音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

2010年08月23日
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テーマ: 洋楽(3314)




 悲劇のアルバムである。全英では1位を獲得したが、米国や日本では大したヒットには至らなかった(全米は最高で31位止まり)。ブライアン・アダムス(Bryan Adams、ライアン・アダムスRyan Adamsとは1字違いだが別人なので念のため)は、カナダ出身のロックンローラーで、20歳になるかならないかでメジャーレーベル(A&M)と契約し、まもなくデビュー。1984年の 『レックレス』 が世界的に大ヒットし、ストレートなロックンロールで聴衆を魅了したアーティストである。

 本来はロックン・ローラーとしての音楽的キャリアを重ねてきたブライアン・アダムスだったが、90年代に入ってからの彼は映画の主題歌なども歌い、世間にはすっかりバラード・シンガーのイメージがついてしまっていた。映画『ロビン・フッド』のテーマソング(「アイ・ドゥ・イット・フォー・ユー」、1991年)、ロッド・スチュワートおよびスティングとの3人組で『三銃士』の主題曲(「オール・フォー・ラヴ」、1993年)、さらには『ドン・フアン』の主題歌(本盤収録の13.「リアリー・ラヴド・ア・ウーマン」、1995年)。いずれも映画のテーマ曲でバラードという共通点があり、しかも全米1位を獲得した曲である。つまり、聴き手はブライアン・アダムスにピュアなロックを求めておらず、甘いバラード・シンガーのイメージを追い求めていたのだろう。80年代のかつての若きロッカーとしての彼のイメージは過去の話になり、半ば忘れ去られてしまっていた。

 そんな中、1996年にリリースされた本盤のタイトルは『18 Til I Die』、つまりは、“死ぬまで18歳”というものであった。1.「君しか見えない」からして直球の正調ロック・ナンバー。2.「ドゥ・トゥ・ユー」もギターをしっかりフィーチャーした曲で、バラードを期待する聴き手は肩透かしを食らう。3.の「レッツ・メイク・ア・ナイト・トゥ・リメンバー」でようやくゆったりした曲調かと思いきや、4.では表題曲の超ストレートなロック…。アルバム全編を通してこのような調子だから、リスナーの期待には全く沿っていなかったのだろう。結局、過去の諸作のようなヒットには結びつかず、冒頭で書いたように“悲劇のアルバム”となったわけである。

 予想を下回るヒットしかしなかったからと言って、それが駄作かどうかは無論、別問題である。その点からすると、全英で1位になったというのは、イギリスのファンがハリウッド映画の主題歌に(少なくとも米国の聴衆ほどは)感化されておらず、ロック・アルバムとしてのこの作品の本質を見抜いていたということなのだろう。

 15年近くたった今、さらに過去の『レックレス』やその前後のアルバムと聴き比べてみて、本盤は遜色ないどころか、もしかすると上を行っていたのではないかとすら思うほどの出来映えである。何よりいいのは、表題曲の4.「18 Til I Die」。上記のように“死ぬまで18歳(の気分でいく)”という曲だが、実際に“いつか55歳になっても、18歳でいるぞ”というストレートな歌詞でストレートなロックをやられた日には、聴き手は“その意気だ!”と同調するか、さもなくば“参りました”とひれ伏すしかない。同じく一直線なロックという意味では、1.「君しか見えない(ジ・オンリー・シング・ザット・ルックス・グッド・オン・ミー・イズ・ユー)」や7.「ウィア・ゴナ・ウィン」がいい。

 他方で、3.「レッツ・メイク・ア・ナイト・トゥ・リメンバー」、5.「スター」、8.「アイ・シンク・アバウト・ユー」、12.「ユア・スティル・ビューティフル・トゥ・ミー」といったようなミディアム~スロウ系のロック・ナンバーにブライアンの成長ぶりが見られ、しかもアルバムの収録曲順上、いい具合で散らばって配置されている。映画関係でいくつものバラード曲を歌って、ロック魂を捨てたのかと思われるかもしれないが、決してそうではなかったと思う。ノリ一辺倒で押すのではなく、押したり引いたりする余裕をこの人はちゃんと身につけていたのだなと妙に感心してしまう。13.「リアリー・ラヴド・ア・ウーマン」は上述の流れを汲む映画主題歌バラードだけれども、とにかく曲と詞がいい。アルバムの途中に入れずに、最後に“おまけ的に”収録しているので、アルバム全体の流れもそう大きく崩れておらず、無難な曲順だったように思う。

 というわけで、この頃のバラード・シンガー像の定着と、本来のロックンローラーとしてやりたいこととの狭間にあって、いくぶん矛盾を抱えた状況下で制作されただけにヒットしなかったのは仕方ない。おまけに、日本盤ではカタカナだらけで読みにくい曲名表記だったり、曲順と収録曲を見直した“修正ヴァージョン”を後から出したりと迷走したのもセールス失敗の要因だったのだろう。けれども、今になって冷静にその出来を見直せば、80年代のロッカーとしてのヒット期に劣らぬブライアン・アダムスの真髄が見えてくるアルバムだと思う。





1. The Only Thing That Looks Good on Me Is You
2. Do to You
3. Let's Make a Night to Remember
4. 18 til I Die
5. Star
6. (I Wanna Be) Your Underwear
7. We're Gonna Win
8. I Think About You
9. I'll Always Be Right There
10. It Ain't a Party If You Can't Come 'Round
11. Black Pearl

13. Have You Ever Really Loved a Woman?

1996年リリース。






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