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隣にいた圭介が、ごくりと息をのむ音が聞こえた。「……それって……」 喉奥を這(は)って出たように、声は上ずっている。 微かに震えてもいた。 あの人が持っていたものが何かと聞いたのだと、何となくわかった。 橘さんが私をうかがい見て、言いにくそうに答えた。「猫の……遺体だった。 そのころノラ猫が庭を出入りしてたから……多分それだと思う」 美菜恵さんは動物を嫌っていたから、伸江さんも橘さんも、猫を見つけると追い払うようにしていた。 けれどサキは動物が好きで、見つけると捕まえようと追いかける。 いつだったか、追い詰めた猫に引っかき傷をくらったこともあった。 それを知った美菜恵さんは、ひどく動揺したという。「子供ならいつ負ってもおかしくない程度の、数センチにも満たない傷だ。 それからこれまでに増して、過保護になってしまった」 それが……あんな凄惨(せいさん)な形で現れるとは思ってみなかったと、橘さんはほぞをかんだ。「……違う……」 震える唇で、震える声で、私はつぶやいていた。 橘さんと圭介が、驚いて息を詰めている。 ゆっくりと目を開けると、暗がりの世界から現実に戻った。「違う」と苦くつぶやくと、我慢できずに再び目を閉じた。 今度は昔を反芻(はんすう)するためではなかった。 目を開けていられなかった。 つらかった。 嗚咽(おえつ)が喉奥をつきあげる。 一度それを飲み下して、私は言葉を続けた。「ノラ猫なんかじゃなかった。人なつっこくて、私にもあの子にも甘えてくれた」 ――ヒミツだよ。 そう言って教えてくれた、猫の隠れ家。 古い物置小屋の奥にかくまっていた。←114※ 参加中。お気に召したらクリックをお願いします。 ※ ブログランキング
2006年11月30日
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「昨日、何時に帰ったのか」と職場で聞かれたから「9時」と答えたら「はあ!?」と言われた。……終わんなかったんだもん。仕方ないじゃない。あと、今日の下準備もしてたし。そのおかげで結構スムーズに行く……予定が、予定外のクセのある案件が出てきて、頭の中パニック。一つだけでなく、いくつかあるもんだから、それぞれを「どう処理しようか」と考えながら窓口サバいて仕事して、そのくせお客さんが途切れることなく来て。複数を同時に考えるのが苦手なのに~。伝票の量はそうでもなかったのに、あわただしい一日だった。お客さんにも「月末にしては少ないね(窓口)」と言われるし。笑いながら「内部処理の伝票はたくさん来てるんだ!」と胸のうちで叫んでたけど。そんなこんなで、いつものごとく、私の後片付けが終わらず。手持ち無沙汰で待ってられるのも気が気でないんで「終わったら帰って」と急かしたてたのも関わらず、残ってて。仕方なく、終わってなかったけど強制終了。朝は落ち着いてできないんで、今日中に終わらせたかったんだけどな。そんなわけで、今日の帰宅は7時半。……ちょっと早い?
2006年11月30日
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「とにかく」と橘さんは一度言葉をきった。「俺が見つけたときは、君は体のいたるところに、衣服も血にまみれていた。 俺が声をかけても、しばらくは反応できないほど、ショックを受けていた」 やがて私は、虚ろな眼差しで、ぎこちなく首をめぐらし、橘さんに目を向けたという。 側には、サキと呼ばれていた子が倒れていた。 事情を聞いても、私は答えられない。 サキは気を失っている。 サキも私同様、血にまみれていた。 私とサキの様子に、橘さんはそれぞれの血だと思い、青ざめたのけれど、側で見て違和感を覚える。 多量の血液だというのに、私もサキも、外傷が見当たらないのだ。 ――と、茫洋とした眼差しで橘さんを見ていた私は、ゆっくりと目を見開いていった。 それに呼応して、小刻みに体が震え始める。 傷を探していた橘さんは、その震えで私の変化に気づいた。 見ると、私は、瞳がこぼれそうなほど、めいいっぱい見開いていた。 体の震えは唇にも及んで、わななく唇から細い声が漏れ始める。 視線は橘さんでなく、その向こうを見ている。「…………ゃ…………」 その視線を追った橘さんは――背後の情景を目にして凍りついた。 あの人が――美菜恵さんが、血を浴びた姿で、障子の側にたたずんでいた。 凄惨な姿だというのに、口元にはいつもの穏やかな笑みを浮かべている。 柔らかな笑みは、ひだまりのように優しげで。 血に濡れているというのに、まるで気にしていない様相だった。 それどころか、ひどく満足そうだ。 その手には、細長い物体が握られていて……。 それを見て、私は。 それが何かわかって、私は。「いやぁぁあああああ!!」 発狂せんばかりの声で――叫んでいた。←113※ 参加中。お気に召したらクリックをお願いします。 ※ ブログランキング
2006年11月29日
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今度は背中が痛くなった……。 腰ではなくて、背中側の肋骨下部付近が。 それほど痛くはないけれど、じわりじわりとした痛みが継続してるんで、勝手悪いのなんの。 そういえば。 と、振り返ると、最近、体調がよろしくない。 一時的なものにしろ、腹痛が何度か、腰の痛み、胃腸系の弱さなど、体調不良が結構出ている。 今日は朝から貧血気味で、頭が回転しない状態だってのに、ちと大きな問題が起きて(私のせいじゃない)、その後処理をしようにも、全然考えられない状態で非常に困った。 朝は朝で。 時々、足の裏が、じりじりするような変な感覚があるときがあるけれど、今日は手の平にきたから驚いた。 これも「寝てやり過ごすしかない」って対処だから困った。 健康だけには自信があったのに。 今は体調不調。
2006年11月28日
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――リツちゃん……。 優しい声が、耳の奥でこだまする。 やわらかな響きを持った、心地よい声だった。 呼ばれて振り返ると、側まで来たあの人が、優しげな笑みを浮かべる。 あの子と並んで座っている私の側で、視線が近くなるように膝を曲げて、顔を寄せてくる。 緩やかに波打つ、蜂蜜色の髪が、ふわりと前方に流れ落ちた。 ゆっくりとした仕種で、細い指を私の頬へ伸ばす。 やさしく、いたわるように撫でられる頬。 あの人はいっそう目を細めて笑みを深めた。 ――ほら……になった。「でも」と、圭介が身を乗り出して橘さんに話しかける。「リツ、俺が見つけたとき、そんなんじゃなかった。血なんて、どこにも……」「……見つけた?」 聞き返した橘さんに、圭介ははっとして息をのんでいる。 うかがうように私に目を向けたのも、目を閉じていてもわかった。 瞼の裏で、情景が蘇る。 橘さんの話に呼応して、流れるように視界が転じる。 私の……記憶。 それは不思議な感覚だった。 意識は現在に留まりながら、過去も垣間見ている。 むかし経験したことでも、感じるのは同じ私なのだ。 違うとすれば、昔の情景はかすんでいて、ほころびが目立つところか。 一足飛びに情景が移ろうのも珍しくない。「……庭で、寝ていたリツを、俺が見つけた、から」 言葉を選ぶように、圭介は言葉を切りながら話している。 小さな沈黙が、橘さんの怪訝さを示していた。 二人で話をしつつも、時折私の方に目を向けて、様子をうかがっている。 瞼を閉ざし、うつむき加減のまま、その場にたたずむ私を。 不思議な感覚は、まだ続いている。 瞼の向こうに日差しを感じながらも、目を閉じた暗闇の世界は、どこか夢の中を思い起こさせた。 思えば、いつも見る兵藤の夢と感覚が似ている。 現実であって、非現実が垣間見えて。(……でも) 思い出しかけている事柄は……夢じゃない。 本当に、あったことなのだ。←112※ 参加中。お気に召したらクリックをお願いします。 ※ ブログランキング
2006年11月28日
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今日の更新はムリです……。 帰ってきたのは9時ちょっと。 仕事が忙しかった……。 一人、居残り残業で。 残業に関しては、もうあきらめているけれど。 残業自体は別に「仕方ないか」と諦めがつくけれど。 とにかくお昼をどうにかして。 休みなしで職場に居続けて。 息を休める暇なしってのがキツイ。 今日はお昼三時だよ、三時!! どうにかしてくれんかな。本当に。 みんながそうなら別にいいけれど、私だけってのが泣けてくる。 前の人からこんな感じだったんで「大変だね」の一言で終わるし。 打開策もみつからないしなぁ。 出来ればローテーション組んで欲しい。 いつも同じ時間ってことにせずに。 一時半からの昼食ってのも、正直、キツイ。 今日なんか、ホントに三十分も休んでない。 5分したら、処理があるからって戻って(時間制限つき、急ぎの処理だった)、処理して、昼入って、仕事が詰まってるから、十分くらいで食べて、歯磨きとか身支度して、またもどって。 こんなの、しょっちゅう。 お昼の休みがとりたいときに取れないってのが、ほんとキツイ。 時間になれば休めるって環境でもないから。 お客さんがとぎれないと、お昼は入れないし、私がお昼に入る頃に、お客さんがどやどやくるし。 これでストレスたまる。 めちゃくちゃたまる。 半端でなくたまる。 営業スマイルする自信なし。 自分でも態度がきついとわかる。 わかるけれど止められない。 これで無理したら、叫んでるよ。 今日はそんなこんなで忙しい日だった。 忙しくても、更新するつもりだったけど、腹痛が出てきたんで、きつくて……。 病院……行ったほうがいいのかなぁ。 健康診断「病院で検査受けろ」というふうに、ひっかかった箇所があるんだけれど。 まあ、いつものだからと、ほおっておいてる。 でも、定期診断の前に、自己申告で受けた診断では、異常は見られなかったから。 エコーまでとってもらってわからないんだから、一時的なものだろうと思って。 全体的に痛いから、その箇所とは断定できないけれど。
2006年11月27日
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小説「クチナシの庭」。 ようやく核心。 ……その1に到着。 ……実は事件が二つ絡む結果になったと、書いてる途中で気づいた。 気づくの遅。 事件の設定は変わってないのになぁ。 ヨミが甘かった?? 圭介以外はおおむね予定通りに話が進んでいる。 兵藤での話は、結構気を使った。 ナゾが解ける場でもあるから、それをどうもっていくかってのが、なかなか。 (けど、またナゾが増えたりもするんだけれど) 今度はリツに何があったのか、輪郭がわかってきます。 本人も、断片的に思い出しているので。 フラッシュバック。 ……て、結構きついですよねぇ。 私はたいした経験はないけれど、きつかった記憶はあるんで。 最近はないけど。 あれって、経験した人しかわからないみたい。 うちの家族、いくらことこまかに説明したって、何度言ったって、誰もわかってくれなかったし。 明日は更新……できるかな?(汗) 仕事忙しい最ピーク日なんで……。
