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ときどき、無性に文章を書きたくなる。 今がその時期。 季節も秋めいてすごしやすいからだろう。 書けるから。と、どんどん書いている。 煮詰まらなければ、毎日更新も苦じゃない。
2006年09月30日
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気まずい想いでうつむいていると、察した圭介が慌てて否定した。「周りのせいじゃなくて。部のみんなが騒ぎすぎて手がつけられなくてな。で、顧問の一喝で強制終了」 陸上部の面々は、体育祭の後も、身のうちに熱がくすぶっていたらしく、周囲の部から苦情が出るほどバカ騒ぎをしていたのだという。 高久見(たかくみ)の陸上部らしい。 我が校の陸上部は、お祭り騒ぎを好んでいた。「そう」 ひとまず、ほっとした。 圭介に何か用があるのかと聞くと、彼は口ごもった。 家が近くと言っても、幼い頃と違い、年に数回、互いの家をゆききする程度だ。 中学を過ぎた頃から、互いの部屋に入ったこともない。 今も圭介は、ドアをきっちりしめず、わざと十センチほど開けている。 変な不安を与えないように、私と、家族への気遣いだ。 そんな圭介が、わざわざ部屋まで訪れるのだから、それなりの事情があるのだろう。 普段、能天気を装う圭介からはうかがい知れないけれど。 圭介はしばらく黙り込んだ後、言いにくそうにつぶやいた。「ハシと……なんかあった?」 思いもしなかった名前が、圭介の口から飛び出して、私はびくりと体がすくんだ。「……なんで?」 過剰な反応をして、しらじらしい返事だと思いながら、私は苦笑を浮かべて「何のことかわからない」フリをする。 圭介が、身の震えに気づかなかったことを願いながら。 圭介は、わずかに眉を落とした表情をのぞかせ、じっと私を見ている。 私は苦笑を顔に貼り付けたまま、圭介の眼差しを受け止めていた。 目を逸らしたら、認めることになってしまう。 圭介はしばらく私を見つめた後、盛大なため息を吐きながら、うつむき、肩の力を落とした。「……いっつもソレに誤魔化されてたんだよな……」 ぼそりとそうつぶやいた後、圭介は「あのな」と勢いよく顔を上げた。 少し、怒っていた。「聞こえたの。あのあとのリツとハシのやりとり。険悪な雰囲気、漂いまくってたやつ」 あのとき、一度教室を出た圭介は、橋川に明日の日程について聞きたいことがあって、舞い戻ったのだという。 そこで、橋川と私の……正確には険を含んだ橋川の言葉が聞こえたのだそうだ。 橋川は普段から、感情を表に出さない性格だった。それが正の感情でも負の感情でも、ほんのわずか顔に出すだけで、周囲が感情を読み取るのに苦労していた。 そんな橋川が、私を非難している。それも、侮蔑さえ感じさせる口調でだ。 近しい友人だというのに、そんな橋川の一面に初めて遭遇した圭介は、呆然とした。 教室に入るに入れず、廊下に立ち尽くしていた。 やがて、教室から出てきた橋川と遭遇したものの、橋川は圭介がそこにいた事実にわずかに目を見張るだけで、一瞥をくれたのち、何も言わずにその場から離れていった。 圭介はしばらくその場に立ち尽くしていたけれど、私の足音に気づいて、逃げるようにその場から離れたのだという。 見なかった、聞かなかったことにしようかとも考えたが、どうしても胸がもやもやして、こうして私のもとへ訪れたのだ。(ほっといていよ) 苦く胸のうちでつぶやきながら「そんな、たいしたことじゃないよ」と苦笑を顔に貼り付ける。 ←19 21→
2006年09月30日
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私にも、心あたりはある。 小学生になる前の記憶はあやふやなものが多いけれど、白く霞がかった情景の中で、写真に映る子と、そっくりな男の子と遭遇したことがあった。 あのクチナシの庭に迷い込んだ、あの家の側で。 その子の面影が、あのクチナシの庭で見た女の子と似ていた。 後になって気づいたけれど、その時、縁側に立っていた女の子は、なぜか男の子用の着物を着ていた。 写真に映る、橋川とおぼしきこの子と、クチナシの庭で会った女の子は兄妹なのではと、ひそかに考え続けていたのだ。 一時期は、それを確かめたくて、圭介や小学校の同級生に聞いてまわっていた。『しらいし』という名と、クチナシの庭の咲き誇る家屋を知らないかと。 どちらも、みな首をひねるばかりで、なんの情報も得られなかった。 あれほど気になって仕方なかった写真も、クチナシの庭についても、今はあの時の情熱は消え去ってた。 橋川に近づくことさえ……怯んでしまうのだから。 彼と関わりに、足を踏み出せずにいた。 ベットに寝転んで体を休めていると、部屋のドアをノックする音がした。「お母さん?」 壁掛け時計を見ると、もう六時を過ぎている。「ごめん。今日は晩御飯いらない」 重い吐息を吐きながら告げると、カチャリと音を立ててドアが少しだけ開いた。「……俺。圭介だけど」 思いもしかなった声に、私は慌ててベッドの上に飛び起きた。 眠りかけていた意識から、一気に目が覚めた。「な、なに? どうしたの?」「入ってもいい?」「……いいけど……」 了承を得て、圭介は部屋に入ってきた。 Tシャツにジーンズと、私服姿に着替えている。 対して私は、帰った頃のままのジャージ姿だ。 私は改めて時計を見た。 六時といえば、まだ部活をしている時間ではないのか。 訊くと「練習にならないから、みんなで強制終了」と答え、円卓の前に腰を下ろした。 私には、耳に痛い話だった。 圭介の変動的な人気の産物である、周囲をとりまく女の子の状態は、これまで幾度か目にしている。 今回はこれまでに例のない、騒ぎっぷりになるだろうとは思っていた。 圭介の打開策を断ってるだけに、何だか悪い気がしてならない。 ←18 20→
2006年09月30日
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いろいろ試しながら、フリーページ作成中。ひさしぶりで、タグの知識がすっかり抜け落ちてしまってて……。過去の「ブログ製作記」を見ながら製作中。なかなか難しいです……。↓画像のUPの仕方(タグのほう)も忘れ気味だし。 下の文字は画像なのですよ。
2006年09月30日
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私は……もしかしたら、幼い頃の橋川を知っているのかもしれない。 その想いは、今もずっと胸のうちに残っている。 中学の、橋川が転校してきたころから考えていた。 小学校低学年の頃だったら、同小学校出身者も覚えているけれど、そんな話はカケラも耳にしない。 と、なると、小学校に入学する前のことだ。 同級生の中には、保育園にも幼稚園にも通っていない子もいたから、橋川もそうかもしれない。 だとしたら、顔見知りがいないのもわかる。 私が祖父母の家に遊びに来ていた頃。 そのころ、どこかで会ったのではないのか。 あのころは子供の特権で、名も知らぬ子等と遊んでいることも度々あった。 おまけに私は放浪癖も持っている。 親の知らぬところで知人ができてもおかしくない。 その頃の私は、周囲の状況に無頓着だった。 ただ、目の前にある出来事を、そのまま受け止めていた。 名も知らずとも、初対面でも、気負いなく声をかけていた。 橋川とはそのころ知り合ったのでは。 確信に近い想いには、根拠がある。 いつだったか、祖父が自分のアルバムを見せてくれたときに、橋川らしき子供が移映っていたのだ。 祖父母が両側に立ち、恥ずかしそうにはにかんだ顔をした男の子。 側には、カメラ目線をはずした、犬のタロも映っている。 その時、中学三年だった私は、一目見て橋川だと思った。 祖父にこの子は誰かと聞くと、祖父は写真を眺めて考え込み、長い時間をかけてようやく思い出した。「タロを飼ってたころにな、よく遊びに来ていた子だなぁ。……名前? ……さあ。『しらいし』……だったかなぁ」 タロとは、以前飼っていた柴犬の名だ。 祖父がはっきりしないので、祖母に聞くと、祖母はよくその子のことを覚えていた。 「そうそう。タロに遊びに来ててねぇ。……まあ、懐かしい写真。撮ってたんだねぇ。……名前? 『白石』……なんだったかしらねぇ。『ぼうや』って呼んでたからねぇ」 苗字を覚えているのも、その子を迎えに来た親から聞いたのだという。「橋川じゃなかった?」「そんな名前じゃなかったよ」 似ている子がいると告げると、祖母は「その子に聞いてみたら」と簡単に言う。 そんなに簡単に聞けるわけがなかった。 姓が違うというのは、両親の離婚、再婚など、何かしらの事情があったに違いないのだから。 そんな話を、親しくもないクラスメイトに、どう聞けばいいというのか。 ←17 19→
