にはまるで予言したように″古墓が出土する″という内容がある。しかも日付は7月20日だ。穆小七はまたも小説通りになったと憤り、作者である李蕓を問いただすことにした。穆小七はちょうどマンションから出て来た李蕓を捕まえ、なかば強引に自分の自宅へ連れて行った。「説明してくれ、私に起こるトラブルと小説の内容が同じだ、しかも小説の方が早い」7月27日の新聞を見せられた李蕓は自分が故意に穆小七を陥れていると疑われたことに気づく。穆小七は今日中に小説を削除し、今後一切、執筆しないと誓うよう迫った。言いがかりをつけられた李蕓は激怒、穆小七の不運と小説は関係ないと突っぱねる。すると穆小七はいきなり李蕓に口づけし、その間にパソコンの削除キーを押してしまう。小説は全て消去された。解放されたものの李蕓は怒り心頭、腹いせにスマホから新たな一文を投稿する。…彼は突然、失踪した、行方は分からない…すると穆小七は本当に行方不明になってしまう。翌朝、李蕓のマンションに突然、黒服の男たちが乗り込んできた。実は穆小七が失踪、最後に会ったのが李蕓だという。「一番、疑わしいのは君だ、一緒に来てもらおう」驚いた李蕓はスマホをつかんで部屋を飛び出し、咄嗟に屋上へ出た。「どこでもいいから私を逃して、捕まりたくない!」李蕓がメッセージで投稿していると、急に激しい頭痛に襲われ、倒れてしまう。その時、暗雲が立ちこめ、雷鳴がとどろいた。気がつくと李蕓は火事に巻き込まれていた。…ここはどこ?なぜここに?(はっ!)みんな死んでる、もしかしてあの世?私、死んだの?!…やがて李蕓は寝台の上で目を覚まし、夢を見ていたと分かった。しかしなぜか見知らぬ部屋で古装姿、さらに見ず知らずの古装の娘が現れる。「小姐(シャオジエ)~お目覚めになりましたか!良かった!」「ヒイィィィ~(゚ロ゚ノ)ノ!あんた誰よ!」「小姐~侍女の彩蓮(サイレン)です!」時は泰熙(タイキ)19年、ここは天聖(テンセイ)の帝都にある雲王府。何と李蕓は雲王府の跡取り娘・雲浅月(ウンセンゲツ)郡主になっていた。李蕓はこれも夢だと考え、どうせなら小説のネタにしようと思いつく。すると突然、混成魔王(コンセイマオウ)こと四皇子・軽染(ケイセン)が駆けつけ、雲浅月を強引に連れ出した。四皇子は雲浅月を助けに来たと言ったが、訳が分からない李蕓は男を殴って逃げ出した。すると市場で自分の似顔絵を持って聞き込みをしている官兵を見かける。どうやら雲浅月が有名な妓楼・望春楼(ボウシュンロウ)に放火したらしい。驚いた李蕓は咄嗟に停まっていた馬車に逃げ込んだが、中に乗っていたのは穆小七だった。「ちょーっ!なぜここに?!あんたのせいよ!失踪なんて嘘だったのね!」しかし男は黙って雲浅月を乗せたまま宮中へ向かってしまう。李蕓は長い宮道を歩きながら、ふとスマホを持っていたことを思い出した。…良かった~これで元に戻る方法を探せる…すると穆小七が突然、スマホを大きな水瓶の中に捨ててしまう。「宮殿に暗器を持ち込むとは何と大胆な…」「武器じゃない、スマホでしょう?!小七、何言ってんのよ!」しかし穆小七に瓜二つとは言え、その振る舞いは明らかに別人のように見えた。容景(ヨウケイ)は雲浅月を皇帝の前に突き出した。聞けば雲浅月は学がなく、あちこちで騒動ばかり起こす問題児、それでも祖父が功臣だったため皇太子の許嫁になったという。しかし今回ばかりは放火して死者まで出し、さすがに皇帝も見過ごせなかった。皇后は浅月が火をつけたと決まったわけではないとかばったが、かえって叔母の皇后が甘やかしたせいだと皇帝に叱責されてしまう。そこで皇太子が合図、秦(シン)都官が現場に落ちていたかんざしを差し出した。「これはご婚約の日、皇后娘娘(ニャンニャン)より下賜された金のかんざし 特別な場合しかおつけにならないとか…朝臣5名の亡骸のそばにあったのがこれです」しかも文官はこれまで雲浅月がやらかした数々の愚行を絵に残していた。李蕓は自分を陥れる魂胆だと呆れたが、ふと死んだら元に戻れると思いつく。٩( ‘ω’ )و <はお!罪を認めるわ!私を殺してちょうだい!驚いた四皇子は咄嗟に浅月と一緒にひざまずき、父皇に再調査を嘆願した。皇后も叔母として責任を取り、罰を受ける覚悟だという。これには皇帝も困惑し、冷静沈着な容景に意見を求めた。「郡主が死を望むなど通常なら考えられぬこと、癇癪のきらいがあるやもしれません まずは郡主を休ませ、回復されたのちに算段しては?」皇帝は容景の進言に納得し、雲浅月を雲王府に軟禁して調査を続けるよう命じた。( ー̀ωー́ )oO(どうしたら現実に戻れるの?女社長ならまだしも殺人犯なんて…チッ!四皇子は李蕓を雲王府まで送った。すると待ち構えていた雲王が放火事件を起こした孫に激怒、興奮して叩き始めてしまう。四皇子は咄嗟に間に入って雲王をなだめ、その間に李蕓は彩蓮と一緒に自分の部屋へ退散した。「で、景世子ってどんな人?」「栄(エイ)王府のお世継ぎです、天聖一の才人で財産家でもあります 文武はもとより商売の才能もおありなんです、皇上も一目置かれているとか でも栄王殿下と王妃は早くに亡くなり、王府を1人で管理しておられます 医術にも精通されているのですが、ご自身の病は治せないとか… お身体が弱いため、四皇子は弱美人(ジャクビジン)と呼んでいます」やはり穆小七と容景は無関係らしい。それにしても一体どうしたら戻れるのだろうか。李蕓は侍女を下げると、手持ち無沙汰で机にあった書物を開いた。「何なに?身体を借りて蘇る者は生者にあらず死者でもない… 寿命の長さは定まらず、遠からず、塵と消え、転生することもなし… え?!鏡を用いて確かめよ?」そこでちょうど机にあった鏡をのぞいてみると、李蕓の姿が消えてしまう。「やだ!私はこの世界に属してないってこと?! つまり私の命の火が徐々に弱まって、消えて灰になる… やだあ~!ここで死ぬわけにはいかない!死にたくな~い!」一方、屋敷に戻った容景は雲浅月の肖像画を描きながら昔を思い出していた。…あの夜、皇太子との縁談が決まった雲浅月は宴を抜け出し、独り池を眺めていたすると容景が通りかかる『雲郡主じゃないか、皆が探していたぞ?』『太子殿下に嫁ぎたくないの』『太子殿下も君が嫌いらしい、確かに雲郡主が教養がなく美貌も十人並みだとみんな知っている 太子どころか普通の家柄の男でさえ願い下げだ』『何ですって!』憤慨した浅月は思わず容景を突き飛ばし、池に落としてしまうしかし容景は泳げず、結局、浅月が助けることになった仕方なく何度か心臓を圧迫し人工呼吸をしようとしたが、そこで容景の意識が戻る『恥を知れ!』『私が助けたのよ?!』『分かったぞ?私が好きだから太子に嫁ぎたくないんだろう?』『はあ?!』『だって口づけしただろう?』『呼吸を助けるためでしょう?頭がおかしいんじゃない?』2人は揉み合っているうち一緒に池に落下、宮中は大騒ぎになった…容景は美しく成長した雲浅月の絵を完成させ、書斎に飾った。「あれから10年経った、出仕してすぐ君に会えるとはな…ふっ」翌朝、目を覚ました李蕓はまだ夢の世界にいると気づいて落胆した。何とか帰る方法はないものか。そこで彩蓮を身代わりにして屋敷を抜け出し、山奥へ向かった。(^ꇴ^)b<落雷に打たれれば魂が飛び出して家に帰れるはずよ!その時、雷鳴がとどろいた。「私はここよ!ここに落ちて!」すると李蕓の頭に雷が落ちてしまう。つづく( ゚ェ゚)今さら感がハンパないタイムスリップもの?確かにツンデレではあるが、果たしてこれが正解なのか分からないw
2022.09.25
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风起霓裳 Weaving a Tale of Love第22話「百鳥朝鳳の礼服」玉児(ギョクジ)こそ11年間、探し続けていた琉璃(ルリ)だと知った裴行倹(ハイコウケン)。ようやく安(アン)氏の金針と奥義書を返せる時が来たが、尚服局の大家・卓錦娘(タクキンジョウ)が琉璃の敵だと気づいて断念した。…これを返したら琉璃が危ないところだった…その夜、玉児を暢春(チョウシュン)湖に呼び出した裴行倹は結局、玉児の好物の桂花糕(ケイカコウ)を渡して茶を濁した。「今後は弈心(エキシン)宮で会おう」実は弈心宮は妃嬪が首を吊って以来、使われておらず、もののけが出るという噂がある。そこで裴行倹はもののけに扮して噂をあおり、さらに人が寄り付かなくなるよう手を打った。7月15日の盂蘭盆会(ウラボンエ)。楊(ヨウ)妃はわざと遅れることで豪華な百鳥朝鳳(ヒャクチョウチョウホウ)の衣を見せつけ、後宮での自分の地位を顕示しようと企んだ。予想通り妃嬪たちは楊妃に圧倒されたが、武媚娘(ブメイニャン)の姿はなく、皇帝の表情も険しい。すると皇太子・李治(リチ)がすかさず最近、長安で羽根が珍重されるという噂の原因がこれだったと指摘した。「貴重な鳥の羽根を使って衣を作るとは、かつてない発想です」仏事に豪華なだけでなく鳥の羽根を使った衣を着てしまった楊妃。形勢が不利になったと分かると咄嗟に武才人も金の生糸を使って牡丹を刺繍し、天山の玉をはめ込んだ衣らしいと言いつけ、あろうことか皇帝を待たせていると非難した。その時、ようやく武才人が到着する。しかし楊妃の思惑が外れ、武媚娘は質素でありながら斬新で目を引く美しい衣をまとっていた。武媚娘が作った豪華な牡丹の礼服は亡き長孫(チョウソン)皇后のために仕立てたものだった。実は沐浴して身を清めた後に衣を供えてから来たので遅れたという。皇帝はうっすらと涙を浮かべ武才人の心遣いに感謝し、豆子(トウシ)と一緒に考えたという衣を褒めた。「後宮にそなたがいて朕は幸運だ」皇帝は儀式にそぐわない装いの楊妃に反省を促し、寝宮に帰した。このまま冷遇されるのを恐れた楊妃は質素な衣に着替えて甘露之殿の前でひざまずいたが、これが裏目に出てしまう。謁見を許された楊妃は忙しさで衣を確認する暇がなかったと釈明、尚服局に責任を押し付けた。しかし皇帝は罪を人に押し付けるのが反省した結果なのかと厳しい。「そなたの過ちは3つ、皇后の衣のみに許される百鳥朝鳳の図案を用いたこと 衣に鳥の羽根を用いて殺生戒を犯したこと、華美な衣で倹約の方針に背いたことだ 戻って反省せよ、朕が召すまで目通りは許さぬ」その夜、李治は亡き母の立成(リッセイ)殿を訪ねた。するとちょうど参拝に来ていた武才人と出くわす。「心から母に参るのは父皇と私、それに武才人だけだ…」「敬愛する長孫皇后に中元節の巷の風習である蓮花灯を贈っただけです」李治は武才人の策謀の才に感心していたが、こうして蓮花灯を供えてくれた気持ちには後宮争いも陰謀も無関係だと感謝した。しかしこの参拝までが計画だったことは李治にも見抜けなかっただろう。実は武媚娘が蓮花灯を贈ったのは皇太子に見せるためだった。武媚娘は長孫皇后のために作った衣で皇帝を騙せても、皇太子は欺けないと分かっていた。予想通り皇太子はその目的が楊妃を倒すことだ気づいたが、ささやかな蓮花灯を贈ることで心を動かされたに違いない。帰りの道すがら話を聞いた侍女・玉柳(ギョクリュウ)はさすが才人だと称賛した。「策略ずくで近づくのは私も嫌だわ…でも楊妃を敵に回した今、太子殿下だけが頼りなの」しかし嘆いている暇はない。楊妃を倒すためには皇帝の寵愛が薄れたこの機を逃すわけにはいかなかった。楊妃の怒りの矛先は尚服局に向かった。尚服局の主管である林(リン)尚服は全て卓大家の責任だと訴えたが、卓錦娘は図案を提案した豆子が元凶だと責任転嫁する。その時、ちょうど尚服局を訪ねた王伏勝(オウフクショウ)は豆子の危機を察し、慌てて皇太子に報告した。楊妃は豆子が武才人と結託して自分を陥れたと疑い、直ちに外で打つよう命じた。しかし皇太子が現れ、母への衣の褒美に豆子に菓子を届けに来たという。「陛下も喜んでいた、称賛すべき豆医官になぜ罰を? 本来、豆医官は不禄(フロク)院の者で手伝いに過ぎぬ、間違いあれば上の者が正すべきであろう? 上の者も目を通した上で完成したのなら誰の罪だ?」李治は楊妃が皇帝の前で忙しくて衣を確認する暇がなかったと言い訳したことを持ち出した。「太子、医官を守るために私を敵に回すと?」「だとしたらどうしますか?…私は物の道理を守っただけ この件が大ごとになれば恥をかくのは誰でしょうか?」すると楊妃は卓大家に板打ち50回の罰を与えて帰って行った。その夜、皇帝は武媚娘をそばに置いた。思えば楊妃がここまで増長したのも自分が甘やかしたせいだろう。皇帝は今日の衣の件で楊妃に深く失望したが、一方で武才人の誠意に心を動かされたと話した。そこで武媚娘は長孫皇后の詩に曲をつけた歌を披露する。皇帝は感激のあまり思わず涙し、長孫皇后との幸せな日々に想いを馳せた。その頃、楊妃は寝宮で荒れていた。このままでは武才人を味方につけた皇太子が力をつけ、息子を守ることができない。侍女は主の身体を気遣い、今は休んで元気になったら落ち着いて策を練ろうとなだめた。すると楊妃は確かに冷静になるべきだと気づく。「そう言えば太子はなぜ一介の医官を必死に守ったのかしら?」楊妃は皇太子と豆子の間に何かあると疑い、2人の関係を探るよう命じた。裴行倹は弈心宮に琉璃を呼び出した。素性を隠している琉璃では母親の供養もままならないと考え、ここで灯籠を浮かべるよう勧める。「覚えていてくれたのね」琉璃は裴行倹からもらった蓮花灯を池に浮かべたが、母が帰ってくる家がないと嘆いた。すると屋根に登った裴行倹が横笛を吹き、傷ついた琉璃の心を癒してくれる。つづく( ̄▽ ̄;)めいにゃん、皇太子が好きなんだとばかり…恐っ!
2023.07.11
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月升沧海 Love Like the Galaxy (第13話)第40話「首謀の尻尾」梁尚(リャンシャン)殺害事件は私事として袁(ユエン)夫人が審理を取り仕切ることになった。曲泠君(チューリンジュン)は無実を主張、あの日、夫の部屋に食事を届けたのは自分の外套を来た侍女・幼桐(ヨウトン)だったという。そのため下僕たちはてっきり夫人が部屋に入ったと誤解したのだ。程少商(チォンシャオシャン)は審理を見守っていたが、自分に調べさせて欲しいと嘆願し、袁夫人も認めてくれる。すると袁慎(ユエンシェン)がまた難癖をつけて少商を挑発した。「自分を有能だと思っているのか?…学もないのに捜査したいとは笑わせる、ふっ」しかし少商は言い返しもせず、袁夫人に拝礼して出て行ってしまう。「おい!本気なのか?!」肩透かしを食った袁慎は自分も調べてくると母に断り、慌てて少商を追いかけた。袁慎は相変わらず減らず口を叩いていたが、内心では女子の身で現場に入った少商が心配だった。「あいつの捜査を待ったらどうだ? …それにしても穏やかになったな、以前ならすぐ言い争いになったのに」「子晟(ズーション)のおかげね、彼は私を溺愛し、大切にしてくれる、だから私も他人と争わなくなった 彼に嫁ぐなんて想像もできなかったけれど、でも考えてみたの もし彼と出会えなければ一生の心残りだとね…って、あなたに言っても無駄よね」少商は袁慎も早く妻を見つけるよう勧めた。意中の相手がいないため、自分たちのように仲睦まじい夫婦が気に食わないのだという。「あ、でも理想は下げた方がいいわ、私のような優秀な娘は見つからないから」袁慎の気持ちを知ってか知らずか痛い所を突く少商、すると捜査の妨げとばかりに袁慎は部屋から追い出されてしまう。少商は現場の部屋が外観に比べてやけに狭いと気づいた。そこで回廊を歩いて外周を図ってみたところ26歩、しかし部屋の中は20歩だと判明する。「残りの6歩はどこ?」壁には梁尚が大事にしていた金石で作った彫刻が飾られていた。その頃、凌不疑(リンブーイー)は真犯人に目星をつけ、梁家の男全員を集めていた。「梁尚は梁家家主、家主が死んで夫人が犯人となれば梁尚の子は家主の座を継げない つまり取って代われる者こそ、犯人の可能性がある…梁州牧(シュウボク)、あなたが真犯人では?」「私は梁家の養子に過ぎぬ、梁尚に代わり家主を務めているだけ 梁尚と梁遐(リャンシア)は同腹の兄弟で梁太公の血脈だ 梁尚を埋葬してから家主の位は三弟の梁遐に引き継がれる…」梁無忌(リャンウージー)は三弟に話を振ろうとしたが、梁遐はいつの間にか姿を消していた。少商は壁を叩きながら歩いているうち、音が違う場所を見つけた。そこで力一杯、壁を押してみると、隠し部屋に潜んでいた梁遐に引き込まれてしまう。「三公子…あなたが犯人ね?」隠し部屋には血だらけの衣があった。梁遐は凌将軍の捜査が自分に及ぶと恐れて密かに隠し部屋へ戻り、証拠となる衣を処分しようとしたのだろう。すると梁遐は少商の首に短刀を突きつけ、少商を殺して逃げると言い出した。少商は咄嗟に自分を人質にして交渉すれば逃げられると提案したが、梁遐は信じようとしない。その時、突然、外から凌将軍の号令が聞こえた。「部屋を壊せ!」現場を捜査していた少商がこつぜんと姿を消した。報告を受けた凌不疑は黒甲衛(コクコウエイ)に離れを破壊するよう命令、追い詰められた梁遐は仕方なく少商を人質にして外へ出る。驚いた袁慎は思わず身を乗り出したが、袁夫人は息子を止めた。「君子、危うきに近寄らずよ…行っては駄目」すると凌不疑はちょうど集まっていた梁一族を包囲し、少商を放せば一族も母親も見逃すと条件を出す。その時、少商が真犯人は三公子だと暴露した。退路を失った梁遐は少商を道連れにすると言い放ち、母親など殺せばいいと開き直る。そこで凌不疑は梁母を引きずり出し、目の前で腕を捻り上げた。母の悲鳴を聞いた梁遐はさすがに気が動転、その隙を突いて凌不疑が短剣を放ち、見事に梁遐の手に命中させる。少商は梁遐の手が離れた瞬間に逃げ出し、不疑は無事に少商を奪還した。↓少商、いつの間に護身用の刀を出したの?黒甲衛は梁遐の両膝に矢を放ち、逃亡を阻止した。老夫人は溺愛する梁遐に抱きついて悲しみに暮れたが、当の息子は母が自分のために何もしてくれなかったと嘆く。父は養子である長兄の無忌を州牧に推挙し、家主には二兄の梁尚を指名した。これも一族に有能な子弟がいなかったせいだが、梁遐は嫡子で志もある自分だけ何も手に入らなかったと母に八つ当たりする。「俺がこうなったのもお前のせいだ!いちいち騒ぎ立てるから収拾がつかなくなっただろう?!」凌不疑も少商も梁遐が誰かにそそのかされて急に事を起こしたと分かっていた。そこで不疑は廷尉府に梁遐を連行し、首謀者の名を聞き出すことにする。しかし梁遐が何か言いかけた時、上階から梁無忌が放った矢が喉を貫通した。皇帝は梁州牧が証人の口を封じをしたと知り激怒した。これでは自ら首謀者だと明かしているようなものだが、梁無忌はこの件を追及しても大局にとって利なしだと訴える。皇帝も子晟もその意味を悟っていた。そこで皇帝はひとまず梁州牧を下げる。「子晟…首謀者はもしや太子妃の従兄では?別院の警護を任されておるし」「孫勝(スンション)ならもう捕らえました、解放すれば数日も生きられないでしょう 首謀者が誰なのか、陛下もすでにお気づきかと…」その夜、越姮(ユエホン)は永楽宮に三兄を呼びつけ、厳しく追及した。「亡き大兄の半分でも知恵があったら太子を陥れようなんて愚かなことはしない!」「不服だったのだ… もともと饟(ジョウ)県越氏は安泰だったのに、なぜ文(ウェン)氏と共に造反せねばならなかったのか」小越侯は妹から何度、諌められても諦めがつかず、恨み言を漏らした。本来なら妹が皇后となり、三皇子が世継ぎとなって次の皇帝になれたはずだという。しかし越姮は三兄が自分たち母子のためではなく、自分が国舅(コッキュウ)になりたいだけだと分かっていた。「霍翀(フォチョン)に代わって不満を言える立場?! 三兄、なぜ孤城に遅れて到着したの?瘴気(ショウキ)を口実に霍翀を死に追いやろうとしたのでは?」「言いがかりだ!」すると越姮は凌不疑のこと、貨幣の鋳造の件も韓武(ハンウー)に刺客を送り込んだことも、少なからず証拠を揃えているはずだという。それでも上奏しないのは越氏の面子を考えて三兄の自首の機会を与えてくれたのだろう。「なぜ瘴気に毒があると言いながら馬だけは無事だったの?なぜ軍報には記されてなかったの? 答えなさいっ!」「…救援の要請を受け出征後、道中で前方に瘴気があると知ってな しかし調査した斥候が瘴気は問題ないと報告した ちょうどその頃、乾安(ケンアン)王の軍も急いで向かっていた そこで考えた、乾安王の救援の時間を遅らせることができたら陛下は宣(シュエン)氏を咎めるとな だから斥候を殺した」その話を皇帝と凌不疑が聞いていた。凌不疑は越妃の公正な判断のおかげでついに小越侯の尻尾をつかんだ。あの時、乾安王は長年、不仲だった小越侯を信じられず、自ら一隊を率いて瘴気を調べに向かったという。やがて配下の彭坤(ポンクン)から乾安王が瘴気に侵され、密林で死んだと報告を受けた。しかし瘴気に毒はなかったはず、つまり彭坤がこの機に乗じて乾安王を殺害し、兵権を奪ったのだろう。一方、孤城は雍(ヨウ)王が兵器をすり替えたせいで10日は持ちこたえられる所、2日で陥落していた。孤城の惨劇は奇しくもそれぞれの私心が重なり招いた結果だった。小越侯は武器のすり替えなど知らなかったと否定、確かに援軍が遅れるよう画策したが、たとえ数日、遅れても間に合うと確信していたからだという。「乾安王を殺してなどおりません!ましてや兵器のすり替えなど… 陛下、私は孤城陥落とは無関係です!」しかし15年前ならいざ知らず、皇太子を失脚させるべく罠にはめたことが皇帝の逆鱗に触れた。兄との今生の別れを覚悟し、そっと目を閉じる越姮。すると皇帝は越氏一族の忠誠と生き残った兄妹に免じて命は奪わず、爵位を剥奪して皇陵の墓守を命じるという。越姮はむしろ皇帝の優柔不断さに驚いたが、凌不疑は反発する様子もなく、ただ黙っていた。凌不疑が長秋宮に戻るとまだ少商がいた。少商は今日のことを両親が知れば説教されるため、帰らなかったという。「無茶をするなと言ったのに、なぜ危険を侵す?」「私でなければ誰が皇后と太子の汚名をそそぐの?…助けたかったの、だから怒らないで」「はぁお、責めないよ、でも君に何かあったら自分を許せない」すると少商は凌不疑の眉間の皺を伸ばした。「孤城の件は決着したのに嬉しくないの?」「少商…家族を傷つけた相手を法で裁けないとしたらどうする?」「まだ敵がいるの?」「いや、仮定の話だ」「私はやられたら必ずやり返す、家族を傷つけた人は許さない、千倍にして返すわ」「ではもし復讐することで愛する人を傷つけるとしたら?」「…人生は取捨選択、重要な方を選ぶ」その答えを聞いた不疑は思わず少商を抱きしめた。一方、屋敷へ戻った袁夫人は息子に妻を選ぶよう勧めていた。母の思わぬ言葉に驚く袁慎、実は夫人は息子の意中の相手が程娘子だと気づいたという。袁慎は少商が婚約してから何度も縁談を探したが、満足する相手が見つからなかったと話した。「今になって思えば、面影が重ならぬからかも…一手の遅れが運の尽きでした しかし程少商が成婚しても私は日々を生きていかねば」↓(´ω`)しょぼん凌不疑は越妃に呼ばれて再び永楽宮を訪ねた。実は越姮が兄を誘導して処罰させたのは霍家と霍兄、そして何より子晟のためだという。「兄に対する処罰に不満でしょうね… でもあなたには長年のわだかまりを捨て成婚して欲しい、普通の暮らしをするべきよ」しかし不疑は小越侯の処分に不満はなかった。舅父は小越氏の手で死んだわけではなく、越氏とて大勢が亡くなっている。「皇帝が厳罰を避けた心情を子晟も理解できます 今後は越氏に償いは求めません、ただし黒幕の罪は一生を費やしても償いきれないでしょう」すると不疑は帰ってしまう。つづく( ๑≧ꇴ≦)うわっ!不吉な予感!w子晟、どうやら黒幕を知っているみたいだねそれにしても袁慎がらしくなくてちょっとつまらないw
2023.10.30
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月升沧海 Love Like the Galaxy (第7話)第34話「役者揃う婚約の宴」婚約前に程少商(チォンシャオシャン)を母に会わせた凌不疑(リンブーイー)。しかし急に錯乱した霍君華(フォジュンホワ)から激しく手を噛まれてしまう。少商は中庭で手当てしながら、不疑がなぜ冷酷無情で親不孝と噂されても城陽(ジョウヨウ)侯と夫人を嫌うのか分かった。「子晟(ズーション)、あなたは無情なんかじゃない… それに心配しなくても阿母(アームウ)のそばには優しい叔父(シューフー)がいるじゃない」その叔父とは崔祐(ツイヨウ)将軍だった。実は将軍は霍君華を娶ると心に決めながら、母親に成婚を強いられて諦めたという。結局、夫人は難産で亡くなり、程なくして霍君華も凌益(リンイー)から離縁された。「それで崔叔父は誓ったのだ、後添えは取らず、母のために独り身を貫くと…」「そんな一途な郎君がいるのね…その篤い情義は万金でも代え難い」「少商、君への情義もかくの如しだ」不疑は今後、頻繁に母に会う必要はないと安心させた。しかし少商は未来の君姑(クンコ)に覚えてもらえるよう杏花(キョウカ)別院を訪ねたいという。不疑はそんな少商の気遣いが嬉しかった。すると少商はこれから宮中への送迎なら不要だと断り、代わりに自分が早起きして宮門で落ち合おうと提案する。「だがそれでは君が早起きしないと…」「皇后の前で居眠りすればいいわ」「私のために支障が出たら…」「心は2つに割れない、宮中の任務だけに捧げるか、あなたに捧げるか、あなたが選んで」「私に捧げてくれ」不疑はそんな少商が愛しくなり、明日にでも婚約の宴を開きたいと言った。「いいわ」「ふっ、ちょっとからかっただけだ、さすがに宴の準備には最低でも3日はかかる 早く当日になって欲しい、婚約すれば安心できるよ」「安心?どうかしら、以前も大勢の人を招いたのに、結局、縁談は…」その時、突然、不疑が少商に口づけした。「もし耳障りな話をしたら、また口を塞いでやる」( *´꒳`* )ふふふ… ←勝手に参加している気分w屋敷に戻った少商は婚約の宴が3日後に決まったと報告した。蕭元漪(シャオユエンイー)や程姎(チォンヤン)は慌ただしすぎると難色を示したが、少商は全て凌不疑に任せれば大丈夫だと太鼓判を押す。すると耳ざとい城陽侯夫人・淳于(チュンユー)氏が早速、曲陵(キョクリョウ)侯府にやって来た。淳于氏はすっかり態度を軟化させ、婚約の宴について相談したいと切り出した。どういう風の吹き回しかと思えば、礼品として少商に2人の侍女を贈るという。「城陽夫人って面白い人…ふふ 私が子晟の寝所も触っていないうちから美しい侍女と夫の寝所を享受しろと?」淳于氏の魂胆は見え見えだった。呆れた少商は城陽侯夫人が姉も同然だった霍君華から夫を寝取ったと言い放ち、淳于氏は激怒して帰ってしまう。蕭元漪は娘がわざと城陽侯夫人を挑発したと分かった。しかし凌不疑の実母でなくても名義が立つため、家に面倒を招くかもしれないと嫌味を言う。侍女・蓮房(リエンファン)も未婚妻が婚約の宴で門前払いされたら笑い物になると心配した。「阿母、昨日、霍夫人に会いました、あの人のせいで子晟母子は苦しんでいます 私は横恋慕が大嫌い、あんな人におべっかは使えません …見てなさい、どちらがどちらの家で門前払いされるか」婚約の宴の当日、淳于氏は少商に凌府の敷居をまたがせまいと意気込んで出かけた。しかし婚約の宴が行われるのは曲陵侯府、しかも招状を持っていなければ入れないと知る。その頃、曲陵侯府にはすでに多くの招待客が集まっていた。凌不疑の姿はまだなかったが、その時、蓮房が宴席にいる女公子の元へ駆けつける。「凌将軍から伝言です、すぐ着くので焦らなくて良いと、それから… ″今日、誰に会い、何が起きても怖がらず、好きなだけ啖呵を切れ″と…」少商は何のことか分からなかったが、その意味をすぐ知ることになった。曲陵侯府に袁慎(ユエンシェン)の馬車が到着した。従者は賑やかな場所を嫌う主がなぜ他人の婚儀の見物に来たのか分からなかったが、袁慎は師匠として弟子を苦海から救いに来たという。「この世で人を溺れさせるのが成婚、このまま危険に飛び込ませられぬ」公子の屁理屈に呆れる従者、その時、ちょうど汝陽(ジョヨウ)王妃が淳于氏を連れて曲陵侯府にやって来た。門衛は招状を確認しようとしたが、王妃の侍衛に追い払われてしまう。「…これで私が手を出すまでもないな、ふっ」宴席に汝陽王妃と淳于氏が乗り込んできた。汝陽王妃は少商を見つけるなり跪けと命じ、未来の君姑である淳于氏への無礼を罰するという。しかし少商は拒否、蕭元漪と万萋萋(ワンチーチー)が咄嗟に盾となって少商を守った。「君姑なら2日前にお会いしました、今は杏花別院で療養中です 今日、来た君姑とはどなた?…ああ~外従兄の寝床に入り込んだ人のこと?」「何て言い草なの?!しかと指導してやらなくては…誰が私を阻めると?!」「叔母(シュームウ)?…余(ヨ)が阻むと言ったら?」その時、皇后が現れた。↓( ๑≧ꇴ≦)アルソック皇后!少商は皇后の顔を見ると自然と笑顔になった。その様子を見た蕭元漪は2人の間に深い絆があると気づき、何とも複雑な気分になる。「今日は子晟と少商の婚約を祝いに来ました 程伯夫人、他に静かな場所はある?ここでは客人たちの興を削いでしまうわ」「はい、ご案内します」「叔母、城陽侯夫人(フーレン)、行きましょう…少商、あなたもよ?」「はい」蕭元漪が偏殿を出ると戸が閉まった。程家も客人たちも露台に集まり固唾をのんで見守ったが、その時、皇帝が越(ユエ)妃や凌不疑を連れてやって来る。慌てて平伏する程家と客人たち、すると皇帝は礼を免じて偏殿に入った。汝陽王妃は皇帝に程少商の無礼を告発、放任してはならないと訴えた。ちょうど汝陽王も一緒にいたことから自分に加勢するようけしかけたが、けんもほろろに断られてしまう。汝陽王妃は仕方なく数日前、城陽侯夫人を辱めた落とし前をつけるよう少商に迫った。その時、越姮(ユエホン)が凌不疑の未婚妻である少商に立つことを許す。皇帝も目配せして少商を立たせた。「感謝します…陛下にお答えします、私は事実を述べたまで、辱めたりしていません」「陛下!本当です!命を懸けて誓います!」焦った淳于氏が泣きつくと、汝陽王妃も城陽侯夫人の方が信頼できるという。「…王妃、それは違います 私は目上の方に従い婚約しました、自ら画策して嫁いだ人とは違います 長年、霍家の世話になりながら機を見てその地位を奪った… 私の誓いは信じられても、あの方は信じないように」「程少商にここまで侮辱される謂れはありません、陛下が咎めぬのなら私は命を断つしか…」「城陽侯夫人…十数年前もなぜ同じように振る舞わなかったのですか? そうすれば霍夫人も離縁されず、様々なことが今とは違っていたのに…」越姮は少商の言葉に深く感銘を受けた。確かに霍君華とは因縁があったが、成婚後の霍君華は凌家に尽くし、夫にも情義は深く、惜しみなく支えていたという。それに比べ凌益は妻子が行方知れずとなって1年も経たずに淳于氏と深い仲になった。「母子でさまよっていた時、霍君華は皮衣を子晟に着せ、わずかな食物も子晟に与えた 戻った時の霍君華は骨と皮だけで誰か分からないほどだったのよ? 良い母親だったことに違いない」越姮は淳于氏を嫌って参内を禁止すると命じた。しかし汝陽王妃が反発、自分の命の恩人である淳于氏への侮辱は自分への侮辱だと訴える。「もし納得のいく説明がなければ…」「(はっ!)死ぬのか?死ぬのか?それは良かった!」汝陽王は早合点して喜ぶと、王妃は外で嘆願するだけだと慌てて否定した。汝陽王はもはや癇癪持ちの王妃に耐えられなかった。「陛下、ご覧の通り、手がつけられません! 少しでも気に食わぬと叫びまくる!当時もそうでした」実は汝陽王が修行に出たのは皇帝からの提案だった。当時、皇帝は糟糠(ソウコウ)の妻を捨てないよう汝陽王を説き伏せ、修行と称して別居させたという。しかし王妃は相変わらず、汝陽王も我慢の限界だった。「縁を切る!これで終わりだ!」「こんな仕打ちをするとは!」王妃はひとしきり汝陽王を叩きまくると、その場で泣き崩れた。すると皇帝は儒教が盛んな今、離縁を持ち出せば儒生たちに非難されるのは必至だと叔父をなだめる。その時、越姮に名案が浮かんだ。「世俗を好む叔父が修行してどうします?むしろ叔母が三才観で修行すべきでは?」皇帝は汝陽王妃が耄碌(モウロク)して暴挙を重ね、御前で失態を犯すに至ったとし、三才観での静養を命じた。また淳于氏は禁足を命じられ、今後は屋敷から出られなくなってしまう。程家の面々は偏殿から連れ出される汝陽王妃と城陽侯夫人の姿を見送りながら、少商の無事を確信して胸を撫で下ろした。つづく( ๑≧ꇴ≦)キィャアァァァァァァ〜!ウーレイ!思うところは色々あったのですが、ウーレイがカッコよすぎて全て吹っ飛びましたwww
