愛ことば･心の散歩路

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2023/05/25

^-^◆　命懸けで仕事に打ちこんだ時代[下]

(31)

テーマ：自分らしい生き方・お仕事(38862)

カテゴリ：思い出

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^-^◆　命懸けで仕事に打ちこんだ時代[下]

　　＜日本産業界……高度成長真っ只中の頃＞

　……それから、待つ事約３時間……。
２４時間操業の工場ですから、
調整会議も相当長引いているようです。

２０時半頃…………。
作業着を着た、見知らぬ人がツカツカと寄ってきました。

「管理課の方でしょうか？本工場の作業長の三角と申します。
　工場長をお待ちですか？」

「ハイ……！！(^。^)」

「あのう……申し上げにくいんですが、大崎工場長は、
　向こう側の出口から帰られました……」

「えっ？いつ？いつですか？」

「もう、３０分位になります」

「……そうですか……？待っていると言っていたのですが……」

「ハイ、……申し上げにくいのですが、だから避けられて、
　向こうのドアから帰られたんだと思います」

「そうですか…………(>_<)」

「管理センターに戻られるのでしたら車でお送りしますが……」

「…………(-.-)……………」

「どうされました……？」

「三角さん、引き続きここで待たせて頂いて良いですか？」

「えっ？　工場長はもう帰られたんですよ……」

「はい……しかし、工場長に待つとお約束しましたから、
　明日の朝まで待たせて頂きます。
　構いませんか……？」

「(゜_゜>)！！それは……ここは三交代職場ですから……、
　一向に構いませんが、どうして、そんな無駄な事を……」

「ええ……、私も課長命令の仕事でこちらに来ていますので、
　工場長のお返事をお伺いしない限り帰れないんですよ。
　戻っても、課長に『手ぶら帰って来たのか。ふざけるな。
　仕事を何だと思ってるんだ。もう一度行って来い』
　と言われるのがオチです。
　……そんな恥はかけません」

「えっ、管理課長さんもまだ会社にいらっしゃるんですか？」

「三角作業長。ここだけの話にして下さいよ。
　工場長には出張と言いましたので……。(^_^;)
　よろしく、お願いします。
　課長も今夜は徹夜だと思います。
　この案件は切羽詰まっているんです。
　ご迷惑を掛けます……。
　では、待たせて頂きます。よろしく、お願いします」

「はっ、ハイ！　ど、どうぞ……」

それから小一時間経った２１時を過ぎた頃、
再び、三角作業長が現れました。

「あのう……工場長も気になられたみたいで、
　今、電話がありまして、これがご伝言でございます……」

渡された紙には、達筆の文字が並んでいます。

「一言一句、違わないように、
　工場長に確認しながらメモリました」

と、三角さん。

こう書いてありました。

『……待たせて申し訳ない。社外でどうしても会わなければ
　ならない方がおられたので、そちらを先に対応させて貰った。
　今からそちらに戻ろうと思ったが少々お酒が入っているので、
　まずいと思う。差支えなければ、
　東町の小料理岩磯まで来て貰えないだろうか……。
　返答をしたい』

読み終えて……三角さんの顔を見て……会釈しました。

読めた。
読めましたよ。(^。^)

きっと三角さんの方から連絡をとったに違いありません。
有難いことです。

「車で、岩磯までお送りしましょう」

……とニッコリ……三角さん。

凄い工場長にはそれなりの作業長がついているものなんだな。

「お願いします」

と……、ニッコリ笑って、深々と頭を下げました。

　岩磯には、工場長、副工場長の二人がおられました。
大分、お酒が回っている感じで

「おお、殺人鬼よく来た」

と大声で、笑って迎えて下さいました。

「人聞きの悪い事言わないで下さい」

「だって、俺を殺しに来たじゃないか」

店の大将も、女将さんも、副工場長もニコニコ笑っています。
話は、全て通っているようです。

「今日は、社の為に命がけで頑張っている総務部の若者の
　慰労会だ……さっ、呑め！！」

……これが、今日の返事でした。……ホッとしました。

たっぷり、ご馳走になりました。
たくさん、為になる話も聞きました。
なんとかいう、剣舞の様な唄も聞きました。
豪傑です。
大物は、やっぱり違うと……痛感しました。

帰りは、２０Ｋｍ離れた自宅までタクシーで送って頂きました。

　翌朝、野田リーダーと一緒に、課長に呼ばれました。
課長は、睡眠不足の割には、機嫌の良い笑顔でした。

「両名とも昨日はご苦労さま。
　今朝一番の大崎工場長からの電話で全てが決着した。
　二人ともよく頑張ってくれたな。
　部長も大変喜んでおられた。ありがとう……。
　これから、全力を挙げて大崎工場長をサポートしていくぞ！」

　席に戻ろうとしたら、課長に私だけ呼び止められました。

「大崎君が、交換条件を出してきたんでそれは受けたぞ」

「どういう事でしょう？」

「君を、新プロジェクトの幹事に出して欲しいと言う事だ」

「望むところです！！」

「……だよな。(^。^)
　中田君、チャンスでもある。頑張ってくれ！」

　企業戦士とか、猛烈社員とか比喩されていた時代の、
今でも、忘れられない清々しい思い出です。

　その後、大崎工場長は、日本でもトップクラスのこの会社の
常務取締役にまで、昇りつめられたことを記しておきます。

　　　　　　　　　　＜完＞

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