2006年11月26日
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軽く目を閉じると、ふわりと人の足が、目の前に見えた。 それが――記憶の断片だと、何となくわかった。 胸がざわめいて、気持ち悪かった。 きつく眼を閉じると「リツ」と腕に人の体温を感じ、はっと我に返る。「顔色、悪いけど」 圭介が心配そうに見ていた。 大丈夫だと答えたけれど、どんな表情をしていたのかはわからない。 止めようとする圭介を遮って「続けてください」と橘さんに話した。 橘さんはうかがうように私を見た後、静かに話を再開した。「美菜恵さんがサキに執着しているのは、何となくわかっていた。 サキの姿が少しでも見えないと、探して回るほどだから。 だからサキも、この家から離れられなかったんだ。 わかってたけど――」 橘さんは、言葉を切って、歯の根をかみしめた。「……正直、あの日、何があったのか、俺は知らない。 俺が見たときには、この部屋でサキは気を失っていて、君は呆然と座り込んでいた」 ……笑い声が、耳の奥でこだまする。 小さな子供の、はしゃぐ声。 それが、ふつりと途切れて、部屋の障子のほうへ、視線が注がれる。 逆光で、よく見えなかった。 輪郭ははっきりしていても、表情、衣服の様子も陰になって何も見えない。 そんな一場面が、時折脳裏をかすめる。(フラッシュ・バック――) 脳裏をよぎる情景が、兵藤でのものだろうと、予想はできていた。 橘さんの話に感化され、今まで見たこともない情景が、瞼の裏にうつしだされる。 とくとくと、心臓はどんどん速まっている。「まさか子供にあんなことをするなんて、思わなかったんだ。 ……精神的な病がどんなものなのか、その時初めてそら寒く感じた」「何が、あったんです」 核心を告げない橘さんに、業を煮やした圭介が詰問する。 橘さんは、私を見た。 私は目を閉じていたけれど、気配でそれを感じていた。「何があったのかは、わからない。 俺が見たときは……君は血まみれで、この部屋に座り込んでいた」←111※ 参加中。お気に召したらクリックをお願いします。 ※ ブログランキング
2006年11月26日
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橋川は間違いなく、この庭の関係者だ。 けれど、そのつながりが見えてこない。「『シライシ』って、誰が言ってた?」「家の祖父母が。その子を迎えに来てた人が名乗ってたと」 私が答えると、不思議そうな顔をしていた橘さんは、すぐに「ああ」と納得した。 「伸江さんだ」 伸江さん……。たしか、家政婦さんの名前だ。「サキを迎えに行ってたの、伸江さんだから、自分の姓を名乗ったんだろう。……兵藤の名を出すわけにはいかなかったし」 そういって、橘さんは苦笑する。 あとで知ったけれど、そのころにはもう、美菜恵さんの奇行は、周囲の人間が囁くものだったのだそうだ。 だれも美菜恵さんの声とは思わなかったけれど、兵藤のイメージは「気味の悪い家」と噂がたちはじめていた。「サキは動物がすきでね。美菜恵さんは苦手だったから、ここでは飼えなかった。それで君の家に遊びに行くようになってたんだけど」 そこでふと、橘さんは私に目を留めた。「……一緒に、遊んでたけど。……覚えてない?」 驚いたように、圭介が私を見る。 私は目を見開いて、硬直していた。 知らない。覚えていない。 橘さんの、記憶に関する言い回しが妙だったから、少しの食い違いは考えていたけれど、そこまでさかのぼるなんて、思ってもみなかった。 消えた記憶は……一日だけではなかったの? 急に、呼吸が苦しくなった。 背筋がざわりと総毛立つ。 膝に置いた手を固く握りしめた。 ……手の平がじっとりと汗ばんでいる。 何も言わない私に、橘さんは言葉を続けた。 覚えているかどうかを問いただすより、全てを話したほうがいいと考えたようだ。「そこで仲良くなったサキが、君をこの家につれてきた。 俺も、覚えてる。 一緒に遊ぶ姿をみて、安心してた。 サキの子供らしいはしゃぎぶりなんて、見たことなかったから」 そういって、橘さんは一度言葉をきった。 そしてつらそうに、眉を寄せる。「けど……今思うと、止めればよかったと、思うときもある。 思い返して、何度も後悔したよ。 ……誰も、わからなかったんだ。 伸江さんも、俺も、サキも……君も。 美菜恵さんは……普段と変わりなく、君を受け入れたから。 俺に最初に会ったとき、あれほど緊張していたのに、初対面の君にその素振りすら見せなくて。 『子供だから大丈夫』なんだと、俺も伸江さんも勝手に勘違いしてて。 美菜恵さんがあれほどサキに執着してるとは……思ってもみなかったんだ」 鼓動が、速まる。 ちらちらと、瞼の裏に光が差し込む。 体中、じっとりと汗ばんでいた。 喉がからからになって、つばをのむと、こくりと音がした。←110※ 参加中。お気に召したらクリックをお願いします。 ※ ブログランキング
2006年11月26日
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……しばらく、声が出なかった。 正直「何を言っているのだろう。この人は」と、疑念さえ感じた。 圭介が、私のほうを見ている。 私の返答を待っている。 それが視界の隅で見えて、私も圭介を見た。 圭介も、ぽかんとした表情をしていた。 驚きなどでなく、意味不明の事象に遭遇した類(たぐい)の顔だ。 何と言ったらいいのか、迷いつつ「あの……」と言いにくそうに口を開いた。「その『サキ』さんって……女の子なんですよね」 名前と記憶から、そう思っていたのだけれど。 橘さんも橘さんで「なぜそんなことを聞くのか」と怪訝な面差しを浮かべている。「そうだけど」「タロに遊びに来てたの、男の子……ですよ」 そこまで言って、橘さんは私と圭介の戸惑いを理解したらしい。「なるほど」とつぶやいたあと、説明した。「動きやすいように、男の子の格好をしてたけど。サキだよ」 驚いたけれど、ほかにもわからないことはあった。「家に来てた子は、苗字は『しらいし』って言ってたようですけど」「……『シライシ』?」 そう。 性別の違いと姓の違いで戸惑っていたのだ。 そこまで言って、ふと、違和感を持った。 ここは兵藤。家に来てたのはシライシ。 ……橋川への繋がりが、途絶えた。←109 111→※ 参加中。お気に召したらクリックをお願いします。 ※ ブログランキング
2006年11月26日
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保管庫更新。少しずつながらも「とにかく、週に一回は更新を!!」ってことでしている。私はタグ支援ソフトを使って作成してる。それでも、一つのページを追加するだけでも結構作業があって(私的には)、時間をくってしまう。一つページを追加すると・前後のリンクをつなぐ・更新履歴にその旨追加・TOPページの詳細表示の箇所にも更新を告知・メニューにそのページを追加。と、ここまでしておいて、UP時にも上書きしたりなんぞしなければならない。上書きするのは更新した分だけでいいから、それを探してサーバー(?)に。……と、こういうことをしなければならないんで、時間がかかってしまう。ブログだと、記事書いて投稿!……で、すむからねぇ。(私は前後のリンクつないだりしてるけど)フリーページに編纂してるけど、保管庫の方が保存量が多い。フリーページは、テンプレート変えたら表示方法(文字色とか背景色とか)も変わってしまったんで、結構ビビッた……。最初から設定しとけばよかったと後悔。もう、気力がないんで、一気読みは保管庫で。ってことに。ちなみに、こっそり更新し続けているほかの二つの小説も、二桁に到達。つっても、序の口の序の口だから。できれば一日に3つ更新したいけれど、やっぱり気力と時間が持たなかった……。で、クチナシ以外は、週に数回のペースで更新中。もすこしまとまったら、保管庫なり、こっちにリンク繋ぐなりする予定。結構、頭の中、混乱したりしなかったり。
2006年11月25日
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橘さんはしばらく考え込んだ後「順をおって話そう」とつぶやいた。「君の家、昔イヌを飼ってたろう」 そんなことまで調べてるのか。 驚きと同時に気味の悪さを感じながら、私は頷いた。 いったい、どこまで調べつくしているのか。 首を縦に振る私を見て、橘さんは圭介にも目を向けた。「覚えてる?」 まさか自分に話を振られると思ってなかった圭介は、目を見張りながらも、ぎこちなく首を縦にふった。「タロの……ことだよな」 不安の色をのぞかせながら、圭介がうかがうように私を見る。 圭介を見て、私も頷いた。 タロしか、飼ったことなどなかったから。「そのイヌに遊びに来てた子、知ってる?」 答える前に、私と圭介は顔を見合わせた。 前、聞いたとき、圭介は知らないと言っていたけれど、のちに祖父母が持っていた写真を見て『見たことはある』と言っていた。 一緒に遊んだことはない。 家の近くで何度か見ていて、近所の子でなかったから印象に残っていたという。 私は面識はない。 知ってはいるけれど、直接会ったことはなかった。「それが、なにか?」 その話を正直に告げると、橘さんは絶句していた。 信じられないと言ったように、私を見ている。「……記憶がないとは聞いてたけど……まさか……ここまでとは……」 うめくようにぼそりとつぶやいている。 その一言に、私は眉を寄せたのだけれど、圭介も橘さんも気づいていない。 なにか予想外のことが起こっているのだろう。 橘さんは驚きを隠せないでいるが、私の方が驚きが大きい。 橘さんの反応を見れば、彼が何を言いたいのか、うすうすわかる。 タロに遊びに来ていた子が、関わっている。 多分、あの子が『サキ』という子の兄弟――。 また黙り込んだ橘さんに、圭介が、それがどうかしたのかと急かしたてた。 つと、視線を上げて私を圭介を見た橘さんの目は……迷いに揺れていた。 その眼差しで私と圭介をしばらく眺めたのち、頭(こうべ)を垂れて深く息を吐き出した。 再び顔を上げたときには、瞳から迷いは消えていた。 意を決した面差しがあった。「君の家のイヌに遊びに来てた子。あの子がサキなんだ」←108 110→※ 参加中。お気に召したらクリックをお願いします。 ※ ブログランキング
2006年11月25日
