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「……それで……折り入って、頼みたいことが、あるんですけど……」 はじらうように、うつむいた面持ちでつぶやく川上さんの、その先の言葉は、容易に想像できた。 なんとなく、わかったけれど。 それを先どることは……何となく、できなかった。 口が動かなかったと、言ったほうがいいかな。 川上さんが言いたいことは予想できたけれど、あえて彼女が告げるのを……待っていた。 予想がハズレていてほしいとの、思いもあったのだと、後になってそう思う。 このときの私は、トクトクと小さな鼓動を感じながら、息をつめて川上さんの言葉を待っていた。「で……できれたら、三島さん、紹介してくれないかな……なんて……」 テレ隠しで、川上さんはカラ笑いしたけれど、頬は赤く染まっていた。 彼女の言葉は、想像通りのもので。 胸が重く、沈んでいくのを、私は感じていた。 ……できれば、聞きたく、なかった。 私の返事は、決まっているから。 彼女の意向には……添えないから。「……悪いけど……それは……ちょっと……」 言いにくくて、途中、つまりながらそう告げると、川上さんは驚いたように顔を上げて、大きな瞳を瞬かせた。 意味がわからなかったらしい。 けれど、数秒の遅れがありながらも、彼女は私の言葉を理解してくれた。 赤い頬をさらに赤くして「き……気にしないでください!」とアタフタと手を振っている。「そ、そうですよね! 突然、こんな話をされたって困りますよね!」 私はなんともいえなくて、あいまいな笑みを浮かべるしかできなかった。 それから気まずい雰囲気になって、どちらともなく、黙りこくってしまう。 互いに、飲み物、食べ物に手をつけて、会話のない時をすごしていた。 そうしているうちに、いくらか落ち着きを取り戻したのだろう。「……あの」と、川上さんが声をかけてきた。「……どうしてだか……聞いても、いいですか?」 そうつぶやいた川上さんは。 顔からは赤みが消えて、いつもの彼女に戻っていた。
2008年01月30日
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最近、残業多くて更新滞ってます。 すみません。 決算直前で、いろいろと詰めの作業で多忙を極めてます。わお。 先に言っておきますが、明日は日記の更新もムリだと思います。 本決算にあたるので、すべての締め作業をしなければならず。 その締め作業に関係ある部署でもあるので、終わるのは10時かなー……。 去年はそれくらいだったから……たしか……。 昨日は帰ったの9時30分でした。 そういう時間帯になると、なんかもう、疲れ果ててしまってますね。 気力もつきはて、体が鉛のように重かったです。 こういうとき、私はおそらく、一人のほうがいいのだと思います。 実家だと、変に家族に気を使うし。「実家のほうがラク」と聞きますが、私はそうは思えません。まだ一人暮らしをしたことがないので、はっきりとはいえませんけど。 たいがい、自分のことは自分でしようとしているからでしょうか。 実家だと、その自分のことをするのにも(家事等)、変に気を使います。 洗いたいときに、作りたいときに、それらのことができません。 夕食も、家族と時間が合わないので、自分で簡単に作ったり食べなかったり(時間が時間だから)が多いです。 その、作るときも。 食材を気にしたりとかね。 自分の分を自分のお金で作るんだからいいんじゃないか。って思うけど。「私だけ、自分の好きなもの食べていいんだろうか」って、そういう思考になってしまうんですよ。(苦笑) 端的に言えば、そういう想いを抱いてしまう家庭環境です。 我が家は、そういう雰囲気があります。 面倒なこと、このうえないです。 食材を気にしなくていいなら、家族の分も作りますけどね。 いろいろ制限持ちの人が居るから、思うようにいかなくて。 えーと、横道の話でした。 今日は比較的早く帰れたんですけど、帰るなり、この中国製造の冷凍食品の話題でもちきりでしたね。 大手メーカーが輸入元だったんで、驚きもひとしお。 私としては、このメーカーが冷凍食品の輸入物を扱ってること自体、意外でした。 国産物を扱ってると、なぜかそんなイメージがあったもので。 私は、職場へはお弁当持参派で、以前は冷凍食品にたよりきりでした。 今では、食材をちょっと調理してのものに切り替えてます。 レンジでチンして、お弁当につめこむだけの、冷凍食品のほうがラクなんですけどね。 ミート○ープの騒動から、惣菜関係に、手を出せなくなってしまいました。 特に冷凍食品。 騒動からは数えるほどしか、手をつけてません。 そして今回の中国産の騒動。 手をつけなくて正解だったかな。と思ってます。 冷凍食品から離れたせいで、一時期、お弁当作りがすごく億劫でした。 簡単なものって、偏ってしまうし、飽きてしまうし。 かといって、手の込んだものは面倒だし、時間がかかるし。 近くのお店で作っている、惣菜ばかり食べてましたけど、飽きるんですよね。 で、またお弁当作り始めてからは、それが定着しています。 内容もあまり変わらないんですけど。 ご飯に肉類、野菜類、卵焼きが定番になってます。肉類、野菜類(いずれも簡単に調理してある)をいろいろと変えてみて。 慣れても、飽きはないですね。 食材から調理していても。 最近は、食材の原産にも注意するようになりました。 中国産は、やっぱり避けてしまいます。 そうして食材に気をつけてみると。 中国産って、結構多いんですよねー。 今まで、知らず知らずのうちに、手に取ってたり。 今から考えると、ちょっと怖いです。
2008年01月30日
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ずっと実家住まいなもので、以前から一人暮らしを考えていました。 週末は、初めて行動に起こして、不動産めぐり。 で、いくつかの物件見てまわりました。 まだどうとか、具体的には決めてません。 あくまでも参考に見ただけです、今回のは。 そうしながら、いろいろと節約に関して考えてしまいましたね。 ネットで不動産物件もいろいろとあたってます。 レオパレスなら、迷わず、即断するんですが。ネット回線確保されてるから。 うちの地域はADSL及び光もダメな地域なので、もし、引っ越して、そこがネットができなかったらどうしよう……。とか、気になって、踏み切れませんでした。 今は無線でつないでるから結構快適に見れるんですが、いまさらISDNには戻れません……。 今の状況で、ネットのない生活なんて、考えられないので。 実家でいいじゃないか。と、言われますが、私にとってはいろいろ不都合が多いんです。 したいときにしたいことができないし。 洗濯物も、自分の分洗おうとしても、気をつかう。 食事もしかり。 自分の分だけなら、好きなように作りますよ。 味つけ失敗しても、被害が及ぶの、私だけだし。 まあ、そんなふうに結構我慢してました。 なんかもう、最近、そのイライラが限界に近いです。 チャンネルはなさない人とか、チャンネルはなさない人とか、チャンネルはなさない人とか。(苦笑) 見たいのがないのなら、こっちが見たいの見せてよ! ……まあ、幼稚なチャンネル争いですね。 自分の部屋にもテレビあるんですが、衛星もBSデジタルも見れないので。 民放、極端に少ない県だし。 最近結構、あわただしいです、私の周辺。 小説、滞り気味ですみません。
2008年01月28日
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保管庫更新しました。「背中あわせにつなぐ手を。」です。 クチナシの庭のストックが終わったので、以降は背中合わせ~一本の、保管庫更新になりそうです。 背中合わせ~。 終わりそうで終わらない……。 着実に、課題(?)は消化していってるので、私の段取りより、ホント亀なみの進行速度になってしまってますが、先には進んでいるので、ご容赦を。 以降、ネタバレ含みますー。 まだ読まれてない方は、即、回れ右しましょう。(苦笑)---------------------------------------------------------------- 川上さん川上さん。 彼女の登場頻度がアップしたのは、このためでもありました。 にごしてまだはっきり書いていませんが、まあ、そういったことです。 この通過点も、私的には必要だと思ったので書いてます。 あと、また他で書いているものが、実はあります。 てか、夢をもとにしたものなので、勢い任せに短期間で終わらせたいのです。 リンクつなぐかどうかは、考え中です。 ……ちょっと……内容が……。 断言するのもどうかと思って、書きませんでしたが、私、基本的に年齢制限がつきそうなのは書くつもりはありません。 いまのところ、書く予定もありません。 あ、ネット上で。ですよ。 過去作はあるかもしれませんが、現在進行形およびこれから書くものは、書かない方針でいきたいんです。 今は結構、年齢制限をよく見かけるのですが、正直、どこまでが年齢制限なのだろう?って悩むところでもあります。 だって、市販されてる小説で。 それこそ偉人とも言える小説家の方の書かれた作品で、名作とも言われるもの。 学生のときに読んで、ひいてしまった表現……と言うか情景というか。 結構なまめかしくて、衝撃をうけた覚えがあります。 それから先が読めなくなってしまって、その作品を読んだことのある友人に「こういうところがあって、読めなくなった」と告げると「……時代(歴史だったかな?)小説って、そういうところ、出てくるものじゃない?」といわれて、さらにショックを受けた。という経験があります。 言いたいのは、そういう小説は、年齢制限がないだろうってのに、ネット上だったら規制かかるのはなぜ? とも、考えたりしてました。 このあいまいな線引きってなんだろ? とかも思います。 そういうあいまいだから、年齢制限にかかるようなものを書くつもりはない。 ……ってわけでも、ありません。 大元は「年齢制限がかかって、読者の枠を狭めたくない」って想いがあります。 誰もが安心して読める。ってものでありたいんです。 ……まあ、注意書きしたところで、実際はどうなのかは、わかりませんが。 年齢制限にかかりそうな内容は。 テーマにそわない、もしくは書く必要がないのなら書かない。 そう、私は思ってます。 ……そう、思ってきたんですけどねぇぇぇぇ。(滝汗) 今、ほかで書いてるもの、葛藤にさいなまれてる作品でもあります。 回避策が、どうあがいても、見つからなくて。 ってか、そこが根幹に触れるところだから……。 まだ、始まったばかりのところなので、なんともいえませんが。 それにしても私の夢。 最近、創造物ばかり。 昨日の夢には宇宙人も出てきた。(苦笑) いつものごとく、私は観客。 疲弊した星にたどりついて(宇宙船)、で、50年か100年くらいたった星でのお話。 同じ区域に住んでる、おにーさんが、実は先発隊の生き残りで、土地の地質を検査しているときに、偶然、乗ってきた船を見つける。 本人は「知らない」と否定するも、写真を発見して、事実が発覚――。 というふうに、話がすすんで。 隠れていた宇宙人(逃げてきただけ。戦う意志ナシ。傷ついてる)とか、その子供とか出てきて、で、その子供になつかれて、集落の人たちでその追われてる子供を逃がそうと苦心する――。 そんな話です。 なんの影響受けたかはわかります。 おそらく映画の「ハムナプトラ」。放送されてたから。 だけど。 内容がまったく違ってる……。(苦笑)
2008年01月27日
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一瞬、頭が真っ白になって、すぐに言葉が出てこなかった。「――だれから、聞いたの?」 あえぐように、ようやく出てきた言葉は、それだった。 今の選考関係で、私とユズルのつながりが知れるのは好ましくない。 なのに、今、直接選考に関わっている川上さんが、私とユズルの関わりを聞いている。 ……そこにどんな意図があろうと。 問題は、その情報源だ。 川上さんはそんな私の気持ちに気づかない様子で、頬をさらに染めて「三島さんが、そういったことを、話されてたから――」とうつむいてつぶやいた。 川上さんが主体となる初めての面談のとき。 その相手先がユズルの会社だった。 緊張と不安で、何度もトチッて間違って、なんて失態を繰り返したっていうのに、ユズルはおだやかに川上さんを受け入れていた。 ユズルの同僚がイラだちをあらわにしても「初めてなんだから」とたしなめてもくれた。 その後も、仕事上、川上さんを訪ねたときも、その場でうまく返事ができない川上さんを「あせらなくてもいいから」と、長い時間、待ってくれたのだと言う。 そのときも「お時間をとらせて、すみません」と頭をさげる川上さんに「気にしなくていいよ」と苦笑をうかべるにとどめていた。 川上さんには、なぜユズルがそう気をつかってくれるのかが、わからなかった。 私から担当を受け継いだ新人だから気をつかっているようには思えなかった。 それであるとき、口をついて出てしまったそうだ。 なぜ、気にかけてくれるのかと。 ユズルはそういわれて、自分の行為に気づいたようだった。 出すぎた真似をしたかな。 と、恐縮しつつも「他の人には話さないでほしいんだけど」との前置きを川上さんがうなずいた上で、この面談が始まる前から、私と知り合いなのだとの事実をつげた。 途中から代役を退かなければならなくなった私が、そのことを悔やんでいて、川上さんのことをお願い。と頼まれていたことも。「でもチサ――、じゃない、柏木さんと知り合いだからって、選考に色をつける必要はないからね」 そういったユズルに、川上さんは、判断するのは主任だからとも説明しておいたという。 ユズルもそれを聞いて、安堵したようだった。 ユズル本人から、話を聞いたと知って、私は胸をなでおろした。 ほかの誰かに気づかれたっていう、可能性は消えた。 不正をしているわけでもないし、別に気にすることでもないのだろうけど。 ……なんとなく。そうしたつながりを他に知られるっていうのは、胸がむずむずして気持ち悪かったから、川上さんが知ったと聞いて、ほかにも知れてるんじゃないかって、あせってしまった。 確かに、ユズルには「川上さんをお願い」と頼んでいたけど。 それは「慣れてないから大目に見てね」程度の意味だったんだけれど。 まあ、ああした気をつかうのは、ユズルの性分だから。 ユズルらしいこと、この上ないんだけれど。 ……もう少し、考えて行動して欲しかった。 私は安堵の息をつきつつも、シンと冷えた胸のうちを、感じていた。 川上さんがユズルと私の関わりを知って、驚いたというのもあったけど。 ほかにも。 彼女の行為が、示唆する先が見えて。 息が詰まるのを、感じていた。
