デビュー作に続いて翌1963年にリリースされた第二作が、この『フリーホイーリン・ボブ・ディラン(The Freewheelin’ Bob Dylan)』で、ディランの出世作となったアルバムである。デビュー作が年間5千枚ほどしか売れなかったのに対し、本盤は人気に火がついた時期には1週間で1万枚も売れたと言われる。ここに収録されている「風に吹かれて」のカバー(ピーター・ポール&マリーによる)が全米2位のヒットを記録し、米国で公民権運動が高まる中、“フォークの貴公子”としてディランに注目が集まったことで、一躍時代の寵児となった。
本作からの代表曲にしてもっともよく知られているのが、1.「風に吹かれて(Blowin’ in the Wind)」である。上記のピーター・ポール&マリーのカバーがヒットした後、ディラン自身のものもシングル化された。“答えは風の中で吹かれている(The answer is blowin’ in the wind)”という、いわば“答えがない”ことを答えにしたような決めゼリフが印象的な詞の曲である。この曲について、当時のディランは次のような趣旨を語っている。答えは本にも載ってないし、映画やテレビや討論会を見ても分からない。なのに、“ここに答えがある”などと言う連中もいる。世の中でいちばんの悪党は、間違っているものを見て、それが間違っていると頭でわかっていても目を背けるやつだ。自分はまだ21歳だけれど、そういう大人が大勢いることがわかった。自分より年長の大人はもっと頭がいいはずじゃないのか。