2023.10.09
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月升沧海 Love Like the Galaxy(第27話)第54話「母娘の雪解け」宣(シュエン)皇后は程少商(チォンシャオシャン)と霍不疑(フォブーイー)の縁が再び結ばれることを祈って旅立った。主を失った長秋(チョウシュウ)宮の夜。不疑は少商の飴糖(トウイ)作りを手伝いながら、彼女の言葉を待っていた。やがて少商は静かに自分の胸の内を明かす。「捨てられて恨んだわ、独断専行で死を選んでも共に歩もうとしなかった 私は本音で接したのにあなたは嘘ばかり…でも5年が経ち、苦労の末に吹っ切れた 今はどうしても心を預けられない、信頼できないの」「少商…すまない、君がどう決めようと尊重するよ 君が捨てられることを何より恐れていると知りながら、私は最も傷つける方法を選んでしまった これまでの20年間は恨みの中で生きて来たが、この先の余生は悔恨の中で生きる できることなら心を取り出し、君にあげたい…でも私にはその資格がない…」すると少商は居たたまれなくなり、黙って部屋を出て行った。少商は回廊から満天の星空を見上げた。すると霍不疑が現れ、隣に並ぶ。「以前、皇后に言ったの、郎君が陽光で万里を照らすなら、私たち女は明るい星、星河に輝く 日月と星河に高低は関係なく、互いが欠かせない、共存することでこの天地を成すと… 私もしっかり生きるわ、皇后の髪を埋めたら遊歴に出る、私も天地の広さを見たいから」「私も度田令の任務が終わったら北西に戻って国境を守る、世の星河を守るために… これからは自分を大切にする、お互いにしっかり生きよう」少商と不疑は笑顔で別れた。しかし互いに相手の姿が見えなくなると立ち止まり、こらえ切れず涙してしまう。。゚(∩ω∩`)゚。少商は曲陵(キョクリョウ)侯府に戻った。すると母が初めて少商の好物を手作りしたという。5年の月日が流れ、ようやく親子3人で過ごす穏やかな時間、しかし蕭元漪(シャオユエンイー)は急に点心を食べている娘の手を止めてしまう。「もういいわ、どうせ上手じゃないから」「嫋嫋(ニャオニャオ)は何も言っていないだろう?」程始(チォンシー)は相変わらず自分に厳しい妻に失笑した。「嫋嫋、阿母が悪かった…初めての女の子だったから… 兵の指導とどう違うかも分からなかった、息子を育てるのとはもっと違うし… 娘の成長はあまりに早過ぎた、どう改めていいのかも分からなかったの 私が間違っていた、もう一度やり直せるなら決してあなたを置き去りにしない 自分のそばに置くわ、家族で生死を共にするのよ」少商は母の涙にほだされ、長年のわだかまりがゆっくり解けて行くのを感じた。少商は母の手作りの点心を甘い物に目がない祖母に届けることにした。すると偶然にも過去を悔やむ祖母の話が聞こえてくる。当時は二房の葛(ゴー)氏にそそのかされ、老夫人は父と母を支配しようと躍起になっていた。その結果、幼い嫋嫋が最も被害を被ることになったという。「やり直せるなら嫋嫋によくしてあげたい、だって私の孫だもの… 私が死んだら蓄えた金銀財宝は全てあの子に残すわ もし一生、嫁がなくても暮らしていけるようにね、本当にあの子に申し訳ない…」少商は複雑な心境になり、結局、引き返した。少商は蓮房(リエンファン)と東屋に腰掛けた。思えば田舎の別宅に送られた時、蓮房の献身的な世話がなければ今頃、自分の墓が建っていたはずだ。「あなたは私が唯一、信頼できる人だった」「もう昔のことです」少商は祖母とも仲良くなりたかったが、どうにも近寄りがたかった。程家の危機では祖母も身を投げ打ち、徐々に家族になれたと思ったが、やはりまだどう向き合えば良いのか分からない。しかしこれからは誰が自分を憎み、嫌うのかではなく、自分を大切にしてくれる人のことを考えようと決めた。「それが生きる活力になる…人は良い事を考えないと… そうしないと余生をしかと生きられなくなってしまう」蓮房はすっかり大人になった女公子の言葉に大粒の涙をこぼした。。゚(∩ω∩`)゚。 少商は宣皇后の故郷に向かう前に参内、袁慎(ユエンシェン)に別れを告げた。実は善見(シャンジエン)も外地に赴任することになり、皇帝に挨拶したところだという。「2年前、父が義兄を救出するため部隊を離れ、味方が不利な状況に陥ってな 霍不疑は父を助けるため駆けつけ、死にかけたんだ しかし陛下の恩情で父は降格の上、膠東(コウトウ)に戻るだけで済んだよ」父は祖先に面目ないと身体を壊したが、これを機に母も夫を気遣うようになってすっかり夫婦仲が改善されたという。「2人は出発前、我らの縁談を案じていた」「…ごめんなさい、望みには応えられない」「残念だな~将来、私は三公に並び称される、三公夫人になり損ねたな?」袁慎はかつてのように茶化して笑ったが、初めから不疑に勝つ見込みがないと分かっていた。この5年、少商を見守り続けた袁慎、最後は少商の立ち去る姿を見送りながら未練を断ち切った。袁慎が城楼から都を眺めていると霍不疑がやって来た。「決めたのか?」「そうだ、父のためお前は死にかけた、これ以上、競っては恩知らずになる」実は不疑も度田令の推進のため、各地を巡察し、監督すると申し出たという。袁慎は不疑が程将軍の代わりに戾(レイ)帝の残党を掃討するつもりだと気づいた。しかし少商の父や兄を助けるのはまだ分かるが、なぜ恋敵の自分の父を命懸けで救ってくれたのだろうか。すると不疑は少商が袁慎を案じているからだと明かした。「お前が達者でなければ少商は安心できない、楼垚(ロウヤオ)を推挙したのも同じ 彼女は口とは裏腹に情に篤いからな…関心を持つ者が達者なら彼女は安心できる 私がお前たちを守れば、彼女はようやく自分の道を模索できる」「お前は私より情が深く、愚かだ…彼女の愛に値する」袁慎は最後まで少商に寄り添える者がいるとしたら、不疑であって欲しいと願った。。゚(∩ω∩`)゚。不疑…サイコーか宣皇后の四十九日が過ぎ、少商は双子の兄・程少宮(チォンシャオゴン)と一緒に宣皇后の故郷へ向かった。やがて驊(カ)県から十数里の山道を進んでいたが、その時、待ち伏せしていた馬車が一行を足止めする。馬車に乗っていたのは都を追われた楼太傅の娘・楼縭(ロウリー)だった。楼縭は楼垚が少商に今の驊県を見てもらいたいと願い、招待したいという。「ありがとう、でも宣皇后の郷里に向かっているのでごめんなさい」しかし少宮はここで待っているので行ってこいと背中を押した。楼垚と何昭君(ハージャオジュン)は少商の来訪に驚いていた。どうやら自分は招待されたわけではなく、楼縭が勝手に連れて来たらしい。しかし夫婦は両親を相次いで亡くした楼縭を気遣っていた。すると空席がひとつある。何かおかしいと警戒する少商、その時、身重の何昭君が急に苦しみ出した。「お腹が痛い…産まれそう」予定日はまだ先のはずだったが、楼垚はともかく産婆に連絡するため慌てて出ていってしまう。一方、巡察に出発した霍不疑一行は道中の山林で襲撃に遭った。黒甲衛(コクコウエイ)は賊を一掃、すると付近の溝で数十人の死体が見つかる。「驊県の侍衛の鎧を着ていました、他には…袁家の部曲の身なりに酷似を…」驚いた不疑は行き先を驊県に変更した。楼縭は少商に手伝いを頼み、何昭君を連れてなぜか廟に入った。「県衙(ケンガ)に廟を立てるなんて、誰かが修行でもしているの?」少商は困惑したが、その時、突然、楼縭が隠し持っていた短剣を抜き、襲いかかって来る。「少商!」つづく( ;∀;)イイハナシダ〜って、え?これが最終回かってくらい良かったのに今さらローリーって…ないわ___w
2023.12.23
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风起陇西(ふうきろうせい)第二十四計(最終話)「 李(スモモ) 桃に代わりて僵(タオ)る」荀詡(ジュンク)は司聞曹(シブンソウ)の部隊を率いて陳恭(チンキョウ)がいる李厳(リゲン)の別荘へ乗り込んだ。成藩(セイハン)は楊儀(ヨウギ)たちが機密について話し合っていると制したが、興奮した荀詡をこれ以上、止める術がない。その時、楊儀が現れた。「嫌疑人から供述を引き出したところだ、急いで丞相に報告する…では失礼」荀詡は不自由な足を引きずりながら陳恭の元へゆっくり歩いて行った。「なぜだ?…なぜだと聞いている?!」しかし陳恭は何も答えず、むしろどこかほっとしているように見える。「連れて行け!」荀詡は陳恭が連行されるのを見ながら、ふと床に広げられた地図があることに気づいた。一方、李厳は楊儀が成都への道をすべて封鎖したため、陳恭の言葉通り漢城を通るしかなくなった。すると待ち伏せしていた馬岱(バタイ)将軍が立ちふさがる。李厳は先帝に従ってから忠誠を尽くしてきたと嘆いて一度は剣を抜いたが、結局、捨ててしまう。「よかろう、諸葛(ショカツ)に会わせろぉぉぉ!」ひと月後、李厳の事変により諸葛亮(ショカツリョウ)の第二次北伐は曹魏(ソウギ)大将軍・王双(オウソウ)の斬殺、陰平(インペイ)と武都(ブト)の回復で終結し、20万の大軍が粛々と漢中へ撤収した。成都に戻った楊儀は諸葛亮に理路整然と事の顛末を報告、しかし諸葛亮は楊儀が司聞曹を利用して李厳を失脚させたことに憤慨する。楊儀は李厳を排除せねば朝廷に災いが起きると訴えたが、諸葛亮は政争にも限度があり、人には守るべき原則があると戒めた。「…よく考えよ、よく考えるのだ、何をしでかしたのかをな」「お待ちを!丞相!全て漢の復興のためにしたことです!」諸葛亮は李厳と面会した。すると李厳は諸葛亮が楊儀に命じて司聞曹を動かし、自分を死地へ追い込んだと責める。しかし諸葛亮は何も知らなかったと答えた。「確かに不当な手段だ…しかし手段は不当でも結果は正しい こたびの事変は楊儀が仕組んだものだった だが二心あって司聞曹に唆され曹魏と手を組み、東呉の侵略を偽って兵糧を断ったのであろう? そなたは徒党を組んで南征を主張し、蜀漢と東呉の同盟を破ろうとした 国の根本を揺るがしたのだ! そなたを捕えてこそ国は滅亡を免れる、これは国家存亡の危機、我々の私怨は関係ない!」「南征か北伐かは国策の争いだ、おぬしが北伐を断行して曹魏を滅ぼせる保証がどこにある?」「この世に万全の策はない…だが東呉と結べば蜀漢は少なくとも30年、平和を保てる もし東呉との同盟に背き荆襄(ケイジョウ)に侵攻すれば、曹魏は機に乗じ漢中を奪うだろう 敵に挟まれた蜀漢は3年もせずに間違いなく滅亡する! そうなればあの世で先帝に合わせる顔が?!そなたが言う天下の民はよりどころを失うのだ 我ら2人は大漢のために命を懸けて尽くすべき、己の名誉に何の価値があろうか?」李厳は諸葛亮の言葉にがっくり肩を落とし、力なく首を垂れた。↓(゚∀゚ノノ゙8888888888〜荀詡は事変に関わることを禁じられたまま、何の情報もなくひと月が経った。するとようやく楊儀が現れ、陳恭の事案が結審し、斬首の後さらし首が決まったと報告する。荀詡は呆然、どうしても陳恭に会わねばならないと懇願し、面会する機会を得た。大罪人の陳恭は牢の中でも拘束具で自由が利かなかった。「判決が下りた…斬首だ、陽長史が見守る」「そうか…遠路はるばる苦労をかけたな」「なぜだ?…聞かせてみろ」すると陳恭は燭龍となった経緯について明かした。郭淮(カクワイ)は陳恭が機密を盗む現場を押さえながらも咎めず、馮膺(フウヨウ)が父を売ったという証拠を見せたという。「お前も同じ文章を見て私を疑ったのだろう?」陳恭は青萍(セイヒョウ)計画に最適の人材だった。そこで折りよく天水に来た荀詡を騙して協力させ、南鄭に戻ることに成功したという。「南鄭に戻ったら馮膺を殺して李厳を裏切らせ、父を害した奴らを始末するつもりだった…」しかし荀詡は信じられないと言った。荀詡はこの1ヶ月、何度も繰り返し考え、ある結論を導き出していた。「街亭(ガイテイ)の事案を機に郭淮は青萍計画を発動 お前は父君を殺した馮膺に恨みを抱いたことで郭淮の信頼を得た 五仙道へ行く表向きの目的は連弩(レンド)の設計図を盗むこと だが真の目的は高堂秉(コウドウヘイ)と五仙道を犠牲にして馮膺の地位に取って代わることだ まさしく私の協力があったから青萍計画を遂行できた 郭淮は一層、お前を信頼した、だが思いがけぬことに楊儀と馮膺がお前に反間計を授けていた 青萍計画は最初からお前たちが目的を果たすための表看板 本当の目的は李厳を陥れて失脚させることだった、だがここで妨害が入る…それが私だ 郭淮が命じたのだろう、手ずから私を殺せと…曹魏に従う最後の証拠だ だから黄預(コウヨ)は西郷(セイキョウ)関を襲撃した、そうすれば私を誘き出し、殺す機会を作れる そこまでは想定内だったが、困ったことに楊儀も私を殺せと命じた 燭龍について捜査をやめない私が反間計を脅かしていたからだ 私が燭龍の事案を追求すれば李厳の失脚は合理性を疑われてしまう、丞相にも影響が及ぶだろう …確かにこれは憶測だ、だが私は誰よりもお前を理解している!」荀詡はあの日、双方に自分の殺害を迫られた陳恭が同時に林良(リンリョウ)にも矢を射させたと気づいた。林良は裴緒(ハイショ)が隠した自分を監禁、陳恭は任務さえ完遂すれば自分を殺さずに済むと考えたのだろう。しかし負傷した自分が逃げ出し、陳恭の作戦は破綻した。本来は馮膺が死ぬはずだったが陳恭は作戦を変更せざるを得なくなる。「私のせいで己を犠牲にするしかなくなったんだな?!」「…間諜には墓場まで持って行く秘密がある 兄弟同士で殺し合い、夫婦も共に暮らせぬ…そんな日々にはうんざりだ」「私の見立て通りか?…これでは…私がお前を殺したのと変わらぬぅぅぅ…」「考えすぎるな」荀詡は陳恭を死に追いやったのが自分だと知り泣き崩れた。すると陳恭は頼みがあるという。「もう捜査しないでくれ…ここまでにしろ、打ち切りにするんだ…もう終わりだ」…荀詡が別荘に乗り込んできた時、陳恭は楊儀に自ら馮膺の代わりに黒幕になると申し出た『曹掾の罪は全て私に着せてください、そうすれば曹掾は汚名をすすぎ復職できる』楊儀は反対した実は李厳を失脚させた後、陳恭を曹魏の上層部に潜り込ませる仕上げの計画があるしかし確かにこの方法なら誰も巻き込まず、全ての事態に説明がついた…荀詡たちは楊儀と共に陳恭の処刑に立ち会った。すると晴れて無罪となり、復職した馮膺が遅れてやって来る。馮膺は荀詡の隣に立ち、丞相からの任務を伝えた。「東呉へ向かい、建鄴(ケンギョウ)で新たな情報網を作れ」その時、いよいよ処刑の刻限が来た。陳恭は大きく息を吐いて執行台に身体を預けると、最後に荀詡へ笑顔を見せる。「…ひとつ頼みがあります」荀詡は馮膺に陳恭と翟悦を同じ墓へ埋葬するよう頼んだ。その時、ついに執行人が剣を振り下ろす。次に処刑場に向かっていたのは狐忠(コチュウ)だった。馮膺が司聞曹に戻ると、部屋を掃除していた孫令(ソンレイ)が出迎えた。「姐夫(ジェフー)…」一方、郭淮は陳恭が処刑されたと報告を受け、計画が全て台無しになったと知り茫然自失となる。また無事に南鄭から離れた柳瑩(リュウエイ)は荀詡と陳恭それぞれからもらった二つの令牌を眺めながら、物思いにふけっていた。荀詡は東呉へ発つ前、翟悦と陳恭の墓に寄った。…阿妹翟悦の墓…妹夫 の墓大罪人として死んだ陳恭の名前はなかったが、馮膺は約束通り夫婦を同じ墓で眠らせ、木碑を建てている。荀詡は献杯して立ち上がると、ふと翟悦と陳恭が仲良く手を繋いで旅立つ姿が見えた。荀詡は林良と一緒に水路で東呉へ向かった。「風が強いゆえ中で休んでは?」「いや構わない」すると林良は陳恭からの言づてを明かすことにした。陳恭は荀詡がひと月後も葛藤しているようなら真実を伝えるよう頼んでいたという。実は荀詡が穴蔵から脱出することは陳恭の思惑通りだった。穴蔵に茶碗を残したのも火打ち石を落としたのも、全て陳恭の指示だったという。陳恭は始めから抜け道がある穴蔵を見つけ、荀詡なら必ず見つけ出すと分かっていた。翟悦を死なせてから陳恭は己を責め、その時から死を求め出したという。この暮らしにへき易していた陳恭は燭龍を捕らえた後、翟悦と隠居するつもりだった。「…しかし悦児が死んだ日を境に計画を変えたのだな」「そうです」あの日から陳恭は己が決めた通りに動き、計画通りの結末を迎えた。荀詡は林良に船を降りる支度をするよう命じた。「こたびお前の立場は従者ではない 大鴻臚(コウロ)の治礼郎(チレイロウ)、つまり役人だ、礼儀に気を配れ」「承知した、手筈は整えている」完( ๑≧ꇴ≦)えー?!なぜ最後にこんな曲?! ←そこ?!
2022.12.17
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月升沧海 Love Like the Galaxy(第23話)第50話「我が名は…」文(ウェン)帝の命を受け、崖から落ちた凌不疑(リンブーイー)の捜索に向かった三皇子。深手を負った不疑はかろうじて山肌の蔓に絡まり生きていた。三皇子は懸命な救出作業を見守っていたが、程少商(チォンシャオシャン)の心配が的中し、左(ズオ)将軍が引き上げを手伝うふりをして縄を切ろうとする。しかし目を光らせていた三皇子が気づき、あっけなく捕まった。「…呼応する仲間を待っているのか?だが奴らは永遠に来ないぞ 収監して拷問せよ!死んでも構わぬ!」凌不疑は崖から引き上げられ、三皇子が急いで宮中に運び込んだ。皇帝と三皇子が見守る中、医官たちの懸命な治療が続いたが、不疑は琴の弦を握りしめたまま離さず、なかなか手当が進まない。「琴の弦?」「少商の弦です…意識を失っても誰にも触らせないとは…」皇帝は老三の話を聞いて少商がいないことを思い出し、すぐ呼ぶよう命じた。曹(ツァオ)常侍(ジョウジ)は程娘子ならすでに回廊にいると伝えたが、本人曰く凌将軍とは縁が尽きたので会えないという。「首に縄をつけても連れてこい!」しかしその時、殿外から少商の笛の音が聞こえてきた。凌不疑は叶わなかった少商との成婚の夢を見た。…もし私を独りにするなら一生許さない、来世も、来来世も許さないから!…このまま死を選べば2度と少商は許してくれないだろう。走馬灯のように蘇る少商との思い出、それが不疑の生きる希望となった。…それから別院に花畑を作る、琴と笛で合奏するの、私たち2人で共白髪となり生死を共に…すると不疑は弦から手を離し、それまで無意識に受け付けなかった薬を飲み始めた。こうして不疑は峠を越え、夜が明ける。「もう凌将軍は大丈夫です!」医官の声を聞いた少商は部屋の中をのぞき、不疑の無事を見届けてから倒れた。少商が目を覚ますと皇后が付き添っていた。「せっかく子晟が目覚めたのに、そんな様子では心配になる」「…彼とはもう終わりです」少商は自分が子晟でも同じ選択をしたと理解を示したが、何が真心で何が計略なのか分からなくなったという。「あんな仕打ちは承服できない、敵を殺したいのなら、そう言って欲しかった 私も一緒に行く、たとえ黄泉だとしても一緒に行くのに… でも私を独りにするのは許せない、しかも私のためだなんて… 幼い頃は両親に捨てられ、今度は愛する人に捨てられた 陛下と皇后から教わりました、夫婦は一心同体だと…そうでしょう? でも私だけが一心で彼は隠し事ばかり、一心だったことがあったのでしょうか?」「…もう決めたのね?」「決めました」すると皇后は納得できるまで調べるよう勧めた。全てが分かった時、少商がどんな選択をしても支持するという。「余とは違ってあなたの人生は順当であって欲しい、余の分までしっかり生きるの」少商は袁慎(ユエンシェン)に頼んで淳于(チュンユー)氏と会うことにした。実は淳于氏は血の海の城陽侯符を目撃し、衝撃のあまり錯乱してしまったという。人を見ても暴れるだけで会話もできず、今は廷尉獄に収監されていた。実は少商は兼ねてから城陽侯夫妻が仲睦まじく見えず、凌益(リンイー)がなぜ非難されると知りながら後添えを迎えたのか疑問だったという。「そうか、弱みを握られ、娶るしかなかったと…」少商は淳于氏に凌益が死んだと教えた。「当時、あなたが流産した理由を知ってる?家職に聞いたの 凌益はあなたの飲食に薬を盛らせた、長年、服用すれば身ごもれなくなるわ 彭坤(ポンクン)と結託した証拠を握れば城陽侯夫人になれると思ったの? 凌益のごとき奸人が脅されたままで甘んじるはずない あなたが寄る辺もなく孤独に死ぬのを望んでいたのよ、そうしてこそ脅す気力も失せる …でも錯乱しているなら真相を知っても苦痛じゃないわね」淳于氏は激しく動揺すると、ふいに凌益に叩かれた時の事を思い出した。あの時、あまりの理不尽さに憤り、いつも手を合わせていた神像を三才観の汝陽(ジョヨウ)王妃に届けるよう頼んでいる。すると淳于氏は急にその場にひざまずき、手を合わせて一心不乱に祈りを捧げ始めた。「三才観の女媧様!私にどうか子供をお授けください…」袁慎は結局、淳于氏が錯乱しているのか偽りなのか分からなかった。すると少商はどちらにせよ生き延びるには錯乱するしかないという。「因果応報よ、これから三才観へ行く」意識を取り戻した凌不疑は朝堂で15年前の孤城陥落について証言することになった。皇帝は念のため医官を待機させ、その場で薬を煎じさせている。すると廷尉(テイイ)府・紀遵(ジーズン)が口火を切った。「教えてくれないか、当時、孤城で一体、何が起きたのか…凌将軍?」「私は霍(フォ)だ、凌ではない」今も忘れられない、あれは杏の実がなる頃だった…あの日、阿猙(アージョン)は身体が弱い阿狸(アーリー)のため、木に登って好物の杏を採ってやったしかし木から降りる時、うっかり衣が引っかかって破れてしまう『阿母が用意してくれた衣なのに…見つかったら罰を与えられる』『見せて…大丈夫、僕と衣を替えよう』阿狸は衣を交換して舅父・霍翀(フォチョン)が気づくかどうか試そうと提案した衣なら自分が破ったと言えばいいという『この杏は舅父と舅母に渡して、そうすれば阿母の前で僕をかばってくれる』阿猙は阿狸の衣を着て父の部屋に入り、書卓に杏を入れた袋を置いたすると外から父たちの声が聞こえ、咄嗟に衝立ての裏に身を隠す衝立ての隙間から見えたのは父の背中の傷を手当しながら撤退するよう説得している姑父・凌益の姿だった『援軍が遅すぎる、文氏は我らを見捨てた…将軍、孤城を守ってやる必要はありません』しかし霍翀は一蹴し、妹婿という立場に免じて聞かなかったことにすると言ったその時、阿猙は凌益が背後からいきなり父を刺すところを目撃する『ぐっ…やはり敵と通じていたか…』『なぜ降伏せぬのだ?英雄になるため我らまで道連れにすると?! 援軍は来ない、いや来られぬのだ、誰も来ない…』阿猙は父の最期を目の当たりにしながら、嗚咽が漏れないよう必死に自分の口を押さえた…「凌益の結託した相手が誰なのか謎のままでした しかし寿春(ジュシュン)で突き止めたのです、凌益と共に孤城を陥れたのが彭坤だと…」…阿猙が息を潜めて隠れていると、誰かが入って来た『投降の説得では?なぜ殺した?!』『霍翀は強情だ、絶対に投降などしない…殺さねばいつか報復される だが家族は見逃せるだろう?』『誰が見逃すと?霍翀がいなくなったのなら攻める絶好の機会だ 孤城が陥落すれば文帝の敗北を決定づける、共に主公を入城させるぞ』『騙したのか?!家族は見逃すという約束だ』『お前だけだ、どちらにせよ兵が殺す』すると凌益たちは出て行った阿猙の足元まで流れて来た霍翀の鮮血、すると建物に火が放たれ、阿猙は煙を吸い込んで気を失ってしまうしかし運良く、その日は孤城に大雨が降った阿猙が目覚める頃にはすっかり日も暮れ、外は見渡す限りの骸と血の海が広がっていたすると突然、父の妹・霍君華(フォジュンホワ)が現れ、生き残った2人は身を隠すことにするその時、稲光が暗闇を照らし、城門が見えた霍君華は悲鳴を上げ、咄嗟に甥の顔を手で覆ったが、阿猙は姑母の指の隙間からその情景を見てしまう城楼には父や叔父たちの生首が並び、その中に阿狸の顔があった…「衣を替えた阿狸は私の代わりに死んだのです」2人は賊軍がいなくなるまで丸二日、飲まず食わずで死人の山に隠れ、城門を逃げ出した。我が子の無惨な姿を見た霍君華は時に錯乱し、時に呆け、ずっと息子の名を叫びながら、都へ戻ろうと言い続けたという。そして2人は何度となく死にかけること2年、やっと都へ到着し、皇帝に謁見した。実は当時、霍君華は甥が凌益に殺されないよう阿狸と呼んでいたという。『童よ、そなたは…』皇帝はあの時、不疑に名を聞いた。しかし錯乱した婦女と幼子に過ぎない自分たちに闘う術などなく、不疑は身分を偽ったという。『私の名は…凌不疑』不疑は敵を討つために阿狸の身分でいるしかなかった。賊を父と見なし、本名を隠したのも全ては仇を葬り去るためだったという。「父のため、霍一族のため、孤城の民のため、孤城陥落に関わった者には代償を払わせる! それも達成間近と思えた… 都へ戻った私は密かに探り始めるも、凌益が次々と証拠を隠滅、そして結局、私は負けた 凌益は関わった者を彭坤も含めて全て殺害、姑母も身体が持たずに無念のうちに病死した… こうして証人が全て消え、望みは潰えた 正当に凌賊を捕らえられぬなら、自ら手を下すのみ…」「これぞ同害報復…」皇帝は不疑の前まで歩いて行くと、もう一度、あの時と同じように聞いた。「童よ、自ら言ってみよ、お前の名は?」「私の名は…霍無傷(フォウーシャン)」つづく。゚(∩ω∩`)゚。 しゃんしゃ〜ん!
