音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

2010年09月08日
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テーマ: 洋楽(3388)




 アメリカ(America)とは何ともベタなグループ名だけれども、実はアメリカで結成されたのではない。ロンドン駐留の米軍で仕事をしていた父親たちとイギリスの母親たちの間に生まれた少年たち3人がアメリカの地を思いながらつけた名前である(ただし、全員かどうかはわからないが、米国は“まだ見ぬ地”という訳ではなかったらしい)。その3人とはジェリー・ベックリー、デューイ・バネル、ダン・ピークであり、ロンドンのアメリカン・スクールの仲間だった。

 「名前のない馬(A Horse With No Name)」は、アメリカの1stアルバム所収のシングル曲であると同時に、彼らの代表曲である。細かいことを言うと少々ややこしいのだが、実はセルフ・タイトルのデビュー・アルバム『アメリカ』は1971年末にいったんリリースされ、この曲は含まれていなかった。たが、年が明けてから1972年初頭にシングル「名前のない馬」がヒットし、その結果、この曲を加えてアルバム自体が再リリースされたという経緯を持つ(その結果、同アルバムの邦題も『名前のない馬』となった)。

 当時はサウンド面で CSNY(クロスビー、スティルス、ナッシュ&ヤング) と比較されたり、その弟分的に見られたりしたという。確かに、音楽的な展開を考えると、西海岸サウンドの流れの中に位置づけられるというのも納得できる部分はある。また、この曲のタイトルにある“馬”が当時の隠語で“ヘロイン”を意味しており、したがってドラッグ・ソングではないかとの噂も飛んだ(それゆえ話題を集めてヒットにつながったとの見方もある)。

 筆者はこの頃をリアルタイムでは知らず、そのせいかもしれないが、最初に聴いて以来ずっとこの曲にはほんの少しの“陰り”を湛えた“爽やかさ”というイメージを抱いている。砂漠を行く無名の馬に乗っての旅。素直にそのメッセージを字義通りに受け、見事なコーラスワークと12弦ギターの響きに身を任せる。そんな素直な聴き方しかしていないのだが、それでも名曲は名曲。他にない美しさを醸し出していると思う。この手のサウンドの曲がヒットしたというのは1970年代初頭ならではの現象だったかもしれない。けれども、時代を反映していながらも、何十年経った現時点でこれだけ懐かしさや素朴さの感覚がすんなり聴き手に届き続けている曲はそう多くない。他にもこのグループの名曲と言えるものはあるのだけれど、この「名前のない馬」はとりわけ、これからも聴き継がれていく名曲なのだろうと思う。




[収録アルバム]

America / America (1971年)
America / History America’s Greatest Hits (1975年、ベスト盤)








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