2006年09月30日
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競技にまともに参加していないのだから、疲労などないはずなのに、体は重く、家へ帰るとそのままベットに倒れるように横になった。 なぜこうも体を重く感じるのか。 答えなど、考えるまでもない。 橋川とのやりとりに、精も根も使い果たしたのだ。 ……考えると、橋川とまともに話などしたことなどなかった。 必要最低限の会話以外、私に向けられる橋川の声を聞いたことがない。 だから余計、なぜ彼が、ああも私を疎んじているのか、理由がわからなかった。 私が何をしたというのか。 私の何が気に入らないのか。 うつぶせていた体を仰向けにころがして、視界に広がる白い天井をぼんやり眺めていた。 さっきの教室の出来事だって、よくよく考えれば、橋川が非難するほどのことはしていないはずだ。 瀬口先輩と谷川先輩の関係も彼等の想いも、全学リレーの走順に関して起きていた出来事も、何も知らなかった。 知るはずがないのだ。事情を知っているのは、全学リレーの練習に参加していた生徒だけなのだから。 知った上での、圭介への態度を非難されたなら、まだわかる。 橋川の非難は、私が青団、白団の団長の事情を圭介から感じ取り、圭介の考えも知った上で、冷たい反応をとった。その考えが根底に根付いている。 考えれば考えるほど理不尽だ。 あとから考えれば、矛盾点にも気づくのだけれど、その場となると、そうもいかない。 思考も息も体の動きも。 橋川が側に来ると全てが硬直する。 何もできなくなる。 それでそのまま、よく考えれば理不尽な橋川の言葉に、反論もできないのだ。←16 18→
2006年09月29日
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今日は地鶏の刺身と、地鶏の炭火焼を食べた。 地鶏の炭火焼は久しぶり。 バーベキューセットみたいなのが家にあるんで、それでお店の味に何度も挑戦したけれど、やっぱりお店のような味は出ない。 お土産として家に持って帰ると、久しぶりということもあって、家族にも好評。 おいしかった~。
2006年09月29日
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ちょっと長くなってきたんで、目次風に作ります。小説「クチナシの庭」 1 2 3 4 5 6 7 9 10 11 12 13new 14new 15new 16new話の筋がまったく見えていないんで、どうなるか未定。ちょっと、勢いに任せて書いてみたくて。「3」以降、長めになっていてすみません。「見やすく」を心がけたいんですけど、きりのいいところでだと、こんなふうになってしまって……。
2006年09月28日
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橋川のいう谷川先輩は、白団の団長だ。 谷川先輩は、誰もがアンカーを務めるだろうと考えていたところを、実力を重視して、誰もが伝統と思ってはばかりなかった「団長=(イコール)アンカー」の図式に背いた。 副団長をはじめ、多くの人が谷川先輩にアンカーになるよう説得したけれど、ガンとして首を縦に振らなかった。 ――自分の力はわかっている。団長として、足をひっぱる真似はしたくないんだ。 そう、頑なに言い続けて。 タイムで走順を決めようとした谷川先輩は、アンカーを圭介にと考えていた。 純粋に、記録から判断した結果だ。 団長がアンカーをつとめないだけでは飽き足らず、三年を差し置いて二年に任せるとは。 そんな嘲笑を受けるのは目に見えていたため、他の団員が「せめて三年にアンカーを」と説き伏せた。 その経緯は圭介から聞いていた。 谷川先輩は本気で優勝を狙っているのだと、肌で感じた圭介は、自身も感化され、彼にしては珍しく、熱心に練習にも参加していた。 そこまでは聞いていたけど、瀬口先輩の話は聞いたことがない。「谷川先輩がアンカーにならないのに一番反対していたのは、瀬口先輩だったよ。瀬口先輩は、谷川先輩と全学リレーのアンカーを走るために、団長になったようなものだし」 谷川先輩と瀬口先輩は、後輩の私たちがその仲のよさを知っているほど親しい友人だった。 谷川先輩が団長になったのを知り、瀬口先輩も団長にたった。 「体育祭の練習に参加してたヤツならみんな知ってる。瀬口先輩が何度も谷川先輩をアンカーに誘ってたから」 瀬口先輩が、ときには挑発紛いの言葉を投げても、谷川先輩の意志にゆるぎはなかった。 瀬口先輩も、谷川先輩と同じ組の走者になることをあきらめていたとき、白のアンカーが競技中、負傷したと知る。 これで谷川先輩がアンカーを走る。 誰もがそう思っていた。 ところが、谷川先輩は圭介をアンカーに起用した。 もちろん白の団員総出で反対したけれど、谷川先輩の信念は曲げられない。「メンツのために、負けるかもしれない賭けをしなければならないんなら……余計なリスクを負わないとならないなら、俺は出ない。リレーから降りる」 そこまで言われては、団員が折れるしかなかった。 団長がアンカーを務めないばかりか、リレーにさえ出ない。 ……などといった最低最悪の事態だけは避けたかった。 谷川先輩は「全学リレーのアンカーが団長である必要はない」とずっと言い続けていた。 伝統が息づき始めたころから振り返ってみても、過去いくども団長以外が全学リレーのアンカーを務めた例は多々あった。 私たちの頃は知らないけれど、今の三年が一年のときも、二つの団が、団長以外の団員がアンカーを務めていた。 いたたまれないのは瀬口先輩だ。 期待は、親友の頑なな信念の前に散ったのだから。 瀬口先輩の想いは、全学リレーに参加する生徒はみんな知っていた。 谷川先輩も、もちろん知っていた。 それでも、谷川先輩はアンカーになろうとはしなかった。 そこへ圭介が、瀬口先輩に挑発紛いの言葉を投げかけたのだという。 瀬口先輩もわかっていたのだ。 谷川先輩と競いたいのなら、瀬口先輩が同じ土俵に上がればいいのだと。 わかってはいたが……周囲を気遣って、踏み切れずにいた。 圭介は瀬口先輩の背を押したのだ。「何も知らないのに、自業自得とか……言うことじゃないだろ」 橋川はまっすぐに……私を見ている。 私は目をそらせなくて、その場に棒立ちとなっていた。 橋川は……呆れというか、嫌悪というか……そんな表情をのぞかせ、わずかに眉を寄せている。 ズキンと胸が痛い。 この場から逃げ出したいのに、足が動かなくて、呼吸の仕方もわからなくなるほど緊張が体を包んでいる。 陸に上がった魚のように、息が苦しい。 口の中がからからに乾いていた。 圭介に近しいのに、彼を理解しない私に、心底呆れているのだ。 何もいえない私を、橋川はしばらく眺めていたけれど、反論も肯定もしない――意志を告げようとしない私に見切りをつけて、背を向けると教室から出て行った。 橋川が教室から出て行って、足音が聞こえなくなって、それからしばらくしてから、徐々に体の緊張が緩んできた。 重力の感覚が体に戻ってきて、重みとなって四肢に重くのしかかってくる。 ぼんやりと、頭の中にモヤがかかっているように、にじんだ景色が視界を覆っていた。 この時期、なぜクチナシの庭を思い出すのか、わかった。 橋川を見て感じるめまいが、あの庭で感じたものと似ているのだ。 狂おしいほど花の芳香に満たされていた庭。 再びあの情景に囚われたように、私はしばらく、その場から動けなかった。 ←15 17→
2006年09月28日
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昔の画像に手を加えてみたもの。 なんだかタイトルっぽい?
