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今日は余り可愛くない虫を紹介する。読者に嫌われるかも知れないが、このオナガウジの成虫であるハナアブ類は何回も掲載しているし、その解説の中でこのオナガウジについて頻繁に触れているので、一度写真を掲載する必要があると思ったからである。オナガウジ.ハナアブ類の幼虫だが、成虫が何かは分からない。尾っぽは呼吸管(2008/05/12) オナガウジは汚水に棲息する。我が家の庭には汚水など普段は有る訳ないのだが、私の不在中に誰も蹲踞(つくばい)の水を換えなかったので、水が腐りオナガウジが発生した。呼吸管の長さは可変。一番長いときは、この写真よりももっと長くなる(2008/05/13) 胴体の長さ15mm程度、尾っぽは呼吸管で、長さは可変。どの位変化するか良く分からないが、縮むと胴体と同じ位、伸びると胴体の8倍位にもなる。呼吸管を縮めた状態.緑褐色の太い管は消化管であろう(2008/05/13) 暗い日陰なのでストロボを焚いている。ストロボで撮ると器官の一部が妙に白く光ってネオン管の様に写るが、肉眼では全体として灰色っぽいボヤ~とした色である。 この白く光っているのは、気管系であろう。中に空気が入っているから光るのだと思う。呼吸管は後気門で、前方には前気門がある。右下の丸い部分は口だと思われる(2008/05/12) オナガウジは腐敗した動植物を餌とする、とされている。時々、数匹が団子の様に固まっていることがある。昆虫か何か水に落ちて死んだ後腐敗し、それに集っているのかも知れない。 頭を下にして壁面にくっ付き、ジッとしていることも多い。屹度、御休み中なのであろう。蹲踞の浅い部分で摂食中のオナガウジ.ストロボで気管?が光って見える.(2008/05/13) このオナガウジが一体どんなハナアブになるのか、気になるところである。1週間程飼育してみたが、餌が欠乏して痩せ細ってしまったので、元の蹲踞に戻してやった。食事中のオナガウジ.苔様のものを食べているのか、それとも、その中に棲む原生動物を食べているのか・・・(2008/05/13) ハナアブ類はヒラタアブ類と同じハナアブ科に属し、囲蛹を作る。囲蛹は幼虫の表皮が固まったものなので、囲蛹にもシッポがある。シッポ付きの囲蛹と成虫も出来れば紹介したいものである。
2008.05.21
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これまで、卵と初齢、2~3齢、4齢、終齢幼虫と掲載して来たリタテハ・シリーズも今日は兪々最終回、前蛹、蛹、成虫の3つを纏めて紹介する。ルリタテハの前蛹.体を曲げるのはタテハチョウ科の特徴らしい(写真クリックで拡大表示)(2009/09/14) 先ずは前蛹、上の写真の様に胸部を曲げてJの字型になっている。ルリタテハ(Kaniska canace)の幼虫は、休むときには何時も丸まっているので、前蛹も丸まるのかと思ったが、よく考えてみると、ツマグロヒョウモンやコミスジの前蛹も胸部を曲げていた。こう言う蛹がぶら下がる形をとる種類(タテハチョウ科)の前蛹は、皆、こうなのかも知れない。前蛹になった直後はかなり曲りが強いが、時間と共に段々緩くなる。 前蛹になる時刻は夕方が多い様に思える。写真の前蛹は半日以上経った次の日の昼近く、脱皮して蛹になる直前に撮ったので、曲りがかなり弱くなっている。最初の写真の2時間後.脱皮して蛹になった(写真クリックで拡大表示)(2009/09/14) 上の写真は、最初の前蛹の写真の約2時間後、脱皮して蛹となった直後に撮ったものである。まだフニャフニャで、気を付けないと傷つけてしまいそうな感じであった。時間が経つと出現する銀色に反射する部分も、この時点では他の部分と見分けが付かない。充分時間が経った蛹.銀青色に光る部分がある(写真クリックで拡大表示)(2009/09/20 次は充分時間が経ってから撮った写真、但し、別個体である。7頭を一緒に飼育していたので、どれがどれだが分からなくなってしまい、この写真の蛹も羽化の何日前であったか定かでない。しかし、何れにせよ、1~3日以内に羽化したことだけは確かである。 キチョウやクロアゲハの蛹は、羽化が近づくと次第に色が変わり、羽化前日にはハッキリそれと分かる。しかし、ルリタテハの場合は、色が殆ど変わらない様である。何とも不確かな言い方だが、丁度この頃に個人的に些か面倒な事態が出来したのと、別に飼育していたクロアゲハの終齢幼虫の世話に気を取られ、蛹の色の変化は充分に観察していないのである。7頭の何れもが、気が付いたら羽化していた、と言う甚だ不注意な羽化のさせ方をしてしまった。羽化直後のルリタテハ.翅が伸びるのは速い(写真クリックで拡大表示)(2009/09/20) 羽化の瞬間も、7頭も居ながら、全て見逃してしまった。上の写真はその中でも、まだ翅がクシャクシャの状態で気が付いたのだが、写真を撮る為の準備をしている間に、前翅の先端付近を除いて殆ど伸びてしまった。ルリタテハの場合も僅か数分で翅の伸張は終わる様である。 羽化は殆どが10~12時の間に起こり、明るくなってから(部屋の厚いカーテンを開けてから)4~5時間後に羽化するものと思われる。羽化後数時間経ったルリタテハ(上とは別個体)飛べるが羽化当日は殆ど動かない(写真クリックで拡大表示)(2009/09/21) 羽化したルリタテハ。無理矢理サンザシの葉に留まらせて撮った写真である。 飼育した7頭は、何れも無事羽化した。孵化したのが恐らく8月27日、前蛹になったのは最も早い個体で9月10日、一番遅い個体が9月17日、多くは9月12~14日、羽化はそれぞれ9月19日、9月26日、9月20~23日である。 言い換えると、孵化後、最速15日で前蛹、24日で羽化、最遅が22日で前蛹、31日に羽化、多くは17~19日で前蛹、25~28日で羽化したことになる。ルリタテハの顔.サトキマダラヒカゲと同じく複眼には毛が一杯(写真クリックで拡大表示)(2009/09/21) 庭に残した数頭の幼虫は、飼育したものに較べて生長が遅かったが、その内でも比較的生長の早かった3頭は、9月19~22日にかけて前蛹となり、何れも10月1~3日の間に無事羽化した。ヤドリバエにほぼ確実に寄生されていると思っていたが、幸いにも大丈夫であった。しかし、生長の後れていた個体は、その後姿を消してしまった。原因は不明である。 孵化後の日数としては、24~27日で前蛹、36~38日で羽化したことになる。個体差が大きいが、飼育環境と比較すると、前蛹になるのが約1週間遅く、羽化は10日前後遅れたと言えるであろう。ルリタテハの横顔.眼の下から伸びる黒いものは前肢(写真クリックで拡大表示)(2009/09/21) 飼育個体7頭全部、屋外でも3頭、合計10頭のルリタテハが羽化して、一見万々歳だが、よく考えてみると些か気になることがある。屋外の個体は問題ないが、飼育個体は室内で飼育して居るので、何れも長日環境で生長したことになる。蛹越冬をするアゲハ類(Papilio属)の場合、秋になって気温が下がっても長日環境で飼育すれば、越冬蛹にはならず、年内に羽化してしまう。ルリタテハの場合は成虫越冬なので、羽化してしまえばもうそれで問題は無い様に思えるかも知れない。しかし、成虫越冬をするカメムシ等では、終齢幼虫の時に臨界日長以下の日長で育てば卵巣は発達せず休眠個体になるが、臨界日長を越えた長日環境で生育すると卵巣が発達することが知られている。この現象は、成虫越冬する昆虫では一般的なのではないかと思われる。もしルリタテハでも同じ様に、長日条件で卵巣が発達してしまうのなら、その個体が今後どういう運命になるのか良く分からない。秋の内に無理矢理産卵してしまうのか、越冬に必要な栄養を卵に費やしてしまって越冬を完了出来ないのか、或いは、卵を吸収して越冬の為の栄養に転化できるのか・・・、飼育をした者としては気になるところである。 これでルリタテハの飼育経過報告?は終わりである。これまでの記事の内容と掲載日を纏めると以下の通りとなる。 内 容 掲 載 日 1)ルリタテハの卵と初齢幼虫 8月29日 2)ルリタテハの2~3齢幼虫 9月 8日 3)ルリタテハの4齢幼虫 9月18日 4)ルリタテハの5齢幼虫 10月 6日
2009.10.19
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今日は、またコナラの葉裏を舞台にした話である。 葉裏に潜むアブラムシを目当てに色々な捕食者がやって来る。テントウムシ類も勿論来ている。その多くはナミテントウだが、葉裏を調べていると見慣れないテントウムシの幼虫を見付けた。 テントウムシの成虫には模様の変化に富む種類が多い。中でもナミテントウはその筆頭とでも言うべき存在で、4種の斑紋型があり、更にその各型の斑紋にかなりの揺らぎがある。しかし、何故か幼虫の斑紋は一定していて変化がない。ムーアシロホシテントウの幼虫.3齢になったばかり?以下幼虫の写真は同じ倍率(2007/11/06) この幼虫は明らかにナミテントウの幼虫ではない。沢山写真を撮って比較してみると、小さいものでは黒い部分が多く、斑紋は白っぽい。尤も、黒く見えるのは、小さいものが痩せているせいかも知れない。終齢に近づくにつれて段々太り、明るい色の部分が多くなると共に、黄色味を帯びてくる。上の写真より少し大きい幼虫(2007/11/04) このコナラにはダンダラテントウも時々来て居るので、その幼虫の画像を探してみた。しかし、ダンダラテントウの幼虫ではなかった。 考えてみると、ヒメカメノコテントウの幼虫に一見似ている。しかし、模様の違いは明確で変異の範囲外にある。やはり別種であろう。上の写真の個体と体長は余り違わないが太っており、色は淡くなっている(2007/11/06) 2~3日経って、以前このコナラにムーアシロホシテントウが居たのを思いだした。調べてみると、当たり!! どうやらこの幼虫はムーアシロホシテントウの幼虫として良い様である。 ムーアシロホシテントウはまだ未掲載である。飼育してムーアシロホシテントウであることを確認すると共に、写真撮影の為に成虫を確保したい。しかし、テントウムシは生きた餌しか食べないので、扱いは少し面倒である。蛹になるまで待つことにした。終齢幼虫.斑紋が黄色みを帯びる(2007/11/07) 数日後、葉裏を調べていると丁度前蛹になったものを見付けた。早速、葉ごと切り取ってシャーレの中に確保する。ムーアシロホシテントウの前蛹.模様は終齢幼虫と同じ、但し赤味が強い(2007/11/12)横から見たもの.何となく死んでいる様にも見えるがチャンと生きている(2007/11/12) 次の日、予定通り脱皮して蛹になった。明るい色である。ヒメカメのテントウの蛹によく似ているが、それよりも黄色味が弱く、透明感が強い。ムーアシロホシテントウの蛹.ヒメカメノコテントウの蛹によく似ている(2007/11/13) 少し経つと色が次第に黒くなるかと思ったが、まるで黒くならない。普通、羽化までに1週間位はかかる筈である。その中間と思って蛹化してから3日後に蛹の写真を撮ろうとしたら、何と、もう羽化していた。 はたしてムーアシロホシテントウの成虫はどんなテントウムシでありましょうか。それは、次回のお楽しみ。
2007.11.17
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作業が一段落したので、またWeblogの更新をすることにした。 実は、今日は別の虫を紹介するつもりだったのだが、一寸した訳があって、以前紹介したことのあるスイセンハナアブ(Merodon equestris)を、もう一度掲載することになった。クリスマスローズの葉上に留まるスイセンハナアブ(雄)遠くから見ると、コマルハナバチの働きバチに似る(写真クリックで拡大表示)(2011/05/20) 遠目に見ると、コマルハナバチの働きバチの様な大きさと色具合である。しかし、ハチとアブ(本当はハエだがアブとしておく)を見間違えることはない。 それにしても、今までこの辺り(東京都世田谷区西部)で見たことのない配色、これはシッカリ撮ってやろうと思ったのだが、結構敏感なヤツで、数枚で逃げられてしまった。斜め上から撮ったスイセンハナアブ(雄)翅脈がハラブトハナアブ属とは異なる真上からは今回も撮れなかった(写真クリックで拡大表示)(2011/05/20) 太めで毛深いハナアブ(ハナアブ科:Syrphidae)と言えば、ハラブトハナアブ属(Mallota)が思い浮かぶ。早速、市毛氏の「ハナアブ写真集」を参照してみた。しかし、ハラブトハナアブ属と今日のハナアブとでは、翅脈が明らかに異なる。 さて、それでは一体、此奴は何者・・・、と考えていたら、外来種のスイセンハナアブのことを思い出した。昨年の今頃に掲載したことがあるが、全身が黄褐色~灰褐色の毛で覆われていて、今日のハナアブとはまるで模様が違う。しかし、模様は個体変異かも知れない。横から見ると、後腿節が太く、脛節は曲りその内側に2個の突起があるのが見える(写真クリックで拡大表示)(2011/05/20) 早速、自分のWeblogを見直してみた。翅脈は全く同じである。「ハナアブ写真集」を良く見てみると、この様な翅脈はスイセンハナアブの属すMerodon属だけの様で、しかも、この属には他にカワムラモモブトハナアブが記録されているだけである。カワムラモモブトは「ハナアブ写真集」に載っており、明らかに別種である。・・・と言うことで、今日のハナアブはスイセンハナアブ(Merodon equestris)で間違いないであろう。Web上で探してみると、ソックリな写真が沢山出て来た。極く普通の変異の様である。 昨年掲載した時にも書いたが、北隆館の新訂圖鑑には、「脚は黒色で後脚の腿節は肥厚し脛節内側中央付近は広く瘤状に膨れ、末端内側には長い角状突起があり、外側には板状の突起がある」と書かれている。「板状の突起」は角度の関係で良く分からないが、内側の膨れと突起は上の写真で明らかである。斜め前から見たスイセンハナアブの雄右後から陽が当たって些か見苦しい(写真クリックで拡大表示)(2011/05/20) しかし、昨年掲載した時にも最初はハラブトハナアブの仲間と間違えている。進歩がない、と言うか、1年前に書いた記事のことはもうすっかり忘れている。全く、困ったものである。 尚、九州大学の日本産昆虫目録には外来種のスイセンハナアブは見当たらず、Merodon属にはカワムラモモブトハナアブ(Merodon kawamurai)とナガモモブトハナアブ(Merodon scutellaris Shiraki, 1968)の2種が載っている。しかし、「一寸のハエにも五分の大和魂・改」の関連サイトである「みんなで作る双翅目図鑑」(写真は殆ど無い)の一覧表(九大目録よりも新しい)を見ると、Merodon属はスイセンハナアブとカワムラモモブトハナアブの2種のみで、ナガモモブトハナアブは(Azpeytia shirakii Hurkmans. 1993)となっており、全然別の種となっている(族はマドヒラタアブ族で同じ)。 また、北隆館の新訂圖鑑を見ると、スイセンハナアブの学名はMallota equestris)であり、該一覧表とは属ばかりでなく族も異なる。Mallota属はナミハナアブ族(Eristalini)、Merodon属はマドヒラタアブ族(Eumerini)に属す。 この辺り、一体どうなっているのか、一介の素人には全く分からないが、此処では、市毛氏の写真集に従って、スイセンハナアブはマドヒラタアブ族に属し、学名はMerodon equestrisとしておく。
2011.05.27
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3週間ほど前、ベランダに置いてある椅子に座って煙草を吸っていると、我が家の毒草クリスマスローズの葉の上に緑色の少し大きいバッタがとまっているのに気付いた。 以前紹介したサトクダマキモドキよりはずっと細く、全長もやや短い。触角がこの種のバッタにしてはかなり短かく真っ直ぐなのが目立つ。クビキリギスの全身.上から(2006/11/08) 前にも書いたが、私はバッタ類を得意としない。しかし、調べてみたらサトクダマキモドキの時と同様、正体は簡単に割れた。クビキリギス=首切りギスという、一寸物騒な名前のバッタ。短い触角、頭部の形と口が赤いのが決め手であった。写真で見ると、触角も赤い。クビキリギスの触角を除く全身.横から(2006/11/08) この手のバッタは噛みつかれるとスザマジク痛い。噛みついたまま容易に放さないのである。無理に放そうとすると、バッタの首が切れて取れてしまうので、クビキリギスの名があるとのこと。クビキリギスの頭部.口が赤く、眼に妙な紋がある(2006/11/08) 私がバッタを余り好かないのも、子供の頃この種のバッタに噛みつかれて、エライ目にあったせいかも知れない。 頭部を拡大してみると、眼の上部に黒い筋があり、真ん中辺に黒い点がある。この黒い点は、後の写真を見ると分かるように、常にカメラの方を向いている。ストロボの反射とは考えがたいが、バッタは複眼だから実際にある模様とも思えない。一体何であろうか?クビキリギス.真っ正面から.何とも言い難い変な顔(2006/11/08) クビキリギスを真っ正面から撮ってみた。深度が浅いので頭の辺りにしか焦点が合っていないが、何とも変な顔!! つい笑ってしまう。クビキリギス.頭部を斜め上から(2006/11/08) 少し上から撮ると、眼をつむっている様な感じ。クビキリギス.頭部を真上から(2006/11/08) 真上から撮っても余り面白くないが、前述の眼の中の点が黒い筋の横に見えるので載せることにした。 このバッタ、11月と言うのに以前のサトクダマキモドキとは違って、いたって元気。少しチョッカイを出すと、気温が低いにも拘わらず、羽で飛んで逃げるし、ピョンピョン跳び回る。 調べてみると、何と、このバッタは成虫越冬し、春になってからジィーンと鋭い声で鳴くのだそうである。図鑑によると、他にシブイロカヤキリモドキというのも成虫越冬するとのこと。 この手の細長い緑色のバッタは総て卵越冬と思っていたが、バッタの中にも変わり者がいるものだ、とバッタを得意としない私は妙に感心してしまった。PS:次回より掲載場所を「園芸:虫!」から「アウトドア・釣り:日々自然観察」に変更することにした。今後共宜敷御願仕候。
2006.11.29
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越冬する虫には同情するが、絶対に同情してやらない虫もいる。「断固壊滅スヘシ」とされている我が家の大害虫どもである。 我が家の庭には、3大害虫がいる。ウメスカシクロバ(本当にウメスカシクロバなのか否か不明、ツルバラを食害するが、隣にあるウメには付かない)、オオスカシバ、チャドクガの3種である。 この内、ウメスカシクロバは既に9月頃から何処かへ潜んでしまうし(羽化は次の年の6月頃)、オオスカシバは土中あるいは落ち葉の下などで越冬するので、容易に見つからない。 しかし、チャドクガはツバキの葉裏に産み付けられた卵で越冬するので見付け易い。肥後椿の葉裏に産み付けられたチャドクガの卵塊(2006/12/05) 今年はチャドクガが大発生した。だから、ツバキの葉裏を探せば卵塊が見つかる。 遠くから見ると只の黄色い固まりだが、よく見てみると、フワフワの毛に覆われている。チャドクガの卵塊.毛に覆われている(2006/12/05) フワフワの毛に覆われて越冬するのにも暖かそうだ、等と思ったらそれは能天気と言うべきで、この中に毒針毛が入っている。ドクガは卵からして「毒蛾」なのである。ただし、この毛の大全部が毒針毛なのか、或いは、ごく一部だけなのかは良く分からない。 思うに、幼虫の毒針毛が繭に付き、その繭に付いた毒針毛を成虫が尻に付けて飛び回り、それを更に卵塊にくっ付けるのだから、最後まで残る毒針毛は全体のごく一部であろう。チャドクガの卵塊.左手前に丸い卵らしき物が見えている(2006/12/05) 実体顕微鏡下で調べてみたことはないが、経験的から言うと、卵塊に付いた毛はかなりシッカリくっ付いているらしく簡単には取れない。葉ごと手で取ってポリエチレンの袋にでも入れ、可燃ゴミとして処分すればよい。
2006.12.06
