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さて、今日は殻径1.8mmの「ベッコウマイマイ科の1種」の続きである。 前回は、フキの葉裏で見付けたベッコウマイマイ科(Helicarionidae)の不明種に水を振り掛けた後、綺麗になった貝殻の写真を撮っていたら、殻口の中から何か黒い舌の様なものが出て来たところ迄であった。 先ず最初に、前回の最後の写真をもう一度出すことにする。なお、写真は全て拡大するとピクセル等倍になる。殻口の中から黒い舌の様なものが出て来た.カタツムリの足であろう(写真クリックでピクセル等倍)(2010/01/29) これはカタツムリの足であろう。これまでに殻の中に閉じ籠もったカタツムリがどう云う順序で体を表に出して来るのか観察した記憶はないが、漠然と頭から出して来るのだと思っていた。小学唱歌の「でんでん虫々 かたつむり、お前の頭は 何処にある、角出せ、槍出せ、頭出せ」の影響もあるかも知れないし、また、感覚器を最初に出さなければ、外部の情報(危険)が掴めないだろうと思うからである。 しかし、写真を見ると、足から先に出すものらしい。約25秒後、頭が出て来た.大触角(左)と小触角(右)が見える(写真クリックでピクセル等倍)(2010/01/29) 次は最初の写真の約25秒後、頭部が出て来た。長い1対の突起があり、まだ充分に伸びていないがその先端に眼がある。これが大(後)触角である。その右にある小さな突起は小(前)触角で、味触角とも呼ばれるので、その種の感覚器が備わっているのであろう。その間の下側(写真では右)に口がある。約50秒後。頭が完全に出た(写真クリックでピクセル等倍)(2010/01/29) 約50秒後、頭が完全に出て来た。しかし、殻が水に浸っており水の凝集力で殻が倒れないので、頭が下にある葉っぱに中々届かない。暫く、頭を伸ばしながら左右に振っていた。頭を一杯に伸ばして漸く下の葉っぱに届いた殻口の周りは外套膜で被われている(写真クリックでピクセル等倍)(2010/01/29) 次は漸く頭が下に届いたところ。約30秒後の写真である。その約10秒後、殻が傾いて来た(写真クリックでピクセル等倍)(2010/01/29) その約10後には殻が傾いて来た。その後、殻の位置は「正しい位置」となり、普通に這い始めた。フキの葉の上を這うベッコウマイマイ科の1種(写真クリックでピクセル等倍)(2010/01/29) しかし、これはどう見ても普通の殻径3cm位のカタツムリが這っているのと大して違う様には思えない。上の写真では、右の触角の先端から左の殻の端まで僅か3.0mmである。触角が体全体に比して大きいのは分かるが、殻径1.8mmの微小なカタツムリとはとても思えない。前から見たベッコウマイマイ科の1種大触角の先端に黒い眼の粒が見える(写真クリックでピクセル等倍)(2010/01/29) 前方からも撮ってみた。大触角の先端部に黒い粒が見える。これが眼である。しかし、カタツムリの眼にはどの程度の機能があるのだろうか。 そこで、若かれし頃に参考書として使っていたRobert Barnesの「Invertebrate Zoology」を書庫から引っ張り出して読んでみた。すると、巻き貝の中でも海産のMurex属(ホネガイの仲間)等はレンズ付きの眼を持っており、更に海洋浮遊性の異足類(Heteropoda)は最も高度に発達した眼を持っていて多くの魚の眼よりも優れていると思われるが、多くの腹足類(Gastopoda:巻貝)では光を感知するだけである、と書いてあった。カタツムリの眼も、恐らくは、結像する様な高級な代物ではないであろう。オマケにもう1枚.フキの葉上を這うベッコウマイマイの1種(写真クリックでピクセル等倍)(2010/01/29) 先日、性懲りもなく植木鉢の下を探していたら、もっと小さなベッコウマイマイ科と思われるカタツムリを見付けた。これも生きているカタツムリであった。同じ様な貝だが、体の色が違うので別種の可能性が高い。此処暫く寒い日が続いて新顔のネタも現れないので、その内また超微小カタツムリを紹介することになるかも知れない。
2010.02.18