2023.12.03
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星河长明 Shining Just For You第6話都護府を設置し、大都護には兵権を与えると決めた晁(チョウ)皇・彧修明(ユーシューミン)。しかし兼ねてから政策に反対していた界海天(カイカイテン)が異議を唱えた。「兵権を持った大都護に実権を握られ、羽(ウ)王の二の舞となるやも!」朝臣たちが騒然となる中、皇帝と界海天の口論が続いた。すると界海天を告発する者が現れ、界海天が皇帝の口宣(クゼン)を改めて夜北(ヤホク)の民を誅殺しようとしたという。恐らく都護府設置に反対なのも逆心から兵権を返還したくないからだ。これに皇帝は激怒、界海天を捕らえ、正殿の前でさらし首にせよと命じた。尚書僕射(ショウショボクシャ)・樊如晦(ハンジョカイ)は界諸嬰(カイショエイ)を弾劾する機を失ったが、結果的に界海天の排除に成功した。彧修明も苦渋の決断だったが界諸嬰を守るためには止むを得ない。白露(バイロウ)こと葉凌霜(イェリンシュァン)は不吉な予感を察して正殿に急いだが、手遅れだった。欽天監(キンテンカン)に監正・界海天の死罪が伝えられた。管宜(カンギ)は自分が昇格できると信じて疑わなかったが、皇帝は狄蘭章(テキランショウ)を新たな監正に指名する。一方、夜北では七海怜(チーハイリアン)が苦淵(クエン)海で芳華(ホウガ)鏡の捜索に協力していた。すると七海怜の星辰の力でついに神鏡が海面に現れる。しかし喜んだのも束の間、界諸嬰に天啓から思わぬ勅旨が届いた。「界海天は陛下に背いて死罪となり、界夫人は自害した、界諸嬰はすぐ帰京せよ」界諸嬰は両親の死を信じられず、悲しみに暮れた。これまで頑なだった七海怜も絶望する界諸嬰に同情し、優しく寄り添う。「天啓に戻れば何かひらめくやも…」「そうだな、真実を知りたい」界諸嬰はもはや自分が気にかける者は七海怜だけになったと寂しそうに笑った。皇帝は政に専念するため樊如晦を太宰(タイサイ)に封じ、庶務を全て任せることにした。上機嫌で屋敷に戻った樊如晦は長子・樊平(ハンヘイ)に縁談がまとまったと伝えたが、樊平はあまりに急過ぎると困惑する。すると放蕩息子の次子・樊征(ハンセイ)がならば自分が娶ると口を挟んだ。樊如晦はかつて騒ぎを起こした樊征のせいで皇帝に許しを乞う羽目になったことを思い出し、怒りが再燃する。「羽(ウ)人がお前に金品を送るのは私への媚びだ!今後、羽人と関わることは許さぬ!」南宮では星瀚大典の準備が始まった。しかし司空監の主事・顧惘然(コボウゼン)は帳簿が不正確なため竣工図を承認せず、工事責任者の周邇(シュウジ)は苛立ちを隠せない。その様子をちょうど作業の進み具合を確認に来た白露が見ていた。管宜は皇帝が白露を作業場に遣わしたと聞いた。そこで宮中を出て急いで樊家の次子に報告、太宰も巻き込まれるかもしれないと警告する。しかし樊征は父の権勢を笠に恐いもの知らず、何としてでも金を稼ぐと譲らなかった。白露は欽天監に顧惘然を呼び出し、こっそり正体を明かした。「私は葉凌霜よ」「やっぱり君か?!」実は顧惘然はかつて夜北で狼に襲われたところを凌霜と朱顔(シュガン)公主に助けられていた。白露は顧惘然が竣工図を承認しない理由を聞いた。すると顧惘然は袂から黒い石を2つ出して見せる。2つは見た目こそ似ていたが、ひとつは祭壇を作るのに最適な北邙(ホクボウ)山の黒曜石で、もうひとつは砕けやすく建築に向かない墨石だった。「なるほどね、黒曜石は墨石の10倍は値が張る、墨石を使えば差額が懐に入る」白露は顧惘然に承認を引き伸ばすよう頼み、悪事を暴き出すと約束した。界諸嬰は天啓城に到着したが足止めされた。界海天は勅書の偽造という大罪を犯したため、弔うことも許されないという。すると兵士に紛れていた七海怜が捕まり、将軍に引き渡された。「斬られると承知でなぜ危険を冒した?!」「夜北の赦免を乞うの」「私が上奏すると言ったはずだ」「家にも帰れない人がどうやって?!」しかし界諸嬰は必ず赦免を乞うと約束し、皇帝との謁見を求めて嘆願を始めた。界諸嬰が正殿の前でひざまずいて3日が経った。そうとは知らず皇帝に上奏に来た白露。しかし門衛から勅令か欽天監の勘合(カンゴウ)がなければ通せないと門前払いされてしまう。「将軍さえ3日もひざまずいています、勘合を持ってきてください」驚いた白露が振り返ると、すっかり憔悴した界将軍が跪いていた。白露は界将軍のもとへ駆けつけ、夜北で何かあったのか聞いた。すると界諸嬰は長公主も天啓に来たと教え、ある場所を探すよう伝える。一方、皇帝の側近たちは何とか界諸嬰が謁見できるよう遠回しに口添えしていた。彧修明は朝臣たちの反応を聞いてみたが、侍衛たちの話では誰も界諸嬰に近寄らないという。「ぁ…でも欽天監の白露だけは話を…」彧修明は白露を呼びつけ、界諸嬰と何を話したのか聞いた。しかし白露は慰めの言葉をかけただけだとしれっと嘘をつく。「界諸嬰の答えと相違があれば死を覚悟せよ」「…それより陛下、他に死すべき者を知っています、樊征です」管宜と周邇は墨石の件が皇帝にばれるのを恐れて樊家に太宰を訪ねた。しかし樊如晦は何の話か分からず、とにかく皇帝の意向に従うよう命じて追い返してしまう。…どうやら参内せねばならぬようだ…その夜、白露は界将軍から聞いたあばら家を訪ねた。人影はなかったが、その時、突然、背後から短剣を突きつけられてしまう。つづく
2024.06.14
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月升沧海 Love Like the Galaxy(第24話)第51話「それぞれの区切り」凌不疑(リンブーイー)は15年間という長い歳月を耐え、ついに本当の名を明かした。「私の名は霍無傷(フォウーシャン)」「霍兄、すまなかった、今まで気づかぬとは…許してくれ」文(ウェン)帝は亡き義兄の忘形見を抱きしめ号泣したが、不疑は己の罪を認め、死を望むという。すると左(ズオ)御史中丞がこれ幸いと即座に死を賜るよう上奏、皇帝の逆鱗に触れても追及の手を緩めなかった。そもそも凌益(リンイー)が敵と通じた証拠がないという。しかし思いがけず廷尉府の袁慎(ユエンシェン)が証拠を持ってやって来た。凌益の妻・淳于(チュンユー)氏は職人に作らせた女媧像を汝陽(ジョヨウ)王妃に贈っていた。「その中に彭坤(ポンクン)と凌益の書簡が隠してありました、孤城を占領した証拠になるかと…」皇帝は書簡を確認、左御史に投げ渡した。しかし左御史は霍将軍にはまだ東宮の虎符を盗んで軍を動かした大罪があると食い下がる。すると今度は三皇子が駆けつけた。左御史の弟である左将軍は子晟(ズーション)の救出を邪魔しようとして捕まっていた。将軍は拷問により何もかも自供、左家は田(ティエン)家酒楼の番頭・田朔(ティエンシュオ)に大金で抱き込まれていたという。実は田朔は戾(レイ)帝付きの内侍で、腹心中の腹心だった。朝廷から戦神・凌不疑が消えれば安心して山河を奪い返せると考えたのだろう。内侍は田朔と名を変えて商人として潜伏、この数年は酒楼を隠れ蓑にしていたが、朝廷の官員も多く往来していた。「雍(ヨウ)王や小越(ユエ)侯とも結託していたのです! 父皇、彼らは田朔にそそのかされ、国と民に害を及ぼしたかと…」「田朔は霍将軍に恨みがあると言っただけ…戾帝の内侍など知りませぬ!」左御史は無実を訴えるも後の祭り、朝堂から引きずり出されてしまう。「厳しく拷問を科せ!死んでも構わん!」しかし三皇子の報告で田家酒楼はすでにもぬけの殻、謀反の証拠をつかむも田朔に逃げられてしまったという。( ๑≧ꇴ≦)ノ″ さようなら、おじいちゃ~ん!皇帝は奥殿に子晟と三皇子を呼んだ。確かに今回、子晟が虎符を使ったせいで皇太子は弾劾され、名声まで地に落ちている。三皇子は必要に駆られて使ったのだろうと庇ったが、皇帝はすでに気づいていた。「太子の手にあった虎符は偽物だ、小越侯に盗まれた虎符を子晟が取り戻し、そのまま持っていた お前たち2人は最初から…」「そうです」もはや隠し立てできないと悟った三皇子は皇兄ではこの国を担えないと訴え、楼犇(ロウベン)の事件も正しく賞罰しなかった皇兄が原因だという。実は子晟も同じ意見だった。子晟の話では皇太子のそばにいたわずか数ヶ月で東宮の全てを掌握できてしまったという。「太子が即位後、私さえ望めばすぐにでも政を乗っ取れる…そんな場面を見たいと? もちろん二心などありません、しかし私が思うに太子では重責を担えません」「よく言ったわ」すると皇后・宣神諳(シュエンシェンアン)が現れた。皇后は確かに子晟の言葉は理に適っていると認めた。一連の事件は立太子を誤った皇帝、凡庸で才のない皇太子、志を抱く三皇子、深い恨みを持った子晟、そして息子を溺愛した自分自身に関係があるという。「しかし少商(シャオシャン)は?この件と何の関係が?なぜ巻き込んだの?まさかこれも国のためだと? あなたの言葉は全て正しい、小さな情を捨て、天下を潤す なら聞くわ、あの日、城陽(ジョウヨウ)侯府に赴いた時、少商を捨てると決意していたの?」その時、子晟の頬を一筋の涙が流れた。「…はい」「今の言葉は本心?今回の件を悔いてはいないと?」「悔いていません」皇后は不疑の返答に深く失望し、そこで少商を呼んだ。「少商…」子晟は少商が自分の答えを聞いていたと知り、動揺した。「少商、許しを求めるつもりはない、だが信じている、分かってくれると…」「分かっています…でもあなたは私を分かっていたかしら?」すると少商は皇帝と皇后に破談を申し出た。「少商、聞いてくれ…」「今度はあなたが聞く番よ…私は昔から運が悪かった、真心なんて信じなかったわ でもあなたに出会い、言われるがまま好きになり、頼れと言うから頼った 信じろと言うから信じたのよ?でもあなたは? あの時、伝えたはず、私を捨てたら一生、許さないと… 霍将軍、どうか旧情に免じて私を解放してください」( ;∀;)シャンシャン…崇徳(スウトク)宮を出た少商は後宮へ続く長い回廊を歩いていた。すると途中で少商を心配して待っていた袁慎と出くわす。「少商、家に帰るんだ、奴が虎符を使った以上、太子と皇后も廃されるだろう」「廃されてもそれは皇后が自ら願い出たからよ、きっとお疲れのはず… 私も疲れたわ、もう家に帰りたい」少商はとりつく島もなく、会話をさっさと切り上げて行ってしまう。一方、宣神諳は皇帝に皇后の印璽を差し出していた。皇太子を廃し、母としての責任を取って皇后の座を降りたいという。「これまで流されるまま生きて来ました… その昔、陛下に妻がいると知りながら、舅父に言われるまま嫁いだ 私を皇后に立てると言われた時も、后位が荊の道だと知りながら受け入れたのです 太子は父の性格によく似ていました 本来なら書や学説で名を馳せられたはず、でも太子となったばかりに毎日、寝食もままなりません どうか国のために私たちを廃してください 越姮(ユエホン)が皇后なら三皇子も正当に東宮へ入れるでしょう」しかし皇帝は廃后だけはどうしても認められないと拒んだ。「太子に比べて皇后の非がどこにあるのだ?!廃す理由があるか?!」すると宣神諳は初めて思いの丈をぶちまけた。「もし私にも恨みがあったと言えば? この数十年、陛下と阿姮が笑ってふざけ合う姿を見るたび、心が蝕まれる思いでした 本当はいつも嫉妬と恨みに駆られていたのです! もううんざりです、后位に就く限りこの苦しみを味わう! 想い合える夫の愛を望んでいたのに、私は仲睦まじい2人を鷹揚として受け入れるしかなかった もし陛下が私に少しでも夫婦の情があるなら、これ以上、苦しめないでください 一度でいい、宣神諳として生きてみたいのです!陛下!」( ;∀;)皇后ォォォォ~皇太子は東海(トウカイ)王に降格、皇帝は宣神諳の望み通り長秋宮での軟禁を命じた。また凌家は取り潰しとなり、凌益の三兄弟は斬首になったという。霍無傷は凌不疑の分も生きたいと名を引き継ぎ″霍不疑″と改名、償いとして北西に7年の駐留を申し出た。そんな中、曲陵(キョクリョウ)侯府に梁邱起(リャンチゥチー)を通して不疑からの伝言が届く。本日、北西に発つため少商にひと目だけでも会いたいというのだ。しかし少商は双子の兄・程少宮(チォンシャオゴン)に見送りを頼み、巾着袋を託した。「遠き地にいればもう会わなくて済む、過去は断ち切るわ」少商は父と兄たちに散歩に行くと言って出かけた。蕭元漪(シャオユエンイー)と青蓯(チンツォン)は偶然、正門へ向かう少商の後ろ姿を見かける。「女公子はすっかり変わりましたね」「以前は少しでも落ち着いて欲しいと思ったのに、今やあそこまで落ち着き払って別人のよう 何だか以前のように勝ち気で他人を圧倒し、騒ぎを起こしている方が安心する 青蓯、初めから私が間違っていたのかしら?」「成長したのです、母ならば誰もが離れゆく子の姿を見る、一生は付き添えません」少商が馬車に乗ろうとすると、母たちが追いかけて来た。「少商?どこへ行くの?」「長秋宮です」「宣皇后は廃后後、自ら軟禁を申し出た、行ってどうするの?」「そんな時こそおそばにいなくては…阿父と阿母が孤城救援のため私を家に置いたのと同じです どうか忠義を全うできるよう私を長秋宮へ」一方、霍不疑は城門で少商が来るのを待っていた。梁邱飛(リャンチゥフェイ)はそろそろ出立するよう伝えたが、不疑は動こうとしない。その時、馬を駈けて程少宮がやって来た。「少宮、少商は?」少宮は黙って巾着を投げ渡すと、縁が切れた以上は強引に求めないで欲しいという。「…少商は他に何か?」「″もう会うこともない″と…」巾着には不疑が出征する時に託した凌府の印が入っていた。…裏切れば一生許さない、それが彼女だ…不疑は涙を拭うと、北西に出発した。( ;∀;)ウーレイィィィィィィィィィィ! ←違うw少商は母と程姎(チォンヤン)に別れを告げ、宮中に向かった。黙って馬車を見送る蕭元漪、しかし長秋宮が冷宮同然だと知りながら忠義を尽くすと言った嫋嫋(ニャオニャオ)の様子が引っかかる。…まさか、戻らないつもりでは?永遠に冷宮に留まると…「早く!馬車を準備して!」蕭元漪は急いで娘の馬車を追いかけたが、嫋嫋はすでに城内へ入っていた。その時、ちょうど馬車から降りてくる嫋嫋が見える。「嫋嫋!嫋嫋!行ってはダメ!母が間違ってた!母が謝るから…嫋嫋…」蕭元漪は必死に叫んだが、虚しくも城門は閉まってしまう。つづく(⸝⸝ ˘ω˘ )いやあぁぁぁぁ~良かったこれは琅琊榜ep26と東宮最終話に続く名場面かも〜何より皇后が良かったわママ?うーん、ママは…w
2023.12.08
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星河长明 Shining Just For You第2話晁(チョウ)の使者・謝雨安(シャウアン)に毒入りの乳茶を飲ませ、朱顔(シュガン)公主・七海蕊(チーハイルイ)との婚姻を諦めるよう脅した葉凌霜(イェリンシュァン)。しかし謝雨安に呆気なく剣を奪われ、形勢は逆転してしまう。「たった2時しか効かぬ離魂(リコン)草ごときで私が倒れると思ったか?! 晁に来たくば公主と一緒に宮中へ入るといい、思うに… ″陛下″はそなたに興味を示すだろう、出世できるよう励むのだな」翌日、凌霜は夜北の外で七海蕊と合流、2人で逃げることにした。恐らく夜北はこの縁談を利用して戦機を得るはず、生き延びるには逃げるしかない。「路銀を取ってくる、まっすぐ山へ向かって、後を追うから」「はお!」しかし凌霜は銀子を手に天幕を出たところで苗黎(ビョウレイ)王子に捕まってしまう。七海大王が狼神の怒りを鎮めるため、生贄として凌霜の処刑を認めたというのだ。七海蕊はいつまで経っても追ってこない凌霜を心配し、夜北に戻った。すると凌霜がまさに火あぶりにされようとしている。七海蕊は苗黎王子が止めるのも聞かず凌霜のもとへ駆けつけ、短剣を自分の首に当てた。「葉子(イェズー)が一緒じゃないと晁には嫁がない!葉子が死ぬなら私も死ぬ!」そこへ騒ぎに気づいた夜北七部族首領・七海震宇(チーハイシンウ)がやって来た。七海蕊は二度とわがままを言わない代わりに凌霜の解放を懇願、さすがに溺愛する娘の最後の頼みとあって、七海大王は処刑を中止した。天幕で休んでいた凌霜が目を覚ますと枕元に文があった。…葉子、元気にしているか?夜北に戻った、旧居にいる、私を覚えているなら明日、会いたい…凌霜に書き置きを残したのは羽(ウ)族の四皇子・翼無憂(イーウーユー)だった。キタワー!‹‹\(´ω` )/››‹‹\( ´)/››‹‹\( ´ω`)/››凌霜の父で大淵古(ダイエンコ)・葉景清(イェケイセイ)は密かに四皇子と接触した。3年振りに夜北に現れた四皇子、実は今回も星流(セイリュウ)石が目的だという。「3年前、石のありかを黙っていたのは夜北を羽人と晁の戦に巻き込まぬためか?」四皇子は星流石を手に入れ瓊華槍(ケイカソウ)を修復し、羽人の主となって反旗を翻すと決意していた。しかし星流石は真師(シンシ)が残してくれた神物、葉景清はその所在はずっと不明だと否定する。「気の済むまでお探しください」一方、七海怜(チーハイリアン)は生母が埋葬されている苦淵(クエン)海に界諸嬰(カイショエイ)を呼び出した。「君が夜北の長公主だったとは驚いたよ」「本当は天啓(テンケイ)を離れる前に話すつもりだった…私も驚いたわ、あなたの姓が″界″だなんて」七海怜は晁に嫁ぐのがなぜ長公主の自分ではなく朱顔なのか知りたかった。すると界諸嬰から思わぬ理由を聞く。「陛下は私たちの仲を知っておられた」界諸嬰は2人で遠くへ逃げようと言ったが、七海怜は別れるしかないと冷たく突き放した。「私たちは二度と会うことはない」その夜、凌霜は自分の髪を切って父に渡し、別れの挨拶とした。葉景清はこれからも琥珀石を肌身離さず持つよう命じ、その石が必ず危険から守ってくれると教える。「決して外してはならぬぞ?」葉景清は思わず手を伸ばしたが、結局、娘を抱き寄せることができなかった。「凌霜…父として申し訳なく思っている」すると凌霜は最後に叩頭して天幕を出た。凌霜が荷物をまとめていると翼無憂が会いに来た。翼無憂は一緒に逃げようと訴え、凌霜をずっと守ると誓う。しかし凌霜は拒み、できることなら七海蕊を連れ去って欲しいと嘆いた。「阿蕊が幸せなら私は死んでもいいの」翌日、七海蕊は晁へ嫁ぐため、凌霜と共に夜北を出発した。七海蕊は隙があれば凌霜ひとりでも逃げるよう促したが、凌霜は一生、七海蕊から離れないという。「でも考えたの、私が嫁げば怜姐姐は想い人と結ばれる 私には恋なんて無縁だし、誰に嫁いでも同じよ」実は七海蕊は3年前に出会った翼無憂に淡い恋心を抱いていた。しかし翼無憂にとって当時の自分はただの子供にしか見えなかっただろう。「私の成人した姿を見せたかった…」すると道中、一行の前に突然、羽人が現れた。仮面をつけた翼無憂は空中を自在に飛び回り、兵士を蹴散らして公主の車へ舞い降りた。「葉子!逃げるぞ!」「阿蕊を!早く!」凌霜は咄嗟に七海蕊を翼無憂へ託して逃した。すると謝雨安が弓矢を構え、背後から羽人を狙う。驚いた凌霜は車から飛び出し、思わず謝雨安を突き飛ばして阻止した。「阿蕊を傷つけたら絶対に許さないから!」その頃、皇宮では欽天監(キンテンカン)の監正(カンセイ)・界海天(カイカイテン)が皇帝を心配していた。「夜北の星に不吉な予兆が見える…晁の建国以来、初めての苦難が始まるかも知れぬ」界海天は交戦的で内紛が絶えない夜北が婚姻ごときで安逸をむさぼるとは思えなかった。「誰か!伝令を…」すると界天海は皇帝の許可なく主力部隊の藍衣(ランイ)軍を秋嵐(シュウラン)海へ向かわせてしまう。公主を逃亡させた凌霜は捕縛され、晁の軍営に連行された。すると出迎えた将兵たちが謝雨安に一斉に拝礼、凌霜はようやく使者の正体が皇帝・彧修明(ユーシューミン)だと知る。「この大嘘つき!地獄へ落ちろ!」激高した凌霜は思わず皇帝に噛み付いたが、彧修明は歯牙にもかけなかった。皇帝の側近で羽衛(ウエイ)の女統領・冷天曦(レイテンギ)は実は羽人だった。彧修明は帰路で羽人と出くわしたと話し、冷天㬢と同じ″鶴雪(カクセツ)″だったと教える。「…羽人の精鋭だろう、何者だ?」「存じません」一方、雪山では翼無憂が七海蕊を連れて追っ手から逃げていた。しかし崖に追い詰められ、翼無憂は体力が回復しないまま再び七海蕊を抱き上げて飛び上がる。その時、射者隊が放った矢が翼に命中した。七海大王は晁軍が秋嵐海に向かっていると知った。七部族が一枚岩ではないのは承知だが、娘を犠牲にして得た戦機を逃すわけにいかない。「七部族を集結させよ、この劣勢さえ覆せば夜北は苦境を脱すると伝えるのだ」こうして藍衣軍は道中、夜北の七海部の奇襲に遭い全滅、生き残ったのはわずか31名だった。界諸嬰は公主を取り逃してしまったと報告、罰を請うた。しかし皇帝はそれより芳華(ホウガ)鏡の行方が心配だという。「まだ公主がお持ちかと…」「必ず手に入れろと命じたはずだ」すると界諸嬰は拝命して直ちに捜索に戻った。その頃、凌霜は高熱を出し、軍医の治療を受けるもなかなか回復しなかった。すると同じ天幕に深手を負った本物の謝雨安将軍が運ばれてくる。「藍衣軍もここまでか…仲間の骨さえ拾えぬとは…」つづく※鶴雪=飛翔術を用いる羽族の武人( ゚ェ゚)無憂たちが洞窟に隠れているシーンはカットされてますね
2024.06.10
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斛珠夫人 Novoland:Pearl Eclipse第34話「未来への夢」方卓英(ホウタクエイ)は迦満(カマン)から鵠庫(コクコ)南部に入った。右菩敦(ウホトン)王・額爾済(ガクジセイ)は娘の塔拉(トウラ)と共に出迎え、甥との再会を喜ぶ。ついに故郷である瀚(カン)州にもどった卓英、これからは奪罕(ダツカン)に戻り、叔父に従って一族の再興を叶えると誓った。その夜、奪罕を歓迎する宴が開かれた。しかし奪罕は皆の輪から離れ、改めて自分の使命を実感する。かつて方鑑明(ホウカンメイ)は自分が焦土化した大徴に平安を取り戻すため全てを捧げたように、瀚州のために努力する人がいれば必ずいつかは戦は終わると言っていた。『刺客の任務には一生、慣れないだろう、慣れなくても疲れても構わぬ だが悪は誰かが取り除かねばならぬし、誰かが平穏な世を守らねばならないのだ 夢に見た日々とは程遠くても、いつかお前も自分の進む道を選ばねばならぬ…』そこへ額爾済がやって来た。「独りでどうした?」すると額爾済は情報の伝達に使っている刺繍の暗号を渡した。この密書のお陰で奪罕が皇帝暗殺の機会をじっと待っていたのだと分かったという。「やはりお前は奪洛(ダツラク)とは違う あいつは横暴で、左菩敦(サホトン)王となってからは大勢を虐殺している」 奪罕、お前は正当な後継者、私と共に草原の秩序を安定させ、民に安寧を取り戻そう」( ゚ェ゚)右菩敦王ってこんなに良い人設定だった?大徴の皇帝暗殺を実行した奪罕は鵠庫で英雄と称えられ、額爾済に重用された。そして多くの部族を帰順させることに成功、奪洛の勢力を縮小させているという。報告を聞いた方鑑明は一安心したが、海市(ハイシー)は赤山城に留まったまま帰京する様子はなかった。そんな中、皇弟・褚季昶(チョリチョウ)の誕生日が近づく。褚季昶(チョキチョウ)は欽天監(キンテンカン)から当日は雪が降ると聞き、皇兄に東の馬場で鷹の調教の成果を見せたいと頼んだ。旭(キョク)帝・褚仲旭(チョチュウキョク)は緹蘭(テイラン)の立后に向け、着々と準備を進めていた。そこへ方鑑明が現れ、方卓英が鵠庫南部での足固めに成功したと知る。あの夜、鑑明が卓英に自分を襲わせた上、海市に追わせたのは、海市が兄を殺せないと分かっていたからだろう。褚仲旭は確かにこれで周囲の批判をねじ伏せることができたが、海市の気持ちを考えるとやるせなくなった。「朕でさえあまりにむごい仕打ちだと感じる…帰って来ぬはずだ」しかし鑑明は苦笑いをしただけで何も言わなかった。褚仲旭は鑑明に緹蘭を皇后に冊封すると伝えた。ついに過去の苦しみから解放された褚仲旭、そこで鑑明も過去を手放して新たな人生を歩めという。鑑明は全て解決したら願い出るつもりだったと明かし、その場に跪いた。「朝廷が安定したら柏奚(ハクケイ)の解消を願いたいのです、私は官職を辞し流觴(リュウショウ)へ…」褚仲旭は鑑明の決断を喜び、まるで昔に戻ったように並んで座った。すると鑑明は正直に愛する人がいると告白し、余生を2人で過ごしたいという。「その者との誤解が解け、想いが通じたら、必ず2人で報告に来ると約束しよう」「お前を振り回すとは一体、どんな女子なのだ?さぞ非凡であろうな~ そうだ、季昶の誕生日に連れて来い」「はお」淑容妃・緹蘭は体調が回復したが、なぜか最近、眠くて仕方がなかった。そんなある夜、突然、寝宮に小さな巾着が投げ込まれる。中を確認してみると、緹蘭の弟で注輦(チュウレン)の王子・索蘭(サクラン)の護身府が入っていた。さらに小さな薬瓶と一緒に密書が出て来る。…旭帝を殺せ、さもなくば王子の命はない…緹蘭は愛する皇帝と弟との板挟みになり、頭を抱えた。方鑑明は新たな人生を迎えるためしばらく休職、褚仲旭は退屈な日々を送った。そんな中、海市から皇帝に暇願いが届く。方鑑明は皇帝から海市の手紙を受け取ると、急いで昭明宮に戻った。そして海市がくれた手作りの巾着を取り出し、2人の婚姻書をしたためる。思い出すのは海市との懐かしい記憶、思えば自分で気づくよりもずっと前から海市に恋していたのかもしれない。あれから長い時間がかかったが、鑑明はようやく堂々と海市を愛せる日を迎えたのだった。(  ̄꒳ ̄)いや~師父の回想が長い長いwその頃、雪深い赤山城の客桟に帷帽(イボウ)で顔を隠した客人が現れた。実は2人の女子は人を探しに来たという。「その人の特徴は?」海市の世話を任された小六(ショウロク)が応対していると、ちょうど上階から海市が降りて来た。「…見つかったわ」客人が薄絹をめくり上げると、海市は驚いて言葉を失う。その女子は自害したはずの鞠柘榴(キクシャリュウ)だった。( ゚д゚)… (つд⊂)ゴシゴシ …(;゚Д゚)…(つд⊂)ゴシゴシゴシ…(;゚Д゚)?! 鞠柘榴と蘇夷(ソイ)は生きていた。清海(セイカイ)公は方卓英のため自分たちの死を装っただけで、黄泉関(コウセンカン)で安全に暮らしているという。しかし今も卓英のため、情報を収集していた。「でも彼は…私が生きているとは知りません、弱みを握られずに済むからその方がいい」清海公は卓英の心がもっと強くなった暁には再会できると励ましてくれたという。「これが清海公からの言付けです、清海公は小方大人を案じていらっしゃいますよ?」海市は自分の部屋を鞠柘榴と蘇夷に譲り、飛び出した。すると驚いたことに師匠からの文を届けに来た陳哨子(チンショウシ)が現れる。方鑑明からの文の中は″天が定めた良縁″と書かれた婚姻書で、方鑑明と葉海市(ヨウハイシー)の名があった。「哨子哥…銀子は持ってる?馬を借りるから、悪いけど新しい馬を買って~!」陳哨子は走り去る海市を見送りながら、これからの人生もまた長い道のりだろうとつぶやく。一方、昭明宮では方鑑明が人払いし、霽風(セイフウ)花を眺めながら海市が到着するのを待っていた。↓_(⌒(_´-ω-`)_ 全視聴者が師父に謝った瞬間wその頃、緹蘭は決断を迫られていた。すると侍女・碧紅(ヘキコウ)が薬瓶を出し、王子を助けるためにはやむを得ないという。緹蘭は皇帝を裏切れないと断り、黒幕は自分を利用するためにも弟を殺すわけがないと考えた。「次に動きを見せるのを待って何者か暴き、策を考える…着替えるわ、陛下をお待たせしてる」そこで碧紅に薬瓶を捨てるよう命じた。しかし碧紅は納得がいかない。かつて男たちに襲われそうになったところを偶然、王子に助けられた碧紅、恩人である王子を救うためには旭帝を殺さねばならなかった。海市は天啓(テンケイ)に到着、一目散に昭明宮へ駆けつけた。すると回廊に道筋のように赤い花びらが敷かれている。海市が花道を進んでいくと、やがて中庭の霽風花の木の前に立つ師父を見つけた。「卓英に矢を放った時、急所を外しました」「卓英は私が送った酒壺をいつも左の脇下に携えている」鑑明は自分も卓英も海市の選択に賭けたと明かした。確かにあの矢で卓英は鵠庫での立場を確立したが、海市は自分だけ蚊帳の外だったと失望する。鑑明は海市を信じていたと訴え、苦しい思いをさせたことを詫びた。しかし海市は激怒し、婚姻書を投げつけてしまう。「苦しい?…ふっ、それで罪滅ぼしにこんな物を?!」海市は傷ついていた。師匠と結ばれない現実を受け入れ、想いを封印したが、まさか自分を利用した償いに婚姻を持ち出すとは…。海市は居たたまれなくなり去ろうとしたが、鑑明が海市を抱きしめた。「愛している!…愛していない者を娶らぬと言ったであろう?今宵、2人きりで婚礼を挙げよう」↓何だか見ちゃいけない物を見てしまった感( ̄▽ ̄;)緹蘭が着替える前に皇帝が愈安(ユアン)宮へやって来た。すると侍女が淑容妃お手製の菓子と汁物を運んで来る。緹蘭は身体が温まると汁物を勧めたが…。つづく( ̄▽ ̄;)何だか…熟練夫婦の…ゲフンゲフン…いや何でもないですw
2022.10.28
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皎若云间月 Bright as the moon第3話「礼儀教育」雲浅月(ウンセンゲツ)に協力し皇太子の謀反を暴いた栄(エイ)王府の世子・容景(ヨウケイ)。実は慕容(ボヨウ)家の事件に雲王が関与していると突き止め、浅月に近づいたという。大理寺では記録が見当たらず、雲王府に何か残されていると考えたからだ。「浅月が屋敷を管理するようになれば我々も出入りできる、さすればすぐに記録を発見できよう」すると上官茗玥(ジョウカンメイゲツ)は納得したように頷いた。一方、雲王は負傷したとは言え栄王府で一晩過ごし、帰って来たと思えば従姉妹の香荷(コウカ)と揉めている孫娘に呆れていた。しかし浅月は心を入れ替えたのか、急に屋敷の管理を任せて欲しいと懇願する。いずれ皇后となって後宮を管理するためにも今のうち練習しておきたいというのだ。すると急に皇后の使いがやって来た。皇后は姪の冤罪が晴れたのを機に、皇帝との仲を取り持とうと浅月を宮中に呼んだ。何でも浅月も反省して屋敷の管理を学ぶことになったという。その時、ちょうど参内した容景が現れた。皇帝は郡主の指導役に適任はいないか尋ねると、容景は自分が引き受けると申し出る。(# ˃̶͈̀ロ˂̶͈́)੭ꠥ⁾⁾<この人はお断りです!しかし皇帝が強引に容景を師匠に任じ、明日から早速、郡主に礼儀作法から琴棋書画まで教え込むよう命じた。李蕓(リウン)は礼儀教育などまっぴらごめん、翌朝、栄王府から迎えが来ても寝ていた。すると侍女・彩蓮(サイレン)が栄王府にある大きな蔵書閣には珍しい書物があるらしいという。…現代に戻る方法が書かれた本があるかも?!…李蕓は気を取り直して栄王府へ移ったが、従者・弦歌(ゲンカ)の話では主人の許可なく蔵書閣には入れないという。一方、冷(レイ)王の元に三皇子から密書が届いた。「父上、長年、三殿下に尽くして来ました、あとはご帰還を待つばかりですね」「朝廷をあなどるな…」冷王は息子・冷邵卓(レイショウタク)に皇太子の失脚は第一歩に過ぎないと釘を刺す。そこで手始めに秦(シンフ)相府に貴重な千年紫参(シジン)を届けさせた。実はかつて宰相は千年紫参を皇后に献上し、妻の命を救えなかった辛い過去がある。冷家がなぜこれを贈って来たのか、宰相も娘の秦玉凝(シンギョクギョウ)もその理由を分かっていた。容景はまず自分の名前″景″という字を100回書くよう命じた。面白くない李蕓はわざと容景を困らせ、師匠を辞退するよう仕向けるが失敗、かえって厳しく礼儀作法を叩き込まれてしまう。すると弦歌が雲郡主の課題を主に届けにやって来た。「雲郡主は噂とは違い、よく学んでおられると思います、蔵書閣の場所も聞かれましたよ」容景は弦歌を下げると、浅月が書いた″景″の文字を見て独り喜んだ。その夜、課題を終えて琉月(リュウゲツ)閣に戻った李蕓はすっかり疲れていた。すると彩蓮が地図を書き上げ、屋敷に一箇所だけ警備の厳しい建物があったと教える。「ここが蔵書閣では?」「はっ!行って来る!ε=┏( ๑≧ꇴ≦)┛キャッハーッ!」李蕓は守衛の目を盗んで窓から蔵書閣に侵入した。まるで国家図書館並みの広さ、果たしてどこから探せば良いのか見当もつかない。「これも元の世界に戻るためよ…」しかし本が分類項目に分かれていると気づいた。やがて″伝説・異聞″という一画で″醒世異聞録(セイセイイブンロク)″といういかにもな本を発見する。必死に手を伸ばして取ろうとする李蕓、その時、背後から容景が先にその本を取った。「雲王府の郡主が栄王府で盗人のまねか?」「本を借りたかっただけよ」「字を知らないのに本が読めるのか?」「ぁぁぁ…だから今、習っているでしょう?」「ごまかすな、自分を偽るのは疲れないか?」容景は浅月が本当は字が読めると気づいていた。そこで蔵書閣への出入りを認めたが、醒世異聞録は貸せないという。怒った李蕓は本を奪い取ろうと必死になって思わず容景を突き飛ばし、勢い余って2人は本棚と一緒に倒れてしまう。バッタン!!!弦歌は大きな物音を聞いて蔵書閣に駆けつけた。すると本棚の上に倒れた主と雲郡主が口づけしているのを見てしまう。「誤解よ誤解!」李蕓は慌てて起き上がったが、容景の様子がおかしかった。「主上を休ませます、郡主は先にお戻りください」「大丈夫なの?…悪いけど先に行くわね!」李蕓は咄嗟に落ちていた醒世異聞録を拾って飛び出した。容景は寒毒の病で女人との接触は厳禁だった。温泉に入って発作が収まった容景、すると弦歌は主の顔が赤いと失笑する。「…どうやらお前を甘やかし過ぎたな」「全て郡主のせいです!」一方、琉月閣に戻った李蕓も動悸が激しくなり、顔がほてっていた。「ありえない…冷静になろうっと」そこで早速、醒世異聞録を読むことにする。すると″時をさかのぼるには3つの宝を集めるべし″とあった。ひとつは″白玉の神龍″、どうやら玉板指のことらしい。次に″千年の寒鉄″、これは小さくて丸い鉄のようだ。しかしその下は破り捨てられ、最後のひとつが″鳳凰(ホウオウ)″の何なのかが分からない。「まあいいわ、最初の2つを先に探そうっと」翌朝、李蕓は師匠が来ると自分で描いた容景の絵を渡した。容景は遊んでいた浅月を叱ったが、まんざらでもない。しかし次に四皇子と馬に乗った絵を描いてみせると、容景は激しい嫉妬から破り捨ててしまう。「結婚前の女子が男と親密にしている絵など…描き直せ!」「何ですって!」2人は思わず声を荒らげたが、そこへ思いがけず秦都官がやって来た。容景を慕う玉凝は容景の持病が再発したと知り、千年紫参を贈った。しかし容景は自分の病には効果がないと断り、弦歌に見送りを命じる。玉凝は仕方なく差し入れを置いて帰ることにしたが、その時、偶然にも雲郡主が描いた容景の絵を見てしまう。悔しさを滲ませながら出ていった玉凝、李蕓は秦都官が容景を好きなのだと分かったが、容景は全く興味がなかった。李蕓は珍しい物が好きだと切り出し、容景に不思議な力を持つ財宝がないか尋ねた。「以前、三星堆(サンセイタイ)で仮面を見たわ、時空の歪みを生むそうよ この天聖に玉板指とか鉄でできた何かがないかしら?」すると容景は驚き、仮面はどこで見たのかと尋ねる。李蕓は協力してくれるなら話すと言ったが、容景は何が目的なのか聞きたいと言った。「遠い場所にいるあなたに似た人を探すの…って言うか私はもともとそこに住んでいたの どうしても帰りたい…分かるわけないか(ボソ」「協力してもいい、ただし私にも協力してくれ」つづく( ̄▽ ̄;)ぅぅ…ツンデレが萌えになるかキモいになるかの境界線んんん…w
2022.10.05
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斛珠夫人 Novoland:Pearl Eclipse第32話「決断の時」鵠庫(コクコ)左部の草原。左菩敦(サホトン)王・奪洛(ダツラク)は鳥文で召風師(ショウフウシ)が旭(キョク)帝・褚仲旭(チョチュウキョク)の暗殺に失敗したと知った。しかし現場に実の弟・奪罕(ダツカン)がいたなら仕方がない。兄弟は双子のように顔も体つきもそっくりで、紅薬原(コウヤクゲン)の戦いではぐれたまま生き別れとなっていた。まさか弟が大徴(ダイチョウ)で方鑑明(ホウカンメイ)の弟子になっていたとは…。奪洛は方卓英(ホウタクエイ)が蘇鳴(ソメイ)を追いかけて瀚州(カンシュウ)に来た時、一目で奪罕だと分かったという。かつて母である紅薬帝姫に永遠に尽くすと誓った召風師、相手が奪罕では手の出しようがなかったのだろう。奪洛は次こそ皇帝と方鑑明を仕留めるべく、朔日(サクジツ)に再び召風師と錬金師を送り込むことに決めた。↓だから 髪 型 wその頃、無事に釈放された少府監の主事・施霖(シリン)は証拠隠滅のため、刺繍の密書を小さく刻んでいた。そこへ弟子が朝餉の準備ができたと知らせに来る。施霖は弟子に切れ端が入ったかごを渡し、しっかり燃やすよう命じた。すると入れ違いで今度は別の弟子が現れ、綾錦司(リョウキンシ)の典衣・鞠柘榴(キクシャリュウ)が生地選びに来ていると報告する。施霖は早速、居所を出たが、その時、鞠典衣が偶然、弟子のカゴから落ちた切れ端を触っているところを見た。「内官?布を落とされましたよ?」「ありがとうございます、典衣」驚いた施霖は急いで駆けつけ、不注意な弟子を厳しく叱って追い出した。柘榴は気にしていなかったが少府監で間者が見つかったばかり、施霖は長年、尽くして来た自分は杖刑(ジョウケイ)と俸禄1年分の罰金で済んだが、今や皆から見下されていると嘆く。「再び何かやらかせば生きていけません!」鞠柘榴は皇帝と淑容(シュクヨウ)妃の冬物の生地を選んで少府監を後にした。しかし施霖は鞠典衣が刺繍の暗号に気付いたのではないかと焦り、急いで追いかけ呼び止める。「忘れていました、実は昶(チョウ)王殿下が典衣を王府に招きたいそうです」なんでも聶(ジョウ)妃がいくつか残した刺繍品にほつれが見つかり、鞠典衣に修繕を頼みたいという。施霖が鞠柘榴と蘇姨(ソイ)を連れて昶王府にやって来た。確かに母の刺繍品にほつれはあるが、褚季昶(チョリチョウ)は鞠典衣を呼べと命じた覚えはない。ともかく話を合わせて典衣たちを繍房へ案内させ、施霖を正殿に呼んだ。聞けば処分前の密書に鞠典衣が偶然、触れてしまい、気づかれたのか否か見抜けないという。「念のため″朔日″まで鞠典衣を留めれば皆が安泰でしょう?」褚季昶は施霖が奪洛の手先だと気づいた。しかし施霖は失笑、あまりに読みが浅いという。「私が何者かはどうでもいい、私は殿下の助けとなる者です」その頃、方卓英は綾錦司に柘榴を訪ねていた。しかし朝早く少府監へ行ったきり戻っていないという。配下に調べさせたところ、柘榴は少府監を出たあと施霖と出かけたが、どうやら昶王府に向かったと分かった。城門に流觴(リュウショウ)旧府から蔵書が届いた。方鑑明は陳哨子(チンショウシ)に全て自分の書房に運ぶよう任せたが、そこへ方海市(ホウハイシー)が駆けつける。「師父、宮中の守備で多忙なのに、また面倒なことを? あんなに蔵書を引き受けて…傷は大丈夫ですか?」「ほぼ治った…あの日は大きな音で脈が乱れ、古傷に障っただけだ」鑑明はまさか皇帝の身代わりとなって傷を負ったとは言えず、笑顔で嘘をついた。その時、方卓英が血相を変えてやって来る。鞠柘榴が昶王府に連れて行かれたというのだ。方鑑明は興奮する卓英を引き止め、無理やり昭明宮へ連れ帰った。今、騒げばかえって鞠柘榴に危害が及ぶだろう。すると海市が自分に妙案があると伝え、むやみに動いては駄目だと説得した。その夜、海市は穆徳慶(ボクトクケイ)が止めるのも聞かず、強引に皇帝の寝所へ入った。重症を装っている褚仲旭は寝たふりをしていたが、海市は菓子の香りがすると指摘する。「鑑明め、ふざけおって…」褚仲旭は鑑明が海市にバラしたと憤慨、起き上がった。しかし海市は師匠から聞いたのではないと否定、実は皇帝と師父の暗号に気づいたという。あの日、温泉で刺客に襲われた皇帝は寝台に運ばれた際、鑑明の手を握りしめて指を動かしていた。「それでこれは策だと察したのです」「はあ~お前は子(ネ)年だろう?誰より目端が効くな…で、今度は何だ?」すると海市は方卓英と鞠柘榴の婚姻を許して欲しいと懇願した。方卓英と鞠柘榴の婚姻を命じる聖旨が下った。翌朝、綾錦司は昶王府に直ちに典衣を帰して欲しいと使いを送り、鞠柘榴たちは無事に解放される。鞠柘榴が昶王府を発ったと聞いた方卓英は師匠に感謝して迎えに行こうとしたが、方鑑明は命があると止めた。「会仙(カイセン)楼で茘枝(レイシ)の三花酔(サンカスイ)を買ってこい…早く戻れ」…機会があれば会えるやもしれぬ…卓英は急いで城門に向かった。その時、ちょうど柘榴が宮道を歩いていたが、卓英は愛しい人の姿に気づかず出かけてしまう。鞠柘榴と蘇姨が綾錦司へ戻ると、中庭で清海公(セイカイコウ)が待っていた。そこで蘇姨は典衣に報告し、独り黙って下がる。方鑑明は卓英が実は鵠庫王と紅薬帝姫の末子だと明かし、命の危機に迫られていると訴えた。「左菩敦王と瓜二つの顔が王位継承者の証となる 今、朝廷には左菩敦王と結託する者が潜んでおり、卓英の身分を暴いて排除するつもりだ 私は卓英に叔父の右王を頼れと勧めたが、卓英はそなたと一緒でなければ行かぬと… 心に想いがあれば何事も決断できぬ」「清海公、自分のすべきことが分かりました 彼にお伝えください、自分の命を大切にせねば私の命は無駄に捨てたことになると…」すると方鑑明は柘榴に毒薬を渡した。「この薬は効きが早く、何も感じず夢を見ているように逝けるだろう」清海公が帰ると蘇姨は涙に暮れる典衣に寄り添った。「私は孤独で行く所はありません…典衣の目となり、どこまでもお供いたします」その頃、方卓英は会仙楼にいた。しかし茘枝の三花酔は売り切れてしまったという。仕方なく別の店に行こうとしたが、突然、入口近くに座っていた客が1甕(カメ)ならあると声をかけた。卓英が娘の席へ行ってみると、驚いたことに娘は卓英の正体を知っている。「奪罕爾薩(ジサツ)…」「奪洛の手下か?」「ふっ…左菩敦王が忌み嫌う者の様子を探らせると思う?右菩敦王の命で参りました」「額爾済(ガクジセイ)叔父が?」実は酒甕の封泥(フウデイ)の中には馬を替える補給地の地図が入っていた。「9月中に莫紇(バクコツ)関外にお越しください、関を抜けたら護衛と共に迦満(カマン)から鵠庫へ…」すると卓英は酒を受け取り、密かに女の髪からかんざしを盗んで帰って行った。昭明宮に戻った方卓英は酒甕から地図を取り出し、三花酔を師匠の書斎の前に置いた。…早く柘榴に会わなくては…すると海市が現れ、一緒に綾錦司へ行くという。「うれしい知らせが待っているぞ!」しかし綾錦司の正門はなぜか錠が掛かって入れなくなっていた。2人は塀を飛び越え中庭から工房へ急いだが、そこで机にうつぶして息絶えた柘榴の姿を見つける。柘榴のそばには皇帝が方卓英との婚姻を下賜する聖旨が置かれていた。卓英は柘榴を抱きかかえ、自分の居所まで運んだ。後を追いかけてきた海市はそっと扉を閉じ、部屋の前に座って卓英の心が落ち着くのをじっと待つ。やがて辺りが暗くなる頃、卓英が部屋から出てきた。(´・_・`)<哥…( ー̀ωー́ )<当番に行く、柘榴を頼む朔日の夜、方鑑明は卓英と2人で皇帝の護衛についた。すると予想通り金城宮(キンジョウキュウ)に刺客が現れる。つづく( ゚д゚)… (つд⊂)ゴシゴシ …(;゚Д゚)…(つд⊂)ゴシゴシゴシ…(;゚Д゚)?!