2008年01月27日
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ここ数日、更新できてなくてすみませんー。 平日は残業、昨日は仕事でパソコン使って(自分の持ち込んで)、職場に忘れてました。 職場を出た後、ショッピングなりしてたので、気づいたのが夜半。 さすがに暗い中、職場に行く気になれず、今日となりました。 ……にしても、寒いー。(-_-) 平日の残業は、今までと変わりないのですが、寒いからか、お風呂の時間が長くなってしまって。 ……一時間以上って、長いですよね。(苦笑) そういう話したら「えー!?」と驚かれした。 ……やっぱり? でも、女性だと、少なくても30分はかかると思うですけど。 男性にその話をしたら「長い!」そうですね。 ……それくらいかかりますって。 で、半身浴が気持ちよくって、小説持ち込んで読んでました。 汗をかくのが気持ちいいんですよ。 何もなしに一時間以上は難しいです。 あと、髪の乾燥が気になってきたので、トリートメントなり、ヘアパックなりをしてました。 トリートメントとかを髪になじませて、蒸しタオルで巻いて、それで半身浴。 トリートメントなりをなじませる時間が長いので、翌日の髪質がサラっとして、かつ、しっとりしてます。 残業してご飯食べて長風呂してたら、まあ、時間がすぐすぎてしまい。 気がついたら12時ですよ。 ははは。 まあ、そんなんで更新できませんでした。 気になるところで打ち止めててすみません。 さて、これから書きましょうかね。
2008年01月27日
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今日はダメって行ってたのに。 両親がお店に予約を入れてしまったので(それを知ったの、出立する30分前)、しかたなく行くことになりました。 年に一回は、家族に食事をごちそうすることにしています。 実家暮らしだし、いろいろと迷惑かけてるところもあるし。(もちろん、かけられることも。) もともと外食をしない両親なので、まあ、たまには。 ってことで、こうした機会をもうけています。 で、行くからには本人達の希望の店でと、あとは任せています。 以前は、いろんなところ連れて行ってたんですけど。 好みがあわないこととかもあったから、最近では店選びは家族任せ。 会計を私が持つってことでなければ、行かなかったんですけど。 一瞬、お金だけ払おうかとも思ったけれど、それだとなんだかわびしいんで、急いで身支度しての同行となりました。 時間無制限なのに、いつものクセで、最初からとばしてしまって。 すぐに限界来ました。(苦笑) まいったまいった。 絶対。今日は元取れてない。 焼肉食べ放題だけれど、ほかにもサイドメニューが、お寿司とかデザートとかちょっとした副菜があり。 そちらも堪能してました。 いつもに比べて、食材が多かったですね。 ……とまあ、なんてことはない日記でした。 急遽はいったこの予定のために、犠牲になった用件もあるんですけどね。
2008年01月23日
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◇◇ ◇◇ それからしばらく「針のむしろ」状態は続いていた。 私の落ち込みと反比例して、久坂さんは機嫌がよかった。 仕事上、どうしても顔をあわせないといけない副社長との対面の時だって、含みのない、晴れやかな笑顔を向けたのだから。 いつもと違うと副社長も気づいたのだろう。 なんだか奇妙なものを見る目で久坂さんを見ていたけれど、深くは追求してこなかった。 その場に居合わせなければなかった私としては、心苦しいばかり。 だって、わかってるから。 機嫌のいい久坂さんは、内心、笑い転げているのだろうと。 秘書課の方々も、そんな久坂さんの対応に困っていた。 機嫌がいいに越したことはないけれど。 今までが今までだっただけに、何だかこう、胸のうちがすっきりしない。 久坂さんの笑顔を、素直に受け止められなかったようだった。 久坂さん、ご満悦のファイルは、しばらくすると手元に戻ってきたけれど。 久坂さんが時折、顔をあわせた相手を見て、晴れ晴れとした笑顔を浮かべるのを見るたびに、私は肩身の狭い想いをしていた。 ファイルの顔写真を思い出して、内心笑っているのだと、わかってしまうから。 そうした気苦労を抱えていたから、自然ともれるため息も増えてしまって。 川上さんに誘われた居酒屋でも、自然とため息をもらしていた。「……先輩、大丈夫ですか?」 と、川上さんに声をかけられて、状況を把握するほどに。 それまで、ため息をついているなんて、自分でも気づいてなかったから。「だいじょーぶだいじょーぶ。 ……気をつけないといけないのは、一人だけだから」 カラ元気とも言える乾いた笑いをあげたあと、ふと小声でつけくわえる。 それも川上さんの耳に届いていただろうけど。 彼女は「触れないほうがいい」と感じたらしく「そうですか」と返事をするにとどめていた。「あ。それで。 わかんないところって?」「あっと、すみません。 この件なんですけど――」 川上さんを直に久坂さんに会わせたあの日から。 久坂さんは約束を守って、川上さんからの電話をとりついでくれるようになった。 でも、電話口じゃ説明しきれないところもあって。 いつもは社内で待ち合わせて、教えていたけれど、今日は夕食に誘われて、その席で話そうということになった。 社外に漏れたら大変な、重要度の高いものでもないし。 ごく簡単な内容なんだけれど、資料を見ながらでないと、理解しにくい内容だった。 それに、まともな食事にありつけるのは久々だったから。 最近は自炊が面倒で、コンビニのお弁当とか、パンとか。 そういったものですませていた。 けど、あれって、すぐあきるのよねー。 思いつつ、久々に食べる、生春巻きのおいしさを味わっていた。 川上さんの聞きたいことっていうのは、すぐに終わった。 終わったけれど、彼女がわざわざ夕食に誘ったのだから、他に話があるんだろうなとも感じていた。 前のような、グチだろうけど。 私も、グチはたまりにたまっている。 互いに吐き出すつもりでいたんだけど……途中で川上さんの様子がおかしいことに気づいた。 何か言いたそうにしながら、まごまごいじいじしてる。 口を開きかけては「やっぱりだめ」みたいな感じで口を閉ざし、うつむいてしまう。「……どしたの?」 あんまり長く続くから、私の方から声をかけてみた。「あ、いえ、その……」 と、これまた川上さんらしくなく、しどろもどろになっている。 眉をよせる私に、しばらくして川上さんは、思い切ったように顔をあげた。「あの、先輩――」「なに?」「み、三島さんとお知り合いって、本当ですか」「三島……?」 それが誰の名前か、すぐにわからなくて。 ――ユズルの姓だと、気づいたとき。 川上さんの頬が、ほのかに赤くなっているのに気づいたとき。 私は知らず知らずのうちに、息を、のんでしまっていた。
2008年01月22日
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先日、書いていた少女小説に関して。 ぼかして書いたつもりでしたが、web拍手でズバリ当てられました。(笑) わかる方にはわかるのですね。 もう名指しでいいや。と、思って小説……というか、シリーズ物のお名前を。 先の日記にネタバレを書いてるところがありますが。 コバルト文庫から出ている「流血女神伝」シリーズです。 タイトルからして、何だかすごいんですけど。 少女小説にしては、内容はシビアですよ。 で、以降、ネタバレ書きますので。 読んでない方、ちょっと興味をもたれた方は読むの控えたほうがよろしいかと。 そして、下記は長いです。(苦笑)----------------------------------------------- 自分でも、よくついていけたな。と思うほど、巻数の多い小説でした。 コミックだって全27巻とかあったら「すごい」と思うのに、それが小説でですよ、小説で。 こんなに長いものとは、思ってませんでした。 その分、主人公の人生の波乱万丈なこと。 けど、なんというか。 私の好みのツボを突きまくっている小説なのです。 中世ヨーロッパ風の国を舞台としたかと思えば、アラブ風の、砂漠の国を舞台としたり。 で、海賊となって海が舞台となったり。 そうしながらも、世界の基盤がしっかりしていて。 宗教が結構絡んでくるんですけど、その基盤もしっかりしている。 先にも書きましたが、主人公はまあ、これでもかってくらい、いろんな情勢に飲まれてしまい。 けど、その中でもあきらめずに進んでいく。 ごく平凡に見えつつも機転はきくし、本質をつかんでいたりする。 ……とまあ。そんな話です。 恋愛も絡むし、まさか少女小説で主人公が母親になって、その後も長く主役張り続けるものが出るとは思いませんでした。 恋愛話もあります。 これが綺麗に絡んでくれれば、落涙物の好みのものだったんですけど……。 好きなシリーズには変わりありません。 変わりありませんけど、そこまでシビアになるとは……。 甘い話が……はう。 政治物が絡んでくるのは好きなんです。 けど、それを押しての恋愛感情を、期待してました。 第2シリーズみたいなところで、婚姻にいたるのですが、それは政治的な絡みが強くって。 それはそれでかまわないのですが、けど感情までそっちに傾くのが……。 あと、第1シリーズで「この人とくっつくのかな?」と思ってたのが、見事にはずれて、別な人と婚姻にいたり。 またその婚姻にいったった相手が、私個人的にはアクが強すぎて、ついていけませんでした。 それも読み進めるにつれ、粗野で粗暴だけれど、それはそれでいいか。 と、思ってたのに、その婚姻が解消となる事象があって。 それはどうしようもない不可抗力でした。 それからラストに至るまで。 婚姻解消になってから、ラスト近くになるまでは、もう元に戻ることはないのかな。 と、思ってました。 が、ラストが近づくにつれて、その婚姻相手が登場するようになって。 ムリだろうと、どこかで思いつつも、二人が再会して……ってのを、どこかで期待してました。 仲が修復するのは難しいだろうけど、とりあえず話を、してほしかったですね。 甘い考えだわかった上での願いでした。 結局、それはなかったようですが。まだ最後まで読んでません。 最終の巻を、まだ読みきってません。 ぱらぱらとめくってだけ、最後まで見ました。 何だか、読み進めるのが怖いんですよ。 最後だと思うと。 で、ラストは過去を振り返っての話になってます。 ここで「え? その人とくっついたの?」ってなことになってて驚きでした。 驚くっていうか、拍子抜けって言うか。 せめて、そこに至る経緯を……! それがないと互いに異性として、というより、家族と言うか、同志というか。 そんな風に互いを見ていた二人が、くっついた実感がわかなくて。 ……後日談でも、番外編でも、そのあたりを書いてくれないだろうか……。 好きな小説にめぐり合えるのは、大変嬉しいことです。 手当たり次第に読んでいた昔とは違い、最近、特に実感します。 以前は、好みでなくても我慢して最後まで読めてましたが、今ではムリです。 引き込まれる魅力がないと、きついだけで。 私も、趣味で連載ものの小説を、web上で掲載してます。 書いてるほうとしても。 読んでる人がグイグイ引っ張られるものを書けたらな。と、思ってます。
2008年01月22日
