音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

2011年10月11日
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テーマ: 洋楽(3405)
夜を彩る名盤


 トム・ウェイツ(Tom Waits)は1949年生まれの米国のシンガーソングライターで、1970年代に西海岸のシーンに登場した。“酔いどれ詩人”の形容が有名で、本人も得意楽器は“ヴォキャブラリー”だと言う。その言葉に違いなく、トム・ウェイツはとにかくストーリーの“語り手”であり、いかにも一般受けしなさそうな(?)ダミ声でそうしたストーリーを紡ぎ出す。

 デビューは1973年で、本盤『ハートアタック・アンド・ヴァイン(Heartattack and Vine)』は1980年発表の第7作目で、アサイラム・レーベルから発表した最後のアルバムとなる。これがダントツのベストというわけではないが、トム・ウェイツらしさという点では、かなり上位に来るアルバムだと思い、取り上げる次第である。

 全編にわたって“酔いどれ詩人”の本領発揮な曲が居並ぶ。それと同時に、デビュー当時と比べると、1980年代に次第に姿を表し、1990年代に本格化していく“実験的音づくり”の芽生えも見て取られる。とはいえ、実験的な音の部分は後々の作品を思えばそう目立つわけではないので、トム・ウェイツらしさを初体験する向きにも適当な作品だと個人的には思う。

 アルバムの聴きどころは全体に統一された雰囲気ではあるが、筆者の好みも含めつついくつか挙げてみよう。1. 「ハートアタック・アンド・ヴァイン」 はファズでかつブルージーなギター音が印象的で、アルバム全体のトーンを確定させるかのような出来栄えの曲。他方、バラード系(といっても、トム・ウェイツの歌声ではいわゆる美しいバラード系のイメージにはならないが)の3.「セイヴィング・オール・マイ・ラヴ・フォー・ユー」や5. 「ジャージー・ガール」 も印象的。とりわけ、5.の方は、このアルバムの発表後に結婚するキャサリン・ブレナンを歌った曲とのことで、B・スプリングスティーンがライブ・アルバム(1986年発表の5枚組 『ザ・ライブ』 )に収録して話題になった曲でもある。

 そういえば、どこぞのドラマ(もちろん日本製)で、このアルバムが全面的にBGM使用されていたりもした。個人的には、このアルバムの使用を思い立った制作者の趣味趣向(?)を素晴らしいと思う一方で、やはりこのアルバムは特定のストーリーを持った番組(要するに連ドラ)にフィットしないという印象も同時に受けた。そう、このアルバムは特定の文脈に放り込むには“濃すぎる”のである。これが放り込まれて許される文脈は、敢えて言えば、一つしかないだろう。場末の酒場であれ、多少洒落たバーであれ、あるいは暗い自室なり、“酒とともに”ではないだろうか。まあ、そのようなわけで、お酒を飲む方々にはとりあえず飲酒時のBGMには欠かせないレパートリーになると思うので、未聴の方はぜひお試しいただきたい。





1. Heartattack and Vine
2. In Shades
3. Saving All My Love for You
4. Downtown
5. Jersey Girl
6. Til the Money Runs Out
7. On the Nickel
8. Mr. Siegal
9. Ruby's Arms

1980年リリース。




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