2022.10.22
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风起霓裳 Weaving a Tale of Love第26話「弈心(エキシン)宮での弔い」豆子(トウシ)のために裴行倹(ハイコウケン)を始末しようとした孫徳成(ソントクセイ)。庫狄琉璃(コテキルリ)は誤解を解くため不禄(フロク)院に義父を訪ね、すでに裴行倹は自分が女子だと知っていると教えた。しかも才人・武媚娘(ブビジョウ)には素性を明かしたという。「もう危ない真似はしない、だから裴行倹に敵意を持たないで、武才人にもね」「お前と来たら、仕方がない」琉璃は約束通り卓錦娘(タクキンジョウ)に夢の中で習った刺繍を見せた。それは確かに安(アン)氏の技である錯針(サクシン)繍、これは卓錦娘も習ったが、誰にも伝授していない。「仙女は初歩から順番に教えてくださるそうです 錯針繍だけでなく乱針繍とかいう技や、網(ワン)繍や満地(マンチ)繍も…」卓錦娘はどれも自分が習った技だと驚き、その仙女が安氏ではないかと疑った。「仙女はどんな姿だった?生きていた時の名前は?」「はっきりと見えません、それに年齢や名前をこちらから尋ねるのは失礼かと… 私には天賦の才があるとかで、数ヶ月で基本が身につくそうです そうしたら人間界で途絶えた絶技を全部、教えてくださるとか…」にわかには信じられなかった豆子の夢話、しかしこれで一気に信憑性を帯びてきた。卓錦娘は仕事に復帰したが、まだ長くは座っていられなかった。そこで鄧七娘(トウシチジョウ)は完成が遅れている楊(ヨウ)妃の枕覆いを引き継ぐと申し出たが、卓錦娘は七娘では無理だと一蹴、豆子に任せると決める。それにしても安氏の技を引き継ぐ豆子は一体、何者なのか。その時、卓錦娘はまだ師匠の奥義書と金針が見つかっていないと思い出した。豆子は回廊へ出た七娘を引き止め、自分の代わりに枕覆いを作ってはどうかと勧めた。「どれも私が教えた技法ばかりですよ?実践する良い機会です!」七娘はしみじみ自分にとって豆子こそ本当の師匠だと漏らした。すると豆子は卓大家が本当は残酷で情がないと明かし、そばにいるなら気をつけるよう警告して戻ってしまう。…豆子ったら、自分の方が危険なのに私の心配なんかして…ある夜、卓錦娘は安氏の夢を見て飛び起きた。七娘は灯りをつけて安心させたが、卓錦娘は安氏から命で償わせると脅されたという。「なぜ師父の命を狙う必要が?」焦った卓錦娘はあくまで悪を裁いただけだと正当化したが、明らかに後ろ暗さから取り乱していた。そこで七娘は香をあげて弔ってはどうかと提案する。卓錦娘は確か今日が安氏の命日だと思い出し、安氏に取り殺されると怯えた。「そうね七娘…そうするわ」しかし宮中で私的な弔いは禁忌、そこで人けのない弈心宮で供養しようと決めた。その頃、弈心宮では琉璃が母を弔っていた。母に尚服局へ入ったと報告、敵を討ったら金針と奥義書を預けた青年を探すという。「そして阿娘の絶技を後世に伝えるわ…」裴行倹はその様子を屋根から見守っていた。その時、運悪く卓錦娘と七娘が入ってくるのが見える。驚いた裴行倹は咄嗟に豆子を連れて隠れたが、供養の途中だったため、祭壇がそのままだった。卓錦娘は誰かが供養に来たと気づき、しかも安氏の好物が供えてあると驚愕する。「安氏に関わる者が来たのよ…急いで立ち去ったのね、まだ近くにいるはず!」卓錦娘と七娘は手分けして供養した者を探した。すると七娘が寝殿の中に隠れていた豆子と裴行倹を見つける。しかし七娘は事情を聞く間もなく外に飛び出し、師匠を遠ざけて2人を見逃した。翌日、裴行倹が琉璃の居所を訪ねてみると、卓錦娘と七娘が部屋の中をあさっていた。卓錦娘は琉璃が金針を持っていると疑い、自分の地位を奪うため尚服局へ来たのだと怯えている。七娘はここには何もないとなだめたが、卓錦娘は金針が見つからない限り豆子への疑惑も晴れないと声を荒らげた。「もし豆子が安氏の弟子なら不倶戴天の敵よ!」卓錦娘は采章(サイショウ)署に戻ると、豆子に枕覆いが出来たか聞いた。そこで豆子はすでに完成し、確認のため鄧七娘に預けたと嘘をつく。七娘は恐る恐る自分が刺繍した枕覆いを渡したが、卓錦娘は豆子が刺したと信じて疑わなかった。七娘は豆子を呼び出し、安氏の弟子なのか尋ねた。琉璃は確かに自分の刺繍は安氏の技法だと認め、七娘に教えたのも同じだという。「やはり奥義書があったのね、金針は持っている? 師父があなたに疑いを抱いていて、居所を探ったわ」「安心して、私の元にはない、奥義書も失くしたけれど全部、頭に入っている」七娘は疑り深い師匠が信じるとは思えず、何とかして宮中を出るよう説得した。しかし琉璃はどうしても宮中を離れられないという。するとその夜、宮道を歩いていた七娘は裴行倹に呼び止められ、豆子を守るため本人には内緒で力を貸して欲しいと頼まれた。七娘は快諾、そこで裴行倹は次に孫内侍を訪ねる。孫徳成はまだ裴行倹を信じられなかったが、裴行倹は″琉璃″を助けるための相談だと言った。七娘は裴行倹の指示通り織物店にやって来た。店主の話では昨日、尼僧が尚服局の阿監が当店を利用していると聞いて訪ねて来たという。「何でも病院の治療のために大金が必要になり、宝物を売りたいそうです しかし買い手がつかず、尚服局の方なら価値を分かるはずだと…」七娘は宮中に戻ると早速、師匠に報告した。「尼僧が金針を売ると言って庵(イオリ)の場所を残していったそうです」裴行倹は七娘に頼んで弈心宮に琉璃を呼び出し、ようやく預かっていた荷物を返した。母の奥義書と自分の手巾を見た琉璃はついに恩人の青年が裴行倹だと知り、思わず抱きついて涙する。しかし肝心の金針がなかった。「琉璃、落ち着いて聞いてくれ…」「琉璃?なぜ私の名を?確か阿娘の事件を調べていたと聞いたわ…私の素性を知っていたの?」「知っていた、それに君が卓錦娘に復讐するつもりだと…」実は裴行倹は卓錦娘が固執している金針が琉璃の命取りになると気づき、卓錦娘の手に渡るよう工作していた。琉璃は母の形見を奪われ逆上、金針を失うくらいなら殺してくれという。「卓錦娘には絶対に渡せない…」裴行倹は琉璃を引き止めたが、暴れる琉璃に腕を噛まれてしまう。すると裴行倹は取り乱す琉璃を点穴し、眠らせた。卓錦娘は七娘を連れて尼僧を訪ねた。結局、金針の持ち主は薬を買えないまま亡くなっていたが、庵の祭壇にある琉璃の位牌の前に小さな箱がある。卓錦娘は箱の中から10年、探し続けた金針を発見、ついに天下第一針であるという証しを手にした。尼僧の話ではある日、庵の門を開くと少女が倒れていたという。全身が血だらけで高熱があり意識もなく、哀れに思った尼僧が介抱すると、琉璃という娘は骸の山からはい出して来たと分かった。「それ以外は話しませんでした、11年の間、床に就き、薬で長らえてきたのです 貧しい庵ゆえ薬代もなくなり、その時、琉璃が金針を出してくれたのですが…」すると卓錦娘は金針と一緒に奥義書があったはずだと食い下がる。つづく( ̄▽ ̄;)卓大家がキンキンうるさ過ぎる
2023.07.19
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斛珠夫人 Novoland:Pearl Eclipse第39話「奇跡の雨」飢饉に見舞われた西南。西平(セイヘイ)港刺史・劉昌平(リュウショウヘイ)は朝廷に援助を上奏していたが、なぜか食糧ではなく斛珠(コクジュ)夫人がやって来た。西平港商会会長・百里塬(ヒャクリゲン)は女子に救済役など務まらないと高を括っていたが、淳容(ジュンヨウ)妃方(ホウ)氏と言えば前左菩敦(サホトン)王を仕留めた凄腕、劉昌平は見抜かれやしないかと気を引き締める。すると海市(ハイシー)は早速、百里塬の自尊心をくすぐった。「″百里″とは宛州南淮(エンシュウナンワイ)の百里氏か?」「さようです、よくご存知で…ですが百里氏は衰退し、今ではその話をする者もおりません」「方氏も百里氏も名門ゆえ当然、知っている、かつて先祖たちは交流もあっただろう」おだてられた百里塬は上機嫌だったが、劉昌平はやはり侮れない相手だと警戒した。一方、方鑑明(ホウカンメイ)は鮫珠のおかげで小康状態となった。しかし鮫珠で血毒を取り除いても大本を絶てたわけでないと分かっている。すると鑑明は早速、皇帝に謁見し、淳容妃の出発はいつだったのか聞いた。( ー̀ωー́ )<…チッ、誰から聞いた?!( ತ _ತ)<陛下が昏睡中の私に…(; ̄▽ ̄)<朕か…褚仲旭(チョチュウキョク)は海市自ら救済の任を努めたいと申し出たと釈明した。「方海市は籠の鳥ではない、翼を広げて飛んでこそ幸せになれるのだ… 心配なのは分かる、だが生涯、守り続けられるわけではない 鑑明…お前にも手放すべきことがある」その夜、駅間でささやかながら歓迎の宴が開かれ、斛珠夫人は気分良く部屋へ戻った。百里塬はやはり夫人は張子の虎だったと安堵し、名門出身の深窓の麗人が被災民を本当に気にかけるはずがないという。どうやら用意していた偽の公文書さえ出番がないようだ。「片付けますか…決めた通りに進めればいかようにも対処できます」しかし劉昌平はどこか懐疑的だった。海市は酔ったふりをして部屋へ入ると、急にしらふに戻った。どうやら刺史たちは何か隠している様子、そこで早速、偵察に出かけることにする。玉苒(ギョクゼン)は指示通り夫人の服を着せた張り子を座らせ、窓辺に常に影を映して居留守を使うことにした。「覚えておいて、干ばつに苦しむ西平港のため私は部屋で雨乞いをする 雨が降るまで一歩も外へは出ないとね」夜の炊き出し所。被災民たちはここで水のような粥だけもらい、なぜか街を追い出されていた。海市は状況を探るため被災民たちをつけて行くと、実は被災民たちは斛珠夫人が去るまで山の窪地で過ごさねばならないという。「以前は2つの市場に炊き出し所があって朝晩の粥には飼料も混ざっていたけど生きられた 倉の白米は数月前まだ平穏だった頃に劉昌平が船団の頭領に売ったわ、倉に残ったのは飼料だけ 龍尾神の使者・斛珠夫人が運んできたのは食糧ではなく厄介ごとだけよ 劉昌平と商会は事実を知られることを恐れ、残り少ない米を穀物倉庫へ入れた 体裁上、臓物の汁を粥に変えたけど、数が足りないから私たちを追い出しているの」翌朝、劉昌平は駅館に斛珠夫人を訪ね、劇団を手配するので観劇してはどうかと勧めた。しかし玉苒は夫人が雨乞いの祈祷に専念するため部屋から出られないという。劉昌平はならば食事を届けると食い下がったが、その時、殿内から声が聞こえた。「劉大人、心遣いに感謝する、だが留まられては気が散る」「では何なりとお申し付けください、失礼いたします」劉昌平は引き下がったが、夫人の声が違うと気づいていた。駅館に戻った海市は大徴軍からの鳥文に目を通した。すると食糧を乗せた船がまだ越州を出港していないという。商会は荒波で船を出せないと言っているとか、しかしこの季節の波は高くないはずだ。「故意に引き延ばしているのね」一方、刺史府では劉昌平と百里塬が密偵の報告を聞いていた。斛珠夫人は確かに駅館の部屋にこもっているという。2人はひとまず安堵したが、百里塬はこのまま越州から食糧が届かなければ当地の白米はもたないと焦った。「…夫人は雨を降らせると自らおっしゃった、ならば我らはそれを利用しましょう」玉苒は越州に鳥文を放った。「この知らせが届けば船は出ますか?」「待たねば…」なぜか夫人は雨が降るのを待つという。その頃、食糧の到着が遅れていると聞いた方鑑明は再び皇帝に救援への派遣を嘆願していた。このままでは暴動に発展するのは必至、この機を利用して海市の命を狙う者が現れる可能性がある。「死んでも他の者には任せられません!」しかし褚仲旭は方海市なら対処できると信じ、むしろ鑑明の身体の方が心配だと反対した。すると鑑明は拝跪し、海市の無事を見届けなければ死んでも死にきれないと訴える。褚仲旭は鑑明の決意が変わらないとあきらめ、せめて鮫珠の薬を持って行けと言った。褚季昶(チョキチョウ)は方鑑明が出立したと聞いた。方向から察するに西平港だという。「私の策を見抜くとは賢い、しかし残念だ〜西南は遠すぎる、方海市を救たくても手遅れだ」被災民たちは時間になると炊き出しに集まった。そこで兵士は斛珠夫人が来ても食糧は届かず、雨乞いと言って炊き出しに顔も出さないと触れ回る。こうして被災民の怒りの矛先は斛珠夫人へ向かった。そこで劉昌平と百里塬は官吏たちと駅館を訪ね、夫人の安全のためにも西平港を離れた方がいいと説得する。しかしその時、暗雲が垂れ込め、雷鳴と共に雨が降り出した。「何とか間に合ったわ…船はすでに越州を出港した、食糧は3日以内に到着するでしょう 明日からは町を見ます、そうだ、劉大人、食糧が足りるなら被災民を戻してはどうかしら?」「直ちに手配します」やはり夫人は只者ではなかった。一方、方鑑明は道中で海市の動向を知った。食糧は斛珠夫人の命で大徴軍が護送、すでに越州を出港したという。また西平港では大雨が降り、暴動どころか斛珠夫人は被災民から本当に龍尾神の使いだと崇められていた。玉苒はなぜ夫人が雨を降らせることができたのか不思議だった。すると海市は駅館に到着した時、中庭で″風雨花″と呼ばれる赤い花を見つけたという。故郷で良く見るこの花は湿気に敏感とされ、急に花を咲かせた時は7日以内に必ず雨が降った。「到着した日にはもう十分に開いていたわ」確かに南方の形勢は複雑だが、多くの人々が龍尾神を信仰していた。海市はその信仰心を利用し、雨乞いが成功すれば必ず自分に畏敬の念を抱くと考えたという。そこで越州に潜入していた大徴軍に″西平港で雨が降ったら食糧を運ぶ船を掌握せよ″と命じていた。もし失敗した場合は巡回の印で脅すつもりだったが、血を流さず済んだのは運が良い。玉苒はここで初めて夫人が巡回の印を大徴軍の首領に預けていたと知った。「夫人は思慮深く機知に富み、男なら将軍か宰相の器です」「ふっ、それより食糧が到着する前に西平港の虫けらを退治しなくては…」斛珠夫人が官吏たちを引き連れ居北倉の視察にやって来た。被災民たちは夫人の姿に驚き、何事かと集まり始める。すると倉にはわずかだが確かに白米があった。劉昌平と百里塬は胸を撫で下ろしたが、その時、海市の号令で大徴軍が現れる。大徴軍は朝から軍営に出かけ兵糧を回収、しかしその中身は全て飼料に取り替えられていた。海市は民を蔑ろにして西平港を苦境に立たせた劉昌平と百里塬を弾劾、さらし首にするよう命じる。驚いた百里塬は全て自分の考えだったと認め、劉昌平は無関係だとかばった。「1斤の白米を飼料に替えれば10斤です! 数ヶ月前にはすでに干ばつの件を上奏しました だが奏状は陛下まで届かず、越州からの食糧も来ない! 海は季節の強風が吹き荒れ、瀚(カン)州への商船は出航しても食糧を運ぶ船は来ません 劉大人は倉の食糧を売るしかなかった、その銭で飼料を買いました だから今日まで皆、生きてこられたのです!」全てを知った被災民たちは劉昌平と百里塬を許して欲しいと訴えた。海市は善悪を一面からでは判断できないと話し、良心に恥じることがなければ生きられるという。「必ず公正に判断しましょう」すると再び恵みの雨が降り始めた。海市が手のひらをかざすと、龍尾神が与えた印が光る。被災民たちは海市が確かに神の使いだと感激し、その場で平伏し崇めた。その様子を見ていた方鑑明は形勢が安定したと知り、海市に会わず、陰で見守ると決める。つづく( ๑≧ꇴ≦)師父、なぜねずみ男にw
2022.11.13
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风起霓裳 Weaving a Tale of Love第24話「守りたい人」皇帝・李世民(リセイミン)は裏庭で自ら製糸の作業に汗を流している皇太子・李治(リチ)の姿を見て感激した。しかし妃たちに絹織の技を教えたのが皇太子の覚えがめでたい豆子(トウシ)だと知る。楊(ヨウ)妃と曹(ソウ)王・李明(リメイ)は皇帝の判断を待ったが、結局、皇帝は豆子に褒賞を賜った。機嫌を良くした皇帝は嘉徳(カトク)之殿で皇太子たちと談笑した。すると才人・武媚娘(ブビジョウ)が急に気分が悪くなり、殿内で妙な香りがするという。皇帝も確かに身体がほてるようだと訴え、どんな香を焚いているのか聞いた。焦った元朗(ゲンロウ)は香炉を慌てて片付けることにしたが、裴行倹(ハイコウケン)が止める。「陛下、これは催淫効果のある迷情香(メイジョウコウ)です」楊妃はこの機を利用して皇太子の失脚を企んだ。皇太子が男色という噂がある上、殿内で迷情香を使っているとなれば、皇帝と大唐の威信に関わるという。しかし武媚娘は何者かの企みではないかと牽制した。裴行倹も元朗から首謀者を聞き出すよう上奏したが、その時、莫坤(バクコン)が駆けつける。「元朗の部屋から迷情香の袋を発見しました」皇帝は逆上し、元朗に黒幕を明かすよう迫った。すると元朗は黒幕などいないと否定し、皇太子が男色だと聞いて寵愛を受けようと企んだと嘘をつく。皇帝は即刻、棒打ちでの死罪を申し渡したが、誰が黒幕なのか察しはついていた。皇帝は東宮を出ると、やがて我慢の限界にきた。楊妃と曹王は皇太子の男色の証拠を見せるため、蓮を口実に自分を東宮へ誘き出したのだろう。「ひざまずけ!」宮道で皇帝の怒号が響き渡った。楊妃は自分たち母子は無関係だと訴えたが、皇帝は東宮で叱責しなかったのがせめてもの情けだと言って足早に帰ってしまう。すると側仕えの高全(コウゼン)だけが引き返してきた。「陛下のお言葉です、″楊妃は体面を保つため寝宮に戻ってからひざまずけ″と… ″曹王の務めは将来、太子を補佐すること、勘違いして自分を傷つけるな″とのことです」実は裴行倹はあらぬ噂が立たぬよう武才人に皇太子と琉璃(ルリ)が2人きりにならないよう頼んでいた。しかし今日は武才人が不在の上、元朗が頑として謁見を許さず、不審に思ったという。裴行倹は密かに屋根に登って殿内をのぞくと、皇太子と琉璃の姿を見つけた。そこで窓から侵入して皇太子を点穴で眠らせ、迷情香が原因だと分かったという。裴行倹は直ちに王伏勝(オウフクショウ)に気つけの氷を持って嘉徳之殿に行くよう指示、殿内で合流した。『元朗を遠ざけてください、もうすぐ陛下が来るはず、敵の裏をかきます』裴行倹の読み通り元朗は曹王の間者だった。元朗から知らせを受けた曹王は皇帝に皇太子の男色の現場を見せようと企んだのだろう。琉璃は男女の別がいかに大切かを身をもって体験し、改めて恐怖を感じていた。すると裴行倹は独り泣いている琉璃を見つけ、今まで以上に守ると誓う。一方、武媚娘は王伏勝から今回の経緯を聞きながら、改めて確認した。「失礼だけど、太子の安全のために聞くわ…太子と豆子の噂は本当なの?」「まさか!2人は純粋に君臣の仲です!」しかし李治は寝殿で悶々としていた。正気を失っていたとは言え、豆子の怯えた顔を思い出すとやるせなくなってしまう。その夜、裴行倹は豆子に薬湯を差し入れたが留守だった。仕方なく尚服局の内侍・雲海(ウンカイ)に預けたが、そこへ孫徳成(ソントクセイ)が豆子に桂花糕(ケイカコウ)の差し入れにやって来る。すると雲海が不思議そうな顔をした。豆子なら孫内侍の書き置きを見て不禄(フロク)院に出かけたはずだという。「まずい!」裴行倹は慌てて飛び出した。琉璃は刺客に捕まり、門に吊されていた。裴行倹は短剣を放って縄を切ると、背後にいた刺客も腹を切られてしまう。刺客は慌てて逃げ出したが、その際、腰牌を落としていた。琉璃は意識がなく、すでに呼吸も止まっていた。無我夢中で口から空気を送る裴行倹、しかしどんなに呼びかけても琉璃は目を開けない。もはや愛する人を失ったかと絶望したが、その時、琉璃がついに息を吹き返した。「…なぜ泣いているの?あなたが守ってくれるから私は死なないわ」裴行倹は安堵したが、刺客の腰牌を見つけて怒りが込み上げた。「曹王府か…暗殺の指令を元から断つ必要がある」実は曹王は皇太子と武才人に手を出すのが難しいと断念、豆子が元凶だと逆恨みして抹殺しようとしていた。裴行倹は琉璃を送り届け、直ちに刺客の捜査にあたった。するとちょうど刺客を見つけた孫徳成が助けを呼ぶ声が聞こえる。裴行倹は短剣を放って孫徳成を助けたが、そのまま刺客を見逃した。「ここは私に任せて豆子のところへ」刺客は錦楽(キンガク)宮に消えた。衛兵は楊妃の寝宮まで踏み込むことができなかったが、翌朝、捜査の協力を申し出る。実は刺客が曹王府の腰牌を持っており、今や宮中では盂蘭盆会の件で豆子を恨む楊妃と曹王の仕業だと噂が広まっていた。楊妃と李明は仕方なく捜査を認めたが、しばらく豆子に手が出せなくなってしまう。李治は豆子が襲われたと聞いて尚服局に駆けつけた。しかし合わせる顔がなく、結局、東宮へ引き返す。「豆子の命が狙われたのは私のせいだ…今後は二度と他人を巻き込まないよう行動を慎もう」卓錦娘(タクキンジョウ)はようやく動けるようになった。そこで鄧七娘(トウシチジョウ)に頼み、豆子が長孫(チョウソン)皇后に作ったという牡丹の衣を見るため立成(リッセイ)殿を訪ねる。「これは…双面繍(ソウメンシュウ)?!信じられないわ!」双面繍は安(アン)氏の死と共に途絶えた技法で、卓錦娘もできない刺繍だった。豆子は遅くまで工房に残り、独りで刺繍を続けていた。そこへ鄧七娘が現れ、豆子の双面繍に気づいて目を見張る。「七娘姉、ちょうど良かった!お手伝いできればと韋(イ)夫人の披帛(ヒハク)を作っていました」「双面繍でしょう?こんな高度な技を披露して、私に盗まれても平気なの?」「学びたいなら教えますよ?」すると豆子は七娘を座らせ、コツを教えた。実は卓大家は基本が大事だと口実をつけて七娘に高度な技術を決して教えてくれなかったという。「あなたは知り合ってまだ数ヶ月の私に絶技を教えてくれるのね…不利になると思わないの?」「あなたは恩人です、私に不利になるはずありません、喜んでくれるだけで嬉しいです」そこへ雲海が豆子を呼びに来た。七娘は卓大家が長孫皇后の衣を見たため、恐らく双面繍について質問すると警告する。「安氏と共に途絶えた技だと言っていたわ」琉璃は母がこの技を誰にも伝授していなかったとは知らず、我ながらうかつだったと後悔した。「安氏と関係があるの?」「まさか!一介の医官が天下第一針と関係あるはずありません」つづく( ̄▽ ̄;)まだまだ男装も続く…?
2023.07.13
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风起霓裳 Weaving a Tale of Love第35話「玄武門の変」皇太子・李治(リチ)に謀反の罪を着せ、玄武門で捕らえるつもりだった曹(ソウ)王・李明(リメイ)。しかし玄武門で待っていたのは曹王謀反の知らせを聞いて待ち構えていた大臣たちだった。そこへ李治が裴行倹(ハイコウケン)たちと玄武門に到着、曹王たちを包囲する。「曹王・李明よ、許可なく兵を動かし玄武門を占拠した…逆賊は例外なく討つ!捕らえよ!」そうとは知らず、甘露之殿では曹王府から届いた鳥文に呼応し、楊(ヨウ)妃が動き始めていた。李明は裴行倹の裏切りに困惑しながらも、咄嗟に討たれるべきは李治だと言い返した。皇帝もすでに李治の本性に気づき、皇位を自分に譲ると言う聖旨を下したという。「信じられぬなら共に陛下に拝謁を賜ろうではないか!」すると大臣たちも賛同、皇帝に判断を仰ぐと決めた。楊妃は皇帝に毒薬を飲ませるよう総管・潘秦海(ハンシンカイ)に命じた。その時、侍女・丹青(タンセイ)が駆けつけ、曹王が皇太子や大臣たちを連れて向かっていると報告する。藩秦海はその隙に薬湯を置き、結局、皇帝に飲ませることはできなかった。曹王府の地下牢では琉璃(ルリ)たちが蒲巴弩(ホハド)に協力し、隠し部屋を探していた。するとついに密室にとらわれた老人を発見する。蒲巴弩は事情を話して解毒薬が欲しいと頼んだが、老人は解毒する術はないと明かした。「毒を作れと強要されたが、解毒薬は作らせてもらえぬ」もはや生ける屍となった老人は今さら自由になりたいとも思わないという。想定外に曹王が皇太子や大臣たちを連れて甘露之殿に駆けつけた。楊妃は計画を変更、聖旨を持って外に出ると、自ら皇帝の命を告げる。「李治には謀反と弑逆(シイギャク)の意あり、太子の位を廃し、掖庭に生涯幽閉とする… 朕は臨終にあたり国の危機を救わんがため聖旨を下し、印を授け、李明を太子に立し、帝位を譲る」寝耳に水の李治は猛反発、皇帝に謁見すると言ったが、楊妃は皇帝なら崩御したと伝えた。皇帝崩御の知らせにその場は騒然となった。楊妃は筋書き通り李治が前総管の高全(コウゼン)に毒を盛らせ皇帝暗殺を企てたと訴え、大臣たちに動揺が広がる。しかし褚遂良(チョスイリョウ)と長孫無忌(チョウソンムキ)は顧命大臣に任命された自分たちが皇帝から何も聞いていないと怪しんだ。何よりまず聖旨の真偽を調査すべきだという。楊妃は総管が証人だと訴えたが、藩秦海は恐ろしさのあまりその場にひざまずき、黄泉の国でも皇帝に仕えたいと涙ながらに訴えることしかできなかった。その頃、地下牢では琉璃が老人に助けを請うていた。すると老人は琉璃が母である安(アン)大家の敵を討つため、こんな目に遭ったと知る。「安氏の娘?…なんと、実は年こそ離れているが、安大家は親しい友人だった」実は老人はかつて宮中一の薬師で、安大家とは共に宮中暮らしに嫌気が差し、皇宮を出て普通の暮らしをしたいと願う同志だった。安大家が去ったあと老人も職を辞したが、皇宮を出た途端に曹王に捕まり、それ以来、地下牢で毒を作らされていたという。そのうちすっかり目が見なくなり、命じられるまま毒を作ってきたのだ。「あなたが薬王だったのか?!私は不禄(フロク)院の孫徳成(ソントクセイ)だ」「孫内侍?!覚えているとも!」しかし今は旧情を温める時間はない。琉璃は一緒にここを出て皇帝の前で悪事を暴こうと説得した。「陛下?!…確か曹王は陛下を暗殺するための毒を私に作らせた、今日がその日だ」甘露之殿の前で楊妃と皇太子たちは一触即発の様相となった。藩秦海は怯えて証言などできず、大臣たちも皇太子が謀反を企むなど考えられないとかばう。その時、思いがけず豆子(トウシ)が現れた。「陛下の崩御は嘘です…陛下の御前に行けば誰が謀反を企んだのか分かります」焦った楊妃はでたらめを言った豆子を打ち殺せと命じたが、李治が止める。「楊妃、公然と悪事の口封じをする気か?」すると李治は立ちふさがる衛兵を一喝し、殿内に入った。皇帝・李世民(リセイミン)は寝殿で安らかに眠っていた。やはり李治や大臣の呼びかけに反応がなく、崩御は事実らしい。楊妃は勝ち誇った様子で皇太子たちの嘆く姿を見ていた。それもそのはず、楊妃は怖気付いて薬湯を飲ませることができない藩秦海に業を煮やし、自ら皇帝に毒を飲ませていた。すると李明が皇帝崩御を皇宮に告げ、弔いの準備をするよう命じる。その時、豆子が医官として脈診したいと申し出た。…薬王は曹王から皇帝暗殺のための毒を作るよう強要されていたしかし医者として人を殺めることなどできず、曹王には眠り薬を渡したというただどちらにしても皇帝の寿命はわずか、いつ崩御してもおかしくなかった薬王はこれから参内しても、運悪く陛下が崩じていたら命がないと警告する『それでも行かなくては、太子を見捨てることはできません!』…李明は豆子の申し出を退けた。しかし李治が豆子をそばに呼んで皇帝の脈を見るよう頼む。「…はっ!陛下にはまだ脈があります!」その時、あまりの騒々しさに皇帝が目を覚ました。楊妃は思わず偽の聖旨を床に落とし、へたり込むようにその場で平伏する。すると長孫無忌が楊妃と曹王の暴挙を報告、驚いた皇帝は重い身体を何とか起こした。「…偽の聖旨で治児の廃太子をもくろみ、朕の崩御を宣言したと? このあとはどうする?朕を絞め殺すか?毒殺するのか?!」「陛下、お静まりヲヲヲヲヲ~無知とあまりの悲しみゆえに崩御されたと思い込みました 聖旨は大臣たちが太子の逆心と不孝を信じようとせず、それでやむを得ず… 私が代わりに反徒を罰しようとしただけなのです!」楊妃は皇太子の逆心の証しがあると訴え、外套の下には龍袍を着ていると告発した。そこで李治は皇帝の前で堂々と外套を脱いでみせる。息をのんで見守る琉璃、しかし李治がまとっていたのは確かに四爪蠎袍(シソウボウホウ)だった。…琉璃の別れの言葉の意味を悟った裴行倹は書き付けを改めて確認したおかしなところはなかったが、ろうそくで透かして見ると″計あり″と浮かび上がる東宮へ報告に向かったところ、豆子が届けた四爪蠎袍があった確かに″豆″の刺繍が入っていたが、裴行倹はこれまでの刺繍と違うことに気づき、しかも点が1つ多いと分かる『はっ!蟒(ウワバミ)の爪が5本になっています!』…李治は豆子の機転と裴行倹の知恵に助けられ、危機を乗り越えた。もはや申し開きできなくなった楊妃、その頃、密かに抜け出した李明は宮外に合図を送ろうとしたが、裴行倹に捕まってしまう。陽妃は全て自分が考えたと嘘をつき、李明をかばった。「重病に侵され、もう長くありません…ゲホッゲホッ! 私が死ねば誰が明児の命を守るのでしょうか?どうか息子の命だけはお助けください…」皇帝は最も恐れていたことが起こったと肩を落とした。そこで調査を皇太子に任せ、楊妃と曹王を別々に幽閉するよう命じる。しかし皇家の醜聞が世に漏れ聞こえれば威厳に関わるとし、かん口令を敷いた。李治は豆子を連れて甘露之殿を出た。外では孫徳成と順子が待っていたが、豆子が急に卒倒してしまう。驚いた李治は恩人である豆子を東宮へ引き取り、太医を呼んだ。しかしそこで思わぬ事実が発覚する。「殿下、豆子は女子なので?…重病となると性別を確認せず治療するわけにまいりません」そこへ後始末を終えた裴行倹が現れた。裴行倹は豆子が女子だと明かし、ひとまず治療を頼んだ。驚いた李治は裴行倹を中庭に連れ出し、ようやく琉璃の素性を知る。「どうか琉璃をお許しください」しかし李治は豆子が女子と聞いて嬉しいと笑った。「誰が咎めたりするものか、阿母の敵討ちと冤罪を晴らせるよう手を貸そう …2人にそれぞれ頼みがある」李治はうなされている琉璃に付き添った。「陛下は生きてる…陛下は生きてる…太子の謀反は陰謀なの…」「琉璃、私も陛下も無事だ」すると李治は琉璃のかんざしを抜いて黒髪をほどき、美しい寝顔にそっと触れた。「お前が女子だと気づかぬとは…早く気づくべきだった、こんな美しい男がいるはずないのに」つづく( ゚ェ゚)…で、刺繍ネタは?尚服局はどうなった?どうでもいいのか?w
2023.08.10
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风起霓裳 Weaving a Tale of Love第38話「縁を結ぶ白い鳩」永徽(エイキ)5年。皇帝・李治(リチ)は寵愛する昭儀・武媚娘(ブメイニャン)と尚服局の大家・庫狄琉璃(コテキルリ)を連れて万年宮にいた。避暑にやって来たものの連日の雨、そんな中、長安の県令・裴行倹(ハイコウケン)が急に訪ねて来る。拝謁の目的が琉璃だと察した王伏勝(オウフクショウ)は帰るよう説得したが、裴行倹は激しい雨にもかかわらず、梃子でも動かなかった。困り果てた王伏勝は翌朝、ちょうど回廊に出ていた武昭儀に事情を説明し、判断を仰ぐ。すると武媚娘は皇帝には知らせないよう命じ、侍女・玉柳(ギョクリュウ)にある頼み事をした。李治は琉璃が献上した新しい衣に袖を通した。王伏勝の話では庫狄大家が暑がりの皇帝のために改良した絹の紗(シャ)で夏用の衣を作ったという。未だ琉璃を手放すことができない李治、しかし琉璃は避暑に来ても皇帝を避けるように山頂の梳粧(ソショウ)楼に移っていた。そこへ武媚娘がやって来る。「陛下、宝児(ホウジ)がいなくなりました」その頃、玉柳は主に頼まれた通り裴行倹に鳥籠を渡していた。万年山は7日間も雨が降り続いていた。鄧七娘(トウシチジョウ)は止むどころか激しくなっていると心配したが、琉璃は山道がぬかるめば誰もここまで来ないと安堵する。その時、王伏勝が差し入れを届けにやって来た。「炭と油が御入り用だとうかがったので…陛下は夜が寒いのならふもとへ連れ戻すようにと仰せです」琉璃は笑って炭も油も絵を描くために使うと教えたが、そこへふもとから使者が駆けつけた。「県令の裴行倹が用あって拝謁を賜りたいと…」裴行倹が昭儀の鳩を発見、万年宮に届けた。皇帝が宝児を探していると知って感業(カンギョウ)寺へ向かったところ、そこで見つけたという。喜んだ武媚娘は裴行倹のもとに駆け寄って鳥籠を受け取りながら、あせらず時機を待つよう警告した。裴行倹は助言に従ってすぐ引き上げることにしたが、その時、激しい雷鳴がとどろく。「この悪天候だし、夜道は危険ね…」武媚娘が機転を利かせると、李治は裴行倹に一晩、泊まっていくよう勧めた。裴行倹が通された部屋は客室ではなく、琉璃が使っていた部屋だった。しかし今は梳粧楼に移り、この雨では訪ねる人もいないという。裴行倹は窓から山頂を見上げると、雨で霞みながらもわずかに明かりが見えた。聞けば琉璃は静寂を好み、皇帝の宴にも参加せず、絵ばかり描いているという。一方、琉璃も窓辺に座り、主殿を見下ろしていた。すると当初、使っていた自分の部屋に明かりがついているのが見える。「彼だわ…間違いない」その時、雷鳴の合間にかすかに地鳴りがした。「大変よ、山津波だわ!」琉璃は侍女たちに大きな音を鳴らして警戒を呼びかけるよう命じた。その時、ふもとに裴行倹がいると思い出し、危険を承知で主殿に戻ることにする。必死に止める鄧七娘を振り切り飛び出した琉璃、するとうっかり足を滑らせ転びそうになってしまう。その時、裴行倹が駆けつけ、琉璃を抱き止めた。七娘は抱き合って涙する2人の姿を目の当たりにし、思わずこのまま逃げろと叫んでしまう。「山津波でたくさんの人が流されるわ!今なら誰にも気づかれない!」一方、万年宮では李治たちが逃げ遅れていた。王伏勝はすぐ裴行倹を呼ぶよう頼んだが、侍女・書蘭(ショラン)の話では部屋にいなかったという。すると李治はこれも天意だと漏らした。「すでに琉璃と逃げたのだろう、それも良い」しかし思いがけず裴行倹が現れる。「陛下、遅くなりました!すぐに避難を!」その頃、琉璃はちょうど倉庫に届いていた油と炭で梳粧楼に火を放ち、避難して来る民たちの道標にしていた。万年山に快晴が戻った。李治は裴行倹の忠誠心に深く感銘を受け、ついに琉璃を手放す決心がつく。そこで山津波から多くの民を救った琉璃の功績を認め、望み通り皇宮を出て愛する者と自由に暮らすことを認めた。それだけでなく妃嬪にのみ許される豪華な宝飾品を授ける。「皇宮を出たらもう守ってはやれぬ、無事で暮らせ」すると李治は最後にようやく裴行倹の玉を琉璃に返した。武媚娘は琉璃を見送りに出た。その様子を李治は王伏勝と一緒に回廊からそっと見守っている。「あの頃にはもう戻れないのだな…」「陛下、後悔しておいでですか?」「2人が幸せなら3人が苦しむより良い」李治はようやく素直に琉璃と裴行倹が結ばれることを願えるようになった。琉璃はついに自由の身となり、裴行倹のもとへ駆けつけた。あの日、一緒になれる唯一の機会をあきらめて皇帝たちを助けに向かった裴行倹、もし皇帝の恩賞がなければ一生、後悔するところだったという。「あなたが大勢の命を犠牲にするはずないと分かっていたわ」「人助けは後悔しない、だが君を失えば必ず悔いが残ったよ 琉璃…君を娶りたい、ずっと一緒にいよう!」「いいわ!」裴行倹は師匠の蘇定方(ソテイホウ)と于(ウ)夫人に琉璃を紹介した。将軍夫妻は琉璃を歓迎、両親を亡くして家族がいない守約(シュヤク)のため、婚礼を自分たちが執り行うという。そこで婚礼前日まで琉璃を蘇府で預かることにした。琉璃は蘇府に迷惑をかけられないと遠慮したが、実はここに留めるのは琉璃だけでなく親族を守るためでもあるという。「琉璃よ、お前がひとたび守約に嫁げば河東(カトウ)公府と中眷(チュウケン)裴一族に目の敵にされるだろう」 最初の妻・陸琪娘(リクキジョウ)は連中に殺されたようなものだ」琉璃は裴行倹が妻をもったことがあると知った。実は裴行倹が琉璃と初めて出会ったのも、科挙と婚約のため上京した時だったという。「黙っていたのは話す機会がなかったのもあるが、それ以上に私にとって心の傷だったからだ」裴行倹の父と兄は隋(ズイ)に刃を向け、王世充(オウセイジュウ)に殺された。その時、裴行倹の母は威望が厚い西眷(セイケン)裴の宗主・魏(ギ)国公を頼ったという。おかげで裴行倹の父は封号を賜り、宗主の口添えで資産の返却まで認められた。資産は婚礼と同時に裴行倹に戻る条件で、母は中眷裴一族を養うため、息子と琪娘の縁談を決めたという。琉璃は魏国公の位を河東公の長子が継いだと知っていた。「確か夫人は陛下の叔母君である臨海(リンカイ)大長公主ですね?」その頃、臨海大公主は裴行倹に再び縁談があると聞いていた。つづく( ゚ェ゚)若作りめいにゃん、無茶してんな〜w
