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2012.12.02
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カテゴリ: カテゴリ未分類


【本文】
花の盛りは、冬至より百五十日とも、時正(じしゃう)の後、七日とも言へど、立春より七十五日、大様違はず。

【訳文】
 桜の花の満開なのは、冬至から数えて百五十日目だとも、あるいは、時止の後の七日目だとも世間では言っているが、立春から数えて七十五日目というのが、大体まちがいない。

【注釈】
・時正:昼夜の長さが等しい日

第百六十二段
【本文】

 基俊大納言、別当の時になん侍りける。

【訳文】
 遍照寺のある承仕法師が、広沢の池の鳥をふだん餌をやって飼いならしておいて、ある時、お堂の中まで餌をばらまいて、入口の戸を一つあけておいたところ池の鳥が数えきれないほど入りこんだあとで、自分も中に入って、戸をしめきって鳥をとじこめ、つかまえては殺し、つかまえては殺ししていた様子がそうぞうしく聞こえたので、草を刈る少年が聞きつけて、ほかの人に知らせたので、近くの村の男たちが大挙して集まり、お堂の中に入って見たところ、大きな雁がたくさんバタバタし合っている、その中に、法師が入りこんで、雁をつかまえては下におしつけ、首をひねって殺していたので、この法師をつかまえて、その土地から検非違使庁へ突き出したのであった。
そこで、検非違使庁では、承仕法師に殺された鳥を法師の首にかけさせて、牢にとじこめてしまわれた。
 これは、基俊の大納言が検非違使庁の長官の時のことでございました。

【注釈】
・遍照寺:京都嵯峨の広沢の池の西にあった。
・承仕法師:寺院内の雑役に従事する出家者
・おどろおどろしく:仰山に、甚だしく
・所:事件のあった土地・地元

第百六十三段

盛親入道申し侍りしは、「吉平(よしひら)が自筆の占文(せんもん)の裏に書かれたる御記、近衛関白殿にあり。点打ちたるを書きたり」と申しき。

【訳文】
 陰暦九月の異称である太衝の「太」の字は、「太」と点を打つか、「大」と点を打たぬかということについて、陰陽道の仲間が議論し合ったことがあった。これにつき、盛親入道が言いましたことには、「安倍吉平の自筆の占文の裏にお書きになった、天皇の御日記が近衛関白家にある。それには、『太』と、点の打ってある字が書いてある」と言いました。

【注釈】
・太衝:陰陽道で用いる、陰暦9月の異称

・吉平:安倍清明の子で陰陽博士
・占文:異変にあたって、朝廷が神祇官に吉凶を占わせる時、結果を記した文書

第百六十四段
【本文】
 世の人相逢ふ時、暫くも黙止(もだ)する事なし。必ず言葉あり。その事を聞くに、多くは無益の談なり。世間の浮説、人の是非、自他のために、失多く、得少し。
これを語る時、互ひの心に、無益の事なりといふ事知らず。

【訳文】
 世間の人が互いに顔をあわせる時は、わずかな間でも無言のままでいることがない。きっと、ことばが出てくる。その話すことを聞くと、大部分は、無益な談話である。世の中のいいかげんな噂話や他人のよい・わるいの批評は、自分のためにも、話相手となる他人のためにも、損失ばかり多くて、得る所は少ないものである。
 こういうことを語り合う時に、お互いの心の中で、それらが無益の事だということに気づいていないものだ。

【注釈】
・黙止:無言のままでいる
・浮説:根拠のないうわさ話

第百六十五段
【本文】
 吾妻の人の、都の人に交り、都の人の、吾妻に行きて身を立て、また、本寺・本山を離れぬる、顕密の僧、すべて、我が俗にあらずして人に交れる、見ぐるし。

【訳文】
関東の人が、上京して、京都の人と交際したり、都の人が関東に行って立身出世をしたり、あるいはまた、自己の宗派の本寺・本山を離れてしまっている顕教・密教の各宗の僧侶とかいうように、総じて、自分の本来の風習の中に身を置かないで、その外部の人と交際しているのは、みっともないものだ。

【注釈】
・吾妻の人:関東の人
・本寺・本山:根本道場
・顕密:顕教は「教理が解りやすい、密教は解りにくい
・俗:自分が属する生活圏





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Last updated  2012.12.03 13:52:24 コメントを書く


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