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通常のベスト盤とはちょっと違ったピーター・セテラ・ヒストリー ピーター・セテラ(Peter Cetera)は1944年、米国のシカゴ出身のシンガー、ベーシスト。1960年代からバンド、シカゴのメンバーとして活動し、「長い夜」などではリード・ヴォーカルを担当した。1980年代に入った頃にはバンド内での存在感もより大きくなったが、1980年代半ばにシカゴを脱退し、ソロ活動に専念、ソロとしてもいくつものヒット曲を送り出した。 本盤『愛ある別れ~ピーター・セテラ・ベスト・コレクション(You’re the Inspiration: A Collection)』は、邦題では“ベスト・コレクション”と呼ばれているが、実際には純粋なベスト盤ではない。正しくは“ベスト盤的要素を持った企画盤”とでも呼べばいいのかもしれない。というのも、収録された11曲中の5曲が新たに録音されたものだったからである。その背後には、権利の関係で自由に楽曲が収録できなかったことがあったようだけれども、結果的に以下に記すような新録も含め、既存の楽曲だけのコンピレーションとは一風違った特徴を持つことになった。 まず、ベスト盤的編集に集められているのは、様々なアーティストとのデュエット・ナンバーである。エイミー・グラントとのヒット曲2.「ザ・ネクスト・タイム・アイ・フォール」をはじめ、チャカ・カーンとの4.「フィールズ・ライク・ヘヴン」などが収められ、この部分に関しては、“デュエット・ベスト集”といった色合いである。次に、新録の5曲のうち、3曲はシカゴ時代のナンバーの再録音、つまりは新ヴァージョンである。日本語表題に採られている1.「愛ある別れ(If You Leave Me)」、原盤の表題になっている5.「君こそすべて(You’re the Inspiration)」、そして8.「朝もやの二人(Baby, What a Big Surprise)」である。これらはキーを変えたり、アレンジを変えたりと、シカゴ時代とは違った、1990年末時点でのピーター・セテラによる曲の解釈が示されている。残る2曲(3.「ドゥ・ユー・ラヴ・ミー・ザット・マッチ」と7.「シー・ダズント・ニード・ミー・エニモア」)は新曲で、とりわけ3.はなかなかよくできたバラードで、筆者的にも結構好みだったりする。[収録曲]1. If You Leave Me Now (New Version) 2. The Next Time I Fall (w/Amy Grant) 3. Do You Love Me That Much4. Feels Like Heaven (w/Chaka Khan)5. You're the Inspiration (New Version)6. I Wasn't the One (Who Said Goodbye) (w/Agnetha Fältskog)7. She Doesn't Need Me Anymore8. Baby, What a Big Surprise (New Version) 9. (I Wanna Take) Forever Tonight (w/Crystal Bernard)10. After All (w/Cher)11. S.O.S. (w/Ronna Reeves)1997年リリース。 【中古】 愛ある別れ〜ピーター・セテラ・ベスト・コレクション /ピーター・セテラ 【中古】afb 下記のランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、バナーをクリックして応援いただけると嬉しいです! ↓ ↓
2020年01月20日
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爆発力のあるブルース・ロック/ハード・ロック 1960年代後半から1970年代前半は“スーパーグループ”なるものがもてはやされた。そのネーミングには、3人程の構成メンバーの姓をくっつけて“○○、××アンド△△”みたいなのが多かった。現在の感覚からすると、あまり響きがいいとは言えないグループ名が多かったような気もするが、それはそれで分かりやすかったのかもしれない(何と言っても元のグループなどで成功を収めて名の知れたミュージシャンたちだったわけだから)。 ウェスト、ブルース&レイング(West, Bruce & Laing)もそうしたグループの一つであった。