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今日はルリタテハ(Kaniska canace)の終齢幼虫を紹介する。漸くのお出ましである。 幼虫も終齢になると貫禄が出て来る。また、4齢以下とは形態や色が変わることも多い。アゲハの幼虫では4齢以下の「鳥の糞」型から目玉模様のある緑色に変わるし、このルリタテハの場合も4齢以下の黄と黒の2色刷から、赤、黄白、黒の3色刷に変わる。体長は45mm程度。ルリタテハの終齢幼虫.体を丸めて休すむのは若齢と同じ赤、黄白、黒の3色になっている.左下が頭(写真クリックで拡大表示)(2009/09/10) 色は変わっても、葉裏で体をU(C、J)字型に曲げて休む習性は同じである。何とも奇妙な習性で、どの様な利点があるのか良く分からないが、個体によって体を曲げる方向が決まっているかも知れない。印を付けて調べてみれば分かることだが、メンドーなので「実験」はしなかった。ストロボの光に反応して動き始めた.左下が頭(写真クリックで拡大表示)(2009/09/10) 4齢以下では基部を除いて黒かった肉棘が、終齢幼虫では、大部分黄白色に変わる。しかし、先の方は黒いままである。また、若齢ではかなり柔らかかった棘が、終齢では皮膚の弱い所に当たれば傷みを感じる程度に固くなっている。棘の先には剛毛が生えているので、その剛毛が太くなって容易に曲がらなくなるのであろう。 この棘状突起は第1胸節には無く、第2胸節から第10腹節にかけて存在する。各節に於ける本数は、写真からは良く分からないが、北隆館の古い「日本幼虫圖鑑」に拠ると、アカタテハ等とおなじで、第2~3胸節では各4本、第1~8腹節では各7本、第9~10節には各2本有るのとのこと。何時も丸まっているので、こう言う真っ直ぐな写真は少ない棘状突起は第2胸節から第10腹節にある(写真クリックで拡大表示)(2009/09/10) 胴体の色は、4齢幼虫では黒と黄であったが、終齢ではこの黄色い部分が鮮やかな赤となる。遠目には余りよく分からないが、拡大してみると、赤、黄白、黒の3色が、中々塩梅良く配置されている。終齢幼虫の頭部.長い剛毛が沢山生えている(写真クリックで拡大表示)(2009/09/10)御食事中の終齢幼虫.上唇の溝に葉の端を入れて食べる(写真クリックで拡大表示)(2009/09/10) 終齢幼虫の期間は4齢以下よりも長く、食欲も甚だ旺盛で、5頭(全7頭の内、1頭だけ生長が速くて先に蛹になってしまい、また、遅いのが1頭居た)も居ると1日数回ホトトギス(1本の茎に4~5枚葉が付いている)を与える必要があった。しかし、余りに速く食べ尽くしてしまうので、花瓶に挿す必要は無く、その点では楽であった。 ルリタテハの終齢幼虫の魅力は、何と言ってもその棘状突起にあると思う。そこで、等倍で接写した棘の写真を数枚並べることにした。棘の各先端に剛毛が生えているのが良く分かる。また、基部に近い黄白色の部分には微毛が無数に生えているのが見える。この様な微毛は4齢幼虫には無かった様に思うが、4齢では等倍接写をしていないので、分解能が低くて見えなかっただけなのかも知れない。ルリタテハ終齢幼虫の棘状突起.先端に剛毛が1本ずつ生えている(写真クリックで拡大表示)(2009/09/10)ルリタテハ終齢幼虫の棘状突起(その2)(写真クリックで拡大表示)(2009/09/10)ルリタテハ終齢幼虫の棘状突起(その3)(写真クリックで拡大表示)(2009/09/10) さて、この次は兪々蛹化と羽化である。しかし、まだ写真の調整が全然出来ていない。掲載まで今少しお待ち願いたい。[追記]これらの幼虫は全て無事成虫に羽化した。以前、以降の記録は下記の通り。 内 容 掲載日 卵と初齢幼虫 8月29日 2~3齢幼虫 9月 8日 4齢幼虫 9月18日 前蛹、蛹と成虫 10月19日
2009.10.06
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前回、ニシキハギに妙な虫がくっ付いていたと書いたが、今日はその「変な虫」を紹介することにしよう。 まァ、本当のことを言えば、別に変な虫ではない。カイガラムシの1種である。カイガラムシの種類については、詳しい文献も手元にないし、Internetで調べても必要な情報が得られないが、タマカイガラムシの1種(タマカイガラムシ科)であろうと思われる。 よく分からないのだが、Internetで調べると、ヒラタタマカイガラムシと言うのに似ている。しかし、この虫の学名で外国のサイトを検索すると、かなり違った像が沢山出て来るし、日本では主として温室で発生するとのことなので、ヒラタタマカイガラムシではないらしい。ハギの幹に付いていたカイガラムシ妙にスベスベしており、渋い色合いをしている(2008/12/22) タマカイガラムシなど何処にでも居て、普通は面白くもない虫である。しかし、このカイガラムシ、妙にスベスベしており、色も鼈甲色を濃くしたような感じで、何故か妙に好感が持てる。しかも、その幼虫か、或いは、成虫になったばかりなのか分からないが、妙に色の薄いのもすぐ隣に居て、これもまた中々味のある色合いである(下)。色が薄く、洒落た模様をしている幼虫か未成熟成虫と思われる(2008/12/22) しかしこの他に、普通のカイガラムシ的な形をした個体も居る(下)。これが本当の成虫で、上のはまだ幼虫なのかも知れない。写真は出来るだけ拡大してあるので分かり難いが、上の2個体は体長4mm弱、下の個体は5mm強で、大きさがかなり異なる。また、上の写真の個体からは横から白黒マダラの触角の様なものが出ている。これは一体なんであろうか。普通のカイガラムシ的な個体(2008/12/24) 本当は、まァ、カイガラムシと言うのはよく分からない虫である、と言って逃げてしまう積もりであった。しかし、それでは余りに無責任であろう。カイガラムシをひっぺ返して見れば何か分かるかも知れない。 そこで、細かい仕事用の+3度の強老眼鏡をかけ、シャーレとピンセットを持ってカイガラムシを剥がしに行った。2番目と同じ様な個体を剥がしてみたところ未だ生きている(2008/12/25) 色の薄い個体は柔らかく、綺麗に剥がすことが出来た。裏面を見ると上の写真の様である。触角の様なものは全然見当たらない。どうやら、虫とは関係ないものであったらしい。 この虫、幼虫なのか未成熟の成虫なのか、よく分からないが、少なくともまだ生きている虫である。 一方、色の濃い方は殻が固く、少し力を入れるとパリッと剥がれ、同時に細かい粉状のものが多量にこぼれ落ちて来た。粉状と言っても小麦粉の様な感じではなく、ある程度の大きさがあり、しかもその大きさは一定している様に感じられた。色の濃い個体を剥がしたもの.卵が一杯詰まっていた大半はこぼれ落ちてしまったが、まだこの程度残っている(2008/12/25) これはカイガラムシの卵に違いない。早速等倍接写をしてみると、上の写真の通り、正しく卵であった。ウメに付くタマカタカイガラムシの丸い殻と同じで、中の虫はもう死んでおり殻の中は卵で満たされていたのである。 一番目の写真のすべすべした虫も同じで、殻の中からは卵が出て来た。少し小型であったが、もう務めを果たした成虫であったのだ。カイガラムシの卵.美味しそうに見えるピクセル等倍(2008/12/25) タマカイガラムシの殻の中には卵がギッシリ詰まっている、と言う話は色々な所に書かれている。しかし、実際の卵の写真と言うのは、余り見た記憶がない。そこで、卵のピクセル等倍写真を掲げておいた。 超接写をすれば、もっと詳細な構造(例えば卵表面の模様)が見えるかも知れない。しかし、もう後1週間で新年、余りWeblogに時間をかける訳にも行かない。ここらで御勘弁願いたい。
2008.12.25
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どうも最近は新顔の虫が現れないと思っていたら、熱帯バジルの1種の上に大きなカマキリが居るのを見付けた。オオカマキリかチョウセンカマキリの何れかである。オオカマキリの全身(2007/09/27) 最近、この辺りで見るカマキリは、ハラビロカマキリかコカマキリばかりで、大型のカマキリを見ることは少ない。久しぶりにしげしげと顔を眺めてみると、見慣れたハラビロカマキリよりも虫相?が悪い。かなりヤクザっぽく、凶暴な感じ。オオカマキリは何となく凶暴そう(2007/09/27) 頭の形もかなり違う。額の部分にある縞模様が口にまで達し、複眼が大きく突出し、口先が尖っている。一方、ハラビロカマキリの方は、全体として御握りの様に丸味のある三角形である。それが何となくカマキリとしては柔和な印象を与えるのだろう。オオカマキリの頭.ハラビロカマキリとは異なり口が尖っている(2007/09/27) これまで見たことのない、頭部の裏側を撮ってみた。かなり不気味である。喉の所の襞や、複雑に分かれた口器が、未来映画に出てくる凶暴な宇宙生物を思わせる。裏側から見たオオカマキリの頭部.かなり不気味(2007/09/27) さて、このカマキリはオオカマキリとチョウセンカマキリの何れであろうか? チョウセンカマキリと言っても朝鮮からの外来種ではない。昔から居る種類で、図鑑に拠れば、只カマキリと言った場合はチョウセンカマキリを指すとのこと。 オオカマキリは前肢付け根の間が黄色く、チョウセンカマキリでは赤い。また、オオカマキリの後翅は全体に紫褐色の斑紋があるのに対し、チョウセンカマキリでは大部分が透明である。「蟷螂の斧」を振り上げる蟷螂(2007/09/27) カマキリの首根っこを掴んだら、カマキリはのけぞって翅を拡げた。オオカマキリであった。 余程ビックリしたのか、放してやった後も10分位、上の写真の様な格好をしたままであった。これが世間に言う「蟷螂の斧」の形であろう。ハラビロカマキリはこう言う格好をしない様な気がするが、定かではない。オオカマキリの後翅.全体に紫褐色の斑がある(2007/09/27) ついでに、前肢の付け根も示しておこう。この黄色い部分がチョウセンカマキリでは赤い。オオカマキリ前肢の付け根.チョウセンカマキリではこの黄色い部分が赤い(2007/09/27) ところで、オオカマキリとハラビロカマキリでは、顔つきばかりでなく、行動面でもかなり違って見える。ハラビロカマキリはジッと同じところに留まって獲物が来るのを何日でも待っているが、オオカマキリは待ち伏せ型と言うよりは、徘徊型の様である。 上の写真を撮ってから1時間後には、先の熱帯バジルから1m位離れた「キク科の雑草」の上に移っていた。菊花の上でもジッとしているのではなく、彼方此方歩き回っている。ツマグロヒョウモンの幼虫を食べるオオカマキリ(2007/09/27) 歩き回って捕らえたのが、隣の鉢でスミレを食べていたツマグロヒョウモンの幼虫。 其処には、ツマグロヒョウモンの幼虫がまだ何頭もいる。この調子では全部食べられてしまう恐れがあるので、オオカマキリを少し離れた所に置いてあるハナトラノオの鉢に移した。 此処でもカマキリは彼方此方歩き回っていたが、虫が沢山やってくるにも拘わらず、2日後には姿が見えなくなってしまった。かなり放浪癖が強いらしい。
2007.09.29
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今日は3年前に撮った芋虫の写真を出すことにする。キバラモクメキリガ(Xylena formosa)の4齢幼虫である。 今まで何故掲載しなかったかと云うと、キチンと背側からも撮った写真も無いし、頭部の拡大写真もなく、また、全体の枚数も少ないので、もう一度我が家の庭に出現したら撮り直そうと思っていたからである。 しかし、その後3年待ったが、全く現れない。画像倉庫に寝かせておいても仕方ないし、写真を拡大してみると、この芋虫、結構綺麗、敢えて紹介することにした次第である。ホトトギスに居たキバラモクメキリガの4齢幼虫(写真クリックで拡大表示)(2007/04/19) 「みんなで作る日本産蛾類図鑑」に拠ると、食草はバラ科、マメ科、ケシ科、タデ科、キク科、ナス科、ラン科、ブナ科、モクレン科と、非常に広範囲に亘る。 我が家ではホトトギスに付いていたので、最初遠くから食痕を見つけた時にはルリタテハの幼虫かと思った。しかし、近くに寄ってみると、居るのは緑色の芋虫であった。 キバラモクメキリガはヤガ科(Noctuidae)ヨトウガ亜科(Hadeninae)に属す。ヨトウガと言えば農業害虫としてその名が知られているが、「キバラモクメキリガ 駆除」で検索しても有意なヒットは殆どない。この幼虫は、問題になる程の「悪者」ではないらしい。毛は少なく、透き通る様で、中々美形である(写真クリックで拡大表示)(2007/04/19) 4齢幼虫は、御覧の通り特に目立った斑紋もなく、肉眼的にはモンシロチョウの幼虫をもう少し太めにしたと云う感じで、何処にでも居そうな芋虫(モンシロの幼虫は拡大すると細かい毛が沢山見えて、この幼虫とはかなり雰囲気が違う)。写真の枚数が少ないのは、どうせ種類は調べても分からないだろうと思って、真面目に撮らなかったからである。 しかし、その後5齢に達した時、極めて特徴的な姿へと変わり、それで漸くキバラモクメであることが分かった。隣の葉に移ろうとするキバラモクメキリガの4齢幼虫(写真クリックで拡大表示)(2007/04/19) このWeblogでは、幼虫は原則として各齢ごとに掲載することにしている。今回は写真が少なかったので5齢と一緒にしようかとも思ったが、5齢の写真が多いので、やはり原則通り4齢は4齢だけで紹介することにした。些か物足りないが、何卒御容赦被下度候。
2010.05.24
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2週間程前の事である。庭に自生しているミツバに1cm位の黒っぽい芋虫が1頭付いて居るのに気が付いた。紛う事なきキアゲハ(Papilio machaon)の幼虫、恐らく2齢であろう。 2~3年前、やはりミツバに数頭のキアゲハの幼虫が付いた。しかし、終齢になった途端、1~2日で全てが姿を消してしまった。アシナガバチに肉団子にされてしまったらしい。ミツバに付いたキアゲハの4齢幼虫終齢の様な輪模様ではなく格子模様(写真クリックで拡大表示)(2010/06/06) だから、本来ならば飼育して、2齢から成虫になる迄を追うのだが、今回は一寸理由があり、飼育もしなかったし、若齢幼虫の写真も撮らなかった。 何となれば、明日、また南方に出撃しなければならないからである。やはりアゲハの幼虫は終齢(通常5齢)が見事であり、若齢幼虫の写真だけでは、どうにも物足りない。それで、出発の直前まで写真を撮らなかったのである。終齢とは異なり黄色ではなく白い部分がある(写真クリックで拡大表示)(2010/06/06) キアゲハの成虫は、近縁のナミアゲハとよく似ている。しかし、4齢や終齢幼虫は、ナミアゲハとは随分違っている(ナミアゲハの終齢幼虫は此方)し、他のアゲハチョウ属(Papilio)とも異なっている(例えば、クロアゲハの4齢と終齢)。 また、他のアゲハチョウ属の幼虫はミカン科植物を餌とするが、キアゲハの幼虫だけは、ニンジン、パセリ、ミツバ等のセリ科植物を食草とする。この点でも、一寸異色である。寝ているキアゲハの4齢幼虫.終齢に見られる副前頭がない左の頭頂にゴミが付いている(写真クリックで拡大表示)(2010/06/06) キアゲハの終齢幼虫は、もう一つのWeblogで掲載したことがある。これは黄色と黒の輪模様をしている。しかし、4齢幼虫は、御覧の通り、格子模様に近く、また白い部分が相当ある。尤も、4齢幼虫の色合いにはかなりの変異があり、もっと黒い部分の多い個体も見られる。 しかし、3齢以下の若齢幼虫は、他のアゲハチョウ属と同じく、鳥の糞状である。 また、4、5齢幼虫は他のアゲハチョウ属の幼虫とはかなり違っては居るが、この4齢幼虫を拡大してみると、クロアゲハの若齢幼虫に見られたのと同じ様な剛毛の生えた突起があり、その分布パターンも同じである。やはり、血は争えない、と云うことであろう。クロアゲハの幼虫同様、剛毛の生えた突起が目立つ(写真クリックで拡大表示)(2010/06/06) この幼虫君、始め見つけた時はアシナガバチなどが屡々遊弋している場所にいたので、ハチの入って来ない内庭に生えているミツバに移した。・・・すると、最初の場所では葉を食べていたのに、此方ではあまり葉を食べないで、花と花穂ばかり食べている。ナミアゲハやクロアゲハも、サンショの花や柑橘類の花を食べることがあるのだろうか?第1胸節(頭の直ぐ後)にある丸い穴は気門(写真クリックで拡大表示)(2010/06/06) それでは、明日(平成22年6月8日)、例年の如く南方へ出撃する。飯田洋二郎中将麾下の第15軍が展開した領域である。拙Weblogの更新を楽しみにされている読者諸氏には大変申訳無いが、2~3ヶ月の休みとなる。こればかりは何とも致し方ない。 尚、留守中に余計な書き込みを沢山されると後が厄介なので、明日早朝よりコメント欄とBBS(掲示板)の書き込みを禁止とする。御用のある諸氏は、御面倒でも「Home」の左下にある「メッセージを送る」から書き込みをされる様御願い申し上げる。
2010.06.07
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昨日、ギボウシの葉に大きな「バッタ」が留まっているのを見つけた。クビキリギス(Euconocephalus varius = E. thunbergi)の褐色型(緑色型は此方)、成虫である。クビキリギスと言えば、秋に成虫になる虫の筈だが・・・???。 そう云えば、クビキリギスは成虫で越冬する。一寸調べてみると、越冬成虫は7月位まで見られるとのこと。このクビキリギス、右の前肢が無いが、これは厳しい冬を乗り越えて来た名誉の負傷と云うところであろう。ギボウシの葉上にいたクビキリギスの越冬成虫.褐色型右の前肢が欠けている.名誉の負傷と言うべきか(写真クリックで拡大表示)(2010/05/28) 先日、「虫探検広場」の5月19日(2010年)の投稿記事に、9月に捕まえたオンブバッタを飼育したところ、まだ生きている、と云うのがあった。オンブバッタは卵越冬である。だから、成虫は初冬にはあの世へ行ってしまうのが本来なのだが、条件が良ければ随分と生き延びることが出来るらしい。クビキリギスは、本来オンブバッタよりも長生きの出来る成虫越冬である。条件が良ければもっともっと生き延びるのかも知れない。自然光で撮ったクビキリギス.翅の部分は少し暗い(写真クリックで拡大表示)(2010/05/28) クビキリギスはキリギリス科(Tettigoniidae)に属し、九州大学の日本産昆虫目録、東京都本土部昆虫目録、北隆館の大圖鑑などを見ると、クビキリギリスとなって居る(保育社の昆虫図鑑下巻ではクビキリギス)。冒頭で、「バッタ」と「」に入れたのは、バッタ(バッタ科)では無いからである(クビキリギスをバッタなどと呼ぶと三枝先生のお叱りを受ける)。しかし、私はどうもこの連中(直翅目)が好きではないので、皆引っくるめて「バッタ」と呼んでしまう傾向がある。同じく自然光で撮影.少しピーカンに過ぎた(写真クリックで拡大表示)(2010/05/28) 昨日は非常に天気が良かったし、被写体は大きいので、自然光でも撮影してみた。2番目と3番目がそれだが、自然光だけで虫を撮るのは、私としては極めて稀なことである。背面からのは、丁度撮影者(私)の陰になってしまうので、仕方なくストロボを使った。接写の方は、レンズが100mmだから、ストロボを使わなければ撮影出来ない。 自然光の方が緑色が自然に写る。しかし、頭部や胸背の陽の当たるところは白っぽくなっているのに対し、陽光にほぼ並行する翅の部分は暗くなり、光ムラを生じてしまった。こう云う時は、ストロボを銀レフ的に使って、横から少し光を足してやる必要があると言える。クビキリギスは口が赤いのが特徴(写真クリックで拡大表示)(2010/05/28) クビキリギスの大きな特徴は、上の写真の様に、「口が赤い」ことである。しかし、上の写真には赤い部分の他にも何やら色々とややこしい構造が見える。 以前から「バッタ」の口器はどうなっているのか少し気になっていた。其処で、北隆館の図鑑にバッタ(本当のバッタ)の頭部の模式図を参考に、これらの「ややこしい構造」が何かを調べてみた(バッタ科とキリギリス科で基本的な違いが無いと仮定)。 下の写真で、1:赤いのは大顎(大腮)、2:上唇、3:小顎(小腮)、4:??、5:小顎鬚(小腮鬚)、6:下唇鬚、となる(7は前肢の取れた傷口)。小顎鬚は非常に長く、クネクネと続いている。4はどうも良く分からない。位置的には下唇なのだが、これは写真では上から下へ延びる構造である。4の構造は逆に下から上に牙の様に飛び出している様に見える。下唇鬚は多分間違っていないと思う。この下唇鬚が下唇から分岐する所が見えれば下唇の位置が良く分かるのだが、丁度その部分が小腮鬚の影になって良く見えないのである。口器の各部を調べてみた.番号に付いては本文参照(写真クリックで拡大表示)(2010/05/28) 今日は、ガガンボの美麗種を見つけてしまった。ガガンボにもこんな美形が居るのか、と云う位綺麗な虫である。乞う御期待!!
2010.05.29
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今日は久しぶりにヒラタアブの仲間を紹介する。ホソヒメヒラタアブ、体長7mm以下の小さなヒラタアブである。 ホソヒメヒラタアブには、非常に良く似たキタヒメヒラタアブと言う近似種が居る。この両者の識別は外部形態だけでは困難で、普通はゲニタリアを見る必要があるとされる。しかし一方で、ホソヒメは8mm以上になることはなく、また、キタヒメは7mm以下にはならない、と言われている。写真の個体は体長6.0mm、ホソヒメヒラタアブとした所以である。ホソヒメヒラタアブ.体長6.0mmこの個体は腹部に黒い部分が非常に多い(2008/10/05) しかし、随分腹部に黒い部分が多い。最初肉眼で見たときは何か別の種かと思った。しかし、顔面が真っ白で細長く体長6mm以下のヒラタアブは、ホソヒメしか居ない筈である。図鑑類や市毛氏の「ハナアブの世界」も参照してみたが、やはりホソヒメ以外に該当する種類は見つからなかった。 ホソヒメヒラタアブはこの辺り(東京都世田谷区西部)で決して珍しいヒラタアブではない。これまで紹介しなかったのは、肉眼的に8mm以上か7mm以下かの区別が容易でない(一般に虫の体長は実際よりも大きく見える)ので、ついつい撮らずじまいになっていたからである。今回は、確実に「小さい」と思ったので撮影し、漸くの登場となった次第である。真横から見たホソヒメヒラタアブ.黄、黒、白の綺麗なアブである(2008/10/05) アブさんがやって来たのは、写真でお分かりの通り「北米原産シオンの1種」。もう筒状花(中心部の黄色い部分)が茶色になってきた花が多く、人間にはそろそろ終わりの様に感じられるが、虫の方はそれと関係なくやって来る。花粉などは少し古くなった方が分解が進んで、食べ易いのかも知れない。顔面は真っ白で頭頂部は黒く、その間に黄色の部分がある(2008/10/05) ホソヒメヒラタアブは最近、もう一つのWeblogでも紹介した。その時の個体は非常に敏感で容易に近づけなかったが、今回はまるでその逆であった。と言っても撮影が楽だった訳ではない。 このアブさん、小さいので花の中に頭を突っ込んでしまう。すると体が花に隠れて背側以外からは写真が撮れなくなる。留まっている花の茎を一寸手で突っついたりしても全然動ぜず、翅に触っても数cm動くだけで、まるで逃げる気配無し。この「北米原産シオンの1種」は虫達にとって余程魅力のある花らしいが、御蔭で写真を撮るのに随分時間がかかってしまった。花粉を舐めているところ(2008/10/05) 此処まで書いて一服しに外に出た。その途端にツーンと強い花の香り、どうやら御隣のキンモクセイが咲き始めたらしい。兪々今年も終わりである。 年を取ると一年の過ぎるのの何と速いことか!!