2023.08.16
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月升沧海 Love Like the Galaxy(第26話)第53話「長秋からの旅立ち」霍不疑(フォブーイー)に嫁ぎたいと願うも手酷く追い返された駱済通(ルオジートン)。これも全て程少商(チォンシャオシャン)のせいだと逆恨みし、長秋(チョウシュウ)宮に少商を訪ねた。少商は殊勝にも先のぶしつけな態度を謝罪する駱済通を追い返せなかったが、どちらにしても助けることはできない。「彼とはもう関わりたくないし、とりなす気もない、成婚を勧めることもね…あなたの問題よ」「今日はあなたに伝えに来ただけ、北西に戻って余生を過ごすわ、これで永遠にお別れよ 明日にも出発する、ただやり残したことがあるの…」宣神諳(シュエンシェンアン)の心疾(シンツウ)は悪化の一途をたどり、今朝は身体を起こすこともできなくなった。そんな宣神諳の元に帰京した霍不疑が見舞いにやって来る。「子晟(ズーション)なの?」「私です」不疑は宣皇后が力無く伸ばした手を取り、頬に当てた。「少商ならまだ婚約していない…少商の心の中にはまだあなたがいるわ」「知っています、私の過ちです、一生かけて贖罪すると決めました」その時、宣皇后が重い身体をどうにか起こした。「少商は幼き頃、最も愛が必要な時に家族がそばにいなかった 愛しているなら少商の心に欠けたものを補ってあげて… あなたの決断を理解させるのではなく、相談し合って初めて肩を並べて進めるのよ?」「はい、今後、少商には全てを明かし、語り尽くします、隠し事はしません」「だけどもう私には時間がない、2人の成婚を見届けられないわ」「私は不肖者です…ご心配をかけて…」不疑は育ての親でもある宣皇后への不孝を思うと涙があふれ出した。すると宣神諳は子晟の涙を拭い、来世では子晟と少商を息子と娘にしたいという。「そして長生きして2人に養ってもらいながら笑顔で晩年を送るの これこそ満ち足りた人生というものよ」そこへ翟(ジャイ)媪(ウバ)が現れた。「霍将軍に急務だと…」宣神諳は最後に少商としっかり話すよう念を押し、必ず許してくれると励ました。不疑が寝殿を出ると翟媪が待っていた。梁邱起(リャンチゥチー)から知らせがあり、少商が都を離れる駱済通の馬車に同乗して郊外に向かったという。実は駱済通は宣皇后の心疾を治せる神医に心当たりがあると嘘をつき、少商を連れ出していた。少商はなかなか到着しないことを訝しんでいたが、やがて駱済通が本性を現す。「…幼き頃より彼を慕うも身分の差で明かす勇気はなかった その後、互いに婚約して望みは絶えた、でも天は私を哀れみ北西で再会させてくれたの あなたに分かる?愛する人がいながら別の人を世話する気持ちが…」駱済通は不疑への思いの丈をぶちまけると、少商に隠し持っていた短剣を突きつけた。「彼は女に目もくれないのにあなただけは別、なぜ霍不疑の目にはあなたしか映らないの?! 彼のためなら何だってやる、夫だって殺したのよ?でも彼は私を愛してくれない でもあなたを殺せば彼は私を忘れられなくなる、恨まれても本望よ」御者は崖に向かって馬を走らせた。しかし背後から凌不疑の馬が追いつき、驚いた御者は飛び降りてしまう。その時、短剣を振り上げる駱済通の姿が窓から見えた。不疑は無我夢中で手を伸ばし、素手で短剣をつかんで取り上げる。その間も馬の暴走は止まらなかった。不疑は何とか馬車に飛び移ったものの間に合わず、咄嗟に車から少商を抱きかかえ脱出、駱済通は馬車と共に谷底へ転落してしまう。( ;∀;)ァァァ~ウマーの扱いィィィィィ~不疑は少商の手をつかみ、かろうじて岩肌にしがみついた。しかし少商は不疑の手から流れる鮮血で真っ赤になった自分の手に気づき、覚悟を決める。「手を放して、あなた独りなら登ることができる」少商は自ら手を放したが、不疑は少商の手を握りしめて決して放さなかった。「独りで生きるつもりはない、君に許してもらえるとも思っていない だが歯形の誓いから君は私の妻になった、君が生きれば私も生きる、君が死ぬなら私も死ぬ!」その時、2人を探していた黒甲衛(コクコウエイ)が到着、不疑と少商は無事に引き上げられた。少商は不疑の手の傷を心配してくれた。不疑は包帯を巻けば支障はないと安心させ、皇宮まで送りたいと申し出る。しかし少商は必要ないと断った。落胆しながら馬の元へ歩き出した不疑、その時、宮中から早馬が駆けつける。「霍将軍!程娘子!すぐ皇宮へ!宣皇后が危篤です!」少商と不疑が長秋宮に戻る頃には激しい雨となった。2人はびしょ濡れのまま寝殿に駆けつけ、一番後ろで静かにひざまずく。文(ウェン)帝は枕元で付き添いながら、自分が宣神諳の一生を台無しにしたと涙した。しかし宣神諳は皇帝と出会えて幸せだったという。「分かっています…阿姮(ホン)妹妹が流した涙が私より多いことを… これからは彼女と手を取り合い暮らして欲しい…私という存在がなかった頃のように… 陛下、阿姮と話をさせてください」越姮(ユエホン)は宣氏一族のことなら心配ないと安心させた。しかし宣神諳が話したいのは自分たちのことだという。「我が子は19歳の時に襲われたけれど、あなたを疑ったことはないわ」「分かっています…あの年、私の息子も4ヶ月で夭折しました でも疑ったことはありませんでした」「分かってる、決して私を疑わないから外の流言も恐れることなく子供たちを受け入れてくれた」「…私たちは姉妹同然でした」「普通の家の姉妹だったらどれだけ良かったか…」すると宣神諳は子供たちを呼ぶよう頼んだ。皇帝は宣神諳を抱き起こして子供たちの顔を見せた。すると宣神諳は最後の望みとして父が隠居した山で眠りたいという。「この身体は皇陵に葬るしかない…だからお願いです 私の髪を一束ほど切って少商に燃やさせてください、その灰を埋めて欲しい」「分かった、全て望みのままにしよう」そして東海(トウカイ)王には闊達に生きるよう諭し、翟媪の面倒を頼んだ。嫁いだ五公主にはしっかり生きて欲しいと願い、美しい歳月を大切にして欲しいという。「子晟…」不疑は宣皇后に負い目があった。しかし宣神諳は子晟も苦汁をなめて生きて来たと理解を示す。「私が逝った後は過去のことは水に流すといいわ…あなたも自分を許してあげて… 少商、ここへ…」少商は寝台へ近づくと、宣皇后の手を握りしめた。「少商、あなたを巻き添えにし、5年も無駄にさせたわ…」「巻き添えなんて…少商が望んだのです、5年でも10年でも…」「バカな子ね…私のために多くを犠牲にしてしまった だから将来の日々は自分のために生きなさい…私のように無意味な余生を送らないで欲しい 母としてはあなたたち2人の縁がそのまま続いて欲しい… ただ情理を知る目上の者としては婚姻が強引に求められないことも分かる だから万事、心に従えとしか忠告はできない…今を大切にして悔いなきように…」すると宣神諳は苦しくなったのか大きく息を吸い込んだ。「陛下…来世では太平な盛世に生まれ、放浪の苦を免れますように… 来世では両親が健康で長生きして憂患の苦を免れますように…ハァ… あなた…あなたに嫁げて幸せでした… でもどうか来世では…あなたと会うこともないように…」宣神諳は夫婦の情を得られぬまま不遇の人生を終えた。悲しみに包まれる長秋宮、その頃、心の支えを失った少商は呆然と宮中を歩いていた。やがて憔悴した少商は激しい雨の中で倒れてしまう。不疑は意識を失った少商を曲陵(キョクリョウ)侯府へ送り届けた。突然のことに困惑する程始(チォンシー)と蕭元漪(シャオユエンイー)、聞けば宣皇后が逝去したという。「…私は送って来ただけ、すぐ失礼します」「霍不疑、待たんか!」程始は娘を簡単に捨てた霍将軍への怒りが爆発、5年前に娘は死にかけたと明かした。今でも裏庭の離れには作りかけの棺が残っているという。不疑は思わずその場にひざまずき、少商を傷つけたことを謝罪した。「ゆえに2度と邪魔はしません…」しかしどんなに謝られても失った5年間は戻ってこない。蕭元漪は長秋宮にこもっていた嫋嫋を思うと胸が痛んだ。「私が重病を患った時も、阿兄が妻を娶る時も、堂姉が嫁ぐ時にさえあの子は帰らなかった 嫋嫋の選択はあなたのためよ、霍不疑!」不疑は床に頭を打ちつけるように叩頭した。「私の過ちです、少商の一途な情を裏切り、程家の信頼を裏切った 少商と程家には負い目があります、その償いは一生かけても終わらない 北西で戦死できればと思っていたが死ぬ勇気もなく、彼女の恨みも消せず… 私には死ぬ資格さえない」しかし蕭元漪も決して霍将軍に自責の念を植え付けたいわけではないという。そもそも自分たちにも娘が幼い頃に構ってやれなかった苦い経験があった。「今後は嫋嫋の望み通りにさせるわ あなたと娘は互いに情があっても天に翻弄されてしまった 今後も縁が続くかどうかはいずれ答えが出る」つづく( ;∀;)宣皇后…泣けたわ〜
2023.12.22
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皎若云间月 Bright as the moon第31話「さらなる濡れ衣」息子を連れて里帰りした雲浅月(ウンセンゲツ)。しかし祖父は孫への贈り物を買いに行ったきり戻って来なかった。香荷(コウカ)は確かに遅すぎると気づいたが、そこへ使用人が慌てて駆け込んでくる。「王爺(ワンイェ)が大変です!」雲王府に傷だらけの御者が戻ってきた。御者の話では馬車を何者かに奪われ、雲王が連れ去られたという。しかし御者はすぐ気絶してしまい、詳しい話は分からなかった。雲王への復讐のため王府を探っていた容景(ヨウケイ)は思いがけず雲王がさらわれたと知った。仕方なく出直すことにしたが、隠れ家の後巷玉(コウコウギョク)府の前に馬車が乗り捨てられている。弦歌(ゲンカ)が中を確認すると、驚いたことに気を失った雲王がいた。秦玉凝(シンギョクギョウ)は三皇子の指示で雲王を連れ去り、容景の隠れ家に放置した。手を貸した冷邵卓(レイショウタク)は三皇子に利用されているだけだと警告したが、復讐にとらわれた玉凝の耳には届かない。「楽しい里帰りの最中に祖父が最愛の人の手にかかって死ぬなんてね…ふっ 今度こそあの男にたっぷりお返しができそうだ」その頃、冷邵卓の手配で雲王府に矢文が放たれた。文には″後巷玉府″とだけ書いてある。浅月は後巷玉府が玉家の廃屋で、昔はごろつきがねぐらにしていた場所だと知っていた。雲王が目を覚ますと、目の前に容景が立っていた。「王爺、慕容一族を虐殺したのは何ゆえだ?…真実が知りたい」「慕容家は投降を装って実際は淇(キ)国再興を目論んでいた… 成敗するのは当然のこと、恥じることはない」雲王は自分が全て引き受けると覚悟し、容景と淇国の民たちの気が済むならば自分を殺してくれと言った。しかし容景はふと違和感を感じる。雲王は豪放磊落(ゴウホウライラク)だが簡単に命を捨てるはずがない。「何か裏があるな?」すると雲王は急に高笑いした。「長く生きていると多様な人物に出会うが、その中で龍の風格を持つ者は2人だけだ 1人は新帝、もう1人はそなただ…淇国太子よ」雲王は容景が淇国太子だと知っていた。確かに淇国の滅亡も慕容家の惨殺も正義とは言えないが、聡明な太子なら気づいているだろう。どんなに恨んでも不満を抱えても、時を戻すことはできない。たとえ一時の是非を正したとしても報復の応酬は終わらないだろう。「天聖の過ちを私が償うことができるなら、それこそ本望だ」雲王は自分を犠牲にして怨恨を終わらせる覚悟だったが、その時、激しく血を吐いて倒れた。「王爺!どうしました?!王爺!」「わしはもうだめじゃ…唯一の気がかりは浅月のこと…2人に縁があったらまた一緒になるが良い その時は墓に酒を…そうすればあの世にも知らせが届き、安心できる…」すると雲王は容景の目の前で息絶えてしまう。実は秦玉凝は雲王が馬車で気を失っている時、先手を打って毒針を使っていた。浅月と南梁睿(ナンリョウエイ)は後巷玉府に到着、手分けして屋敷を捜索した。やがて浅月は祖父と容景を発見したが、祖父はすでに絶命したと知る。突然の別れに祖父に抱きついて絶叫する浅月、容景は自分ではないと否定しようとしたが、その時、玉洛瑤(ギョクラクヨウ)たちが現れた。容景はこれで復讐を止めるためにも自分が殺したと嘘をつき、官兵が来る前に去ってしまう。すると遅れて南梁睿がやって来た。「爺爺…」その夜、雲王府は悲しみに包まれた。浅月は食事も取らず、ただ黙って祖父の棺に付き添っている。香荷は浅月の身を案じたが、南梁睿は妹の心痛を思うと声をかけられなかった。すると昏睡していた御者がついに目を覚まし、南梁睿は祖父をさらったのが秦玉凝だと知る。一方、官兵は容景たちを取り逃していた。秦玉凝は落胆したが、三皇子へ報告に行くため冷邵卓とは大街で別れる。しかし玉凝は突然、背後から襲われ、気を失った。秦玉凝は顔に水を浴びせられ、驚いて目を覚ました。見知らぬ部屋で拘束された玉凝、すると南梁睿がいる。「誰かと思えば…ふっ、雲浅月の取り巻きか」「誰の差し金だ?」「容景以外に誰がいると?」「お前が容景をはめたのか?」「最愛の男が最愛の肉親を殺した…この結末はお気に召したか?ふっ、面白くなりそうだ 容景は雲王が慕容家を潰したと知った、このあと狙うのは雲浅月だろうな~ 全て話したぞ、縄をとけ」玉凝は宰相の娘に手出しなどできないと高を括っていた。しかし玉凝がいる場所は望春楼(ボウシュンロウ)より遥かに悲惨な場所だという。「今日からここで死ぬほど踏みにじられるがいい…」南梁睿が出ていくと、そこへ荒くれ者の男たちが入って来た。翌朝、皇帝・夜軽染(ヤケイセン)は雲王府を訪ねた。憔悴した浅月を心配した皇帝は皇宮に帰ろうと言ったが、浅月はどうしてもこのまま残って祖父を見送りたいという。皇帝は仕方なく隠衛に雲王府の警固を任せ、帰ることにした。南梁睿が王府に戻ると、浅月はまだ独りで棺に付き添っていた。すると兄に気づいた浅月は自分のせいで祖父が死んでしまったと漏らす。南梁睿は浅月とは無関係だと訴え、実は祖父が慕容家の虐殺に関わっていたせいだと説明した。「復讐だった、奴はお前にも危害を加えるやも…」「…哥、独りにして」南梁睿は仕方なく出て行くことにしたが、秦玉凝のことは明かさなかった。彩蓮(サイレン)は林の中で鳴り矢を放った。するとしばらくして弦歌がやって来る。実は弦歌は彩蓮と別れる時、何かあったら自分の弓を放ち、この場所で待つよう伝えていた。再会を喜ぶ弦歌だったが、彩蓮は主が敵同士となった今、自分たちの関係もこれで終わりだという。「小姐(シャオジェ)からの預かり物を届けにきたの」彩蓮は小さな荷物を絃歌に託すと、後ろ髪を引かれる思いで帰って行った。弦歌は急いで主に荷物を届けた。容景はちょうど玉洛瑤と一緒にいたが、怪しまれないようその場で箱を開けてみる。すると中には浅月の髪の毛と手紙が入っていた。「殿下、もう後戻りはできませんよ?」玉洛瑤は警告したが、容景は結局、その夜、密かに隠れ家を出て行ってしまう。…薪を結び束ねれば 三星 天に在り…今宵 君と初めて会ったかの地にて見(マミ)えん容景が竹林で簫を吹いていると剣を携えた浅月がやって来た。「教えて、私に近づいたのは慕容家の事件を調べるため?」「そうだ」「私に殺されると分かっているのに来たのね?」「分かっていた、だがまだ説明していないことがある… 昔、ある少女が私を救ってくれた、その少女をずっと探し続けてきた 目に浮かぶのは下弦の月のような眉目、泉のごとく清らかな笑顔…何年もの間、心に刻みつけてきた 運命はかくも人生を翻弄する、許されない愛と分かっていても、もがくほど深みにはまって行く 感情には抗えなかった、結局、自らのせいで罰を受けることに…」「罰ですって?…笑わせないで、利用して捨てた者が自らの罰を語る資格などない 容景、まさかあなたのよう男を愛するなんて思いもよらなかった、バカだったわ 裏切られ、利用され、捨てられてようやく自分の愚かさに気づくなんて… 私への仕打ちはいい、でもなぜ家族の命まで?!」「浅月…」「浅月なんて呼ばないで!汚らわしい!」浅月は代償を払ってもらうと迫り、容景の首に剣を突きつけた。剣先は容景の首の皮をわずかに切り裂いたが、その時、隠衛たちが駆けつけ2人を包囲する。すると皇帝が現れ、容景を捕えろと命じた。容景の牢に皇帝が現れた。皇帝は容景をすぐ殺さず、まずは地獄の苦しみを味わわせると脅す。しかし浅月と一緒になれたもの容景のおかげ、皇帝は感謝していると言った。「そなたの不実のおかげで浅月は目を覚まし、朕は恋焦がれた女子を皇后とすることができた」つづく( ̄▽ ̄;)何という展開…これは脱落者、続出でしょうか?弦歌だけは裏切らないで欲しいわ
2023.01.22
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星河长明 Shining Just For You第4話その夜、夜北(ヤホク)の青夙(セイシュク)は偶然、晁(チョウ)軍の話を立ち聞き、慌てて長公主・七海怜(チーハイリアン)に報告した。実は降伏した夜北の民が運河での服務を命じられ、拒否すれば誅殺されるという。そこで七海怜はひとまず男たちを裏山へ逃すことにした。界諸嬰(カイショエイ)は皇帝の思わぬ命に困惑していたが、結論が出ないままついに督軍が到着してしまう。一方、念願叶って欽天監(キンテンカン)入りが叶った葉凌霜(イェリンシュァン)は早々に仕事を押し付けられた。実は乾象(ケンショウ)局では毎日、後宮を占い、妃たちが身ごもりやすい時を調べて献上するという。…彧修明(ユーシューミン)の後宮かぁ…凌霜は早速、占いを届けに後宮を訪ねた。妃たちはすでに全員、集まっていたが、上座にいた天妃(テンヒ)だけは興味がないとばかりに帰ってしまう。凌霜は天妃に見覚えがあり、軍営にいた女将軍だと思い出した。…なぜあの人が後宮に?見破られたかしら…凌霜の嫌な予感は的中した。逐幻(チクゲン)宮に戻った冷天曦(レイテンギ)は早速、侍女を教坊司(キョウボウシ)に向かわせ、女俘虜(フリョ)を調べさせる。すると謝雨安(シャウアン)が葉凌霜を連れ出したと分かった。冷天㬢はちょうど巡回中だった謝雨安を引き止め追及したが、葉凌霜を取り立てたのは欽天監の監正(カンセイ)・界海天(カイカイテン)だという。夜北に督軍が到着、しかしすでに夜北の男たちの姿はなかった。七海怜は疫病が蔓延して何人も死んだとごまかしたが、かくまっているとばれてしまう。すると界諸嬰が駆けつけ、夜北を守った。「俘虜の処遇は私に全権がある、ここに罪人はいない!」界諸嬰は督軍を追い返して七海怜を安心させたが、七海怜は礼も言わなかった。彧修明は天妃から界海天が俘虜を隠匿していると聞いて激怒した。しかし界海天は封印されているものの葉凌霜の星辰(セイシン)力は強大、晁にとって有利だと釈明する。「恐れ知らずの小娘め、ふざけた真似をした代償を払わせる…ふっ」凌霜は直ちに教坊司へ連れ戻された。すると皇帝が現れ、欽天監に潜り込んだ理由を聞く。凌霜は夜北で疫病神と疎まれていたせいで占星術をこっそり学ぶしかなかったが、これで堂々と勉強できると言った。「だが晁には界海天がいる、そなたの出番はない」「現時点ではね、でもいずれ界監正を超えられるわ」「いいだろう、では能力を試す機会を与える」彧修明は界監正が反対してると知りながら、わざと凌霜に星瀚(セイカン)大典の吉所選びを任せた。「期待通り占えたら褒美をください」「ただし10日以内に占えねば首をはねる」皇帝は葉凌霜に″白露(バイロウ)″と名付け、正式に欽天監の官吏とした。安堵した界海天だったが、吉所選びが条件だと聞くや顔色が一変する。弟子たちも何かあれば欽天監の全員が連帯責任を負うと嘆いたが、白露は戻るためには仕方なかったと訴えた。「とにかく試してみます、成功すれば堂々と残れますから」凌霜は早速、道具を集めて占いの準備に取り掛かった。鏡に映った占術大師・雲紋(ウンモン)は自分の出番かと思ったが、凌霜は協力などいらないという。 「界監正が本気を出せばすぐ占えるはず、私など必要ないわ、何か裏があるのよ」その夜、欽天監の主事・管宜(カンギ)は密かに樊(ハン)家の家職と接触した。実は界海天が認めた女官が欽天監に配属され、吉所選びを任されたという。「私の地位も危うくなるかも…」翌日、尚書僕射(ショウショボクシャ)・樊如晦(ハンジョカイ)は皇帝に謁見し、早速、女官について探りを入れた。しかし娘を欽天監に入れたのも、吉所選びを任せたのも皇帝だと知る。結局、皇帝の思惑は分からなかったが、その足で界監正を訪ねた。凌霜は界監正と樊尚書の話を立ち聞きした。界監正は吉所を早く決めるようせっついたが、界監正はどこを占っても地相が凶と出るとはぐらかしている。すると痺れを切らした樊尚書は皇帝が都護を置くと知って兵権を奪われたくないのだろうと指摘した。「私は厚意で忠告に来たのです、どうするかはお任せします」凌霜は皇帝に謁見、歴を献上した。「これで陛下ご自身も後宮を訪れるべき時がお分かりになります」侍衛の凌雲(リョウウン)は思わず失笑、彧修明は立つ瀬がない。「それより命じた件はどうなった?」「いくつか場所を選んだのですが、監正の同意が得られません」凌霜は界監正が兵権を守るため最初から協力する気がないようだと明かした。そこで奏上を差し出し、樊尚書が界監正をわざと挑発して皇帝との離間を図っていると報告する。「界天海が何者か知っているか?…かつて朕は敗軍の将に過ぎず、奴は大軍を率いていた 樊如晦の挑発が原因ではない、朕のあら探しをするのはいつものこと、お見通しだ」すると彧修明は凌霜に奏状を投げ返し、それより自分の首を守れと戒めた。樊如晦は次子・樊征(ハンセイ)を呼び、密かに白露を調べるよう命じた。俘虜の調査など内心、面白くない樊征だが、父の命では仕方がない。一方、凌霜は雲紋から芳華鏡の在りかを聞いた。しかし鏡が苦淵(クエン)海にあると知り、七海蕊(チーハイルイ)が心配で吉所選びどころではなくなってしまう。凌霜は翼無憂(イーウーユー)なら七海蕊の安否を知っていると気づいた。…天啓に来たら見月(ケンゲツ)楼を訪ねてくれ…凌霜は3年前、夜北を去る翼無憂から聞いた言葉を思い出し、翌日、早速、見月楼に出かけた。しかしすでに店は売却され、翼無憂も天啓を出たという。凌霜はともかく茶を飲みながら情報を集めることにした。すると近くの席にいた客人の話が聞こえて来る。_・)<星瀚大典の吉所選びの話を聞いたか?o・)<聞いたよ!選ばれたら建物を壊される、厄介な話だよエ・)<不運なのは誰だろうな?(* ゚ェ゚).oO(みんなそんな風に思っているのね~その頃、翼無憂はまだ夜北の旧居にいた。実は秋嵐(シュウラン)海で瀕死の重傷を負った葉景清(イェケイセイ)を何とか救出、介抱していたが、葉景清は助からないと分かっている。つづく
2024.06.12
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月升沧海 Love Like the Galaxy (第14話)第41話「約束の地」皇太子妃孫(スン)氏は庶民に降格、北宮送りとなった。もはや孫氏を気に掛ける者などいなかったが、程少商(チォンシャオシャン)だけが最後の別れにやって来る。「…約束を守って成婚した太子殿下と支え合いながら縁を大事にするべきでした 殿下が曲泠君(チューリンジュン)を忘れられなかったのではない、あなたが思い出させたのよ? 自分の不幸を人のせいにしないで」しかし孫氏は非を認めず、反省すべきことなどないと頑なだった。少商は話しても無駄だとあきらめ、帰ることにする。「あなたを縛り付けているのは宮中ではない、あなたの心よ?」こうして冷宮の門は堅く閉じられた。少商はようやく皇太子と曲泠君が結ばれると思ったが、驚いたことに曲泠君は梁無忌(リャンウージー)に再嫁すると知る。確かに梁州牧(シュウボク)はこれまで身を挺して曲泠君を庇っていた。凌不疑(リンブーイー)は磊落(ライラク)な梁州牧のこと、成婚後は曲泠君の子を我が子とみなしてくれるはずだという。すると少商はしみじみ子晟(ズーション)と巡り会えたことに感謝した。「自分は不運だと思っていたけれど、これまでの運をためてあなたに出会えたのね… 私は運が良く、見る目もある、ふふ」「見る目があるのは私だろう?」そんなある日、寿春(ジュシュン)に有事との急報が舞い込んだ。文(ウェン)帝は早速、寿春平定のため策を練ることにした。集まったのは凌不疑と将軍の万松柏(ワンソンバイ)、崔祐(ツイヨウ)の3人、どちらにしても寿春は挙兵に適さない土地のため、孤立させれば落とすのは早い。そうと知ってか、今回は朝臣や世家が適齢の子息たちを軍に入れて鍛えたいと嘆願する上奏が絶えなかった。とは言えひ弱な子息たちを率いるのは難儀だろう。すると成婚を控えた凌不疑が出征したいと名乗りを上げ、皇帝の逆鱗に触れた。少商は戦術会議に手作りの甘酒を差し入れるつもりだった。しかし凌不疑が皇帝を怒らせてしまい、届けられそうにない。不疑が心配で心ここに在らずの少商、そこで皇后は皇帝を説得する知恵を授けた。皇帝は将軍2人を追い返し、子晟の首根っ子を捕まえて部屋の隅に立たせた。「この青二才め!寿春などお前が案じるまでもない!」「彭坤(ポンクン)も孤城の陥落を招いた一因、戾(レイ)帝と結託していたはずです」不疑は彭坤に直接、確かめたかったが、皇帝は都でおとなしく成婚を待つよう言い聞かせた。「万が一があれば成婚できないぞ?!」少商は甘酒の差し入れを口実に崇徳(スウトク)宮にやってきた。実は皇后から皇帝に伝言があるという。「将軍は戦場へ馳せるべし、都に隠れ、怠惰であれば、子晟の徳は位負けすると指摘される…」「本当に皇后が言ったのか?」皇后は皇太子の一件から身体が衰える一方だった。皇帝もそんな中での諫言を無視できなかったが、やはり子晟を無事に成婚させなくては気が休まらない。しかし少商は子を思うなら背後から支持すべきだと諌め、親だけでなく妻も夫を支持する必要があると訴えた。皇帝は仕方なく子晟の出征を認めた。ただし彭坤を捕らえてすぐ都に戻り、必ず予定通り婚儀を上げろと命じて2人を解放する。すると少商は凌不疑の顔を両手で挟み、まじまじと見つめた。「じっくりと眺めて覚えておかなくちゃ 阿父が戻った時は目の半分と歯が白いだけで、残りは真っ黒だったから 身を粉にして戦わないで、墨と成婚するのは嫌だもの」「それほど心配ならなぜ陛下に出征を勧めたんだ?」「舅父の死と孤城の全滅はあなたの心痛であり、わだかまりでもある ご不調の皇后の世話がなければ私もあなたと敵を倒しに行っていた …子晟、あなたが彭坤を捕らえる姿を見たかった、敵討ちの痛快さを私も味わいたいもの」「はお、その言葉だけで十分だ」「早く戻ってきてね、待ってるわ、あなたが娶ってくれるのを」「最も盛大な婚礼を挙げるよ、待っていてくれ」ある夜、少商は大きな荷物を背負い、黒衣で変装して凌軍の大営に潜入した。しかし難なく将軍の天幕に到着、もしこれが敵の偵察だったらあっさり手中に落ちているだろう。少商はあきれたが、凌不疑は巡回中の兵士たちが気づかないと思うのかと笑った。実は兵士たちはわざと将軍の新婦を見逃し、それとなく将軍の天幕まで誘導してくれたという。「つまり私を笑って眺めていたの?…チッ!クソリンブーイー(ボソ」すると不疑は出発前に贈り物があると言った。凌不疑は少商を連れて櫓に登り、草原を指差した。実は皇帝に凱旋後、何が欲しいか問われ、軍営の横の土地と答えたという。不疑は少商が自分で屋敷を建てるのが夢だと覚えていた。「そこが私たちの住む屋敷になる、全て自由にしていい、今後、あの地が私たちの家だ 求めていただろう?正真正銘の自由な地を…そこなら誰にも責められず、誰からも足蹴にされない あの地で子を産み育て、老いていく、連れ添いながら…」少商は感激のあまり声が出なかった。誤解した不疑はまた勝手に決めたことを謝ったが、少商は喜んで口づけする。「気に入ったわ…」少商は自分も三叔父夫妻のように花や月を愛でながら、子晟と共白髪となり、生死を共にできると思うと万感迫る思いだった。「約束して、凱旋したら私たちの新しい家を建てると…」「はお、約束するよ」「私が危険を冒して来た理由が分かる?…贈り物を持ってきたの」凌不疑の出征の日、城門では若い未婚夫婦が別れを惜しんでいた。不疑は少商がくれた鎧をまとっていたが、少商の痛々しい指に気づいて驚く。「今後は2度と裁縫しなくていい」「鴛鴦が気に入らないの?」「鴛鴦?てっきり鶏の羽かと…」「鴛鴦よ!命を顧みない時、この羽を見れば都で待っている私を思い出すでしょう?」背後で控えていた護衛・梁邱起(リャンチゥチー)と梁邱飛(リャンチゥフェイ)は愕然となった。まさか若公主の甲冑に鴛鴦の羽が施されていたとは…。( ̄▽ ̄;)<出征したくなくなった…敵軍に笑われる「気に入らなければ羽は外していいけれど、この帷子(カタビラ)は脱がないでね 銅の糸と麻で織ってあるから、軽いけれど刀傷を防げる…兎の刺繍も入れたのよ?」「あれは兎?…鼠だとばかり」「兎よ…私の干支だから…」「そうだ、兎だ、君が兎と言えば兎だ」「…もともと兎なんですけど(ボソッ」そんな仲睦まじい若夫婦の様子を城楼から皇帝たちが眺めていた。皇帝と越(ユエ)妃は2人にかつての自分たちの姿を重ねて懐かしんだが、そこに皇后の入る隙はない。一方、少商の父も支援部隊として銅牛(ドウギュウ)県へ銅を運ぶ任務を命じられていた。程始(チォンシー)は娘が自分には襪子(シトウズ)すら縫ってくれなかったとぼやいたが、蕭元漪(シャオユエンイー)はあの恥ずかしい鎧を着たいのかと笑う。「そうだな、鶏の羽なんぞまとったらさらす顔もないw」凌不疑は必ず生きて戻ると誓い、馬にまたがった。すると少商に小さな袋を投げ渡す。中には凌府の印章が入っていた。「世の情人が結ばれるのは最も美しいことですね」皇后は若い夫婦の姿に感銘を受けたが、ふと寂しさを覚えた。…だけど私はそんな想いを味わえなかった…つづく( ;∀;) イイハナシダナーと思っていたのに、羽のせいで台無しよwwwww
2023.11.05
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皎若云间月 Bright as the moon第4話「タンポポの毒」容景(ヨウケイ)は3つの宝を探し出す条件としてとして雲浅月(ウンセンゲツ)こと李蕓(リウン)にも協力を頼んだ。…慕容(ボヨウ)家の事件には雲王爺(イェ)が関与していた、でも大理寺には当時の記録がない…見つけてくれたら3つの宝を探してやろうそこで李蕓は彩蓮(サイレン)と雲王府へ忍び込み、10年前の記録を探し始めた。何者かに屋敷を荒らされた雲王府は大騒ぎになった。結局、何も見つけられず栄(エイ)王府に戻った李蕓、しかし埃まみれの雲浅月を見た容景はその努力に免じ、明日は香泉(コウセン)山の女媧(ジョカ)廟へ連れて行くという。「都中の貴族が集まるまたとない機会だ」李蕓はお経など聞きたくなかったが、宝を探すためには仕方がない。すると翌朝、容景は持ち合わせがない浅月のため、美しい衣を届けた。栄王府の馬車が女媧廟に到着した。するとちょうど二皇子、四皇子、清婉(セイエン)公主が秦玉凝(シンギョクギョウ)、冷邵卓(レイショウタク)と談笑している。四皇子は降りてこない容景を怪しんで声をかけたが、容景は同行者がまだ中で寝ていると言った。世子にそこまで大事にされる客は誰なのか。四皇子は思わず無断で車の窓を開けると、驚いたことに雲浅月が眠っていた。容景と雲浅月の親密さにその場は気まずい雰囲気になった。すると目を覚ました雲浅月がのん気に馬車から降りて来る。「で宿はどこかしら~?」「我々は静心斎(セイシンサイ)に泊まる」容景は郡主への指導が皇帝の勅命だと知らしめ、栄王府でも共に行動していると四皇子を牽制した。四皇子は浅月の居所を訪ね、川へ誘った。そこで自ら大きな魚を槍で捕まえ、川原で焼いて食べることにする。「私が記憶喪失なのに何だか楽しそうね?…昔、私に何かしたの?」「まさか、ここでよく密会して結婚の約束とか色々なことを…」バシッ!(。-ω-)_θ☆(ノ・⊿・)ノ「はおはお、でも仲良しなのは本当だ、時々ここに来て魚を食べていた」一方、容景は雲浅月のため、久しぶりに腕を振るって芙蓉(フヨウ)焼魚を用意した。しかし迎えに行った従者・弦歌(ゲンカ)の話では郡主が四皇子と遊びに出かけて帰っていないという。容景は四皇子に嫉妬し、魚を片付けろと命じて席を立った。容景が部屋に戻ると浅月がお茶を飲んで待っていた。思わず顔を綻ばせる容景、しかし今さら何の用かと冷たくしてしまう。李蕓は彩蓮から景世子から昼食の誘いがあり、芙蓉焼魚が食べられると聞いて慌てて駆けつけていた。しかし昼はとっくに過ぎており、容景は片付けてしまったという。工エエェェ(;╹⌓╹)ェェエエ工すると容景を慕う清婉公主が差し入れを持ってやって来た。容景は体質的に食べられないと断ったが、魚を食べ損ねた浅月が勝手に菓子を食べてしまう。「せっかくのご好意ですもの~私が代わりに頂きます!」すっかり食べ過ぎた李蕓は付近の散策に出かけた。すると偶然、祈祷樹を発見する。大木の枝から垂れ下がるたくさんの願い事、李蕓はきっとご利益があると期待し、手を合わせた。「現代に戻れますように…」その時、急にたんぽぽの綿毛が飛んでくる。と同時に李蕓はなぜか急に立ちくらみを起こし、そのまま崖から転落した。李蕓が目を覚ますとなぜか容景がいた。容景はちょうど雲浅月が崖から落ちるのを目撃、咄嗟に飛び出して一緒に落下してしまったという。ここは秘密の坑道で、どうやら浅月は催情引(サイジョウイン)という毒に当たっていた。解毒するには″男″が手っ取り早いが当然、この方法は使えない。しかし半日のうちに解毒しないと血が逆流して死んでしまうという。「そんあ~まだ恋もしていないし結婚もまだ、子供も産んでいないのよ?李家が途絶えちゃうわ…」「郡主、落ち着いて、3尺の規則を…」容景は自分に近づかないよう警告したが、浅月は再び意識を失った。…脈が乱れている、あの方法しかない…容景は我が身を顧みず浅月に口づけした。そのお陰で目が覚めた李蕓は激怒したが、容景は発作を我慢しながら応急処置に過ぎないと訴える。ともかく早く脱出して改めて解毒しなければ危険だ。すると2人は偶然にも秘密の扉から黄金の像が並ぶ洞窟へ倒れ込む。その時、李蕓は容景が腕に怪我をしていると気づいて手当てするよう勧めたが、容景はそれよりどうやって脱出するかだと言った。「確かに出口が見当たらない…ここで一緒に死ぬの?」「郡主は私と添い遂げたいと?」「はあ?誰があんたと?!何としてでも出口を探すわ!あんたと心中なんてごめんよ!」李蕓は小説に良くある設定を思い出し、仏像を回せば出口が現れるはずだと言った。一か八か仏像を力一杯、押してみる李蕓、その様子を見ていた容景はしれっと別の仏像の台座にある仕掛けを回す。その時、部屋の奥にある出口が開いた。容景と雲浅月を探していた皇子たちは川原を歩いて来た2人を発見した。居所に戻った浅月は無事に解毒できたが、しばらく安静が必要だという。それにしても誰が浅月に催情引を使ったのか。容景の話では催情引はタンポポの花粉から作る毒で無味無臭だという。また花粉は触媒にもなるため、恐らく犯人は浅月に毒を飲ませ、その後に花粉に触れさせたのだろう。李蕓は確かに祈祷樹の周りにタンポポの綿毛が舞っていたと思い出した。しかし容景はあの辺りにタンポポなどないという。祈祷樹には″景世子と結ばれますように″と書かれた清婉公主の赤い帯があった。しかも浅月は祈祷樹へ行く前に公主の菓子を食べている。四皇子に追及された清婉は確かに自分が書いた願い事だと認めたが、毒については否定した。しかし四皇子は公主が差し入れした菓子から催情引が出たと教える。祈祷樹には願掛けの間にタンポポの綿毛を仕込んだ長命鎖が吊るされ、風で揺れると舞い落ちる仕掛けだった。追い詰められた清婉公主は尊厳も面目も失ってしまったと深く傷つき、今日をもって容景との全ての縁を切ると宣言する。すると翌朝、侍女が首を吊っている公主の姿を発見した。皇帝は娘の突然の訃報に心を痛めた。しかし事情が事情だけに、父親として配慮を怠ったと自分を責める。すると容景が清婉公主は誰かに陥れられ犠牲になったと訴えた。「二殿下、屋敷のタンポポは今頃、満開でしょうね?」二皇子・夜天煜(ヤテンイク)は妹が祈祷樹で願い事を縛り付けている隙を狙い、菓子の上に催情引を降りかけた。恐らく容景と一緒にいる浅月も食べるはず、2人に何か起これば自分との結婚はなくなる。二皇子は自分が皇太子になると早合点し、始祖の遺訓に従って雲家の嫡女と結婚せずに済むよう妹を利用したのだった。二皇子もまさか妹が自害するとは予想外、その場で泣き崩れた。皇帝は浅はかな息子に激怒、二皇子を寝宮にて禁足処分とする。実は二皇子は女媧廟で秦玉凝に告白していた。玉凝はあの時、二皇子が自分の気持ちが本物だと証明してみせると豪語していたことを思い出し、思わぬ悲劇に呆然とする。つづく( ̄▽ ̄;)もともと雑なのか?設定が適当すぎるw
