音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

2009年08月08日
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 1989年、ロッド・スチュワート(Rod Stewart)は『ストーリーテラー(Storyteller -The Complete Anthology: 1964-1990)』なるCD4枚組にして64曲収録という壮大なベスト盤をリリースする。ベスト盤とはいえ、その中には何曲かの未発表曲が含まれていた。しかし、CD化が急速に浸透して数年、当時の筆者もCD機器は持っていたが、CD自体もまだまだ安くはなかった。この頃はまだCD化に伴って安価になった中古レコードが主な情報源だった筆者にとって、4枚組CDは高嶺の花だった。

 翌年、この巨大ベスト盤からセレクションした1枚もののベスト盤もリリースされる。こちらは買った(どんな経緯で買ったかは忘れたが、手元に持っているのは輸入盤レコード)。そのタイトルが『Downtown Train -Selections fron the Storyteller Anthology』。先の巨大ベスト盤からシングルカットされた未発表曲がヒットし、それをそのままタイトルに据えたのだろう。

 「ダウンタウン・トレイン」という曲は、トム・ウェイツの作だ。トム・ウェイツは「酔いどれ詩人」と言われるアーティストで、しゃがれた声で歌うので一聴して気付かないことも多いのだが、抜群にすぐれた曲を書く人でもある。古くはイーグルスの「懐かしき'55年(Ol'55)」(1974年『オン・ザ・ボーダー』所収)があるし、個人的な好みでは、ブルース・スプリングスティーン&E・ストリート・バンドの 「ジャージー・ガール(Jersey Girl)」 (1986年 『ザ・ライブ』 所収)。そう言えばノラ・ジョーンズも「ロング・ウェイ・ホーム」をカヴァーしていた(2004年『フィールズ・ライク・ホーム』所収)。

 トム・ウェイツによるオリジナル・ヴァージョンの「ダウンタウン・トレイン」はどちらかと言えば暗く重い雰囲気なのだが、ロッドはこの曲をもう少し明るめに、そして実に力強いロック・チューンに作り変えた。けれど、若さにまかせて力強く歌いきるだけというのではない良さがロッドのヴァージョンにはある。この良さは、原曲の「陰」を消さず、曲の背後にそれを残すことに成功したからに他ならない。きっと若い頃のロッドだと、こうはいかなかっただろう。40代も半ばを迎えたロッドの円熟味があってこその成功だと思う。

 ちなみに、ロッドのこのカヴァーには裏話があるそうで、何でもボブ・シーガーがこの曲のカヴァーを狙っていたらしい。ロッドに先を越され、おまけにそのロッドのヴァージョンが全米トップ10のヒットとなったため、ボブ・シーガーは地団駄を踏んだとのこと。確かにボブ・シーガーがロック調の歌っても何ともぴったりはまりそうな曲である(動画付き記事は こちら )。





Rod Stewart / Storyteller -The Complete Anthology: 1964-1990 (1989年)
Rod Stewart / Downtown Train -Selections fron the Storyteller Anthology (1990年)





Rod Stewart ロッドスチュワート / Storyteller-downtown Train 輸入盤 【CD】




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