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同時に、もう一つ、納得していたことがあった。 この前、久坂さんを「社長」と読んで起こそうとしたとき。 彼の驚きざまが大きすぎて、ちょっと気になっていた。 けど、クー子さんの声と似てるってことなら、納得できる。 いないはずの人の声を聞いたんだもの。 そりゃ、驚くわ。 そう、考えたものの。 そんな自分の考えに「……ん?」と首をかしげてしまう。 でも確か、クー子さんは。 久坂さんの不信をかって、長期休暇と言う名の、実質、停職を受けてる身だ。 実情から考えるなら、久坂さんはクー子さんをよく思っていないはず。 それは主任から、クー子さんが休んだ当初の、久坂さんがとった態度を聴けば、容易に想像できる。 嫌っていると言っていいほどの態度を、久坂さんはクー子さんにとっていた。 内心もそうであるとの態度を、みんなに見せつけている。 だけど。 そうだとしたら。 ……あの、表情は、目は、なんだったんだろう。 強くつかんでいた腕、食いいるように見ていた目。 その目には熱をはらんだ切望が、のぞいていた。 何かを求めるような、願うような、望むような。 あの時は、そうした熱情を傾ける相手と私とを、寝ぼけて勘違いしたのだと思っていた。 私の声がクー子さんに似てると聞いて、その相手がクー子さんなのだと納得しかけたけれど。 そうなると、矛盾が生じてくる。 久坂さんは、クー子さんを嫌っている。 そんな相手を、あんな熱のこもった目で見つめるだろうか?「社長と秘書の恋」とか、創造物の中で聞くけれど、実際がどうなのかはわからない。 なにせ、重役の方々で、一番年が若いのが久坂さんだから。 ほかの重役方は、ごく一部を除いて家庭持ちだ。 そうした方々のそばに控える秘書課の面々が、甘い関係になるようには思えない。 実際、聞いてみたけれど、恋人はいるけれど、秘書の仕事とは関連のない人ばかり。 興味本位で、私が久坂さんづけになった当初、クー子さんに恋人はいたのかと聞くと、誰もが首を横にふった。 そして誰もが苦笑交じりに、こう話す。「好意を寄せられても、気づかない子だから。 天然が入ってるのよね。だから、あの社長相手でも、折り合いをつけられるんだろうけど」 そしてクー子さん自身も、好意を寄せても、なかなか自分から踏み出さないタイプだという。 クー子さんが好意を抱く相手は、見ていればすぐわかるらしい。 顔に、態度に、わかりやすく出てしまうのだそうだ。 社長に対して、そうした様子が見えないから。 社長も、自分の意向を汲んでくれる、扱いやすい秘書。と、クー子さんを見ていて。 一時期、クー子さんと社長の仲を疑った時期もあったけれど、時の経過と共に「そんな意志は互いにない」のだとの考えに至ったそうだ。 そんな話を思い出しつつ「久坂さんは、私をクー子さんと間違った」説を除去した。 ほかの、久坂さんが何かしらの想いを寄せる誰かと、私を見間違ったのだろうと。 そう、思った。 ……そう、単純に結論付けたけれど。 このとき、もう少しよく考えていれば、後の事態がややこしくならずにすんだのかもしれない。 久坂さんが、なぜ私に「社長」と呼ばせないようにしたのか。 久坂さんは、私とのこれまでの経緯があるから、勝手が悪いと言っていたけれど。 理由は、それだけじゃなくて。 ――そうじゃ、なくて。 久坂さんが口にしなかった、本当の理由に、このときの私は気づいていなかった。
2008年01月22日
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たてつづけの日記ですみません。 最近、書くほうばかりで、小説読む気にはなれませんでした。 文庫本かっても、封もあけずに放置状態。 ちょっと読む気になって読んでいました。 連載8年の少女小説を。 ま、読み始めた時期が時期なので。 少女小説って割には、結構シビアなものですけど。 けど、この方がかかれるものって、私が好きな要素が多いんですよね。 今回のは、機転がきく子がいる、いろんな状況下におかれつつも乗り越えていく、で、政治的絡みがある。(←ここ、結構重要。) 政治的絡みは、政策とか税金対策とか、細かな小難しいところが長々と書かれるとダメですけど、なんと言うか、策略の応戦とかそういうハラハラ感と「どうする?」的なワクワク感がすきなんです。 話題になった韓国ドラマ「チャングムの誓い」。 あれも好きだったんですけど、ただの料理対決だけだったら、特に何の感慨もなかったと思います。 ほどよく、国の内部に関わる事象との関連があったから、好きでした。 まあ、私の好みって言うのは、そういう感じです。 で、番外編は読んでないんですけど、本編の22冊は読みました。 一時期、展開についていけなくて、離れてたんですけど。 ふと手にとって読んでみると、やっぱり面白くて。 ……で、ラストが出てるとは知らずに、今日購入して読んでました。 先を待ちきれずに、途中をぱらぱらとで。 終わりは納得できるんでしょうけど。(まだちゃんと読んでない) ……いまさら? ってところもありました。(すみません) これまでいろいろと期待してたのに、そうじゃないと否定し、長い巻数にわたって否定し続けて。で、あ。本筋はこっちかな。と、思ってたらそっちも否定されて。 最後は最初に期待してたところにおさまってました。 ……なんのことか、わかりませんね。色恋沙汰の話です。 まあ、それでもかまわないんですけど。 もっと、そこに行き着くまでの感情とかを見たかったですね。 気づいただけでなく、そこからいくらか進んだところまで。 ……あ、読み飛ばしたところにあるのかな? 人の好みっていろいろありますが、最近、ホントに満足して余韻に浸れる作品に出会えていません。(涙) 好みの偏りがあるっていうのも、わかってます。 わかってるけど……。(ジレンマ) 最近は読んでいませんが、作家さんの中では、乙一さんの作品が、結構余韻に浸れます。 手を出せないのは、気持ちと時間に余裕があるときにじっくり読みたいから。 そういうのもあって、最近は書くほうに時間をとられているんですが。 以前、作家の誰かが言われてました。「読みたい作品がないから、自分で書くしかない」みたいなこと。 それを読んだときは、その気持ちがわかりませんでした。 今では何となくですが、わかる気がします。
2008年01月21日
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昨日……ってか、今朝にかけてみた夢。 久々にラストまでいきました。 ホント、久しぶりにおもしろい夢だった。 夢の中で、私は外から見てる人。 いろんな人に感情移入しつつも、誰も私でないってヤツ。 詳しくは書けないけれど「……どうしてそんな世界観……?」ってなものでした。 まず孤島。 世界は広くて、数多くの国があるけれど、その中の、田舎~で、島人がのほほんとしているところが舞台。 で、世界各国においてある、ある気象だけを調査する塔(灯台みたいなの)があって、そこに派遣される調査員が来たところから始まり。 まあ、ファンタジー(魔法とかはない)が入ってるんだけど。 衣服も食べ物も、微妙に違っていて。 けど、一部、映画版のトランスフォーマーみたいなのが出てきたり。 で、事件が起きて、あーだこーだしつつも解決して、一件落着。 ……のところまで、話がいったところで目が覚めた。(笑) ここまで話が進んで終わると、すっきりしていて、気持ちいい。 私は結構、こういう、自分でもおもしろいと思う夢を見る。 そして、夢の内容が小説のネタになったりもする。(笑) ……てか、結構ある。 考えてるうちに、内容は変わってくるけれど。 けど、今回のは、なんでこういう話を見たのか、心当たりがまるでない。 たいてい「あ。あれを見た(聞いた)影響かぁ」とわかるんだけれど。 トランスフォーマー、まだ見てないのになぁ。
2008年01月20日
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そうして、しばらく押し黙っていたけれど。「とにかく、このファイルは俺が預かる。 もう、ヘマはしないから」 ……と。 反論むなしく、結局、2冊目のファイルも久坂さんに取り上げられてしまった。 そのあとも、反論し続けたけれど、久坂さんは「馬耳東風」「馬の耳に念仏」状態になり、最初こそ生返事をしてたけれど、最後には返事さえしなくなった。 何を言っても無駄だと悟って、私もあきらめた。 それまでにも、久坂さんのスキをついて、ファイルを取り上げようとしたけれど、徒労に終わった。 久坂さん、勘がよくって、毎回キレイにかわしてしまうんだもの。 しまいには、こっちの息のほうが上がってしまったわ。 久坂さんからは「どんくさ……、失敬。鈍いんだな、君は」なんて、言われちゃうし。 ……言い直したって、意味的には変わりないんだけど。 まあ、そんな経緯で仕方なく私も我慢してた。 我慢してたけど……! あんなの、私にとっちゃ「針のむしろ」「蛇の生殺し」状態だ。 久坂さん、時間を見つけてはファイルを眺めて、ひとしきり笑いをかみ締めているから。 時には吹き出したりもして。 気にしなければいいんだろうけど……。 いかんせん、二人きりの室内で。 しんと静まり返った中、片割れが、んな行為してたら、無視しようにも意識の中に入りこんでくる。 私にとっちゃ、恥ずかしいイタズラを目の前で露見させてるようなものだ。 居づらいこと、この上ない。 で。 社長室にいるのがいたたまれなくなって、私は何かと理由をつけて、秘書課のほうへ逃げ込んでいた。 用が終わっても、だらだらと空いてる席――クー子さんの席に腰を下ろしている。 そんな私に、秘書課の方々は特に何もいってこない。 社長の風当たりが強くてつらいのだろう。 ……なんて、勝手に勘違いして、優しくしてくれる。 直接、そんなふうに言われたわけじゃないから、私も訂正はしないでおいた。 内容は違っても、久坂さんのせいであの部屋に居づらいのは本当だし。 唯一、事情を知っているのは主任だけ。「ここにいていいの?」 と、忠告した主任に「だって……」と、べそをかく思いで事情を説明した。 それで主任は、久坂さんの機嫌のよさを納得してくれた。 機嫌をよくする材料を眺めているのだからと、私の長期滞在も許してくれた。「仕事に支障がない程度にね」 と、付け加えて。 何もせずに、ただ部屋に居座るのも気が引けるから、電話を受けたり、雑務をこなしたりと、社長の仕事の合間に、秘書課の仕事もこなしていた。 そうして仕事を一緒にしているときに、ふと気づいたことがある。 私のある行為に対して、何人かが同じ反応を見せていた。 一人だけなら、特に何も思わないけど、人数が多いとちょっと気になる。 その行為って言うのが、私が「社長」と呼ぶように告げると、びくりと体を震わせて、驚いた表情で私をまじまじと見るってこと。 最初は、単に、いつもこの課にいない、私の声に驚いたと思ってたけど。 何度か続くうちに、そうじゃないって気がついた。 気になって、何度目かの時に、そうした表情を向けた秘書課の方に「あの……」とおずおずと聞いてみた。「なんか……私、おかしいですか?」「え? どうして?」 その人も、私がそんなことをいうとは思ってなかったらしく、心底不思議そうに首をかしげた。「え……だって……。さっき、妙に驚いた顔をしたから……」「ああ。あれね」 そうつぶやいて、苦笑を浮かべる。「あなたの声がね。クー子にすごく似てたから、驚いたのよ。 不思議よね。普段はそんなこと、思わないのに。『社長』って、呼ぶ声だけが、すごく似てるの。 クー子がいるんじゃないかって勘違いするくらい」 その話を聞いて、私も納得できた。 同じ思いを抱いたのは、彼女だけではないのだろう。 だから、あんなふうに、驚いた表情をむけられたんだ。
2008年01月20日