元クリームのジャック・ブルース(ベース)と元マウンテンのレズリー・ウェスト(ギター)とコーキー・レイング(ドラムス)が組んだもので、1972~74年にかけて2枚のスタジオ作と1枚のライヴ作を残している。 1972年作の本盤『ホワイ・ドンチャ(Why Dontcha)』は、そんな彼らにとって最初の作品であった。マウンテンやクリームがそうであったように、ブルースがロックに取り込まれてブルース・ロックが形成され、さらにそれはハード・ロックなど複数の方向へと展開していくという流れの中に本作も位置付けられるだろう。本盤を一聴すれば、随所のフレーズは“ブルース・ロック”感が漂うのだが、音は重くインパクトのある“ハード・ロック”感が強い。 実際、本盤のいちばんの特徴は“爆発力”や“インパクト”にあると思う。そして、そうした“爆発力”の源泉はあくまで3人の楽器演奏にある。ヴォーカルは3人がかわるがわる担当していて、ところどころ別の楽器(例えばジャック・ブルースがオルガンやシンセを担当するなど)も取り入れられている。 筆者が気に入っているのは、表題曲の1.「ホワイ・ドンチャ」。とにかく勢いがあって、“重い”サウンドが疾走する感じがいい。これと同様な感覚は、3.「ザ・ドクター」や8.「プレジャー」なんかでも味わうことができる。あと、注目したいのは、5.「サード・ディグリー」や10.「ポリューション・ウーマン」。駄作と評されることの多い盤だけれど、とにかく演奏レベルが高い。もう少し楽曲が粒ぞろいであったなら、どれも“最高の演奏”とか言われたかもしれないようにすら思う。そして、何よりも、聴き手の側がマウンテンとクリームの幻影を取っ払って聴くならば、決して駄盤などではないような気がするのだけれど。[収録曲]1. Why Dontcha2. Out into the Fields3. The Doctor4. Turn Me Over5. Third Degree6. Shake Ma Thing (Rollin’ Jack)7. While You Sleep8. Pleasure9. Love Is Worth the Blues10. Pollution Woman1972年リリース。 【輸入盤CD】【ネコポス100円】West, Bruce & Laing / Why Dontcha ウェスト、ブルース&レイング / ホワイ・ドンチャ [CD] 下記のブログランキングに参加しています。 応援くださる方は、バナーをクリックお願いします! ↓ ↓
2020年01月17日
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18年ぶりの新作は貫禄の1枚 リトル・スティーヴン(Little Steven, Steve Van Zandt)は、2017年になってようやく21世紀最初のアルバムをリリースした。1999年の『ボーン・アゲイン・サヴェージ』以来なので、18年ぶりのアルバム発表であった(無論、その間にブルース・スプリングスティーンのバンドや個人では俳優業など様々な活動はしていたのだけれど)。それが本盤『ソウルファイアー(Soulfire)』であり、提供曲など自分で自分をカバーした、いわゆるセルフ・カバー曲を中心としたカバー・アルバムであるが、他人のカバーやアウトテイクなどのナンバーも含む。 収録曲をざっと見渡してみたい。1.「ソウルファイアー」は、デンマークのバンド、ザ・ブレイカーズ(The Breakers)への提供曲(2011年の同バンドのセルフ・タイトル作に収録)。それから、提供曲という点では、盟友のサウスサイド・ジョニーへの提供曲が複数含まれている。2.「アイム・カミング・バック」は『ベター・デイズ』(1991年)、5.「サム・シングス・ジャスト・ドント・チェンジ」と6.「ラヴ・オン・ザ・ロング・サイド・オブ・タウン」は『ディス・タイム・イッツ・フォー・リアル』(1977年)、11.「アイ・ドント・ウォント・トゥ・ゴー・ホーム」は同名のアルバム(1976年)に収録されたものといった具合である。リトル・スティーヴンによる提供曲と言っても、共作も含まれる。例えば、上記の6.はブルース・スプリングスティーンの共作だし、9.「スタンディング・イン・ザ・ライン・オブ・ファイアー」は、ゲイリー・US・ボンズとの共作で、彼らの同名アルバム(1984年)に収録されたナンバーである。 セルフ・カバーではなく、先達のカバー曲もいくつか収録されている。3.「ブルース・イズ・マイ・ビジネス」はエタ・ジェイムズ、8.「ダウン・アンド・アウト・イン・ニュー・ヨーク・シティ」はジェームズ・ブラウンの曲をカバーしたものである。