2022.10.05
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斛珠夫人 Novoland:Pearl Eclipse第33話「謀反者の逃亡」朔日(サクジツ)の夜、方鑑明(ホウカンメイ)の予想通り金城宮(キンジョウキュウ)に左菩敦(サホトン)王・奪洛(ダツラク)が放った刺客が現れた。気配を感じた方卓英(ホウタクエイ)は真っ先に寝殿を飛び出し、ちょうど偏殿で待ち構えていた錬金師に襲い掛かる。しかし卓英の剣は錬金師の身体に刺さらず、あっけなく弾かれた。鉄の血か?>( ゚ロ゚)!! ( ˘ω˘ )<ふっ、覚えていたか錬金師は身体を鉄の壁にするという秘術・河絡錬金(カラクレンキン)を習得していた。一方、錬金師が卓英を引きつけている間に召風師は皇帝を狙った。すると方海市(ホウハイシー)が駆けつけ師匠を援護、しかし風より早く動く召風師を仕留めることは難しい。そこで卓英は皇帝に自分の剣を投げ渡し、草原の掟に従って錬金師に徒手での決闘を申し込んだ。方鑑明は海市と連携し召風師を倒した。そこへ決闘で勝利した方卓英が戻って来る。すると風前の灯となった召風師が古語で何かを伝えた。<死と戦士の栄誉をお授けください…><…旅立つがいい、あの世で会おう>卓英は召風師に止めを刺し、師匠と目配せした。陳哨子(チンショウシ)が警護団を連れて金城宮に到着した。旭(キョク)帝・褚仲旭(チョチュウキョク)は見事に護衛の任を果たした方卓英を絶賛、褒美を取らせるという。「では遠慮なく…」卓英は錬金師と召風師を仕留めたかんざしでいきなり皇帝に襲い掛かった。しかし方鑑明が飛び出し阻止、誤って師匠の肩を突き刺した卓英は呆然となったが、鑑明は心を鬼にして卓英に斬りかかる。すると卓英はその機会を利用し、寝殿から逃げ出した。「卓英などいない!私は奪罕(ダツカン)なり!」٩(¨ )ว=͟͟͞͞ ピューッ!<″中の人″などいない!方鑑明は逆賊を育てた過ちを謝罪した。すると褚仲旭はまたしても自分の身代わりになった鑑明に過去の誓いを忘れるよう告げる。「…償いは十分だ」皇帝が寝所へ帰ると、鑑明は海市に卓英の追跡を任せた。「卓英を連れ戻せ、それができぬなら殺すのだ」「師父?!」「方卓英を討て!変心した卓英を討てるのはお前だけだ、兄ゆえお前には非情になれぬ…」夜が明けた。海市は全てが師匠の計画だったと気づき、ちょうど傷の手当てが終わった師匠を訪ねる。「師父は綾錦司(リョウキンシ)の人払いをして柘榴(シリュウ)に何かを告げたあと毒を飲ませた しかも蘇姨(ソイ)まで口封じするなんて…卓英に何をさせるつもりですか? 柘榴は昶(チョウ)王府から戻り自尽した、なのに卓英は昶王殿下ではなく陛下の命を狙いました 師父、あなたがそう仕向けたのですね?なぜ柘榴を亡き者に? 目が見えず寄る辺ない女子を卓英は慈しみ、大事にしてきたのです 柘榴を失って卓英は号泣していました、涙が枯れ果てるほどに…」「それが柘榴の死の理由だ…生きていれば卓英の弱みとなる」「ふっ…師父、あなたは生涯、弱点を持つつもりはないと? 卓英と私は兄弟であり盟友でもあった、あなたは師匠であり私にとって…ゥッ… 師父は冷たい、永遠の忠誠を誓った者ですら捨て駒に過ぎないのですから…」その時、軍旅が整ったと報告が届いた。「師父…私たちを引き取ったのは殺し合いをさせるためだったと?もうあなたを信じられない…」卓英が心配していた通り方鑑明の計画は海市を深く悲しませる結果になった。↓全視聴者を敵に回してしまった師父w一方、暗殺失敗を知った奪洛は苛立ちを隠せなかった。最強の刺客を送っても皇帝と方鑑明を倒せないなら大軍で攻め落とすしかない。しかし兵を無駄死にさせるつもりは毛頭なかった。「昶王が我らと手を組み、天啓(テンケイ)を手中に収める」ただしもうすぐ冬、挙兵に適した時期ではないため、奪洛は春を待つことにした。方卓英を追っていた海市たちは山間の空き家で卓英の馬を見つけた。すると卓英が現れ応戦、海市は兄に戦いを挑む。しかし師匠が予想した通り卓英は海市に怪我を負わせると動揺、隙をついて逃げ出した。海市は黄泉関(コウセンカン)に帰営した。聞けば師匠は私情に駆られないよう暗衛営ではなく北府軍の兵に方卓英の捕縛を任せたという。その多くは符義(フギ)が率いる配下だった。この半月、奪罕は単独で動き、何度も包囲を破っては勇猛な兵が犠牲になっている。実は最近、偵察に出た10人の兵も未だ戻っていなかった。奪罕はすでに迦満(カマン)の領土に侵入しただろう。しかし異民族の地に公然と踏み込むことはできず、海市は自分と符義で小隊を率いて近づこうと提案した。「師父の命に従い、私がこの手で捕らえる…(๑•̀ㅂ•́)و✧」方卓英は草原でふと馬を止めた。大きな夕日が映し出すのは愛しい人の面影…。卓英は微笑む鞠柘榴の姿にしばし心を和ませたが、その時、馬のいななきが聞こえた。小隊を率いる海市と符義はようやく卓英の姿を捉えた。しかし前方からも黒い外套を目深にかぶった鵠庫人たちがやって来る。すると海市が独り飛び出し、卓英が合流する前に得意の弓で狙うことにした。…卓英、これは私とお前の最後の賭けだ…海市がお前との情を捨てられず、命に逆らってお前を殺さぬ方に賭けよ…お前が勝てば自由と瀚(カン)州の地が手中に入る卓英は疾走しながら師匠の言葉を思い出していた。…海市、その矢を命中させてくれ、お前なら当てられるはずだ「(グサッ!)うっ!」海市の矢は卓英に命中した。そこへ鵠庫人たちが到着、落馬した卓英を囲んでしまう。海市は仕方なくそこで馬を引き返したが、その背中を薩莉亜(サツリア)が見送っているとは知らなかった。海市は復命のため、怪我が癒えぬまま符義と黄泉営を発った。しかし道中、高熱を出し倒れてしまう。符義は赤山城の駅館で海市を休ませたが、思いがけず医者の口から海市が女子だと聞いた。そこで口封じに医者を殺し、何食わぬ顔で海市を見舞う。「私は部隊を率いて先に出発する、方大人は回復次第、追いかければいい」方鑑明は海市の怪我が長引いていると聞いて心配した。卓英を追って1ヶ月余り、早く完治させねばのちにたたることになる。そこで薬を届けるよう命じたが、自分の名前では海市が拒むと考え、陳哨子が送ったことにした。施霖は昶王を訪ね、時が満ちる前に邪魔者の方鑑明を始末するよう進言した。施霖の後ろ盾が気になる褚季昶(チョキチョウ)だが、施霖は望みを同じくする者同士、いずれ顔を合わせる日が来るとはぐらかす。褚季昶はそれ以上、追求せず、方鑑明の手下を調べ上げるよう命じた。「情けをかける余地なく排除させる」思えば汾陽(ブンヨウ)郡主・聶若菱(ジョウジャクリョウ)は度胸と知恵を欠き愚かな最期を迎えた。しかし自分の名前を出さなかったことは評価できる。褚季昶はせめてもの弔いにその死を無駄にはしないと誓った。逆徒を育てた清海公は朝議で糾弾された。褚季昶は高みの見物、すると政敵たちが清海公の処罰と霽風(セイフウ)館の取り調べを嘆願する。しかし褚仲旭は命の恩人である方鑑明をかばい、決して辞職を認めなかった。すると皇帝の立場を考えた方鑑明はあえて自分から定和(テイワ)門の守衛への降格を申し出る。褚仲旭は清海公を罰しないまま退朝を命じたが、鑑明は勝手に城門に立った。↓かえって皆に気を使わせる師父w緹蘭(テイラン)が金城宮で待っていると、不機嫌な皇帝が戻ってきた。「一部の朝臣どもが朕とあやつを引き離そうとしている、朕を孤立させるまで手を緩めぬだろう」「…陛下が孤立する日など決して訪れません、お望みなら私がずっとおそばにいます」「そうか、いつまでだ?」「最後の最後までです」するとその夜、ついに褚仲旭は緹蘭の立后を決意した。符義は殺された主・蘇鳴(ソメイ)の敵を討つため昶王と手を組んだ。そこで天啓に到着すると密かに昶王府を訪ね、実は方鑑明の弱みをつかんだと報告する。「清海公の愛弟子・方海市が吐血して倒れ、赤山城の医者に診せました 医師の見立てでは女子特有の気血両虚であると…」思えば寝床も湯浴みも必ず独り、当時は貴族ゆえかと思っていたが、正体を隠すためなら合点がいく。確かに負傷しても医官に診せず自分で処置をしていた。符義は奪罕の件と弟子の正体を偽った件が重なれば、今度こそ方鑑明は逃れようがないという。しかし褚季昶は急いては事を仕損ずると言った。「決して向こうに手の内を悟られるな、じっくり攻めるのだ」つづく(  ̄꒳ ̄)え?卓英も知っていたわけ?柘榴が犠牲になること…ここでまさかの「トロッコ問題」w
2022.10.22
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月升沧海 Love Like the Galaxy(第21話)第48話「宿願、ここに果たせり」城陽(ジョウヨウ)侯・凌益(リンイー)の五十路を祝うため、凌一族が屋敷へ到着した。凌益は15年も父子の団らんを阻んできた霍君華(フォジュンホワ)が亡くなり安堵したが、夫人の淳于(チュンユー)氏は子晟(ズーション)の父親を見る目が恐ろしかったと警戒する。「もしや君華姐姐から聞いたのでは?あなたが孤城で…」その時、激怒した凌益の平手が夫人の頬を激しく打ち付けた。「子もなせぬ不徳者めが、口を慎め!さもなければこの手で霍君華の元へ送ってやる」淳于氏は夫の仕打ちに憤った。当時、妻が行方不明でも再婚を望んだのは凌益、子をなせなくなったのは霍君華に襲われて子が流れたせいだ。「私の傷をあなたがその手でえぐるとは…やっと分かった、あなたの心には我が子のことだけ 父子で団らんすればいいわ、私は己のために別の前途を探す」一方、成婚を間近に控えた程少商(チォンシャオシャン)は自宅へ戻ることになった。本来なら凌不疑(リンブーイー)の喪が明けるまで待たねばならなかったが、3年も待てない皇帝は法要中の成婚を認める。しかし法要中ともなれば盛大な婚儀を行えず、皇后はせいぜい嫁荷を揃えてやることしかできなかった。「十分、盛大です、こんなに沢山の嫁荷、狭い部屋に入り切るかどうか」長秋宮の前には少商のための輿と嫁荷の長い列が待っていた。少商はもしや不疑が現れるのではと思ったが、皇后は子晟なら来るはずないという。「成婚前に会うのは縁起が悪いわ」少商は皇后に別れの挨拶をして輿に乗った。その時、皇后が前から歩いてくる凌不疑に気づく。「子晟?来たの?!」少商は思わず帷(トバリ)を開けて外へ出た。「どうしたの?」「家まで送る」「成婚までは会えないそうよ…私に話があるの?」しかし不疑は黙ったまま視線を落としてしまう。そこへ皇后がやって来た。「子晟、情けないわよ?成婚すれば毎日、会えるのだから…少商、早く行きなさい」少商は皇后に促され、輿に戻るしかなかった。…凌不疑、やはり話してくれないのね…結局、不疑は何も打ち明けられないまま、黙って少商の輿を見送った。その夜、曲陵(キョクリョウ)侯府では四娘子の成婚を明後日に控え、少商が花嫁衣装を試着していた。当日は長い間、重い衣装や冠をつけ続けるため慣れておかなくてはならない。程姎(チォンヤン)は皇后が特別にあつらえた豪華な冠をながめながら、実は蕭元漪(シャオユエンイー)も一式、準備していたと明かした。しかし少商は姎姎が嫁ぐ時に使えるという。「私が宮中にいる間、堂姉が家を支えた…堂姉がいれば娘を失っても阿母は寂しくない」「そんな…嫁ぐだけよ、失うなんて言わないで」「女が嫁げば残りの半生を夫に託す、夫に危険があれば私も戻らない」そんな娘の覚悟を程始(チォンシー)と蕭元漪が回廊で立ち聞きしていた。「嫋嫋(ニャオニャオ)のそばに戻って1年も満たぬ、埋め合わせをする前に嫁いでしまうとは…」程始は寂しさで涙が止まらなかったが、蕭元漪は娘の言葉がまるで惜別のようで心がざわついた。同じ頃、凌不疑は腹心の梁邱起(リャンチゥチー)と梁邱飛(リャンチゥフェイ)の3人で城陽侯府を訪ねた。城陽侯の五十路の祝いだというのにどこか緊張感に包まれる宴席、すると不疑は外套を羽織ったまま早速、父に祝いの品を渡した。ひとつは銭が詰まった箱、しかしもうひとつの大きな箱から男の生首が現れる。「廷尉獄の裏庭の花職人だ… 数日前、城陽侯は自ら3万銭を渡し、独房内に花びらを吹き散らせたな? だから彭坤(ポンクン)は死んだ、今日は渡した銭と共に首もお返ししよう 満足いただけないなら、孤城三千の亡魂に代わって申し上げる ″享年五十″の祝いをな!」一方、少商はそろそろ城陽侯の祝宴が始まる頃だと気づき、冠を外した。「蓮房(リエンファン)、祝いを用意して符登(フードン)に届けさせて、今すぐよ、急いで」凌益は息子の暴挙に深く落胆した。「確かにお前の母には負い目がある、だが祖先の位牌をよく見てみよ? 教えてくれ、お前は凌氏一族なのか霍一族なのか?」「…本当に知りたいと?」「本当だ、今日、お前の剣で死のうとも疑念を晴らしたい」「では疑念を晴らさず殺すとしたら?」凌不疑の言葉が引き金になり、宴席にいた客人らは一斉に外衣を脱ぎ捨て、隠し持っていた剣を抜いた。すると凌益もゆっくり立ち上がり、剣を抜く。「せがれよ、ここまで生き抜いて来た私が退路を残していないと思うか? …この父のために疑念を晴らす気はないと?」「黄泉にて霍氏一族が語るだろう、お前が死ぬべき理由を…」一方、門前払いされた符登は急ぎ屋敷に引き返していた。「女公子、城陽侯の私兵に遮られ礼品を渡せませんでした 招状がなければ入れないと、屋敷から物音ひとつ聞こえなかったので戻りました」凌不疑は外套を脱ぎ捨て、隠し持っていた剣を梁兄弟に投げ渡した。すると私兵たちも宴席に雪崩れ込み3人を包囲、門を閉じてしまう。宴席は修羅場と化した。窓紗に映る人影は激しく争い、やがておびただしい鮮血が飛び散る。一方、少商は花嫁衣装のまま部屋を出た。しかし中庭で家族が待ち構えている。実はすでに外出禁止令が出て軍営が交代していた。「何か知っているの?」「凌不疑が大変なの、行かないと…彼に関わることなら放っておけない」蕭元漪は帝后に任せるようなだめたが、少商は例え非力でも一度きりの人生で何かを成し遂げたいという。少商は馬で城陽侯府へ急いだ。しかしすでに屋敷への道が封鎖されている。その時、軍装した家族が駆けつけ、衛兵を阻んで道を開けた。「嫋嫋!早く行きなさい!」城陽侯府は静寂に包まれた。亡骸で埋め尽くされた寝殿、凌益は薄明かりの中、決着がついたことを確認する。しかしその時、部屋の片隅から凌不疑が血を流しながら現れた。「父親殺しの汚名を着せられるぞ…」凌益は万が一に備え、皇帝に知らせていた。「何か勘違いしているのでは?お前の子とは従兄・阿狸(アリ)のことか? だったら人違いだ…阿狸はお前に殺された! お前がその手で城門を開け、敵を入城させ、骸を城壁に掛けさせた もう忘れたのか? 姑 父 大 人 !」「まさか…信じられぬ…なぜ知っている?お前は誰だ?!」「まだあるぞ…お前がその手で阿父を殺したことも知っている 叔母と都へ戻った時から決意していた、いつかお前の命を取ると… そして今日がその日だ!」「凌不疑…どちらにしても名義上は私の息子だ…独断で私を殺せば自分の命が代償となる 誰もお前を守れぬぞ!」すると不疑は血まみれの顔で不気味に笑った。「雍(ヨウ)王、小越(ユエ)侯、彭坤…一歩一歩、進みながら今日に至った 霍氏の敵を討てたら死して悔いなし…」凌益は焦って不疑の胸に剣を突き刺したが、不疑は決して退かなかった。凌不疑に徐々に迫られた凌益は足を取られて後ろへ倒れた。背後ではようやく梁兄弟が立ち上がる。「それから…」実はあの時、孤城にいた幼い不疑は偶然、父が凌益に殺される様子を目撃していた。不疑は父の無念を思いながら、ついに凌益の胸に剣を突き刺す。「…私の姓は凌ではない、私の姓は霍だ」その時、不疑が剣を深く差し込み、凌益の身体を貫く鈍い音が聞こえた。「私の名は…霍…無(ウー)」「グハッ…」「…傷(シャン)」凌不疑は霍翀(フォチョン)の息子・霍無傷だった。宿願を果たし万感胸に迫る無傷、その時、突然、門が開き、少商が現れる。つづく( ꒪ͧ⌓꒪ͧ)ウワッ!かなりトラウマになりそう〜だってウーレイが上手過ぎるのよせめてパンダのシャンシャンだったら良かったのに…( ;∀;)って何が?w
2023.11.25
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月升沧海 Love Like the Galaxy(第25話)第52話「歳月を経て」15年前の孤城陥落の真実と凌不疑(リンブーイー)の出自が明らかとなり、大きな節目を迎えた宮中。文(ウェン)帝は宣神諳(シュエンシェンアン)の希望を叶え廃后とし、皇太子も降格となった。これで越姮(ユエホン)が皇后に冊封されれば、三皇子は滞りなく東宮へ入れるだろう。一方、程少商(チォンシャオシャン)は恩人である宣皇后に終生、付き添うと決めて長秋宮へ戻った。淡々と流れていく歳月、その頃、北西に駐留する霍不疑(フォブーイー)は再び殺戮に明け暮れていた。しかし今でもその右腕には少商の弦がある…。そんなある日、少商は父からの書簡を受け取った。程家で慶事があり、二兄・程頌児(チォンソンアル)と万萋萋(ワンチーチー)、堂姉・程姎(チォンヤン)と班嘉(バンジア)、そして使用人の蓮房(リエンファン)と符登(フードン)、さらに姎姎の父で二叔父・程承(チォンチョン)と青蓯(チンツォン)が成婚したという。やがて二兄夫妻は双子に恵まれた。長秋宮でも嫁ぐ五公主を送り出し、穏やかな日々が続く。こうして5年が経った。正月の夜は雪となった。宣皇后は今年も家に帰らない少商を心配したが、少商の話では程家でそれぞれの夫婦に子が生まれ、自分が戻っても座る場所さえないという。すると宣皇后は新年の願い事で少商が良人と出会い、嫁いで子を産む姿が見たいと言った。しかし少商は一生、嫁ぐつもりはないという。「まだ吹っ切れないの?」「いいえ、ただ許せないだけ…縁が切れて別れたのです、もう有り得ません」宣皇后は少商と子晟(ズーション)の復縁を願っていたが、やはり少商は簡単に自分を曲げることはない。「ではこう願うわ、私の死後、あなたの余生に同伴がいるようにと…」「縁起でもない…」「少五が嫁いで行った今、1番の心残りがあなたなの…あ、見て、こんなに雪が降って来たわ」宣皇后は寝殿に入ることにしたが、その時、ついに倒れてしまう。孫(スン)医官は宣皇后の余命を早くて1ヶ月、長くても春までと診断した。しかし頑なに皇帝と越皇后の見舞いを拒み、長秋宮を明け渡したいと申し出る。「本来なら東海(トウカイ)王と属地に移り、東海太后と名乗るべきだと…」少商は越皇后に長秋宮を返したい旨を伝えたが、越皇后は住み慣れた永楽(エイラク)宮を移動したくないと断った。「呼び名も変えなくていい、これ以上、蒸し返すことがあれば私を不快にさせるだけよ」「越皇后に感謝します」 袁慎(ユエンシェン)が回廊で待っていると少商がやって来た。この5年、袁慎は宮中に留まる少商に付き添って縁談を全て断って来たが、待っていた甲斐はあったのだろうか。「少商、宣皇后も望んでいる、伴侶を持つ気はないか?ならば私を選べ 家柄も合うし、互いに伴侶が必要だ、いっそ宣皇后を安心させるため一芝居、打つのはどうだ」「袁善見(シャンジエン)、あなたの想いには応えられない」「少商、そなたの縁談が潰れてばかりなのは目先が利かぬからだ 私は両親からも放任されて育った、自由を望むなら都で私ほど自由な者がいるか? 我らこそ最適なのに私の望みに応えられぬと?」袁慎は互いに生まれながら誰にも関心を持たれず、病友であり盟友でもあると訴えた。利が一致すれば互いに信頼し合い、裏切ることはないという。「私は某人より自分を大切にするし、危険にも近寄らぬ、ゆえに私の方が最適だ」病床の宣皇后が薬を飲んでいると、少商が戻って来た。何やら考え事をしているのか、衝立て越しでも上の空だと分かる。実は皇帝は余命わずかとなった宣皇后のため、北西にいる霍不疑を呼び戻していた。…近いうちに到着する…複雑な面持ちで寝殿に入った少商、確かに宣皇后の言う通り、わだかまりに捉われていては更なる苦しみに陥ってしまうだろう。…過去は過ぎ去るもの、今と将来を大切にして、そのためにはわだかまりを突き破る必要がある…少商は袁慎に自分の心に″彼″がいても娶るのか聞いていた。…待つよ、そなたが奴を忘れるまで待ち続ける、いつか振り向いてくれるまで…「皇后、皇宮を出る許可をください、袁善見と婚約しようと思います」霍不疑が5年ぶりに宮中へ戻った。ますます義兄に似て来た子晟の姿に思わず目が潤む皇帝、しかし軍装でも生傷が絶えない身体だと察しがつく。「なぜ1番の精鋭を都に残したのだ?皇宮を出られない少商には必要ないであろう?」不疑は梁邱起(リャンチゥチー)を少商の護衛のために残し、梁邱飛(リャンチゥフェイ)だけをそばに置いていた。邱飛の報告では5年前、王(ワン)将軍が戾(レイ)帝の残党に襲われ、若主公が救出に向かうも敵は死士、多勢に無勢で負傷したという。「袁善見の父親が兵を率いたはずだが?」「分かりません、そして2年も経たぬうちに若主公は蜀へ討伐に行きました その時、襲撃に遭った程頌(チョンソン)将軍を…」「もういい」不疑は邱飛の話を遮ったが、皇帝は凱旋した程頌が褒美をもらいに来ない理由が分かった。「少商は知っているのか?…もしや兄を助ければ復縁できると期待したのか?」「…私は過ちを犯しました、少商の許しなど求めるはずがありません 少商に知られたら、かえってもっと疎まれてしまうでしょう」皇帝は子晟に下心がないと知って安堵し、今後は度田令を監督している皇太子を補佐して欲しいという。実は少商は5年ぶりに皇宮を出ていた。袁善見との縁談を進めるためで、近々、成婚するという。「お前はどうする?崔祐(ツイヨウ)さえ正室の座は空けて妾を取ると決めたぞ?」「皇父、ご心配には及ばぬかと…」皇太子は北西の軍営で駱済通(ルオジートン)が献身的に子晟の面倒を見ていたらしいと伝えた。噂では駱済通が都へ戻って子晟と成婚すると宣言しているという。しかし不疑は憤慨、成婚などあり得ないと否定した。霍不疑は阿飛と宮中を後にした。これから直ちに霍氏の墓と祠堂を修繕し、妻は娶らず子もなさぬと祖先に報告するという。(´ ・ω・)<若主公~それってどうみても吹っ切れてないっていうか~するとちょうど外出していた袁慎たちが城門に入って来た。袁慎は馬を降りて少商を馬車から降ろしたが、その時、2人は子晟の姿に気づいて呆然となる。しばし見つめ合ったまま立ちすくむ少商と不疑、袁慎はただ黙って待つほかなかった。霍不疑は意を決して少商に向かって歩き始めた。すると少商はどう接したら良いのか分からず、咄嗟に袁慎の馬に飛び乗ってしまう。その時、不疑がまたがった少商の足を支え、大事そうにあぶみに乗せた。まるで第9話で初めて馬にまたがった少商の足をあぶみの中に通してくれた時のように…。「感謝します、霍将軍…でももう昔の程少商ではない、あぶみがなくても乗れる」少商は馬を駆けて去って行った。安堵した袁慎だったが、霍将軍が戻ったからには少商を諦めないつもりだと疑う。「少商の中で私はお前に及ばぬ、しかし少商の性分ならお前を選ぶとは限らない」しかし不疑は黙ったまま拝礼して帰って行った。北西の賈(ジア)家に嫁いだ駱済通が長秋宮に挨拶にやって来た。宣皇后と少商は都に戻った駱済通を歓迎したが、どこか言葉の端々に棘がある。「あなたは幸運ね、私なんて不遇の身… 夫が重病で四六時中、世話ばかり、再嫁を狙っていると陰口まで叩かれたわ だから私も意地になって夫の死後も賈家の君舅君姑に奉仕した でも子晟にも前を向けと言われたの 厳しい人だけれど私には寛容で、私だけ天幕に入らせ、酒や食事を届けさせた その後、天幕に入れなくなったけれど、私に苦労させないためね」駱済通は恐らく子晟が都で求婚してくれると自慢したが、宣皇后も少商も当てつけだと分かった。「…皇后が病となり吉事に水を差しましたね?」「いいえ、そういう意味では…」「分かっています、皇后が在位中は駱家を何度も庇護してきました 恩人の前で恨み言など言えるはずない、もし本音なら畜生も同然です」そこへ翟(ジャイ)媪(ウバ)がやって来た。「駱娘子、早く実家へ戻らないと…先ほど実家から連絡がありました 霍将軍が2台分の嫁荷に加え、巨大な銅鏡を届けて長老に命じたそうです ″駱娘子の嫁ぎ先をすぐ探すように″と…」「銅鏡?鏡とはね…」少商は思わず失笑した。翌日、霍不疑が屋敷へ戻ると駱済通が待っていた。駱済通は北西で連れ合った自分への仕打ちに憤ったが、不疑は確かにかつて連れ合いがいたことはあったという。あの時、駱済通は負傷した子晟の意識がないのを良い事に勝手に介抱していた。結局、すぐ軍営から追い出されたが、駱済通は外に住み着き、再び忍び込んで洗濯をしたという。「私は顔も見ていない 都へ戻る時も軍の後ろを追って来たそなたとは話もしていないぞ? それのどこが連れ合いだ?」「でも3年前、天幕にも入れてもらえなかった私が今はこうして顔を見てもらえます」駱済通は妾でも構わないと食い下がった。すると不疑が馬から降りて来る。実は不疑はとうに気づいていた。駱済通の亡夫・賈七郎(ジアチーラン)は病弱だったが、20歳の若さで死ぬほどの病ではない。「お前が謀って殺したな?その方法は言うまでもない」子晟が北西に駐留すると知った駱済通は夫の薬湯に毒を盛っていた。「…程少商のため?だから私を拒むの?」「程少商がいなくてもお前に情はなかった」つづく(ˇ꒳ˇ *)今回もいい話だったわ〜でもここにきてラクダさんが闇堕ち?せっかくしみじみしてたのにな〜
2023.12.09
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风起霓裳 Weaving a Tale of Love第23話「皇太子の噂」才人・武媚娘(ブメイニャン)が夜伽から戻ると、松涛(ショウトウ)がひざまずいて許しを請うていた。実は武媚娘は盂蘭盆会(ウラボンエ)の衣を急かせる松濤を怪しみ、警戒していたという。そこで図案の相談に来た豆子(トウシ)との話を聞かせて玉柳(ギョクリュウ)にあとを付けさせたところ、楊(ヨウ)妃に知らせたと分かった。松濤は楊妃に弱みを握られ脅されたと涙ながらに訴え、今回だけは見逃して欲しいと哀願する。しかし武媚娘は裏切った者をそばに置けないと退け、懲罰だけは免じて追い出した。「主従の関係はこれまでよ」一方、皇帝の寵愛を失った楊妃は皇太子の弱みを探るため身辺を探らせていた。すると皇太子が尚服局に移った豆子を目にかけ、側仕えの王伏勝(オウフクショウ)よりも親しげだと知る。楊妃はこれに目をつけ、皇太子が男色だという噂を流すことにした。尚服局では楊妃から板打ちの罰を受けた大家・卓錦娘(タクキンジョウ)が静養中だった。韋(イ)夫人の衝立を担当している鄧七娘(トウシチジョウ)は師匠に図案を見せに行ったが、自分には難し過ぎるため図案を変えるよう命じられてしまう。七娘が肩を落として采章(サイショウ)署に戻ると、繍女たちはやはり駄目だったのだと噂した。すると七娘は居たたまれなくなって出ていってしまう。(*´・ω・)<やっぱり教えてもらえなかったのね~(*´・ω・)<西市の光景を刺繍するなら高度な無錫(ムシャク)刺繍の技が必要だもんね琉璃(ルリ)は七娘を追いかけ慰めたが、七娘は自分に才能がないだけだと卑下した。琉璃は仕事の合間を縫って肌着を作り、約束通り裴行倹(ハイコウケン)に贈った。裴行倹は喜んだが、他の男の肌着を作らないよう釘を刺し、男女の別は必要だと念を押す。相変わらず実感がわかない様子の琉璃、そんなある日、皇太子の噂を聞いた武媚娘が東宮を訪ねた。実は近頃、皇太子が男色だという噂が流れ、収まる気配がないので忠告に来たという。「特に寵愛する者と東宮で密会していると…豆子のことでしょう」武媚娘と裴行倹は慎重を期し、豆子との接触を控えるよう諫言した。しかし李治(リチ)は避ければかえって図星だと言われると退け、豆子に大事な相談があるので邪魔されたくないという。楊妃はこのひと月の間、毎朝、薬湯を煎じて甘露之殿に届けた努力が功を奏し、皇帝の怒りが解けた。久しぶりに息子の曹(ソウ)王・李明(リメイ)と散策に出かけた楊妃、どうやら皇太子の噂が皇帝の耳にも届いているという。しかし李明は噂だけでは致命傷にならないため、裏付ける現場を皇帝に見せるべきだと訴えた。李明は東宮に潜入させた間者・元朗(ゲンロウ)に命じ、嘉徳之殿の香炉に密かに香を仕込んだ。その頃、裴行倹は尚服局に琉璃を訪ね、これ以上、皇太子に会わないよう説得する。「皇太子が男色だという噂があり、君が皇太子の想い人だと言われている」「私?!…でも女子の私が好きなら男色じゃないわ?ふふ」「お前と来たら…何度も言っているだろう?」「覚えているわ、宮中では細心の注意を払い、太子殿下と距離を置くこと 私の素性のせいで太子殿下を巻き添えにしないため…でしょう?」しかしそこへ豆子を迎えに王伏勝が現れた。「裴将軍の話は良く分かりました、心配せずとも上手く処理しま~す」皇太子はなぜか急に身体がほてっていた。そこへ王伏勝が豆子を案内し、仕事に戻ってしまう。すると皇太子は内侍に話を聞かれないよう豆子を近くに呼んだ。元朗はその隙にまた香炉に何やら仕込み、逃げるように出て行ってしまう。「太子殿下、まだ期限まで8日ありますよ?」「尚服局では動きが取れぬだろう?だからここで絵を描け」琉璃は早速、書卓に向かうと、ふと近くの香炉から漂う珍しい香りに気づいた。皇帝は品行方正な皇太子になぜ急におかしな噂が流れたのか困惑していた。公務に付き添っていた楊妃はあえて何も言わなかったが、そこへ曹王がやって来る。「母上、東宮にはもう行かれたので? 暑さで食欲がない陛下のため、母上は東宮の池で蓮の実を採って冷たい汁物を作られると…」すると喜んだ皇帝は皆で一緒に東宮へ行こうと言った。実はその頃、琉璃は頭がぼうっとなり、急に身体に力が入らなくなっていた。そこで一旦、戻りたいと断り席を立ったが、皇太子にここで休むよう引き止められてしまう。ちょうどその時、裴行倹が皇太子に謁見に来た。しかし元朗に取り込み中だと追い返されてしまう。嫌な予感がした裴行倹は武才人にすぐ東宮へ来て欲しいと伝言を頼んだ。しかし武媚娘はちょうど御花園まで足を伸ばしていたため、玉柳が伝えるまで半刻もかかってしまう。一方、嘉徳之殿に王伏勝が戻ってきた。元朗は皇太子から誰も入れるなと命じられたと立ちはだかったが、王伏勝は自分を止めるとは何事かと呆れて入ってしまう。すると王伏勝が慌てた様子で外へ出てきた。王伏勝は元朗に豆子がいること内密にするよう命じたが、その時、突然、皇帝一行がやって来る。その頃、知らせを聞いた武媚娘は左衛副率・莫坤(バクコン)の案内で急ぎ裏門から東宮に入っていた。楊妃と李明は慌てふためく王伏勝の様子を見て計画が成功したと確信した。すると王伏勝は平伏し、皇帝を足止めする。「申し訳ございません!誰にも知られてはならぬと太子殿下のご命令で… 特に陛下には知られたくないと」激怒した皇帝はすぐ皇太子のもとへ案内するよう命じた。しかしなぜか皇太子は裏庭にいるという。皇帝たちが裏庭へ行くと、使用人たちが何やら懸命に働いていた。「陛下、あれは何でしょう?」「仕えられる身のそなたは知らぬのだな、あれは製糸の作業だ かつて長孫(チョウソン)も糸を繰っていた」すると皇帝は使用人たちの中に皇太子の姿を見つけた。長孫皇后は生前、養蚕を重視していた。李治は当時の幸せだった日々を思い出し、母と同じように自ら蚕を育て、皇太子妃に織らせた絹地で衣を仕立て、皇帝の誕辰祝いに贈るつもりだったという。皇太子の手の平はあかぎれで痛々しかった。皇帝は善良すぎる我が子に気骨がないのではと心配したが、杞憂だったと涙する。一方、元朗は香炉に仕込んだ香を慌てて回収し外へ出た。しかしちょうど嘉徳之殿にやって来た裴行倹と出会い頭にぶつかってしまう。「何を慌てている?大丈夫か?」「はい、一足違いで太子殿下はお出かけになったようです」元朗は逃げるように走り去ったが、裴行倹はぶつかった拍子に元朗が隠し持っていた香を盗んでいた。武媚娘は皇帝に挨拶した。実は退屈しのぎに皇太子妃と一緒に絹織を学んでいたという。そこへ皇太子妃が絹地を持って来た。皇帝は上質の絹だと喜んだが、絹織の技を教えたのが皇太子の寵愛するあの豆子だと知る。豆子は噂に違わず美しい顔をしていた。武媚娘は盂蘭盆会で長孫皇后の礼服を縫った者だと紹介し、自分たちの覚えが悪いため何度も呼び寄せてしまったとかばう。しかし琉璃は才人の謙遜だと否定し、妃たちが労苦をいとわず、短い間で複雑な技を身につけたと賞賛した。すると皇帝が急に側仕えの高全(コウゼン)を呼ぶ。つづく(^ꇴ^)李明、懲りないよね〜少しは学べと…wってか皇太子妃いたんだ?