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MIDIのオリジナルを公開されているサイトが好きで、時々、思い出したように、巡っている。今回も久しぶりに巡ったけど、鳥肌立つような音楽があったりして、すごく感激している。ネットの進歩で、MP3の曲も結構UPされてるから嬉しい。BGMとして堪能させていただいてます。とあるサイトさんのは、CDも出されてて「欲しい!!」と、本気で思った。近々、ベストも出されるようだから、今販売されているものと、今度のベスト、どちらを買おうかと悩み中。
2006年11月25日
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そう言って橘さんは、顔を上げるとまっすぐに私を見つめた。 思わず息をのんでしまう私に、橘さんは苦笑する。「……と言っても、先に手を出したのはサキだからね。君を責めてるわけじゃない。君と出会って、サキも喜んでた。俺も安心してた。……この閉塞された空間に、小さな子供が外を知らずに過ごすっていうのは……。なんと言えばいいのか……子供の成長にはよくないんじゃないかって、気はしてから」 そこで橘さんは言葉を止めた。 そしてうかがうように、私の表情を見つめる。 私は……ただ、目を瞬かせるだけだ。 怪訝な表情を浮かべる橘さんに「……あの」とおずおずと切り出した。「『サキ』って、誰ですか」 今度は橘さんが目をしばたたせた。 信じられないと言ったように、目を見開いている。「……覚えてない?」 曖昧(あいまい)に、首をかしげるしかなかった。 心あたりはある。 庭に迷い込んだとき見た、なぜか男物の着物を着た女の子。 ……泣いていた子。 当てはまる名はその子しかいないけれど、橘さんの話と食い違う気がしてならない。 橘さんは、サキという子と私が仲がよかったように話している。 そんなわけがなかった。 その子とは、庭に迷い込んだあの日、目があっただけなのだから。「……俺も、覚えてない?」「え?」 意味がわからなかった。 聞き返す私に、橘さんは口に手をやって、視線を落とした。 切迫した雰囲気は見て取れる。「……リツがここに来たの、一度じゃないんですか」 それまで口を閉ざして聞いていた圭介が、うかがうように聞いてくる。 橘さんは圭介に目を向けて、迷ったように視線を泳がせた。←107 109→※ 参加中。お気に召したらクリックをお願いします。 ※ ブログランキング
2006年11月24日
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ネットサーフィンしてたら、共同出版の記事が目に付いて、それをあつかっているサイトに行ってみた。 そこのサイトで扱っている共同出版に関する記事を全部読んだ。 会社とのやりとりも。 私も共同出版を持ちかけられた人間なので、気になったので。 やっぱり「おかしい」と思うことはみんなそう思うことなのだ。 この共同出版でわからないのが、相場がどれくらいかがわからないこと。 これでみんな悩むんじゃないかなぁ。 普通、商品をお店で買うとき。 たとえばペンを買うとして。 A店では200円だった。 B店では170円だった。 など、比べる基準がある。 手馴れれば「この金額なら妥当かな」とか「ちょっと高いよ」「うわ! 安い!」とか、自分の価値観加味して考えられる。 私も相場知りたくて、ネットで探してみたけれど、表示はないに等しい。 自費出版なら「概要」が結構あったけれど。 私はなぜか「自費出版ならだいたい100万」と思っていたので、話を持ちかけられたとき、それ以上の金額を言われて、引いた。(実際、内容によっては100万以下でも自費出版可能とのこと。) 自費出版・共同出版に関しては「お気に入りブログ」に登録している「両国の隠居さん」のサイトが詳しいです。 勉強になります。 共同出版の話(アンソロジーも含む)は、3社から来たことがある。 基準どころが3社3様で「なんでそんなに差があんの」と不信感しか抱かなかったな。 つっこみいれたら、不機嫌な声になるし。 純利益に関しても、単純計算で、費用さっぴいて利益を得るには、話題のベストセラー並に売れなければならない。 そこからしておかしいよね。 ちなみに、共同出版だったか、自費出版だったか。 税金関係でも「え!?」と思うことがあるんで、お気をつけを。 「それ、費用じゃないの?」と思うことが「所得」になってしまうとかどうとか。 本は売れないと、出版社で保管していた分を買い取らなければならなくて。 (ここらへんは、社によって違うのかな?) その買い取った分が「所得」として税金対象になってしまう。……とかなんとか。 私もかじりしか聞いてなくてはっきりいえないけれど。 そういう面も聞いてたから、話を持ちかけられても、利益を得るのが難しいのに。ってことで、話にのろうとは思わなかったんだけど。
2006年11月23日
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「どこから……話そうか」 そうつぶやいて、橘さんはしばし沈黙した。 何から話し出そうかと、思慮しているようだった。 考えた後、兵藤のこの家は、別宅の一つなのだとつぶやいた。 兵藤美菜恵(ひょうどう みなえ)は、私がこの邸宅に迷い込む数年前から、夫と別居中だったのだという。 その別居も、彼女の精神的な病が原因だった。 自宅では常に神経が張り詰めてる状況だったので、住まいを別にして、安静をはかろうとしたのだ。 彼女は、変化に敏感に反応した。 唐突にたてられた物音、人の動き、日々の生活の中で起きる小さな事象にも、神経を張り詰めさせていた。 それを緩和させようと、静かなこの別宅に住むようになった。 思惑はあたり、兵藤美菜恵は精神的に落ち着いた状態になった。 時折、奇行をのぞかせたものの、以前にくらべれば、その表出(ひょうしゅつ)頻度は格段に下がっていた。 夫妻には娘がいて、娘は母について、この邸宅に住んでいた。「君達より……一つ、年下になる」 私と圭介を見て、橘さんはつぶやいた。「この広い家で、二人きり。伸江さんも常時つめていたけれど、俺も家の管理を任されていたからときどき顔を出したけど。二人で暮らすには……この屋敷は広すぎた。幼い子供には特にね」 そういうと、一度くぎりをつけるように、橘さんはお茶をすする。「俺もそれが気になってたから、ちょくちょく顔を出しては一緒に遊んでいたよ。……今思えば、屋敷の管理なんて表面上の理由で、本当は子守のためにあてがわれたようだけど。なぜか、その子に気に入られてから」 管理を任された当初は、二週間、毎日邸宅に足を運ぶよう、言いつけられたという。 頼まれたのは、庭の掃除、庭木の剪定など、雑務だ。 あとで考えると、それもついでに頼んだものだろうと、橘さんはいう。 本当の目的は、変化に敏感な兵藤美菜恵が橘さんの存在に慣れるように、毎日通うよう、命じたのだろう。……と、つぶやいた。 初め兵藤美菜恵は、体中に緊張をみなぎらせながら、橘さんに対して、常人と変わらぬ応対を見せていた。 兵藤美菜恵の病状は知らなくても、橘さんも彼女の体の強張りに気づいていた。 それも日を重ねるにつれ、薄れていった。 橘さんも兵藤美菜恵の「日常」としてくみこまれたのだ。「とにかく、変化に過剰に反応する人だった。ここは同じことが繰り返される日常に支配されていた。そこへ……君という、予期しない変化が投じられたんだ」←106 108→※ 参加中。お気に召したらクリックをお願いします。 ※ ブログランキング
2006年11月23日
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「古傷を掘り起こすまね、俺は賛成できない」「圭介……っ!」 やめるよう、袖をひいても、圭介は橘さんをじっと見ている。 ……睨んでいる。 このために圭介が同行を願い出たのかと、今になって知った。 最初から、橘さんの話を聞く気などなかったのだ。 けんか腰に話をきりかけて、相手の怒りを煽ろうでも言うのだろう。 私は焦って、橘さんを見た。 気を悪くしたかもとの心配をよそに、橘さんは悠然とした苦笑を浮かべている。 苦笑いとはいえ、口元に笑みの形をつくる橘さんに、圭介はムッとした。「古傷……ねぇ」 ぽつりとつぶやいた橘さんの言葉は……内に含みをもたせていた。 私がはっと気がついたのだから、圭介も失言に気づいただろう。 ほぞをかむように、圭介は唇をゆがめる。 圭介の心情を知りながら、橘さんは続けた。「君は傷について、何か知ってるようだね」「……そういうわけじゃ……。覚えてないくらいだから、ロクなことじゃないだろうって……」「知らないわりには、よくないことだと決め付けてるようだけど。『傷』というくらいだし。それに覚えていないことがすべて、悪いことは限らないだろう? 忘れてしまったのは、単に物理的な接触を受けただけかもしれないし」 圭介は、膝に置いた拳を握りしめて、眉間に皺を寄せている。 私がそばにいては、言いたいことも言えはしない。 言えるはずがない。 (……知ってる?) 橘さんは、私のあの時の行動を。その場に居合わせた圭介を。知っているのでは。 口を閉ざした圭介に、橘さんは「純粋培養の花は、外では育たないよ」ともらしてお茶をすすった。 完全に、圭介は沈黙した。 それから静かな時が流れて、圭介にそれ以上の反論がないこと、彼が席をたたないことを確信してから、橘さんは手にしたお湯飲みを茶うけに置いた。「……どこから……話そうか」 そうつぶやいたとき、縁側から声がかけられる。 見ると、伸江さんがお茶を持ってきてくれた。 緑茶、コーヒー、紅茶と、いくつか用意された中から、どれがいいかと聞かれた。 どれも人数分そろっている。 圭介はコーヒーを頼み、私は紅茶を、橘さんは緑茶を頼む。 それぞれに出され、伸江さんが頭を下げてさがったあと、橘さんは淡々とした口調で話し始めた。←105 107→※ 参加中。お気に召したらクリックをお願いします。 ※ ブログランキング
2006年11月22日
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仕事中に足がつった。それほどひどい「つり」ではなかったけれど、回復措置を取れなかったのがきつかった。そういうときに限って、お客さん多いんだもん。端末処理しながら……後から考えると「なにやってんだ、あの人」的なおかしな行動とってたように見えただろう。顔しかめて足をもぞもぞさせて(つりを直そうと、指を反対側にぐいっとそらしてた)。何してるか見えないだけに、さぞ訝しげに映ったろう。最後のほうでお客さんと目があって「ヤバ!」と自覚したくらいだし。でもホント、つらかった。お客さんさばいたら、そく、控え室にとびこんで、足のマッサージしたし。なんで内勤仕事で足がつるんだ。ナゾ。何かの栄養不足?運動不足?おかしな力の入れ具合したから??