さらに、それ以外には、7.「ザ・シティ・ウィープス・トゥナイト」のような過去作のアウトテイク、4.「アイ・ソー・ザ・ライト」のように未完成だった曲(リッチー・サンボラとの共作)を完成させて今回のアルバムに収録したものも含まれている。 全体を通して納得なのは、どの曲も見事なまでに“リトル・スティーヴン節”に仕上がっている点である。若い頃の奇抜さは少し引っ込んだように見えるけれども、独特の粘っこいヴォーカル、堂々としたアメリカン・ロック調をベースにいろいろと工夫を凝らすアレンジ力はやっぱりこの人のマルチ・タレントさなしには成り立たない。決して多作なアーティストではないけれど、その才能と年月を重ねた貫禄がどちらも発揮された好盤だと思う。[収録曲]1. Soulfire2. I'm Coming Back3. Blues Is My Business4. I Saw the Light5. Some Things Just Don't Change6. Love on the Wrong Side of Town7. The City Weeps Tonight8. Down and Out in New York City9. Standing in the Line of Fire10. Saint Valentine's Day11. I Don't Want to Go Home12. Ride the Night Away2017年リリース。 SOULFIRE【輸入盤】▼/LITTLE STEVEN[CD]【返品種別A】 ブログランキングに参加しています。 応援くださる方は、ぜひクリックをお願いします。 ↓ ↓ ↓
2020年01月14日
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バランス感覚に溢れた好盤 バーバラ・キース(Barbara Keith)は1946年生まれで、アメリカ東海岸出身の女性シンガーソングライター。1960年代後半にカンガルーというバンドで1枚アルバムを出し、その後1970年代初頭にかけてソロ名義のアルバム2枚を出してシーンからは姿を消した。1990年代になってザ・ストーン・コヨーテスという家族バンドで再びアルバム制作を始めて現在に至る。 上記のソロ名義の2作(それぞれ1969年と1972年にリリース)はともにセルフ・タイトル作で何とも紛らわしいのだけれど、今回取り上げるアルバムは1972年リリースのセカンド作の方である。そもそもあまり知られていないアーティストで、大きなヒットを飛ばしたわけでもないけれども、2枚のうちどちらがより知られているかというと、本盤の方ということになるだろう。 フォークやカントリーに根差し、大半が自作曲で占められているが、単調な弾き語り的なものというよりは、アレンジの工夫(といっても決して華美なものではない)をしながらじっくり聴かせようといった趣の盤である。 まず、注目されるのは、ジミ・ヘンドリックスの演奏でも知られる、ボブ・ディラン作の1.「見張り塔からずっと(オール・アロング・ザ・ウォッチタワー)」。ほかに筆者の好みでいくつか挙げると、2.「ローリング・ウォーター」、5.「フリー・ザ・ピープル」、7.「あなたへの道のり(ザ・ロード・アイ・トゥック・トゥ・ユー)」、8.「シャイニング・オール・アロング」、10.「ア・ストーンズ・スロウ・アウェイ」なんかがいい。他の曲も含め、全体的に“ひたむきな感じ”が好印象で、真摯に聴かせることを意図しつつも飽きさせない工夫を頑張ってしているように感じる。いま聴いても、やっぱり商業ベースに乗りにくいのだろうという気もするけれども、じっくり腰を据えて聴けば、目立たないもののバランス感覚がよく、しっかり制作された好盤と言えるように思う。ヒットやブームは不要だが、こういう盤こそ、一定数のリスナーを獲得しながらひそかにかつ着実に聴き継がれて欲しいと思う。[収録曲]1. All Along the Watchtower 2. Rolling Water3. The Bramble and the Rose4. Burn the Midnight Oil No More5. Free the People6. Detroit or Buffalo7. The Road I Took to You8. Shining All Along9. Rainy Nights Are All the Same10. A Stone's Throw Away1972年リリース。 【国内盤CD】【ネコポス送料無料】バーバラ・キース / バーバラ・キース 以下のブログランキングに参加しています。お時間の許す方は、 クリックで応援よろしくお願いします。 ↓ ↓ ↓