2023.07.12
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斛珠夫人 Novoland:Pearl Eclipse第35話「二人だけの婚礼」方鑑明(ホウカンメイ)は海市(ハイシー)に愛を告白、その夜、2人だけの婚礼を挙げた。「まるで夢を見ているみたい…」海市はそばにいられるだけで満足だと諦めていたが、まさかこんな日が来るとは信じられないと感激する。そして夫婦の杯を交わし、2人は初夜を迎えた。「怖いか?」鑑明は戸惑う海市に優しく口づけをしようとしたが、その時、身体に異変が起こる。皇帝の身に何か起こったのだ。「どうかしたの?」海市が心配そうに起き上がると、鑑明は思わず点穴して海市を眠らせてしまう。「…すまない」すると鑑明は寝衣のまま寝所を飛び出し、中庭で激しく血を吐いた。その頃、愈安(ユアン)宮では旭(キョク)帝・褚仲旭(チョチュウキョク)が緹蘭(テイラン)に勧められ汁物を飲んでいた。すると突然、扉が開き、方鑑明が飛び込んで来る。「…毒だ!」鑑明は耐えきれず膝をつくと、褚仲旭が駆け寄った。「鑑明!」方鑑明は注輦(チュウレン)の未生花(ビセイカ)の毒に当たっていた。実はこの毒には解く術がない。しかし李(リ)侍医の応急処置と鑑明の人並み以上の忍耐力で持ちこたえていた。褚仲旭は激しく取り乱し、何としてでも鑑明を助けると騒ぎ出してしまう。すると鑑明は外へ漏らさぬよう諌言した。「朝廷に異変が起こります…陛下、淑容妃にも当たらぬように、何か事情があるのでしょう …李侍医、あと何日生きられる?」「普通の人なら3日以内に命を落としますが、武術に長けた清海公ならひと月もつやも…」「…ありがとう」鑑明が昭明宮に戻ると、海市は何も知らず穏やかに眠っていた。…私への失望と恨みを抱き、幾千里も卓英(タクエイ)を追ったのだな…そして病の身で独り赤山(セキサン)城に長く留まり、また不眠不休で走り続け帰京した…今度こそ穏やかな日々を送らせてやりたかった…だが結局、それも叶わぬ鑑明は海市の頬に触れながら、そっと涙を流した。緹蘭は決して毒を盛っていないと否定した。確かに弟の命と引き換えに脅されたが、要求に応えなければ自分に会いに来ると考え、敵を知ってから策を練ろうと思ったという。褚仲旭は到底、納得できなかったが、その時、侍女・碧紅(ヘキコウ)が独断で毒を盛ったことを認めた。何も知らなかった緹蘭は呆然、実は王子は碧紅の恩人で、どうしても王子を守りたかったという。すると碧紅は淑容妃と碧紫(ヘキシ)を巻き添えにしないよう、いきなり柱に頭を打ちつけ、絶命した。一方、皇弟・褚季昶(チョキチョウ)は方海市が一夜で昭明宮に戻ったと知った。海市がなぜそんなに急いで帰ってきたのか分からなかったが、とりあえず誕生日の招待状を送るよう指示する。「方家の小娘が帰って来たのだ、明日の誕生日にかこつけ陛下に請う 方海市を我が王府へ派遣するようにな」褚季昶は海市を見張らせるよう命じたが、卓英が残した密偵が全て聞いていた。緹蘭は碧紅の死を目の当たりにし、衝撃のあまり気分が悪くなった。心配した穆徳慶(ボクトクケイ)は皇帝の許可をもらって急いで侍医を呼んだが、懐妊だと分かる。褚仲旭は混乱し素直に喜べず、緹蘭に即刻、禁足を命じて足早に出て行った。御所に戻った褚仲旭は紫簪(シサン)の護身府を握りしめ、肖像画の箱を開けた。「紫簪…私は鑑明も失ってしまう、どうすればいい?せめて緹蘭は守ってやりたい」そこへ穆徳慶がやって来る。褚仲旭は手で顔を覆い、しばし涙が止まるのを待ってから顔を上げた。すると穆徳慶は愈安宮と金城宮の護衛を全て確認し、これでわずかな情報も漏れないと報告する。明日はいよいよ昶王の誕生日、褚仲旭は何事もなかったかのように予定通りだと指示した。方鑑明は海市の手を握りしめたまま朝を迎えた。すると回廊から陳哨子(チンショウシ)の声が聞こえる。「清海公…」鑑明は海市の布団を直すと、報告を聞くため外へ出た。陳哨子は清海公に昶王府から届いた海市宛の招待状を渡した。密偵からの情報では小公子を王府に置きたいと皇帝に嘆願する計画があるという。「何でも小公子のことを″方家の小娘″と言ったとか…」しかし褚季昶は皇帝の唯一の弟で恩人、証拠もなく二心があるとは伝えられなかった。鑑明は軽率に動けばかえって警戒されると考え、ついにある決断を下す。指示を聞いた陳哨子は動揺を隠せなかったが、これも海市の命を守るための苦肉の策だった。海市が目を覚ますと方鑑明の姿はなかった。すると身体は自然と卓英の部屋へ向かう。卓英の部屋はそのまま残されていたが、机に剣と令牌が置いてあった。海市は改めて卓英がいないことを実感し、霽風(セイフウ)館で兄弟として初めて顔を合わせた日のことを思い出す。そこへ鑑明がやって来た。鑑明は薄着の海市に外套を着せてやると、卓英を追わせたことを恨んでるかと聞く。確かにこんな形で卓英と別れるのは不本意だが、海市は今回の帰郷で鵠庫と大徴の長年の紛争を平定できるのだと納得していた。「卓英の願いが叶うのね…」方鑑明は海市のため朝餉を準備していた。「お前の粥には及ばぬが…食べてみろ」海市は鑑明に粥を食べさせてもらいながら、昨夜の失態を思い出した。「昨夜は…その~疲れ過ぎていて先に寝てしまったわ… 今日は大丈夫、必ずあなたに尽くすから」しかし鑑明は何も言えず、今日は皇帝が馬場へ昶王の鷹を見に行くと教えた。「共に行くか?」「行くわ!…じゃあ着替えないと」海市は鑑明の計画など何も知らぬまま幸せを噛みしめていた。海市が着替えて出てきた。すると方鑑明は今日が最後の男装だという。「流觴(リュウショウ)方氏の主は代々、天寿を全うできぬ 添い遂げられぬ時が来たら今日のことを後悔するか?」「しない、今も今後もずっと後悔などしないわ そんな日が来たら最後の一瞬まであなたと共に戦う、夫だもの」鑑明は思わず海市を抱きしめ、紐を通した玉板指を首からかけた。褚季昶は慣例に従い24羽の鷹を用意した。そこで鷹を一斉に放ち、褚仲旭が白翎青背鷂(ハクレイセイハイヨウ)を狙って見事に射止める。大臣たちはこれで天候に恵まれる年になると喜んだが、その時、警護していた陳哨子めがけて鷹が急降下してきた。海市は真っ先に気づいて陳哨子の元へ駆け出すと、方鑑明はちょうど海市の冠と鷹が重なったところで矢を放つ。すると弓矢が海市の冠を外し、鷹を射抜いた。海市は長い髪がほどけ女の姿を晒し、動揺してその場から動けなくなる。実は陳哨子は後ろ手に雛鳥を隠し持ち、鷹に襲われるよう仕組んでいた。褚仲旭は海市の姿を間近で確認することにした。すると海市の首から方鑑明の玉板指がぶら下がっている。それは鑑明が父からもらった唯一の贈り物で、どんなに譲って欲しいと頼んでも断られた品だった。褚仲旭は鑑明の意図に気づき、いきなり海市の肩を抱いて連れ帰る。驚いた大臣たちは男装して皇帝を欺いた海市を厳罰に処すよう嘆願したが、褚仲旭は自分が海市を霽風館に置いたと嘘をつき、引き上げて行った。褚仲旭は海市を連れて金城宮に戻った。すると海市はひざまずき、方鑑明を守るため皇帝を欺いた罪を認めて罰を請う。「私1人の過ちです」「…方海市、方鑑明を巻き添えにせず生き長らえたいなら、今から目が見えず口が利けぬ者になれ 誰か!方海市を偏殿へ連れて行け!」つづく( ;∀;)長かった…ここまで長かったわ~w
2022.10.29
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月升沧海 Love Like the Galaxy (第19話)第46話「疑念」楼犇(ロウベン)の暗示で父が鉱山にいると突き止めた程少商(チォンシャオシャン)。こうして曲陵(キョクリョウ)侯・程始(チォンシー)は無事に救出され、屋敷へ戻った。「銅牛(ドウギュウ)県の件で家族まで巻き込むとは思わなんだ…」あの日、程始は顔忠(イエンジョン)と相談の上、陥落した場合に備えて精銅を城外に隠すことにした。しかし道中で馬忠(マーロン)の襲撃に遭い精銅を奪われ、顔忠一家は殺されてしまう。程始は応戦しながら逃げ出し、草むらで気を失った。やがて小屋の中で目を覚ますと楼犇がいたという。楼犇は鉱山で働く民が程始を救ってくれたと説明、銅牛県は李逢(リーフォン)の裏切りで陥落したと知った。何でも李逢は顔忠と程始が精銅を携え投降したと罪をなすりつけたという。驚いた程始は帰還の機会を探ったが、楼犇から止められた。馬栄の偵察に見つかれば殺されることは必至、釈明の機会を失えば程家も皆殺しになってしまうという。「汚名をすすげばまた家族団欒ができると…それで小屋に身をひそめていたんだ」それにしても楼犇はなぜ程始を見逃したのか。まだ良心が残っていたのか、それともかつて弟と婚約した嫋嫋(ニャオニャオ)への情けなのか。今となっては程始にも分からなかったが、その時、息子が目を覚ましたと聞いた老夫人が駆けつけた。母は相変わらず大袈裟で馬鹿力だった。息子の傷が癒えていなくてもお構いなし、大泣きしながら叩きまくる。「この親不孝者!お前を助けるためにへそくりまで使ったよ?! あの宝物がなければお前の娘はどうやって路銀を工面できたと?!」すると姑にいつも辛辣な夫人がなぜか母を立てた。「そうです、君姑が節約に励んだおかげで今の程家があるのです」「さすがは蕭元漪(シャオユエンイー)ね…」程始は手を取り合う母と夫人の姿に目を丸くし、自分が留守の間に一体、何があったのかと首を傾げた。その頃、少商は都を離れる楼垚(ロウヤオ)を見送るため城門にいた。皇太子も故郷へ戻ることになった楼太傅と別れを惜しんでいる。「阿垚、私、何と謝ったらいいのか」「″程娘子″、君は悪くない、全ては大兄の自業自得だ」「なぜ赴任先を驊(カ)県にしたの?」「驊県にいる時が人生で1番楽しかったから… でももう一度、選べるなら、君に出会わず、驊県にも行かない人生がいい」いくら道理の分かる楼垚でも、今はまだ少商と向き合う余裕がなかった。まさか少商が推挙したおかげで赴任が叶ったとも知らずに…。一方、楼伯夫人は実家へ帰されていた。楼犇の遺言を知った楼家の長老たちは楼太傅が子弟の前途を阻んで災いを招いたと糾弾したが、楼太傅は全て妻に責任転嫁したという。「まさに″同じ森に棲む鳥も難に遭えば各自飛ぶ″ね…」※夫妻本是同林鳥 大難臨頭各自飛しかし凌不疑は王延姫(ワンイエンジー)は違ったと教えた。実は王延姫は身ごもったまま夜の川に入水し、未だ行方知れずだという。少商は自分に良くしてくれた王延姫の末路を思うと胸が痛んだ。「私のせいね、思えばあの時、父のことばかり案じて慰めの言葉さえかけなかった… 子晟(ズーション)、栄華は求めない、平穏ならいいの、あなたは道を踏み外したりしないでね 絶対、後悔したくないから…」不疑は黙ったまま何も言わなかった。「どうかした?」「…阿母が病なんだ、一緒に来てくれるか?」凌不疑と少商が杏花(キョウカ)別院に到着する頃にはすっかり日も暮れていた。すると今日も崔祐(ツイヨウ)将軍が霍君華(フォジュンホワ)の相手をしてくれている。霍君華は息子の顔を見ると嬉しそうに手招きした。「阿狸(アーリー)!杏仁菓子を作ったわ、食べてみて!」少商と崔祐は母子水入らずにして回廊へ出た。未来の君姑は元気そうに見えたが、崔祐の話では命の灯火がすでに消えかかっているという。霍君華は早産で生まれつき病弱だった。危険を承知で凌益(リンイー)のために命懸けで息子を産み、結局、こんな末路を迎えることになったという。「子晟も早産だった、当時は皆が長生きしないと心配してな 一方、霍家の奥方の産んだ子女たちは皆、健康で身体も丈夫だった そこで験担ぎのため息子に用意した名を取り替えたのだ」こうして霍翀(フォチョン)の息子・阿猙(アージョン)は″不疑″から″無傷(ウーシャン)″へ、阿狸は″無傷″から″不疑″へ名を変えた。不疑と無傷は良く似ており、霍君華は2人にそっくりな格好をさせてはどちらが息子か当てさせたという。凌益は息子を数える程しか抱いたことがなかったせいか、時に間違えることがあった。しかしいくら外見が似ていても、性格はかけ離れていたという。一方は腕白で駆け回り、一方は物静かで理に明るく、書や習字を好んだ。「阿狸は杏仁が好きでな、阿猙は杏仁に触ると発疹が現れるのに木に登って摘んでやっていた」崔祐は改めて少商に子晟のことを頼み、自分からも嫁荷を贈りたいと申し出た。少商は嫁荷なら十分だと遠慮したが、崔祐はあの裕昌(ユーチャン)郡主に対抗するには嫁荷が多ければ多い方が良いという。「郡主は琴棋書画、料理や裁縫にも通じる、そなたは?鶏のごとき鎧を縫ったそうだな? 子晟は将官らの笑い物になっていたぞ?」崔祐は少商の地雷を踏んだ。( ー̀ωー́ )<崔舅父、あなたとは縁が切れましたので見送りは不要です…少商は鶏ではなく鴛鴦だと捨て台詞を残して帰ってしまう。「あの子娘、ふっ、面白い」すると帰りの馬車の中、不疑は身体中に発疹が現れ、倒れてしまう。凌不疑は杏仁を食べて熱を出した。梁邱起(リャンチゥチー)と梁邱飛(リャンチゥフェイ)は明日になれば治ると聞いて安堵したが、若女君が早々に帰ってしまったことが気にかかる。「彭坤(ポンクン)が孤城の真相を白状すれば若主公もわだかまりを捨て、成婚できるさ」その時、寝所から不疑がふらつきながら現れた。「廷尉府から身柄を奪うぞ」凌不疑は廷尉獄に収監された彭坤を連れ去り、北軍獄で拷問した。彭坤は確かに出世のため乾安王を殺したと認めたが、孤城の陥落は完全に霍翀の運が尽きたからだという。これに不疑は激怒、思わず彭坤の首をつかんだ。「凌益に関係があると言ったな?!どういう意味だ?!孤城陥落は凌益が呼応したからか?!」「ふん、すっかり文(ウェン)氏の犬になったのか?実の父親にまで噛みついて功績を求めるとは」不疑は彭坤の首を締め上げたが、ぎりぎりのところで手を離した。「死んだ方がマシだと思わせてやる」すると不疑は拷問の道具を手にした。一方、少商は杏仁で熱を出した子晟を怪しみ、悶々としていた。すると夜更けというのに皇后が訪ねて来る。「最近、体調が悪くて眠りも浅くてね、まだ部屋の灯りが見えたから来てみたの」少商は皇后が皇太子を心配していると分かった。王淳(ワンチュン)、文修君(ウェンシウジュン)、五公主に続き、楼太傅まで騒動を起こして失脚、確かに東宮は無関係で済んだが、皇太子の心中は察して余りある。「私の調査のせいで殿下にご迷惑が…私を責めないのですか?」「なぜ責める必要が?…余が若い頃、そなたのように勇敢なら両親を救えたかもしれないわ」そこで少商は皇后に子晟のことを聞いてみた。「皇后…子晟は幼い頃から物静かで落ち着いていましたか?」「そうね、子晟は朗らかな子で、無傷は寡黙で大人びていたわ でもあんな事になって子晟は無傷のように笑わなくなったの 以前、子晟は死んだ無傷の分まで懸命に生きねばと陛下に言ったそうよ あの子は過酷な半生を送った、でも幸いにも余生をあなたと過ごせる」「…皇后、今夜は一緒にいても?」「もちろんよ…」翌朝、少商の部屋に王姈(ワンリン)が押しかけて来た。王姈は夫を助けて欲しいと嘆願、恥も外聞もなく少商に泣きすがる。「あの人の子を身ごもっているの…お願い、私を助けて!」高貴な育ちでも家庭の温かさを知らずに育った王姈、そんな王姈にとって彭坤は誰より情の厚い夫だった。しかし少商は今回ばかりは力になれないと冷たく追い返す。王姈は諦めて立ち上がったが、どうやら少商は十一郎のことを何も知らないのだと分かった。「凌子晟こそ、この世で最も腹が読めず、最も恐ろしい男よ? 都に夫の内偵は多い、夫が言ってたわ…」王姈の話を聞いた少商は…。つづく(Ŏ艸Ŏ)ウオオオオオオオオ~!フラグ立ちました!それにしても鶏がここまで尾を引くとはねwww
2023.11.19
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月升沧海 Love Like the Galaxy(第28話)第55話「肩を並べる時」楼縭(ローリー)は程少商(チォンシャオシャン)に協力を頼み、産気づいた何昭君(ハージャオジュン)を連れてなぜか廟に案内した。違和感を感じて殿内を見回す少商、するとふと安置された神像に目が留まる。その時、楼縭が隠し持っていた短剣を取り出し、突然、少商に襲いかかった。「程少商!あなたが従兄を自害に追い込み楼家は没落した、命をもらう!」少商は間一髪で楼縭の腕をつかみ助かったが、そのまま揉み合いとなった。「何昭君!神像を調べて!隠し扉があるかも!」少商の予想通り何昭君が神像を動かすと後ろの壁が開いた。少商は楼縭の足を思い切り踏みつけ、楼縭が怯んだ隙に何昭君と一緒に密室へ逃げ込んだ。すると思いがけず鉄鎖で拘束された傷だらけの袁慎(ユエンシェン)を発見する。度田令の推進中だった袁慎は油の買い占めに気づき、巡察中の皇太子が通過する郭(カク)村に貯蔵されていると突き止めた。そこで急いで知らせに向かうはずが、途中で戻(レイ)帝の残党に捕まってしまったという。少商はともかく袁慎を解放するため鍵を解錠することにしたが、袁慎は無駄だと止めた。「最も難解な連環鎖(レンカンサ)だ、解けやしない、早く逃げろ、私のために命を捨てるな」「この天下に私の解けない仕掛けはない、だから黙っていて」ちょうどその頃、外套を目深にかぶった女が廟に入って来た。楼縭は復讐を果たせなかったが、女は少商を誘い込めただけで上出来だと労う。「でも全てやり遂げてくれたのならもう用なしね…」女はいきなり楼縭の腹を刺した。「霍不疑(フォブーイー)と程少商以上に楼大房が憎い…あの世で父や母と再会するが良いわ」「阿父と阿母を殺したのは…あなた…」楼縭はようやく両親の敵に気づいたが、そこで事切れた。霍不疑一行は急遽、驊(カ)県に入った。一見、穏やかに見える城内、すると民に成りすましていた残党がいきなり襲いかかり、不疑を配下から引き離して孤立させてしまう。その頃、少商は解錠に成功し、何昭君と袁慎を連れて密室から脱出しようとしていた。しかし突然、床が開いて地下室へ落下してしまう。袁慎は自分に構わず逃げろと言ったが、天井が閉まる寸前に誰かが飛び降りて来た。「少商?!無事か?!」「なぜあなたがここに?」不疑は巡察中に異常を察知、驊県に駆けつけたところ戻帝の残党に県庭へ追い込まれたという。「ここに私を誘い込んだのは私の一番、大切な者が罠にかかったからだ」「罠だと知りながら飛び込むなんて…救援を求めてから敵を討てばいいのに!」「失ってからでは敵討ちに意味はない…生きていることが重要なんだ」その時、楼縭を殺した女が現れた。「餌には釣られないと思ったのに…ふっ、情愛にどっぷり浸かると英雄も愚鈍になるのね」少商は女の声で行方知れずとなった王延姫(ワンイエンジー)だと分かった。王延姫は面紗を外して正体を明かした。「今日、お前たちには私が作った墓場で死んでもらう 川で救われたあの瞬間から敵討ちを誓った、やっと果たせる…」地下室には楼犇(ロウベン)の位牌が安置され、床には藁が敷き詰められていた。どうやら王延姫は不疑だけでなく少商たちまで道連れにして死ぬつもりらしい。「少商、楼家で良くしてあげたのに、どうして夫を追い詰めたの? 袁慎、お前は知り過ぎたわ、計画を阻止する者は殺すしかない」少商は自分たちを逆恨みする気持ちは分かったが、身重の何昭君は無関係だと憤る。しかし王延姫は楼垚(ロウヤオ)を自由にするためだと言った。「楼垚は彼女を愛していない、無理やり娶らされたの、夫は死ぬ間際まで弟を案じていたわ 義姉として助けてやらなくては…子なら別の女が産む」その頃、楼垚は楼縭に騙されたとも知らず、従者と清(セイ)県にいた。産婆は夫の実家へ戻ったと聞いて訪ねてみたが見当たらず、従者は楼縭の勘違いではないかという。仕方なく楼垚は激しい雨の中、片っ端から医師をあたり、ようやく対応してくれた医師をなかば強引に連れ出した。夫の後を追って入水した王延姫を救ったのは田朔(ティエンシュオ)だった。復讐のため賊に寝返った王延姫、すでに皇太子が訪ねる郭村の道中にも油を撒いたという。「妻より野心を選んだ男だ、そんな者のために命を懸ける価値があるのか?」「あなたこそ少商より痛快に報復することを選んだくせに」「凌益(リンイー)を殺した後、少商を一目見て後悔した、夫婦は同心で肩を並べるべきだと… この5年、後悔しない日はない、復讐が難しくとも成婚すべきだった 共に明るい道を歩むべきだった」不疑の言葉を聞いた王延姫は夫もこうして悔い改めてくれたらと思うとやるせなくなった。「あなた…どうして私だけ置いていったの?」すると少商が楼犇も後悔していたと明かした。楼犇は少商に地形図を贈る際、窮地の時は心を縛られず天地を見いだせるようにと戒めたという。「その言葉をあなたに送るわ」しかしもはや夫の言葉も心に響かず、王延姫はついに火を放ってしまう。王延姫は積み上げておいた油を次々に倒し、地下室はあっという間に激しい炎に包まれた。すると王延姫は自ら煙に巻かれて倒れてしまう。その時、黒甲衛が駆けつけ、天井をこじ開けた。「若主公!」梁邱起(リャンチゥチー)は縄梯子を下ろし、身重の何昭君と負傷した袁慎を次々と引っ張り上げる。そして2人に続いて少商も無事に脱出、登ってくる不疑に手を伸ばしたが、突然、不疑の足に王延姫がしがみついて邪魔した。「…連れて行け、彼女を連れて行くんだ!」少商を守るため苦渋の決断を下した不疑。梁邱起は涙をのんで少商を床から引き離すと、ついに黒甲衛も力尽き、床は再び固く閉ざされてしまう。「子晟!子晟nnnnnnnnnnnnnnnn!」梁邱飛は少商を密室から逃がし、仲間たちも一斉に避難した。その時、地下室が爆発、少商たちは吹き飛ばされながらも九死に一生を得る。しかし不疑は…。少商は絶望の中、頑なだった自分を責めた。「子晟、後悔しているのでしょう?私の手を離さないと言ったのに! 私を散々つらい目に遭わせたから、この先はずっと私に尽くすのでしょう? 分かった、もう許すわ、だから返事をして、お願いよ!」不疑を失った悲しみに耐えられず絶叫しながら泣き崩れる少商、しかし、うなだれていた梁邱飛(リャンチゥフェイ)が物音に気づいて門を見た。「若主公…」霍不疑は生きていた。不疑は王延姫が中へ入れたのなら出られると判断、激しい煙の中で抜け道を探し当て、はい出したという。「少商…私を許してくれるのか?撤回しないでくれ」少商と不疑は硬く抱き合い、5年間のわだかまりが溶けて行くのが分かった。その時、ようやく清県から戻った楼垚が飛び込んで来る。「昭君!私と連れ添うと約束しただろう?共に子を育てると…約束を破ってはダメだ?!」崩れた密室の前で呆然となる楼垚、しかし何昭君は無事だった。「…楼垚?私ならここよ」「(はっ!)良かった!」楼垚は妻の手を握りしめ涙を流し、何昭君も楼垚の心に自分がいると分かって安堵した。田朔の陰謀を阻止するため、霍不疑と少商は共に立ち上がった。しかし不疑は道中の皇太子の元へ、少商は郭村で民を守ることになる。「少商、危険な任務になるぞ?」「大勢の民や天下に比べたら私たちの愛憎なんて微々たるものよ」「少商、君は唯一、私と肩を並べる者だ」こうして2人は県庭の前で別れた。郭村を目指してた皇太子一行の前に田朔が立ちふさがった。「三皇子、息災のようだな?」皇太子は今度こそ田朔を捕えようと意気込んだが、その時、伏兵が現れ、包囲されてしまう。劣勢を強いられた皇太子は自ら剣を抜き応戦するも負傷、満身創痍で田朔と対峙した。「国の後継者として死ぬのは戦場のみ…決して退かぬ!」「では主公に代わり正義の鉄槌を下す!」しかし危機一髪のところで霍不疑が駆けつけ、皇太子を守った。「霍不疑?!生きていたのか!王延姫の役立たずめが!」田朔は計画が失敗したと気づいて悪態をついたが…。つづく( ̄▽ ̄;)ちょっと田朔の声www最終話が不安になって来たw
2024.01.03
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星河长明 Shining Just For You第5話葉景清(イェケイセイ)は羽(ウ)族の四皇子・翼無憂(イーウーユー)に救われるも死期が迫っていた。そこで四皇子に自分の死後、天啓(テンケイ)にいる凌霜(リンシュァン)を守って欲しいと懇願する。「凌霜は真師(シンシ)の加護を受けた者、そばにいれば星流(セイリュウ)石が見つかるはずです」「安心せよ、石のためでなくとも葉子(イェズー)を守る」葉景清も四皇子の娘への真心に気づいていた。しかし凌霜の運命の相手は皇帝だと伝えて旅立ってしまう。星瀚(セイカン)大典の吉所の期限を控え、白露(バイロウ)こと凌霜は夜遅くまで上奏文を書いていた。占術大師・雲紋(ウンモン)は凌霜の選んだ土地がどれも吉所とは言えないと困惑したが、凌霜は皇帝が納得すれば問題ないという。そこで翌朝、和合の吉日の暦を届けがてら天妃(テンヒ)・冷天曦(レイテンギ)から皇帝の人柄や好みを聞き出すことにした。冷天㬢は吉所選びに役に立つのならと、実は皇帝が占星術にこだわらないと明かす。「燹(セン)朝の末期、陛下が天啓に攻め入った時、敵軍は南宮に大軍を配した 南宮には神が皇帝と認める証し″伝国璽(デンコクジ)″があったからよ あの時、南宮に向かっていたら陛下は大敗を喫したでしょうね」「陛下は敵の策略に気づかれたのですね?」「ふふ、陛下は伝国璽を求めなかった だから南宮に力のある法術師を遣わし、大軍もろとも伝国璽を焼き尽くして灰にしたわ 陛下にとって勝利のための条件はただ1つ、強靭であること」(* ゚ェ゚)…なるほど、天命の象徴を焼くなんて占いを信じない証拠ね思えばあの時、使者に成り済ました彧修明(ユーシューミン)は凌霜に″運命を切り開くのは自分だ″と言っていた。白露は皇帝に献上する吉所候補を欽天監(キンテンカン)の監正(カンセイ)・界海天(カイカイテン)に提出した。しかし全て却下されてしまう。「陛下には私から話そう」「これには理由が…お待ちを!大人(ダーレン)!」しかし界海天は白露の説明を聞かずに出かけてしまう。白露は呆然としていたが、その時、樊(ハン)家の息がかかった主事・管宜(カンギ)がわざと白露を煽って上奏するよう仕向けた。界海天は皇帝に謁見、適所は見つからなかったと報告した。しかし白露が駆けつけ、吉所の候補が4か所あると上奏してしまう。皇帝は何かと横槍を入れる界監正を下げ、白露が選んだ候補地を見た。「どれもありふれた場所だ、しかも南宮まで候補に?」「お忘れですか?陛下、南宮は伝国璽が燃え尽きた場所です 伝国璽に備わる神気に包まれ、天下太平をもたらす吉所に違いありません!」「確信はあるのか?」「んー…ありません」皇帝は呆れたが、白露はそもそも皇帝が占星術を信じておらず、場所はどこでもいいはずだという。実は白露は民が立ち退き料の安さから自分の土地が吉所に選ばれることを嫌がっていると知り、民の財を損なわずに済む場所を選んでいた。「陛下が選べばどこも吉所なのです、ゆえに陛下に決めていただきたい」「天下太平か…いいだろう、南宮を選ぶ」欽天監に界監正が独りで戻って来た。管宜は白露が皇帝を怒らせて処罰されと内心、期待していたが、その時、白露が皇帝の勅命と一緒に戻ってくる。「″吉所選びで白露は功を立てた、本日より白露を欽天監主事とする″…ちんつー」すると界海天は管宜が努めていた司天(シテン)局の監督を白露に任せると決めた。冷天㬢は皇帝の様子で何か良いことがあったのだと気づいた。実は優れた家臣が現れたという。皇帝は白露が吉所を見つけたと明かし、自分の意向と合致したと喜んだ。「そもそも朕は天のお告げなど好まぬ…しかし民を治めるにはかようなふりも必要だ ただ祭壇を市中に造れば立ち退きさせるために銭が動き、大臣どもの汚職が横行する 確かに南宮は適所だ、白露は知恵を絞り、良い理由を考えた」一方、尚書僕射(ショウショボクシャ)・樊如晦(ハンジョカイ)は白露の調査もまともにできない次子・樊征(ハンセイ)に激怒していた。「なぜ優秀な私からお前のような愚かな息子が?!」しかし樊征はなぜこんなつまらぬ任務を与えるのかと不満を募らせる。「私が論じているのは樊家のことではない、天下だ 私が子孫に残すのは爵位ではなく、晁(チョウ)という国だ」樊如晦は不死身の皇帝にも白髪が生え始めたと気づき、神力が減衰していると考えた。そこでまず界海天を倒して皇帝の力を消耗させるという。翼無憂は見月(ケンゲツ)楼を任せていた鶴瑾(カクキン)と合流した。「どうかしたのか?」「実は葉姑娘が訪ねて来ました、公子の行方は伝えていません 長雨になりそうですね、雨宿りしましょう」2人はちょうど廃屋を発見したが、すでに娘が琴を弾きながら雨が止むのを待っていた。翼無憂は父と兄を待っているという娘に遠慮して軒下に出ると、結局、娘は先に琴を持って出発してしまう。「彼女の琴の奏法…静雲(セイウン)姨母に似ていると思わぬか?」その頃、界諸嬰(カイショエイ)は苦淵(クエン)海で芳華(ホウガ)鏡を捜索していた。しかし広大な苦淵海ではなかなか発見できず、途方に暮れる。すると七海怜(チーハイリアン)が俘虜(フリョ)を休ませてくれるなら協力すると申し出た。その夜、七海怜は勇士たちを集めた。「奴がいる限り死は免れない…」このまま収容所でこき使われれば夜北の民は滅びてしまう。七海怜は神鏡を探し出して界諸嬰と一緒に天啓へ向かい、晁皇を殺そうと提案した。ただし計画が漏れないよう例え身内でも明かしてはならないという。一方、樊家に朗報が届いた。界監正の子息・諸嬰が勅命に背いて夜北の七海部を守り、誅殺を拒んだという。「これは願ってもない機会だ、あやつの息子がつけ入る隙を与えてくれた」すると樊如晦は明日の朝議で早速、界諸嬰を弾劾すると決めた。皇帝の暗衛は樊如晦に届いた密報を手に入れ報告した。しかし皇帝は誅殺など命じていないと驚き、すぐ界海天を呼ぶ。実は夜北七海部の誅殺を命じたのは界天海だった。界天海は自分が皇帝の勅旨を改ざんしたせいで息子が軍令に背き、弾劾されると知る。「陛下!我が命を捧げます!どうか愚息の命をお守りください!」翌朝、皇帝は朝議で各州に都護府の設置を発表、大都護に兵権を与えると決めた。各州の区分、大都護の人選、関連する官署等の設置については樊尚書に草案を任せるという。その時、遅れて界海天が現れた。「お待ちを!」つづく
2024.06.13
