音楽日記　～ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言～

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2016年08月01日

レオン・ラッセル　『レオン・ラッセル（Leon Russell）』

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テーマ：セヴンティーズ！70年代ロック＆ポップス(254)

カテゴリ：洋ロック・ポップス

　レオン・ラッセル（Leon Russell）が1970年にリリースしたデビュー盤が、この『レオン・ラッセル（Leon Russell）』である。1. 「ア・ソング・フォー・ユー」が有名なだけに、旧邦題も『ソング・フォー・ユー』（しかも“ア”は省略）だったが、元々はセルフタイトルのソロ第1弾アルバムである。

　レオン・ラッセル本人はこれ以前から音楽シーンで活動を重ねていた。最初はキーボーディストとして活動を開始し、14歳からバンド演奏を披露していたという。タルサ（オクラホマ）からロサンゼルス（カリフォルニア）へと活動の場を移し、セッション・ミュージシャンとして、ローリング・ストーンズやヴェンチャーズなどの録音にも加わったりしている。1969年には“シェルター・レコード”というレーベルを創設し、そこから自身のソロ・アルバムもリリースしていくこととなる。

　既にレコーディング経験を積んでいたレオン・ラッセルにとって、ソロ名義でやっていくこの時点で最も必要としたのは、明確な方向性を示すことだったのではないだろうか。上述のレーベルを共に主宰するデニー・コーデルとの共同プロデュースのこの作品では、いわゆる“スワンプ・ロック”の方向性が打ち出されている。決して派手ではなく、聴きようによっては“スカスカな音”の部分も含め、地味めな演奏に粘り気のある泥臭い雰囲気が特徴である。そう思って聴けば、代表曲の1.「ア・ソング・フォー・ユー」は美しさだけでなく、そういう部分もしっかり含んでいる。つまりは、アルバム全体としては、そっち側の泥臭い音作りに力点が置かれており、1.の美曲風な部分だけを期待してアルバムを聴くと期待を裏切られることになる。

　そのようなわけで、米国南部音楽をベースにジャズ、ソウル、ファンク…といった諸要素が絡み合った粘り気のあるロックの音作りとヴォーカルが本盤の本領発揮部分だと思う。個人的におすすめなのは、4.「シュート・アウト・オン・ザ・プランテーション」、7.「プリンス・オブ・ピース」、11.「ロール・アウェイ・ザ・ストーン」といったあたりの曲。これらは、「ソング・フォー・ユー」のイメージしかないリスナーにはぜひ聴いてもらいたいし、ザ・バンドからエリック・クラプトン好きまで、レーナード・スキナードからドクター・ジョンに興味のある人まで、南部をキーワードにアメリカ音楽の深さを求める人には必聴のアルバムと言えると思う。実際、ゲストも豊富で、少し上げてみただけでも、ミック・ジャガー（ヴォーカル）、リンゴ・スター（ドラム）、ビル・ワイマン（ベース）、ジョージ・ハリスン（ギター）、スティーヴ・ウィンウッド（キーボード）、エリック・クラプトン（ギター）、ジョー・コッカー（ヴォーカル）といったそうそうたる面々が参加している。

　余談ながら、CDボーナス・トラックとなっている12.「戦争の親玉（マスターズ・オブ・ウォー）」は、当時のヴェトナム戦争の背景から発禁（自粛？）となり、初回USのプレスにのみ収録されてすぐに消されたといういわくつきの1曲。ボブ・ディランのこちらのアルバムに収録されていた曲のカヴァーであるが、現行の本作のCDでは普通にボーナストラックとして収録されている。

［収録曲］

A Song for You
2. Dixie Lullaby
3. I Put a Spell on You
4. Shoot Out on the Plantation
5. Hummingbird
6. Delta Lady
7. Prince of Peace
8. Give Peace a Chance
9. Hurtsome Body
10. Pisces Apple Lady
11. Roll Away the Stone
12. Masters of War (Old Masters) ＊CDボーナス曲