2006年11月21日
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「庭木が多いでしょう? 風が強くとも静かであるようにと作られているのですよ」 言われて、再び庭に視線を転じる。 確かに、間断なく庭木の塀が続いている。 四方を囲み、けれど機能的な面だけでなく情景をも加味して設えた庭のようだ。 冬の日差しは穏やかで、ここちよい。 静謐(せいひつ)とした静けさを、日差しがもたらすぬくもりが、心地よさに変えていた。 ふと伸江さんを見ると、彼女も庭を眺めていた。 どこか誇らしげな顔だった。 そして案内された部屋は、この前と同じ場所だった。 置いてある家財もその配置も、以前と変わらない。 伸江さんの言ったとおり、橘さんはすでに到着していて、お茶をすすっていた。「博茂(ひろしげ)さん」と伸江さんが部屋の中に声をかける。その声に振り向いて、橘さんは私と圭介に気がついた。 伸江さんは軽く頭を下げると、私と圭介を中へと促して、部屋をあとにした。「おじゃまします」と部屋に入ったものの、どうしたらいいのか、わからない。 どこに座ろうかと迷っていると、橘さんが苦笑をもらしながら、テーブルの向かい側を促した。 橘さんに従って、私と圭介は並んで向かい側に腰をおろした。「君は……はじめて、だね」 橘さんはまず、圭介に声をかけた。 圭介は軽く頭を下げて、自分の名前を告げる。 値踏みするように、橘さんをじろじろ見たかと思うと「俺は納得してませんから」と唐突に切り出した。 あわくったのは私だ。 橘さんは虚をつかれて、目を丸くしている。「圭介……!」 隣の圭介の腕をひきながら、小声で制しようとした。 いきなり、何を言い出すのだ。←104 106→※ 参加中。お気に召したらクリックをお願いします。 ※ ブログランキング ☆ web拍手 ☆(この回のあとがき掲載)
2006年11月21日
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実際歩いて、徒歩でも充分可能な距離だと知り、驚きを増したようだった。 おそらく……圭介は、クチナシの庭が兵藤だろうとの推測を信じていなかった。 子供の足ではたどり着けないと考えていたのだろう。 それが実際に歩いてみて、子供でも行き来可能な距離だとわかり、兵藤家の可能性が出てきたことに驚いているのだ。 突然距離をつめた現実に、戸惑いを隠せないでいる。 呆然としたように圭介が立ち尽くしている間に、私はインターホンを使って訪問を告げた。 しばらくすると、家政婦さんが出迎えに来た。 この前来たときに見た女性だ。 たしか、橘さんは「伸江(のぶえ)さん」と呼んでいた。 彼女は「いらっしゃいませ」と私と圭介に頭を下げると、中へと案内した。 インターホンも彼女が応対したのだろう。 声が一緒だった。 彼女に続いて門をくぐると、はっと我に返った圭介も後に続いた。「あの、橘さんは」 伸江さんとの距離を詰めて尋ねると、一つ頷いて「もう、いらしてます」と答えた。 よどみのない返答だ。 私達が訪問することも聞いていたのだろう。 伸江さんに続いて、広い玄関を通り、この前通った庭沿いの廊下を歩く。 庭に面した廊下は、縁側……なのだろう。 外は木枯らしが吹き荒れていたのに、庭は不思議と静かだった。 風が巻く音も吹きずさぶ音も聞こえない。 ときおり、ゆるやかにそよぐ風がすり入るだけだ。「外は寒かったでしょう」 不意にかけらた声に、思わずびくりと体が震えた。 静かな庭を不思議に思いながら、庭ばかり見て歩いていたから、不意打ちを食らってしまった。 まさか話しかけられるとは思っていなかった。「静かでしょう。この庭は」 まるで私の考えていたことがわかるかのような伸江さんの言葉に、思わず、軽く息をのんでしまう。 ……あからさま、だっただろうか。 伸江さんが声をかけるほど、じろじろと庭を見すぎたか。←103 105→※ 参加中。お気に召したらクリックをお願いします。 ※ ブログランキング
2006年11月20日
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最初、圭介が何を言っているのかわからなかった。 それほど圭介と橘さんは、関わりのないものと思っていたから。 わけがわからず、沈黙する私に、圭介はそれが答えだと思ったのだろう。 つまり――私が、圭介に内緒で兵藤と関わっていると。 約束が違うと圭介が詰め寄っても、まだ私はわけがわからず「何のこと」と聞いた。「あの家に行くときは……話を聞くときは一緒だって言ったろ」 そこでようやく、圭介が何を言っているのか、わかった。 橘さんと兵藤のつながりを知っているのに、軽い驚きを感じながら私は「誤解だ」と告げた。 圭介の同行の件も含めて、事前に聞いておきたい、了承を得ておきたいことがあったのだと説明する。 疑心暗鬼に囚われた圭介は、すぐに信じてくれなかった。 何度も重ねて説明して、しぶしぶながら納得してくれたけれど、でもどこかで疑いを持っていた。 それからが大変だった。 抜け駆けするのではとの疑惑に囚われた圭介は、私を監視するようになったのだ。 クラスにも時折顔を出し、夕方、部屋に明かりがついてなければ家に電話をかけて所在を確かめる。 そんな日々が数日続けば、誰だって異変に気がつく。 クラスでは好奇の視線を受け、家ではお母さんが眉をひそめて「何かあったの」と不審がる。 そうした経緯から、私は早めに兵藤の家を訪れる決断を下した。 橘さんとの予定もあわせて、そうして今日に至る。 隣に並んで歩く圭介をちらりと盗み見して、ため息がこぼれた。 幸い、首にまきつけマフラーのおかげで、圭介は気づかなかったけれど。「ここ」 浮世離れした門の前で足をとめ、格式の赴きぶかい木組みを見上げて告げると、圭介は軽く目を見張った。「ここ?」「そう。ここ」 驚いた表情のまま、圭介も門を見上げる。 初め、歩いて兵藤の家へ行くと告げたとき、圭介は疑いの眼差しを向けた。 圭介も兵藤の家がどこにあるか知っている。 車で十分から二十分かかる距離を歩いていけるのかと、疑っていた。←102 104→ ※ 参加中。お気に召したらクリックをお願いします。 ※ ブログランキング ☆ web拍手 ☆
2006年11月19日
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見知らぬ番号から着信があった。 頭の数字からして、地元じゃないし携帯からでもない。 で、ヤフーで検索かけたら、ヒットした。 前も見知らぬところから電話があって、検索かけたらヒットした。 もしかしたらと思って試したけど。 ほんとすごく便利だよ~。 インターネット。 この前は、セールスらしき電話だったらしい。 会社名もわかって、興味のないところだったから、かかってきてもとらなかった。 留守録にも残さないし、たいした用ではないのだろうと。 以前、ちょっと痛い目を見てたので、携帯にかかってくる見知らぬ電話番号には警戒している。 で、今回は、ワン切りの番号として載っていたのがほとんど。 ……実際はワン切りじゃないけど。 どっちかっていうと、セールスのよう。 出た人は少ないみたい。 もし、見知らぬ番号からかかってきて、不安を覚えたら、検索サイトで見てみるのも一つの手。 相手が誰かわかれば、安心できるしね。 まあ、まず、見覚えない番号は、とらない方が無難でしょ。
2006年11月19日
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2 2月に入ると、気温の低さより、吹き荒れる木枯らしで寒さを強く感じる。 音を巻いて吹き付ける強風に眉根をよせつつ、首に巻きつけたマフラーに顔をうずめる。 そうして寒さをしのぎながら、圭介と二人、兵藤の家に向かっていた。「平日より、休日の方が気分的にも余裕があるだろう?」 そんな橘さんの提言もあって、喫茶店で会った次の週、兵藤の家に行くことにした。 私としては、もう少し、心の準備期間が欲しかったけれど――。 風に体を固くしつつ、傍らの圭介をちらりと見上げる。 私服姿の圭介は、私と同じくマフラーに顔をうずめて、風をしのいでいる。 肩をすくめているのもあって、顔がよく見えない。 私としては、来週がよかった。 もう少し、考える時間が欲しかった。 予定を繰り上げたのは、ひとえに圭介のためだ。 圭介は、私が抜け駆けするんじゃないかと、疑っている。 ……それは……私の浅はかな行動のせいなのだけど。 どこから聞いたのか、あるいは勘付いたのか、『ラ・クォーツ』の橘さんが兵藤に関係していると知っている。 その橘さんと接触をもったっと、知恵との会話から圭介に知れたのだ。 たまたま『ラ・クォーツ』に訪れた知恵に、私の友人だと知っているスタッフの人が声をかけ。 橘さんにはちゃんと連絡しておいたから。と伝言を頼まれて、それを私に伝える際、運悪く圭介に聞かれた。「何かあったの? またバイト?」 バイトなら私を紹介して。と目で訴えながら、知恵が言った。 スタッフの人は、以前、すれ違いでアルバイト代がなかなか払えなかったのを気にしていた。 今回はそんなことがないよう、橘さんに伝言は伝えたと、気をきかせて知恵に告げたのだ。 その時、友人にあいに来た圭介が側を通ったけれど、橘さんと兵藤家のつながりを知らないからとたかをくくっていた私は「ちょっと用があってね」と、まったく気にせずに話をしていた。 その日、家に帰るとすぐさま圭介から携帯に電話がかかってきた。「あの人との用って、なに」 開口一番、そう告げる。不機嫌は、受話器越しでもわかった。 前置きもなく、突然そう言われて、私は目をまたたかせた。「……あの人って?」「橘とかいう人」←101 103→※ 参加中。お気に召したらクリックをお願いします。 ※ ブログランキング ☆ web拍手 ☆
2006年11月19日
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「……ごめん」 かすれる声で、橘さんがつぶやく。「……ごめん」 二度目はうつむいてつぶやいて、添えた手を静かに戻した。 謝るくらいなら。 そう、言いそうになったけれど、悲哀の眼差しが脳裏をよぎって、声にならないうちに飲み込こんでしまう。 ……傷ついているように……見えた。 一度、そう考えてしまうと、罵(ののし)る言葉も出てこない。 橘さんは頭部の前で、両腕を肘をついてたて、手を組み合わせる。 祈るような姿のまま、うつむいたままだ。 沈黙が降りたった。 この喫茶店に来て……何度目だろう。 今が一番、沈黙が重い。 身をすくめて体を固くしていたけれど、長く続く沈黙が居心地が悪くて、我慢できず身じろぎした。 その気配を感じたのだろう。 橘さんが、細く長い息をこぼした。「理不尽なことをしてるって……わかってる。 けど、君が頼りなんだ。君しかいないんだ。 だから……すごく、慎重になってるのも事実だよ。 失敗は……許されないから」「……失敗?」「……物事には、筋道がある。その順序を……欠けさせたくないんだ」 橘さんの話は抽象的で……わかるようなわからないような、あいまいな話だったから、私は何と答えていいかわからず、口を閉ざしていた。 橘さんは静かに顔を上げた。 そうして正面から私を見据える。 眼差しも静かで、真摯で……だけどどこか悲しげだった。「勝手に君の周辺を調べて、嫌な想いをさせて、悪かった。 だけど、どうしても、必要だった。万全を期するためには。 これが、俺の手札だから」「……筋道のため……ですか」 尋ねると、橘さんはあいまいな微笑で、口元をゆがめた。「……見せるつもりはなかったんだけど。 結果として、気分を害したのも事実だ。 ……そこまで、忌むとは思ってなかったんだ。 考えが浅かった」 見せるつもりはなかったというのは、本当だろう。 あの日、橋川が兵藤の家に来なければ、見ることもなかった。 橋川が撒(ま)いた書類を、私が拾い、見てしまったから。「……橋川も?」 ふと気になって尋ねると、橘さんは怪訝な眼差しを向ける。「橋川も……筋道のうち……?」 なぜだかそんな気がした。 けれど橘さんは、口元をゆがめただけで何も言わなかった。 それは暗に、橋川の行動が橘さんの意図するものでないと告げていた。 橘さんの携帯から呼び出しがかかって、そこで話は中座した。 一番話したかったことは話したから、特に問題はない。 兵藤の家を訪れるさいは、事前に連絡をくれるようにと、橘さんから携帯電話の番号の書かれたメモを渡された。 今日、橘さんと連絡が取れたのは、『ラ・クォーツ』のスタッフに頼んで、私の携帯番号を教え、連絡をとりたがっていたと伝えてもらったからだ。 橘さんは、私との会合を優先するからと告げた。「話は……兵藤の家で」 念を押して、先に橘さんは席をたった。 一人残されて、私は飲みかけのカフェオレを口に運ぶ。 口に含んで、思わず眉をひそめてしまう。 ほとんど口をつけなかったカフェオレは、すっかり冷えてしまっていた。←100 102→※ 参加中。お気に召したらクリックをお願いします。 ※ ブログランキング ☆ web拍手 ☆
2006年11月18日
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久しぶりにまともに雨が降った。 9月に台風が来て、それ以降のまとまった雨。 くしくもフェニックスダンロップトーナメントの開催時期にぶつかってしまった。 これまで雨がなかったというのに、こんな大きな大会のときに重なってしまうなんて。 ……と、ゴルフは興味ないけれど、思ってしまう。 現在地が地元、宮崎。 雨のせいなのかなんなのか、タイガー・ウッズ氏も不調の様子。 雨だー!! やっと雨がふったー!! と、喜ぶ地元人とは逆に、大会参加者は大変だろう。 しかも。 季節的にも急に寒くなった今日この頃。 体が冷えて、余計大変だったろうな。 明日の予想も確か雨。 最終日。 タイガー・ウッズ氏の三連覇、成るか?