2008.10.06
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今年の夏は陽射しの強い日が続くことが無いせいか、我が家の庭には何時もそれなりに虫が居て、どうやら「夏枯れ」状態にはならないで済む見込みである。結構色々な種類が居るが、まだ紹介していない虫となると、やはり双翅目(ハエ、アブ、蚊)、特に「ハエ」と名の付く虫が多い。 今日はその中でも特にハエらしいエを紹介する。イエバエ科ハナレメイエバエ亜科(Coenosiinae)に属すアシマダラハナレメイエバエ(脚斑離眼家蠅:Coenosia variegata Shinonaga, 2003)、翅端まで4.5mmの一寸小さめのハエである。アシマダラハナレメイエバエ(雌).翅端まで4.5mm毛深くて如何にもハエ的だが捕食性の清潔なハエ(写真クリックで拡大表示)(2009/08/02) イエバエ科を含む有弁類(他にハナバエ科、クロバエ科、ニクバエ科、ヤドリバエ科その他がある)と言うのは、一部を除いて殆ど素人が手を出すことの出来ない厄介な(恐ろしい)領域である。所謂「絵合わせ」は先ず効かない。これは双翅目全体に言えることだが、特に有弁類の場合はその程度が甚だしい。 種を決めるには、検索表と睨めっこし、翅脈相がどうなっているか(これが実に細かい)、何処にどの様な剛毛が何方の方向に生えているか(これはもっと細かい)、触角の柄節、梗節、鞭節等の形はどうなっているか、触角刺毛には微毛があるか・・・等、非常に細かい形態を見ながら的を絞って行き、最終的には交尾器の形態で判断をすることになる。図鑑などにある検索表は多くは科までのもので、種まで落とすには、それぞれ科ごとや属ごとの検索表が載っている文献を参照しなければならない。 イエバエ科の場合は、篠永哲著「日本のイエバエ科」と言う書物があり、種までの検索が出来る。しかし、この文献は非常に誤植や誤りが多く(主に英文なのだが、英文と和文で意味が逆になっていたりする)、私などは容易に使いこなすことの出来ないのだが、今回は奇跡的に種まで落とすことが出来た。下側やや後から見たアシマダラハナレメイエバエ.上と同一個体頭はボケているが、翅の下を精緻に撮らないと検索表が引けない(写真クリックで拡大表示)(2009/08/02) しかし、私の場合は標本を作らないので交尾器の形態は分からない。だから、最終的には双翅目の掲示板「一寸のハエにも五分の大和魂」で同定が正しいか否か見ていただくことと相成る。 私の問い合わせには、九大名誉教授の三枝豊平先生が対応して下さった。「写真だけで良く到達するものかと感心しますが,恐らく外観からするとあなたの同定が当っているように思えます」との御話で、先ずは胸を撫で下ろした。今日、此処に示した写真は一番最後を除いて雌(同一個体)で、「日本のイエバエ科」にある写真と較べて少し脚の黒い範囲が広いのが気になっていた。しかし、「本種の♀は♂に比べて脚の淡色部が一般に狭く,かつ個体変異がかなりあるようです。♂なら「日本のイエバエ科」の写真のようになり,もっと淡色部が広くて,その範囲はあまり個体変異が著しくないようです」とのこと。これで疑問が解消された。 また、先生はアシマダラハナレメイエバエ雄雌の標本写真を提示して下さった。先生の標本は交尾器で確認されている筈である。その標本写真と剛毛の配列などを比較した結果、完全に一致することを確認、この写真のハエをアシマダラハナレメイエバエとして問題ないであろう。 今回もまたすっかり三枝先生の御世話になってしまった。先生には、此処に記して御礼申し上げたい。上と同一個体.中脚基部の上にある3本の剛毛が逆2等辺三角形に配列しているのがハナレメイエバエの重要な特徴後脚脛節先端1/3に長い後背剛毛が見える(写真クリックで拡大表示)(2009/08/02) ところで、先生の御話に「写真だけで良く到達するものかと感心しますが」とあるが、これはお褒めの言葉ではない。「標本を顕微鏡で精査せずに、これらの写真だけで分かる筈がない、何処かで誤魔化したのであろう」と言うお叱りと理解すべきであろう。 実際、少し誤魔化した。イエバエ科か否かと言うところで、写真では位置的に良く見えない剛毛の有無が問題となるし、また、イエバエ科と酷似するハナバエ科との区別に使われるCuA+CuP(A1)脈が写真では殆ど見えないのである。此処は、実のところ、「感」でイエバエ科とした。 「日本のイエバエ科」に拠る検索でも誤魔化しをした。検索表のkey3で「後脚脛節の後背部先端1/3に剛毛がある」か否かが問題になるのだが、写真のハエにはこれがある。ところが、「有り」とするとイエバエ亜科やトゲアシイエバエ亜科へ行ってしまい、その先で行き詰まってしまう。一方、「無し」とすると、その後が上手く行き、その結果としてアシマダラハナレメイエバエに到達できた。 脚の剛毛は、その生えている位置により、前、前腹、腹、後腹、後、後背、背、前背の8通りの区別をする。写真ではこれらの見分けが難しく、時々間違える。しかし、「後脚脛節の先端1/3にある剛毛」はどう見ても後背位置にある様に見える。この点を先生に御伺いしたところ、これはやはり後背とのこと。まァ、これは誤魔化しではなく、検索表がキチンとしていないのが原因であった(これだから「日本のイエバエ科」は困るのである)。これも同一個体.額には交叉剛毛がある(写真クリックで拡大表示)(2009/08/02) このハナレメイエバエ亜科のハエ、翅の畳み方や翅脈相は衛生害虫として著名なイエバエと少し違うが、今まで拙Weblogで紹介してきたハエの中では、最もハエ的な外観を持つハエである。しかし、イエバエ科に属し、最もハエ的なハエでも、これは不潔なハエではない。何と、成虫も幼虫も捕食性の清潔な?ハエなのである。特に、最近日本でも発見された欧州原産のメスグロハナレメイエバエ(Coenosia attenuata)等は、飛ぶ虫を捕らえる天敵としての利用が考えられているらしい。 以前紹介したツヤホソバエの仲間(例えばインドツヤホソバエ)は、外見は綺麗だが、実際は糞食の汚いハエで衛生害虫とされている。「人は見かけによらぬもの」と言うが、ハエも見かけでは、容易にその清潔不潔を判断することは出来ない。今日撮った雄の個体.後腿節の暗色部分が雌より少ない捕食性のハエは一般に剛毛が発達する(写真クリックで拡大表示)(2009/08/18) 今回は、最初の方で書いた学名に命名者と命名年を入れて置いた。これでお分かりの様に、このアシマダラハナレメイエバエ(Coenosia variegata)は2003年と言うごく最近に篠永氏より新種として記載された種である(「日本のイエバエ科」がその新種の記載文献)。今日、此処に示した写真は、日付に示した通り、8月2日(雌)と今日18日(雄)に撮影しているが、この他にも同種の写真を7月の11(雄)日と17日(雄)に撮っている。何れも、同一個体とは思われない。何を言いたいのかと言うと、我が家の様な東京都内の住宅地でも極く当たり前の普通種なのにも拘わらず、2003年まで記載されていなかった(世界に知られていなかった)のである。 先日は、キバガ上科の未記載種を紹介したし、また、私の別のWeblogでは、既に未記載種を3種も紹介している。大都会の住宅地にも、まだまだ未記載の種が棲息していると言うことがお分かり頂けるであろうか。
2009.08.18
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以前から気に掛かっていたことがある。このWeblogを始めて間もない頃に掲載した「アシナガキンバエ」のことである。我が家の庭や近くの林でもよく見かける極く普通のハエ(本当はアブの仲間だが、此処ではハエとしておく)である。雌雄でかなり形が違うし、何分にも体長3mm程度の小さな虫なので肉眼では良く分からないのだが、何回も見ていると、段々複数種存在するのではないかと言う気がしてきた。Web上にある写真を見ても、是亦、何となく、違う種類が混じっている感がある。 其処で、その後買った北隆館の新訂原色昆虫大圖鑑第3巻に書かれているアシナガキンバエの解説を読んでみた。すると、「体長5~6mm。(中略)M1+2脈(翅脈については2番目の写真を参照)は分岐せず、(中略)中脛節の先端には5棘毛を、また、後脚第1付節には背棘毛を生ずる(後略)」と書かれている。随分違うではないか!! これまでWeb上で「アシナガキンバエ」とされてきたハエは下の写真とソックリだが、体長は1/2位だし、M1+2は前縁に大きく曲がるM1脈とM2脈に分離している様に見えるし、更に、中脛節端に5棘毛ある様には見えないし、また、後脚第1付節には棘毛らしきものは見当たらない。 そう思っていたところ、先日、幸いにもかなり高精度の「アシナガキンバエ」の写真が撮れた。そこで、思い切って双翅目の掲示板「一寸のハエにも五分の大和魂」に、本当にこれがアシナガキンバエ(Dolichopus nitidus Fallen, 1823)か否か御伺いを立ててみた。 その結果は、驚くべきものであった。”ニセ”アシナガキンバエ.体長は3.0mm弱、翅長は約3.0mm(写真クリックで拡大表示)(2009/07/04) 私の問い合わせには、九州大学名誉教授の三枝豊平先生が対応してくださった。先生はオドリバエ研究の第一人者で、同じオドリバエ上科に属すアシナガバエ科についても新種の記載などをされている。 先生の御話を纏めると、写真のハエは明らかにアシナガバエ亜科のアシナガキンバエではなく、これに類似した先生所蔵の標本からの御判断では、ホソアシナガバエ亜科(Sciapodinae:九大目録ではヒゲナガアシナガバエ亜科、ホソアシナガバエ亜科は北隆館の新訂大圖鑑にある名称で執筆者は三枝先生)のChrysosoma属の1種である可能性が高いとのこと[その後、研究が進み同亜科のウデゲヒメホソアシナガバエ:Amblyspilopus sp.1であることが判明した。追記参照のこと]。種が間違っているばかりでなく、亜科も違う「ハエ」だったのである。 因みに、よく知られているマダラホソアシナガバエ(マダラアシナガバエ:Condylostylus nebulosus、マダラホソアシナガバエの名称は三枝先生に由る改称)も、このホソアシナガバエ亜科に属す。上の写真に翅脈の名称を付けておいた.M2脈がカッコに入っているのはこれは正しいM2脈ではなく二次脈との先生の御話に拠る.これが正しいM2脈ならば曲がる方はM1+2脈ではなくM1脈としなければならない(写真クリックで拡大表示)(2009/07/04) 先生に拠れば、ホソアシナガバエ亜科に属すの多く種では、写真の”ニセ”アシナガキンバエの様に、M1+2脈が中室と翅端との中間付近で大きく前縁側に屈曲し、また、その屈曲点から真っ直ぐに翅端に伸びるM2脈(先生の御考えでは、これは本当のM2脈ではなく、屈曲部から生じた二次的な翅脈とのこと。これがM2脈なら曲がる方はM1としなければならない)が出ているそうである。これは、全く分類学的位置の異なるヤドリバエやニクバエの翅脈に近い形である(アシナガバエは双翅目短角亜目直縫群オドリバエ上科アシナガバエ科、ヤドリバエは双翅目短角亜目環縫群ヒツジバエ上科ヤドリバエ科なので亜目の次のレベルで異なっている。ヤドリバエの翅脈は此方をどうぞ)。クチナシの花上で何かを食べている”ニセ”アシナガキンバエアシナガバエ科の「ハエ」は基本的に捕食性である(写真クリックで拡大表示)(2009/07/04) 本物のアシナガキンバエの翅脈はどうなっているかと言うと、M1+2脈は写真のハエのM1+2脈が前縁に曲がっている位置で、ほぼ直角に前縁に向かって(左)折れ、その直後にまたほぼ直角に翅端の方(右)へ折れ、R4+5脈に平行して翅端に至る。その曲り方は「ジグザク」的であり、大きくない。また、”ニセ”アシナガキンバエの様に「M2脈」を生ずることはない(北隆館の新訂圖鑑にあるアシナガキンバエの写真は、旧版の写真をスキャンしたものと言われており(三枝先生の御話、解説も昔の儘)、元々写真が綺麗とは言い難い旧版よりも更に酷い写真になっているが、少なくとも大きく曲がったヤドリバエ的な翅脈は認められない)。 なお、アシナガキンバエの属すアシナガバエ亜科には、写真の”ニセ”アシナガキンバエの様にヤドリバエ的な翅脈相を持つ種は居ないとの御話であった。横やや上側から撮った”ニセ”アシナガキンバエ(写真クリックで拡大表示)(2009/07/04) 更に奇怪な事は、アシナガバエ科の研究もされ、十万のオーダーで標本を所蔵されていると思われる先生の御手元に、アシナガキンバエ(Dolichopus nitidus)の標本が一点も無いのだそうである。・・・と言うことは、本物のアシナガキンバエは相当な珍種? しかも、日本で始めてアシナガキンバエをDolichopus nitidusとした故素木得一教授の書かれた雄交尾器の側面図と、「Faune de France 35 Dolichopodidae[仏蘭西動物誌三十五:脚長蠅科](Parent 1938)」に載せられている図とでは、先生にはやや異なる様に見えるとのこと。どうも、アシナガキンバエが本当にDolichopus nitidusに相当するのかすらも、少し怪しい様である。 アシナガバエ科の昆虫は九州大学昆虫目録では41種、北隆館の新訂原色昆虫大圖鑑の解説(三枝先生執筆)には12属100種足らずしか記録されていないと書かれている。しかし、「日本産水生昆虫」のアシナガバエ科を執筆した桝永氏に拠れば「500種を越える種類が生息すると推測される」とのこと。要するに、アシナガバエ科は研究が圧倒的に不足している分類群なのである。正面から見た”ニセ”アシナガキンバエ(写真クリックで拡大表示)(2009/07/04) Web上にある「アシナガキンバエ」の画像を見てみた。すると、調べた範囲では、そのM1+2脈は全て写真の”ニセ”アシナガキンバエと同じ曲り方をしていた(翅脈の見えない様な写真は、ソモソモ問題外である)。 「"アシナガキンバエ"」でGoogle検索すると8,000以上もヒットする。本物のアシナガキンバエが珍品らしいことを加味すると、私の分も含めてその殆ど全部が、種ばかりでなく亜科のレベルで異なる「ニセアシナガキンバエ」についての記事であろう。亜科のレベルの間違いと言うのは、例えば蝶ならば、ナミアゲハとギフチョウを間違えるのに相当する。Web上の情報には誤りが屡々含まれているのは常識だが、これ程大規模且つ大きな誤りも一寸少ないのではないだろうか。 なお、Web上の「ニセアシナガキンバエ」は、此処に示した写真と同じ1種のみとは限らない。数種が「アシナガキンバエ」として掲載されている可能性がある。「ニセアシナガキンバエ」の正体は、今後アシナガバエ科の研究が進まない限り、キチンと解明されることはないのかも知れない。 謝辞:本稿は、一重に九州大学名誉教授の三枝豊平先生の御指導の賜である。先生には、私のクドイ、時に稚拙な質問にも一つひとつ丁寧にお答え下さり、どう御礼を申し上げたら良いか分からない程御世話になった。今、此処でキチンと正座して西の方(先生の御宅の方向)を向き、叩頭して御礼を申し上げる。「本当に有難う御座いました」。 追記:2010年秋に、田悟敏弘氏により、関東地方のアシナガバエに関する研究が、双翅目談話会の会誌「はなあぶ」に発表され、本種は、ホソアシナガバエ亜科(Sciapodinae)に属すウデゲヒメホソアシナガバエ(新称)Amblypsilopus sp.1であることが示された。それに伴い、表題、内容に多少の変更を加えた。詳しくは、こちらをどうぞ。
2009.08.16
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テントウムシの成虫は、ツヤツヤで小さく丸く、チョコチョコと走って愛らしいが、幼虫の方は一寸ゴツイ。拡大して見ると、映画に出てくる怪獣を連想させる。 その中でも、このアカホシテントウの幼虫は奇怪な姿をしており、しかも集団を作るので、不当にも時に「不快昆虫」とされてしまうことがある。 テントウムシの多くは、成虫も幼虫もアブラムシを餌とする。しかし、このアカホシテントウは駆除の容易なアブラムシなどではなく、もっと手強いカイガラムシを退治してくれる、強力な園芸家の味方なのである。ウメの木に群生するアカホシテントウの終齢幼虫(2007/04/26) 写真は、もう1ヶ月以上も前に撮ったもので恐縮だが、ウメの木に群生する終齢幼虫。「気持ち悪い」などと言ってはアカホシテントウに失礼に当たる。アカホシテントウの終齢幼虫と脱皮殻.白い穴の開いた殻はタマカタカイガラムシの幼虫で、総て食べられている(2007/04/26) 上の写真で沢山写っている白い殻は、タマカタカイガラムシの幼虫で、総てアカホシテントウの幼虫に穴を空けられ食べられている。どれだけ沢山のカイガラムシを退治してくれるか、お分かりになるであろう。 左上角に辛うじて写っている赤茶色の玉は、タマカタカイガラムシの成虫。アカホシテントウはこの固い成虫でも穴を空けて食べてしまう。随分と強力な口器を持っているらしい。 中央下に2つあるクシャクシャしたのは幼虫の脱皮殻である。アカホシテントウの終齢幼虫(2007/04/26) もう一部の気の弱い?読者諸氏も少しは見慣れたものと推測し、幼虫の拡大写真を示した。正しく「怪獣」である。 映画の怪獣物は見たことがないのでよくは知らないが、怪獣にも「悪い怪獣」と「良い怪獣」があるらしい。ナナホシテントウの幼虫は、定めし良い方の怪獣の代表であろう。
2007.06.04
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双翅目が続くが、今日は前回とは違って「汚い」アブを紹介する。アメリカミズアブ、堆肥を作っていれば、必ずと言っても良い程その周りを飛び交っているアブである。 私が子供の頃のゴミ処理と言えば、庭の裏の方に一辺1.5m位の穴を掘って其処に生ゴミを棄て、一杯になれば埋めてまた別の所に穴を掘ったものである。何しろその頃は、酢や醤油等の液体は、瓶を持って買いに行く量り売りだったし、肉屋で豚肉百匁(375g:6人でたったこれだけ、それでも肉があれば大御馳走)買っても包むのは経木であった。当時は、まだプラスティックと言うものが普及していなかったのである。だから、紙くずなどの燃える物は風呂を沸かすときの焚き付けとして使い、燃えない物や燃やし難い物はこのゴミ溜めに棄ててしまうと、もう残るゴミは殆ど無かった。 その穴を掘っただけのゴミ溜めに行くと、必ずいたのがこのアブである(尤も、スイカの皮を棄てておくと、カブトムシが来ることもあったが・・・)。アメリカミズアブ.戦後進駐軍と共に入って来た外来種コウカアブにやや似るが、脚の白いのが目立つし触角が長い体長は15mm前後(2007/08/25) 当時は、もう1種汚いアブがいた。コウカアブである。コウカとは後架と書き、雪隠、憚り、御不浄、厠のことである。このアブもゴミ溜めの辺りに何時も飛んでいた。 しかし、コウカアブの方は圖鑑に載ってたが、もう一方の今日掲載しているアブは載っていなかった。何故、こんな普通種が載っていないのか、随分不思議に思ったものである。生ゴミや厠に集る汚いアブだが、身繕いはチャンとする(2007/08/25) その圖鑑に載っていない理由が分かったのは、かなり後になってからのことである。この汚いアブ、アメリカミズアブと呼ばれているそうで、戦後になって進駐軍と共に米国からやって来た新参者の外来種なのであった。私が子供の頃使っていた圖鑑は、叔父が学生の頃に使っていた戦前の圖鑑である。朝鮮や台湾の昆虫は載っていたが、戦後に入って来た外来種が載っている筈がない。眼に青い模様がある.昨年後から撮った写真(2007/08/25) 子供の頃、このアメリカミズアブの標本は作らなかった様に思う。汚い虫には触りたくなかったのであろう。御蔭で、つい最近まで、このアブの眼に奇妙な紋様のあることを知らなかった。 最近、世の中が清潔になり過ぎて、この20~30年コウカアブを見たことがない。アメリカミズアブも随分減ったが、この辺りの住宅地でも時々は見かける。昨年の夏、久しぶりに我が家にやって来たので何枚か撮ったのだが、その時、眼に青い紋様のあることを初めて知った。しかし、アブの後ろ姿しか撮れなかった。眼の模様は、やはり前から撮りたい。前から撮れたらこのWeblogに掲載しようと思った。アメリカミズアブの顔.アブにしては触角が長い(2008/09/24) 漸く撮れたのは、昨日である。しかし、非常に敏感なヤツで、真っ正面からは遂に撮れなかった。仕方なく、斜め前からの写真で我慢することにした。 眼の部分拡大を下に示す。アブやハエには眼に紋や斑を持つものがかなり居る。一昨年に紹介したツマグロキンバエやオオハナアブの眼にも模様がある。しかし、これ程派手な色をした模様は他に知らない。 それにしても、眼にこんな模様があったら、見るのに邪魔にならないのだろうか。一体何の為に眼に模様があるのか、人間は大いに訝るが、そう言う風に進化したのには、それなりの理由があるに違いない。但し、その理由は、人間の浅知恵では到底図り知ることの出来ない奥深い世界に属すものと思われる。上の写真の拡大.個眼の配列は模様とは無関係(2008/09/24) このアメリカミズアブが我が家に来たのは、例の虫寄せバナナと関係があるらしい。但し、目当てはバナナの果肉ではない様である。ベランダの片隅に、一寸した庭木の剪定や除草をしたとき等に枝葉を入れておくバケツが置いてあり、其処にバナナの皮を棄てておいた。これが腐敗してアメリカミズアブを呼んだらしい。昔、ゴミ溜めに集っていたのと同じ理屈である。
2008.09.25
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昨年の9月に殻径1.8mmの「超極小カタツムリ」を紹介した。その時は知らなかったのだが、本年の第1回目に紹介したトクサオカチョウジガイの写真にも何個か写っている様に、この手の微小なカタツムリは植木鉢の下の土から極く普通に得られる様である。その土から得た貝の写真を撮って見たところ、昨年の「超微小カタツムリ」とかなりよく似ていた。其処で、その気になって調べてみると、どうやらこれらはコハクガイ科(Zonitidae)のヒメコハクガイ(Hawaiia minuscula)らしい。土の中から出て来たヒメコハクガイの貝殻.殻径1.5mmと小さい左上と右にボワーと写っているのはトクサオカチョウジガイ(写真クリックで拡大表示)(2010/01/08) 実は、保育社の「原色日本陸産貝類図鑑」には検索表が無いので諦めていたのだが、東海大学出版会の「日本産土壌生物」にカタツムリの検索表があるのを思いだした。その検索表を辿ると、マイマイ目(柄眼目)→殻口内に歯状突起などがない→殻はそれ程薄くはない(半透明で薄くて脆いことは無い)→殻口縁がうすくて単純(殻口縁が反曲しない)→低円錐形状で臍孔[裏側中心部の窪み]がある(蛹形や塔状ではない)→低層周縁が丸い(鋭い龍角はない)→殻表は平滑、光沢がある、白色~黄褐色(殻表に成長脈が無く褐色でない)、で簡単にコハクガイ科ヒメコハクガイ属に落ちてしまった。 しかし、同属の解説の方には、3種が記録されており移入種であると云うこと以外は大したことは書いていない。汚れを少し落として台紙の上で撮影.巻きほぼ4層で縫合(巻いた殻と殻の間)はやや深い明確な成長脈は認められない(ピクセル等倍、拡大不可)(2010/01/08) 保育社の図鑑にある記述はどうかと言うと、ヒメコハクガイ属にはヒメコハクガイしか載って居らず(他の種は珍種か?)、その解説を読むと「殻はうすく小さく、殻高1.3mm、殻径2.1mm、4層。白く、やや透明。螺塔は低く、螺層はふくれ、緩やかに増大する。体層の周縁は丸く、縫合はやや深い。殻口は丸い。広い臍孔がある。(中略)原産は、北アメリカのオハイオ州で、明治時代の中ごろに日本へ移入されて、現在では全国にひろく分布している」とある。 今日の写真の殻径は1.5mm、以前のは1.8mmだから、少し小さいが、小さ過ぎると言うことはない。殻の形状に関する記述も一致する。また、移入種で全国に広く分布しているならば、我が家の庭にいてもおかしくない。同一個体の裏側.貝殻はかなり薄いが半透明と云う程ではない臍孔(中心部の窪み)が非常に大きく内側の殻が見える(ピクセル等倍、拡大不可)(2010/01/08) Web上の情報を調べると、植木鉢の下には、ヒメコハクガイの他に同科別属の只のコハクガイも多いらしい。コハクガイの貝殻は名前の通り琥珀色をしているが、死後は白色化するのでヒメコハクガイと区別が難しくなるとのこと。しかし、大きさが違う。保育社の図鑑に拠れば、コハクガイの殻径5mmで、4層半とある。写真のカタツムリは既に4層(巻数)あるから、4層半に成長しても殻径5mmにはなり得ない。 また、関西大学の「微小貝のホームページ」を参照すると、写真のカタツムリはヒメコハクガイに大変よく似ており、他に類似のカタツムリは無かった(但し、コハクガイ科の種類数は多くなく、只のコハクガイも無かった)。 ・・・と云う訳で、この微小カタツムリは、些かいい加減ではあるが、ヒメコハクガイと考えることにする。螺塔は低く、殻口は丸い(ピクセル等倍、拡大不可)(2010/01/08) 先日、フキの葉裏で虫を探していたところ、別の微小なカタツムリを見付けた。殻径1.8mmとこれも小さいが、チャンと中身のある生きているカタツムリであった(近日中に掲載予定)。調べたところ別科の貝であったが、今日のヒメコハクガイも貝殻だけではなく、是非生きているところを撮りたいものである。生きているときに白っぽい色をしていれば、ヒメコハクガイであることが確実になる。
2010.02.04
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今日は、先日の「メンハナバチの1種」と同じく、撮影後約1年経って漸く種類が分かったハチを紹介する。 スミゾメハキリバチとムナカタハキリバチである。この2つの名称のハキリバチ、実は同一種の雌雄であることが分かり、現在では雄の方のムナカタハキリバチが標準和名とされているらしい。しかし、此処では種の特徴を良く表したスミゾメハキリバチの名称を先に置くことにした。ニワナナカマドに訪花したスミゾメハキリバチ恐ろしくせわしないハチで撮るのが大変体長は約15mm(2007/05/31) このスミゾメハキリバチ、名前の通り全身真っ黒なハキリバチである。昨年ニワナナカマドが開花したとき、連日の如くやって来て花粉集めに余念がなかった。いや、余念がないと言うよりも、花穂の中をバタバタと暴れ回っている感じで、こんなに落ち着きのないハチは今まで見たことがない。コマルハナバチなども留まることなく動き回って撮影のし難いハチだが、このスミゾメハキリバチと較べれば遙かに撮り易い。カメラの視野の中にハチを入れるのさえ難しく、視野の中にハチが見えたら即シャッターを切る、と言う感じで撮影したので、無駄写真を山ほど作ってしまった。横から見ると、腹部下面に花粉を多量に付けているハキリバチの花粉運搬は腹で行う(2007/05/31) ・・・と言う訳で、何時もなら掲載する筈の前から撮った写真や、極く近接で撮った写真がない。 しかし、このハチ、今年別の所でシッカリ撮ることが出来た。近くで撮ると、中々可愛い顔をしている。それらの写真は別のWeblogに載せてあるので、関心のある向きはこちらを参照され度。腹部に白帯がみえるが、黴でも生えているのか?(2007/05/31) 次は雄バチの方である。このハキリバチもスミゾメとほぼ同時期に撮ったのだが、種類が分からなくて殆ど迷宮入りになっていたのである。つい先日、ムナカタハキリバチ=スミゾメハキリバチの雄であることが判明した。 ハキリバチの種類の判別は難しい。しかし、このムナカタは触角の先端が平らに楔形になっており、また、前脚に長い毛を持っているとのこと。写真のハキリバチは正にその特徴を持っているので、ムナカタハキリバチとしたのである。ムナカタハキリバチ.スミゾメハキリバチの雄(2007/06/08) ハキリバチの雌は花粉を腹部下面の花粉運搬毛に付けて巣に運ぶ。雄は花粉を運ぶ必要がないから、その運搬毛を持たない。下の写真では腹部下面は見えないが、2番目の雌の写真を見ると腹部側面の上部まで花粉が付いているのに対し、このハキリバチの側面には何も付いていない。これは雄バチであることを示している。ムナカタハキリバチは前肢に長毛を持ち、触角の先端は楔状(2007/06/08) 最近は雨模様の日が続いており、虫も少なく、写真は殆ど撮っていない。ネタ切れにはなっている訳ではないが、昨年撮った写真を掲載するには良い機会だと思っている。
2008.07.09
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昨日、ブルーベリーの木の幹のごく下の方に、小さな黒いイモムシが居るのに気が付いた。鉢植えのブルーベリーで、その根元には北米原産のスミレが寄寓しており、ツマグロヒョウモンの若齢幼虫がつい最近まで居た。しかし、そのイモムシの背中はほぼ平滑だし、赤い斑点も無いから、ツマグロヒョウモンの幼虫ではない。良く見てみると、カブラハバチ類の幼虫の様である。セグロカブラハバチの幼虫.体長11mm弱(2007/12/28) マクロレンズで覗いてみると、体は真っ黒ではなく少し青みがかっており、体側に黒い斑紋がある。斑紋はハッキリしているのが11,不明瞭なのが胸部に2つある。どうやら、セグロカブラハバチの幼虫らしい。横から見ると、体側に13個の斑紋が認められる(2007/12/28) この幼虫、以前紹介した「クロムネハバチの近縁種の幼虫」と少し似ているが、横方向の皺があるだけで、イグアナの様な突起はない。 体を縮めているので体長は11mm弱、まだ若齢幼虫の様である。ハバチ類の越冬形態を調べてみると、多くは土中で繭を作り、その中で蛹にはならずに前蛹の状態で越冬するものが多いとのこと。しかし、幼虫で越冬する場合もあるらしい。このイモムシもこのまま冬を越すことになりそうである。一見眼の様に見えるのは胸部の斑紋で、一番下側のあごの様に見えるのが本当の頭部(2007/12/28) ハバチ類の幼虫は、鱗翅目(蝶や蛾)の幼虫とは異なり、比較的大きな単眼を1対持つ(鱗翅目では一般にごく小さい単眼を6対)。かなり「お目々パッチリ」なのだが、このイモムシ、頭を下に畳み込む様にしているので、眼は写っていない。正面から取った写真で眼のように見えるのは胸部の斑紋である。体の下から覗いているヒゲの様なのは、胸脚であろう。 アゲハ類(Papilio)の幼虫も胸部の斑紋が眼の様に見えるが、ハバチでも同じ様な真似をする芋虫が居ることになる。眼のような模様を持つと、気弱な捕食者がビックリするのだろうか?