2006年09月28日
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数日前……か、一週間近く前。 たまたま車の中で聞いてたFMラジオで、コブクロの番組が流れていた。 運転中はラジオでなく、CDを聞くほうだけれど、この時は聞くCDがなくて、たまにはって感じて聞いてみた。 偶然に感謝! すごくおもしろくて、楽しくて! コブクロの曲は好きで聞いていたけれど、ラジオがあるとは知らなかった。 まあ、あまりラジオを聞くタイプでもなかったし。 とにかく、二人の会話がおもしろい。 ラジオ聞きながら、声出して笑ったの、久しぶり。 それがきっかけで、最近はラジオを聴くようになっている。 結構、ラジオっておもしろいよね。 今はメールがあるから、参加するのも簡単に、リアルタイムになってきてるし。 楽しそう。
2006年09月28日
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「リツなら前からそんな噂あったし、とりあえず大会まで俺がはっきり否定しなければうやむやのまま行くかなぁ。とか考えて」「ほか当たって」 馬鹿らしくなって席を立つと「駄目だったからリツに言ってんだろ」と、心底困り果て、疲れた声を出した。「陸上部の子は? 一番無難じゃない」「『冗談じゃない』って断れるか、便乗されるか」「……便乗?」「この際、付き合わない? ……みたいな。気があるとか勘違いされたみたいで。その気があるなら、とっくに言ってるって」 確かに、そう勘違いを受けてもおかしくない。 それほど圭介が、頼もうとしていることは常識から外れているのだ。 黙っている私を、圭介は怯んだような眼差しを向けた。「……まさかリツもかよ」「冗談言わないでよ。……相変わらず、変動的な人気があるんだなって、再認識してたの」「株価みたいに言うなよ」「似たようなものじゃない」 とにかく、と、私はバックを肩にかけた。 「そんな話をしたかっただけなら、私帰るけど。……アンカー受けた時点で、少しはこうなるってわかってたでしょ。瀬口先輩挑発して、橋川まで巻き込んで。目立つことしたんだから、有名税払うつもりであきらめたら?」「そんなこと言ってもなぁ……」 途方に暮れたように、圭介は再び机に顔を伏せた。 少しは同情するけど、それでやっかいごとに巻き込まれるのはごめんだ。 圭介が頼む提案には、悪いけど乗る気はさらさらない。 それでも圭介はだらだらと、なんだかんだいって誘い込もうとした。 断り続けていると、教室後ろの扉が開く音がした。 圭介は驚きながら体を起こし、私は何の気なしに音の方を見て――。「なんだ、ハシか」 圭介は橋川をそう呼ぶ。 橋川と知って、緊張を和らげる圭介と反対に、すかさず顔を伏せた私は、体が硬くこわばった。 どうして、まだ残っているの。 ホームルームが終わって、だいぶ時間がたっている。 帰ったものだとばかり、思っていたのに。 橋川はいつもの無表情で「なんでお前がいるんだ?」と圭介に聞いていた。 圭介は隣のクラスだから。「サボリ」「……ふうん……」 苦笑いする圭介に、橋川は相槌をうつだけだった。「帰る?」「いや……時間つぶしてるだけ。また出ようとは思ってるけど」 言いながら、圭介は教室の前方にかかった壁掛け時計を見た。 なんだかんだ言いながら、圭介がこの教室に来てからすでに三十分近くたっている。「……そろそろ行くわ」 あきらめたようなため息を落として圭介は立ち上がると「つき合わせて悪かったな」と私に告げ、橋川に「じゃあな」と声をかけて、教室を出て行ってしまった。 引き止める間もなかった。 引きとめようと、口から出そうになった言葉は、喉元でつかえて声にならない。 教室には他に人はいなく、橋川と二人きりになってしまった。 橋川はバックに荷物を詰めて、無言で帰る準備をしている。 私は帰るに帰れなくて、携帯をいじってメールをしているフリをした。 先に教室を出れば、橋川に挨拶をしなければならない。 二人きりしかいないから、何も言わずに教室をでることなんて出来ない。 橋川が先に教室を出るよう念じながら、意味もない携帯の画面を見つめていた。 体中に嫌な緊張が広がっている。 興奮が息づく心地よい緊張とは正反対の、早くこの時が過ぎればいいとひたすら願う、つらい緊張だ。 視界の隅に、橋川がバックを肩にかけたのが見えた。 帰るのだとほんの少し緊張が解けたところへ、橋川がぽつりとつぶやいた。「瀬口先輩は、谷川先輩と走りたがってた」 静かな独白に、私は思わず顔を上げて、どきりとした。 橋川が、私をまっすぐに見ている。 心臓が一気に収縮した。 息が詰まる。 体が硬く強張った。 独り言のようなつぶやきは、私に宛てたものだった。 他に人のいない教室の静けさが、耳に痛い。 橋川と二人きり。 他に逃げ場などない。 橋川の目は、まっすぐに私をとらえている。 橋川から目をそらせないまま、極度の緊張から、軽いめまいに襲われた。←14 16→
2006年09月28日
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「クチナシの庭」。 書けるうちに書いとけー。 と、ばかりに書いてます。 自分でもわかってるけど……。 『あれ? こんな話になっていくの?』と、戸惑い気味。 まだカテゴリに残ってる「氷雨」は、あらすじできてるけど、筆がすすまなくなった原因がストレスによる精神的苦痛だったので、建て直しがすごく難しくて、手をつけられなくなってて……。「クチナシの庭」はどうにか止まることなく進めていきたい。 目指すは完走。 そのために、書けるうちに書いていると、一日に二つUPなどという状況になっていた。「氷雨」は結構量があるけれど、一つ一つが短いから。「クチナシの庭」 そろそろ大筋に突入です。 読みやすいように、まとめねば。
2006年09月27日
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ちょっと長くなってきたんで、目次風に作ります。小説「クチナシの庭」 1 2 3 4 5 6 7 9 10 11 12 13new 14new話の筋がまったく見えていないんで、どうなるか未定。ちょっと、勢いに任せて書いてみたくて。「3」以降、長めになっていてすみません。「見やすく」を心がけたいんですけど、きりのいいところでだと、こんなふうになってしまって……。
2006年09月27日
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「いるの? いないの?」「……いない……けど……」 口がもごもごと動かしづらく、話しにくい。 圭介は自分の恋愛話は聞かなくても話してくるけれど、私は自ら話すことなどなかった。 女友達とそのような話題になって聞かれることはあっても、圭介から聞かれたことなど一度もない。 たいがい、近しい友人しか気づかない、ささやかな付き合いだ。「三田村は?」「……いつの話よ、それ」 答えながら、顔が紅潮するのが自分でもわかった。 高校に入学したばかりのころ、同じクラスの三田村君と、ほんの数ヶ月、交際していた。 知っているのは由里子とカエ、知恵……あとは三田村君と親しい友人数名ほどだ。 一年の時も、クラスの違う圭介は知らないと思っていた。 その話をしたこともないのに。 なぜ、知っているの。 上目遣いで見上げると「見てりゃわかるよ」と圭介は呆れて息を吐く。 ……気づかれていないと思っていたのに。 思ったよりあからさまだったのだろうか。「まあ、気づいたやつの方が少ないだろうけど」 黙りこんだ私に、圭介はフォローするように付け加えた。「好きなヤツは? いるの?」「だから。なんでそんなこと言わなきゃいけないの」 恋愛話は苦手だ。 とくに圭介と話すとなると、どうにも体がむずがゆくてならない。「ちょっと頼みたいことあるから」「頼み?」「噂に協力してくれないかぁ……。……と」「……噂?」 意味がまったくわからない。 胡散臭そうに眉をひそめると「だからぁ」と、意味を汲んでくれよと言いたげな口調になった。「スケープゴートになってくれないかなぁ。って」「……『スケープ・ゴート』って……いけにえ? に、なれってこと?」「まあ、そんなかんじ」 圭介の意図がまったくつかめない。 何と返答していいのかわからず、沈黙する私に、圭介は全部話さなければならないのか、と、また息をついた。 話してくれないと、わかるわけないじゃない。 胸のうちでこぼして、とりあえず圭介の話を聞いていた。「俺とリツが付き合ってるかも。……的な噂だけでいいから、そういうことにしてほしいんだ。二、三ヶ月でいいから」 圭介の言うには、騒がしい周囲を沈静化したいのだという。 全校生徒の前で派手な演出をさらしてしまったために、圭介はいまや高久見高校で一番顔を知られている。 さっきの廊下で歓声を上げた女子生徒のように、遠巻きに、よくわからない声をあげたり、さも顔見知りのように、声をかけてきたりする輩をシャットアウトしたいのだそうだ。 同じ状況を、圭介は数年前に、すでに経験済みだった。 そのときは現実に彼女がいて、交際相手がいるとの実態が、天井知らずに高まりそうになった熱を抑えていたのだという。 今、圭介に特定の異性はいない。 その情報はすでに知られるところになっているのだそうだ。 自分には縁遠く、どこか別の世界の話に、私はただぽかんと圭介の話を聞くばかりだった。「……つまり。圭介のとりまきができつつあって、それが出来上がる前に、食い止めたいってこと? その防波堤に、私がなれ……と」 現実味のない話を、人事のように話しながらまとめると、重々しく圭介はうなづいた。 来月、大会があるのだという。正式な記録が残る大会だから、騒がしい周囲に気をとられることなく、専念したいのだそうだ。 現に、ここに逃げてきたのも、陸上部面々の、手厚い祝辞から逃げ出したのでなく、ことあるごとにわけのわからない歓声を上げる取り巻きから、雲隠れしていたのだ。 理解しがたいけど、圭介の考えはわかった。「で、それでなんで私が出てくるの?」「一番手ごろだから」「……あのね」 正直すぎる圭介の答えに、怒る気力もおこらない。