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そうして私が「意味不明」で通していると、久坂さんは怪訝そうに首をかしげた。「なにが、わからない?」「え? ……何が面白いのかが、まったく……」「……おもしろいと、思うんだが。 イラだたしいヤツらの、あんな顔を見たら。 実に気分がいい」 ……あ。なるほど。 と、ちょっと納得。 ファイルには、副社長派の人、それどころか、本人も掲載されている。 社長には、苦い感情しか覚えない人たちの、落書きされた顔っていうのは、痛快なんだろう。 でもだからと言ってだ。「全員、イラだたしいヤツってわけじゃ、ありませんよね?」 私の言葉に、久坂さんは少しの間をおいて「ああ」と納得した。「心配しなくても、誰がどんな扱いうけようと、君をとがめたりしないよ。 だからほら、はやく」 と、また急かされる。 んなこと言われても。 私はイヤだ。「わ、わすれました」 少々どもりながら告げると「わすれた?」と、久坂さんが眉をよせる。「う、家で復習してたんですけど。 ファイルを……もってくるの忘れて……」 カラ笑いしつつ、頭を下げる。 もちろん、ウソだけど。 だってファイル、いま、机の上の戸棚に立っている。 あるけど、見せたくない。 久坂さんは、なんともいえない微妙な顔をして、チラリと私の机上に視線を向けた。 ぎくりと、体が強張っていると、私に差し伸べられていた手が、するりと戸棚の本に置かれて、例のファイルを手にしていた。「っ、あ!」 慌てて手をのばしたけど、時、すでに遅し。 久坂さんはそのファイルを、ひょいととりあげて、手にしている。 ついでにまたもむなしく、私の手は空をかすめた。「それは――!」「これだろう? あの続きは」「あ……! っと、その……!」「ウソがヘタなんだから、初めから正直に言えばいいものを。 ……そんなに、見られたくないのか?」「……見せたいわけ、ありませんよ」 肩をおとしつつ、私はうつむいた。 ウソがばれて、すごく居心地が悪い。 うつむきつつ、私は久坂さんの言葉を、思い出していた。 確か、ウソをつかれるのが、イヤだとか言っていた。 私を専属の秘書にしたのは、ウソがつけない性格だからだ。 なのに、ウソをついた私。 久坂さんにはお見通しだったけど、気分を害したはずだ。「なぜ?」 少々、声が低くなっている。 うつむいているから、顔が見えないけど、少しご機嫌斜めのようだ。 私は軽く息をつくと、正直に心境を話した。「いいわけありませんよ。 気分的には、秘密の日記を、家族に見つかって中を読まれたって気分ですから」「………………。 なるほど」 長めの間のあと、久坂さんはそうつぶやいた。 ……ほんとに、納得したんだろうか。 思って、おそるおそる久坂さんを伺い見ると、彼の表情に「不機嫌」の様相は見えなかった。 よかった。 ホントにわかってくれたみたい。 私は顔をあげると「ですから」と手を差し伸べた。「私には、そうして久坂さんに見られるのが、苦痛でしかないんです。 一冊あるから充分でしょう? そちらは返していただけませんか?」 それから久坂さんは、長いこと考え込んでいたけど。 最終的に出た結論は、こうだった。「却下。」「っ!! なぜですか!」「君には悪いが、こんなおもしろいものを我慢しろというほうがムリだよ」「ですから、一冊あるからもういいでしょ!?」「いやだ。こっちもみたい」「なに子供みたいなことを……! このさい、言いますけど、昨日の態度はなんですか! 打ち合わせ先の方を見て、吹き出しそうになってたでしょ!? そのファイルを見てたから!」「それは……しかたないだろう? 思わず、体が反応してしまうんだから」「だからこそ! ダメだっていってるんです!」「君だって、俺と同じ立場だだったら同じようになってたと思うが?」 負けじと、久坂さんはそういったのだろうけど。 残念。 私が同意するわけないじゃない!「私は一度として、対面した相手先を見て、笑いそうになったこととかありません! だいたい、おもしろおかしくするために、落書きしたんじゃありませんから! それに久坂さんと、同じ状況に置かれたりしたら! 笑ってしまう可能性大なんだから、私の方からファイルを遠ざけますよ。 笑ってしまって、あのファイルの存在が相手方に知られでもしたら、それこそどうしようもないですから!」 私の言葉に、久坂さんはぐうの音も出なかったようだ。
2008年01月19日
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そうして一時期は、秘書課から逃げ出した私だけど。 そのあと、何かと理由をつけては、秘書課にいる時間を長くしている。 なぜかって? ここにいるより、社長室にいるほうがつらいから。(キッパリ) はっきり言って、針のむしろ状態だから。 私にとって、あの部屋の、今の状態は。 朝、出社して、とりかこまれた秘書課から、逃げ出したあのあと。 社長室で一息ついていると、久坂さんからにこやかな朝のあいさつを受けた。 まさに好青年(……って年でもないんだけど)。 さわかやかで、気さくな近所のおにーさんが、気軽に声をかけるように。 それを見て、秘書課の方々の動揺を、身をもって感じた。 実際、経験しないとその奇異さは感じられないだろう。 私も、不意をうたれたこともあって、思わずのけぞりそうになったもの。 どうにか、態度に出さずに我慢できたけど、半歩、後ずさってしまった。 これまで、不機嫌か、感情のない久坂さんにばかり接していたから、なんというか……おかしな感じがしてならない。 居心地悪くて、なんだか背中がむずがゆくなるような感じで。 しかも。 久坂さんは、私の出社を待っていたらしく、部屋に入るなり、私の席の近くに来る。「……あの……なんでしょうか……?」 普段と様相の違う久坂さんに警戒しつつ、おそるおそる声をかけてみる。 すると、久坂さんは笑みをさらに深めて右手を差し出した。 ……なに? 意味がわからなくて、久坂さんをうかがいみると「ほら、早く」というように急かしたてられる。 私は首をかしげつつ、手の平を上に向けて差し出された手に、私の手をポンと置いてみた。「いや、お手じゃなくて。 ……というか、なぜ『お手』なんだ?」「え? 違うんですか? てっきり、犬の話かと……」「違う。そうじゃなくて」 ぺいっと、無常にも私の手を振り払って、久坂さんは再度、同じように手を差し出した。「…………?」 本気でわからなくて、その手と久坂さんの顔を交互に見るしかなくて。 そんな私にしびれを切らせた久坂さんが「ファイル」とつぶやいた。「……ファイル? どの?」「決まってるだろう。 昨日の続きだよ。 あっただろう。もう一冊」「……え゛!?」 ギックンと、体が強張ったのは、いうまでもない。 いわずもがな。 2冊目も、1冊目と同じ人生を歩んでいる。 ……つまり。 落書き、されている。 そ……それが欲しいって……。「な……なにするんですか」 とりあえず、落書きの件はふせて探りをいれると「何をいまさら」って顔をされた。「鑑賞だよ。 いうなれば、ストレス発散」「……ストレス発散?」 また意味不明な展開に、私の頭は、事象がこんがらがっていた。 ファイル見て、ストレス発散って? 確かに、ファイル見て笑ってたけど。 あれでストレス発散になるの?「そう。 久しぶりに、ふさいでた気分が晴れた。 だからもう一冊――」「いや、意味がわかりませんって」 そういいつつも、私はもう一冊は死守しようと、やっきになっていた。 久坂さんは、昨日は笑ってファイルを見ていたけれど。 私の落書き全て、久坂さんが気に入るとは限らない。 親しい人に、とんでもないことをかかれてたりしたら、誰だって気分を害すものでしょ? それがたった一人だったとしても。 その一人で、気分を損なうものだ。 しかも。 私は久坂さんにとって、どの人がその該当者に当たるか、まったくわからない。 わからないからこそ、そんな危険、おかしたくなかった。 そういう気持ちもあって、わかりませんって通したけど。 実際。 あれがストレス発散につながる経緯が、久坂さんの思考回路が、私には理解不能だ。
2008年01月18日
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アンジェラ・アキのコンサート行ってました!! よかった~~~!! トークは面白いし、直で聴く歌声に感動したし。 声量がすごくて、感激でした。 で「歌われるかな? ムリかな?」と思ってた曲を歌ってくれたときには、思わずほろりと涙がこぼれてしまって。 私の座ってる席、結構、涙こぼしている人、多かったです。 今回、宮崎初のアンジェラ・アキのコンサート。 このひと時に出会えたことに、感謝。 そんなわけで、ついさっきの帰宅です。(汗) 更新は明日に。 最近、滞り気味だから(時間的に余裕がなくて)、週末、何話かUPしようかと考えてます。 ……あ。でも週末も予定が。 でも、ま。 がんばってみます。
2008年01月17日
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それからも久坂さんは、ファイルを眺めては笑いをかみ殺していた。 私としては、居心地悪いこと、この上ない。 誰にも言えない秘め事を、見られているも当然だから。 ひとしきり眺めて、ファイルを閉じたのを見て、どれほど安堵したことだろう。 やっと返してくれる。 そう思ったのもつかの間。「これ、しばらく借りるよ」「はい――。……はい!?」 早とちりして、返してくれるものと思ってした返事は、すぐさま慌てたさまに変化する。 とにかく、私は泡くった。「か、借りるって!? どういうことですか!?」「どうって……そのままの意味だが。 借りてもかまわないだろう? 原本、あるんだし」「そ……そういう資料の有無でなくて!」「……やっぱり、使い慣れたものの方がいいのか?」「いや、それもありますけど! そうじゃなくて! どうして持って帰らなきゃいけないんです!?」「見たいから」 悪びれもなく、これまた平然と久坂さんは言ってのける。 あんまり堂々としているものだから、私の方が、硬直してしまったほどだ。 そんな私を、久坂さんは不思議そうに首をかしげている。「ほかに理由が必要か?」 理由って……。 何か言いたいけれど、言う言葉が見つからなくて、口だけがむなしく、わずかに動いてた。 ……結局。 久坂さんを納得させるだけの理由も思いつかず、言葉も見出せず、仕方なく、彼の要望にそうことになった。 その時は、なぜ久坂さんが、それほどファイルを見たかったのか、わからずじまいだったけれど。 翌日になって、その理由がわかった。 朝、出社するなり、秘書課の方々にとりかこまれた。 その誰もが切羽詰った表情をしている。 鬼気迫る表情に、私は身の危険を感じて、後ずさりしたほどだ。 その一人にがっちりと二の腕をつかまれたときには、小さな悲鳴をあげてしまった。「何があったの?」 ひそめつつも、迫力のある声で、そう聞かれた。 何のことかわからなくて、私は怯えつつ、首をかしげた。 彼女はさらに言い募った。「社長よ、社長。 機嫌がいいのよ、ものすごく」「え?!」 ……と。 彼女の迫力に感化されて、反射的に驚いてしまったけれど。 あとでふと「あれ?」と考え直して、またまた首をかしげた。「……それが、なにか悪いんですか?」「悪いもなにも! 初めてよ、社長からにこやかに挨拶されたのなんて! 就任してからこのかた、一度もそんなのなかったわ!」 と、その声に同調して「私も!」とか「得体が知れなくて怖い!」との声があがる。 後半部は、ちょっと久坂さんがかわいそうだなと思っていると、腕をつかんでいるかたが、さらにグイっ、私との間合いをつめてきた。「ねえ、いったい何したの!?」 つめよられても、思い当たる理由は一つだけだ。 あのファイルしか、心当たりないけど。 なんであれで機嫌がよくなるわけ? そんなに面白いものでもないと思うけど。 でもどっちにしても、そんなファイルの話自体、できるわけなくて。(落書きなんて、いえるわきゃない) 私は冷や汗をダラダラ流しつつ「わ……わかりません――っ!」と、囲われた輪の中から逃げ出すこととなった。
2008年01月16日
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一時は遅刻かって思っていた会議にも間に合って、何事もなく終わって。 社長室に戻ってそれぞれの席につき、安堵の息をもらしていると、ふと久坂さんが「……これは……?」と怪訝な声をもらした。「え?」 と、私も何気に彼のほうを見て、その手に握られ、怪訝な眼差しを受けているファイルを目にすると、ビキッ! と、凍りついた。 そ、それはっ! え!? なんで久坂さんがもってんの!? ちょっとだけパニックになりながらも、すぐに答えはでてきた。 さっき久坂さんを起こすとき。 散乱した資料を集めるときに、久坂さんも手伝ってくれて。 あのときだ! あのときから、手に持ってたんだ!「そ――! わ、わたしの……!!」 言いつつ、慌てて席を立って、久坂さんの手からファイルをとろうとしたけれど。 伸ばした手は、久坂さんがファイルをひょいと上にあげてかわすものだから、むなしく空をかすめただけだった。 おかげで勢いあまって、体を机につっぷしてしまう。 その体を起こしながら、私は叫んでいた。「な、なんでよけるんですか!?」「君こそ、何をそう慌てるんだ? これ、あれだろう? 俺が渡した人名顔写真ファイル」 私の言動に奇異の眼差しを向けながら、久坂さんはファイルの中身を確認しようと、ぱらぱらとめくり始めた。「っ、あーー!!」 叫び、伸ばす手もむなしく。 中を見た久坂さんは。 一瞬、目を丸くしたものの。 次の瞬間には、盛大に吹き出して、笑い転げることとなった。 笑い上戸だろうかと思うほど、久坂さんはひとしきり笑い続けていた。 こっちは、恥ずかしさに赤くなるやら、内容が内容だけに青くなるやらを繰り返していた。 久坂さんはよほどツボにはまったらしく、呼吸困難になるのではないだろうかってくらい、苦しげな息をしている。 笑い苦しすぎて、声も出ないくらい。 よくよく見ると、目じりには涙がたまっている。 どれくらいたってからか。 ……ゆうに五分は、笑い続けたように思えるけど。 緩みっぱなしの口元で、久坂さんは聞いてきた。「なんだって……こんな……」 言いつつも、またクッと、笑っている。 ……いい加減、笑いすぎ。 少し辟易した思いを抱えつつ、私は黙り込むしかなかった。 ……なんでって……必要だったからなんだけど……。「それにしても、痛快だな」 言いながら、久坂さんはパラパラとファイルをめくっては、時折吹き出していた。 ……ちょっと、しつこい。 思いつつも、「……すみません」 と恐縮しつつ、頭を下げた。 久坂さんは久坂さんで「なぜ謝る?」と、首をかしげた。 いや、なぜって……。「普通、そこ怒るところじゃないですか?」「……そうか?」「……多分」 久坂さんが忠告してこないこと自体、私には不思議でならないんだけど。 久坂さんは、少し考えていたけれど、肩をすくめただけだった。「君の手に渡った時点で、これは君の所有物だ。 それを君がどうしようと、俺が何か言えるものじゃないと思うが」「いや……まあ……それはそうでしょうけど……。 コピーしたものだし……」「わざわざコピーしたのか?」「はい。原本は社の資料だと、思ってましたから」「カラーで?」「白黒だと、実物と対面したとき、すぐにわからないかもしれないので」「……。相当だな。君の人を覚えるのが苦手だって言うのは」「だから。そういうことをしなければならなかったんですよ」 いまだ久坂さんの手中にあるファイルには。 久坂さんから渡された時より、いろいろと手がくわえられている。 私が自分で覚えやすいように、印象に残る箇所を強調したり、連想するようなことをメモ書きしたり……。 ……顔に、落書きしたり……。 ヒゲを加えたりチョンマゲニにしたりなんて、子供じみたものじゃないけど。 けどまあ……それに近い加工なり何なり、手を加えていた。 絶対、ほかにもらしてはならない、私にとって最重要機密だったけど。 よりによって、久坂さんに見られるなんて。 最悪だ。 ファイルを見られて、カミナリが落ちるのを覚悟していたけど、今にいたっても、久坂さんは怒る素振りを見せない。 それどころか、面白いものを見つけた子供のように、口元を緩めて目を輝かせている。