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先日紹介した「ホソハネコバチ科Gonatocerus属の1種?」を撮影したとき、やはりフキの葉裏に小さなカタツムリが居るのを見付けた。殻径1.8mm、昨年掲載した「超極小カタツムリ」と同じ大きさだが、葉の裏にくっ付いていると云うことは、このカタツムリは屹度生きているに違いない。フキの葉にくっ付いていた殻径1.8mmのカタツムリベッコウマイマイ科の1種と思われる(写真クリックで拡大表示)(2010/01/29) カタツムリの検索には、殻口の形状(内側に突起があるか、縁が反曲するか)、殻の性質(薄く半透明か)、臍孔(裏側中心部の窪み)の有無やその形状などが重要な指標になる。 其処で、カタツムリをフキの葉から剥がし、色々な方向から撮ってみた。殻口の内側には乾燥した粘液の様なものがあるが突起は認められない.殻口の縁は白いが反曲(反り返る)はしていない(写真クリックでピクセル等倍)(2010/01/29) 殻口内を見ると、何分にも生きている貝なので、殻口の内側には乾燥した粘液らしきものあって良く見えないが、殻の内側から伸びる突起のような構造は見当たらない。上の写真では、縁が少し白く光っており、少し反曲(反り返る)している様にも見える。しかし、別の角度から見れば、殻口は薄くて単純な構造をしているのが分かる(下)。臍孔はあるが狭い.殻はベッコウ色をしており、半透明でカタツムリの体の色が透けて見えている(写真クリックでピクセル等倍)(2010/01/29)臍孔はあるが、狭く閉じており、先日紹介したヒメコハクガイの様に、渦巻いた内側の殻が見える様なことは無い。殻は薄く、半透明である。殻の表側には黒い汚れも付いているが、裏側から見たときの黒っぽい部分は汚れではなく、カタツムリ本体の色が透けて見えているのである(これは後で分かったこと)。同じ様な写真をもう1枚.殻は半透明で臍孔は閉じている(写真クリックでピクセル等倍)(2010/01/29) 以上の形態的特徴を把握した上で、東海大学出版会の「日本産土壌動物」にある腹足綱(マキガイ綱)の検索表を引くと、簡単にベッコウマイマイ科(Helicarionidae)に落ちた。この本の検索表は、普通は属までの検索が出来る様になっているのだが、ベッコウマイマイ科に関しては属の検索表はなく、その代わりに「属・種が多く、検索は困難」とある。 本文解説を読むと、「貝殻は殻径2~18mm、薄質で多くは黄褐色を呈し、光沢がある.殻口縁は単純で薄い.(中略)日本産として記録されているのは22属約100種であるが、貝殻の特徴からの分類に加えて、生殖器形態を重視しなければならず、本科の分類学的検討が遅れている.そのため、本科の属までの検索は割愛する」と書いてある。巻はまだ4層程度なので今後更に成長すると思われる水をかけたら綺麗になったので写真を撮り直した(写真クリックでピクセル等倍)(2010/01/29) 実際、保育社の「原色日本陸産貝類図鑑」を見ても種類が多過ぎてサッパリ分からない。また、関西学院大学の微小貝のHPを見ても類似の貝は無かった。 写真のカタツムリは、貝殻の中心部が良く見えないが、巻はまだ4層程度の様である。図鑑を見ると、ベッコウマイマイ科の多くは5~6層なので、このカタツムリは今後更に成長する可能性が高い。大きさによる判断も出来ないので、此処では「ベッコウマイマイ科の1種」とする以外に手はない様である。水をかけて暫くしたら、中から何やら出て来た(写真クリックでピクセル等倍)(2010/01/29) このカタツムリは、今後更に観察しようと思い、葉っぱごとシャーレの中に入れ、水を少々振り掛けた。水に濡れたら表面の汚れが少し取れ、それまでよりも多少綺麗になったので写真を撮り直していたら、何やら殻口の奥で動くものがある。やがて、真っ黒に近い舌の様なものが出て来た。 さて、この後はどうなるでありましょうか。それは次回のお楽しみ。
2010.02.11