2006年09月27日
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「何かあったの?」「ないほうがおかしくない?」 小さく笑いながら、圭介は机につっぷしたまま、顔だけをわずかに持ち上げた。 そう言われて「あ」と心あたりに思い至る。 圭介は今や話題の人だ。 陸上部の面々がほおっておくわけがない。 何かと騒がれ、逃げてきたと行ったところか。 陸上部の騒ぎようは、ときどき、ものの限度を軽く超してゆくのだから。「そういうわけだから、リツも、もちょっと残ってよ。知り合いもなしに、他のクラスのヤツが居座るわけにもいかないだろ? ウチのクラス、うるさいの残ってるから居られないんだよ」 疲れた声の圭介に少し同情して、私は自分の席に座った。 圭介は机につっぷしたまま、顔だけ私のほうに向けている。 そうして廊下側に背と後頭部を向けて、圭介と知れないようにしていた。「……瀬口先輩を挑発するようなこと言ったってほんと?」 何も話そうとしない圭介との沈黙が何だか気まずくて、同時に全学リレーのときから気になっていたことを聞いた。 答えによっては理性を疑う内容だというのに、圭介の返答はあっけらかんとしたものだった。「ホントだけど?」 くらり、と軽いめまいがした。「……なんだってそんなこと……」「事実だし。橋川の方がタイム速いのに、伝統だか何だか知らないけど、アンカーにしがみついてさ。大事なのは団の勝利だろ? 個人的な感情なんて持ち込んでどうすんだよ」「団長がアンカー務めるのも、伝統でしょ? 他の団員のモチベーションを上げる狙いだってあるのに」「それで優勝できれば苦労はないけどな」「優勝が全てじゃないよ」「全てだよ」 言い切る圭介の目には、それまで宿していた柔らかな眼差しは消えていた。 本当にそう思っている、真摯な眼差しに見つめられて、私は何も言えなくなる。 普段、ふざけたことばかり言っているのに。 急に真面目な顔をしたりするから、卑怯だ。 心構えも出来ていないから、怯んで何も言えない。「優勝しないと無料食券もらえないし」 そう付け加えて、おどけたように口元を笑みの形に変えたけれど、もし無料食券のおまけがついていなくても、圭介は「優勝がすべて」と言い切ったろう。「あいつとも……走ってみたかったしなぁ」 圭介のいうあいつ、とは橋川のことだろう。「ああ、橋川と走りたいってのもあったか」と瀬口先輩の一件の理由を、ぼそりと付け加えた。 ――と、唐突に、廊下のほうから女子生徒の「きゃあっ」と悲鳴のような歓声のような、よくわからない声があがった。 反射的に廊下側に目を向けると、三人ほどの女生徒が立っていた。 彼女たちは好奇の目を向けている。 しかしそれも、私と目があうと、逃げるように走り去っていった。「……なに、あれ」 思わず眉をひそめると、机につっぷしたまま、廊下側に背を向けていた圭介が、重い息を吐いた。「……リツって、今、彼氏いる?」「……は?」 圭介の質問に、私は間の抜けた声をあげた。 ←12 14→
2006年09月27日
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片付け、掃除が終わると、教室でのホームルームとなる。それも終えると、生徒たちはそれぞれの帰路についた。 そのまま帰宅する者、クラブ活動にいそしむ者、親しくなった同じ団員と体育祭の余韻を楽しむもの。 2年C組の裏方まとめ役だった私は、同じく裏方のまとめ役だった先輩と一年にあいさつをし、本当の意味での体育祭を終えた。 カエは部活に出るという。 体育祭で疲れているだろうに、練習熱心なことだ。 由里子と知恵(ともえ)は、先に帰った。 二人とは帰る方向が逆だった。 疲れをにじませた二人を待たせるのが悪い気がして、あいさつが終わるまで待つといった二人を、私が強引に先に帰した。 私も疲労が体に染みていた。 たいした競技にも出ていないのに。 そう自分でもわかっているけれど、体にのしかかる重みは確かに存在する。 私の場合、気疲れだろう。 それと……あの全学リレーでの応援疲れ。 静かに目を閉じると、あのときの興奮の余韻が体の奥底に残っているのがわかる。 スポーツを観戦して、あんなに夢中になったのは初めてだ。 あんなに……息を詰めた興奮を感じたのも。 西に傾いた夕陽が、オレンジ色に滲んだ景色に教室を染めている。 あいさつを終えて教室に戻ると、もう誰も残っていなかった。 みんな疲れていたから、早々に切り上げたのだろう。 今日は遊ぶ気力も寄り道する気力も残っていない。 まっすぐに家に帰って、ベットに体を投げだして休息をとりたい。 そう思いながら荷物を片付けていると、教室後方の出入り口から「リツ」と呼ぶ声がした。「圭介」 今日の一番の立役者が、軽い身のこなしで側に来た。 まるで疲れを感じさせない様子に、我知らず、剣呑な眼差しを送っていた。「……なんだよ、怖い顔して」 そう、圭介に指摘されるまで気づかないほどに。「別に。……疲れとかないの?」「特には。いつもの練習量とあまり変わんないし」「……そう」 羨ましいというか、小憎らしいというか。 言いながら、圭介は隣の席に座った。そして机につっぷしてだらりと体を伸ばしている。 練習熱心な圭介が、意味もなく時間をつぶすなんて珍しい。「部活は?」「……まあ……ちょっとサボり……」 私は目をまたたかせた。 部活大好き人間な圭介から出てきた言葉とは思えない。「なんで?」「なんででしょうねぇ……」 質問を質問で返すはぐらし方をして、圭介は答えを濁した。 あまり答えたくない内容らしい。←11 13→
2006年09月26日
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先頭に並び、ついに黄の団長を抜いた橋川に、歓声と悲鳴がとどろいた。 黄の団席からは「まだ間にあう!」の懸命な声が、青の団席からは「そのまま引き離せ!」との必死の声が、そこかしこから上がっていた。 橋川が黄団を抜いたとき、私は思わず手で口を覆っていた。 歓喜の叫びを上げていた。 どくどくと高鳴る鼓動で心臓が痛い。 ラストまであと100メートル。 このまま橋川が先頭でゴールするものと、青団の誰もが思っていた。「……圭君!」 ハッとした由里子の声で私は我に返った。 いつの間にか圭介が、橋川との間をつめていた。 三番手で圭介がバトンを渡されたとき、橋川と十メートルは離れていた。 それがもう、数メートルしかない。 黄の団長と橋川の接戦に気をとられて、圭介の存在を忘れていた。 思わぬ伏兵に、青団の声援はかりたてられるような悲鳴になっている。 トラックが直線になると、橋川と圭介の位置が明確となった。 歩幅数歩分、先を進んでいた橋川だったけれど、圭介は確実にその差を縮めて、並び、ゴール直前で橋川を抜いた。 白団から歓声が上がる。 青団は、誰もが声を失っていた。 ほんの十数秒前まで、優勝を確信していたのだ。 まさかの逆転劇に、落胆が色濃い。 4着の赤団がゴールすると、競技の全てを終了するアナウンスが流れた。 力尽き、座り込んだり、芝の上に体を横たえるリレーの選手に、どこからともなく拍手が起こった。 結果に関係なく、彼らをたたえたものだった。 各団ごとに整列し、閉会式がとりおこなわれた。 優勝は白団。 最後のリレーの点数が大きかった。 次点が青団。赤、黄の順番だった。 閉会式が終わると、それぞれの団席に集い、くす玉を割る。 盛大な歓声が上がったのは白団だけで、他の団は静かな拍手が起こるだけだった。 団席で、団長と応援リーダーの挨拶が終わると、本当の体育祭が終わり、全校生徒で後片付けとなる。 準備のときと違い、やり遂げた達成感と、終わったのだという、わずかな寂寥(せきりょう)が胸に去来(きょらい)した。 昼の熱気が、地上に漂っている。 しびれるような興奮が、体の底で、わずかだけれどうずいていた。 同じように、体育祭の熱気が抜けきっていない生徒が多いように、私には見えた。 感情は、言葉の端々や言動に、おのずとにじみ出てくる。 お互いに感化し、感化され、そうした熱気が、校内に静かに漂っていた。 ←10 12→
2006年09月26日
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いつものごとく、青が主のイラスト。 流れる感じを出してみたくて。
2006年09月26日