2006年11月18日
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小説「クチナシの庭」。 100……。 100、いってしまった。 正直、ここまで来るとは思わなかった。 しかも。まだ事件の真相どころか、さわりに触れただけとは。 ……書いてる途中で、設定変わったところもあるけれど。「長すぎ……」と自分でも思うけれど。 まあ、これから事件にも触れていきます。 骨格はしっかり確立してきたんで、そんなに悩まずにすむはず。 いつも悩むのは、話と話をどうつなげるか。ってとこ。 100のようなとこ。 ここも次への繋ぎです。 圭介も兵藤家に……って、考えてなかったし。(その場のノリ。) そこを繋げるために、他にもプラスアルファの理由で喫茶店に律子と橘、二人きりの状況をつくることになってしまって。 行き当たりばったりの「クチナシの庭」。 ……記事数、いくつまでいくかな……。
2006年11月18日
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その物言いに、なぜかカチンときた。「……時期って……なんですか」 何だかすごく、いらだたしかった。 私は何も知らない。 橘さんはそれを知りながら、じらして話そうとしない。 当事者の私が何も知らなくて、水面下で筋道を立て、その上を歩かせようとする人がいるのが嫌だから、思い出そうとしているのに。 なのに、橘さんは全てを話そうとしない。 庭に行っただけであれだけ気分を悪くするのだ。 ロクな記憶でないことなど、すぐに想像できる。 めまいと吐き気に襲われた後、正直、思い出さなくてもいいと思った。 橘さんが緻密な策略をめぐらさなければ、それを知らなければ、思い出すこと拒否していた。 ……今、考えれば、お正月に急なバイトを頼んだことも、その日にアルバイト代を払わなかったことも、すべて計画のうちだろう。 橘さんと会わなければならない状況を先延ばしにして、機会をうかがい。 そうして知恵と由里子という友人が共にいるとき、一人で車にのる警戒心を抱かせない状況下で、兵藤の家へ連れて行った。 兵藤の家を訪ねた私を見て、驚きもしなかった橘さんを考えると、あらかじめ計画していたとしか考えられない。 そうして私は橘さんの思惑通り、兵藤の家を訪れた――。 私の知らないところで、この人の思うまま行動しているなんて、それが嫌で、自分から飛び込んだというのに。 まだ、先延ばしにするのか。 橘さんの手の内で、遊ばれるしかないのか。 それに。「人のこと、勝手に調べておいて……っ」 兵藤の家で見た報告書。 詰まれた書類を思い出して、ぞっとした。 厚さにして10センチはくだらない。 それだけの量の情報を、いつから集めていたのか。 いつから、調べていたというのか。 考えると、気味が悪かった。 苛立ちで微かに体が震えていた。 かみ締めた奥歯が、きり、と音を立てる。 橘さんの顔を見るのも嫌で顔を背け、うつむく。 テーブルには固く握りしめる自分の両手が見えた。 その両手も……かすかに震えている。 その両手に、そっと橘さんが手を添えた。 急に触れられて、びくりと体がすくむ。 驚いて顔を上げると、困ったように……悲しげに、目を細める橘さんが私を見ていた。←99 101→ ※ 参加中。お気に召したらクリックをお願いします。 ※ ブログランキング ☆ web拍手 ☆
2006年11月18日
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少し前から、小説を同時進行で書いている。 全部ネット上で公開している。 ここ以外は、始めたばかりだから、更新しながら調整をとる程度で、あまり活動的ではない。 時間があれば、3つを毎日更新できるけれど。 なんと言っても時間が……。 あと、寒さが……。ごにょごにょ。 前々から、他の小説を書きたかったけれど、クチナシの庭が終わってから。と考えて我慢していた。 けど、終わりがまだまだ来そうにないから、思い切って、同時進行に踏み切った。 一つは恋愛物。 もう一つはファンタジー。(……と、言ってもRPG要素ナシのもの) 恋愛物は、クチナシと同じく、一人称。 ファンタジー物は、三人称。 もともと一人称が苦手で、三人称でばかり書いていたから、ファンタジー物は手が進む進む。 進みすぎて、一つの更新分が長くて困る。 どちらも、これまでに書きたかった要素が強いもの。 クチナシは、とにかく事件を扱って、ナゾがあって、ちょっとドロドロした部分が出てくるものを書きたくて書いていた。 恋愛物は、まさに恋愛を中心にプラスアルファを絡めて行きたかった。 ファンタジーは、国とか戦いとか、まあそんな感じのものを書きたかった。 いろいろ手探りしながら試行錯誤中。 いずれ、保管庫にまとめる予定。 クチナシ以外の二つは、まだ10にもたどり着いていないから、先は長いけど。「続けることに意義がある」「とにかく完成させる」を目標に、書いていく所存にて。
2006年11月18日
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一度うつむいた顔を上げたものの、まっすぐに橘さんを見ることができなくて、視線をそらせながらぽつぽつとつぶやいた。 圭介の同行が可能かを尋ねると、橘さんはあからさまに眉をひそめた。(やっぱり……) 予想したとおりの反応だ。 橘さんがいい顔をしないだろうと想像できたから、前もって聞いておこうと考えた。 橘さんと会う一番の目的は、圭介の同行が可能かを聞くことだ。 兵藤に関しているのなら、余計なギャラリーを望まないだろうと想像はしていたけれど。 なぜかと尋ねられて、圭介も少なからず関係しているからと返答する。「どんなふうに?」 それは言えなかった。 表向き、私は奇声を上げて暴れた事実を知らないことになっている。 黙りこんでいる私を見て、橘さんは橘さんで思案をめぐらす。 長い時間、思慮をめぐらせたうえで「仕方ない」と圭介の同行を許可した。 許可はしたものの、いくつかの条件を提示した。 兵藤に関する話題を他にもらさないこと、兵藤の家を訪れるさいは、私の同行であること、橋川には話をもらさないこと。 橋川の名前が出て、驚いた。 橘さんは、私に橋川との関係を隠そうとする素振りが見えていたから、まさか向こうから名前を出してくるとは思わなかった。「橋川とは……どんな関係なんですか」 聞いても、橘さんは困ったように苦く笑うだけ。「うすうす勘づいてるとは思うけど……まったくの無関係じゃない。けど詳しくは……俺からは話せない」 それは、橋川に聞けということ? 考えを先取ったように、橘さんは「勘違いしないで」と言う。「あいつには話さないって条件、忘れないで」 言いたいことがわからなくて、何だか途方に暮れた心地になる。「いずれ……わかるときがくるよ。今はその時期じゃないんだ」←98 100→ ※ 参加中。お気に召したらクリックをお願いします。 ※ ブログランキング ☆ web拍手 ☆
2006年11月17日
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昨日の夜は、急な腹痛にみまわれて、夕方から寝込んでいた。 膀胱炎? みたいな痛みだけれど、腰にもきてたので、はっきりどうとはいえない。 鈍い痛みを感じたことは、何度かあったけれど、そんなのメじゃない。 体を丸めてないと、痛くて痛くて。 いや、丸めても痛いけど、いくらかマシっていうか。 体がそうすることを望んでいるような感じで。 寝てしばらくするとおさまったけれど、まだ痛みは続いていた。 今日も昼ぐらいまで、結構きつかった。 今も、思い出したように、時々痛む。 ……病院、行ったほうがいいのかと悩み中。 私の場合、最高潮に悪い時期を過ぎてから行くんで、あまり効果がない。 このまえの健康診断でひっかかったところがあるから、それを兼ねて行ったほうがいいのかなぁ。 気になって調べてもらっても「特に異常なし」の診断を受けつづけてきたから、病院に行くのが結構億劫。「たいしたことないのに、行ってもなぁ」って気になってしまう。 気にしなくていいかもしれないけれどね。 症状が続くようだったら行ってみる予定。
2006年11月16日
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橋川のこともわからないことが多いけれど。 彼の場合、私と距離を置いて、接触しないようにしていた。 ことを起こさず、静観しようとしていた。 だから。 クチナシの庭を探す私に、釘をさしたのだろう。 そうして余計な波風を立たせないようにしていた橋川とは反対に、橘さんは硬骨(こうこつ)な手段を用いて、行動を起こした。 ……もし、推測が当たっているとしたら。 人間関係を綿密に調べつくした上で、カエを通じて私に接触をはかってきたのだとしたら。 それだけの労力と時間を割く理由がわからない。 じかに接触を図らず、人を挟んで接触を試みる慎重さは何なのか。 そうまでして、彼は何がしたいのか。 橘さんは、答えなかった。 ただ、じっと私を見つめるだけだった。 私は沈黙に耐えられず、ほかに聞きたかったことを口にした。「どうして、私が記憶をなくしてるって知ってるんですか。……この前言っていた『思い出したことを教えて』って……どういう意味ですか」 「……そのままの意味だけど」「けど」と反論を告げようとした私に、橘さんは手をかざして「ストップ」を示す。「ここで話してもラチがあかないよ。俺が知りたいのは一つだけ。答えは……多分、君の中にある」 どうして断言できるのか。わけがわからず途方に暮れた。「それが明らかになるなら、なんだってする。知りたいことがあるなら教える。それで……思い出すのなら」 橘さんはなぜか……私が全てを知っていると、確信をもっている。 何とも言いがたくて、私は知らず知らずのうちにうつむいていた。「それで? 『兵藤の家に行く前に聞きたいこと』って?」 ←97 99→※ 参加中。お気に召したらクリックをお願いします。 ※ ブログランキング ☆ web拍手 ☆
2006年11月16日