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今日は植木鉢の下に居た、少々「キツイ生き物」を紹介する。 「キツイ」と言っても大したことはない、イシムカデの1種である。「ムカデ」と名前は付いても、咬まれるとかなりの被害がでるオオムカデ類とは異なり、体長1cmに満たない極く小さなムカデである。植木鉢の下に居たイシムカデ(ヒトフシムカデ属の1種?)急に明るくなってビックリして逃げ出したところ体長は1cmに満たない微小なムカデである(写真クリックで拡大表示)(2010/01/25) 日本産ムカデ類(ムカデ綱=唇脚綱)には、ゲジ目(所謂ゲジゲジの類)、イシムカデ目、オオムカデ目、ジムカデ目の4目がある。ゲジ目は歩肢が非常に長いので簡単に区別が付く。他の3目は歩肢の数で見分けることが出来る。イシムカデ目では15対、オオムカデ目では21か23対、ジムカデ目の仲間は肢が多く31対以上(「日本産土壌動物」に拠る)。但し、オオムカデ目、ジムカデ目は脱皮しても胴節(頭部以外の体節)数が変わらない成長の仕方(整形変態)をするのに対し、ゲジ目やイシムカデ目では、始めは脱皮に伴い胴節数が増加するがある段階以降は脱皮しても胴節数が変化しない半増節変態と呼ばれる生長の仕方をする(「多足類読本」に拠る)。従って、ゲジ目(歩肢15対)やイシムカデ目の場合は、幼体であれば15節より少ないこともある。苔の間を逃げるイシムカデ(ヒトフシムカデ属の1種?)歩肢は15対で、第2、4,6,9,1113胴節の背板は少し縦に短い(写真クリックで拡大表示)(2010/01/25) 写真のムカデは歩肢は15対、イシムカデ目である。「多足類読本」に拠れば、他にこの目の特徴として胴節背板に異規性が認められ、第2、4,6,9,11,13胴節の背板は少し縦に短い。写真のムカデを見ると確かにその通りになっている。イシムカデ目で間違いないであろう。触角は19節、歩肢には各節に棘がある。歩肢の付節は1節にも見えるが2節の様に見えるところもある(写真クリックで拡大表示)(2010/01/25) さて、このイシムカデ、一体種類は何であろうか。歩肢の各節に棘(武装棘と言う)があり、眼が数個の極く少数の単眼から成る(最後の写真、但し、変態に伴い単眼数が増加する)ので、イシムカデ科(Lithobiidae)に属すと思われる。「日本産土壌動物」の検索表では、日本産イシムカデ科にはイシムカデ属とヒトフシムカデ属があり、前者は第1~13歩肢の付節が2節、後者では1節なので、容易に区別が出来ることになっている。 ムカデ類の歩肢の構成は、昆虫の脚とは異なり、基節、転節、前腿節、腿節、脛節、付節から成る。付節以外はそれぞれ1節ずつで、基節転節は短いから、長い節が5節であればイシムカデ属(Lithobius)、4節であればヒトフシムカデ属(Monotarsobius)と云うことになる。しかし、これが写真からはどうも良く分からない。4節の様に見えるところもあるし、もっと多い様にみえるところもある。チョッカイを出すとあまたを内側に丸くなる(腹側)ヤスデだけでなくイシムカデも丸くなるらしい(写真クリックで拡大表示)(2010/01/25) 「日本産土壌動物」の解説を読むと、イシムカデ属は「体長10~20mm.触角は20~40小節」。一方、ヒトフシムカデ属の方は「体色は淡褐色のものが多く、体長10mm以下が多い.触角小節数20個以下.眼は数個の単眼が1列か2列に並ぶ」とある。 写真のイシムカデは、体長は1cm未満、触角は3番目の写真から判断すると19節、眼は数個の単眼が2列に並んでいる様に見える(下の写真)。これらから判断すると、ヒトフシムカデ属(Monotarsobius)と云うことになる。 しかし、イシムカデ属の単眼数についての情報は見つからなかったし、写真のイシムカデはもっと成長するかも知れず、触角は19節に見えるが先端部にもう1節あるかも知れない。かなり怪しい部分があるので、「ヒトフシムカデ属の1種?」と「?」を付けておくことにした。 尚、ムカデ綱に属す種は全て肉食である。こんなに小さいイシムカデでも、もっと小さいトビムシやダニなどを餌にしているとのこと。丸くなって居たのを解いて?逃げ出すところ眼は数個の単眼2列から成るのが見える(写真クリックで拡大表示)(2010/01/25) このイシムカデ、写真を拡大してみると、意外に結構可愛い。また、最後の写真など、中々勇ましい感じがして、何となく支那の「龍」を思い起こさせる。どんな虫でも、先入観無く見れば、それなりに可愛いものなのかも知れない。
