音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

2011年05月02日
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テーマ: 洋楽(3314)
21歳の若さとラディカルな詞の狭間 ~後編~


前編 からの続き)
 ボブ・ディランの本作『フリーホイーリン・ボブ・ディラン』に収められている中では、1. 「風に吹かれて」 の他、3.「戦争の親玉(Masters of War)」や10.「第3次大戦を語るブルース(Talking World War III Blues)」などがプロテスト・ソングと見なされる代表格。だが、上で述べたとおり、“時代の寵児”的な扱いをディラン自身は好まなかった。実際、アルバムの企画自体もそういう方向性に統一されていたわけではない。7.「くよくよするなよ(Don’t Think Twice, It’s All Right)」のような恋愛感情の歌が収録されたり、当時同棲中だった恋人で先ごろ亡くなったスージー・ロトロ(2011年2月没)と仲良く映り込んだジャケット写真を使っているあたりからもこのことが伺える。

 強引にまとめてしまえば、早い話、当時のディランは、単なる“とがった若者”だったわけではなく、“一人の若者”の感性を大事にしたかったのだろうと想像される。その若きディランの感性の中には、恋愛や恋人という部分もあれば、大人の社会への疑問という部分もあった。プロテストみたいな後者の側面だけが強調されれば、本人も嫌になるというものも当然だったのだろう。

 そうとはいえ、今も昔も21歳の若者がこれだけの洞察力を持てるのか、なおかつその感情をこれだけの詞と歌にして表現できるのかと言えば、難しいことだと思う。その意味でボブ・ディランは特異な才能を持っていたわけだし、だからこそ、“普通の若者”の感性の部分も尊重してほしいという矛盾を抱え込むことになったということか。

 振り返ってみれば、平凡な学生だった21歳当時の筆者にはそんな鋭い感性はなかったし、今の若者にもきっとそういう人の数は多くはないのだろう。でも、数10年前と今では大きく変わってきている点もあるように思う。世の中はどんどん複雑化し、若い人たちにそれに見合った思考を要求する世の中へと今の日本が変わってきているのは幸か不幸か…。経済がグローバルになって複雑化し、社会に余裕がなくなって企業は新入社員にまで“即戦力”を求める。即戦力って言うと聞こえはいいが、要は以前より成熟した人を求めるっていうことではないの?といつも疑問に思う。若者の自由が減り、学校教育とかで今までなかったような部分まで思考や鍛錬を強いられ、高い水準が要求される世の中。結果、逆説的ながら、自由な思考がしづらくなっていく。身近の若い人たちを見ているとそんな気がしてならないのだが、半世紀前のディランのような鋭い洞察力のある人がたまにであったとしてももし出てくるのだとすれば、世の中はまだまだいい方向に変わっていけるようにも思うし、そうであることに希望をつなぎたい。

 すっかり話題が違う方向に行ってしまったが、1.「風に吹かれて」以外に本盤で特に私的なお気に入りは、2.「北国の少女(Girl from the North Country)」、8.「ボブ・ディランの夢(Bob Dylan's Dream)」、10.「第3次大戦を語るブルース」、12.「アイ・シャル・ビー・フリー」。こういうフォークのスタイルに慣れていない聴き手は、最初は単調で退屈に感じるかもしれないが、歌詞カードと睨めっこしながら聴くのもよし。また、後世の影響に思いを巡らせながら聴くのもよし。この点に関して付け加えれば、日本のフォーク/ニューミュージック系アーティスト(例えば中島みゆきなどは顕著)も大きな影響を受けているし、とにかくカッコいいハーモニカの演奏に耳を傾ければ(歌も部分的にそうだとは思うが)B・スプリングスティーンがディランズ・チルドレンと言われるのも頷ける。





1. Blowin' in the Wind
2. Girl from the North Country
3. Masters of War
4. Down the Highway
5. Bob Dylan's Blues
6. A Hard Rain's A-Gonna Fall
7. Don't Think Twice, It's All Right
8. Bob Dylan's Dream
9. Oxford Town
10. Talking World War III Blues
11. Corrina, Corrina

13. I Shall Be Free

1963年リリース。



~関連過去記事リンク~
[アルバム]
ボブ・ディラン『フリーホイーリン・ボブ・ディラン』 (本記事の前編)
ボブ・ディラン『プラネット・ウェイヴズ』
B・ディラン&ザ・バンド『偉大なる復活』

ボブ・ディラン「ハリケーン」
ボブ・ディラン「ライク・ア・ローリング・ストーン」






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