2007.12.29
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昨日今日と、少し暖かい日が続いている。しかし、我が家の庭にはユスリカの類が時折飛んでいる程度で、撮る気の起こる虫は現れない。昨年の暮れに撮ったネタもあるが、これは英国の古本屋に注文した文献が届いてから掲載したい。・・・と云う訳で、今日は昨年の今頃撮った土壌生物を紹介することにする。 普通、土壌生物を採集するにはツルグレン装置と云うものを使用する。それなりの店に行けば完成品を売っている(通販でも買える)が、白熱電球のスタンド、篩、大きなロートとコップがあれば、自分でも作れる様な簡単な装置である。その内、徹底的にネタ不足になったら自作するかも知れないが、今のところは作るのも面倒なので、土壌生物を探す時には、シャーレに土を入れ、少しずつ掻き分けて調べる程度にしている。 そんな簡単な操作?でも色々と奇怪な虫が出て来る。今日、紹介するのはそうやって見つけたヤスデの幼体である。ヤケヤスデ(多分)の幼体.体長は約7mm胴節は18節ある様に見える(写真クリックで拡大表示)(2010/01/25) 体長は約7mm。この辺り(東京都世田谷区西部)に居るヤスデと云えば、ヤケヤスデ(Oxidus gracilis)位なもので、成体の体長は20mm程度だから、これはその幼体であろう。この幼体は色が極く薄いが、成体は背面が焦茶色乃至海老茶色で、腹面と肢はかなり淡い色をしている。危険を感じると丸まって防御態勢に入る。これは、フサヤスデ等の一部の目を除いたヤスデ類(倍脚綱)の特徴である。ヤケヤスデの幼体で間違いはないと思うが、確証は無いので、一応「?」を付けておくことにした。尚、似た様な種にアカヤスデと云う別属の種が居るが、これは成虫越冬なので、その幼体である可能性はない。 村上好央氏の「ヤケヤスデの生活史」(動物学雑誌 71(8), 1962)に拠れば、ヤケヤスデは秋に繁殖活動を行い、5~7齢の幼体で越冬し、翌年の初夏に成体になるとのこと。他に、春に繁殖行動をし、成虫で越冬する別の系統(strain)があるとしていたが、これは後に同著者により別種であることが明らかになった(村上好央(1966) ヤケヤスデの生活史についての訂正, 動物学雑誌 75(2))。少し横から撮った写真.第2~4胴節には各1対以降の胴節には各2対の歩肢がある(写真クリックで拡大表示)(2010/01/25) ヤスデの体は、頭部と胴部に分けることが出来る。写真の幼体の胴節数を数えると(胴部の第1節と最後の2節程度は、その間の部分とは少し形が異なる)、胴部は18節から成る様である(最初の写真)。 ヤケヤスデはオビヤスデ目ヤケヤスデ(Paradoxosomatidae)科に属し、「日本の有害節足動物」では、成体の胴節数は20とされている。渡辺力著「多足類読本」に拠ると、オビヤスデ目は完増節変態を行う。これは加齢(脱皮)と共に体節数が増加し、成体になると脱皮を止め、同時に体節数の増加も止まる変態形式である。丸まって防御態勢に入ったヤケヤスデ(多分)の幼体頭部を内側にして守っている(写真クリックでピクセル等倍)(2010/01/25) 写真の幼体の胴節数はまだ18なので、これは今後脱皮により節数が2つ増加すると云うことである。体長は約7mmで、まだ成体の1/3程度だが、「多足類読本」には、ヤケヤスデは7齢を経て成体となると書いてあるので、6齢位の幼体なのかも知れない。防御態勢を解除しつつあるヤケヤスデ(多分)の幼体頭部が内側になっているのが良く分かる歩肢には折れているものが多い(写真クリックでピクセル等倍)(2010/01/25) ヤスデは、一般に第2~4胴節には各1対、以降は最後の2節を除いて各胴節に2対ずつの歩肢を持つ(第1胴節に肢はない)。ヤスデは、この世で最も肢の多い生き物である。最大はカルフォルニア産のIllacme plenipesで、何と、750本もの肢を持つと云う。 一方、ムカデ類では、後部の胴節でも歩肢は各節に1対しか持たない。ムカデは漢字で「百足」と書く。しかし、ジムカデ目以外のムカデ類では、歩肢数は最大で46本、100本には遠く及ばない。100本に達する歩肢を持つのはジムカデ目のみで、最大は191対(382本)の種類があるそうである。しかし、何故か、歩肢対の数(=肢を持つ胴部の節数)は何れも奇数ばかりで、偶数の歩肢対数を持つ種類は知られていない。100本の肢、と云うことは歩肢対数は50で偶数であり、この様な歩肢対数を持つムカデは未だに知られていないのだそうである(以上、何れも「多足類読本」に拠る)。第1胴節は他の胴節と形が異り肢もない触角の先端2節は色が濃い(写真クリックでピクセル等倍)(2010/01/25) ある種のヤスデは時々大発生し、これが大群を成して線路を渡り、それを踏んだ汽車の動輪がヤスデの脂で空転して汽車が動かなくなる、と云う記事を新聞などで見ることがある。この種の騒動を引き起こすのは、普通、その名もキシャヤスデ(汽車馬陸)と云う種類なのだが、今日のヤケヤスデも汽車を止めることがあるらしい。「新島溪子(2001):ヤケヤスデ列車を止める,Edaphologia (68)」に拠れば、平成12年7月19日に大糸線平岩駅の近くでヤケヤスデが大発生し、臨時急行列車「リゾート白馬アルプス」は2時間半に亘る停車を余儀なくサルルノ已ムナキニ至レリ、とのことである。 ヤケヤスデなど、何処にでも居る「つまらない」ヤスデだと思っていたが、時には、中々やるモンですな!!
2011.02.05
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先日掲載したキチョウの蛹は、鳥に食べられることもなく、また、ヒメバチやヤドリバエに寄生されてもおらず、順調な経過を辿った。 蛹化直後の蛹を先ず示しておこう。これは、先日掲載した写真と同じものである。蛹化直後のキチョウの蛹.この日を蛹化1日目とする。緑色で透き通っている(2007/09/26 07:21) 蛹化直後は透明で緑色をしていた蛹は、次第に不透明になり、且つ、黄色を帯びてくる。蛹化後6日経った10月2日(7日目)の蛹が下の写真である。7日目の蛹.全体的に少し黄色になり、特に翅の部分で著しい(2007/10/02 13:24) その後は日一日と、黄色味が増してくる。以下、毎日撮った写真を示す。8日目(2007/10/03 14:01)9日目(2007/10/04 09:11) 蛹化後9日目になると、翅の部分と眼の辺りが、黄色と言って良い色になって来た。写真は無いが、透過光でみると、翅の部分では影を生じていた。10日目(2007/10/05 10:19)10日目を透過光で撮ったもの(2007/10/05 10:23) 10日目には色が益々濃くなり、翅の部分と眼は透過光では黒っぽく見えるようになった。羽化が近づいている様である。11日目(2007/10/06 07:06) 11日目の朝、蛹を見に行くと、蛹の殻を通して翅の黒い部分が明確に認められた。これまでの経験から、この翅の黒い部分が見えるようになった蛹は、半日以内に羽化する。タイマーをかけて、20分置きに見に行くことにした。 その後は特に変化は認められない様に見えた。しかし、肉眼では良く分からなかったが、上の写真とその約3時間後に撮った下の写真と較べてみると、腹部の白っぽくなった部分が増えている。白っぽくなるのは、蛹の殻と蝶の体の間に隙間が生じて空気が入った為であろう。上の写真の3時間後(2007/10/06 09:00) 背側から見てみると、もう腹部の模様がシッカリ見え、更に、隙間も出来ているらしく白っぽく見える。羽化は間近に迫った様である。少し背側から見てみた(2007/10/06 09:46) 上の写真を撮った後も何回か見に行ったのだが、肉眼的には何も変化が無い。一寸作業に没頭して、シマッタと思ったときには既に遅く、リッパに羽化して翅までチャンと伸びていた。羽化していたキチョウ(2007/10/06 11:11) 今回は不覚にも、蛹から蝶が飛び出すところを撮り逃がしてしまった。残念無念・・・。しかし、蛹から飛び出して翅が伸びる切るまでにどの位の時間がかかるのだろうか。どうも思っているよりもかなり短い様である。 ・・・と思っていたら次の日(10月7日:昨日)、幸にもその蛹から蝶が飛び出す瞬間を何とか捕らえることが出来た。当然写真の枚数が多くなるので、それはまた別の機会に譲ることにしよう。
2007.10.08
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毎年、秋になるとセイタカアワダチソウや「北米産原産シオンの1種(紫花)」にやって来る、やや小型のガガンボが居る。ガガンボという虫はややこしい双翅目の中でも特にややこしい連中で、撮っても種類が分かる可能性は殆ど無く、普段は撮影しないことにしている。 しかし、この写真のガガンボ、口吻がある種のシギ類(ダイシャクシギ等のNumenius属)の様な形をしており、かなり特徴的である。しかもこの辺り(東京都世田谷区西部)では極く普通な種と言える。ヒョッとして分かるのではないかと思い、写真を撮ってみた。体長は約8mm、翅長は約7mmである。「北米原産シオンの1種(紫花)」に来たヒメガガンボ科のGeranomyia gifuensis.和名はまだ無い右後肢が取れて無くなっている(写真クリックで拡大表示)(2010/11/02) ガガンボの様な、体が細く脚が異様に長い双翅目昆虫は色々な科に存在する。ガガンボ科の他に、近縁の科としてはシリブトガガンボ科、ヒメガガンボ科、オビヒメガガンボ科等があるが(これらを全てガガンボ科に含める研究者も居る)、一見非常に良く似ているにも拘わらず、それぞれ下目のレベルで異なる全く遠縁のガガンボダマシ科、コシボソガガンボ科、アミカ科等と云うグループもある。全く困った連中としか言い様がない。羽ばたきながら吸蜜することも多い.偶然に翅を拡げたところが撮れた吸蜜中も常に体を上下に揺すっている(写真クリックで拡大表示)(2010/11/02) これらの科の違いは、主に翅脈をみれば大体の見当が付く。しかし、1つの科の中でも翅脈にかなりの変化があるので注意が必要。写真のガガンボの翅脈(写真の解説を参照)を見ると、どうやらヒメガガンボ科の様である。 ヒメガガンボ科には、口吻が体長よりも長く、しかも真っ直ぐなクチナガガガンボと云う種がある。しかし、口吻の細部を見ると、これとはかなり違う。翅脈を拡大.前縁脈とR脈基幹の間にあるSc脈が無い様に見えるが他のぼけた写真を見ると、Sc脈は前縁脈とR脈の間に存在しており矢印Aの所で、Sc1とSc2(Sc-R)の2本に別れ直後にSc1は前縁脈に、Sc2はR1に終わっている矢印Bの所はどうなっているのか良く分からないヒメガガンボ科では、普通R1は前縁脈に合すがここではR2+3に繋がっている様に見える(写真クリックで拡大表示)(2010/11/02) 北隆館の新訂圖鑑の解説を読むと、口吻の長いヒメガガンボ科のグループは他にも幾つか存在する。しかし、図版を見ても殆ど何も分からない。お手上げである。 其処で、例によって双翅目の掲示板「一寸のハエにも五分の大和魂・改」のお世話になることと相成る。此処には、達磨大師様と云うガガンボの権威が居られるのである。横から見ると後肢の取れた跡が生々しい常に体を上下に揺すりながら吸蜜する(写真クリックで拡大表示)(2010/11/02) 達磨大師様は、一年程まえ白神山地の研究室に転勤され、研究棟の建設とか今かなりお忙しい筈なので、気長に御返事を待つつもりで居た。ところが、何と一時間も経たない内に御返答を賜った。 「交尾器の詳細がわからないので「絶対に」とはいえませんが、ヒメガガンボ科ヒメガガンボ亜科のGeranomyia gifuensis Alexander, 1921 に一票.本州で記録されているGeranomyia属既知種で翅に斑点模様がないのは本種のみです」との御答えであった。 北隆館の圖鑑に拠れば、このGeranomyia属に属すヒメガガンボは「口吻が鳥のクチバシ状に突出している」そうである。横から見たGeranomyia gifuensisの顔「宇宙人的」と表現する人もいる(写真クリックで拡大表示)(2010/11/02) 御話に拠れば「本州で記録されているGeranomyia属既知種で翅に斑点模様がないのは本種のみです」なのだから、殆ど決まったも同然の様な気がするが、大師様は「・・・に一票」としか書かれていない。 これは、ガガンボ類(ガガンボ科とその近縁科)の研究が圧倒的に不足している(研究者が少ない)ことに起因している思われる。「一寸のハエにも五分の大和魂・改」での情報に拠ると、ガガンボ科の代表的な属の一つであるTipula属では、日本で記録されている種は約100種だが、実際には400種以上が生息するとのこと。この様な事情はTipula属に限らず、ガガンボ類全体に通じると思われる。既知種よりも、未記載種や日本未記録種の方がずっと多いのである口吻は形や太さが部分により異なり、かなり複雑な構造をしている途中左側に飛び出しているのは小腮鬚と思われる(写真クリックで拡大表示)(2010/11/02) ヒメガガンボ科(Limoniidae)は九大目録ではヒメガガンボ亜科(Limoniinae)に入っているが(ガガンボ類の上位分類には議論が絶えない様である.近縁の科として上に挙げた数科を全てガガンボ科に含める研究者もおり、九大ではそれを採用している)、亜種も含めて488もの記録が出て来る。 また、Geranomyia属(九大目録ではLimonia属の亜属として扱われている)には、7種8亜種が記録されている。この属(亜属)がどの程度研究されているのかは分からないが、Tipula属と同じ程度とすれば、他に20種位は未記載種や日本未記録種が居る可能性がある。単純に、Geranomyia gifuensisと決めつける訳には行かないのである。オマケの1枚.右後肢が無いのが目立つ(写真クリックで拡大表示)(2010/11/02) ・・・と云う訳で、今日の虫はヒメガガンボ科(Limoniidae)ヒメガガンボ亜科(Limoniinae)の「Geranomyia gifuensis?」と、「?」を付けて置くことにした。尚、Geranomyiaを亜属とした場合の学名は、Limonia (Geranomyia) gifuensisとなる。
2010.11.15
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今日は、また「庭を漂う微小な羽虫」である。 一ヶ月程前のことになるが、ヒトスジシマカに膝小僧の辺りを刺されたので、ズボンをたくし上げてキンカンを塗っていたら、小さな羽虫が1匹その周りをフワフワと飛び回っていた。今まで見た羽虫とは何となく雰囲気が違うので、早速左手で掬い取った。 掌を少しだけ開いて見てみると、何かブユの様な虫、しかし、ブユ(ブヨ、ブト)よりも小さい。まだ、元気そうなので、逃げられない様にコールド・スプレーを吹きかけて、大人しくさせた。 気絶した(瀕死の)虫を紙の上に移して写真を撮る。コールド・スプレーのショックで産卵してしまった様である。死に際に産卵する現象は、ハエや蛾でも良く見られる。ヌカカ科の1種.恐らくForcipomyia(和名なし)属の1種コールド・スプレーのショックで産卵してしまったピクセル等倍(以下同じ)(2009/08/04) さて、この虫、何者か。一見、ブユの様だが体長は約1.7mm。ブユは普通2~4mm位で、もっと大きい。決定的な違いは触角の長さである。ブユの触角は短く頭幅以下。ブユに似てもっと小さく(多くは体長2mm以下)、触角が数珠状で長いのはヌカカである。 しかし、ヌカカと言うのは川筋や湿地に発生する虫だと思っていたので、こんな都会の住宅地でお目に掛かるとは一寸した驚きであった。翅脈が一番良く見える写真.翅は毛に覆われている様に見える触角は数珠状で、先端近くの節は基部寄りの節よりも長い(2009/08/04) ヌカカ科は九州大学日本産昆虫目録に拠ると224種、北隆館の圖鑑には20種が載っているが亜科や属への検索表はない。検索に拠らない単なる絵合わせは、特に双翅目の場合非常に危険なので、例によって双翅目のBBS「一寸のハエにも五分の大和魂」に御伺いを立ててみた。 やがてこのBBSの主催者であるハエ男氏から御回答を得た。「ヌカカの画像による同定は極めて厳しいです(たぶんヌカカ屋さんはここのBBSに出入りしてないと思います)」。やはり予想通りであった。 ヌカカやカ等の人吸血性昆虫を多く含むグループやその他の衛生昆虫の研究は、一般に昆虫学教室(農学部)ではなく感染症に関する研究組織(医学系)で行われている。例えば、2年ほど前に他界された感染症の大御所、東大医学部名誉教授(富山医科薬科大学名誉教授、富山国際大学名誉教授、その他色々)の故佐々学先生(私はこれまでにその謦咳に接したこともなければお教えを受けたこともないが、佐々先生の感染症に関する本を相当数読んで感銘を受けているし、また、極く親しい友人が東大で佐々先生の講義を受けたりしているので、常々僭越ながら先生とお呼びしている)は、カ科やユスリカ科の分類に関しても第一人者(先駆けと言うべきか)であった。 「一寸のハエにも五分の大和魂」に参加されている方々は昆虫学系や虫屋さんが殆どの様である。やはりヌカカは駄目かと思っていたところ、九大名誉教授の三枝豊平先生が助け船を出して下さった。腹側から見るとこんな感じ(2009/08/04) 先生の御話では、「写真のヌカカは恐らくForcipomyia[和名なし]属の1種でしょう」とのこと。吸血性でよく知られているCulicoides(和名なし)属などは、どちらかと言えば自然が豊かなところに生息するのが普通であるのに対し、Forcipomyia属は先生の仕事場のベランダに置いてある藻類や有機物の入った水槽などでもしばしば発生するそうである。また、「ヌカカの幼虫は淡水(止水,流水を問わず)や湿地のほかに,草や木の葉などが堆積して腐敗したような所でもチョウバエなどともに発生します」との御話。我が家の庭で発生しても別に不思議ではないと言える。 更に、写真のヌカカは北隆館の圖鑑に載っているモンヌカカ(Forcipomyia metatarsis)に一見似ているとの御指摘も受けた。モンヌカカは、体毛が密生し、翅全体がやや黒ずみ前縁中央に黄白色斑があることや、触角の大凡の形状、平均棍の大きさや色等では良く似ているのだが、圖鑑の記述では体長2.5~2.7mmとあるのに対し、写真のヌカカは1.7mmでその2/3しかない。双翅目昆虫の成虫の体長は、幼虫時の栄養摂取の違いでかなりの差が出るのが普通だが、やや差が大き過ぎる気もする。 また、九大目録で224種のに対し圖鑑では僅か20種、検索表で辿り着いたのではないので近縁の酷似種が居る可能性もある。其処で、此処では「一見モンヌカカ(Forcipomyia metatarsis)に似るが小さい」としておくことにする。全体的に毛深い.口器が良く見える(2009/08/04) ヌカカは漢字で糠蚊と書く。糠粒の様に小さい蚊と言う意味であろう。小さいので網戸を容易にくぐり抜け、これに刺されると、その時は何ともないが、かなり時間が経ってから酷い痒みと腫れを生じ、完治に1週間以上かかることも屡々ある。北海道開拓初期の記録を読むと、知床半島などでは、肌を出すと忽ちの内にビッシリとヌカカに被われ、まるで糠味噌を掻き回した後の手の様になったそうである。しかし、北方の吸血昆虫と言う訳ではなく、熱帯に産するものも多い。九大目録の224種の内、北海道に産するのは僅か20種である。 また、人や恒温動物に対して吸血性の種類ばかりでなく、カエルや昆虫の体液を吸ったりする種類も多く、更に、小昆虫を補食するもの、花蜜を摂るものなど、成虫の食物スペクトルは広い。ただし、これは蚊と同じで雌だけの習性だそうである。 ところで、Forcipomyia属は、九大目録に拠れば日本に61種も記録があり、また、その多くは非吸血性である。この写真のヌカカが人吸血性か否かは分からないが、この辺り(東京都世田谷区西部)でヌカカ的な痒みを感じたことはない(北海道に居た頃は野山で屡々刺された)ので、恐らく非吸血性であろう。写真のヌカカに一見似ているモンヌカカに関しては、北隆館の圖鑑ではその食性について何も触れていない。
2009.09.09
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今日はクサギカメムシの初齢幼虫を紹介する。赤と黒の派手な色彩の幼虫である。クサギカメムシの成虫と幼虫(終齢と若齢)は、一昨年に紹介した様に、全体的に黒っぽい地味な色合いである。この初齢幼虫も2齢になるとそれらと同じ黒っぽい色になる。クサギカメムシの初齢幼虫.孵化直後は無色(透明)と黄色で1時間後には無色、青、黒となり、その後赤と黒になる(2008/07/19) 多くのカメムシは、孵化後卵上やその近くに集団をなして留まり、数日を過ごす。この間、餌らしい餌は摂らず、やがて脱皮して2齢になる。 飯を食わないで何をしているかと言うと、見ていてもまるで動かないので良く分からないが、文献に拠れば、卵の表面に付着している「魔法の薬」を食べたり、葉っぱの上に溜まった水を飲んだりしているそうである。上の写真の部分拡大.殆ど真ん丸.体長約1.8mm(2008/07/19) 植物から師管液を吸汁して生きる虫は、自分独りでは生きて行けず、常にある種の細菌と共生する必要がある。師管液に含まれるアミノ酸は量が少なく、また、ヴィタミン類も不足している。更に、アミノ酸を含んでいるからと言っても、必須アミノ酸をバランス良く含んでいる訳ではない。師管液だけでは、栄養不良になってしまうのである。そこで、師管液に比較的多量に含まれている糖類を摂取して必須アミノ酸やヴィタミン類等を産生する細菌と共生する必要が出て来る。アブラムシの場合は、ブフネラと言う共生菌を発生のかなり早い時期に母胎内で供給され、それを体内に飼っている。次の日.卵殻の跨っている個体は居ない卵殻に付いている洋凧の様なものは卵殻破砕器これをどう使うのかは調べても分からなかった(2008/07/20) 先の「魔法の薬」とは、親が産卵時に肛門から排泄したもので、これに子供の必要とする共生菌が含まれているのである。カメムシはアブラムシの場合とは異なり、初齢幼虫の時に親の排泄物を食べて、その中に含まれている共生菌を腸の盲嚢に送り込む。 草食性のカメムシは、師管液よりはずっと栄養価の高い種子を主に吸汁する種類が多い。種子にはアミノ酸はかなり豊富に含まれているはずだが、ヴィタミン類は足らないのかも知れない。或いは、適当な種子の無い時期に師管液や果汁を吸汁して生き延びる為の用意なのだろうか。上の写真で右側に居る個体.昨日より少し伸長し体長約2.2mm(2008/07/20) このクサギカメムシが孵化する一月半ほど前には、ガラス戸に付いていた卵塊2個からチャバネアオカメムシが孵化してきた。我が家としては珍しいことである。今年はカメムシの流行り年かもしれない。