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皎若云间月 Bright as the moon第38話「ほどける糸」三皇子・夜天逸(ヤテンイツ)は金鑾(キンラン)殿に到着、玉座はもう目の前だった。一方、藍漪(ランイ)は皇帝・天賜(テンシ)が偏殿にいると知り、配下を引き連れ駆けつける。すると偏殿の前に雲浅月(ウンセンゲツ)が立っていた。「これは皇后…太后と皇帝の居場所を言えば見逃してやろう」「藍大人(ダーレン)…遅かったのね」その時、御林軍が駆けつけ反乱軍を包囲、驚いた蒼亭(ソウテイ)は藍漪を逃して犠牲になった。三皇子はついに玉座に腰を下ろした。御前で拝跪する容景、その時、突然、門が閉まり、梁に潜んでいた弦歌(ゲンカ)たちが鉄鎖を持って飛び降りて来る。三皇子が気がついた時には鉄鎖でがんじがらめ、すると殿前に控えていた容楓(ヨウフウ)が呼応し、墨閣(ボッカク)の兵たちが一斉に反乱軍に襲いかかった。三皇子はようやく容景に謀られたと気づいた。(꒪ꇴ꒪〣)<なぜなのだ?どこをどう取っても私と対立する理由などない!「情、理屈、利害を考えればそうです…だが″義″をお忘れでは?」四皇子には仁義があり、天下の民を愛していた。しかし三皇子は権力に目が眩み、殺戮を重ねて民を蔑ろにしてきたという。「そんな皇帝では淇(キ)国の惨劇が繰り返されてしまう…あなたは心の魔に負けたのです」すると激高した三皇子はわずかに動く手で暗器を放ち、鉄鎖から抜け出した。三皇子は剣を抜いて容景に戦いを挑んだ。しかし容景に蹴り飛ばされ、剣を突きつけられてしまう。そこへ冷邵卓(レイショウタク)が現れた。「やめろ!」三皇子は助けが来たと喜んだが、冷邵卓は容景の側に立った。(꒪ꇴ꒪〣)<ブルータス、お前もか…実は浅月が持ち帰った進軍経路図は本物だった。密かに容景と通じていた冷邵卓は自分の馬車で浅月を脱出させ、浅月が落とした偽の進軍図を拾って本物とすり替えたという。浅月が崖から飛び降りるとは想定外だったが、2人の計画は成功した。三皇子は冷邵卓の裏切りに唖然となった。しかし冷邵卓は容景とは無関係で個人的な恨みがあるという。( ゚ロ゚) なぜだ?( ゚д゚) 全部、私のせいか?!(ノ>∀
2023.02.12
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皎若云间月 Bright as the moon第39話「鏡の中の兆し」雲浅月(ウンセンゲツ)と容景(ヨウケイ)、2人を取り巻く全ての因縁は10年前の慕容(ボヨウ)家の事件とつながっていた…雲王は慕容将軍の詮議を命じられ、息子夫婦に報告した世子は確かに慕容将軍の長男が本当に淇(キ)国の太子なら助けようがないと言ったが、雲王府は慕容家に多大な恩がある実は世子夫人が不吉とされる双子を産んだ時、梁睿(リョウエイ)を夫人の故郷である南梁に送ってくれたのは他でもない慕容将軍だった一方、冷王は宰相が月岐(ゲツキ)の密偵とも知らず、謀反の証拠となる文を受け取ったそこで皇帝に文を献上し、密かに総管・呉虞(ゴグ)と接触する雲王が親しい慕容将軍をかばうのは必至、その前に淇国太子ともども根絶やしにしなければならない『それができるのは公公(ゴンゴン)しかいない』実は冷王は呉虞が第四皇子の生母・蘭(ラン)妃の暗殺に関わったことを知っていた身分の卑しい蘭妃が皇帝の寵愛を独占し世継ぎまで産んだことは由々しき問題、呉虞は皇室の行く末を思えばこそだったという『心配ない、この事実を知っているのは蕭(ショウ)妃だけだ』冷王はそれとなく呉虞を脅したが、呉虞も冷王が慕容将軍の仕返しを恐れているのだと察したこのまま皇帝の信頼を得た慕容将軍が朝廷での地位を強固にすれば、淇国の仇を取るかもしれないすると呉虞は今回限りという約束で手を結ぶことに同意した世子夫人は慕容家を心配し、南梁王妃である母を見舞いに行くという口実で外出すると決めたしかし思いがけず慕容府襲撃の一報が舞い込む雲王は息子夫婦を救助に向かわせたが時すでに遅く、慕容府は死者であふれていたそんな中、世子夫人が長男を発見、危ないところで容景を逃したが、呉虞の手にかかって殺されてしまう…あの時、容景を救ってくれたのは浅月の母だった。浅月の父はこの事件の後に仏門へ、祖父は復讐の連鎖を終結させるべく早々に事件を封印したという。「王爺が全てを独りで背負った…しかし結局それが仇となり、命を落としてしまった」大師はすでに上官茗月(ジョウカンメイゲツ)から全ての経緯を聞いていた。「王爺の死には景世子も墨閣(ボッカク)も関与していない、世子は王爺と同じ道を選んだ 全ての誤解を背負い、怨恨を止めようとな…誤解が解けたのだからこの縁を大切にしなさい 拙僧は我が子の成長を見守れなかった…父としての責任を果たせず、後悔している」すると容景は我が子を初めて抱きしめた。数年後、容景の霽月(セイゲツ)堂は今や城内で1番と言われる医館になった。浅月は息子を育てながら夫の医館を手伝い、今も栄王府で家族3人、幸せな毎日を過ごしている。そんなある日、兄の南梁睿から旅立ちを知らせる文が届いた。…天賜(テンシ)は聡明な少年君主に成長した…容楓(ヨウフウ)は旧淇国の地に封ぜられ、軽暖(ケイダン)公主と新婚生活を満喫している…玉洛瑤(ギョクラクヨウ)は江湖に落ち着き、上官茗月が熱を上げているが、どうなることやら…彩蓮(サイレン)と弦歌(ゲンカ)は仲睦まじい夫婦だな、そろそろ出産か?凌(リョウ)児の遊び友だちができるな…香荷(コウカ)は雲府の主となり、なかなかの辣腕(ラツワン)ぶりだ…浅月、それぞれ落ち着いたのに兄の私は独りぼっち…そこで私も自分の幸せを見つけに行くことにした…どうかうまくいくよう祈ってくれすると天聖を出た南梁睿はやがて河岸で物思いにふけっている拓跋葉倩(タクバツヨウセイ)を見つけた。その夜、浅月は改めて家族と過ごす幸せをかみしめていた。「さっきあなたが凌児に物語を聞かせていたでしょう? 私のいた世界には話ができるぬいぐるみとか、音楽に合わせて回る走馬灯があるの 凌児が見たらさぞ喜ぶでしょうね…」「走馬灯なら作ってあげよう」「はお、明日一緒に作りましょう」しかし完成した走馬灯を楽しんでいたその時、浅月は鏡に映る自分の顔が一瞬、消えるのを見た。浅月はいつものように医館を手伝っていたが、急に具合が悪くなった。驚いた容景は脈を診たが異常はない。浅月は暑さのせいだとごまかしたが、その時が迫っているのだと分かった。すると翌朝、身支度を整えていた浅月は再び鏡から消えそうな自分の姿に気づいて動揺する。そこへ容景がやって来た。浅月は慌てて鏡を確認、自分の姿が写ってると分かって安堵する。しかし容景が浅月の髪にかんざしを挿して鏡をのぞくと、浅月の姿が消えた。浅月はいよいよ隠しきれなくなり、ここを去ることになると告げた。「言ったでしょう?私はよその人間だって…ここへ来たばかりの頃にも同じことがあったの ある書物にあったわ ″身体を借りて蘇る者は生者にあらず死者でもない、寿命の長さは定まらず塵と消える″って…」「バカな、信じない…混じりっ気のないペットフードしか信じない!」「もちろんそばにいたい、でももし…」「″もし″はない!…もし本当に私を捨てたら妾を迎える!」「容景、私が辛いのは分かっているでしょう?でもどうしようもないの…」「いいかい?他に女を作られるのが嫌なら何としてでも生きろ!」容景は激しく取り乱し、自分が必ず何とかすると言い聞かせた。しかしどんなに探しても浅月を救う方法は見つからず、途方に暮れてしまう。浅月が目を覚ますと容景の姿がなかった。そこで書斎に行ってみると、呆然と座っている容景を見つける。床には一晩中、描き続けていた浅月の絵が散乱していた。「君との日々を書き留めておきたくて、いつまでも忘れないように…」浅月は愛おしそうに容景の頬に触れたが、その時、ついに手が透けて消えそうになってしまう。「もう限界かも…」「嫌だ、浅月、消えないでくれ…」すると容景は以前、浅月が3つの宝を集めて元の世界へ帰ろうとしていたことを思い出した。「君が死ぬくらいなら例え別の世界でも生きていて欲しい… たとえ二度と会えなくても愛し続けることができる」容景は早速、店の前に″醒世異聞録(セイセイイブンロク)求む、謝礼千金″と告示した。すると思いがけず容景の治療で助かったと言う人物がお礼だと言って本を届けてくれる。浅月はついに3つ目の宝が何か分かったが、それは容景の母の形見であるかんざしだった。しかし容景は自分の手で折ってしまったと困惑する。「…でも″鳳凰の復活″と書いてある、分かったわ!」つづく( ๑≧ꇴ≦)パパ!パパがもっと早く来てくれれば皆、死なずに済んだのよ!からの怨恨とか?w
2023.02.18
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斛珠夫人 Novoland:Pearl Eclipse第25話「纈羅の花」翌朝、書斎にいた方鑑明(ホウカンメイ)は外から聞こえる卓英(タクエイ)の声で海市(ハイシー)が戻ったと知った。「その腕はどうした?(はっ)顔に血の気がないぞ?」「淑容(シュクヨウ)妃の治療で副薬用に少し血を抜いたんだ」「血を?!蘭茲(ランシ)での傷が癒えたとたん命知らずな真似を…」「淑容妃は命も危うい状態だったし…もう話は終わり、疲れた」「おい!」鑑明は窓紗から海市が部屋に戻る様子を見ていた。皇帝は気血を損ねた方海市のため昭明宮に補薬を届けさせていた。そこで方鑑明は自ら薬を煎じ、海市の部屋へ持って行く。額に手を当ててみたところ熱はない様子、その時、貧血で朦朧としている海市が鑑明の手をつかんだ。しかし鑑明はその手をそっと下し、帰ってしまう。一方、回復した緹蘭(テイラン)は大好きな書物に没頭していた。「淑容妃、お薬です…まだ静養が必要ですよ?」「…もう少し読ませて」「あとどのくらいだ?」その声は皇帝だった。すると褚仲旭(チョチュウキョク)は改心したのか、急に2度と緹蘭を冷遇しないと約束する。「霜平(ソウヘイ)湖へ行ってみよ、見せたいものがある」緹蘭は侍女たちと霜平湖へ向かった。すると驚いたことに一面に纈羅(ケチラ)の花が浮かんでいる。纈羅とは蓮に似た注輦(チュウレン)の希少な花で滅多に見ることができなかった。目を見張る緹蘭、恐らくこれが皇帝からの謝罪なのだろう。焉陵(エンリョウ)帝姫・褚琳琅(チョリンロウ)は宮中に戻るなり万人がひれ伏す勢いを得た。海市はそんな帝姫に違和感を持ち、成り済ましの可能性を疑う。確かに礼部が素性を徹底的に調べ、皇帝と昶(チョウ)王も認めたが、どうも引っかかる気がした。褚琳琅は見舞いがてら愈安(ユアン)宮に緹蘭を訪ねた。実は自分も尼華羅(ジカラ)に流れ着いた時、気候が合わず、1年の半分は病だったという。その後、縁あって学んだ調香により少しずつ回復、そこで自分が選んだ香料を渡した。「良ければ気休め程度に身につけてみて」褚琳琅はたわいない話をしてすぐ帰って行った。すると侍女・碧紅(ヘキコウ)は長年、落ちぶれていたわりに気取っていると嘲笑する。「淑容妃を見舞うふりをして宮中を探っていましたね」「異郷で苦労をしたから何事にも慎重になるのよ」緹蘭は無礼のないよう釘を刺したが、関わらないことが一番だと心得ていた。瀚(カン)州から知らせが届いた。敵に寝返った蘇鳴(ソメイ)は左菩敦(サホトン)王の参謀となり、小部族をいくつか滅ぼしたという。方鑑明は蘇鳴も手柄を立てることに必死でしばらく黄泉(コウセン)営を攻める暇はないと考えたが、天啓(テンケイ)の防衛は怠らないよう命じた。すると務めから戻った海市がやって来る。「実は気になることがあるので念のため報告します 今日の当番で帝姫に会った時、牡丹ではなく蓮の香りがしました 帝姫には不審な点があると感じます、尼華羅へ誰かを遣わし調べを…」しかし鑑明は皇帝が認めた帝姫を調べることは皇帝の判断を疑うことになると取り合わなかった。顧陳(コチン)氏が清海公を告発した案件は廷尉に一任されたが、証拠集めが困難で時間を有していた。しかし段(ダン)御史が朝議でしつこく清海公を糾弾、そこで宗裕(ソウユウ)は廷尉の審理期間は清海公を参内させず、政から遠ざけるよう嘆願する。すると方鑑明は配慮不足だったと認め、自ら職を辞し、調査に協力すると申し出た。褚仲旭は方鑑明を連れて敬誠堂(ケイセイドウ)に戻ると怒りを爆発させた。「狙いは兵権を奪うつもりだ!」「さようです」鑑明も分かっていたが、群臣の怒りを静めるためにも従ったという。その時、回廊で控える侍従が二人の話に耳をそばだてていた。褚琳琅は皇帝へ挨拶に参じたが、機嫌の悪い褚仲旭に追い返された。仕方なく皇宮を散策していると偶然、霜平湖に浮かぶ纈羅を見つける。纈羅をどうしても欲しくなった褚琳琅は侍女に小舟を出させて摘み始めたが、うっかり落ちそうになった。ちょうど付近で立ち話をしていた卓英と海市が気づき、当番の卓英が助けに向かおうとする。しかしちょうど通りかかった方鑑明がすかさず飛び出し、2人の見ている前で帝姫を抱きかかえて露台に戻った。卓英と海市は急いで駆けつけ失態を謝罪、帝姫を屋敷まで送ることになった。すると褚琳琅は2人が鑑明を師匠と呼んでいたことから弟子だと気づく。「雲麾(ウンキ)将軍・方海市と中郎将・方卓英ね?」「ご聡明だという噂は誠でした…長年、異郷にいらしたのに大徴(ダイチョウ)の事情に精通しておられる」「鑑明は幼友達なの、それに異郷にいても常に心は大徴にあったわ」海市はそれとなく探りを入れたが、褚琳琅の答えはそつがなかった。そこで今度は褚琳琅が持っている纈羅に目をつける。「殿下は蓮がお好きなのですか?」「纈羅も蓮の一種だけど″静客″の別名があるの 幽谷に生育し、誰からも愛でられることなく、優美に咲き、香りを漂わせる…」「恥ずかしながら蓮と区別がつきません」「蓮の葉はけばだち、水面から出て、切れ目がない、纈羅の葉は艶があり、水に浮き、切れ目もある でも香りの区別はつきにくいわ」「…それほどお詳しいとは、誠にお好きなのですね?」褚琳琅は思わず話し過ぎたと気づき、あでやかな牡丹ほどではないと付け加えた。香料を調合する時もまず牡丹を選ぶという。宮中を出た褚琳琅は輿に揺られながら、″南北方周(ホウシュウ)″という流行り言葉を教えた。「都の若者の中で武郷(ブキョウ)侯府の周幼度(シュウヨウド)以外、 あなたたち2人が洒脱で並ぶ者がいないという意味よ」すると褚琳琅は今日のお礼に贈り物を用意したいので清海公の好きな物を教えて欲しいと頼む。しかし卓英は霽風(セイフウ)館が厳格なため、師匠の私事を知らないとごまかした。方鑑明の書斎に海市が花を届けにやって来た。「よくぞ選んだ、夜には開花を見られるだろう」鑑明は膨らんだつぼみを見て喜んだが、海市の困惑する様子に気づく。「(あ)公務もある、今後は花を摘まなくていい」「…私ではありません、師父の書斎に飾るよう帝姫に託されました」一瞬、書斎に気まずい空気が流れたが、海市は改めて帝姫の様子はどこかおかしいと報告した。しかし鑑明は海市が案ずる必要はないと一蹴、すると海市は部屋を出たら言動を慎むと誓って帰ってしまう。鑑明は独りになると美しい花が忌々しくなり、思わず花瓶から抜き取ってごみ箱に捨てた。綾錦司(リョウキンシ)では鞠柘榴(キクシャリュウ)が仕事に追われていた。ちょうど淑容妃の外着を仕上げ終えたばかりだったが、すぐ帝姫の衣に取り掛かるよう命じられ休む暇もない。今夜も独り工房に残って刺繍を続ける柘榴、そこへ急に方海市が訪ねて来た。「香料のことを教えて欲しい…実は帝姫に関わることだ」帝姫と言えば幼い頃から非常に牡丹を愛し、香料の他にも装飾品や部屋のあつらえも牡丹で、幼名まで″牡丹″と名乗ったという。しかし海市が帝姫と会った時、2回とも蓮の香りがした。柘榴は近々、帝姫の採寸をすると教えたが、海市は柘榴を巻き込むつもりはないという。「分かりました、ただ香料の使い分は普通のことですし、2回だけでは偶然なのかも… あ、小方大人、武郷侯府の周幼度殿は調香に長けていると都で有名ですよ」海市は卓英を誘って街へ出た。実は卓英が周幼度を知っていると聞き、今度、紹介して欲しいと頼む。すると海市は卓英の俸禄を使って珍しい香料を買った。「はあ〜分かったぞ、この散財は帝姫を疑うゆえか?」海市は自分の直感だと認め、確実かつ慎重を期すために周幼度の意見が必要だという。一方、鞠柘榴は淑容妃の衣を届けるため愈安(ユアン)宮を訪ねた。まさか褚琳琅がちょうど緹蘭を見舞っているとは知らず、目通りを願い出る。その頃、緹蘭は香料のお返しに皇帝に下賜された石斛(セッコク)の腕輪を帝姫に贈っていた。すると侍女が現れ、鞠典衣の来訪を伝える。褚琳琅は自分がいながら緹蘭が断らなかったことから、皇帝に会いに行く途中だったと言って席を立った。こうして殿前に控えていた柘榴は偶然にも帝姫を見送ることになる。…やはり蓮の香りだわ…褚琳琅が皇帝を訪ねると、ちょうど涼亭で方鑑明と闘茶に興じていた。「琳琅、良い所に来た、得意の闘茶で鑑明と勝負せよ、朕は負け続けゆえ、そなたに託す」「ぁ…でも清海公は茶と香の達人だとか、牡丹、恥をかきたくありません ですがご命令とあれば恥を忍んで披露します」こうして鑑明と褚琳琅の闘茶が始まった。清海公が帝姫を救ったことから、宮中では密かに2人の縁談の噂が流れていた。そんな中、宮中に戻った海市は警護の当番に戻り、ちょうど涼亭にいる皇帝たちを見つける。どうやら闘茶は師匠が勝ったようだ。「…長い異郷暮らしですっかり腕が落ちました」「鑑明、牡丹は心ここにあらずだ、手加減せよ」すると褚仲旭は鑑明に牡丹を送って行くよう命じた。つづく(つД`)ノ やっと周幼度がクル〜ッ!
2022.09.25
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皎若云间月 Bright as the moon第2話「放火の真相」これまでのお話何の因果か天聖(テンセイ)時代の雲王府の跡取り娘・雲浅月(ウンセンゲツ)になってしまったネット小説家の李蕓(リウン)どうせ夢なら小説のネタ探しでもしようとしたが、実は雲浅月が問題児で放火容疑で追われていると知るどうやら雲浅月は火災現場で頭を打って倒れていたらしい意識が戻った雲浅月は訳のわからない現代用語を使っていたが、また記憶喪失を装ってごまかしていると誰も取り合わなかった結局、調査が終わるまで禁足処分となった雲浅月李蕓は雷に打たれて現実世界へ戻ろうと思いつき、屋敷を逃げ出したが…李蕓は現実世界に戻るため郊外の山で自ら雷に打たれた。しかし衝撃を受けて気を失っただけ、そこで思い切って崖から飛び降りることにする。その頃、栄(エイ)王府の世子・容景(ヨウケイ)はちょうど温泉で療養していた。すると空から雲浅月が落ちて来る。こうしてまたしても命拾いした李蕓、そもそもスマホを捨てられたせいだとぼやくが、容景には何の話かわからない。容景は仕方なく浅月を送ることにしたが、ただし3尺以内に近づくなと厳命した。容景は雲浅月を雲王府に送り届けた。馬車を降りた李蕓は借りていた外套を返すことにしたが、容景は他人が身につけた服はもう着ないという。「差し上げよう」「私が嫌いってこと?」「気にする事は他にあるだろう」李蕓はいけ好かない容景に憤慨しながら屋敷に入ると四皇子が居眠りしながら待っていた。「丸一日待ってたんだぞ?…桃でも食え」しかし李蕓が桃を食べると四皇子は驚いて吐き出せと止める。実は雲浅月は桃にアレルギーがあり、李蕓はみるみるうちに口が真っ赤に腫れた。四皇子は雲浅月が本当に記憶喪失なのか試したかったと言い訳したが、李蕓に殴られてしまう。そんな2人の様子を見ながら、侍女・彩蓮(サイレン)は記憶を失くしても主と四皇子の関係は変わらないと安堵した。李蕓は雲浅月の無実を証明するため、皇帝の狩りを利用することにした。そこで狩りの朝、栄王府に出向いて容景に協力を頼む。容景は冷たく断ったが、李蕓は火事に巻き込まれて倒れていた人を見たと教えた。「焼死じゃなかった、その前に殺されていたのよ」李蕓は意識が戻る前に見た夢が雲浅月の記憶だと気づいた。「協力した見返りは?」「何が欲しい?身を捧げる以外なら検討する」李蕓は容景の手引きで狩場に入った。すると物陰に隠れていた刺客が矢を放ち、雲浅月の肩に命中してしまう。雲郡主が毒矢に当たって意識不明との報告を受けた皇帝は直ちに宮中に戻り、皇子たちも集まった。容景は早速、皇帝の前で証拠となる毒矢を調べ、禁制とされる骨を侵す劇薬だと証明する。毒性を増すには″麒麟血(キリンケツ)″という薬が不可欠だが、この薬は太医以外では太子宮にあった。しかも自害した下手人は皇太子の下人である黄六(コウロク)だという。皇太子は郡主を陥れて放火犯に仕立て上げたがらちが明かず、郡主を暗殺しようとした。しかしどちらにしても詳細を知る者たちはすでに焼死している。皇太子は証拠がないと強気に出たが、思いがけず容景が証人を呼んだ。証人は望春楼の舞姫・柳茵茵(リュウインイン)、当日も火事の現場に居合わせたという。「望春楼の所有者は太子殿下で火をつけた張本人です」…あの日、雲浅月は男装して評判の舞姫・柳茵茵を見に来ていたすると王(オウ)公子が柳茵茵に大金を差し出し、今夜の相手を強要するそこで浅月は王公子が以前も愛人を囲って妻に街中を追い回されたと笑い者にした面目を失った王公子は逃げるように店を出ると、柳茵茵は2階にいた恩人に拝礼するその時、浅月は偶然にも失言のせいで禁足を命じられたはずの皇太子の姿を見つけた浅月は叔母の皇后に告げ口し、皇太子との婚約を取り消してもらおうと決めたそこでこっそり皇太子の後をつけ、回廊から個室の様子をうかがうすると驚いたことに皇太子が臣下と徒党を組み、狩りの日に反逆を企てていた浅月は咄嗟にその場を離れたが、うっかり物音を立て、皇太子に捕まってしまうその時、突然、黒衣の刺客たちが現れ、皇太子の侍衛たちと争いになった浅月はそのどさくさで逃げ出したが、皇太子に階段から突き落とされてしまう『黄六、望春楼を封鎖して全員殺せ!』望春楼は皇太子の金儲けの場であり、朝廷でもあった。皇太子はここで即位式の練習をし、その際、柳茵茵は宮女に扮して踊らされたという。「太子の下着には皇帝の証しである九龍の刺繍があります」すると皇太子はついに観念し、自ら外衣を脱いで九龍を見せた。皇帝は深く失望、簒奪を謀った長子・夜天傾(ヤテンケイ)の称号を剥奪し、罪は改めて問うと申し渡した。李蕓は一晩、昏睡していたが容景の部屋で目を覚ました。すると容景は負傷した右肩を治療したと教える。ヒイィィィ!!(゚ロ゚ノ)ノ<何ですって!あなたが脱がせたの?!( ー̀ωー́ )<私は命の恩人だぞ?!実は李蕓は必ず自分の命を狙って来ると踏み、予め護身の胴着を着けていた。「これがなかったら死んでたわね」「で、柳姑娘をどこで見つけた?」李蕓は雲浅月の潔白を証明するため目撃者を探していた。彩蓮の話では雲浅月は柳茵茵を見るため望春楼に行ったという。しかし火事の後、柳茵茵は姿を消していた。そこで李蕓は他の妓楼を片っ端から当たり、ついに柳茵茵を見つけ出すことに成功する。「…どうやら噂で聞くほど愚かではなさそうだ」すると容景は協力の見返りとして浅月が雲王府の管理するよう頼んだ。( ๑≧ꇴ≦)<え~やりたくない!居候で十分よ~( ー̀ωー́ )<居候?( ๑≧ꇴ≦)<あ~分かったわ実は容景は浅月に探して欲しい物があるという。( ತ _ತ).oO(これも現代に戻るためよ李蕓は冤罪が晴れ、禁足も解かれた。すると今日から屋敷に滞在するという父方の従姉妹・香荷(コウカ)が現れる。彩蓮の話ではどうやら雲浅月とは仲が悪いらしい。しかし李蕓は相手にせず、馬鹿にされた香荷は憤慨して侍女を引っ叩いた。李蕓は激怒、香荷を引っ叩き、さらに反撃しようとした香荷を転ばせてしまう。「今度、私の人間に手を出したらただじゃ済まないから!ふん!」一方、容景は裏山の山荘で独り簫を吹いていた。そこへ腹心の上官茗玥(ジョウカンメイゲツ)がやって来る。「妓楼の火事で醜聞が広まったが、意外にも太子の失脚でけりがついたな…」容景も望春楼が皇太子の朝廷であることはつかんでいた。しかし謀反はともかく、わざわざ放火し、自分の地盤で騒ぎを起こしても利はない。「恐らく背後に別の人物がいるのだろう…」つづく
2022.10.04
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斛珠夫人 Novoland:Pearl Eclipse第38話「宿命への挑戦」執拗に方海市(ホウハイシー)の命を狙う皇弟・褚季昶(チョキチョウ)。しかし海市が淳容(ジュンヨウ)妃に封じられ、簡単に手を出せなくなった。それにしてもいくら方海市を守るためとは言え、龍尾神の使者に祭り上げるとは方鑑明(ホウカンメイ)にも恐れ入る。そこで褚季昶はこれを逆手に取り、海市を誘き出すことにした。西南は年初の大干ばつにより作物が不作だった。各州府は秋の収穫まで倉を開け救済していたが、結局、稲が育たず不作が続き、冬に入り被災民が流浪しているという。西南の民は龍尾神への信仰が深く、飢饉は龍尾神の怒りに触れた罰ではないかと噂が広まっていた。すると昶王の息のかかった大臣が朝議で淳容妃を派遣して民の不安をなだめて欲しいと嘆願する。言い伝えによれば龍尾神の使者が西平港(セイヘイコウ)で祭祀を行えば状況を回復させられるというのだ。当然、皇帝も清海公(セイカイコウ)も反対したが、大臣たちからの上奏文が途絶えることはなかった。海市が寝殿に戻ると侍女・玉苒(ギョクゼン)が魚の粥を運んで来たところだった。「魚?…誰が作らせたの?」「清海公から淳容妃の好物を書いた紙が届きました」「…お腹は空いていないの、下げて」すると海市は小六(ショウロク)から届いた報告を見るなり、柏木か柏木製の器を探すよう頼んだ。旭(キョク)帝・褚仲旭(チョチュウキョク)は方鑑明が安心して静養できるよう国庫の財貨を放出して援助すると決めた。それでも鑑明はこれが最後の仕事だと覚悟し、西平港へ行きたいという。褚仲旭は生きることが情義だと言い聞かせたが、そこへ玉苒が現れた。「陛下、すぐ淳容妃のところへ…」すると真っ先に鑑明が飛び出した。庭園にいた海市は皇帝と師匠が来たと気づき、慌てて手を隠した。しかし柏木には海市の血が流れている。海市は自傷ではないと否定して下がろうとしたが、急にめまいを起こした。玉苒の話では淳容妃は食事を取っていないため、そこに今の流血がたたったのだという。方鑑明は海市を抱き上げ、鳳梧(ホウゴ)宮へ連れ帰った。恐らく″柏奚(ハクケイ)″を解く方法を探していたのだろう。鑑明は海市の傷の手当てをしながら、もう探すなと止めた。「私のすることに清海公は関係ない」海市は何も教えてくれない師匠に冷たく当たったが、鑑明は海市が知っているのは表面的なことだけだという。「柏奚を解けるのは流觴(リュウショウ)方氏の血を継ぐ者だけだ」方鑑明は昭明宮に戻った。しかし中院で急に激しく喀血、そのまま昏睡してしまう。…グハッ!方鑑明、お前に残された時間は長くない…一方、褚仲旭は未生花(ビセイカ)の解毒方法を求め、各州府に医典を探させていた。するとかつて注輦(チュウレン)が紛失した医典が半冊だけとは言え瀾(ラン)州で発見される。淑容(シュクヨウ)妃・緹蘭(テイラン)は運が良いと喜んだが、褚仲旭は解毒法を見つけるまで安心できなかった。その時、穆徳慶(ボクトクケイ)が駆けつける。清海公が危篤だというのだ。驚いた褚仲旭は藁にもすがる思いで、皇帝のために保管された霊薬・応龍角を使うよう命じる。そのおかげで鑑明は命をつなぎ止めたが、あくまで一時しのぎに過ぎなかった。海市は流觴方氏について調べ始めた。方氏に関する文献によれば師匠を除く清海公52代のうち先代・方之翊(ホウシヨク)を含めて17名が皇帝より後に死去している。しかしどの書にも詳細は記されておらず、依然、柏奚の解明はできなかった。…まさか本人以外は解くことができないと?…一方、褚仲旭は方鑑明が安定したと分かり、誰かに察知されないよう昭明宮を訪ねないと決めた。翌朝、海市はさらなる情報を求め、自ら蔵書閣へ行くことにした。すると寝宮の前で女官が泣いている声が聞こえる。海市は念のため様子を見に行ってみると、女官は母と妹を助けて欲しいと懇願した。聞けば父と兄は餓死、今回の飢饉は西南の海を埋めて堤防を造り龍尾神を怒らせたせいで、龍尾神の使いである淳容妃が祈れば鎮められると噂になっているという。海市は皇帝に謁見し、西平港の救済に行きたいと嘆願した。しかし今の西南は危険この上なく、万が一、民が蜂起すれば2度と戻れなくなる。褚仲旭は複雑な状況だと知りながら自薦するのかと驚き、見込みがあるのか聞いた。「見込みは3割ほど、西平港に行って調査すれば5割になります」海市は大徴と民のために危険を冒せることが自分の存在価値だと訴えた。すると褚仲旭はついに決断、海市に勅命を下す。「この巡天の印を持てばお前は朕の代わりだ…直ちに西平港へ行き、救済せよ」海市は巡天の印を受け取り、その足で昭明宮に向かった。驚いた陳哨子(チンショウシ)は清海公なら留守だと嘘をついたが、淳容妃の要件が別だと分かって安堵する。「人手を派遣し援助をお願い…あの人には私が来たことを言わなくて良いわ」褚季昶の思惑通り淳容妃が西南に向かうことになった。西南は被災民があふれており、龍尾神の使いが嘘だと暴かれれば死ぬことになるだろう。それにしてもこの数日、方鑑明は朝議を欠席し、顔も見ていない。すると執事がもしや傷病のため隠れたのではと疑い、早速、少府監の主事・施霖(シリン)に探らせると言った。褚季昶は半信半疑ながら、本当に方鑑明が傷病で姿を見せられないなら方海市は孤立無縁となり、ますます面白い芝居が見られそうだという。海市は方鑑明の危篤を知らぬまま出発の日を迎えた。皇帝や朝臣たちは淳容妃を盛大に見送ったが、そこに師匠の姿はない。一方、方鑑明は5日経っても意識が戻らず、褚仲旭は不安を募らせた。しかし思いがけず緹蘭が医典から解毒の手がかりを見つける。それはいかなる毒にあたっても龍尾神のご加護があれば治るという記述だった。褚仲旭は伝説に過ぎないと肩を落としたが、緹蘭はあながち嘘ではないという。実は雷州には龍尾神の毛と血と鱗は薬となって人を救うという逸話があった。「…ならば鮫珠でもいいのか?!」「鮫珠?…陛下、鮫珠は龍尾神の涙、きっと救えます!」褚仲旭は医官院に命じて鮫珠の薬を作り、自ら方鑑明に飲ませた。「鑑明、方海市は西南へ行った、お前がこのまま手を離したら永遠に会えなくなるぞ? …方海市のためにも早く目を覚ますのだ」しかし鑑明は再び激しく喀血してしまう。驚いた褚仲旭は慌てて侍医に診せたが、実は鑑明は鮫珠のおかげで毒素を排出していた。淳容妃の一行は間も無く西平港へ到着しようとしていた。確かに西南は飢餓に苦しむ民たちであふれていたが、偵察によると城内の人は減っておらず、逆に集まっているという。「倉を開けて救済しているからかしら?」しかし玉苒は西平港刺史・劉昌平(リュウショウヘイ)が幾月前に食糧の援助を上奏して来たはずだと言った。かつて淑容妃が嫁いできた際に西平港を訪ねた海市、当時の刺史は陳赫然(チンカクゼン)で西平港は活気にあふれていたが、新任者は一体、何者なのだろうか。つづく( ๑≧ꇴ≦)いよいよヤンミー社長のターン!
2022.11.11
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