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橘さんにうながされて、向かい側の席に腰を下ろした。「なに 飲む?」 尋ねる橘さんに、メニューに目を通し、カフェオレを頼んだ。 そばにいたウェイトレスの人に注文して、橘さんはブレンドコーヒーを頼んでいた。『ラ・フィージ』は『ラ・クォーツ』の系列店になる。 ここで出されるデザート類は、全て『ラ・クォーツ』で作られたものだ。 製作過程の面から『ラ・フィージ』は『ラ・クォーツ』の側に建設されていた。 飲み物は時間を要さず運ばれた。 運んだウェトレスの人が、橘さんに礼をして下がるのを見て、ふと気づいた。「……ここの管理も、橘さんが?」「うん、まあ」 口元に小さな苦笑を浮かべて、橘さんがつぶやく。 ……となると、県下の『ラ・フィージ』のほとんどを受け持っているといっていいだろう。 『ラ・フィージ』は『ラ・クォーツ』なしでは成り立たないから。「それより」と橘さんは、一口コーヒーをすすったあと、上目遣いで私を見つめた。「君から連絡あるとはね」(……きた) こくり、と息をのんで、覚悟を決める。 緊張で震えそうになる体を、細く長い息を吐き出して落ち着かせた。「聞きたいことが、あって」「……俺でわかることなら話す――と、言いたいとこだけど」 そこで橘さんは言葉を切り、窓の外に視線を転じた。 歩道沿いの窓には、行き交う人の姿が見える。 窓ガラスには、こげ茶色の目隠しと日よけのフィルムを貼っているから、外から店内をのぞこうとしても判然としないようになっている。「……あの家で……話したほうがいいだろうね。君のあの様子だと」 くらり、とめまいがした。 あの時の感覚が不意に蘇って、視界が大きく揺らぎそうになる。 とっさに固く目を閉ざして、手にしたコーヒーカップを握りしめた。(やっぱり、橘さんは――) 推測は、確信に変わった。 気を落ち着かせてから、また細く息をはいて気持ちを落ち着かせる。 ゆっくりと目を開けると、私を見つめる橘さんと目があった。 私の変調に気づいているのに、彼の態度に揺らぎはない。 過去の名残に触れて、気分を悪くすることも、めまいをおこすことも知りながら、結果を求めている。「何が……したいんですか」 それを知りたくて、ここに来た。 ←96 98→※ 参加中。お気に召したらクリックをお願いします。 ※ ブログランキング ☆ web拍手 ☆
2006年11月15日
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昨日は飲み会。およばれしての飲み会。 ご自宅にお邪魔してのものだったけれど、出される料理の多さにびっくり!! 刺身の盛り合わせとか、見ただけで「こんなに食べれるの?」と思うほどだったし。 で、イセエビ、丸ごと一匹で驚いたし。 20センチは軽くあったよ。 ヒゲの長い部分入れたら30センチはあっただろうし。 イセエビ一匹でおなか満腹。 刺身も釣りたてでめちゃくちゃおいしい。 スーパーに並んでる刺身とは、やっぱり味が違うの……。 おいしいけど苦しくて。 家に帰ると即、寝たし。 疲れて眠ったの、久しぶり。
2006年11月14日
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◇◇ 第2部 ◇◇ 怖くないのかと、圭介は聞いた。 抑揚のない口調は、もし私が、記憶をなくした後の言動を知らなければ、特に何を感じるでもない質問だった。 心配する素振りを見せないよう、圭介は注意していたのだろうけれど。 事情を知る今現在は、そうとわかる。 心配する素振りを見せて、逆に私が不信感を抱きはしないかと、懸念していると。 圭介は……私が知らないと思っているから。 圭介の思惑にあやかって、私は特に気負いする様子もなく「少しは」と苦笑いを浮かべた。 いわくつきの場所なのだ。 平気だと言い切れるほうがおかしい。 おまけに私は、兵藤家で倒れかけている。 躊躇するのが本当だろう。 橋川が庭に関わっているとは、言えなかった。 私が兵藤家で橘さんと向かい合っていたとき、橋川が現れたのは関係者だと言っているものだが、何を聞いても当の本人は口を固く閉ざしている。 圭介と橋川の謹慎がとけて一週間。 圭介の心配をよそに、私はまだ兵藤の家を訪ねていなかった。 圭介は翌日にでも訪ねると思っていたらしく、「時期を見て訪ねる」と告げた私に、気の抜けた表情で同意した。 タンカをきったものの、冷静になって、足踏みしている。と、圭介は思っているらしい。その状況が続くことを望んでいるのも、行動の端々(はしばし)にのぞいていた。 足踏みしているわけでも、躊躇しているわけでもなかった。 本当に……時期を見ていたのだ。 圭介と橋川の謹慎が解けてちょうど一週間たったころ。 放課後、ホールムールが終わり、クラスメイトの雑談が留まる教室の中で、携帯電話が鳴った。 着信画面には、登録されていない携帯番号が表示されている。 いつもならとらないけれど、心あたりがあった私は、迷わずその着信を受けた。 そして要件だけ告げる短い話をしたのち、指定された場所へ足を運んだ。 駅近くの喫茶店「ラ・フィージ」。 初めて入店して、戸惑っている私に、ウェイトレスの女性が名前を聞く。 答えると「こちらへ」と奥に案内された。 案内された席には、橘さんが座っていた。 いつものスーツ姿。 彼を見て、体が緊張した。 ――勝負は、これから。 こくん、と、息を飲み込んだ。 ←95 97→※ 参加中。お気に召したらクリックをお願いします。 ※ ブログランキング ☆ web拍手 ☆
2006年11月14日
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今日は仕事の後、飲み会が入っている。 たぶん、帰ってこれない……。 つきあいの飲み方が、こうも頻繁にあるとは思ってなかった。 なんなんだろう。本当に……。今の事務所は……。 一応、日付変わってから小説は更新している。 話の内容的に第一部完。みたいな話のくぎりまできた。 あとは事件の真相追及。 ある程度は概要できているけれど、細かいところはどうなるかな。 圭介があれほど表に出てくるとは思ってなかったし。 舞台の中心は兵藤家にうつります。
2006年11月13日
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翌日、謹慎の解けた圭介と橋川が、共に学校に顔をそろえた。 登校するなり生徒指導室に呼ばれ、あとで保護者もそれぞれ顔をのぞかせた。 早朝の登校、面談も早く終わらせようとしての配慮だったが、橋川は朝のホームルームの時間になっても、一時限目が始まっても、教室にもどらなかった。 生徒指導員の先生とそれぞれの担任も居合わせているから、朝のホームルームは副担がおこなった。 一時限目が終わっても、橋川は戻ってこなかった。 同席する圭介も同じなのだろう。 休み時間になって、窓際の席が少しざわついた。「あれ、橋川じゃない?」 声につられて、窓辺に行き、眼下を見下ろす。 前庭を橋川と、彼の父親らしき姿が歩いていた。 橋川は父を見送ったらしく、校門まで共に歩いた後に、校舎に戻ってくる。 父親はそんな橋川をしばらく眺めて、ふと顔を上げた。 スーツ姿が板についた人だった。 やつれを思わせるように、頬がこけている。 スーツ姿の人を見ると……橘さんを思い出してしまう。 だからだろう。と、思った。 どこかで見た気がしたのは。 やがて静かな噂が、教室中に広まった。「大変だったらしいよ。先生たち」 情報を仕入れてきたのは知恵だった。 橋川が一時限目を休んだのは、保護者と先生がもめていたからだそうだ。「『くだらないことで謹慎処分なんて、何を考えているんだ』って、食ってかかったんだって。橋川のお父さん」 知恵の話によると、子供のけんかに大人が介入するなと、先生たちに詰め寄ったらしい。 もともと、謹慎処分になったのは、橋川と圭介がもめて騒動になった理由を、二人ががんとして口を割らないからだ。 その理由を聞き出そうと、保護者を呼んでの面談だった。 保護者から内容を聞き出そうとの意図から呼んだというのに、逆にその保護者から反発を受けた。 圭介と橋川は、共に互いの両親も知っている友人同士だ。 その二人がケンカをして、その理由を話さなかっただけ。 それが謹慎などの処分になったのに腹がたったらしい。 これが、どちらかに部のある力関係が存在するなら、その処分も納得がいくが、自他共に、周囲さえ認める友人間のささいないさかいだ。 本来、処分などなるものではないはずだ。 そう、くってかかったという。 それには圭介のお母さんも同意した。 先生たちは「理由を話してくれないから」と必死に説得しようとしたが「思春期の子供なんだから、いいにくいことだってあるだろう。先生たちも、そういう時期があったんじゃないのか」と逆に切り返されてしまったのだそうだ。「確かに、謹慎はないんじゃないかって思ってたけど」 知恵がつぶやいたところで、噂の主、橋川が教室に戻ってきた。 小さな漣は、いちどふつりと途切れて、いつもの談笑に戻っていった。 橋川も、噂話には気づいているだろうが、そ知らぬふりを通している。 私も、それとなく橋川の様子をうかがった。 背中しか見えなくて、表情まではわからなかった。←94 96→※ 参加中。お気に召したらクリックをお願いします。 ※ ブログランキング ☆ web拍手 ☆
2006年11月13日
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内容的に、もうすぐ第一部 完。……てな雰囲気の「クチナシの庭」。 あと一つかな? 書いたあと、事件の追及になる予定。 最近「無理なことをしているな……」と、そんな試みを実行中。 いずれこちらにもリンクつなげるだろうけど。 もう少し形になるまで様子を見ているところ。 概要は、いずれ、また。 書くのは難しくないけれど、難しいのは頭の切り替え。 煮詰まらないように注意しなくちゃ。
2006年11月12日
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昨日、弟が突然帰郷。 帰るかも。と聞いていたけれど、音沙汰がなかったので、帰ってこないと思っていた。 当番の仕事から帰ると、家にいて驚いた。 ……顔見るなり、開口一番、失礼なことをのたまうし。 で、我が家の愛犬と仲悪し。 もともと吠えるタイプだけど、その怖がりようが異常なので「何かあったのか」と聞くと、からかい半分で、部屋の隅に追い詰めて怖がらせたとのこと。 人の判別がつくようで、弟の姿を見ると、飛んで逃げる。 とばっちりで私も吠えられた。 犬も、結構根に持つんだねぇ。 と、いうか、覚えているのがすごいっていうか。
2006年11月12日