2008.07.31
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寒い!! 昨日の夜などは木枯らしが吹いていた。今朝の気温はほぼ零度。前回、「昨年3月の気温を調べてみると、何と、今年と大して変わらない」と書いたが、取り消す。気象庁の「過去の気象データ検索」で調べてみると、西暦2000年以降3月の下旬の最低気温が3℃を割った日は3日しかなく(その内の1日は昨日)、1.5℃を下回ったのは1回もない(気象庁の「東京」とは大手町のことなので、我が家付近よりも1℃以上暖かい)。 しかし、寒くとも陽が射すと流石は春、虫達が彼方此方を飛び回っている。今日、紹介するのはツヤヒラタアブ(Melanostoma orientale)の雌、2年前に「ツヤヒラタアブの1種」を紹介したので重複掲載になるかも知れないが、今回のはその個体とは少し雰囲気が違うし、写真も大きくしてあるので、敢えて掲載することにした(ネタ切れの為)。クリスマスローズの花に留まるツヤヒラタアブ(雌)(写真クリックで拡大表示)(2010/02/26) 2年前のツヤヒラタアブは体長5.5mm、今日のは8.3mm、かなり大きさが違う。大型なので、飛んでいるところを見ると、小さめのホソヒラタアブの様な感じがする。ツヤヒラタアブ類は、留まる時に必ず翅を畳む。ホソヒラタアブは普通は翅を開いて留まるが、気温の低い時には翅を閉じるので、少し遠くから見ると区別が付き難くなる。 今年はこの大きなツヤヒラタアブをまだ寒い頃から時々見ている。この辺りでは、冬や早春に見ることのない種類なので、或いは、同一個体なのかも知れない。こんな狭い庭に飽きもせず、冬の間ず~と居るとは考え難いのだが・・・。横やや上側から見たツヤヒラタアブの雌(写真クリックで拡大表示)(2010/02/26) 実は、今日の個体は以前、もう一つのWeblogで紹介した「ツヤヒラタアブの1種」と細部に至るまで同じである。此方の方は、以前、双翅目の掲示板「一寸のハエにも五分の大和魂」で見て頂いた。ハナアブに詳しいPakenya氏の御話では、「(ツヤヒラタアブ類は)関東地方の平野部には4種が普通に見られ、全種顔面は黒く、似通った黒地に黄色の斑紋を持ちますが、斑紋の形や大きさは相当な変異の幅があるようで、斑紋で区別することは危険なようです.確実には、腹部の腹板の形状を見る必要がありますが、全ての脚が暗色部を持っていないので、ご推察のM. orientaleツヤヒラタアブの♀と思われます」とのこと。今日のヒラタアブを、「ツヤヒラタアブの1種」ではなく、「ツヤヒラタアブ」と断定した所以である。ツヤヒラタアブの顔.触角下側の基部寄りは赤褐色(写真クリックで拡大表示)(2010/02/26) ツヤヒラタアブは、ハナアブ科(Syrphidae)ヒラタアブ亜科(Syrphinae)ツヤヒラタアブ族(Melanostomatini)に属す。ホソヒラタアブやキタヒメヒラタアブ等、黒と黄色の模様があるヒラタアブの多くは、ヒラタアブ族(Syrphini)所属である。この両族で、生態がどう異なるのか良く分からないが、ハナアブの研究者である市毛氏に拠ると、ツヤヒラタアブ族のヒラタアブはイネ科の花穂の花粉を好む様で、他のヒラタアブ類でイネ科の花穂に来るのはクロヒラタアブ類など数種しかいない、とのことである。成虫の食性は多少違いがあるらしい。 幼虫はどうか。多くのヒラタアブ類の幼虫はアブラムシやダニ等を補食する。このツヤヒラタアブの幼虫は何を食べるのか調べてみたら、Melanostoma属の幼虫が捕食するアブラムシの種類や補食速度に関する文献が見付かった。ツヤヒラタアブもやはりアブラムシを食べるらしい。略真横から見たツヤヒラタアブ(雌)(写真クリックで拡大表示)(2010/02/26) 上に書いた様に、ハナアブ科はラテン名ではSyrphidae、ヒラタアブ亜科のラテン名はSyrphinaeである。ラテン名の綴りは語幹が同じ(idaeは科を示す語尾、inaeは亜科の語尾)だが、和名の方はハナアブとヒラタアブで異なる。ラテン名の語幹はSyrphus(ヒラタアブ)属から来ており、オオフタホシヒラタアブやマガイヒラタアブ等がこれに属す。だから、Syrphinaeをヒラタアブ亜科とするのは良いが、Syrphidaeは本来ハナアブ科ではなくヒラタアブ科とすべきところである。しかし、名前としてはハナアブの方が一般的なのでハナアブ科としたのであろう。 また、ハナアブやヒラタアブは、何れも双翅目短角亜目環縫短角群に属す広義の「ハエ」であり、アブ類が属す直縫短角群ではない。それ故、保育社の原色日本昆虫図鑑では「ハナアブ」を「アブバエ」、「ヒラタアブ」を「ヒラタアブバエ」と置換えた新称を使用したが、日本語としては何とも落着きが悪く、結局普及しなかった。和名の付け方は難しい。手を擦るツヤヒラタアブの雌(写真クリックで拡大表示)(2010/02/26) 今日は、早朝は真冬並みの気温であったが、一点の雲もなく、春の陽射し照らされて次第に暖かくなって来た。明日はもっと暖かくなるらしい。徐々に花弁を開き始めていたサクラもこれで一気に満開になるに違いない。今週末辺りが見頃となりそうである。
2010.03.30
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先日、ニシキハギに現れた背筋型のヒメカメノコテントウを紹介したが、その2~3日前、終齢に達したテントウムシの幼虫が葉の中央近くに留まって居るのを見付けた。1頭ではなく、ニシキハギの彼方此方に居て、何れもジッとして動かない。 種類は分からないが、どうやら蛹になる準備をしているらしい。ヒメカメノコテントウの終齢幼虫(2007/07/13) 次の日に見に行くと前蛹になっており、更にその次の日にはチャンと蛹になっていた。ヒメカメノコテントウの蛹(2007/07/16) それから更に数日すると、基本型のヒメカメノコテントウがニシキハギの彼方此方で見られる様になった。他の種類のテントウムシは居ないし、ヒメカメノコテントウの数が増えるに順って空の蛹が多くなって行くことから、これらの幼虫と蛹はヒメカメノコテントウのものと判断して間違いないであろう。基本型のヒメカメノコテントウ.翅がチャンと畳まれていない(2007/07/19) この基本型のヒメカメノコテントウ、先日の背筋型の個体とは違って、精力的に?アブラムシを捕食していた。 テントウムシの食べ方は、クサカゲロウの幼虫の様に体液を吸うのではなく、ムシャムシャと丸ごと食べてしまう方式。アブラムシを捕食するヒメカメノコテントウ.ムシャムシャと食べる(2007/07/19) 考えてみると、先日のアブラムシを食べない背筋型の個体は雄で、走り回っては雌を探していたのかも知れない。・・・とすると、この食欲旺盛な個体の方は雌か?アブラムシを捕食するヒメカメノコテントウ.アブラムシの顔が見える(2007/07/19) テントウムシの数は次第に増えて、毎日雨の降っていた先週末には、全部で10頭近くになった。それが24日になって強い日差しを浴びた途端、1頭も居なくなってしまった。暑さに耐えられなくて何処かへ行ってしまったらしい。 アブラムシの方はどうかと言うと、先週は雨を避ける為なのか、固くて吸汁出来ないと思われる枝の太い所に移動していた。そこで多分断食を強いられ、且つ、テントウムシに補食されて、今では殆ど居なくなってしまった。 僅か数日で、ニシキハギの上の「昆虫相」が斯くも劇的に変わるものかと、些か驚いている。
2007.07.28
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先日、トベラの葉裏にスカシクロバ(マダラガ科に属す半透明の黒っぽい羽を持つ小さな蛾類、近日中に紹介予定)の様な、全長7mm位の虫がいたので早速写真を撮った。葉裏の虫というのは、中腰で上向き、等倍接写をするには最悪の位置である。撮影時には、専ら焦点を合わせるのに気を取られてしまうが、それでもスカシクロバ類にしては小さ過ぎるし、何となくおかしいと思った。そこで、直ぐにコムピュータに移して確かめてみた。 すると・・・、触角が数珠状で、その1つひとつから放射状い剛毛が数本出ている。こんな蛾は居ない。体付きも蛾ではない。胸部が非常に細長く、翅がその下端に付いている。謎の虫(2007/05/08) それでは一体何か??トビケラは触角が糸状だ。ハエの中には奇妙キテレツな連中が居るが、やはり体付きが違う。また、トビケラもハエも翅脈はかなり複雑で、この虫の様な極めて単純な翅脈を持つものは居ない。 何の目(分類体系の目:Order)に属する虫なのかが分からない。こんなアホな話あるか!! もうすっかり疑心暗鬼になってしまって、再度トビケラ類やガ類、双翅目を調べ直す始末。しかし、数珠状で剛毛の生えた触角を持つ虫は見当たらない。 八方塞がり、すっかり考え込んでしまった。上の写真の部分拡大.数珠状で各「数珠玉」から放射状に剛毛が出ている.剛毛をハッキリさせるためにアンシャープを強くかけてある(2007/05/08) 目が分からないと言うのが何とも情けない。しかし、2~3日経って、ヒョッとすると図鑑に目の検索表もあるのではないかと気付き開いてみると、簡単な素描による検索表があった。ざっと見てゆくと、半翅目同翅亜目(セミ、ヨコバイ、ウンカ、アブラムシ、カイガラムシ等)に似たような触角と頭部胸部を持つ虫の絵があるではないか。横にある楕円形の虫と一緒に描かれている・・・。カイガラムシ?・・・カイガラムシの成虫の雄か!!! カイガラムシの雌成虫は昆虫としては特異で、小さな饅頭みたいな形をしていて一般に木の表皮に固着して動かない。一方、雄成虫は普通の虫で羽もある、と言うことは知っている。しかし、どんな虫なのかは知らない、見たことがない。アブラムシの近縁なのだから、どうせナヨナヨした虫だろうと漠然と思っていただけで、全く想像が付かない。頭の中が真っ白。 早速、Internetで「カイガラムシ 成虫 雄」をキーワードにして調べてみると・・・、いた!! 上の写真ソックリなのが、余り鮮鋭ではないが、幾つかのサイトに掲載されていて、オオワラジカイガラムシの雄成虫とある。 オオワラジカイガラムシなら我が家のアラカシやクリにも結構付いているから、その雄成虫が居て些かもおかしくない、と言うか、居る方が当然と言える。近縁種についての情報は無いが、オオワラジカイガラムシの雄成虫として良いだろう(図鑑の記載によると「触角は10節」とある。写真の数珠玉1個が1節ならば遙かに多く一致しない)。オオワラジカイガラムシの雌成虫.名前の通り草鞋にソックリ.上に触角、左側に脚が1本見える(2007/05/11) それならば、雌成虫の写真もあった方が良いに決まっている、と言うことで、早速クリの木を見に行く。丁度撮り易い位置に1匹居たので、直ちに御披露目の写真を撮った。しかし、余り御披露目に値するほど見映えのする虫ではありませんな。 この虫、カイガラムシの雌成虫のくせに、リッパな脚があってチョコチョコ歩き回る変なカイガラムシである(コナカイガラムシ科やワタフキカイガラムシ科の雌成虫は一般に歩行が得意らしい)。体長9mm程度、雄よりも大きい。 広い生物界には雄雌で大きく形態の異なる生き物が色々居るが、これ位違うのも一寸珍しい。しかし、雌の方は幼体の形態が殆ど変化せずに成熟すると考えれば、大して奇妙ではない。
2007.05.13
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今日は2ヶ月近く前に撮った「ハエ」の写真を出すことにしよう。画像倉庫の中には、この7月~8月に撮った双翅目(ハエ、虻、蚊)でまだ掲載していないのがかなり残っているのである。 雨模様の陰鬱な日の夕方6時頃であった。既に暗くなった中庭にある置いてある鉢植えのモッコクの葉と葉の間に中位の大きさの「ハエ」が居た。位置的に非常に撮り難く、何枚か撮ったのだが、真横からも正面からも撮れない内に逃げられてしまった。アシナガバエ科シロガネアシナガバエ属(Argyra)かその近縁属の1種(雌).眼に短毛が密生している一見ハエだが、実際はアブの1種(写真クリックで拡大表示)(2009/07/09) 真横からの写真は無いし、背側からでは翅が腹部を隠しているので、正確な体長は分からないが、翅端まで5.5mm、翅長約3.5mm、最近掲載している双翅目昆虫としては大きめと言える。 背側から見ると、眼に細かい毛が密生しているのが分かる。全身の姿は特に変わってはいないが、顔は何とも言い難い奇妙な顔(3番目の写真)!! 一体何バエか? これがどうにも分からなかった。検索表で調べても行き詰まってしまい、該当する科が無いのである。他の検索表を調べたり、画像を探したりしたのだが、納得の行く結果は得られなかった。其処で仕方なく、恥を忍んで何科に属すのか「一寸のハエにも五分の大和魂」に御伺いを立てることと相成った。横やや上側から見たArgyra属かその近縁属の1種胸背には金属光沢があり、胸側は真っ白(写真クリックで拡大表示)(2009/07/09) 早速、九州大学名誉教授の三枝豊平先生が対応して下さった。何と、先生の御回答は「アシナガバエ科のArgyra属かその近縁属のメスです」!!! 分からない筈である。ハエの仲間ではなく、アブの仲間だったのだ。以前紹介した「”ニセ”アシナガキンバエ」と同じ科である。アシナガバエ科はアブ類と同じ直縫群に属し、ハエは環縫群に属す。アシナガバエは、名前はハエでもアブの仲間なのである。斜め前から見ると、何とも変な顔をしているのが分かる口器の中程にある左右に分かれた部分は小腮鬚の変形(写真クリックで拡大表示)(2009/07/09) 環縫群(ハエ)だと思って検索表を引いていたのだから、行き着く先が無いのは当たり前である。やはり、検索表で行き詰まったら、前提を疑うべきであった。 アブ類の翅脈は、基本的にハエ類の翅脈とは異なる。しかし、このアシナガバエ科の「ハエ」は、写真では良く見えない翅の基部に近い所では大いに異なるのだが、それ以外の(写真で良く見える)部分ではハエ類とよく似た翅脈をしているものが多い。 しかし、直縫群なので囲蛹を割る為の額嚢が無く、従って環縫群の額にある額嚢線がない(下図参照)。正面からの写真が無いせいもあり、これには全く気が付かなかった。また、先生の御話では、口器の中程にある平板状の構造は小腮鬚の変形とのこと。やはり、変な顔をしているのは、アブの仲間であったから、と言うべきであろう。チビクチナガハリバエの1種 (Siphona paludosa)の頭部羽化時に額嚢線に沿って額が割れ、中から大きな袋状の額嚢が出て来るその圧力により囲蛹はその輪に沿って割れ、成虫は表に出られる羽化後、額嚢は萎んで中に収まり、額は閉じられる尚、このヤドリバエの同定は三枝先生による(写真クリックで拡大表示)(2008/09/28) 九州大学の日本産昆虫目録やそれよりも新しい「みんなで作る双翅目図鑑」の目録には、Argyra属(シロガネアシナガバエ属)は僅か2種しか登録されて居らず、またその亜科(Diaphorinae:和名なし)にはこのArgyra属以外の属はない。三枝先生は「Argyra属かその近縁属」とされているが、日本には同亜科に属す近縁属は記録されていないのである。しかし、「”ニセ”アシナガキンバエ」のところで書いた様に、アシナガバエ科は現在記載されている種類の5倍位が棲息すると推定されている非常に研究の遅れた科である。まだ、記録されていない属があっても些かも不思議ではない。胸側には剛毛が見られない.腹部の大部分には金属光沢がある(写真クリックで拡大表示)(2009/07/09) 北隆館の圖鑑にはシロガネアシナガバエ属(Argyra)についての記載がある。三枝先生が執筆されたものである。その儘転記すると、「前額と額面は広い;触角柄節には刺毛を生じ、梗節は第3節の内側に延びる;第3節は三角形ないし長三角形;触角刺毛は第3節亜背部から生じる。口器や小顎鬚は小型。背中剛毛は5~6本、中剛毛は1~2列、小楯板剛毛は2対。翅は腎葉がよく発達する;前縁脈はM1+2脈に達する;M1+2脈は中央部でS字型に弱く湾曲する」(メンドーなので解説は省略)。大体の特徴は写真と一致するが、触角の細微な構造については倍率不足で判断できないし、また、小楯板剛毛は1対しか無い様に見える。先生が「Argyra属かその近縁属」とされた所以であろう。
2009.09.04
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今日はコナラの葉裏の話ではなく、コナラの梢に居た虫の話である。 コナラ木の下の方には、先日のムーアシロホシテントウやダンダラテントウが居るが、面白いことに、梢の方に居るのはナミテントウだけである。テントウムシによって、好みの餌が違うのかも知れない。 ナミテントウは鞘翅の斑紋の変異が大きい。基本的に二紋型、四紋型、斑型、紅型の4型があり、更にその個々の型の中にも大きな変異がある。今日のテントウムシ君は4紋型である。コナラの梢に居たナミテントウの4紋型.これは歩き回っているところを撮ったもの.右前肢、左中肢、右後肢が宙に浮いている.テントウムシは一体どんな歩き方をするのだろう?(2007/11/11) ナミテントウは、恐らく我が家に棲息する甲虫の中では一番個体数が多い虫だと思う。春から秋にかけて、庭の何処ででも幼虫を見ることが出来た。余り名誉な話ではないが、餌になるアブラムシやハダニなどが余程多いのであろう。歩き回るナミテントウ(2007/11/11) テントウムシは、チョコチョコと歩き回って肉眼で見ていても可愛い。しかし、マクロレンズで拡大すると、それとは別に中々愛らしい顔をしているのが分かる。 しかし、写真を撮る方にとっては少々厄介な相手である。細い枝などを彼方此方歩き回られたのでは、枝や葉の陰になったりして撮影の機会が中々やって来ない。仮に、機会が到来しても、今度は焦点を合わせる暇がない。 ジッとしている時はどうかと言うと、大きさの割りに厚さがあるので、等倍撮影をする時はF22以上に絞り込まないと被写界深度からはみ出す。しかし、絞り過ぎると今度は解像力が悪くなる。 背面から撮る場合、背中に焦点を合わせても、頭に合わせても、テントウムシ全体は深度内に入らない。その中間のテントウムシの背中が少しぼけて見えるところでシャッターを切らなくてはならない。これは、結構難しく、未だに最低3~4枚は撮らないとチャンと深度内に収まった写真が1枚もないと言うことと相成る。テントウムシ君の顔(2007/11/11) そんな文句を言いながらも、テントウムシが居れば写真を撮りたくなる。やはり、可愛いのである。 実を言うと、これまでにテントウムシの写真を色々と撮り溜めてある。「昆虫-テントウムシ」と言うカテゴリーを「昆虫-甲虫」の他に作ってあるのもその為である。 本格的な冬が到来して、新しいネタが得られなくなったら、少しずつ出すつもりでいる。
2007.11.24
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最近は大型のヒメバチ(寄生蜂)を見ることが無くなった。昔は、クロハラヒメバチやアゲハヒメバチなどを屡々見かけたものだが、親の家を引き継いで5年、これらのヒメバチは一度も見たことがない。勿論、ヒメバチ自体は沢山いる。しかし、何れも体長1cm以下の小型のものばかりで、メイガやヤガなどの幼虫に寄生する種類であろう。 そう思っていたら、先日かなり大きなヒメバチがやってきた。体長2cm位、体が基本的に黒く触角に白色の部分を持つよくあるタイプのヒメバチである。しかし、小盾板、各脛節の半分と腹端2節の上部は黄色い。 この手のヒメバチは、アブや蝶とは異なり、一ヶ所に留まることがない。常に触角を小刻みに振るわせながら、葉上を移動する。数コマ撮ったところで、何処かへ飛んでいってしまった。ヒメバチの1種.体長2cm位でかなり大きい(2007/04/10) かなり特徴的な模様なので、種類が分かるかと思ったが、やはり、ヒメバチはダメ、お手上げである。シロスジヒメバチに一寸似ているが、斑紋の位置や色が違う。ヒメバチの1種.白と黄色の斑が美しい(2007/04/10) 実は、高校生の頃えらくヒメバチに凝ったことがある。しかし、種類が殆ど分からないので止めてしまった。その後、詳細な昆虫図鑑が沢山出たものの、ハチの図鑑は全く出ていない。基本的に種類が多過ぎるし、更に未記載種がゴマンとあり、分類も不確定の部分が多いのだろう。 今後何十年か経っても、専門家は別として、殆どのヒメバチは「ヒメバチの1種」としか書けないに違いない。
2007.05.03