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私に届いたのではなく、知人に届いたのですが。 ハガキでした。 つーか、昨日、架空請求に関する特番を見たばかりだったので、思わず笑ってしまいました。 ごめんなさい。 私は初めてその手のハガキを見たんですけど、なんというか、ワンパターン。 だって、初めてみた私でさえ「ああ、これが例の……」とわかったほどですから。 で、よくよく内容読むと、おかしいんですよね、文面的に。「矛盾してるやん」と思うことが書かれていて。 誰かが指摘したひとつに「身に覚えがなくても連絡ください」。 何だそれは。って感じでした。 もし、そういうはがきがきて、不安なときには、最初に、消費者生活センター、もしくは警察に相談なりしよう。 とのことでした。テレビでは。 家は架空請求は来ないけど、一時期、セールや変な電話が多かったです。 家族が出ると同級生を装ったりなんたり。 一度、弟宛に電話が来て「高校のときの同級生だから、連絡先を教えてくれ」と始まり。 つーか、そのまえに、弟の名前が違うって。 タカシ(仮名)がタケシ(仮名)。みたいなニアミス。 で、家族が「家にはそんな人間いない」って言っても引き下がらず。 高校のとき、アルバイトが一緒だった。とかなんとか言って。 部活ざんまいだった弟が、コンビニでバイトなんてする暇ないっての。 そんなふうに違うと指摘しても、のらりくらりと、どうにか連絡先を聞き出そうとしていた。 最後には「近くに来ているんで、そちらに行くんで教えてください」と言い出して。 「家がわかるなら来てもいいけど。でも来ても連絡先は教えない。本人を通すか、本人に通じる友人に聞いてくれ」 って、話は終わった。 結局、来なかったけどね。 最近は、セールスの電話もやんでいる。 相手にされないとわかったら、いくら情報が出回っていても、手をひくみたい。 メール更新をしてみたけれど、慣れないんで何にも書けなかった。携帯に向かい合って記事書くのって、何だか変な気分。言葉が思い浮かばなくって。パソコンで書くほうが落ち着くなぁ。
2006年09月26日
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競技が始まると、熱の入った声援が、あちこちで飛び交う。 目の前を走っていく走者に、圭介と橋川の件を忘れて、私と由里子は声を張り上げた。 毎年のことながら、全学リレーは、これまでの競技と一線を画した熱気に包まれる。 走者の順番が進むにつれ、熱気はしだいに上昇していった。 今年は僅差でバトンがつながれている点もあって、例年の類を見ない歓声が、そこかしこから上がっている。 三着でバトンを受け取ったカエは、どうにか差を縮め、二着で次につないだ。 渡した先は、注目の白、青の団長対決だ。 白、青、それぞれの声援がひときわ高まった。 私も由佳里も、次第に高まった周囲の熱気にうかされ、普段では考えられない大きな声を張り上げた。 のどが痛い。 声がひあがりそうだ。 デットヒートは、白、青、二つの団員を白熱の渦に巻き込んだ。 ほぼ同時にバトンは繋がれ、最後に圭介たちのいるアンカーへとたどり着く。 アンカーは赤、黄の団長、そして圭介と橋川だ。 手を振って声を張り上げる圭介とは正反対に、橋川は静かにたたずんでいた。 彼に目を留めた私は、思わず息をのんでいた。 体に篭もった熱気が、急速に冷えていく。 ぱっと見、橋川の行為は冷めているように見えたが――そうじゃない。 眼差しはまっすぐ前走者に向けられ、体はほど良い緊張に包まれている。 口元は軽く引き結ばれていた。 周囲にあてられた熱気はひいたものの、胸の奥に静かな熱が生じた。 息を詰める興奮が、息づいていた。 バトンは黄、青、白、赤の順でアンカーに渡った。 選ばれた最終走者とあって、みんな足が速い。 各団の団長は、足が速いことが第一条件となっているほどだ。 それも、この全学リレーのためと言っていい。 なかなか詰まらない距離、開かない差の中、橋川が徐々に間を詰めていった。 黄色の団長が、最初を飛ばしすぎたらしく、体の動きに鈍さが見えてきた。 それもほんのわずかなことだ。 走者が精鋭ぞろいでなければ、先頭を保っていただろう。 並んだ橋川に、歓声があがった。 声を張り上げる由佳里の隣で、私はきつく拳を握りしめた。 ドクドクと心臓が高鳴っている。 興奮で胸が熱くなっていた。 ←9 11→
2006年09月25日
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何より白団の驚くべきは、もう一人の三年走者をアンカーに変えなかったことだ。 伝統を曲げてでも、確実な勝利を狙ったらしい。 圭介はアンカーに抜擢されたのに便乗して、橋川を同走者にしようとしたらしい。「俺の方が速い」 などと、圭介自身が自分の団のアンカーに対して言っていたけれど、どうやら自意識過剰でなく、本当だったようだ。 圭介は、実際より大きく話すことが多いので、私はリレーの件も話半分で聞いていた。「まあ、白の団長も第6走者だからね。『団長対決!』ってメンツは立つけど……」 言いながら、由里子は心配そうに顔色を曇らせた。 由里子の懸念はわかる。 圭介の言動は、瀬口先輩にケンカを売ったも同然だ。 そして橋川はそれに巻き込まれたのだろう。 リレーを始めるべく、選手は規定の位置についた。 そうしてようやく、アンカーに変更があったと気づいた生徒たちの間から、小さなざわめきが生じ始めた。 それは漣(さざなみ)のように、静かに、けれど確実に周囲に広まった。 困惑を含んだざわめきは、不安を色濃くにじませている。 アンカーを三年以外が務めるなど、前代未聞だろう。 話題の本人たちは、至って平静だった。 圭介に関しては、気負いもなく、軽い柔軟体操をこなしているし、そんな圭介に橋川もごく普通に話しかけている。 陸上部に所属する圭介なら、その落ち着きようもわかる。 橋川のあの堂のいった姿はなんだろう。 突然大役を任されたというのに、その大役を感じさせない平然とした姿。 自信があるのだろうか。「……橋川って、そんなに速かった?」 由里子も眉を寄せて考えたものの、小首をかしげた。「速いっていうのは知ってるけど……。飛びぬけて。じゃ、なかったと思うよ。圭君の方が速いんじゃない?」 普通に考えればそうだ。 陸上部の圭介と、帰宅部の橋川。 どちらに部があるか、考えるまでもない。 そうこうしているうちに、リレーが始まった。 カエが走るはずだった第一走者には、一年生が入っている。 僅差ながら、白、赤、青、黄、の順番で次の走者にバトンがわたった。 ←8 10→
2006年09月25日
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一月で、最高に忙しい業務が終了。 いつもなら放心状態で即、眠るところだけれど、今日はまだ気力が残っている。 ……慣れ、かな? でもさすがにもう、ご飯を食べる気はしなくて。 おなかすきすぎの時間を越してしまったから。 今日も昼食2時だったし。 途中、呼び出しくらって、食べたって気がしなかった……。
2006年09月25日
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教室に戻って昼食を終えると、昼からの競技が始まる。 私はもう参加種目がないので、グランドを見下ろせる廊下に椅子を出して、そこからのんびり眺めていた。 団席は人で埋まっている。 もともと生徒数が多い高校なので、本当に座る場所がないのだ。 先生の叱責(しっせき)を受けたときのカモフラージュに、昨日までかかっていた、くす玉の材料を手にしていた。 競技終盤にくす玉をかかげ、結果発表の後、団席に戻ってクス玉を割る。 優勝を前提に中身をつくっているけれど、この時ばかりは、負けても「祝! 優勝!」の垂れ幕がおさまっているクス玉を割るならわしになっていた。 競技は消化され、最後を飾る全学年リレーが始まった。 各学年から男女二名ずつ選ばれ、各団ごとに整列する。 奇数走者は女子、偶数走者は男子との規定以外、決まりごとはない。 伝統としてアンカーは三年の男子が走る以外、順番は自由だった。 そこが戦略として、各団こだわる箇所でもある。 全学年リレーになると、私のように教室や他の場所でさぼっていた生徒も、狭い団席や、グランドの周囲に戻る。 閉会式にすぐ参列できるようにするためと、なにより、全学年リレーを間近で見るためだ。 後になるほど走行距離が長くなるスェーデンリレー。 第一走者だったカエは、見ると第五走者に順番が変わっていた。 初めに差をつける作戦を変更したらしい。 カエとしては心外の極みだろう。 体育大会終了しだい、文句を長々とこぼしそうだ。 思いながら、団席からあぶれ、トラックの周囲に立つ由里子のそばに行った。 由里子は私に気づくと、興奮気味に手をつかんだ。「見てよ、あれ」 促され、指差した方向を見て驚いた。「圭介が……アンカー?」 圭介も、なんだかんだ言いながら、陸上部の短距離選手だ。 全学リレーの走者にリストアップされていた。 アンカーは三年の男子が走る伝統なのに。 なのに、二年の圭介が、なぜ。「アンカーだった田上先輩が怪我したんだって。で、急遽、走者を変更して、やむなく圭くんがアンカーに回されたらしいよ」 午前中、カエが借り出された「白が土壇場で順番を変えた」理由はこのためか。「それだけじゃなくて、ほら――」 由里子が指差し、促された先を見て、私はぎょっとした。「橋川!?」 そう。なぜか橋川までアンカーになっている。 負傷した走者に変わって順番を変えた圭介なら納得がいく。 なぜ、橋川までアンカーになっているの。「圭くんが……挑発したみたい」 ひそめた声で、由里子がつぶやく。「挑発?」「二年と競うなんて、大人気ないんじゃない?……とか何とか、瀬口先輩に」 瀬口先輩は、わが青団の団長であり、この全学リレーのアンカーだ。 くらり、とめまいを感じる私に、由里子はさらに詳しい状況を話してくれた。←7 9→