2008年01月14日
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何気にアクセスログ見たら、そんなふうだったんで驚きました。 たぶん、私が確認できた中で、最多記録じゃないでしょうか。一分間内では。 びっくり! 最近は一日500アクセス以上ってところです。 一日の中にも時間的訪問密度(?)の波はあるんですけど、一分間の数字では初めてです。 こんな最多は。 ご訪問、ありがとうございます。平伏。って心境です。 いろいろと「すみません」的なところもあるんですけど……。 ちょっと記録としてのこしておきたかったので、日記書きしました。
2008年01月13日
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もともと久坂さんが、横になっているソファのそばにしゃがんでいたっていうのもあったけど。 いきなり腕をひかれたものだから、バランスを崩して、ソファに前のめりになってしまった。 腕に抱えていた資料は床に散らばり、膝は床についてしまい。 久坂さんとの距離も一気につまって、すぐそばに、彼の顔がある。 驚いて目を見開く私同様、久坂さんも驚きに目を見張って、まじまじと私を見ていた。 その久坂さんの様子は、これまで見たこともないような驚きぶりだった。 だから私も、虚をつかれてすぐに声が出てこなくて。「……悪い」 と、そうポツリとつぶやいた声も、どこか夢心地のような、判然としない響きがこもっている。 謝罪をつげたものの、自分でもよくわかってないんじゃないかって、表情だった。「……いえ」 と、答えた私も、久坂さんと同じだったけど。 久坂さんが、つかんでいた私の手首を解放して、ゆっくりと体を起こすのにあわせて、私はつめていた息をゆっくりと吐き出した。 ……びっくりした。 突然のことだったから、何が起きたのか、よくわかっていない。 久坂さんも……たぶん同じ心境なのだろう。 困惑しているのが、顔に出ている。 なんだったのかって、ホントは聞きたかったけど、本人さえ状況をわかっていないのだから、説明を求めてもムリだろうなと思いつつ、ふと時計を見て――。「ッ、あーー!!」 絶叫した私の声に、久坂さんはビクリと体を震わせて「なんなんだ」との視線を向けてくる。「か、会議会議会議会議!」 パニックになってるから、単語しか出てこない。 それでも久坂さんにはつうじた。 ハッとしたように時計を見て、表情を険しくする。 私が散乱した資料をかきあつめる間に、久坂さんはジャケットをはおって身支度を簡単にすませた。 しかも「早くしろ」なんて言ってくる。「誰のせいでこんなふうになったと思ってるんですか!」 キシャー!っと、それこそネコが怒るような勢いで叫ぶと、さすがに悪いと思ったのだろう。 久坂さんも資料を拾い集めるのを手伝ってくれた。 そうして拾い終えた資料をそれぞれ抱えて、会議室まで急いで。 席に着いたのは一番最後だったけれど、どうにか開始時間までには間に合った。 ……息をきらせて席につく私達に、怪訝な眼差しは集まっていたけどね。
2008年01月13日
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一時期、生死を危ぶんだネコですが、病院で治療を受けてのち、だいぶ回復しました。 よろよろとですが、結構ひとりで歩き回ってるし、何より、食欲が出てきて。 薬を飲ませたりと、心配はつきないけれど、一安心の域にはきてます。 よかったよかった。 今日は当番日でした。 連休の中日って……ちょっとキツイなぁ。 思うところがあって、HTMLタグに関する本を購入、復習とスタイルシートの勉強をかねて読んでみました。 知識はそれなりに持っていると思っていましたが、読んでよかったです。 忘れてたタグとか結構あったし。 保管庫用を編集するための勉強だったんですけど。 ネットにもHTMLタグを解説してくれるところがありますが、スタイルシートはいくつかのサイトを拝読させてもらっても(っていっても斜め読み)、よくわからなかったんです。 今回、基礎中の基礎も書かれていた本でしたから、ようやく「?」の部分が解決できました。 だいたい、私、横文字苦手だから……。 テストも丸暗記でしのいできた人間だし……。ごにょごにょ。 で。 解決できたはいいけれど、これからまた編纂作業をしなければならなくなりました。(涙) 以前から言っているものです。 ……いつ公開できるのやら。 まあ、地道にやってきます。 で。 これから小説書きますねー。
2008年01月13日
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そしてとうとう、久坂さんの言っていた2時になってしまった。 私としては、ちょっと信じられなかった。 久坂さんを起こすことになるなんて。 初めてだ。 それだけ、疲労が色濃いと言うところか。 思いつつ、その元凶の一つにも、気づいてた。 数日前、久坂さんのおじにあたる副社長から。 私への接触があった。 もちろん、副社長直々じゃない。 副社長とつながりがあるらしい、男性社員の一人から声をかけられて、呑みに誘われた。 なんでも、以前所属していた営業課のときに世話になったからとかなんとかって声をかけてきたけど。 まるっきり、覚えのない人だった。 ただ、久坂さんに渡されたファイルに顔写真と名前が載っていた人だから、わかったってだけ。 営業課のころ、どういったことがあったかって話も聞いたけど、よくわからなかった。 面識のない人と飲みに行く気にもなれなかったし、私は彼がどういった人か、知らない。 ほかに用があるからと理由をつけて、その誘いは断っておいた。 翌日。 ファイルに名前と顔写真の載ってた人だったから、とりあえず久坂さんにその件を話しておいたんだけど。 ……そのときの久坂さんは、怖かった。 私がつげた人の名前を聞いただけで、ピリッと空気が張り詰めたから。 無表情に近い顔の中にも、怒りとも取れる色が見えていた。 そのときは、なぜそんな表情をするのか、私にはわからなかったけど。 それから、久坂さんの周辺はあわただしくなった。 同じ人から取り次がれる電話が多くなって、その人との話の、もれ聞こえる分から、私に声をかけてきた人が、副社長とのつながりがあるのだと察せられた。 その電話が、なんだか業務に関係ないことのようで。 そんな仕事以外のことにも、時間を割かれる久坂さんが気の毒にもなってきた。 同時に、私なんかに声をかけてきて、どうするんだろう、副社長は。 役にたつ情報なんてもってないのに。 と。 そんなことを考えたりもしてしまった。 まあ、そんなふうに、久坂さんが多忙極まりないとわかっていたけど、気の毒にも思えたけど。 仕事だからしかたない。 本人に頼まれたんだからと、自分に言い聞かせて、久坂さんに起床をうながすことにした。「久坂さん」 と、最初は声だけかけていたけど、生返事が帰ってくるだけで起きる気配がない。 何度か声をかけたけど、起きないものだから、今度は声をかけながら体をゆすってみた。 けど、これでも目をさまさない。「久坂さん。おきてください。時間ですよ」 声も体を揺する調子も、次第に激しくしていったけど、それでも目をさまさない。 それどころか「……あと5分……」とか、子供じみたことを寝ぼけた調子でつぶやいて、手を振り払われた。 ちょっと……。 なんなの、このくつろぎムードは。 自宅じゃないのよ、ここは。「『5分』じゃなくて! 起きてください! 会議が入ってるんですから!」 そう。 2時15分から、会議室で部長たちとの「何とか検討会」って会議が入ってた。 横文字の会議名だから、よくは覚えてないけど。 だから今は5分でもムリ。寝てられない。「久坂さん!」 耳元で声を張り上げても、うるさそうに眉をしかめるだけで、また「ジャマ」とでも言いたげに腕をふるわれた。 うっわっ! なんかムカつく! 起こしてって頼んだの、そっちじゃない! いい加減、こっちもイライラしてたから、声も大きくなってしまった。 名前を呼んでも起きないから、私は今度は呼び方を変えて叫んでいた。「社長! いいかげんに起きてください!」 そう叫んだのとほぼ同時に、久坂さんがハッとしたように目を開いて。「っえ!?」 間髪いれず、手首をつかまれてグイッと腕を引かれていた。
2008年01月12日
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昨日は更新できなくて、すみません。 で、今日の今段階でのアクセス数が、普段に比べて多いようで驚いてます。 ま、「待ち」なんでしょうか……? あわあわ。 す、すみません。 これから書きます。 実は昨日は、わがやのネコの調子が悪くって、それが気になってそばから離れられない状態になってました。 現在、我が家には、常駐ネコ4匹、時々帰ってくる猫1匹、ノラだったけど、ほぼ手なづけ成功ネコ1匹、そして長いこと行方くらましてて、帰ってきたけどうちの家族をほぼ忘れてる、何となくわかってるようだけど、未だ警戒しているってネコが1匹。 ……とまあ、ネコだらけの家であります。 あと、ラブラドール交じりのミックス犬一匹。 ……よくよく考えたら、人間よりペットの比率が高いですね。わお。 その常駐ネコのひとりが、数日前から体調を崩してました。 常駐と言っても、うち半、外半のネコです。家ネコではありません。 くしゃみ、鼻水が出るので、カゼだろうか? と、様子を見ていたら、一気に体調が悪くなりまして。 ほんの数日で、です。 家族全員で驚きました。 それまで、深刻にはとらえてなかったんです。 というのも、うちのネコになった当初から、ずっと鼻をぐずぐず言わせてる子がいまして、その子はくしゃみ、鼻水以外、いたって元気でしたから。 その子、もう一年もその調子なんです。 だから、おとといの夜に「様子がおかしい」と気づいてみんなで「えー!?」って感じで。 おとといの夜も、なんだか心配だったんで、誰かがそばにいて、様子を見ているってかんじでした。 で、昨日、病院に連れていって診てもらって、養生して。 トイレは外でするようにしてますから、外に行きたがったら出してあげて。 それ以降、帰ってこないので、家の周りを何度となく、家族で探してました。 お気に入りの場所があるから、そこがどこかも知っているから、そこをすべて探したんですけど……。 昨日はそういう経緯で、時間をさかれて更新できませんでした。 ごめんなさい。
2008年01月12日
