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第39話「積もる痴情のもつれ」

皇帝に呼ばれて参内した小越(ユエ)侯。
すると崇徳(スウトク)宮には杖刑で負傷した凌不疑(リンブーイー)の姿もあった。
「越卿、実はそちに相談があってな…五公主とそちの末息子を早く成婚させたい」
小越侯は困惑した。
今や都中が五公主の噂でもちきり、そんな中で成婚すれば越氏まで影響を受け兼ねない。
しかし皇帝は越氏があえて今、五公主を嫁に迎えることで噂が嘘だと示し、五公主の名誉を守りたいという。
小越侯は皇帝の命に背くこともできず拝命するしかなかったが、これが凌不疑の差し金だと分かった。


夫・梁尚(リャンシャン)が曲泠君をぞんざいに扱う様子を目の当たりにした五皇子妃は、かつて仲良く遊んでいた友の境遇が気がかりでならない。
しかし程少商(チォンシャオシャン)は常識的で誠実だと評判の梁(リャン)州牧(シュウボク)が義兄なら夫人も大丈夫だと安心させた。

その頃、梁尚は苛立ちながら曲泠君を連れて城門を出ようとしていた。
すると東宮の使いが現れ、辞別の品を届ける。
曲泠君は夫の手前、辞退したが、使いは皇太子が別れを惜しんで自ら授けた品だと釘を刺した。
そこで代わりに梁尚が化粧箱を受け取ったが、中身が皇太子の手巾だと知るや馬車に乗り込むなり曲泠君に暴行してしまう。
走り去る馬車から漏れ聞こえる曲泠君の悲鳴、皇太子妃はその声を城楼で耳にしながらほくそ笑んでいた。

そんなある日、凌不疑が長秋宮にやって来た。
少商はちょうど皇后や皇太子夫妻と談笑していたが、驚いたことに曲泠君が夫を殺したという一報が入ったという。
「廷尉府が捕らえに向かいました、殺めたのは昨日の午の時の頃だとか
 曲泠君が食事を届け、その後、刺された梁尚を下僕が発見しました」

実はその時間、皇太子と曲泠君は紫桂(シケイ)別院で会っていたという。

一方、梁府では廷尉府侍郎である袁慎(ユエンシェン)が舅父・梁無忌(リャンウージー)と対峙していた。
袁慎は不明な点が多いため廷尉府が遺体と容疑者を預かると決めたが、公にしたくない舅父に邪魔されてしまう。
「お前の母も梁家の嫡女だ、母方の名声にも関わる、連行はさせられん」
結局、袁慎は伯父に阻まれ断念、改めて人を遣わすことにした。


「それほど彼女は魅力的ですか?再会しただけで理性を失わせ、醜聞を引き起こすとは…
 しかも死人まで出して、とても取り繕えない」
皇太子妃は曲泠君が皇太子と復縁するため夫を殺したと決めつけると、ついに皇太子は堪忍袋の尾が切れた。
「彼女と会ったのは梁尚から十余年も乱暴されていたからだ
 曲泠君の悲惨な境遇もそなたのせいだ!答えよ、余の手巾がなぜ曲泠君の手に?」
実は皇太子妃の嫌がらせは今日に限ったことではなかった。
皇太子は皇太子妃がこの十余年、自分の名義で梁家に事ありげな品を贈り続けていたことを把握していたという。
これでは梁尚が自分たちの関係を疑い、乱暴するのも当然だった。
少商は衝撃の事実に驚愕、その時、初めて東宮を訪れた時のことを思い出し、はっとする。
あの時、確かに皇太子妃は自分のかんざしを外し、梁夫人に渡すよう指示していた。
しかし皇太子妃は原因なら皇太子にあると反発する。
「曲泠君にとってこの十余年は生き地獄だったしょう、では私はどうだったと?
 枕を同じくしても殿下の心は遠く離れていた…私の心が痛まないとでも思いますか?」
「縁は切れたと言ったであろう?!成婚した時に誓った、そなたと余生を歩むと…
 だかそなたは改めもせず、結果、今に至り、余が好まぬばかりか、宮中の誰にも尊敬されぬ」
すると皇太子は皇太子妃に最後の機会を与えた。
「望むなら曲泠君のために陛下の前で余と一緒に嘆願するのだ
 望まぬのならすぐに消えうせろ!」
「…曲泠君はまるで私と殿下の心に刺さる棘のよう
 あんな女、今すぐ廷尉府の牢に入れられ死ねばいいのよ!絶対に嘆願などしない」
皇太子妃は積年の恨みをぶちまけ、皇后に拝礼して長秋宮を出た。