2010.02.08
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先日、少し遅く帰って来たら、玄関の横の壁に体長1cm位のクモが1匹居るのを見付けた。我が家に多いハエトリグモではなく、地表性のクモの様に見える。折角のネタだが、もう遅いし、タイルに張り付いた写真では味気ないし・・・で、明日までシャーレの中で一泊して貰うことにした。 次の日、まだ多少寒い(動作が鈍い)内に、デュランタ・タカラズカの根元に放して撮ったのが以下の写真。ヤチグモの1種.メガネヤチグモである可能性が高いがシモフリヤチグモの可能性も否定できない(写真クリックで拡大表示)(2010/01/24) 実は、この手のクモは(特に)よく知らない。地面を走り回るクモには、ヤチグモ科、コモリグモ科、ワシグモ科等の他、よく知らない小さなグループも幾つかあるらしい。普段は使わない保育社の「原色日本クモ類図鑑」には科への検索表があるが、細かい形態が指標になっているので、とても使えない。其処で、頭胸部の形態に注意しながら文一総合出版の「日本のクモ」のページをめくって行く。幸いなことに、始めの方にあるヤチグモ科(Coelotidae)が写真のクモの特徴を持っていた。横から見たヤチグモの1種(メガネヤチグモ?)(写真クリックで拡大表示)(2010/01/24) 「日本のクモ」には、ヤチグモ科は現在約30種が記録されている、と書かれているが、図版には9種しか載っていない。しかも、よく似ている種類が多い。しかし、その中でもメガネヤチグモ(Paracoelotes luctuosus)が一番よく似ていた。 解説の方を読むと、「人家、倉庫、神社、寺院などお建造物の周囲、壁の隅、板のつぎ目、すき間、壁の隅、窓枠の隅、植木鉢の下、石垣のすき間などに管状住居を作り、入り口に小さな棚網を張る。都会型のクモで公園や庭園などに多く、産地や樹林地にはほとんど見られない」とある。我が家の環境にピッタシではないか!!正面から見たヤチグモの1種(メガネヤチグモ?)(写真クリックで拡大表示)(2010/01/24) しかし、その次にあるシモフリヤチグモも同様の環境を好み、大きさ、色彩や斑紋も似ている。調べてみると、この2種は、雌の腹の裏側にある外雌器の形状を調べないと区別が出来ないそうである。 ・・・と云う訳で、今日の表題は「ヤチグモ科の1種(メガネヤチグモ?)」として置くことにした。斜めから見た写真も1枚載せておく(写真クリックで拡大表示)(2010/01/24) しかし、このクモ、クモ相?が宜しくない。上顎の毛が顎髭の様に見え、凶暴なヴァイキングを思わせる。可愛らしさとか愛嬌と云うものが、まるで感じられない。まァ、クモの方としては遺伝子に従ってこの様に生まれ、他に選択の余地は無いのだから、クモ相が悪いと言われても困るであろうが・・・。ヴァイキングを想い出させる凶暴な顔をしている少し拡大し過ぎて荒れている(写真クリックで拡大表示)(2010/01/24) 多くのクモには単眼が4対8個ある。このクモの眼を見ると、前中眼と前側眼がほぼ一列に並び、その後に後中眼と後側眼が、少し弧を描きながら、やはりほぼ一列になっている。各眼の大きさには殆ど差が認められない。 こう云う眼の配列や大きさは、科の特徴と言っても良く、近縁種間で差は殆ど認められない。 逆さに、各科の眼の特徴を知っていれば、科の同定に役立つ。但し、科が違っても眼の配列がよく似ている場合もあるので注意が必要。頭胸部を拡大.面白い形をしている(写真クリックで拡大表示)(2010/01/24) 前方中央にある前中眼は光っていないので、その位置が少し分かり難い。角度の違いもあると思うが、これは眼の構造上の違いが原因となっている可能性が高い。多くのクモでは、前中眼(主眼とも呼ばれ他の眼とは構造が違う)以外の眼(副眼と総称される)の眼底にタペータムと呼ばれる反射層を持っている。これにより副眼は真珠色に光って見えるが、タペータムを欠く前中眼は光らないのである。 タペータムは1種の集光装置で、これにより暗い所でも眼がより良く見える様になるらしい。