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「本当に……あの家?」「……多分」「『多分』って――」「確認しようがないじゃない。私が……思い出すしか……」 それしか、確信を得る方法はない。 あとは……全てを知るらしい橘さんの話を聞くことだ。 思い出すと聞いて、圭介は顔色を変えた。「無理に思い出す必要ないだろ。場所が兵藤の……あの家ならなおさらだ。ろくでもないことだから忘れてるんじゃないのか」「それでも、知りたい」「リツ――」「もう、いいよ。圭介」 顔を上げて笑みを作ったけれど、上手く笑えたのか、自信がない。 圭介は訝しげに眉をひそめた。「今まで、ごめんね。……いろいろ気遣ってくれて……ありがとう」「……何のことだよ」 わからないという顔をしながら、けれど圭介の目は不安に揺らめいていた。「もう、一人でも大丈夫だから。……この前も……圭介に迷惑かけたくなくて『関係ない』って言ったんだけど……上手く言えなくて」「リツ――」「兵藤の家の人に……聞いてみる。できるかどうかわからないけど、思い出せるよう、いろいろしてみようと思ってる」 圭介に私の意志を告げようと、ここに訪れた。 自分の知らないところで話が進んだり、知らないところで誰かが庇ってくれたり。 もう、そんなのは御免だ。 あとで知る驚きを経験するのは、もう、たくさん。 圭介には、知らないことで余計な心配をかけたくなかったから、正直に話した。 案の定、顔を強張らせて「やめろ」「無理をするな」と止められたけれど、覚悟は決まっていた。「庭見ただけで気分悪くしたのにか?」 そんな状態で耐えられるのかと、圭介は問いただす。「耐えてみせる」 圭介には……酷な話だ。 圭介は顔をゆがめて、何度も何か言おうとしたけれど、結局、言いたいことをのみこんだ。 何を言おうとしたのか……検討はついている。 私が奇声を上げて暴れたときの状況を、告げようかどうしようか、迷っているのだ。 私が知っていると……知らないから。 その状況を聞けば、思い直すかもしれない。 けれど逆に、余計なショックを与えるかもしれない。 二つのジレンマにさいなまれているのが、表情からわかった。 そのときの状況を知り、それさえも覚悟の上だと、告げたかった。 それだけの覚悟は出来ているのだと、話したかったけれど、そうすると忘れているはずの、暴れた状況はどうやって知ったのかとの流れになってしまう。 橋川との話を聞いてしまったのだとは……さすがに言えなかった。 長い沈黙の後、圭介はか細い声で「わかった」とつぶやいた。「あの庭には一緒に行く。それが約束できないなら、認めないし、全力で阻止する」「……阻止って……」 唖然として言葉が出てこなかったけれど、圭介は本気だ。 何をどうやって阻止するのか、想像もつかなかったから、私はしぶしぶ頷いた。 それを見て、圭介の顔にいくらかの安堵が浮かんだ。「また気分が悪くなって、帰れなくなっても困るしな」 苦笑交じりに、軽口を叩く。 本心は違うのだろうけど……。 それについては深く追求せずに、私は頷いた。←93 95→※ 参加中。お気に召したらクリックをお願いします。 ※ ブログランキング ☆ web拍手 ☆
2006年11月12日
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小説「クチナシの庭」の前後のリンクをつないだ。 自分でも読み返すとき、前後が繋がってたほうが読みやすいんで。 最近はちょっとサボって、前頁しかつないでなかった。 最新まで、前後リンクつないでますよ~。 楽天は、記事自体のアドレスが表示されないんで(少し違うものは表示されてるけど)、ちょっと手間がかかってしまうんだよなぁ……。 ※ 参加中。お気に召したらクリックをお願いします。 ※☆ web拍手 ☆
2006年11月12日
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何か言おうと、圭介の口がかすかに動いて……けれど結局、声にならない。 信じられないと目は見開かれ、本当かとも、問うていた。「あの家は……」 ずっと高久見(たかくみ)で暮らしていた圭介は、兵藤の家で起きた事件を知っているのだろう。 何年もたっているのに、関係する名を聞いただけで思い出せるほどに、衝撃的だったのだ。 私は視線を落とした。 じゅうたんについた自分の手を見ながら「たぶん……」と小さくつぶやく。「思い出しては……いないけど……」 うまくいえないけれど、感覚がダブるのだと、そう説明した。 屋敷の端々(はしばし)に、既視感(きしかん)を何度もおぼえたのだ。「……キシカン?」「『デジャヴ』って……わかる?」「行ったことがないはずなのに、なぜか前に来たことあるとか……その場所を知っているとか……感じることだろ?」 私は頷いた。「それを、感じたの」 圭介は黙って考え込んだあと、なぜその庭を知ったのかと尋ねてきた。 その追求は予想していたので、前から自宅周辺を中心に、あてもなく歩いていた。 そうしていたところ、一昨日見つけたのだと、半分ウソをついた。 ときどき、目的地もなく散策していたのは本当だ。 偶然……見つけたのはウソ。 私にとっては偶然でも、あれは橘さんに仕組まれたことだろう。 それについては、圭介に話したくなかった。 ウソをつくときには、事実の中に一部の虚偽を含めばわかりにくい。「ハシとは……その庭の近くで?」 頷くと、圭介は眉をひそめた。 考え込む圭介に、どうかしたのかと聞くと「いや……」とバツが悪そうに、言葉を濁した。「ハシの家、方向が全然違うから」「……え?」 思いもよらない言葉だった。 橋川が兵藤の家に関係しているのではと、そう考えている。 そして一昨日、橋川がタイミングよく兵藤の家を訪れ、私を連れ出したのは、偶然のものと考えていた。 たまたま兵藤の家をのぞいたら、私がいた。 そんな状況を考えていた。 けれどその場合、家が近くだから家をのぞいたら……。とか、そんな偶然で考えていた。 なぜ橋川は……兵藤の家を知っているのだろう。 どんな……関わりがあるというのか。 ずっとわからなかった疑問が、再浮上した。←92 94→※ 参加中。お気に召したらクリックをお願いします。 ※ ブログランキング ☆ web拍手 ☆
2006年11月11日
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昨日は疲れで、なかば眠るように記事を書いていたけれど……。 よかった。 読めるよ。 小説に関しては正直、90、91は思うように書けてなかったんで、なかなか手が進まなかった。 こんな展開じゃなかったはずなのに~!! と、苦心の作。 話の進む方向はどうにか舵をとれたけれど、余計な横道に逸れそうでキツかった。 ちょっとした試みで、もう一つ小説を書き始めた。 今度は恋愛メイン。 また先がわからず、雰囲気に呑まれて書き始めたもの。 少しずつ、展開が出来つつある。 けど、二つの作品を同時進行ってのも、結構キツイ。 話はかけるけど、いかんせん、時間が……。 どっちかを朝書いて、どっちかを夕方かくってなふうにするとか考えないと、毎日更新できないかも。 クチナシの方が、長くやってるんで、こっちは絶対毎日更新するけど。 クチナシの庭も恋愛……からむのかなぁ。 今のところ、事件を、それに関する人間関係、それぞれの思いを昇華できるかのほうが重要。 恋愛風味が出るとすればそのあとだから。 ……どうなるかな。 ブログランキング ☆ web拍手 ☆
2006年11月11日
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圭介は思慮をめぐらせている。 やがて観念したように息をつくと「本当だよ」とか細い声でつぶやいた。「どうして――」「ケンカなんて、たいしたものじゃない。少しもみあった拍子にハシがバランス崩して倒れて、それを周囲が騒いだだけだ」 圭介からすればそうかもしれないけれど――。 実際、現場を見た知恵が言っていた。 圭介の表情は鬼気としていたと。「なんでそんな……」「リツは聞いてばっかだな。逆に聞くけど、一昨日はハシと何があった? 夕方、一緒にいただろ? 気分悪くして、寝込むようなこと?」 やっぱり。 橋川といるところを見たんだ。 そこまで聞けば、いさかいの発端も検討がついた。 圭介は……橋川に、私と一緒にいたいきさつを聞いたのだろう。 橋川の性格からして、話すとは思えない。 何も言えずにいると、圭介は皮肉げに口元を持ち上げた。「人には聞くくせに、自分は何も言わないんだな」 橋川に聞いても口を割らないのだと、つぶやく。 圭介は、何も話そうとしない橋川にごうを煮やし、もみあいになったのだろう。 そんなつもりはなかった。 ただ、何と言えばいいのか、どう切り出せばいいのかがわからなくて、口を閉ざしていただけ。 話す覚悟は……できている。 そのために、来たのだから。「橋川は……気分を悪くした私を、送ってくれただけ」「……ハシが?」 信じられないといった様子で、圭介が眉を寄せている。 そんな圭介の表情を見て、ふと気づいた。 あの時は気づかなかったけれど……兵藤の家から我が家に送ってくれるまで、橋川の険を含んだ雰囲気を感じなかった。 逆に……気遣って……くれてたように……後から考えると、そう思えてくる。 まさか。とも思った。 嫌っている私を気遣うものか。 圭介も同じ事を考えて、眉をよせたのだろう。「庭を見つけて……気分が悪くなって。まともに歩けなくなったところを、橋川が送ってくれた」 軽く、圭介は目を見張った。「庭って、どこ」 こくん、と思わず息をのんでしまう。「……兵藤って、知ってる?」 声が、震えた。「……兵藤?」と圭介は眉をひそめたけれど、すぐにハッと目を見張った。←91 93→※ 参加中。お気に召したらクリックをお願いします。 ※ ブログランキング ☆ web拍手 ☆
2006年11月10日
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昨日はもともと職場に人が少ない日だった。 研修に行く人や、行事等に参加する人、忌引きによる急な休み、入院している人……。 そんな日に限って、いろいろある。 ちょっと変わった行事や、ちょっと変わった案件、電話、お客さんとの応対。などなど。 仕事の量的にはそれほどしていないのに、すごく疲れた。 いらいらして、叫びたくなるほどに。 そして今日もまた忙しい。 あーもう。 疲れるなぁ。※ 参加中。お気に召したらクリックをお願いします。 ※☆ web拍手 ☆
2006年11月10日
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「どこ?」「気になる?」 餌にとびついた圭介は、私の切り返しに口ごもる。「そりゃ……。あれだけリツが探してたんなら……」「だったら、どうして橋川とケンカしたか教えて」 圭介は眉をひそめた。 橋川のいさかいと、クチナシの庭。 二つがどんなつながりがあるのかと、不思議に思ったろう。 中学のときに転校してきた橋川が、クチナシの庭に関係しているとは思っていないのだ。「りっちゃん?」 圭介の肩越しに、台所から顔をのぞかせるおばさんが見えた。 玄関で話し込む私と圭介を見て、不思議そうに首をかしげている。「そんなところで話し込んでないで、あがってらっしゃいよ」 圭介に気の利かない子ねぇ。とぼやいている。 圭介はおばさんを一瞥しながら思慮をめぐらし、結局自分の部屋に招いた。 話しこむと判断したのだろう。 私は圭介の話に応じた。 正直、ほっとした。 あのまま玄関口で話していると、おばさんたちにも余計な話を聞かせてしまいそうだったから。 圭介の部屋は、久しぶりだった。 小学生の頃は、互いの部屋を行き来していたけれど、年を重ねるにつれてその機会も減っていった。 座るよう促され、ベットを背もたれにできる場所に腰をおろした。 部屋からおばさんに飲み物を頼んでから、向かい合う位置に圭介も座った。「橋川とケンカしたって本当?」 おばさんが運んでくれた飲み物を一口飲んでから、先手を打った。 圭介は先をとられて、口をつぐんでいる。「どうなの?」「リツには関係ないだろ」「ホントに関係ないなら……もう、何も聞かない。でも、庭のことも話せない」「……交換、条件?」 そういう、つもりはなかった。 どちらかと言えば、二つに橋川というつながりがあるから、確かめておきたかったのが本音だ。 けれど。 橋川との件を聞き出すために、うなずいて肯定をしめした。←90 92→※ 参加中。お気に召したらクリックをお願いします。 ※ ブログランキング ☆ web拍手 ☆