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◇◇ ◇◇ 休み明けの月曜日に。 出社するなり、久坂さんにユズルのことをきかれて。 それとな~く、会うのをひかえるようにって、釘をさされた。 ……まあ、言われるかもしれないって、予想はしてたけどさ。 まさかホントに言ってくるとは……本気では思ってなかった。 そんな私の心情が顔に出てたのだろう。 久坂さんは事情を話してくれた。 波塚主任が選考員に選ばれ、私が代役を勤めるはめとなったあの件の立案者が、久坂さんであること、そして接待を受けるのを禁じたのも彼であること。 久坂さん自身は選考には関るつもりはない。 選考委員までたてているのだから、彼等が導き出した道に沿おうと考えていると言っていた。 だけど、詳しく知らない人間からは、社長の一任で決まったと思われる。 久坂さんは承認するだけなんだけどね。 その彼の近くにいる私、その私と友好関係にあるユズル。 もしこれでユズルの会社が選ばれて、私とユズルの仲が取りざたされたりなんてしたら。 私が久坂さんに頼んだんじゃないかって、疑いが生じる可能性もある。「余計な火種をくすぶらせたくないなら、言動に気をつけてほしい」 と、久坂さんにも忠告された。 縁を切れと言っているわけじゃない。 選考が終わるまでの間だからと、久坂さんは重ねてつげた。 最終選考日は、一ヵ月後に迫っていた。 そんなことを言われたら、私だってちょっとした不満がある。「そういうことなら、私をここに異動させなければよかったんじゃないですか?」 異動を願い出たのだって、選考の関わりを絶とうとしたものなんだし。 口をちょっととがらせて言うと、久坂さんはあいまいな苦笑を浮かべた。「樋渡だけだったら、どうにでもなると、思ってたんだがな。 君は関わりと絶とうとしているのに、向こうがよってきただのなんだの。 ……だが、今も親しい人間だと、事情が違ってくる」 それ以上は言ってこなかったけど、口調からして「できれば先に知っておきたかった」って様相が漂っていた。「……久坂さんが選考に関わりあるなんて、知らなかったんです」「……そうだな」 互いにタイミングが悪かったのだと、久坂さんはそれ以上の追求はしてこなかった。 なんとも後味の悪い想いを抱えることになり、私としても、ユズルのマンションに遊びにいくのに、後ろめたさを感じて実行できずにいた。 忙しさにかまけた日々を送りながらも、慣れ、というのは自然と身についてしまう。 仕事も流れがわかれば、頭で考えるより体が先に動くようになっていた。 そうして日々を送るうちに、久坂さんのことも見えてきた。 久坂さんは、出社時刻が早い分、襲いくる睡魔に勝てないときは、ソファで仮眠をとっていた。 最初の頃こそめったに見なかったけど、最近は一日に一回、数十分はそうした仮眠をとるようになっていた。 もともとそうだったのか、仕事に忙殺されているからなのかは、私にはわからなかったけど。 そうして仮眠をとるときは、私に何時に起こしてほしいと頼んで横になる。 もちろん、その間の電話や面会はシャットアウト。 他の電話中とか、手が離せない用があるとか理由をつけて、あとにしてもらうよう頼んでいた。 その日も、午後2時に起こしてほしいと告げて、横になった。 よっぽど疲れていたのか、睡魔が強かったのか。 体を横たえて数分もしないうちに、すこやかな寝息が聞こえてきた。 これもいつものことだ。 ……聞こえるこっちが、眠くなりそうなんだけど。 誘惑に耐えつつ、自分の仕事をこなして。 そうしてふと時計を見ると、午後2時2分前をさしている。 いつも久坂さんは「何時に起こして」と告げるけど、私がその時刻になって起こすよりさきに、自分でおきてくる。 目覚ましもかけてないのに起きれる、その器用さにおどろくのだけれど。 今日はいまだ眠りの中だ。 よほど、疲れがひどかったらしい。
2008年01月10日
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すみません。(汗) テレビ見てたらいつの間にか寝てました。 今日の更新はちょっとムリです。 ホント、ごめんなさい。 今日はちょっと日記を。 とあるニュース番組で、とある会社が民事再生法の申請をしただかなんだかのニュースをしていたのを見て、驚きました。 ニュース自体は、昨日かな? 今日だったかな? 全国版で流れるなんて思ってもみませんでした。 まあ、いわゆる自費出版の会社の件です。 いろいろといい噂は耳にしていなかった会社なので、そのニュースを見たとき「あー……」という、なんともいえない心境でした。 なぜ気になってたかって、私もその会社が主催(だったと思う)していた公募に投稿したことがあるから。 短編でした。 まあ、そのときは入賞なかったんですけど、けど「応募作の中から選りすぐって短編集をつくるから、作品を掲載してみないか」ってな話をもちかけられました。 最初は文面で届いて、内容とか書かれていて。 ただではありません。有料です。 そのときは、数ページのものだったんですけど、その掲載にあたり○万必要(金額忘れた)とか書かれていて、その金額の高さに驚きました。 一ページ一万?(確かそのくらい) ……てな金額ですよ? 売れたら印税も支払いますから。 と、あったけど、そのパーセンテージも低いもので。 なんか腑におちなくて、本がどれくらい売れたら元(掲載にあたり、支払う金額)がとれるのかって計算してみたら、ベストセラー並みに売れて、ようやく元がとれる。って数字でした。 そんな、名も知られていない人たちの短編集が、そんなに売れるわけないだろ。 うちの近くの書店で見たこともないのに。 と、思って、送られてきた書類等もほったらかしにしていたら、後日電話がありました。 どうするかって、うかがいをたてるものです。「金銭的に高くて(内容から鑑みて)、私にはムリ」 と、担当の方に告げると「……いくらでしたら大丈夫なんでしょうか……」と、ひどく弱々しく、困ったような声で告げられました。 そのときは「作品を気に入ったから、ぜひ掲載したい」って感じだったんですけど。 正直「一万なら……」って言いそうになったけど、それはあんまりの金額(提示されたものとの開きがありすぎる)だったんで「その気はない」と断りました。 ニュースを聞きかじりながら、そんなことを思い出してました。 ……なんか、とりとめもない話になってしまいましたね。 ホントはもっとズバッと言いたいことあったけど、省きました。 感情論になっても、しょうがないかな。って、思って。 私自身に、なにかあったわけでもないし。 そんな人間が、書きたてるのもどうかって思うので。 教訓にもなりましたから。(反面教師としての)
2008年01月09日
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保管庫更新しました。「クチナシの庭」です。 第2部完です。 ……といっても、第3部、まだ書いてないんですけどね。(苦笑) その前に消化したい、番外編も未消化。 番外編は橘メインなんですけどね。 で「背中あわせに~」は徐々にラストが見えてきたかな。って感じです。 書き手にとっては。って意味で。 まだいくつかの波乱は残ってます。 ちなみに、書いた後で「……この場面、書かなくてもよかったかも」と思ってしまったところがありました。 あんまりそんなふうに思ったこと、ないんです。 これまでに一度だけです。 まあ、それは、のちのちの話が変化してきたからっていうのが、大きな原因なんですけど。 だけどせっかっく書いたのがいらなくなるのは、もったいないので、あとの話のもっていきかたで、無駄のないよう、工夫はしているつもりです。 ……って、言われても、こちらの手の内明かさない限り、わからないでしょうが。(苦笑) そこまで書くのは、ちょっと避けときます。
2008年01月08日
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どうかしたのって……聞こうとしたけど……なぜか、声が出てこなかった。 黙りこんでしまったユズルの態度に、ためらってしまって。 いつもと様子の違うユズルに、踏みきれずにいる。 そうして私がどうしたものかと悩んでいると「ねえ」と声をかけられた。 低く、かぼそい声だった。「手、かして」「……手?」 何だろうと思いつつ、背を向けたまま、後方のユズルに手を差し出す。 互いに背を向けて座っているものだから、体の構造上、手首でひねって差し出す形になってしまう。 それを見たユズルが、思ったのと違うと感じたらしくって、ああしてとかこうしてとか指示を出してくる。 それにしたがって動かしてみるけど、うまくいかない。「そうじゃなくて……」「なんなのよ、もう」 ユズルが何をしたいのかわからなくて、最後はやけになっていた。 ダダをこねる子供のように、両腕を体の横に投げだす。 無理な格好に腕を動かしていたから、肩やら肘やらが二の腕辺りやらが痛い。 ……何がしたいって言うんだろ。 疲れてそう考えていた思考は、指先に、手に。 そこに触れられた感触に、止まってしまった。 ユズルが……手を、握りしめていた。 これまで、手をつないだこともあるけど。 今までとは、ちがっていた。 これまでは、そっと触れあう程度だったけど。 今は……指をからめて、しっかりと握りしめている。 そうしているけど、痛みを覚えるほど強くなくて。 けど容易にはずれないように、つかんでいる。 ユズルの、角ばった指とか、体温とか。 意識してしまって、鼓動が跳ねた。 息が、詰まってしまう。 体も硬直してしまった。 ユズルは、何も言わなかった。 私も、何も、言えなくて。 そうしてユズルが「そろそろ帰ろうか」と告げるまで、私たちは指を、手を、絡ませていた。 ユズルは、するりとすりぬけて絡めた指をはずして、帰宅をうながすときも、そのあとも、送ってくれる車の中でも。 つないでいた手のことは、何も言わなかった。 その話題に触れようとしないまま、いつもの調子で話している。 私も、ユズルにあわせてその話題には触れようとしなかった。 ユズルがそうしてくれたことに、なぜか少し安堵しつつ。 手を、つないでいる間。 トクトクといつもより少し大きな音で鼓動を刻んでいた胸が。 ぎゅっと苦しくも、なっていた。
2008年01月08日
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それから久坂さんと田島さんとは公園で別れて、私とユズルはそれからもうしばらく公園に残っていた。 というのも、3匹がなかなか興奮冷めやらずで、おとなしくなってくれなくて。 疲れるのを待ってたんだけど。 ……いいかげん、こっちは遊びつかれたよ。 好みの子を見つけてそれとなく確保するのも、なんだか面倒になってきた。 その子とだけ遊べるんならいいんだけど、飼い主の人との話が、ねぇ。 いままでこんなことなかったんだけど、久坂さんと田島さんという、予想もしなかった人たちに出くわしてしまって、神経をすり減らしてしまった。 人の機嫌とるほどの余裕なんてない。 疲れて頭がぼーっとしているもの。 はあ。 持参したレジャーシートに座ってボーっとしていると、その後ろにユズルが座る気配がした。 ちなみにカイはユズルが見るほうに、ルーとうちのとは、私の視線の先にいる。 一応、監視員よろしく、目を配って気をつけてはいた。 ぼーっとしてると、背中あわせに座っているユズルが、その背をかたむけて私によりかかるように重心をかけてくる。 お。っと、前のめりになったけど、私も同じように、後方に重心をかけて均衡を保った。 疲れたように、ユズルはため息をついている。 なんだか申し訳なくって「ごめんね」とつぶやいていた。 するとユズルは「え?」と不思議そうにしていた。「なんか……まきこんじゃって」 田島さんも久坂さんも私の知り合いだから。 私が相手すべきなんだろうけど、田島さんはユズルにまかせっきりになっていた。 久坂さんがどういう人かわかっていて、その久坂さんとつながりのある人だって踏まえた上だと、田島さんもそれなりの役職もった人だとわかるから。 気が張ってたんじゃないかって、あとになって気づいた。 私は前からの知り合いだから、あまり気にしてなかった。 気づけなかった自分が悔しくて、ユズルに申し訳なくて仕方ない。 ユズルは「いいよ、別に」と言ってくれたけど。 苦笑交じりのその声には……やっぱり疲れがにじんでる。「ってか……チサトさんのツテの広さのほうに、驚いたよ」「……そう? けど、たまたまだよ、こんなの。 田島さんとだって久しぶりだし。 向こうはよく来るって言ってたけど、ここで会ったのは数えるほどしかないし。 ……なのに……ああ。もう、最悪。 オアシスに来たつもりなのに、ここで久坂さんに会うなんて」 今度は私がため息をついて。 そんな私を、ユズルは意外そうな声で告げてくる。「なんで? 仲よさそうだったけど。 『社長』って呼ばずに姓で呼んでるくらいだし」「それはそれ。 姓で呼ぶのは本人の希望。 ってか、私は『社長』のほうがいいんだけど。 ……なんかね。たとえばこういう会社から離れた場所で『社長』って呼ばれるの、キライみたい。 カフェで一人で食べてたのもそのあらわれ。 お昼くらい、そういうしがらみから離れたいらしくって。 ……と、これは他の人に言わないでね。 あのカフェでお昼とってるのも秘密で。 そのために、奥まった人目につかない場所を使ってるんだって」「……そんなことまで、話してるの」「私が『社長』のほうがいいって言い張ってたから。 まあ、現状に至るまでに、そういう話して……硬骨な手段で丸め込まれたのよね。 いま考えても、何か納得できないんだけど」「……ふうん」 その言葉を最後に、ユズルは黙り込んでしまった。 ……疲れたのかな。 とも思ったけど、何だか……その沈黙が……いつもと違って居心地が悪い。 背中あわせに座ってるものだから、ユズルの表情が見えなくて。 そんなふうに顔は見えないんだけど……なぜか、ユズルが不機嫌になってるような気がした。 背中ごしに触れるユズルの背中が、わずかだけど強張ってるように感じて。 そうした様子が、これまでの……こうして背中あわせに座ってたときと様子が違っていた。 ……もしかして。 なにか、話があるのかな。 とも、考えた。 ユズルはカイを見るため、私はルーとうちの愛犬を見るために、自然とこうした形で座っているのだと思っていたけど。 私とユズルがこうして背中あわせに座るのには、別の意味もこめられている。 少し話しにくいこととか、聞きにくいこととか。 そうした話をするときに、こうして背中あわせに座るようになっていた。 一人が座っているところへ、もう一人が背中あわせに座ったら。 何か話があるのだと、暗黙の了解的な形式ができていた。 もしかしたら、そういう意味があったのかもと、今になってそう思った。
