フリーページ
◎ 利他の心を失いつつある日本
自分さえよければ他を、一切顧みない風潮が「神の国ニッポン」を支配している。
世の識者たちも、この様を憂えて利他の大切さを熱心に説くか、若者はおろそか大企業の経営者の中にも目の覚めない輩(やから)が少なくない。
大昔の聖賢の言葉に「積善の家には必ず余慶有り」(『易経』)とある。幸せをつかもうと思うなら、まず他人さまにいいことをたくさんしてあげなさい、そのような人(家・会社)には必ずいいことがやってくる、と因果応報を説いている。
かの『論語』の中にも、孔子の弟子の「先生の教えの最も大切なものは何ですか」との問いに、「其れ恕(じょ)か」と答えている。つまり、相手の立場に身を置いて考えることが最も大切だと説いているのだ。
これは近代経営学でも、「プロダクト・アウト」(生産者的発想・ひとりよがり)では勝てない、「マーケット・イン」(お客さま本位)でなければ絶対に勝利を手にすることはできないと強調されている。
このような理屈を並べなくとも、お客の入りの多寡(たか)がすべてともいえる職業・歌手の三波春夫は、「お客さまは神様です」と腹の底から叫んだのだ。
自分さえよければと利己的に事業をすれば、ライブドアのホリエモン、村上ファンドの村上世影氏のように墓穴を掘ることになる。こうした事件が目の前に展開されても、まったく頂門の一針にすらなっていないわが国の現実は寂しく切ない。
◎ 春風を以て接すべし
筆者は会社がどん底の時、営業本部長を命ぜられた。社長は代々住友銀行(当時)からみえていた。
プロパーのトップとして、私は占領軍に分割されてどん底に落ちた会社を蘇らせなければならない立場にあった。世界の権威ハーバード大学も日本のビール業界を寡占ビジネスモデルの典型と考え、トップのK社が六割を超えるシェアを占める業界では、二位以下は絶対勝てないと教えていた。
その挑戦で、ややもすれば自信を失いがちな社員に語りかけた「相手を立てれば蔵が建つ」十か条をご紹介しよう。
一、「愛」は人を立てる最高のもの
「愛」は相手の立場になって考えることが基本。お客さまを好きになれ。「思いやり」は相手の立場に身を置き換え、思いやることを意味する。見返りを一切求めない母親の子を思う「愛」は最高であり純粋。
二、「礼」は人を助け身を助ける
人は一人では絶対生きられない。相手を強く意識する心が「仁」だ。仁は「人間は二人」と書く。「仁」そのものは目に見えない観念であるが、それが形になって現れるのが「礼」である。お礼はゆっくりていねいより、簡単でも早くせよ。電話よりFAXがいい。
三、約束を守れ
約束を守るだけで相手は大事にしてくれていると思う。「いずれそのうち…」という約束こそ、きちんと守れ。守れないような約束は絶対にしない勇気を持て。
四、叱られ上手になれ。負けるが勝ち
いくらヘマをしても叱られ上手なら引き立ててもらえる。叱られたらより近づけ!叱
ってくれるのは、君に関心を持ってくれている証拠だ。
五、相手にとって気の重い仕事こそ、気軽に引き受けろ
気の重い仕事も、二人で担えば軽くなるものである。
六、「お世辞」に心が通うかは「真顔」で決まる
口は人を褒めるためにあると思え。真剣に考えた「褒め言葉」ならへたでも通ずる。美点凝視せよ。
「褒め言葉」の乱発は逆効果。「褒め」と「へつらい」の区別が分かる人間になれ。
褒められて気を重くする者はいない。面と向かった「お世辞」より陰の「お世辞」に偉力あり。
七、教えられたことはすぐ実行せよ
教え甲斐のある人と思われよ。私の講演や著書の感動をそのまますぐお便りでくださる人が随分いる。筆者は可能な限りすぐ返事を書いて励ます。
感度良好は相手を立てる。自分を下げれば相手は上がるのは極めて分かりやすい理ではないか。
八、先手必勝
自分からかける挨拶は、返す挨拶の数百倍の価値がある。
「礼」の国ニッポンで、我々は昨今挨拶の尊さを忘れかけている。挨拶は一文の得にもならないと考える輩が多い現実を考えると、「積極的な挨拶」の価値は大きい。
九、人を立てるのがうまい人は、「時間の我慢」「好みの我慢」を知っている
相手の心がどう思うか、どう捉えるか。こうした慮(おもんばか)りを表す最もすぐれた日本語が「惻隠の情」であろう。相手の立場に立って物事を考え、そして憐れみ、心を痛め同情する心の姿をいう。
いくら面白いと思っていても、自分の話は半分以下にせよ。しゃべりたくとも、アサヒビールを売ってもらうためにひざをつねって抑えろ。つまり「聞き上手」になれ。
十、相手の気分をよくさせることが相手を立てる第一歩
立てたい相手は女房、子ども、犬でも立てろ。
西洋に生まれた聖書は「せられんと欲することを悉(ことごと)く相手に施せ」と積極的に説き、我々東洋の先哲は「己の欲せざる所人に施す勿(なか)れ」といささか消極的だが、双方とも「相手の気分をよくさせることこそ大切」と共通している。
そう言えば、佐藤一斎先生もその著『言志後録』で「春風を以て人に接し、秋霜を以て自ら粛む」と説いている。自分には秋霜の如く厳しく、他人さまには春風を以て接して相手を立てることが肝要である。
人間の認識力は限りがある 2018.12.02
ゆするということより 2016.10.16
山口ザビエル記念聖堂 2013.05.17
PR
カテゴリ
New!
瑠璃月姫さん
New!
みお&ゆきさんコメント新着
カレンダー