シカゴの名バラードと言えば、最初にこの曲が思い浮かぶ人も多いであろうほどの有名曲が、この「愛ある別れ(If You Leave Me)」である。デビュー以来、政治志向を取り込むなど硬派なブラス・ロックを展開してきたシカゴにとって、この方向性はある種の転機で、80年代以降の甘口バラード路線の布石ともなった。1969年にデビューしてから21世紀の今まで、シカゴというバンドが実に40年以上のキャリアを誇るわけだが、シカゴの大きな転機はいつだったかと問われれば、明らかにそれは80年代にあったと思う。けれども、今になってから時系列で見ていくと、その転機を迎えるきっかけは70年代にあった。今回取り上げるバラードたちはちょうどその時期の作品ということである。
この曲が収められているのは、1976年発表のアルバム『シカゴX(カリブの旋風)』。また、後々のコンピレーション盤でも繰り返し収録されている。ちなみに、大ヒットだけあって、後々さまざまなカヴァー・ヴァージョンが生まれた。そうしたカヴァーの中には、ピーター・セテラ自身がカヴァーしたもの(1997年『愛ある別れ~ピーター・セテラ・ベスト・コレクション(You’re The Inspiration: A Collection)』に収録)もある。