2008年01月07日
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保管庫更新しました。「背中あわせにつなぐ手を。」です。
2008年01月06日
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何もいえない私だったけど、久坂さんは特に気にした様子もなく「それより」と話題を転じてきた。 考え込んでいた私は、そんな久坂さんの声で我に返る。「俺見て、隠れただろ、さっき」「……まさか、そんな……」 ははは。と乾いた笑いをあげる私を、久坂さんはじっと見ている。 その目には確信と、ウソは見逃さないって色が含まれている。 そんな視線をずっと受けていると、なんだか体がむずむずして、気持ち悪くて「……そうです……」とうなづいていた。 そしてすぐに「だって」といいつのった。「休みの日まで、仕事のことなんか考えたくないですよ。 それでなくても、気分転換に来てるって言うのに」「それはこっちも同じだ。 だが、逃げるとかじゃなくて、あいさつくらいしたらどうなんだ。 田島専務が、俺が厳しいからだとか、いじわるしてるんじゃないかとか何とかで、さっきからうるさかったんだぞ、こっちは」「……実際そうじゃないですか……」「……なんか言ったか」「いえ。別に」 しらっとして、ふいっと顔を横に向けると、久坂さんはため息を落とした。 多分……私の声、聞こえてたはず。「あとで、専務とどういった経緯で親しくなったのか、話してくれ」「ほらやっぱり! 仕事の話になるじゃないですか! だから嫌だったんですよ!」「しかたないだろ。話についていけないんだから。 事情がわからないから、昔の君のことを話されたって、返事のしようがない」「適当にかわしてくださいそんなのは!」「無茶言うな」 ……なんて。 やいのやいの言ってると、視界の隅でハチミツ色の何かがフルフルとゆれていた。「ん?」と、それを――久坂さんの傍らを見ると、久坂さんの膝上ほどはある、ゴールデンレトリーバーが、彼を見上げてゆっくりとシッポを振っていた。 私の視線に気づいた久坂さんが、その犬にも気づいて、首輪にリードをつないだ。「もしかして――」「うちの……実家のほうで飼っている。 犬を飼っている話になったら、なぜかここにくるはめになった」「……なーる」 と、私は得心した。 おかしいと思った。 田島さんがレン君を自慢したいがために、久坂さんをつれてきたのかと思ったけど。 田島さんは好意から、久坂さんにこの公園を教えたかったんだ。「最初は気が進まなかったが。 来てよかったよ。 こいつも、気ままに遊べたようだし」 言って、久坂さんは隣にいる子の頭をなでていた。 それから「チサトさん」と、困り顔のユズルに呼ばれて、田島さんとのそばに足を向けた。 二人は犬同士を遊ばせるやら何やらで、少し離れた場所に移動していたから。 そばに行くと、ユズルはどうしたものかって表情で、私と田島さんをチラチラ見ている。「あれを教えて欲しいっていうんだけど」「あれ?」「ルーの、これ」 言いながら、ルーに向き合って、手を上にかかげて。「バック」と言って、手を追い払うように振っている。 それに呼応して、ルーは後ろへ、後ろへと下がっていく。 なんでも、田島さん、珍しい芸を知ってたら見せて欲しいとせがんで。 で、ユズルがルーのそれを披露すると、レン君にも教えていいか、どうやって覚えさせたかを教えて欲しいという。 ユズルが困るのも同然。 だって、その芸教えたの、私だもの。「いいんじゃない? ユズルがよければ」「俺はいいけど……チサトさんはいいの?」「え? 私はいいけど……なんで?」「いや……なんとなく。 他の人に教えたくないってのも、あるかもしれないし」「別に、ユズルがよければいいよ? あ。でもルーだけの持ち芸じゃなくなるかな」 と、ちらりと田島さんを見ると「ほかには教えないから」と強い口調で言われた。 同時に、恨みがましい視線を受けてしまう。「柏木君。どうして彼にはそんな芸を教えて、私には教えてくれなかったんだ? ひいきだ」 そういう田島さんの目は、本気でそう思っている様相だった。 ひ、ひいきって……。 子供じゃないんだから。「教えるも……何も。 何だか偶然できちゃったやつだから。 うちのもできないですよ、それは」 ユズルもこれは初耳だったらしく、驚いた顔をしている。 田島さんも「そうなのか」って納得してくれた。 それから、レン君にその芸の覚えさせ方をやってみせた。 一日じゃムリだろうけど、何度か繰り返していくうちに覚えるだろう。 そんなやりとりを見ていた久坂さんも、なんだか試したそうにしていたから、ユズルの了承をえて、他言しないとの約束のもと、久坂さんもOKすることになった。
2008年01月06日
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田島さんにこの公園の存在を教えて、実際、遊ばせて。 初めはやっぱりこわごわと、遠目に眺めるだけだったレン君も、慣れてしまえば元気に走り回るようになった。 田島さんが私を「救い主」なんて言うのは、そういった経緯があるからだろう。 私も楽しんでたから、気にしなくていいのに。 そういえば、田島さんも言っていたけど、こうしたドックランがある公園って、あまりないみたい。 ミチルさんもそういってたっけ。 調べてみたけど、近くにはなかったって。 だから、私が場所を教えることになったんだけど。 私にとっては昔から身近にあるものだから、どこにでもあると思ってた。 車で30分かかるこの公園に田島さんがくるのも、そうした事情があるからだ。 それから私は、ユズルに田島さんと久坂さんを紹介した。 田島さんは「以前、仕事でお世話になった方」と説明し、久坂さんについては「現上司」と説明する。 ユズルはそれを聞いただけで、久坂さんがどういった人物なのか、察したようだ。 驚いた顔で、反射的に久坂さんを見ていた。 ……そらそうだろうな。 まさか、一社の社長と公園で出くわすなんて、思ってもなかったろう。 私だって青天の霹靂もいいところだ。 それからユズルを、田島さんと久坂さんに紹介した。「彼は三島譲さんで――」「なに? 柏木さんの彼氏?」「か……っ!」 すかさず話に割り込んできたのは田島さん。「ふふん」と微笑むその表情は、冗談交じりで私をからかう気、まんまんだ。 な、なんて答えにくいことを本人目の前にしていうかなぁっ!? 言葉につまる私に対し、ユズルはいたって平静だった。 苦笑交じりに、ルーとカイをつないでいたリードをかかげて「犬を飼ってるもの同士。知り合いですよ。今日はこの公園を紹介してもらったんです」と話していた。「へえ。きみも犬を飼ってるの?」 それを見た田島さんの目が。 キラリと光ったように見えたのは……多分、気のせいじゃない。 うなずくユズルに、田島さんは標的を定めたようだった。 それとなく近寄って、飼い犬のことについてあれこれ聞いている。 田島さんも犬好きだから。 ……話が長くなりそうだ。 そんな二人を見つつ、私は……さっきからチクチクと小さな針で刺されるような胸の痛みを感じていた。 田島さんの質問に「知り合い」だと答えたユズルの言葉が……なぜか、頭の中でぐるぐるとまわっていた。 その思考を停止させたのが、いつのまにか傍らに来ていた久坂さんの声だった。「君だったのか。田島専務にこの場所を教えたのは」 はっと我に返って傍らを見上げると、久坂さんは田島さんとユズルを見ている。「……ええ、まあ。 ってか、どうして久坂さんがここにいるんですか。 ここは私のホームラウンドですよ。 久坂さんは違うでしょ? なんだってこんな遠いところに……」 久坂さんのマンションからだと、ここまで車で片道40分かかる。 田島さんよりさらに遠い。 そう告げると、久坂さんは久坂さんで憮然とした。「近くにこういった施設がないんだから、しかたないだろう?」「え。そうなんですか?」「ああ。 初めて知ったよ。 こんな場所があるなんて」「え? ホントに?」「本当に」 久坂さんがそういうからには、相当珍しい施設なんだろう、ここは。 小さい頃から、公園にはこういった施設があるのが当然だと思っていたから、ちょっと意外だった。 年を経るにつれ、行動範囲が広がるにつれ、この施設が珍しいとはわかるようになっていたけど、まさか久坂さんに言わしめるまでとは思わなかった。 恵まれた場所に住んでたんだな、私。 ……もしかしたら家の両親、それを狙った場所で家を選んだのかも。 なんて考えていると、また久坂さんが声をかけてきた。「彼は、付き合いがあるのか?」「……彼?」「君の今日のつれのほう」「……はあ、まあ……」 久坂さんのいう「彼」とはユズルだろう。「そうか」と返事をしたものの、ちょっと考え深げに眉をひそめている。 ……なんで?「それが、なにか――」 最初こそ「いや」と答えるだけで、そこで話を切ろうとした久坂さんだったけど、それから思い直して口を開いた。「面談に来る、一人じゃなかったか?」「…………。そう、ですけど……」 返事をしながら「何でそんなことまで知ってるの」と、内心、あせった。 選考には私はもう関わっていないけど。 なんだか悪いことをしたような気になってくる。 ユズルはルーとカイを呼び寄せて、それぞれの芸を披露している。 どうやら、田島さんが頼んだみたい。「君は思わぬところに知り合いが多いな」「……私も……面談で顔を合わせるまで……知りませんでした」 正直にポツリとつぶやくと、久坂さんは意外そうな顔をする。「知らなかった? 友人なんだろ?」「……ええ。けど、互いの会社名とか仕事の内容とか。 それまで話題にならなかったんですよ、不思議なほどに。 だから……面談で顔を合わせたときは逃げ出したくなりました」「逃げ……?」「だって、恥ずかしいじゃないですか」「そういう、ものか?」「私はそうなんです」「……なるほどな。 選考代役からはずれたいってのは……彼も、少なからず影響してるってところか」 タケシの件が、一番の要因だけど。 それ以外にも――ユズルのことも。多少はあったのかと、久坂さんはそう言いたいのだ。「……否定は、しませんけど。 けど、私情を挟まないよう、注意はしてました。 結果が出るまでは会わないようにしてたし。 ……おかげでストレス、たまりまくりでしたけど」「……ああ。あれだったのか。 前言ってた『心のビタミン剤』」 得心顔でうなずく久坂さんに「よ……よく、覚えてますね」とこっちが恥ずかしくなる。 勢いで言ったこととはいえ。 なんつー恥ずかしいことを言ってしまったんだか。 私の言葉に、久坂さんは肩をすくめた。「おもしろい言い回しだったからな」「……はぁ」「で? どっちなんだ? ビタミン剤は」「は? どっち?」 言われて、ユズルのほうを見てしまう。 どっち……って言われたって。 カイかルーかってこと?「えと……小さい犬のほう……ダックスのほうですけど」「……そうじゃなくて。 人か、犬かってことなんだが」 そう、聞かれて。 ……返事が、できなかった。 そんなこと、考えたことがなかったから。 久坂さんと話しながら、あのときの情景を、思い出しながら。 ふと胸に浮かんだのは、ユズルとルーと私と。 二人と一匹が一緒にいるあの穏やかな空間だったから。 なんと答えればいいのか……言葉が、声が、出てこない。
2008年01月05日
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保管庫更新しました。「クチナシの庭」です。 いよいよ、第2部完了まであと1話。
2008年01月04日
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……初夢。 おそらく昨晩から今朝にかけてみたものが、そのようです。 ……よりによって仕事の夢。 めちゃリアルな、現実との区別がつけにくい仕事の夢。 しかもこういうのって、決まってミスしてるやつなんだよなぁ……。 ホントは12月20日に処理しなきゃいけなかったのを忘れていて、年越して気づくという、現実にありえそうな夢。 しかも。 日付もその処理に関わる金額も覚えているから、初仕事に行くまで、職場に着くまで、現実だと思ってた。 ときどき、こういう夢とは思えない夢を見てしまうんですけど。 よりによって初夢なんて……。(泣) 数字も途中まで覚えてますよ。 私が処理する分では、大きめの金額だったんで、落ち込みも激しくて。 ま、そのあとに見た夢はおもしろかったんですけど。 途中で目が覚めて、続き見ようと眠ったら成功して、続きが見れたというレアなケースのものでした。 おかげで仕事はギリギリ出社。 これも時々ある、三人称の視点で見てるようなものでした。 観客です私は。 物語としてみています。 で。 今日一日、その夢をもとにした小説が書きたくて書きたくて、たまりませんでした。 ほかの消化しなければならないやつがあるのもわかってるんですけど。 た……短期集中で書いちゃダメかな?(ドキドキ) 今のこの感情を。 この気持ちが消える前に書きとめておきたいってのがあるんです。 現在進行中の連載は、もちろん続けるってことで。 ちょっと……考え中です。(すみません) 原稿用紙30~100枚程度(めちゃアバウト)との目測のものです。 ホント……どうしようっかな?