その夜、皇太子は父皇に事情を説明し、廷尉府に曲泠君の潔白を証明してほしいと嘆願した。
皇帝は臣下の妻と密会していた皇太子に激怒、すぐ廃することもできると怒号を響かせる。
「男女が別院で密かに会いながら潔白だと主張して誰が信じるというのだ?!
 天下の見本になるべき太子が男女の情などで己の名声を壊すとは!」
すると皇后が矢も盾もたまらず、涙ながらに母として子を信じると訴えた。
「陛下は父として息子を信じてくださいますか?」
結局、皇帝は東宮と天下のために示しをつけるとし、子晟(ズーション)に真相解明を命じた。

凌不疑は拝命して寝殿を出た。
すると物陰で聞き耳を立てている少商を見つける。
ばつが悪い少商だったが、調査に行くなら一緒に行きたいと頼んだ。
本当のところ不疑は嫁選びを誤り、自分の首を絞める結果になった皇太子に呆れているという。
しかし少商は皇太子の果敢な決断に敬服すると言った。
「太子が自分の名誉のために曲泠君の苦難を見過ごせば、それこそ失望するわ
 …ねえ、行ってもいいでしょう?」
「分かった、だがかき乱さないと約束してくれ」
「いつ私がかき乱したの?」
「いつもだろう?」

凌不疑は黒甲衛(コクコウエイ)を引き連れ、梁家の捜査にやって来た。
梁州牧と梁尚の同腹の弟・梁遐(リャンシア)が現場となる部屋に案内したが、まだ生々しい血の痕が残っている。
不疑は同行した少商を気遣い、曲泠君の様子を見て来るよう頼んで外へ出した。
「私は梁州牧に話がある、事は梁府の男全員に関わる…全員に同席してもらおう」

その頃、曲泠君は子供たちと引き離され、君姑から容赦ない制裁を受けていた。
「お前を打ち殺してくれる!息子の敵討ちだ!」
驚いた侍女・幼桐(ヨウトン)は咄嗟に主に覆い被さってかばったが、そこへ少商が駆けつけ止めた。
「老夫人、調査中なのに私刑に処すとは…」
しかし老夫人は少商が皇后付きだと知り、皇后が息子を助けるため送り込んだと誤解してしまう。
「自分の息子は大事で、私の息子は死ねばいいというの?そんな理不尽なことがあると?」
老夫人は興奮して再び曲泠君を打ち据えろと叫んだが、その時、袁慎が母を連れてやって来た。

袁夫人は早速、長老を呼び集め、嫡女として一族の掟に従い審理を始めた。
当時はまだ父の側女だった庶母、寒門の出なのはともかく、狭量で私心しかなく、到底、父の妻とは認められないという。
すると老夫人は正妻となっても一族に見下されていたと不満を漏らした。
溺愛する梁遐を仕官させたくても一族が推挙してくれず、家主にしようとしても年功序列だと言って機会を与えてくれなかったという。
しかし袁夫人はそもそもこんな騒動となった発端は老夫人にあると指摘した。
実は老夫人が正妻になったのは梁尚を産んだ時ではなく、梁遐を産んだ時だったという。
そのため老夫人は梁尚が庶出だと知られるを嫌って梁遐にばかり目をかけ、そのせいで梁尚は神経質で疑り深い性格に育っていた。
「末子に家主を継がせたいから曲泠君の断罪を急いだのね
 梁家がなければ甲斐性なしの2人の息子の命など何の価値もないけれど…」

袁夫人は聡明な曲泠君がなぜ虐げられても訴え出なかったのか訝しんだ。
実は曲泠君は何度か離縁を申し出たが、梁尚から皇太子との醜聞を言いふらすと脅され断念したという。
子ができてからも離縁を考えたが、出て行くなら子を置いて行けと迫られ諦めていた。
すると袁夫人は事件当日、梁尚に食事を届けたのは誰なのか確認する。
「侍女の幼桐です」

その頃、凌不疑は梁家の男たちを集め、この中に犯人がいると踏んでいた。
女が背後から一太刀(ヒトタチ)で胸を刺し、命を取るのは難しい。
しかも梁尚は交友がなく、終日、部屋に閉じこもって金石の彫刻に没頭していた。
「彼に恨みがあり、利害を争うのは外部の人間ではない、梁家の者だけだ
 本件は太子に関わり、たった1日で都中に広まった
 犯人の手際がいいのも呼応する者がいたからだ
 それに梁尚は梁家家主、家主が死んで夫人が犯人となれば梁尚の子は家主の座を継げない
 つまり取って代われる者こそ、犯人の可能性がある…梁州牧、あなたが真犯人では?」

つづく


( ゚ェ゚)… ←皇后も所在なさげw





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最終更新日  2023.11.05 15:06:52
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