トム・ぺティがデビューしたのは1976年で、その時からハートブレイカーズを率いての登場であった。本作『破壊(Damn The Torpedos)』は、1979年に発表されたサード・アルバムである。デビュー以来のハートブレイカーズとともに演奏しており、トム・ぺティにとっての出世作となった。ちなみに、本アルバムは、全米アルバム・チャートでは7週連続2位(1位ではなく「2位」!)という記録を樹立しており、この間、1位に上がることを阻んでいたのはピンク・フロイドの『ザ・ウォール』だった。
本アルバムからは3曲がシングル・カットされている。シングル発売された順で挙げると、6.「危険な噂(Don't Do Me Like That)」、1.「逃亡者(Refugee)」、2.「ヒア・カムズ・マイ・ガール」である。シングル以外の曲にも佳曲が多く、4.「疑惑の影(Shadow of a Doubt)」などは同じ流れでシングルになってもおかしくない曲だ。5.「センチュリー・シティ」や8.「イン・マイ・ライフ」のように勢いがある真っ直ぐな曲もあれば、7.「ユー・テル・ミー」では次第に盛り上げていく曲調にアーティストとしての成熟と余裕が感じられる。9.「ルイジアナ・レイン」のようなテンポを落としたややスローな曲にも同様の余裕やリラックス感が表れている。曲調にはある程度のヴァラエティがあるが、一貫して統一されているのは、バンドとしての音のまとまりである。必要なところで必要な音がしっかりと鳴っている。とりわけ、ギターとピアノの音に着目すれば、このことがすぐにわかる。
2. Here Comes My Girl 3. Even the Losers 4. Shadow of a Doubt (Complex Kid) 5. Century City 6. Don't Do Me Like That 7. You Tell Me 8. What Are You Doin' in My Life 9. Louisiana Rain