但し、明るい所に住む昼行性のハエトリグモや、全く光の届かない洞窟に棲む種にはタペータムを持たない種が多いとのこと。以上は、吉倉眞著「クモの生物学」からの丸写しである。木の葉で突かれて防御態勢に入ったヤチグモ(写真クリックで拡大表示)(2010/01/24) 最後の2枚の写真(上と下)では、クモさんは脚を体に引きつけて縮こまっている。これは、デュランタの幹の間に逃げ込んだクモさんを木の葉で突いて追い出したからで、防御の態勢である。 クモの脚は簡単にとれてしまうが、容易に再生される。トカゲの尻尾と同じで、自切によることが多い。体を脚で囲んでいれば、攻撃を受けて外側の脚に被害が出ても、体は守れるし脚はやがて再生されるから、こう云う格好をするのであろう。横から見た防御態勢のヤチグモ(写真クリックで拡大表示)(2010/01/24) 此処暫く、一段と寒い毎日である。しかし、昨年掲載した枝垂梅は今満開だし、まだ一度も紹介していないジンチョウゲやボケの蕾も膨らんできた。これからは、もう少し更新の頻度を上げることが出来そうである。
2010.02.06
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昨年の9月に殻径1.8mmの「超極小カタツムリ」を紹介した。その時は知らなかったのだが、本年の第1回目に紹介したトクサオカチョウジガイの写真にも何個か写っている様に、この手の微小なカタツムリは植木鉢の下の土から極く普通に得られる様である。その土から得た貝の写真を撮って見たところ、昨年の「超微小カタツムリ」とかなりよく似ていた。其処で、その気になって調べてみると、どうやらこれらはコハクガイ科(Zonitidae)のヒメコハクガイ(Hawaiia minuscula)らしい。土の中から出て来たヒメコハクガイの貝殻.殻径1.5mmと小さい左上と右にボワーと写っているのはトクサオカチョウジガイ(写真クリックで拡大表示)(2010/01/08) 実は、保育社の「原色日本陸産貝類図鑑」には検索表が無いので諦めていたのだが、東海大学出版会の「日本産土壌生物」にカタツムリの検索表があるのを思いだした。その検索表を辿ると、マイマイ目(柄眼目)→殻口内に歯状突起などがない→殻はそれ程薄くはない(半透明で薄くて脆いことは無い)→殻口縁がうすくて単純(殻口縁が反曲しない)→低円錐形状で臍孔[裏側中心部の窪み]がある(蛹形や塔状ではない)→低層周縁が丸い(鋭い龍角はない)→殻表は平滑、光沢がある、白色~黄褐色(殻表に成長脈が無く褐色でない)、で簡単にコハクガイ科ヒメコハクガイ属に落ちてしまった。 しかし、同属の解説の方には、3種が記録されており移入種であると云うこと以外は大したことは書いていない。汚れを少し落として台紙の上で撮影.巻きほぼ4層で縫合(巻いた殻と殻の間)はやや深い明確な成長脈は認められない(ピクセル等倍、拡大不可)(2010/01/08) 保育社の図鑑にある記述はどうかと言うと、ヒメコハクガイ属にはヒメコハクガイしか載って居らず(他の種は珍種か?)、その解説を読むと「殻はうすく小さく、殻高1.3mm、殻径2.1mm、4層。白く、やや透明。螺塔は低く、螺層はふくれ、緩やかに増大する。体層の周縁は丸く、縫合はやや深い。殻口は丸い。広い臍孔がある。(中略)原産は、北アメリカのオハイオ州で、明治時代の中ごろに日本へ移入されて、現在では全国にひろく分布している」とある。 今日の写真の殻径は1.5mm、以前のは1.8mmだから、少し小さいが、小さ過ぎると言うことはない。殻の形状に関する記述も一致する。また、移入種で全国に広く分布しているならば、我が家の庭にいてもおかしくない。同一個体の裏側.貝殻はかなり薄いが半透明と云う程ではない臍孔(中心部の窪み)が非常に大きく内側の殻が見える(ピクセル等倍、拡大不可)(2010/01/08) Web上の情報を調べると、植木鉢の下には、ヒメコハクガイの他に同科別属の只のコハクガイも多いらしい。コハクガイの貝殻は名前の通り琥珀色をしているが、死後は白色化するのでヒメコハクガイと区別が難しくなるとのこと。しかし、大きさが違う。保育社の図鑑に拠れば、コハクガイの殻径5mmで、4層半とある。写真のカタツムリは既に4層(巻数)あるから、4層半に成長しても殻径5mmにはなり得ない。 