2006年09月24日
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午前中の競技を終えると、日ごろの昼休み時間と同一の時間帯、中休みの時間となる。 生徒は思い思いの場所で、昼食をとっていた。 私はカエと由里子(ゆりこ)、知恵(ともえ)とお弁当を食べようと席をつくる。 食べ始める前に「あ」と思い出して、慌てて隣のクラスへ向かった。 隣のクラスの圭介(けいすけ)にお弁当を届けると、予想通りのやじがとんでくる。 圭介は自宅が100メートルしか離れていないご近所で、小学生前からの幼なじみだ。 私が高久見を離れていたころ、夏休みに祖父母のもとへ里帰りすると、圭介と遊んでいた。 圭介が仲立ちとなって、高久見の子達と連絡をとり、わずかな滞在期間、彼らとすごすことができた。 圭介は体育祭の実行委員で、今日は早朝から高校に来ている。 お弁当が間に合わなくて、おばさんから渡すよう頼まれていた。 冷やかしの口笛にも圭介は笑って受け流す。 逆にお弁当をかかげて、勝ち誇った表情を浮かべた。 私がお弁当を作ったのだと、誤解させたいのだ。 そうしてとんできた冷やかしを、圭介は冗談で返していた。 私も周囲も圭介の行動パターンは知っているので、圭介の友人は苦笑いを浮かべ、私は戒めをこめて、軽く圭介の背を叩いた。 私と圭介のつながりを知らない子は、本気にとりかねないから。 実際、誤解を受けたこともある。圭介は想いを寄せていた子に、あらぬ誤解をうけて、想いを伝える前に失恋したことだってあった。 同じ轍(てつ)を踏みかねないのに、圭介は懲りずに同じ行動をとっている。「一度、ガツンと言ったほうがいいんじゃない?」と小学生からの友人であるカエも、あきれるほどだ。 私と圭介の間には、友人以上のつながりも、お互いに感情も芽生えることはない。 わかっているから、圭介は私を冗談のネタにする。 笑いがとれればいい。 そう考えているお調子者なのだ。 結果、自分の首をしめてひどく落ち込んでも、少々反省しただけで、また同じことを繰り返している。 現に今だって、圭介の友人以外、興味津々といった眼差しを向けている。「おばさんからの言伝(ことづて)。『にんじん、ピーマン残したら夕食抜き』って」 私の声が聞こえたらしく、圭介の友人は、吹き出して、笑いをこらえようと、細かく肩を揺らしている。 圭介はわずかに頬をひきつらせ、顔も少し赤くなっていた。「……あのババア……」「お弁当も言伝も、ちゃんと渡したからね」「……どうも」 苦くつぶやいて、圭介は席に戻っていった。 私も教室へ戻ろうと振り向いた視界の端に、橋川がちらりと映って、どきりと鼓動がはねた。 橋川はもくもくとお弁当を食べている。 お調子者で知られる圭介と、物静かな橋川は、中学時代からなぜか友人としてのつながりがあった。 橋川の性格上、騒々しい圭介を疎んじると思っていたけれど、橋川はなぜか、圭介を受け入れていた。 橋川が座るグループの中に、圭介が向かっているのをちらりと見て、私は自分の教室に戻った。 ほう、と我知らず、息が漏れる。 橋川を見かけるたびに、そんなため息をもらすようになっていた。←6 8→
2006年09月24日
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私はこの高久見(たかくみ)町に、小学校一年から三年まで滞在していた。 両親の仕事の都合で、祖父母に預けられていた。 両親の、それぞれの職場から、祖父母の自宅がちょうど中間地点になるので、何かと都合がよかったらしい。 特にさびしい思いもなかった。 参観日には必ず母が来てくれたから。 週に三日程度、両親は祖父母の家に泊まっていったし、休日はほぼ祖父母の家ですごしていた。 四年生からは、祖父母の家に住める手はずになっていたのだけれど、父の急な転勤でそれもかなわなかった。 その件で、両親はひどくもめたけれど、結局、母が仕事をやめて、家族で父についていくことになった。 四年から中学一年まで、父の転勤先で過ごし、二年の秋から、また高久見(たかくみ)町に戻ってきた。 祖父が体を壊したので、それを機に父が転勤願いを出し、会社に受領された。 母は高久見に戻ると、もとの職場に復帰した。 やめたあとも、その会社からの内職を続けていたので、復帰はすんなりとことが運んだ。 小学校低学年の時期、高久見ですごしたので、戻ることになっても不安は感じなかった。 想像以上に見知った顔が多く、溶け込むのに時間はかからなかったから。 橋川が転校してきたのは、中学三年のときだった。 ぱっと見、一目を引く外見だから、教室がざわついたのを覚えている。 先生は九州から転校してきたのだと言っていた。 その時も「どこかで見たことがある」ような、胸のひっかかりを感じていた。 それがどこか、わかりそうでわからない、喉元まで言葉が来ているのに、口から声として発せない。 そんなもどかしさに似ていた。 私を含め、まじまじと見つめる視線を橋川は静かに受け止め、紹介を受ける後半は、目を伏せがちにし、集まる視線から目をそらせていた。 慣れ、を感じさせる動作だった。 その後も、転校生なら一度は経験する、質問攻めを抑揚のない口調で淡々とこなし、熱っぽい視線を受けながらも興味のないそぶりと、口の端さえ上がらない、無表情で流していた。 親しくない人間に壁をつくっているのは、誰もが感じたことで、橋川の周囲はしだいに静かになっていった。 そんな橋川の友人は、同様に大人しい人物が多い。 例外もいたけれど......まあそれは、本当に例外だ。 橋川と私は、特に接触もなく、中学生活を終えた。 高校は県立高久見高校が近かったので、それだけの理由で選んだ。 同じ中学出身者も多く、橋川と私もその一人だった。 クラスも一年も二年も一緒だった。 私と橋川だけじゃない。中学からクラスが一緒という子は、他にも何人もいた。 橋川が私を厭っているのではと、うすうす感じ始めたのは、去年の秋だった。 きっかけは特にない。 蛇口をきっちりしめなかった水道から落ちる水が、長い時間をかけてたらいに水を満たすように、日々の小さな積み重ねからそう感じるようになっていた。 確信をもったのは、今年になってからのこと。 こころあたりがないだけに、なんとも曖昧ではっきりしないモヤを、胸のうちに宿すこととなってしまった。←5 7→
2006年09月24日
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なぜ彼が私を嫌うのか、理由はわからない。 もともと彼との接触はあまりないし、彼自身が人との関わりを持とうとしないのだから、考えられる理由は限られてくる。 だと言うのに、彼の嫌悪を買っているのだ。 私が気づかないうちに、カンに触れる言動をとっていたのだろう。 彼が私を嫌っているのだろうとの推測も――ふとした拍子に気づいたことだ。 人との接触を持たない彼だったけれど、明らかに私との他の人との対応が違うのだ。 この前だって肩がぶつかったとき、一言も言葉を発しなかった。 狭い教室だ。 何かの拍子に体が衝突することだってある。 ほかのクラスの女の子が同じ状況に陥ったとき、彼は無表情だったものの「いいよ。気にしないで」と明らかに相手を気遣うそぶりを見せた。 それが決定打だった。 たった一言の、たった一つの動作だったけれど、私が彼の中では「ことさら関わりたくない人物」に入っているのだとわかった。 彼が嫌悪を外に出した行動をとったことはない。 可能な限り、私との接触を拒んでいる。 それが他人に気づかれない程度、にじみ出ていた。 嫌悪をむける相手だけが気づく程度の、本当にわずかなもの。 橋川が、言葉に、行動に出していないから、私も突き詰めて聞くこともできない。 互いにいさかいなく、平穏な学園生活を望むなら、私も橋川との接触を極力避ける必要があった。 グランドに戻ると、先導にしたがい、決められた組に整列する。 競技は男子の徒競走が終わり、女子の徒競走へとうつる。 男子のときのように、黄色い声が飛ぶことはない。 親しい友人に、「ころぶなよー!」とか「一着以外、許さん!」とか、そんなからかい半分の声援が時折混じっていた。 運動は苦手だ。 陰鬱な心は、スタート地点に立つと最長に達していた。 ずっと人の背で塞がっていた視界が急に開け、障害物のない景色が広がっている。 支持されるまま、クラウチングスタートの体勢をとり、火薬のはじける音でスタートする。 懸命に走ったものの、結果は6人中5番目。 橋川やカエのように、集中的な運動の練習量はこなしていない。 でも時々、カエと一緒に走りこみの練習をした。 ……たいした成果はあがっていないけど。 あがった息を整えながら、促されるまま、順位順に並ぶ。 記録係が順位を書き留めてから、解散となる。 解散の合図を受けて、その場から少し離れた芝生の上で留まっていた。 2組あとにカエが走る。 カエは予想どおりの1着。 記録を終えると、私に気づいて側にきた。 素直な賛辞を送ると「これしか取柄ないし」とはにかみながら答える。 カエは陸上部の短距離走者だ。「長野」 カエと話し込んでいると、不意に彼女を呼ぶ声がした。 振り向くカエに、体が強張る私。「橋川……」 会いたくない人が――できれば見たくもない人が、カエの後ろにいた。 いつもの無表情で「先輩が呼んでる」と淡々とした口調で話している。「なんで?」「リレーの作戦を立て直すって」「え? なんで?」