2008年01月04日
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田島さんというのは、以前、私が営業課にいたときにお世話になった方だ。 何かのときに、犬を飼っているとわかって、それから世間話的軽い口調で「実は困ってるんだ」との話を聞いた。 なんでも、レン君は相当の怖がりだとのこと。 家族以外の人も生物も怖くて仕方ないのだという。 コーギーって、ものおうじしないって言うか、人見知り(犬見知り?)しない犬種だと思ってたから、初め聞いたとき「まさか」と思ったけど、状況を聞くと私には笑い事には聞こえなかった。 家族以外の人でも犬でも、そのたもろもろの生き物(ネコやらウサギやら何やらかんやら)だと、まず逃げて隠れて隅で小さくなる。 時には家族の後ろに隠れてしまう。 初めのうちは田島家の人々も「そのうち慣れるだろう」と放置してたけど、その気配がまったくない。 だからちょっとムリに、レン君をそばに連れて行ったりすると、耳をふせて体を震わせてシッポを後ろ足の間に丸め込んでしまう。 うなることさえ忘れての硬直状態。 さすがにかわいそうで、それ以上ムリをさせることなんてできなかったという。 田島さんは始めこそ冗談交じりに話していた。 だけど。 私が犬を飼っているから、ある程度の事情が飲みこめ、話もすんなり通じることもあって、次第に声が真剣みをおびてきた。 そうして最後には、本当に心配している様相になっていた。 レン君の人見知り(?)が激しくなったのには、それなりの経緯がある。 まず、子犬のころ、もらわれてきてからずっと家族としか接していないってこと。 ふつうは家をたずねてくるお客さんがいたりして、人になれたり、散歩でなれたりするものだけれど。 タイミングが悪いというかなんというか。 ちょうどそのころ、子供さんの受験時期と重なっていたから、田島家訪問を遠慮する雰囲気があって、訪問客がまったくなかった。 散歩にしても、近くの河川敷まで車で連れて行って遊ばせて。 ときどきだけど、河川敷には散歩する犬もいた。 けど「ケンカしたら危ない」ってことから、犬を見かけると、すぐに車に戻していた。 まあ、そんな経緯で他者とのふれあいが極端にすくないものだから、人見知りになっても仕方ないというか、そうなって当然と言うか。 慣れ、の問題だろうなって思えたから「今度、うちのつれて遊びに行ってもいいですか?」と話すと、田島さんは嬉しそうに了承してくれた。 実際、会ってみると、田島さん達の心配にも納得した。 レン君の怖がり方、尋常じゃなかったもの。 私が近くに寄ると、震えて耳を伏せて、シッポを丸めて。 少しずつ、距離をつめていくと、震えも大きくなる。 何回か、近寄ったり離れたりを繰り返したけど、効果なし。 ちょっと強引に間合いをつめようものなら、失禁しそうなほど震えるものだから、一日での症状改善はあきらめた。 あ。ちなみにうちの愛犬で試しても同様だった。 帰るとき、申し訳なさそうな田島さんたちに「また遊びに来てもいいですか?」と聞くと、家族ともども、喜んで「ぜひ」との返事をくれた。 こういう長期戦って、事情を知ったうえで、根気強く付き合ってくれる人が必要だ。 そして犬を飼っている人、犬を同伴できる人。 そうした条件を踏まえた上で、誰かに頼むって言うのは、なかなかできるものじゃない。 専門家に頼むっていうのもね……。 重症だけど、そこまではないように思えるから。 田島さんはすまなそうな顔をしてたけど、私はまったく苦痛は感じなかった。 逆に「どうおとしてやろうか」とほくそ笑んだほどだから。 それから時間をかけてレン君との仲をはぐくんで。 私となれたころには、うちの犬とも遊ぶようになっていた。 そして目的の最終段階として、田島さんにこのドックランの場所を教えた。 田島さんとは、そのころからのつきあいになっている。
2008年01月04日
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すいませんー。 小説更新、書いてる途中で消えました。 操作ミスってブラウザ、閉じてしまった……。 回線つながらない状態とかは、最近は楽天ブログ、ブラウザの「戻る」ボタンで戻れば、文章は残ってること、あるんですけど、さすがにブラウザを閉じちゃったらダメでした。 はああぁぁぁあああ。(落胆) それでなくったって、今日は明日のこと考えると憂鬱でならんっていうのに。 更新、明日になります。 残業なく、帰ってこれたらって条件付だけれども。 ……忙しいだろうなぁ……。明日……。
2008年01月03日
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保管庫更新しました。 「背中あわせにつなぐ手を。」です。
2008年01月03日
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久坂さんがキライとか、そんなんじゃない。 ただ、仕事で毎日顔をつきあわせてるのに、休みの日まで関わりあいたくないってのが本音。 これまでの課の人とかは、そんなふうに思ったことはないけど。 いかんせん、久坂さんとは一室に二人きりで(ほぼ会話ナシ)いることが多いから、反射的に逃げてしまった。 私自身も会いたくないし。 久坂さんを顔を合わせると、仕事のことを思い出しそうで。 ってか、久坂さんがそんな話題をふってきそうだ。 休みの日くらい、仕事のこと忘れたいのよこっちは! ……まあ、そんな心境で、ユズルをたてに隠れてた。 ユズルのほうが身長あるから、なんとか隠れてるんじゃないかって思ってたけど。 伏兵は思わぬところにいた。 ユズルのかげに隠れて。 ユズルは「なんなんだよ」って、困惑してるけどそれには「あとで!」と言い張って、隠れて。 そうしつつも、小声で久坂さんの特徴と服を話して「いまどこにいる?」と小声で聞いてみる。 ユズルは周囲を見渡して「……あれかな?」とつぶやいた。 そして「……こっちに、……来てるのかな、あれは?」「え!?」 首をかしげながらのユズルの言葉に、私は慌てふためく。 み……見つかった!? って、あせったけど、状況はちょっと違ってた。「……柏木……君……だよね……?」 と、ユズルとは反対の、私が顔をむけているほうから、おそるおそる声をかけてきた、年のころ五十くらいのおじさん。 ……え……っと、だれ? と、記憶をさぐりつつ、ちょっと警戒しつつ、うなずいてみる。 私の返事を見て、その人はぱっと顔を輝かせた。「やっぱり!」 と言って「久しぶりだなぁ!」と言いつつ、私の手をガッシとつかむと、大降りの握手をかわしてきた。 え!? だ……だれ!? 向こうは私を知ってるみたいだけど、心当たりないんだけど!「最近、来てなかったよね。 うちのは結構ここに来てるんだけど。 ……ほら、レン。 おまえも久しぶりだよなぁ」 と言って、そばに来た子(犬)を抱き上げた。 レン。そしてコーギー。「……っあ! 田島部長!?」 そう、私が声をあげたときとほぼ同じく。「……チサトさん。さっき行ってた人、そばまで来てるけど」「え?!」 困ったようなユズルの声に振り向くと、ほんとすぐそば、一メートルも離れていない場所に、久坂さんが来ていた。 で。ばっちり目があった。 ひぃっ! と、すくみあがる私に、久坂さんは憮然として「部長じゃないだろ」と小声でつぶやいた。「っと、そうでした! 専務! お久しぶりです! そして遅くなりましたが昇進、おめでとうございます!」 恐縮仕切りの私の態度に、田島さんは苦笑しつつ「いいよ。そんなに格式ばらなくて。休みの日なんだから」と言ってくれた。「久坂君も。 脅かすんじゃないよ。 この子は――柏木君は、うちの救い主なんだから」「い、いや……そうたいしたものじゃないですから……」 ……なんだか注目を浴びるやら、会いたくない人に会ってしまうやら。 けど、ひさしぶりに見るレン君(男の子)はかわいいなぁと思いつつ。 ……なにから誰に、どう話せばいいものかと、私は困惑していた。
2008年01月02日
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保管庫更新しました。「クチナシの庭」です。 第2部完まであと2話。
2008年01月02日
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そんなふうに、業務に追われる日々をすごして。 2週間なんてあっという間だった。 さいわいにも、休日はゆっくり休養をとれる。 祝日出勤はしなくてよさそうだ。 いつもは出勤時間とおなじ時間帯に目がさめるけれど、異動後はつもりにつもった疲労のせいで、気がつくとお昼まで寝てるなんてこともあった。 けど、その休日は携帯の呼び出しで目をさました。「……はい……」 ふとんにはいったまま、のっそりと頭だけ上げて応答する。『……チサトさん?』 ユズルだった。「……はい……」『もしかして、寝てた? ごめん』 私の声から、そう判断したらしい。 私も自分でもよくわからないまま、返事をしていた。「ん……。いいよ……別に……。 なにか……あった……?」『なんか……疲れてるみたいだね』「……まあ……そこそこ……」『今日の、どうする? 今度にしようか?』「……今日の……?……」 そう言われても、眠りかぶった頭では、なんのことかわかんなくて。 首をかしげると、心配そうにユズルが続けた。『うちの母親が頼んでた、ドックラン。 今度にしようか?』「……ドック……ラン……」 ぼーっと、ユズルの言葉を反芻して。 その意味がわかると、ハッとしてガバっ!と体を起こした。「冗談!! 行くに決まってんでしょ!?」 実は。 数日前に、ユズルから相談を受けていた。 以前、ルーをつれていったドックランのある公園の話をミチルさん(ユズルのお母さん)に話したことがあって。 ミチルさんは興味をもって、ぜひその場所を教えて欲しいという。 ユズルも、あのときは私についてきただけだから(電車使用)、場所を覚えてないという。 初めは「場所を教えて欲しい」ってことだったんだけど。 それなら私が一緒についていくってことになった。 ミチルさんはカイを連れて行きたいらしい。 もちろんルーも同伴だ。 ユズルは、悪いから、場所を教えてくれればいいと言ってたけど、私が譲らなかった。「ルーと遊びたいのよ私は!」 と。 本音を暴露したおかげで、同伴することになったのだ。 残業続きでルーの散歩にも行ってないから、久しく会ってないから。 無性に会いたくて仕方ない。 だから今日だって、鼻歌気分だ。 ……って。 そういや、約束の時間は午後からだったはずだけど? 時計を見ると、午前9時ちょっとすぎ。 ユズルは言いにくそうに「じつは」と説明した。 なんでも、ミチルさんの都合が悪くなったのだという。 急に昔の友人がたずねてきて、一日一緒にすごすことになったらしい。 だから今回のを延期にしてもらえないかとの話だ。 私は首をかしげた。「別に今日でもいいじゃない」『え? けど――』「今日一緒に行って。 ユズルが場所を覚えて。 で、ミチルさんに教えてあげれば? それなら、また都合をつける必要もないでしょ?」『……あ。』 言われて、その方法もあったのだと、ユズルは気づいたようだった。 それから、予定通り。 午後1時すぎに、ユズルが車で私を迎えに来た。 車にはカイとルーが乗っている。 私は久しぶりに会うルーに歓喜の声をあげ、ユズルに苦笑されつつ、助手席でもルーをずっと膝に抱いていた。 カイは後部席におとなしく座っている。 時々、前席の状況を見るように、ぬん、と肩越しに顔を出してきて、私が驚いたりしてたけど。 で、一度私の実家に寄ってもらって家の愛犬をつれて、実家近くの公園にむかった。 うちのとルーは一度会ったことがあるけれど。 カイとは初対面。 互いに興奮しているようで、そわそわしていた。 それが顕著にあらわれたのは、ドックランの広場についてから。 リードから離してあげると、二人とも追いかけっこするように駆けていった。 ルーもそのあとに続いてたけど、いかんせん、体格が違いすぎる。 で、二人のあとを追いかけるのをあきらめると、近くにいる小型犬のそばにチョコチョコと近寄って、遊び始めていた。「……元気ねー」 猛ダッシュで駆けていったカイとうちの愛犬を眺めて、そんな言葉がもれてしまう。 ルーは一度来たことあるけれど。 カイは初めてだから。 だから、うちのとちょっと顔合わせして、慣らして、で、広場に放したほうがなじめるだろうと思って連れてきたけど。 予想以上の反応だ。「抑圧するものがないから、気持ちいいんだろうな」 ユズルも、遠くに行ってしまったカイをながめて、そうつぶやいていた。「そだねー」 同意しつつ、私はちょっと寂しい。 私と遊んでくれる子がいなくなってしまった。 犬同士の遊びになれたら、少し飽きたら戻ってきてくれるだろうけど。 ……それまでが退屈だ。 ……こうなったら、近くの子をつかまえて遊ぶか。 これまでも、うちの愛犬を野に放している間、私好みの子を見つけては近寄って、飼い主さん相手にべた褒めして(けど本心)、機嫌よくしている間に、その子と遊んだりしていた。 だから結構、小型犬種の飼い主さんとは顔見知りが多い。 そんなことを考えていると、目の前を私好みのパピヨンが通りすぎた。 大きな耳が特徴的な小型犬種。 この犬種も、私の好みの一つ。 あ。確か、安井さんとこの――。 と、そのパピヨンを目で追って――その先にあったものに、私はぎょっとした。 かすかに、視界のすみに入っただけだけど。 遠くで、顔もよく見えなかったけど。 ……まさかと思いつつ、私は反射的に立ち上がると、カイの様子を眺めて立っていたユズルの腕をつかんで、ぐいとひいた。「ちょ、チサトさん!?」 驚いて声をあげるユズルに「しぃっ!」と声をあげないように注意して、その背に隠れる。 なるべく体を細くしようと、直立不動の体勢をとって、ユズルに隠れるようふんばった。 ユズルが、なにがなんなんだかって、困惑してるのもわかってたけど、今は説明してる暇なんてない! まさかまさかまさか! どくどくと高鳴る心臓をおさえて、私はひたすら体を強張らせていた。 見間違いでなければ。 この、同じ公園の中に。 しかも、ドックランという限られた空間のなかに。 なぜか。 実家からも住まいとしているマンションからも離れている場所だっていうのに。 久坂さんが。 しかも私服姿のラフないでたちの久坂さんが、いた。
2008年01月01日
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あけましておめでとうございます。 本年もよろしくです。 保管庫更新しました。「背中あわせにつなぐ手を。」です。 ……ブログ更新……してましたね……。 昨日……ていうか、今日か。 半分以上、眠っている状態で書いてたので、下書き保存したと思ってたんだけど……掲載のほうを選んでしまったのか(汗)。 読み直してからUPしようと思ってたんですけど……。 TOP確認したとき「ひぃ!」と青くなってしまいました。 支離滅裂なこと、書いてないだろうかと、不安でしたが。 まあ、大丈夫そうです。 話が「久坂編その2」からなかなか離れられませんね。 実は何度か目測謝りしてます。 そのたびに軌道修復(書いてあるのを書き直すのでなく、先の話でつじつまあわせ)してるんですが。 そのために長くなってしまってると言っても、過言でなく……。ごにょごにょ。 下記はちょっとネタバレ事項。 川上とチサトが居酒屋で飲みに行くシーン。 ちと早すぎました。(汗) ある場面を消化してからのはずが、先走ってしまって。 それを「のみに行こう」と誘った文面を掲載した後で気づいて、で、いまの状態になってます。 書き直しはせずに、後々の展開で修正していこうという考えがありますので。 結果から言えば、松井(クー子)の状況説明に持っていけたから、まあ、よしとしますが。 ホントは別の話をさせるためのシーンでした。 ホント、いきあたりばったりです。(苦笑) ……できれば2007年のうちに「背中あわせ」を終わらせたかったんですが。 まあ、とりあえず、ラストに向かってがんばります。 久坂がからんできてから、話が長くなってしまってるんですけど……。 けどこれもラストにつながる事項なので。 はぶけないんですよね……。
2008年01月01日
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