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前回、涼しくなってから庭に現れた虫を羅列した中に「カスミカメムシの1種」が入っていたが、今日はそのカスミカメを紹介する。オオクロセダカカスミカメ、体長約4.0mm強の小さなカメムシである。オオクロセダカカスミカメ.体長4mm強ヒメセダカカスミカメと似るが、ヒメセダカの小楯板の先端は淡色(2008/08/22) カスミカメムシと言っても、余り馴染みがないのではないかと思われる。しかし、カスミカメムシ類はそれだけで1科を成しているばかりでなく、日本産カメムシ約700余種の半数以上を占める大家族なのである。ただ、種類は多くても、殆どは体長5mm以下で、一般の眼に触れる機会は少ない。このオオクロセダカカスミカメも、肉眼で一見したところでは、毛虫の糞としか思えない様な外見である。オオクロセダカカスミカメの中後脛節は黄褐色の部分が多いヒメセダカにも黄褐色の部分があるがずっと狭い(2008/08/22) しかし、寸詰まりの「毛虫の糞」の様なカスミカメは比較的少数で、体形としてはこの辺りにも多い(但し、我が家で見たことはない)ウスモンミドリカスミカメや、昨年紹介したヨモギヒョウタンカスミカメの様な形が一番多く、中には、イネの大害虫として有名なイネホソミドリカスミカメ(アカヒゲホソミドリカスミカメ)の様に細長い種類も居る。ツユクサの茎を歩くオオクロセダカカスミカメ時々口吻を刺したりしていた(2008/08/22) カスミカメムシには、型こそ小さいが、斑点米を生じさせたりする「悪い虫」がかなり居る。其処で、このオオクロセダカカスミカメはどうかと思い、「"オオクロセダカカスミカメ" (防除|駆除)」で検索してみたが、有意なヒットは一つも無かった。 初めに見付けたときはクリスマスローズの葉上に居た。しかし、その後の行動を見ると、目当てはその直ぐ横に生えているツユクサの様である。こんなものの汁を吸って栄養になるのかと些か心配になるが、調べてみると、専らツユクサに寄生する種類の様である。害虫扱いされていないのも当然であった。カスミカメムシはかつてはメクラカメムシと呼ばれ単眼を持たない(この写真では倍率が不足か?)単眼が無いのをもっとよく見たい方はこちら(2008/08/22) 実を言うと、初めに見たときはオオクロセダカカスミカメではなくヒメセダカカスミカメだと思った。と言うのは、外見がよく似ているだけでなく、1ヶ月程前に、町の少し奥の方にある草原にヒメセダカが沢山居るのを見付けたからである。 危うくまた誤認するところであったが、「日本原色カメムシ図鑑(第1巻)」に載っているヒメセダカカスミカメの写真は、実はオオクロセダカカスミカメの誤りである。第2巻に訂正が出ている。専門家でも間違えるのだから、素人が間違えそうになるのも致し方ないと言える。オマケにもう1枚.ツユクサの葉上で(2008/08/22) カスミカメ君、せっかく涼しくなって活動を始めたのに、このところ毎日冷たい雨でまた姿が見えない。天気が回復すればまた出て来ると思うが、その直ぐ横に居たシマバエ科の未記載種やその他の綺麗なハエ達も一緒に姿を現して欲しいものである(そりゃ~無理と言うもんだ)。
2008.08.25
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昨年、7月中旬までは順調に生長していたシソが、盛夏になったら葉が次第に薄くペラペラになり、最後は恰もハトロン紙の様になってしまった。今年も同じである。 これは屹度ハダニのせいに違いない、と思って葉裏を見てみたが、全く生気のない葉で、生き物が居る気配はまるでない。マクロレンズで覗いてみても、粉のようなものがあるだけ。 しかし、今年は暑さが酷いせいか、段々シソの葉が縮んできた。すると、葉の下に繊細な網状のものが現れて来たではないか。ハダニの多くは糸を紡ぐ。これはやはりハダニに違いない。縮んだシソの葉とハダニの網.微小なハダニが写っている(矢印)(2007/08/25) 其処で、もう一度葉を取って来て、マクロレンズでよ~く見てみた。葉の表面には何もいないが、葉から少し離れたところに蜘蛛の巣の様なものが浮いていて、その上にハダニが沢山居るのが認められた。以前は、葉の上しか見なかったので、気が付かなかったらしい。網の上を歩くハダニの1種.上側のやや透き通っているのは若虫であろう.ピクセル等倍(2007/08/25) 体長0.3~0.4mm。以前紹介したカタバミハダニや其処に一緒にいた種不明のハダニよりも小さい。これくらい小さいと、マクロレンズで覗いていても、気を付けないと見落とす。 「日本原色植物ダニ図鑑」によると、シソには2種のホコリダニの他、アシノワハダニ、カンザワハダニ、ナミハダニが付くそうである。シソという植物は、昆虫にもハダニにも好かれる存在らしい。脚の細いハダニ.アシノワハダニに似ているが定かでない.ピクセル等倍(2007/08/25) 今回もまたピクセル等倍の見苦しい写真で恐縮である。2枚目と3枚目の写真はアシノワハダニ、次のはナミハダニかカンザワハダニ、最後の左はナミハダニ、右はアシノワハダニの若虫の様に見えるが、何分にもハダニは超初心者なので、「種類は不明」としておく。これらのハダニは本来体長0.4~0.6mmなので、写真のハダニ類は少し小さ過ぎる気もする。脚のやや太いハダニ.カンザワハダニかナミハダニの様に見えるがこれも定かでない.ピクセル等倍(2007/08/25) 我が家では数箇所にシソが生えている。その内、日当たりの良いところほどハダニの被害が酷く、朝日しか当たらない所に生えているシソだけがハダニに侵されていない。やはり、教科書通り、ハダニは乾燥した所が好きらしい。左はナミハダニ、右はアシノワハダニの若虫の様に見えるが定かでない.ピクセル等倍(2007/08/25) シソの葉裏にこれだけハダニが沢山居ても、老眼の眼には全く何も映らない。ハダニを食べても特に感染症に罹ったりする可能性はないと思うが、シソは生食するので、ハダニも一緒に生で食べているのかと思うと何となく気分が宜しくない。 庭のシソを食べるときには、ルーペかマクロレンズでよ~く覗いてからにした方が無難の様である。
2007.08.27
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木曜日の夕方に旅行から帰った。しかし、その後の天気は不順で虫は殆ど来ない。それまでに撮った写真も丁度使い果たしていたので、ネタ切れになっていた。 今日になって漸く良い天気となり、虫どももやって来たが、何れも掲載済みの種類ばかり。そこで、以前から居間の入り口の傍で巣を造っているクモを取り上げることにした。 体長5mm強の小さなクモである。名前は知らないが、コガネグモ科に属すことは明らかである。ギンメッキゴミグモ.体長5mm強.羽虫を食べているところ(2007/11/04) 調べてみると、ギンメッキゴミグモ(銀メッキ塵蜘蛛)と言う何とも奇妙な名前のクモであった。確かに腹部が銀色をしている。他の部分は、飴色をしている所が少しあるが、大部分は真っ黒。 こう言う手合いは撮り難い。ストロボを使うと、腹部の明るいところは直ぐに白飛びしてしまうし、黒い部分は背景と区別が付かなくなる。 そこで、灰色の厚紙を左手でクモの後にかざし、右手でカメラを持って撮影した。だから、今日の写真の背景は総て灰色である。網にかかった虫に向かうギンメッキゴミグモ(2007/11/04) 丸い巣(円網)を張るクモは、普通頭を下にして巣の中心に陣取る。しかし、このギンメッキゴミグモやその近縁種は頭を上にする。これは、種類を識別する際の手立ての一つになる。 最初写真を撮ったときは、丁度アブラムシの有翅虫の様なものを食べているところであった。其処へ以前紹介したミドリグンバイウンカが網に引っ掛かった。慌てふためいて出動するのかと思ったら、意外にも、ゆるりとお出ましになった。横で何やら怪しげな光をピカピカさせている不審者(私)が居たせいかも知れない。ミドリグンバイウンカを襲うギンメッキゴミグモ.腹部の裏側は螺鈿(らでん)細工の如し(2007/11/04) 普通は獲物を糸でぐるぐる巻きにするはずだが、この時は何故かしなかった。しかし、写真を見ると、腹部から糸を何本も獲物の方に出しているのが見える。下にその部分拡大を示した。上の写真の部分拡大.腹から糸が何本も出ているのが見える(2007/11/04) 毒液を注入されたらしく、ウンカは直ぐに動かなくなった。するとクモさん、ウンカを其処に置いたまま、また巣の真ん中に戻り、それまで食べていた羽虫に再び取り付いて、御食事を継続。ウンカに口を当てている.毒液を注射しているのかも知れない(2007/11/04) ウンカは食べないのか、とも思ったが、暫くして見に行くと、今度はウンカを巣の中央の運んで食べていた。「ウンカを捕まえた」と言うことを、クモはチャンと憶えていた訳である。
2007.11.04
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先日、我が家で育った可能性の高いサトクダマキモドキの雄を紹介した。そのずっと前、今年の晩春にサトクダマキモドキの初齢幼虫を掲載したが、幼虫のその後は未掲載の儘であった。勿論、写真は撮ってあるのだが、7月の上旬に姿を見せなくなってから、また何時か現れるだろうと思っている間に、掲載の機会を失ってしまったのである。しかし、それらの幼虫の中の1頭が、先日のサトクダマキモドキに成長したのであれば、その間の写真も紹介すべきであろう。 と言う訳で、今日は今年の春から初夏にかけて撮ったサトクダマキモドキの幼虫のその後を掲載することにした。なお、写真が多いので、2回に分けることにする。雨に濡れるサトクダマキモドキの初齢幼虫(2008/05/30) まず最初は、比較の為に初齢幼虫の写真を掲げておく。体側に沿って黒い筋があるのが初齢幼虫の特徴である。写真としては完全な前ピンで、本来は没にすべきものだが、一応手前の眼は辛うじて被写界深度に入っているし、触角と前肢に付いた水滴が印象的なので出すことにした。まだ、如何にも子供、と言う顔をしている。2齢になって間もないサトクダマキモドキの幼虫(2008/06/04) 次は、2齢になったばかりの幼虫で、ニワナナカマドの葉上に居た5~6頭の内の1頭である。体側にあった黒い筋は、第2腹節側面の少し大きな黒斑と、第1腹節、胸部の淡い斑紋だけになっている。触角の掃除をするサトクダマキモドキの2齢幼虫(2008/06/14) 10日経って撮ったのが上の写真。その前の写真と同じ個体か否かは不明だが、シッカリ御飯を食べたらしく腹部が大きく膨らんでいる。丁度、身繕いをしているところで、触角の掃除中である。成長したサトクダマキモドキの2齢幼虫初齢と較べると少し貫禄が付いてきた(2008/06/14) 2齢幼虫をもう少し大きく撮ると上の写真の如し。初齢幼虫と較べると、少し貫禄が付いてきたと言える。 初齢幼虫は灌木のテッペン近くの葉の上で何時もジッとしており、何かを待っている様な感じであった。これはハラビロカマキリの幼虫と全く同じで、捕食者を思わせる行動である。それは2齢になっても同じであった。 2齢幼虫の行動と、3齢と思われる幼虫は、また、次の機会に紹介することにしよう。
2008.10.07
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以前カタバミコナジラミの写真を撮っていたとき、其処に2種類の微小なダニが居るのが認められた。今日はその内の1種、カタバミハダニを取り上げよう。 どうも、ハダニと言うのは、名前はよく知られているにも拘わらず、現実的には、農業や園芸関係者を除いては、余り関心の及ばない生き物である。第一に小さ過ぎる。殆どは体長0.5mm以下、肉眼では何だか判別できない大きさである。しかも普通は葉裏に居るから、尚更目に付くことはない。カタバミハダニ.第1脚が特に長い.体長0.5mm、大きいので雌であろう.白くて丸いのはカタバミコナジラミの幼虫.ピクセル等倍(2007/07/30) そんな訳で、ハダニ類については殆ど何も知らなかったのだが、今回初めて興味を持って調べてみた。 ハダニ類は悪名高いし、微小な生き物で移動性に欠けるから、屹度ゴマンと種類が居るのだろうと思っていた。しかし、意外にも、ハダニ科は世界でたったの1000種、日本には約70種しか居ないとのこと。随分小さなグループである。まァ、ダニ類自体が、余り成功した生き物ではない様ではあるが・・・。 70種しか居ないのだから同定は簡単か、と言うと、やはり小さ過ぎて顕微鏡がないと一寸難しい。しかし、このカタバミハダニは非常に脚が長いので容易に他種と区別が付く。しかも、カタバミ以外には基本的に付かないと言うから、まず、間違いない。上と同じ個体.ピクセル等倍(2007/07/30) 長い肢をタカアシガニの様?にして、思いの外早く移動する。マクロレンズで覗いていると、結構可愛い!! 因みに、ハダニ類は幼虫、第1若虫、第2若虫、成虫の順で生長する。幼虫には3対6本の脚しかないので識別は簡単だが、第1若虫以降は顕微鏡がないと、一寸判別できない。中央やや左下がカタバミハダニ.体長0.26~8mm、雄にしては小さ過ぎるので若虫かも知れない.上に見える大きなハダニは別種右下の赤い玉は卵.ピクセル等倍(2007/07/30) 上の写真には、もう1種、別のハダニが写っている。右下の赤い玉は、カタバミハダニの卵と思われる。ルビー色で中々美しい。 今回もピクセル等倍なので、御世辞にも綺麗な写真とは言い難い。しかし、一眼レフ+等倍マクロではこれが限界の様である。
2007.08.20
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先日、「ルリタテハの卵と初齢幼虫」、「ルリタテハの幼虫(2~3齢)」を掲載したのでお分かりの通、現在キタテハの幼虫を7頭ばかり飼っている。しかし、その他に更にクロアゲハの幼虫も5頭飼育している。アゲハ類の飼育は、かなり以前に28頭を飼育してその内の25頭がヤドリバエに寄生されていたと言う「悲劇」が出来して以来、暫くやる気が失せて居たのだが、妙なことからまた飼育をすることになってしまった。 今年の7月上旬に「カラスアゲハ」を掲載した後、やはりこの蝶を飼育してみたくなり、カラスアゲハの好きな食草であるカラスザンショウの苗を2本買った。まだ、高さ30cmにも満たない小さな苗だが、8月下旬、これにアゲハ類の幼虫が5頭も付いてしまった。その若齢幼虫は黄色い色をしており、明らかにナミアゲハの幼虫ではない。ヒョッとするとカラスアゲハかも知れない。しかし、苗木はまだ小さいので、5頭もの幼虫がそのまま生長すると、途中で食草が足らなくなってしまう。サンショウの木に移しても良いが、我が家では、鳥に食われるのか、或いは、アシナガバチに肉団子にされてしまうのか、アゲハ類の幼虫は大概3齢か4齢で居なくなってしまう。そこで、仕方なくサンショウの葉で飼育することと相成ったのである。クロアゲハの2齢幼虫.体長約1cm胴体にも枝を持つ棘状突起がある(写真クリックで拡大表示)(2009/09/01) この辺りに棲息するミカン科植物を食すアゲハには、ナミアゲハの他にクロアゲハ、カラスアゲハ、ナガサキアゲハが居る。この内、ナガサキアゲハは柑橘以外では育たないらしいので、クロアゲハかカラスアゲハの何れかと言うことになる。 その後の生長を見ると、カラスアゲハならば3齢以降次第に緑色が濃くなる筈なのだが、これは逆に段々黒くなり、また、臭角は赤色であることが分かった。残念ながらカラスアゲハではなく、クロアゲハの幼虫である(カラスアゲハの臭角は、ナミアゲハと同じ黄色)。横から見たクロアゲハの2齢幼虫尾部には棘状突起が2対ある(写真クリックで拡大表示)(2009/09/01) 写真の幼虫は体長約1cm、2齢と思われる。初齢はもう少し小さく、また、棘状突起がもっと長いと思う。今日の写真はアゲハ類の幼虫が居ると気が付いて最初に撮ったものなので、これ以前の写真は無く、初齢幼虫の詳細は分からない。 この2齢と思われる幼虫には、頭部に1対、尾部に2対、枝を多数持つ顕著な棘状突起があり、その間の胴体(その他の腹部と胸部)にも枝のある短い棘状突起が多数ある。第1胸節(前胸)が庇状に頭部を被っている(写真クリックで拡大表示)(2009/09/01) 3齢幼虫は、その写真を取り損ねた(3齢と思った幼虫は4齢の小さいものであった)のでこれも詳細は良く分からない。しかし、種々のサイトを参照すると、頭部と尾部にはまだ枝を持つ棘状突起があるが、胴体の突起は枝を持たない様である。色は黄色や赤が薄くなり、黒と白が強くなる。4齢については、近々掲載の予定である。 このクロアゲハの幼虫は、ルリタテハの幼虫よりも数日早く孵化したものと思われる。しかし、ルリタテハの方は、もう4頭が蛹になってしまったのに対し、クロアゲハの幼虫はまだ蛹になりそうもない終齢(5齢)が3頭,4齢が2頭である。クロアゲハ幼虫の成長速度はルリタテハよりもかなり遅いと言える。クロアゲハの幼虫は余り葉を食べず、何時も休んでばかり居る。固い木の葉を食べると、消化に時間が掛かるのだろうか。
2009.09.14
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少し時節を外れてしまったが、イチハツ、否、ジャーマンアイリスを紹介する。園芸店に騙されて、イチハツとして買ったのが、実はジャーマンアイリスだったのである。 昔の庭には、「イチハツ」と我が家では呼ばれていた白いIris sp.(アヤメ属で種名不明の意)があった。中々品があり花も綺麗だったので、園芸店で「イチハツ」と名札が付いているのを見たら、昔を想い出して衝動的に買ってしまった。 ところが、花が咲いたら白ではなく青紫で、花弁はペラペラ、シワシワ。まるで青紫に染めたチリ紙を丸めて花軸くっ付けた様、全く品格に欠ける。色は基本的には悪くはないのだが、何となくケバケバしい雰囲気がある。「場末のバーのマダム」と言うのはこういう感じだろうか。ジャーマンアイリスの花.花被が皺クチャ(2007/03/30) 調べてみると、外花被の内側基部に鶏冠状の突起があるのがイチハツで、突起がブラッシ状であればジャーマンアイリス、イチハツの花色は基本的に青紫(白花のイチハツも稀にあると言う)で、白い花の着く「イチハツ」と称する植物の殆どはニオイイリスとのこと。また、最近の園芸店では青紫のジャーマンアイリスを「イチハツ」として売ることがあることも分かった。と言うことは、昔、我が家にあったのは、ニオイイリスだったらしい。 しかし、ジャーマンアイリスをイチハツと偽って売るとは、全く怪しからん園芸店である。棄ててしまおうかとも思ったが、まァ、可哀想だし花に罪はないから、どうでも良い所に地植えにしたら妙に繁殖してしまって、今年は8本位花が着いた。ジャーマンアイリスの花の拡大.外花被の上に黄色いブラッシ状の構造がある(2007/03/30) 我が家には、他にアヤメ、キショウブ、ダッチアイリス(球根アイリス)がある。アヤメ、キショウブの花はまだだが、ダッチアイリスの花期はジャーマンアイリスとほぼ同じで、もう終わってしまった。この方は、御覧の様に清楚な感じで透明感があり、好みに合っている。ややバタ臭いが、茶花としても使えるかも知れない。ダッチアイリス.清楚で花色も宜しい(2007/04/05) Internetで様々なサイトを拝見すると、イチハツとジャーマンアイリスを混同しているところが多い。そこで、老婆心ながら、紛らわしいアヤメ科(園芸)植物の主なものの相違を表に纏めてみた(シャガとヒメシャガは区別が明らかなので、この表には入れていない。なお、テーブル・タグで表を組むと、何故か数10行の空白が挿入されてしまうので、仕方なくテキストで表を組み直した)。 種 類 葉 の 特 徴 花--------------------------------------アヤメ 葉細く中肋は目立たず 外花被基部に網目模様カキツバタ 葉やや太く中肋は目立たず 外花被中央に縦に白~黄色の 線状の斑ハナショウブ 葉やや太く中肋は目立つ 外花被基部に黄色斑キショウブ 葉やや太く中肋は目立つ 花被全体が黄色イチハツ 葉太く中肋は目立たず 外花被内側に鶏冠状の突起ジャーマンアイリス 葉太く中肋は目立たず 外花被内側にブラッシ状の突起ニオイアイリス 葉太く中肋は目立たず 花被は内側にブラッシ状の突起 花被は白で基部や突起は黄色ダッチアイリス 葉細く中肋から内側に折れる 花被は細い 園芸品種の中には突飛なものもあるのでこの表から逸脱する場合もあろうし、世界を眺めればこの中に入っていない紛らわしいアヤメ科の植物はまだ他に沢山存在する。なお、この表では、白花のジャーマンアイリスとニオイイリスの区別が出来ない。しかし、ニオイイリスにはジャーマンアイリスの様な派手さは無い様である。 葉先が垂れるか否かも判定の基準になるが、これは省略した。また、「やや太く」等と言う客観性の無い表現もあるが、まァ、ご勘弁いただきたい。出来るだけ簡潔に纏めたつもりである。
2007.05.02
