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2012.01.11
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テーマ: 虫!(822)
カテゴリ: 昆虫(蠕虫)




 先ず、最初はクロヒラタアブ( Betasyrphus serarius )の飼育幼虫。クロヒラタアブはこれまでに、幼虫~成虫を2回( 此方 此方 )も掲載しているが、幼虫の詳細な形態についてはまだ触れていない。其処で、今回はその幼虫の形態についての詳細を紹介する。
 実を言えば、本当はクロヒラタの幼虫を飼育するつもりなど無かったのだが、一昨年の12月に掲載した「 ヒメナガカメムシの幼虫 」を飼育して居た時、餌として与えていたコスモスの花(幼虫はその種子から吸汁していたものと思われる)に付いていたのである。

 クロヒラタの幼虫は、コスモスの花に付いていた極く僅かの ワタアブラムシ (多分)を食べていたらしい。しかし、直ぐに餌が無くなり、1頭が11月の中ごろ、餌を探しに飼育箱(100円ショップのパン・ケース)の内壁に現れた。其処で早速、シャーレの中に入れ、コナラの葉裏に付いているアブラムシを与えて飼育した。

 そのカメムシの幼虫は、始めは正体不明なので飼育して居たのだが、「カメムシBBS」に問い合わせたところ、超普通種の ヒメナガカメムシ であることが分かった。ヒメナガの幼虫では飼育しても面白くないので逃がしてやろうと思い、コスモスの花殻を分解しながら探している時、更に2頭のクロヒラタの幼虫を見つけた。全部で3頭もの幼虫がコスモスの花に潜んでいたのである。



クロヒラタアブの幼虫1


クロヒラタアブの幼虫(3齢=終齢)

腹部にやや不明瞭な白黒の模様がある

右が頭、左の黒い突起は後気門

(写真クリックで拡大表示)

(2010/12/10)

 写真の幼虫は、その後から見つかった幼虫の内の1頭である。その時は、色々な虫を飼育していてシャーレの不足を来していたので、2頭を一緒に飼育した。餌のアブラムシは充分与えてあったのだが、或る時、幼虫を探してみると1頭しか見当たらない。よ~く調べて見ると、皺クチャになったクロヒラタの幼虫が見つかった。何と、共食で1頭になってしまったのである。残った1頭が写真の幼虫だが、共食いの後、急に大きくなった。

 この時、他にもヒラタアブ類の幼虫を飼っていたのだが、彼らは一緒にしても共食いなどしなかった。クロヒラタの幼虫は、かなり凶暴と言える。尚、ヒラタアブ類の幼虫が共食いをするのは珍しいことではないらしく、フタスジヒラタアブ(フタスジハナアブ)は共食いばかりでなく、鱗翅目の幼虫や蜘蛛まで補食するとのこと(昆虫写真家新開孝氏の「昆虫ある記」に拠る)。


クロヒラタアブの幼虫2


横から見たクロヒラタアブの幼虫

腹脚に似た構造が認められる

上の写真とは反対に左が頭部

(写真クリックで拡大表示)

(2010/12/10)

 此の連中の幼虫期は3齢しかないので、これは終齢=3齢幼虫である。体長は約8.0mm、体が柔らかいので縮んだ時と伸びた時ではかなりの差が出る。

 見つけた時は、体長5~6mmで、体の白黒の縞がもっとハッキリしていた。しかし、大きくなるにつれ、次第に白い部分が黄褐色を帯びて来て、写真を撮った時点(2010/12/10)では縞模様がかなり不明瞭となってしまった。


クロヒラタアブの幼虫3


斜め上から見たクロヒラタアブの幼虫

(写真クリックで拡大表示)

(2010/12/10)

 横から見ると(2番目の写真)、白黒模様が体節ごとにあるらしいことが刺毛の分布から分かる。G. E. Rotheray著「Colour Guide to Hoverfly Larvae」(Dipterists Digest No.9、1993)に拠れば、ハナアブ科(ヒラタアブはハナアブ科Syrphidaeヒラタアブ亜科Syrphinaeに属す)の幼虫は、胸部は3節、腹部は8節なのだが、皺が多くて何処が体節の境目なのか良く分からない。

 腹側には、芋虫毛虫の腹脚に似た構造が見える。同書に拠れば、一般にハナアブ科の幼虫は腹部の第1から第6節に歩行器官(locomotory organ)を持つとのこと。今まで撮影したヒラタアブの幼虫には写っていないが、隠れて見えなかっただけなのであろう。今度飼育する時は、一度ひっくり返して歩行器官を見てみよう。


クロヒラタアブの幼虫4


真っ正面から見た先頭部分.黄褐色の突起は前気門で前胸にある

頭部は中央下の黒っぽく見える部分で小さい

(写真クリックで拡大表示)

(2010/12/10)



クロヒラタアブの幼虫5


少し斜めから見たクロヒラタアブの先頭部分

(写真クリックで拡大表示)

(2010/12/10)

 先頭部を見てみると、黄褐色の眼、或いは、角の様なものが1対ある。これは前気門で、第1胸節(前胸)にある。マガイヒラタアブの幼虫では明確であった Antenno-maxillary organ(和名不詳.antennaは「触角」、maxillaは「小顎」乃至「上顎」の意だが、機能的には触角に相当するものであろう)は、中央部下側のやや黒っぽく見える部分にあると思われるが、上の2枚の写真からは何処にあるのか良く分からない。この辺りは頭部である。

 口器は何処かというと、主要部は体の中に入っており、この黒っぽい部分の下側から出てくるものと思われる。この幼虫の捕食中の様子は、別の機会に詳しく紹介する予定である。


クロヒラタアブの幼虫6


クロヒラタアブの後気門.全体に黒くて詳細が良く分からない

上から順に、ほぼ真上、斜め横、真後ろから撮影

(写真クリックで拡大表示)

(2010/12/10)

 最後は、後気門の写真。後気門の形態は分類の指標になるので、3方向から撮ったが、全体に黒くて詳細はよく分からない。一番上はほぼ真上から、中央は斜め横、下は水平に近い真後ろから撮影している。尚、後気門の右に見える丸く黒いものは単なるゴミで、幼虫の付属器官ではない。







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最終更新日  2012.01.11 10:53:33
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