また、関西大学の「微小貝のホームページ」を参照すると、写真のカタツムリはヒメコハクガイに大変よく似ており、他に類似のカタツムリは無かった(但し、コハクガイ科の種類数は多くなく、只のコハクガイも無かった)。 ・・・と云う訳で、この微小カタツムリは、些かいい加減ではあるが、ヒメコハクガイと考えることにする。螺塔は低く、殻口は丸い(ピクセル等倍、拡大不可)(2010/01/08) 先日、フキの葉裏で虫を探していたところ、別の微小なカタツムリを見付けた。殻径1.8mmとこれも小さいが、チャンと中身のある生きているカタツムリであった(近日中に掲載予定)。調べたところ別科の貝であったが、今日のヒメコハクガイも貝殻だけではなく、是非生きているところを撮りたいものである。生きているときに白っぽい色をしていれば、ヒメコハクガイであることが確実になる。
2010.02.04
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前回予告した通り、今日は植木鉢の下ではない所にいた虫を紹介する。フキの葉裏で越冬していたハチで、体長1.5mm、翅端まで2.2mmとかなり小さい。気温が高かったせいか、彼方此方と歩き回り、その内飛んで逃げてしまったので、写真は2枚しかない。 実は、このハチと同種と思われるものを、一昨年の3月に私のもう一つのWeblogに掲載している。その時は科すら分からなかったので、「ハチの1種」と云う無責任の謗りを免れない表題で紹介したが、今は文献も増えたし検索も何とか出来る。しかし、今日の写真だけでは枚数が少なく検索はキツイので、その昔の写真を使って検索をした。 その結果、ホソハネコバチ科(Mymaridae)に落ちた。更に「Mymaridae」で画像検索をすると、Gonatocerus属(和名は無し)の1種らしいことが分かった。検索の手順に付いては、もう一方のWeblogに詳しく書いた(記事を全面的に書き換え、表題も改めた)ので、興味のある読者諸氏は此方(写真6枚)を参照されたい。尚、ある種のGonatocerus属と非常に類似はしているが、検索で行き着いた訳ではなく、単なる絵合わせに過ぎないので、「?」を付けてある。ホソハネコバチ科Gonatocerus属に属すと思われるハチ体長1.5mm、翅端まで2.2mmと小さいがこの科のハチとしては異常なほど大きい(写真クリックで拡大表示)(2010/01/29) このホソハネコバチ科に属すハチは通常1mm以下で、昆虫の卵に寄生する。世界最小と云われる昆虫も本科に属すハチの雄で、チャタテムシの卵に寄生し、眼も翅もなく、体長は0.139mmとのこと(「あっ!ハチがいる」に拠る)。今日の写真のハチは、同科としては特別に大きな種類なのである。 Gonatocerus属のハチは、カリフォルニアやタヒチなどで猛威を振るっているGlassy-Winged Sharpshooter(GWSS)と云うオオヨコバイ科に属す害虫の天敵として世界的にその名が知られている様である。日本でもヨコバイ類の天敵として研究が行われている。写真のハチも、或いは、我が家のツマグロオオヨコバイの卵に寄生しているのかも知れない。もし、このハチもヨコバイ類の卵に寄生するのならば、大きさから見て、ツマグロオオヨコバイ以外に該当するものがないからである。ツマグロオオヨコバイの卵の大きさは良く分からないが、「日本農業害虫大事典」に拠ると、これより小さい只のオオヨコバイ(翅端まで約10mm)の卵は楕円形で1.7mmとあるから、翅端まで13mm程もあるツマグロオオヨコバイの卵は写真のハチを育てるのに充分な大きさがあるものと思われる。触角が非常に長く、雌は先端が棍棒状に膨らむ翅には縁毛があり、後翅は糸状に退化短い前縁脈以外に顕著な翅脈はない(写真クリックで拡大表示)(2010/01/29) 今日はやっとまともな虫を紹介出来たので、ホッとしている。しかし、まだ植木鉢の下に居た生き物の写真が残っている。かなりキツイ生き物も含まれるが、その内紹介することになると思う。
2010.02.02
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