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とうとう11月も半ばに入ってしまった。まだキク科の花は咲いているが、虫の新顔はまるで現れない。仕方がないので、1週間程前に撮った正体のよく分からないアブラムシの有翅虫を出すことにした。アブラムシの有翅虫.オオアブラムシ亜科の雄と思われる翅端まで約10mmと大きいが、胴体は小さい(写真クリックで拡大表示)(2009/11/05) 翅端まで約10mm、かなり大型の有翅虫である。しかし、体の長さはどうかと言うと、これが非常に短く約3.5mmで体長の僅か1/3程度、特に腹部が短く体全体の2/5位しかない。 どうも雄の有翅虫の様である。雌ならば腹部がもっと大きいと思う。同一個体.翅脈の基部が太く、翅斑(縁紋)が異常に大きい(写真クリックで拡大表示)(2009/11/05) 横から見ると、翅脈の基部が矢鱈に太く、また、翅斑(縁紋)が異常なほど大きい。写真を撮っている時は、この太い翅脈と縁紋が胴体の続きの様に見えて、随分細長い変な腹部だと思った位である。暗青色、飴色、黒色で中々渋い配色(写真クリックで拡大表示)(2009/11/05) 調べてみると、こう言う翅脈上の特徴を持つのはオオアブラムシ亜科(Lachninae)の様である。余り自信がないが、大型でもあるし、一応オオアブラムシ亜科の有翅雄と言うことにしておく。全体に比し腹部は如何にも小さい(写真クリックで拡大表示)(2009/11/05) 拡大してみると、体は青味を帯びており、腿節の一部と翅脈基部が飴色(赤褐色)、脚のその他の部分は黒色で、中々良い色合いをしている。 全農教の「日本原色アブラムシ図鑑」を見ると、ハネナガオオアブラムシ(Cinara longipennis)がこの様な特徴を持っている。しかし、図鑑に載っているオオアブラムシ亜科は僅かに8種、九州大学の目録を見るとオオアブラムシ亜科は51種もあり、オオアブラムシ属(Cinara)だけでも26種もあるので、そう簡単に決めつける訳には行かないであろう。正面からみた顔.アブラムシは一般に虫相?が悪い(写真クリックで拡大表示)(2009/11/05) 雄は晩秋にしか現れない。最近の理科の教科書は読んだことはないが、昔の教科書に書かれていたアブラムシの生活環は次の様である。春に卵から孵った雌(これを幹母と言う)は単為生殖で仔虫(無翅胎生雌)を産み、仔虫は成長してまた単為生殖で増殖し、世代を重ねる(無性世代)。これが晩秋になると雄と有性雌を生じ、有性雌は雄と交尾の後、越冬卵を産む(有性世代)(しかし、実際には多くのパターンがあり、こんなに簡単では無い。個体群により異なる複数のパターンを持つ種もある。如何に簡単でないかは、到底此処で書き切れるものでは無いし、また、私の理解にも限りがあるので、それなりの専門的な書籍(例えば、東京大学出版会の「アブラムシの生物学」等)を参照していただきたい)。翅を拡げたアブラムシの有翅虫(写真クリックで拡大表示)(2009/11/05) この雄には、種によって有翅形、無翅形、或いは、その両方と色々あるが、有性雌の方は私の知る限り全て無翅形である。雌の方は、有性雌を胎生で産む産雌虫が有翅形になることが多い(無翅の場合もある)。 今はワタムシ(雪虫)の飛ぶ季節である。このワタムシ(タマワタムシ亜科)の場合はどうかと言うと、この有翅虫は産性雌と呼ばれる胎生雌で、これが無翅雄と無翅有性雌の双方を胎生で産み、生まれた無翅有性雌が無翅雄と交尾して産卵する(ただ1個のみ!!)。雪虫には雄は居ないのである。飛び出す直前.この後少し引いて撮った写真はピンボケであった(写真クリックで拡大表示)(2009/11/05) この写真の有翅虫、翅ばかり大きくて余り旨く飛べそうにも見えない。しかし、ストロボの光を何回も浴びて身の危険を感じたらしく、時々翅を拡げる動作をした。雲の多い日の早朝であり、しかも場所はかなりの日陰だったので、まだ気温が低くて飛べないだろうと思って油断していたら、何とチャンと飛んで逃げた。しかし、普通のアブラムシの有翅虫とは異なり、ウスバカゲロウの様な何とも頼りない飛び方。翅が体に比して大き過ぎる?のでこう言う飛び方になってしまうのであろう。
2009.11.12
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特に新しいネタも無いのだから、そう無理をすることもあるまい、と思って更新をサボっていたら、もう6日も空けてしまった。何か書かざるを得まい。 ・・・と言う訳で、またアブラムシと相成る。今回は有翅虫も居らず面白みが更に少ないが、他に新しいネタがないのだから何とも致し方ない。 ハギオナガヒゲナガアブラムシ、アブラムシ科アブラムシ亜科ヒゲナガアブラムシ族の、如何にもアブラムシらしいアブラムシである。ハギオナガヒゲナガアブラムシ.ハギに付くアブラムシは普通この種類(2008/12/09) 実を言うと、このアブラムシ、もう既に何回か登場している。ヒメカメノコテントウとダンダラテントウに食べられているところである。些かブザマな姿しか紹介していないので、今日は威勢の良いところを、と言いたいが、今回もまた、余り景気は芳しくない。体は緑色で、脚や角状管は黒い.時に橙色のもいる角状管は先端近くで少し括れる(2008/12/09) と言うのは、あと数日で寄主であるニシキハギの葉が落ち尽くし、枝も枯れてしまうのは明らかだからである。アブラムシの運命もこれに伴うことは言うまでもない。アブラバチの寄生によるマミー(mummy:ミイラの意)普通のマミーとは異なり葉との間に台状のものがある左はアブラバチに寄生された個体.マミーになる直前(2008/12/09) 読者諸氏は、晩秋に木から落ちた紅葉(黄葉)の葉裏に、屡々アブラムシがしがみ付いているのを御存知だろうか。寒さと栄養不足で、まだ少しはマシな葉に移動する力もなかったのであろう。 アブラムシの捕食者やその卵もまたこれと運命を共にする。晩秋~初冬は越冬態勢に入れなかった虫達の「残酷物語」の季節なのである。1週間後、左の個体はマミーにならずに死んでいたアブラバチの幼虫が寒さで死んでしまったのだろうか?(2008/12/16) 先日、日本海に低気圧が発達して時ならぬ「春一番」が初冬に吹いてしまった。ニシキハギの幹や枝は細い。薄の穂の如く風に揉まれ、アブラムシ達は屹度風でみな吹き飛ばされてしまっただろう、と思った。しかし、次の日見に行くと、健気にも枝の付け根に移動して風を避けていた。もう枝が枯れるのも間近に迫っているのだが、それでもまだ精一杯生きようとしている・・・。風を避けて枝の付け根に集まるハギオナガヒゲナガアブラムシ(2008/12/22) ハギの枝には、まだ他にも妙な虫がくっ付いていた。次回はこの虫でも紹介することにしよう。
2008.12.23
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先日掲載したイチモンジセセリのところで、グンバイムシが何処かで悪さをしているらしいと書いたが、その「悪さ」が判明した。 以前から、夏も終わりに近づくころになるとボケが葉を落とすのが気になっていた。葉裏に黒い点々を生じ、徐々に葉が少なくなってくる。何かの病気に罹っているのだと思っていたら、実にこれが我が家に多産するグンバイムシの仕業だったのである。ボケの葉裏に集るナシグンバイ.こうして見ると黒い点々は如何にも糞という感じがする(2006/09/22) 我ながら不明を恥じることしきりだが、黒い点々はグンバイムシの糞だそうだ。肉眼では良く分からないが、写真で見れば明らかに植物から出たものではないことが分かる。 この点々の間にグンバイムシがいると、その模様が周りに溶け込んで、虫がいることに気が付かない。葉が弱って枯れ始めた様な場合(下の写真)などは尚更である。ボケの葉裏に集るナシグンバイ.葉の一部が腐り始めている(2006/09/22) ボケの他に、サンザシ、ハナカイドウもやられている。バラ科のリンゴ(Malus)属に近い種類に付くグンバイムシだと思ってインターネットで調べてみると、どうやらナシグンバイという種らしい。 保育社の原色日本昆虫図鑑を見たらチャンと出ていた。形態に関する記述は殆ど書かれていないので確実なことは言えないが、少なくとも写真はソックリである。ナシグンバイとしてよいだろう。 実は見つけたのはボケではなくサンザシのごく若い葉の裏であった。まだ葉に黒い点々が殆ど付いていないので、グンバイムシの模様が保護色?にならず、そのまま見えた。サンザシの若い葉に付いたナシグンバイ.黒い糞の点々がまだ殆ど無いので虫の存在が目立つ(2006/09/22) こんなWeblogを開設しても何の利益にもならないと思っていたが、グンバイムシによる被害が判明したのはこのWeblogのおかげと言える。楽天に感謝せねばならない。追記:投稿時においては「ナシグンバイムシ」となっていたが、「ムシ」を付けない「ナシグンバイ」が標準和名の様なので、名称を変更した(2007/06/25)。
2006.09.22
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今日は「庭を漂う微小な羽虫」の第4回目である。 前回(3回目)は、ケシキスイ科デオケシキスイ亜科の虫をハネカクシと間違えたりしたが、今回は本物のハネカクシである。体長は1.7mm、等倍接写としては限界的な大きさで、今日の写真は何れもピクセル等倍である。当然、画質が悪いが、何卒御勘弁頂きたい。空中を浮遊していたハネカクシの1種.体長1.7mm背景の桃色のは私の掌.ピクセル等倍(以下同じ)(2009/09/01) 肉眼で見た感じは、第1回目のチャタテムシに似ており、直径2mm位の霞んだ玉の様に見えた。これもまた、左手で掬って捕まえた。やはり手で直接捕まえるのは虫体を傷つける様で、触角の片側が無くなっている。しかし、この程度に小さい虫を、径36cmの汚れたネットで採ると、大きな網の中の何処に虫が居るのか分からなくなり、ボヤボヤしている間に逃げられてしまうことが多い。それで、ついつい手で掬ってしまうのである。 触角は片一方になってしまったが、まだチャンと生きていて、逃げ出しそうな雰囲気であった。そこでコールド・スプレーを掛けたのだが、やや掛け過ぎだったらしく、始めは動いていたが、やがて動かなくなってしまった。どうもコールド・スプレーの使い方がまだ分かっていない様である。虫君には気の毒なことをしてしまった。腹側にも点刻がある.腹部には毛が多い(2009/09/01) 始めは左手にくっ付いたままのを撮ったのだが、まだ早朝で頭がシッカリしていないせいか、中々焦点が合わない。年を取ると、こうだから困る。そこで、白い紙を持って来てその上に虫を置いて撮影した。左手が空けば、テーブルの上にその肘を乗せてカメラを固定出来るので、焦点合わせがずっと楽になる。背側から見たハネカクシの1種.如何にもハネカクシらしい形小さな鞘翅(前翅)の中に後翅が畳まれている(2009/09/01) ハネカクシ科は鞘翅目(甲虫)に属すが、腹部の大半が鞘翅からはみ出していているし、細長いし、余り甲虫とは思えない変な虫である。大きさは1.0mm~20mmとかなりの幅があり、九州大学の日本産昆虫目録では1023種、しかし、実際にはその2倍近くが棲息しているらしい。 保育社の甲虫図鑑には、その内の363種が載っている。図鑑の性質上、余り小さい虫は載って居らず、2mmに満たない種類はほんの数種だけである。その中ではチビニセユミセミゾハネカクシ(Carpelimus exiguus、体長1.5~1.8mm)が一番似ているが、斑紋も無く特徴に乏しいので、そうだと決めつけることは出来ない。亜科への検索表も手元に無いので、此処では単に「ハネカクシの1種」としておく。横から見るとかなり反り返っている(2009/09/01) 楽天ブログでは、一つの記事に複数のカテゴリーを指定することが出来ない(ココログやウェブリブログでは可能)のは困ったものである。当Weblogは昆虫の分類学的なグループ名をカテゴリーとしているので、「庭を漂う微小な羽虫」などと言うカテゴリーは作れない。其処で、以下の様な索引を付けておくことにした。 「庭を漂う微小な羽虫」の記事索引: 1.ウスイロチャタテ科の1種(Ectopsocus sp.)?:チャタテムシ科 2.ヒラタアブラムシ亜科の1種(有翅形) :アブラムシ科 3.デオケシキスイ亜科の1種 :ケシキスイ科
2009.09.02
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スズメバチ科のハチは、最もハチらしいハチだし、見るからに精悍で大好きである。以前はコガタスズメバチが何回か我が家の狭い庭に巣を作ったりして愉しかったのだが、最近はスズメバチさん、我が家にはトンと御見限りの様で、こちとらとしては何とも寂しい。 それでも、アシナガバチ類が毎日の様に庭にやって来る。勿論、芋虫毛虫その他、餌になる昆虫の偵察(威力偵察と言うべきか)の為である。今年はブランコ毛虫(マイマイガの若齢幼虫)が彼方此方にかなり居たせいか、例年もより訪問の回数が多い様に感じられる。マイマイガの幼虫を処理するセグロアシナガバチ(2007/05/31) ある日、アザレアの鉢付近でセグロアシナガバチが何かをしきりに探しているのに出会った。暫く観察していると、葉の陰から毛虫の残骸を引っ張り出してきた。毛の特徴から見て、どうやらマイマイガの幼虫の様だ。消化管内の内容物と思われるものが、辺りに流れている。もう殆ど肉は残っていないところを見ると、筋肉部分の大半は既に肉団子にして巣に持ち帰ってしまったらしい。横取りされた毛虫を探すセグロアシナガバチ(2007/05/31) 写真でお分かりの通り、少し物陰になっているので、ハチから毛虫の残骸を横取りして直ぐ横の地面の上に置いてみた。アシナガバチさん、何故か直ぐ近くの地面に置いてある毛虫に気が付かず、始めに毛虫のあった付近ばかりを探している。やはり、ハチは目が悪いのだろうか。 これは当分見込みがないと思い、部屋に戻って少し仕事をしてから、また見に行ってみた。すると、地面に置いた毛虫の残骸は跡形もなく消え去っていた。 毛も皮も残っていないところを見ると、もう2度と横取りされない様に(?)、何処か物陰に引き摺り込んで処理したらしい。 横取りしたのは、一寸意地悪だったかな?
2007.06.21
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今日は珍しく、トンボを紹介する。オオシオカラトンボ、住宅地の中にいるこの手のトンボは、シオカラトンボではなく、オオシオカラトンボのことが多いらしい。シオカラトンボは水田や湿地帯の様な開けた場所を好むので、住宅地には少ないとのこと。 実は、私はバッタと並んでトンボも苦手で良く分からない。バッタは好きになれなくて苦手なのだが、トンボは回りに殆ど居ないので知る機会がないのである。オオシオカラトンボの雌.オオムギワラトンボとは呼ばない余命幾ばくも無いらしく最早飛ぶことが出来ない(2008/06/15) このオオシオカラトンボの雌(オオムギワラトンボとは呼ばないらしい)も、始めはムギワラトンボ(シオカラトンボの雌)だと思っていた。しかし、掲載前に一応調べてみたら、どうも斑紋の出方が違う。色々なサイトの写真と比較すると、オオシオカラトンボの方がずっとよく似ている。 其処で、図鑑にあるオオシオカラトンボの記載を読んでみると、翅の基部が黒い、とある。このトンボ、少し分かり難いが、チャンと基部に暗色の部分がある。オオシオカラトンボの雌であった。シオカラトンボと異なり翅の基部が黒い(2008/06/15) この個体、先日のアカボシゴマダラと同じく、寿命が幾ばくも無い様で、まるで力がない。物に掴まることは辛うじて出来るが、飛ぶことは最早出来ない。死ぬ前に写真を撮って、その姿をこの世に残してやることにした。トンボの頭部を裏から見る.殆ど空洞である(2008/06/15) トンボの頭と言うのは、後ろから見ると奇妙な構造をしている。複眼は脊椎動物の眼の様に頭部に埋まっているのではなく、まるでヘルメットの様なもので内側は極く薄い。トンボの頭部は、複眼の薄板で被われている様なものである。頭部を解体して調べてみたい誘惑にかられるが、虫を殺すことは若い頃に散々やったので、今はもうしないことにしている。トンボの顔.複眼の個眼が整然と並んでいる(2008/06/15) 眼自体も変な代物である。トンボの複眼をよく見ると、上と下の2つの部分に分かれている。上は個眼が大きく、下側は小さい。このオオシオカラトンボの場合は、大きさが違うだけで複眼全体としては滑らかな丸い輪郭をしているが、アキアカネなどでは個眼の大きい上側の部分は下側より少し盛り上がっており、輪郭は歪になっている。 一体この眼でどんな風に見えているのか、複眼を見る度にそう思うが、これは容易に分かることではない。100年経っても屹度分からないであろう。右側を部分拡大.複眼の上部と下部で個眼の大きさが違う(2008/06/15) この正に死なんとするオオシオカラトンボを撮影しているとき、同じオオシオカラトンボの雄がやって来て日本シャクナゲの上に留まった。こちらの方はまだ元気で、少し遠くで1枚撮った後すぐに逃げられてしまった。 しかし、これで雌雄揃った訳で、掲載する方としては大変好都合であった。オオシオカラトンボの雄.翅(特に後翅)の付け根が黒いのがよく分かる(2008/06/15) 我が家の庭にやって来るトンボと言えば、他にアキアカネとコシアキトンボがいるだけである。先日、久しぶりにオニヤンマと思しき大型のトンボを見かけたが、上空を通過するだけで下りては来なかった。オニヤンマが飛び回るには、我が家の庭は狭過ぎるのである。
2008.07.22
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庭にやって来る虫の種類とその数は、年によりかなり大きく変動する。例えば、今年はスズメバチ科のハチ、コマルハナバチ、ツマグロヒョウモン、ヒトスジシマカが少ない。逆に、ルリシジミは例年よりもかなり多いのではないかと思う。 ヒトスジシマカが少ないのは大変難有いが、コマルハナバチが少ないのは何とも寂しい。コマルハナバチは毎年我が家の通風口(ベランダへの出入り口の直ぐ上にある)に巣を作り、6月には新女王も出てブンブンと大層賑やかなのだが、今年はシーンと静まりかえっている。 コマルハナバチが少ないのは、我が家の通風口に巣を作らなかったせいばかりではない。この辺り全体として少ないのである。毎年5月になれば、何処の御宅のサツキにもかなりの数のコマルハナが来るのだが、今年は1頭も来ていないことが多かった。 それでも、時折コマルハナの働きバチがやって来る。普通ならば余りにありふれていて撮る気がしないのだが、こう少ないと、せっかく来たのだから撮ってやろうと言う気になってしまう。ビョウヤナギの花の周りを飛び回るコマルハナバチの働きバチ(2008/06/09) 撮影したのは1ヶ月程前である。些か旧聞に属すが、何卒御寛恕被下度候(ナニトゾゴカンジョクダサレタクソウロウ)。後脚脛節外側には花粉をシッカリ貯めている(2008/06/09) コマルハナが吸蜜・花粉収集に来ているのは、ビョウヤナギの花。余り好きになれない花だが、自然に生えて来たのでその儘にしてある。茶花になると言う人も居るが、こんなものを茶花として採って来たら、茶人であった祖母は黙ってそのまま縁側に投げ棄てたであろう。花にしがみつくコマルハナバチの働きバチ.ビョウヤナギは花糸が長いので、ハチとしては止まるのに苦労する(2008/06/09) コマルハナバチが少ないのは、ヒョッとすると、以前掲載したマルハナバチに寄生するオオマエグロメバエが増えたせいかも知れない。実は、今年も通風口の下で羽化したばかりのオオマエグロメバエを見付けたのである。恐らく、通風口の中で越冬していたコマルハナバチの新女王(寄生により死亡)の体内から出て来たのであろう。死んでしまった新女王は、寄生されていなければそのまま通風口に巣を作り、今年の「家のマルハナちゃん」になった可能性が高い。 このオオマエグロメバエは羽化に失敗したのか翅が異常に短く、シャーレの中に入れて置いたら次の日にはもう死んでいた。オオマエグロメバエは中々見映えのするハエ(普通のハエの形ではなく、ハチの様な姿をしている)だが、「家のマルハナちゃん」に寄生するのは何としても許し難い。
2008.07.05
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昨日紹介した超接写システムで、同じコスモスに来ていた微小なアリを撮ってみた。 「日本産アリ類全種図鑑」(現在では「日本産アリ類画像データベース」としてWeb上で参照可能)で調べてみると、どうやらヤマアリ亜科(Formicinae)のサクラアリ(Paratrechina sakurae)らしい。図鑑では体長1~1.5mmとなっているが、写真のアリは1.8mmとやや大きい。 しかし、他に類似種が居ないし、形態的特徴が記述と一致するので、サクラアリとして問題無いと思う。サクラアリ.頭部に続く膨らんだ部分が前胸、それに続く凸凹した部分があるのが中胸、その後に続く黒っぽく細いのが後胸溝、その後の腹部の前にある部分は、実際は胸部ではなく腹部で、前伸腹節と呼ばれる触角は全部で12節だが、右の先端節は無くなっている(写真クリックでピクセル等倍)(2010/11/20) この図鑑には属までの図解検索表が付いている。しかし、亜科への検索で腹側から見た腹部末端の詳細や付節末端の爪の突起など、微小な構造が問題となるので、小型のアリを写真に撮った場合は亜科まで落とすのは先ず無理である。しかし、図解検索の2段目までは進めたので、ヤマアリ亜科かカタアリ亜科の何れかに属すことが分かった。 その後は、どうしても絵合わせとなる。図鑑に載っているこの2亜科のアリは僅か82種である。だから、図鑑のページを1枚ずつめくって行けば容易に目的の種に辿り着くことが出来る(何しろ、「日本産アリ全種図鑑」なのだから)。全く所属の分からない奇妙奇天烈な小甲虫を撮って、甲虫図鑑の2~4巻の全部を調べるよりは遥かに楽である。 図鑑の解説には、「体色は褐色で,触角と脚は黄褐色.触角べん節の第2~4節の幅は長さよりも長い」、「胸部は短く,頭部と同じくらいの長さ.側方から見て,前胸は急に立ち上がり,中胸は弱く曲がり,両者で1つの大きく曲がる弧をえがく.前伸腹節背面は短い.後胸溝背面での凹みはわずかで短い.中胸背板に1対,前伸腹節に1対の剛毛がある」とあり、写真のアリの特徴と一致する。なお、アリの触角はスズメバチ等とは異なり、梗節が無く、梗節に見えるのは鞭節第1節となる。横から見ると、中胸背板に1対,前伸腹節に1対の剛毛があるのが分かる。前胸背板にも剛毛が認められる(写真クリックでピクセル等倍)(2010/11/20) 殆どの読者は御存知と思うが、アリはハチと同類で、膜翅目細腰亜目アリ上科アリ科(Formicidae)に属す。アリは翅のないハチとも言えるが、アリの他にも無翅のハチ(特に雌)が色々な分類群に存在する。 翅がないのでアリと思ったら、○○バチであったと言うことも屡々起こり得る訳で、実際、昆虫の掲示板などに「この変なアリはなんでしょう」と云う様な質問でアリガタバチやカマバチ等が登場する。触角の折れ曲がったところから鞭節で第1節は長いが黒い輪の付いた第2節以降は第4節位までは短い(写真クリックでピクセル等倍)(2010/11/20) これまで、このWeblogでアリを紹介したのは、ハリブトシリアゲアリ1種だけだと思う。しかし、我が家には他にも色々なアリが居る。ところが、普段、地面を歩いているアリは彼方此方歩き回って留まることを知らず、撮影は殆ど不可能である。 だが、何か餌などに在り付いている時は余り動かないので被写体になり得る。ハリブトシリアゲアリもアブラムシに集っていたから撮影出来たのである。 今日のサクラアリは、コスモスの花の上で何かに御執心であった。多分、昨日掲載したワタアブラムシが排泄した甘露を食べていたのであろう。前回掲載したコスモスに寄生していたワタアブラムシが排泄した甘露を求めてやって来たらしい(写真クリックでピクセル等倍)(2010/11/20) このWeblogは、最初に「こういう都会でも実はイロイロ[虫が]居ますよ、と言うことを知って貰う」と云う意図で開設したのだが、やはり都会の駅から僅か250mの住宅地ではかなりキツイ。最近はネタ切れ状態が慢性化している。これからは、砂糖水で誘き寄せるなどして、アリも撮ることになるであろう(但し、今アリは冬眠中、来春以降となる)。