2006年11月09日
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学校が終わると、一度家に帰ってから圭介の家を訪問した。 門前払いを食らうだろうと覚悟はしていたけれど、どうしても、確かめたいことがあった。 それを確認するまでは、簡単に引き下がれない。 インターホンを押すと、応対に圭介が出てきた。 ドアを開けて私だと気づくと、軽く目を見張る。 驚きはすぐに、ひそめた眉の中に閉じ込められた。 「なに?」 不機嫌な表情を貼り付ける圭介をじっと見つめて、少し安心した。 ケンカと言っていたから、顔にあざとかできているかと思ったけど、見える範囲にはその様子がない。「橋川とケンカしたって本当?」 私の質問を予想していたのだろう。 圭介は驚く様子もなく、皮肉げに口元を上げた。「関係ないんだろ?」 ……言葉は……言った本人に返ってくる。 言葉に詰まりながら、けれどここで怯(ひる)むわけにはいかなかった。「本当に関係ないの?」 圭介は眉をひそめた。「私のせいじゃないの?」 圭介は口を閉ざしている。探るように、私を見ている。「本当に、私には関係ないの? 一昨日、橋川と一緒のところ見たから……それで橋川となにかあったんじゃないの?」 圭介は何も言わない。 言えないのか、言わないのか。 感情のないその様相からは、どちらともうかがえなかった。 ……だから。 私はカケに出た。「……ずっと探してたクチナシの庭。おととい、見つけたの」 圭介の顔に、驚きが満ちる。 無表情の仮面が、剥がれ落ちた。←89 91→※ 参加中。お気に召したらクリックをお願いします。 ※ ブログランキング ☆ web拍手 ☆
2006年11月08日
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伏線ひきはだいたい終わってたけど、核心になかなかふれられずに、書いてるほうとしても結構やきもきしてた、小説「クチナシの庭」。 話の核となる事件に、もうすぐたどり着けそう。 初め考えてたものと変わってるけど、ラストもメドがついたから、結果オーライということで。 ……こんな話になるとはなぁ。 と、自分でも驚きぎみ。 事件性を絡めようとは前から考えていた。 その内容が、最初考えていたのとだいぶ変わっている。 リツの記憶。 橋川の想い。 橘の思惑。 そして……兵藤の家で起きた事件の真相。 すべてを絡ませて、もうすぐ、メインに突入。 (圭介と橋川が謹慎処分は、書いてるうちにそうなってしまって……。 このあたりをもう少し消化してから、メインです。)※ 参加中。お気に召したらクリックをお願いします。 ※ ブログランキング ☆ web拍手 ☆
2006年11月08日
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どんなツテがあったのかと尋ねる知恵に、私はカエを見た。 バイトの話はカエがもってきたから。 カエは私に目を向けたあと、困ったように頭をかいた。「アニキの彼女がスタッフでね。そこから頼まれたんだけど――」「教えてよ~。『ラ・クォーツ』のバイトなんて、そんな話があったんならぁ」「そんなこと言ったって……」 カエはあきれ返っている。 バイトする気はさらさらなく、さらにクリスマスに予定の入っている彼氏持ちに、誰が声をかけるだろう? 知恵も無理なことを言っているとわかっている。 わかっているけど、言わずにはいられないのだ。 カエのお兄さんの彼女が『ラ・クォーツ』で働いていたとは知らなかった。「駅前支店?」「そ」 全然気づかなかった。親しげに話している様子は見かけなかったから。 告げると、カエは苦笑をもらした。「話す時間なんてなかったから。あっちはあっちで戦争だったし。最初、スタッフにバイト生の話が来たとき『このさいだから素人でもいい。ただし。体力重視』って言われたんだって。で、アニキの彼女、私の顔がピンときたってわけ」 カエの家族が『ラ・クォーツ』のファンになったのも、その彼女のおかげらしい。 カエのお兄さんがとりこになり。お土産として持って帰ったケーキを食し、家族も虜となったという。 実際、数ある候補の中から、カエが陸上部に所属しているのが決め手となって、アルバイトを請け負うことになった。 え。と私は驚いた。「ほかに……候補の人、いたの?」「らしいよ。あとで聞いたんだけど」「どうしてその中から選ばないの? カエがさがす必要なかったじゃない」 他にやりてがいないと思っていた。 だからカエの手助けになればとの思いもあって、受けたのだ。 そう言われると――。とカエも首をかしげたけれど、深くは考えなかったようだ。「知ってる人間同士のほうが、やりやすいと思ったんじゃない?」 そう、思えなくもない。 でもアルバイトと言っても二日限りの限定だ。 初対面同士でもかまわないではないか。 思い出したのは、あの兵藤の家にあった、私の身元周辺を調べた報告書。 それを持っていた、橘さん。 卓につまれていた書類。 友人関係など、把握済みだろう。 知っているなどつゆほども感じさせず、初対面の様相で接していた橘さん。 ――もし……。 あのアルバイトが、見越したものだとしたら。 兵藤の家へ立ち寄ったのも、思惑のうちだとしたら。 思いつきは確信に変わり、ぞくりと背筋が冷えた。 そう考えたほうが……符号が綺麗につながるから。←88 90→※ 参加中。お気に召したらクリックをお願いします。 ※ ブログランキング ☆ web拍手 ☆
2006年11月07日
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「ねえ、どうやって『ラ・クォーツ』のバイト、することできたの?」 昼食は知恵の席を中心に、四人で開いている席をあわせて食事をとった。 休み時間はその席を延長して使っている。 持ち主たちは他のクラスで昼食をとっているので、文句もない。 もちろん、了承を得て使わせてもらってる。「どうやってって……」 私はカエを見た。 カエは紙パックのジュースから伸びるストローをくわえて、きょとんとした眼差しで私を見ていた。 なぜまた、そんな話をするのだろう。 そう言いたげな眼差しだった。「バイトする気ないって言ってなかった?」 どんなにお小遣いが乏しくとも、知恵はバイトをする気にはなれないと言っていた。「社会人になったら、ちゃんと働く。それまではまだいい」 それが信条の知恵が、アルバイト。「『ラ・クォーツ』は別」 と、知恵は拳をにぎりしめ、息巻いている。 そういえば、知恵は洋菓子に目がない。とくにケーキを主とするスィーツには弱かった。 もし可能なら、パティシエを目指したいというほどに。 それを思い出して、納得した。 知恵にとって『ラ・クォーツ』は魅力的に映っただろう。「昨日、バイト募集していないかって聞いたら断られてさ」 知恵の話だと、『ラ・クォーツ』ではバイトの募集はかけないのだという。 どんなに多忙でも、どんなに人員がかけても、バイト生を募ることはまずないのだそうだ。 知恵は驚いて「でも」と言い募った。 クリスマスのとき、友達がバイトしたのだと。「……ああ、あれ」 レジのスタッフは苦笑した。「あれは例外中の例外。確かに、いつもお手伝いを頼んでるけれど、募集をかけてるわけじゃないから。関係者を通じて頼まれた人でないと駄目。あと、経験者重視。いつもはここで働いたことのある経験者がきてくれてたんだけど。今年は専務がどうしてもつかまらなかったからって、うちのスタッフに素人でもいいからって募ったのよ。それで来たのがあの子達だったわけ。こんなこと、まずありえないから。おそらく、去年だけでしょうね」 下手な期待を持たせるよりは。……と、真実を教えてくれたのだろう。 夢、やぶれて、知恵は落胆していた。 いきさつを知らなかった私とカエは顔を見合わせた。「……知ってた?」 カエはストローをくわえたまま、ぶんぶんと首をふる。「橘さんって人にも頼んだんだけどー」『就職面接なら受けるよ。規定の手続き踏んでくれればね』 そう微笑んで、きっぱりと切り捨てたのだそうだ。『ラ・クォーツ』では調理専門学校を卒業した生徒か、パティシエとしての経験者しか受け付けていない。今の知恵には、そのどちらも持っていかなった。←87 89→※ 参加中。お気に召したらクリックをお願いします。 ※ ブログランキング ☆ web拍手 ☆
2006年11月07日
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カエが先手をうったおかげで、口さがない噂は必要以上、大きくならずにすんだ。 由里子も知恵も気遣って、何かと明るく振舞ってくれる。 それにつられて、暗い気分をひきずらずにすんだ。 クラスの誤解はカエの一言が効いたけれど、他のクラス――特に圭介のクラスの子は――こちらを見つめては何やらひそめいた声を交わしている。 たいてい二人から数名のグループだ。 声はひそやかだけれど、態度は隠そうともしていない。 カエはそんな集団を目にすると、あからさまに眉をひそめて睨みつける。 大抵はカエの態度に気づいて、教室のそばからこそこそと退散するのだけれど、気づかない集団には「何か用?」と、険を含んだ声をかけた。 まともに返事をできる子はいなくて、互いに顔を見合わせ「別に……」ともごもご口ごもる。 カエははっきりしない態度が嫌いだから「用がないならどっか行って。邪魔なんだけど」と嫌悪を含んだ言葉を吐き捨てた。 今のところ、カエに対抗できる兵(つわもの)はいない。 由佳里や知恵は、カエに拍手を送り絶賛していた。 本当に……カエには感謝するばかりだ。 彼女が払う必要のない火の粉を、かわりに払ってくれるのだから。 礼を言うと、カエは照れながら困った表情を浮かべた。「我慢できなくてね。ねちねち陰湿なの。聞きたいことあるなら聞けばいいじゃない。こっちはやましいこと、ないんだし」 ねえ。と、同意を求められて、少々困った。 同意したけれど、罪悪感でちくりと胸が痛い。 やましいことはないけれど……話せていないことはあるから。 普段に比べて落ち着かない周囲のなか。 交わす話も、暗いところを見せないように、自然とテンションがあがっている。 昼休み。 昼食を終えて、知恵が漏らした盛大なため息も、いつもなら静やかに落としただろう。「あーあ」とつぶやいて、机に顔をつっぷしている。 そのまま視線だけを上げて、真向かいの私を見上げた。←86 88→※ 参加中。お気に召したらクリックをお願いします。 ※ ブログランキング ☆ web拍手 ☆
2006年11月06日
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