「土壇場で白が順番変えたんだと」「ええ~。いいじゃん。ちょっと変わったからって、総タイムがそう変るわけないじゃない」「文句は直接本人に言えば?」「できるわけないでしょ。それにー。全学リレー、トリじゃない。お昼もまだなのにー」 体が強張ったまま、とにかく私は橋川が離れるのを願っていた。 ……と、ほんの一瞬、橋川が私を見た。 動かした視線の先に私が存在してしまった。……と、言ったほうが正しいだろう。 身がすくむ私を、ほんのわずかに眉をよせて、何事もなかったように顔をそむける。 橋川は、文句をいいつづけるカエを置いて「用件は伝えた」とばかりに、先に歩いていく。 ぐずっていたカエも、あきらめのため息をこぼして「じゃあ……行ってくるね……」と重い足取りで歩いていった。「気をつけてね」 離れていく橋川にほっとしながら、よろよろと歩いて「いやだ~」との心境を体全体で現しているカエに、手を振る。 最近、橋川が側にいると息が詰まる。 橋川の心情がわかるから、身の置きどころが……なんというか、足元がざわざわして気持ち悪い。 橋川が私に向ける嫌悪は、ちょっと……痛いものがある。 ため息をこぼして、私は空を見上げた。 十月上旬に行われる体育祭は、秋の気配をふんだんに含んでいて、過ごしやすい。 空は青く、空気はほどよい冷気を含んでいる。 汗ばんだ体には、吹きぬける風がここちいい。 さわりと前髪を揺らした風を感じながら、頬に触れて流れる風を感じながら、私は空を見上げたまま目を閉じた。(……嫌われて、平気な人なんていないんだよ) そう、胸のうちでこぼして。←4 6→
2006年09月23日
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ちょっと様子を変えてみて。冬の夜空。夜空の別バージョン。
2006年09月23日
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体育祭はクラスごとに分けられた、赤、白、黄、青の四つの団で競う。 各学年、八クラスあるから、それぞれの団に二クラス振り分けられた。 団はクラスの代表がくじ引きして決められる。 我が二年C組は青団だ。 徒競走は地味だけれど、人数が多い分、点数に響いてくる。 あからさまな手抜きをすると、非難を受けるので、みんな精一杯の力を注いでいた。 声援の中には特定の人物に宛てた、黄色い声も混じっている。 騒々しい声援にまぎれながら、橋川の名がいくつか聞こえた。 彼はリレー選手に選ばれているので、少々の手抜きも許されない。 入学したての一年のとき、行われた体力測定の50メートル走。 去年はその結果を元に選手が選ばれているので、彼に逃げ場はなかった。 入学したての、初々しい一年生のころだ。 まさか半年後に、大仕事が待っているとは、かけらも思いつかなかったろう。 知っていたら――。 彼の性格から考えると、無難な記録になるよう、手を抜いたはずだ。 おまけに去年は三人抜きという、人目をひく行為もさらしているので、今年も真っ先にリレー候補にあがった。 橋川と同じ走者を眺めると、特に目ぼしい人物はなかった。 無作為に徒競走の組を決めた後、一度なら変更可能なので、他の団の有力選手は変更をおこなったようだ。 このようなささやかな戦略が、体育祭には多く取り入れられていた。 小さな積み重ねが、点数に響いてくる。 体育祭の優勝団の特典に、一週間分の学食無料券(日替わり定食のみ)が配布されるので、結構みんな必死だ。 運動神経に自信のある方々は、練習と戦略に勤しむ。 自信のない私のような生徒は、運動以外の応援に力を注いだ。 応援も立派な点数のうちだ。 私は小道具作りの一員だった。 裏方が大変なのは当日まで。 当日の今日は、何もすることなく、状況をながめている。 カエに促されて、グランドに行こうとしたとき、パン、とスタートを知らせる火薬音が聞こえた。 思わずカエと二人、足を止めてグランドを見下ろした。 橋川が走っている。 前評判どおり、思ったとおりの一着だ。 まだ徒競走だというのに、一年の女子の中には、わがことのように、はしゃいでいる子もいた。 去年と同様、橋川は何の反応も示さない。 汗をぬぐっていた彼が、ふと顔を上げた。 顔がこっちを見ている。 視線が合ったように思えて、なぜかぎくりと体が強張った。 遠いから気づくはずがないと思ったけれど、橋川は数秒の間、こちらを見ていた。 そして何事もなかったように、ふいと顔を背けて雑踏の中にまぎれていった。「……サボリ、気づいたかな」 カエが気まずそうにつぶやく。 橋川はこりかたまった真面目でもなく、他人に迷惑をかけるような不真面目でもない。 平均的な、普通の生徒だ。 面倒ごとからは遠ざかり、率先して前に立つのも嫌っている。 その彼が、望んでもいないポジションを押し付けられて、周囲の懇願に折れて、練習にも種目にも参加している。 そんな彼から見れば、参加競技以外、自分の団席からも離れ、影のある教室で涼んでいる輩は、腹立たしい限りだろう。 カエも運動神経に恵まれているので、リレーと学年不問の団体競技に参加する。 橋川と練習も一緒だったから、彼の練習姿も目にしているのだろう。 悪いことをしたような表情を浮かべるカエに、私は「大丈夫だよ」と答えた。 カエの練習姿を、橋川も知っているのだから。 睨まれたのは私だ。 思って、苦笑いが口の端に浮かんだ。 あれは――さっきの表情は、どう見ても睨んでいた。 目があった瞬間、一瞬驚きに見開かれ――それはすぐ鋭い眼差しになった。 サボっていたからではない。 サボりは彼の感情に拍車をかけただろうが、それ以前から、彼は私を――。 私を、嫌っていた。←3 5→
2006年09月23日
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子供の頃のことだし、特に深く考えていなかった私は、両親の言うままを、そのままとらえていた。時を経て、こうして不意にあのクチナシが咲きほこる庭を思い出すようになってから、時折不思議に思う。どのように家に帰ったのか。……と。十年以上前のことだ。記憶は劣化し、当時は鮮明だった情景も、うすく霞がかった景色の中にうずもれている。クチナシの庭に関して言えば、最近気づいたことがある。あの記憶を思い出すようになったのは、ここ数年のことなのだと。どうしてかも、何となくわかっていた。「リツー」語尾が間延びした声に呼ばれて振り向くと、カエが手を大きく振って招いてた。「もうすぐだよ、徒競走」グランドを見下ろすと、二年の男子生徒が徒競走をしていた。この後は三年の男子、そして女子の一年、二年、三年と続く。俊敏な運動神経に縁のない私は、唯一の参加種目である徒競走以外、教室で時間をつぶしていた。いうなればサボりだ。「あ、橋川(はしかわ)」側にきたカエが、ふと見下ろした先にいたクラスメイトの名をポツリとつぶやく。「知ってる? 一年にも人気があるって」も、とういうのは、二年、三年の間ではすでに名の知られた人だということだ。「らしいね」「普段目立たないのにね。何気に足が速いから、この時期からいきなり話題の人。部活もしてないのがもったいないよ。で、この時期がすぎるとまた熱もおさまるんだよね」熱がおさまるというより、彼が人との関わりにおいて、一定以上の線引きをするから、それに気づいた人から足が遠のいていくのだ。もとより、人との関わりが希薄な人だった。特定の友人以外、彼が必要意外のことで人に話しかける姿を見たことがない。この前も、教室で肩がぶつかってしまったとき、私が謝っても、無表情で軽く頭を下げただけだ。愛想もなにもない。「昔はかわいかったのに……」「え? 昔?」思わずこぼれた言葉を、カエの耳が拾っていた。「昔って? 橋川と知り合いだったの?」「違う違う。橋川じゃなくて――」一瞬、ドキリとしながら、私は徒競走で並ぶクラスメイトの一人を指差した。「ああ。倉持ねぇ。たしかに、かわいいとはいえないもんねぇ」小学生の頃は、クラスで一番背が低かった。その彼は今では、背の順で並ぶとクラスの最後尾になる。ごまかしが通じたのにほっとしながら、グランドに視線をうつした。ちょうど橋川がスタートしたところだった。はっきり覚えていないけれど、私はおそらく彼を知っている。確信はない。ただ一度しか会ったことのない人を覚えているのかと、私自身の記憶に自信がない。けれど……。私がこの時期にクチナシの庭を思い出すようになったのは、彼が転校してきてからなのだ。それだけは、はっきりと確信できた。←2 4→
2006年09月23日
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2 秋の空気はからりと爽やかで、少し肌寒く感じる気温が心地よかった。 残暑も終わった時期に行われる体育大会が、気持ちよくすごせる。 私の通う、県立、高久見(たかくみ)高校は、運動会と文化祭を三日連続でとりおこなう。 初日で体育大会を終わらせ、二日目、三日目で文化祭を消化する。 一年のときは奇妙に映ったこの日程も、二年目になると免疫がそなわる。 それでも小学校・中学校で培われた、運動会と文化祭を一ヶ月ほどの隔たりを経て執り行う習慣はぬぐいきれず、多少の違和感が身のうちで静かにうごめいていた。 運動会というのは、なぜか私は関わりが深い。 これまで二度転校しているけれど、そのどちらも運動会、文化祭の時期にかぶっていた。 他の行事より鮮明に記憶に残っているのはそのためだろう。 早くクラスメイトに馴染もうと、必死だったのだから。 この時期になると、過去の運動会、文化祭を不意に思い出す。 そうしてなぜか、あのクチナシの庭の景色も脳裏をよぎる。 花の季節でもないのに。 自分でも不思議だった。 あのとき――。 不意に記憶が途切れた後、私はどこをどのようにしてもどったのか、祖父母の家に帰り着いていたという。 自分の足で帰ってきたと両親は言ったが、私にはそのときの記憶が抜け落ちている。←1 3→