2010.11.22
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今日もまたアブラムシの話になってしまった。ワタムシ、最近全国的に有名になった「雪虫」である。昔は雪虫などという言葉は、東京では聞かなかった。 しかし、この雪虫、結構ややこしい。北海道ではトドノネオオワタムシが有名な様だが、「綿毛」を被っているアブラムシの有翅虫には多くの種類がある。 基本的に、トドノネオオワタムシやリンゴワタムシの属すタマワタムシ亜科の産性有翅雌は雪虫の潜在的候補である。しかし、その総てが雪虫と言えるほどの「綿毛」を被っているのだろうか。ヒメリンゴの枝上を歩くワタムシ(2007/11/26) ワタ(綿)に寄生するアブラムシ亜科のワタアブラムシは別として、和名に「ワタ」の付くアブラムシはタマワタムシ亜科以外にもいる。実際、マダラアブラムシ亜科に属すエノキワタアブラムシの有翅虫は多量の綿毛を被って、飛んでいるところはまるで雪虫だが、このワタムシが沢山飛ぶのは春から夏にかけての様だから、ワタムシではあっても、雪虫の候補には成り得ない。同様に、その他のマダラアブラムシ亜科のアブラムシも、寄生転換を行わないからその有翅虫が晩秋に大挙して飛ぶとは考えられず、雪虫の候補にはならないであろう。 また、トドワタムシやカンショワタムシは、無翅虫は著しい綿状物質が体を覆っているが、有翅虫はそうでもないらしい。背側から見たところ(2007/11/26) 更に、「ワタ」が名前に付かないアブラムシでも、無翅虫が多量の綿状物質にまみれている種類がかなりある。この様な種類の有翅虫が「綿毛」を被るのかは、これまた良く分からない。 色々調べてみたが、結局、晩秋に飛ぶ「綿毛」を帯びる有翅虫が総てタマワタムシ亜科に属すか否かは分からなかった。枝を下るワタムシ.そのまま下の方に行って見えなくなってしまった(2007/11/26) 一般論では完全に行き詰まった。しかし、此処に掲載したワタムシがタマワタムシ亜科に属すことは、ほぼ確実である。多くの他の亜科とタマワタムシ亜科では、翅脈の分岐や走り方が異なるのである。ヒラタアブラムシ亜科とは少し似ているが、やはり違う。翅脈に関する文献は持っていないが、図鑑と自分の写真を良く見比べてみれば、これは明らかである。 此処に掲載した写真を見てみると、どうも2種類の様に見える。大きさが違うし、飛んでいるときの印象も違った。しかし、翅脈に関しては何れもタマワタムシ亜科の構造をしている。ボケに留まったワタムシ.上の個体よりも大きいし触角も長い(2007/12/05) 写真のワタムシがタマワタムシ亜科に属すとすると、一体その内のどの種類であろうか。このワタムシは、どうも我が家のヒメリンゴやカイドウがお目当ての様に見える。何れもリンゴ属(Malus)の植物である。・・・とすると、リンゴワタムシ、サンザシハマキワタムシ、リンゴネアブラムシ等が候補に挙がる。 リンゴワタムシは300以上ものサイトで雪虫の候補として挙げられている。しかし、調べてみると、この外来のアブラムシの日本に於ける生態は良く分かっていない様である。タマワタムシ亜科のアブラムシは例外なく宿主転換を行い、晩秋に1次寄主に戻る産性有翅虫が雪虫の候補となる。しかし、このアブラムシの2次寄生について書いてあるサイトは一つも見つからなかった。どのサイトでも、リンゴの根や樹皮などで越冬し、その後は葉茎部に移ると書かれている。しかも、有翅虫は6月、或いは、9月に移住すると言う。これは有翅胎生雌であり、リンゴからリンゴへの移住である。これでは晩秋に飛ぶ雪虫にはならないではないか!! 良く分からないが、リンゴワタムシは雪虫とは関係がない様な気もする。広辞苑に雪虫の正体としてリンゴワタムシが挙げられているのが「リンゴワタムシ説」の起源らしい。しかし、この項目を書いたのはたして昆虫学者なのだろうか。国語学者が有名なリンゴワタムシ(名前の響きがよいし・・・)を根拠なく雪虫の候補として挙げたのがそのまま無批判に転載され続け、こうゆう事態になった可能性もなくはない。上の写真と同一個体(2007/12/05) リンゴネアブラムシは、「日本原色虫えい図鑑」に拠ると、1次寄生がアキニレで、リンゴは2次寄生だと書いてある。だから我が家の雪虫とは関係無さそうである。 この虫えい図鑑には、カイドウハマキフシと言うカイドウの葉を不定型に巻く虫えいが載っている。我が家のカイドウは毎年春先にアブラムシに寄生され、葉がしわくちゃになっている。どうも、これの可能性が高い。寄生するのはリンゴハマキワタムシ(Prociphilus crataegicola)と書かれている。このリンゴハマキワタムシは、アブラムシ図鑑にも載っていないし、Internetで検索しても出てこないが、学名で検索すると、何と、サンザシハマキワタムシのことであった。すると、我が家の雪虫は、このサンザシハマキワタムシの産性有翅虫である可能性が高い。 しかし、此処に掲載した雪虫は2種類の様である。この内の何れがサンザシハマキワタムシであろうか? 或いは、何れもサンザシハマキワタムシではないのだろうか? 九州大学の日本産昆虫目録データベースを参照すると、タマワタムシ科には58種もの種類が登録されている。一方、「日本原色アブラムシ図鑑」に載っているのは、僅か12種。しかも、雪虫として有名なトドノネオオワタムシも我が家の雪虫の候補であるサンザシハマキワタムシも載っていない。 結局のところ、雪虫の種を判別するのは、素人には無理と言うことであろう。随分時間がかかったが、まァ、順当な結論と言う他ない。
2007.12.10
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写真を撮った虫の所属が分からなくても、他に見られない奇妙な形をしていたり、特異的な模様を持っていたりすると、調べさえすればわりと簡単に分かりそう、・・・と思ってしまう。 確かに普通はそうなのだが、中には幾ら調べても分からない、と言う虫も出て来る。そういう時は、「その内種類が分かってから掲載しよう」と考えてしまうので、結果的にその虫は御蔵入りになってしまうことが多い。 しかし、1年以上経って偶然に種類が分かった、と言う場合もある。今日はその様な経過をたどった虫を紹介する。但し、分かったのは属までで、種に関しては分からずじまいである。 ムカシハナバチ科、メンハナバチ属(Hylaeus)の1種で、体長は約8mm、かなり小さいハチである。独立行政法人「森林総合研究所」の「竹筒ハチ図鑑」と言うサイトに掲載されているニッポンメンハナバチの標本と斑紋の分布は一致するのだが、調べてみると、この属の多くは同じ様な斑紋を持っている様で、斑紋だけでは種の判別は無理らしい。メンハナバチの1種(Hylaeus sp.)(2007/06/09) 撮影したのは、昨年の6月9日、まだニワナナカマドが咲き乱れている頃であった。ギボウシの葉の上に小さなハチが留まっており、口から蜜を出したり引っ込めたりしている(下の写真)。まるで牛が反芻している様。複眼の間に黄色の三角斑が1対ある.口から花蜜を出したり引っ込めたりしている(2007/06/09) 良く見てみると、複眼の間に逆三角形の小さいが極めて明瞭な黄色斑が1対ある。こんなハチは見たことがない。しかし、これ程明確な特徴があるのだから、調べれば簡単に種類が分かるだろう、とその時は思った。。 しかし、図鑑は標本の背側を撮った写真しか載せていないし、Internetで調べてもハチを正面から撮った写真は少ない。幾ら捜しても、顔面に三角の黄色斑を持つハチは見つからなかった。本来ならば、検索表を辿るべきだが、膜翅目の検索表と言うのはどれも実体顕微鏡下で調べなければ分からない様な微小な構造の違いに基づいているので、この程度の写真から科を検索することは全くの不可能事である。 殆ど迷宮入りと諦めていたが、先日「裏庭観察記」と言うサイトを見ていたら、顔面に逆三角形の黄色斑を1対持つハナバチの写真がページの一番下に載っているではないか。ムカシハナバチ科のハチで、「ニッポンメンハナバチ?」と書かれていた。メンハナバチ属のハチは、肩板の前半、各脚の脛節基部に淡黄色斑を持つものが多い(2007/06/09) 多くのハナバチは、昨日のコマルハナバチの様に後脚の何処か(ハナバチ類の大半)か腹部下面(ハキリバチ類)に特殊な毛を持っていて、其処に花粉をくっ付けて巣に運ぶ。しかし、このメンハナバチ属のハチは、蜜ばかりでなく花粉も呑み込んで胃に蓄える。だから、体の何処にも花粉運搬毛を持たない。 口から出した蜜を良く見てみると、花粉の様な粒子が極く少しだが混じっているのが見える。恐らく普通はもっと沢山花粉が入っているのであろう。牛の様に反芻するのも、蜜と花粉を良く混ぜ合わせて均質にする作業なのかも知れない。
2008.07.06
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今日は、これまで卵からその発育過程を掲載してきたヨツモンホソチャタテの完結編として成虫を紹介する。体長は、今日は2個体あるので、2.7mmと2.8mm、翅端まで3.5mmと3.8mm、前翅長は2.7mmと2.8mm、複眼幅(左右の複眼の端から端まで)は0.64mmと0.66mmである。 ヨツモンホソチャタテ(Graphopsocus cruciatus)はホソチャタテ科(Stenopsocidae)に属す。この科には前翅長が5mm前後あるやや大きな種類が多いのだが、このヨツモンホソはそれらと較べると相当小さい。6齢から飼育して羽化させたヨツモンホソチャタテ「首」の所にお弁当ならぬ糞を付けている(写真クリックで拡大表示)(2010/04/24) 最初と最後の2枚の写真は、6齢から飼育して羽化させた個体である(他は、トベラの木で幼虫を探した時に見つけた個体)。他の5齢から飼育していた4頭も後日チャンと羽化したので、何れも本来の住処であるトベラの木に放してやった。 この辺り(東京都世田谷区西部)には、ヨツモンホソチャタテは居ることには居るが、その数は普段は決して多くはない。少なくとも我が家で見たことはこれまで一度もなかった。 それが何故か、今年の冬は例年よりずっと数が多い。もう一つのWeblogでフィールドの一つにしている「四丁目緑地」では、毎回5頭以上を見付けた。この辺りで全体的な数が増えたので、我が家の庭にも飛んで来たのだろう。トベラの木に居たヨツモンホソチャタテ最初に孵化した内の1頭であろう(写真クリックで拡大表示)(2010/04/20) さて、このチャタテムシをヨツモンホソチャタテとした根拠を書かねばならない。実際のところ、翅の模様を見れば一目瞭然なのだが、一応チャンと検索してみよう。 先ず、科の検索である。チャタテムシの検索表としては「富田&芳賀:日本産チャタテムシ目の目録と検索表」がある。珍しく日本語の文献だが、この論文中の科への検索表では生態写真からは良く分からない構造がキーとなることが多く、非常に使い難い。 それではどうするか。翅脈相を見るのである。これだけでかなりのことが分かる。北大農学部の吉澤準教授が書かれた「Morphology of Psocomorpha」には25科(日本産は16科)の翅脈図が載っている。吉澤准教授のHPにある最新(2004)のリスト「Checklist of Japanese Psocoptera」を見ると、日本産チャタテムシは全部で20科だが、無翅、或いは、翅の退化した種が多い科が4科あるので、16科と云うことは、日本産の有翅チャタテムシの全科を含んでいると考えて良いだろう。同一個体.ヨツモンホソチャタテ翅脈の説明付節は2節からなる様に見える(写真クリックで拡大表示)(2010/04/20) ホソチャタテ科の前翅翅脈相の特徴は、後小室とM脈、縁紋とRs脈がそれぞれ横脈で繋がっていることである(上の写真の「A」と「B」)。後小室とM脈の間に横脈を持つ科としては、他にスカシチャタテ科とケブカチャタテ科(一部のみ)があるが、これらの科には縁紋とRs脈を繋ぐ横脈は無い。 しかし、翅脈だけでは些か心配なので、「富田&芳賀」の科への検索表をホソチャタテ科から逆に遡ってみる。暫くは問題無く辿れるが、キー3で「爪の先端近くに歯を持たない」と云う写真からは判断出来ない特徴が出て来る。反対は「・・・歯を持つ」である。其処でこれを下へ降りてみると、該当するキーが無くなり迷子になってしまう。どうやら「・・・歯を持たない」で正しい様である。上位にあるキー2は「付節は2節」であり、これは写真から何とか判断出来る。 ・・・と云うことで、ホソチャタテ科で特に問題は無い様である。 さて、次はホソチャタテ科の種への検索である。「富田&芳賀」は1991年に書かれているが、その後チャタテムシの分類に大きな変更があり、吉澤準教授のリストを見ると、種数は「富田&芳賀」と同じだが、その種構成はかなり異なっている。「富田&芳賀」でホソチャタテ科に属していたホソヒゲチャタテ(Kodamaius brevicornis)とマダラヒゲナガチャタテ(Taeniostigma ingens)は、何故か種自体が吉澤教授のリストには見当たらない。しかし、「Psocodea Species File Online」と云うチャタテムシ専門のサイトを参照すると、何方もケブカチャタテ科に属している。この両種は縁紋-Rs間の横脈を欠くので、ホソチャタテ科から追い出されたらしい。 一方、吉澤準教授のリストでは、ホソチャタテ科に新たに2種が加わっている。しかし、何れも北方領土に分布する種で、この辺りに居る可能性はない。結局のところ、「富田&芳賀」のホソチャタテ科の検索表で、前述の2種を除いたキー3から始めればよいことになる。正面から見たヨツモンホソチャタテ(写真クリックで拡大表示)(2010/04/20) キー3は、「後小室と中脈[M脈]の横脈は短い.前翅には目立った斑紋がある.前翅長は約3.0mm」で直ちにヨツモンホソチャタテ(Graphopsocus cruciatus)に落ちてしまう。実は、この横脈が短いか否かに付いては後述の様に一寸問題があるのだが、反対のキーは「・・・前翅には縁紋を除いて目立った斑紋はない」だから、此方の可能性はない。 最後に確認の為、学名を使って写真を探してみる。幸いなことに、このヨツモンホソチャタテは北米にも産する(移入種)のでBugGuide.netに沢山の写真が見付かった。何れも「ソックリ」である。これでホソチャタテ科のヨツモンホソチャタテと決まり、目出度しメデタシと相成る。斜めから見たヨツモンホソチャタテ(写真クリックで拡大表示)(2010/04/20) 一寸検索表で気に掛かるのは、後小室と中脈[M脈]の横脈は短い、と云う記述である。3番目の写真では明らかに短いが、下の写真(矢印)では縁紋とRs脈間の横脈に近い長さがあり、短いとは言い難い。もう一つのWeblogで紹介した個体でもこの横脈はかなり長かった。 雌雄で違うのか、或いは、雌雄とは無関係に長さにかなりの変異が見られるのか。一介の素人には判断出来ないが、今考えてみると、羽化した個体を庭に放す前に全て翅脈を撮影すべきであった。今後、機会があれば調べてみよう。最初と同じ個体.後小室とM脈間の横脈は短くない(写真クリックで拡大表示)(2010/04/24) 今回で漸く成虫となり、これで「チャタテムシ幼虫の観察」も終わりである。読者諸氏の中には、余り代わりばえのしない幼虫写真が続いていい加減ウンザリされた方も居られるかも知れない。しかし、卵から成虫までの各段階を追った記録は、Web上には無い様なので、全体を纏めた記事を更に1本書こうと思っている。[追記]纏め記事は未だに書いていないが、以下に、卵から終齢幼虫(6齢)までの成長記録一覧を示しておく。 内 容 掲 載 日 撮 影 日 卵と初齢幼虫 2010/03/13 2010/02/25,03/12 2齢幼虫 2010/03/23 2010/03/22 3、4齢幼虫 2010/04/19 2010/04/10 5齢幼虫 2010/04/25 2010/04/18,20 6齢幼虫 2010/04/29 2010/04/20
2010.05.11
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今日は、蜘蛛の話である。 「何時ものベランダの椅子」の目の前、僅か1mもない所にキショウブが生えており、其処に春先から雌のササグモが棲み着いている。我が家のカナヘビ君(昔から居る個体)が何時も日向ぼっこしている所から目と鼻の先なのだが、食べられることもなく、今まで無事共存している。ササグモの雌.後中眼で上方を見ている(2007/07/09) ササグモは何時も葉の上で獲物を待っている。かなり敏感で、人が近づくとサッと葉裏に逃げ込み、時にハエトリグモの様に跳躍して逃げる。 しかし、跳躍はしても、良く見てみると、脚が細く長く、長い刺毛が生えていて、ハエトリグモとは随分形を異にする。やや前方から見たササグモの雌.眼が4対8個あるのが分かる(2007/07/16) 眼は8個でほぼ環状に配列する。背側から見ると後中眼しか見えないので、眼が1対しかないように見えるが、正面からみるとチャンと4対8個あることが分かる。何だか、眼が沢山あって変な顔!! 其処へある日、雄のササグモが1匹やって来た。雌よりも脚が長く、胴体は逆にずっと小さい。ササグモの雄.雌より細長い(2007/07/16) クモは昆虫と同じ節足動物門に属すが、昆虫とは異なり交尾はしない。代わりに、イカ・タコ、エビ・カニの様に交接をする。しかし、クモは、エビ・カニやイカ・タコとは異なり、交接に際し精包を渡すのではない。 雄のクモは、成体になると、第1歩脚の前方にある蝕肢の形が変化し、先端がスポイトの様な移精器官に変わる。 交接の前に雄は一寸した準備をしなければならない。まず、精網と言う特殊な網を張り、その上に精液を出してから、蝕肢の先にある移精器官で精液を吸い取り、そこに溜めるのである。 その後、雄は山野?を放浪しながら雌を探す。雌を見付けるとこれに接近を試み、旨く近づくことが出来て交接体勢に入れれば、移精器官を雌の生殖口に差し入れて精液を注入する。 種類に拠っては、この時、雌に食べられてしまう雄もある。求愛中の雄.移精器官を雌に示すように前に突き出す(2007/07/16) ところで、読者諸氏は蜘蛛の生殖口が何処にあるか御存知だろうか。昆虫の様にお尻の先端に開口するのではない。雌雄共に腹部の中央よりやや前方の腹側に開口する。 因みに、エビの生殖口は頭胸部(大きな殻に囲まれている部分)の第3歩脚(雌)、或いは、第5歩脚(雄)の基部に開口する。一寸意外かもしれないが、尾部(主に食べる部分)には筋肉の他に腸管と神経しかないのだから、当然と言えば当然である。考えてみると、胴体の末端近くに生殖口がある生き物は余り多くない。お見合いを始めたササグモの雄と雌(その1).まだお互いに警戒して離れている(2007/07/16) 雌の交接に際し使用されるのは交接口であるが、単性域類と呼ばれる原始的なクモでは産卵口と交接口は同一、より高等な完性域類では別々になっている。ササグモは完性域類に属すので、産卵口と交接口の2つを持っている。ササグモの雄と雌(その2).かなり接近(2007/07/16)ササグモの雄と雌(その3).雌はこの後余所へ行ってしまいお見合いは不首尾に終わった(2007/07/16) 雄グモは、ほぼ1週間に亘り雌の近くに留まっていた。丁度梅雨の降りしきる最中で良く観察できなかったが、果たして首尾良く務めを終えたであろうか? 天気が良くなってからも、少し離れた所で、この雄グモを時々見かけた。しかし、3日も経った頃には、もう何処かへ行ってしまったのか、居なくなってしまった。 雄グモは雌グモとは異なり、何度か交接を行った後はもう何もすることがない。ただ死ぬだけである。自然の摂理とはいえ、やはり何とも空しい感じがする。
2007.07.27
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