2006年09月21日
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1 あれはまだ、私が小学生になる前のことだと思う。 両親と弟、私の四人で祖父母の家に遊びに行った日のことだ。 そのころから好奇心にかられるまま、ふらふらと歩くクセのあった私は、その日も祖父母の家の庭からいつの間にか抜け出して、さすらっていた。 見かけるものがめずらしくて、気になるものを見つけては側に行き、また先に気になるものを見つけては側にいく。 そうして常習犯よろしく迷子になってしまった。 特に恐れはなかった。 知らない場所で、見知った人がいなくても、特に不安に駆られることはない。 平然としているので、たとえばデパートで迷子になっても、私が迷子とすぐ気づく人はいなかった。 幼い子供が保護者も連れず、うろうろさまよう様子を眺めていた店員が気づくパターンが多かった。 迷子の呼び出しは、子供が親をさがすのではなく、親が子供を捜す場合が、私の場合は多かった。 その時も、一人で歩く子供に首をかしげても、不審に思う人もいなかった。 あのときは、最後に猫のあとを追っていた。 白い毛づやの綺麗な猫を捕まえたくて、後を追っていた。 逃げ込んだ垣根にも驚くことなく、分け入っていった。 垣根と言っても厚み二十センチほどのものだ。 垣根の先は、人家の庭先だった。 庭には白い花が咲きほこっていた。 白い花弁を広げた花が、視界一面に広がり、めまいを覚えるほどの花の香りに満ちていた。 花気に当てられ、くらりとめまいがした。 美しさへの驚嘆と、充満した、濃密な香りに息苦しささえ覚えた。 差し込む日差しに目を眇めていると、家宅から足音が聞こえた。 すぐに家人が縁側に現れて、まじまじと私を見ていた。 私は異質な空間に迷い込んだ感覚を覚えながら、その人をぼんやりと見上げていた。 唐草色の着物を着た、私と同じ年頃の少女だ。 黒いつややかな髪は顎の辺りまでしかない。 肩まで届くほどあれば、さぞかし綺麗な黒髪だろうと考えたのを、ぼんやりと覚えている。 彼女も大きく見開いた目を瞬きさせていた。 驚いているのは表情でわかったけれど、そのときはなぜだかわからなかった。 きれいな子だなぁ。と熱にうかされた心地で眺めていると、視界に小さな影が落ちてきた。 なんだろうと見上げると、赤い風船がふわりと降りてくるところだった。 見上げた先――赤い風船が太陽と重なると、パン、と勢いよく割れた。 音は覚えている。割れた瞬間は見ていない。 びっくりして身をすくませながら目を閉じて――。 記憶は、そこで途切れた。2→
2006年09月20日
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時々、なんとも言えない不安にかられる。仕事のこと、家のこと、自分のこと。何がどう不安なのか、自分でもはっきりわからない。わからないから対処法がなくて、不安が増す。行き場のない、どうどうめぐりのよう。
2006年09月20日
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昼も涼しくなって、肌寒ささえ感じるようになった。普段、内勤なんで、昼に外に出る機会がなくて気づかなかった。今日は近くの中学校で運動会をしていた。台風のため、延期になったぶんだ。気候的には過ごしやすかっただろう。けど、平日にあると、休みナシで明日も授業で、それは大変そう。
2006年09月20日
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朝晩寒くなった。……ではなく、朝が、寒い。タオルケット一枚だと、朝方、寒くて目が覚めてしまう。今日も寒さで目が覚めた。薄手の毛布もかぶって寝てたのに。一気に秋の気候に変わったなぁ。
2006年09月20日
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「星祭」の背景だけ。グラデーション系は、画像を軽くしようとすると、すぐアラが目立つので、加減が難しい。容量・表示速度を考えなければ、重くできるけど、そういうわけにもいかないし。夜空は好きです。よくぼんやり天の川見上げてます。
2006年09月19日
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今日は結構UPしているなぁ。今、使っているソフトがだいぶ前のもの。アップグレードする必要も感じなかったから、そのまま使っていたけど、このイラスト書いている頃から調子が悪くなってしまった。で、新しいバージョンは何かと検索かけたら、今使っているもののほぼ倍の数字が出てきて、ちょっと驚いた。うーわー。そんなにたつんだー。と、ちょっとびっくり。年末に最新が出るらしいんで、もう少し待ってみる予定。
2006年09月18日
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意外と「黒い部分はどこだっけ?」と覚えてなかった。笹を食べてます。
2006年09月18日
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強いといわれていた台風だったけど、想像したほどの被害はなかった。勢力は、一昨年の台風より強かったけど、一昨年の台風の方が被害が出た。前は停電になったけど、今回は停電もなかった。風が強い時間帯も、少なかったし。「え? もう終わり?」と、拍子抜けしたほど。被害がなくて、よかったよかった。
2006年09月18日
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イラストUP。一年ほど前に作りかけで置いていたものを手直し。私の好みから、青系のイラストにどうしても偏ってしまう。他の色も使ってみたいけど。
2006年09月17日
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イラストアップ。台風接近中というのに、母校の中学が運動会決行していて驚いた。夕方には直撃、昼には強風域に入るって言うのに。駆け足で午前中で終わらせたようだけど、無理しないほうが良かったんじゃないかな。
2006年09月17日
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趣味のイラスト第二段。全てマウスで、正味一時間の作品。ネタがあればすぐ作れる。素材屋やってたときは、こういうイラストを展示してたなぁ。あのときほどは凝ってないけど。
2006年09月16日
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趣味のイラストをアップ。以前はこんなイラストばかり書いていた。ネット用に画像を軽くしたら、軽くしすぎて荒さが目立つなぁ。
2006年09月15日
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安くて商品多くて、結構好きだったお店がある。けど、そこの陳列配置がコロコロ変わって、イラッときた。「あの商品はここの列」と、その場所に行ったのに、目当ての商品がない。まったくもって別のジャンルの商品がある。ホントに広い店内だから、探すのに一苦労!店員にいちいち聞くのもめんどし。買うのは一つじゃないから。重い買い物カゴ持って、店内をうろうろして。30×20メートルはありそうな店内面積だから、疲れる疲れる。このまえ配置変えたばかりじゃん!……今日見たら、また変わってて、さらに冬に向けて陳列を変更している気配があったので、なんだか不安。新鮮さを狙ってるのかなぁ。暇なときはいいけど、急いでいるときは逆にマイナスイメージだよ。
2006年09月14日
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明日から一週間の職場異動。……すっごくめんどー。何と言うかね、公平にそういうお鉢が回ってくればいいけど、そうじゃないのがなんともな……。ってな気分。し、か~も。短期とはいえ元職場(建物新築されたけど)かつ、自宅から歩いて五分、車で一分のところなんで、顔見知りばっかりというのもかって悪い。同級生の親にめちゃくちゃ会うんだけど、私はわからないよ……。返答にいつも困る……。で、みんなして言うのね。「歩いておいでよ」って。車に荷物詰め込むタチなんで、そんなのすっごく面倒なんだよ……。いいじゃん。近くったって車で来たってさ。職場行くだけに使うんじゃないんだもん。途中で使うことも……ごく……たま~に……だけど、あるから。久々の日記。件数が333と並んでたので、それを崩しがたくて、なかなか書き込みできなかった。暦上では夏が終わり秋の季節に突入している。……一年って、ほんと早い……。
2006年09月11日
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