2019年12月13日
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1980年代風サウンドの好盤 グリン(Grin, 参考過去記事)というバンドでの活動後に1975年からソロで活動したニルス・ロフグレン(Nils Lofgren)は、1984年、ブルース・スプリングスティーンのバンド(E・ストリート・バンド)に加入する。リトル・スティーヴン(スティーヴ・ヴァン・ザント)の抜けた穴を補うという大役だったが、スティーヴン復帰後も現在に至るまで、ニルスはE・ストリート・バンドのメンバーであり続けている。 その一方で、彼はソロとしてのアルバムの制作も続けた。E・ストリート合流後、最初の作品となったのが、1985年リリースの本盤『フリップ(Flip)』であった。世は1980年代全盛ということもあり、スネアが響き、シンセが多用されているポップ感の強いサウンドではある。30年以上たった今から聴くとその点は多少気になるかもしれないが、個人的には当時よく聴いた盤ということもあり、思い入れが強い。ともあれ、そうしたサウンドの中でもニルスらしさが存分に発揮され、楽曲も総じてよいという好盤である。 冒頭の1.「フリップ・ヤ・フリップ」のポップさやジャケットの派手なバク宙イメージ(ステージ上でギターを持ったまま後方宙返りというパフォーマンスをやっていた)だけで判断してはならない。彼らしいロック・ナンバーとしてお勧めなのは、2.「シークレット・イン・ザ・ストリート」と8.「ドリームズ・ダイ・ハード」。前者は起伏をつけた、後者はまっすぐ突っ走る感じがいい。あと、外せないのは6.「スウィート・ミッドナイト」。80年代的な音作りの感覚があったからこそこの仕上がり具合ではないかという気さえどこかする(ちなみに個人的にはこちらのライヴ盤―しかも日本盤にしか入っていない―に収録されたヴァージョンもお気に入りだったりする)。 1980年前後にはニルス作品の“ポップ化”は既に進んでいたのだけれど、本作がその頂点となった。1990年代に入るとギターを前面に押し出したロックサウンドへと再び回帰していくのだけれど、本盤のような作風もこれはこれで悪くなかったように思う次第である。[収録曲]1. Flip Ya Flip2. Secrets in the Street3. From the Heart4. Delivery Night5. King of the Rock6. Sweet Midnight7. New Holes in Old Shoes8. Dreams Die Hard9. Big Tears Fall1985年リリース。 ZC52934【中古】【CD】FLIP/NILS LOFGREN 次のブログのランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、クリックで応援をよろしくお願いします! ↓ ↓
2019年11月25日
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破壊力抜群の高レベル演奏ライヴ盤の真価(後編) (前編からの続き) さて、ザ・フーによる名ライヴ盤『ライヴ・アット・リーズ(Live At Leeds)』(1970年リリース)の演奏について、手元にある1995年の拡充版(25周年エディション)に基づいて見ていきたい。 まず、オリジナル盤に収録された演奏の質が高いことに気づく。6.「恋のピンチ・ヒッター(サブスティテュート)」のキレと伸び、11.「サマータイム・ブルース」の重さを失わずに流れるような演奏、12.「シェイキン・オール・オーヴァー」の演奏の押しと引きのバランスといった具合である。代名詞的なナンバーである13.「マイ・ジェネレーション」は、15分近い長尺で、最初はいつものように演奏が始まるのだけれど、やがて『トミー』からの演奏を取り入れて様々な展開をしていき、最後の方は打ち合わせがまったくなかったのかのような謎な演奏が繰り広げられる。この奇抜な展開を含む流れこそが当時の彼らの“流動性”、そして柔軟性を示しており、原曲(および取り込まれた他の曲)を知る者にとってこんなにも面白いライヴ・パフォーマンスはそんじょそこらで簡単に出会うことはできない。 次に、1995年の再編集で加えられた楽曲群にも触れておきたい。1.「ヘヴン・アンド・ヒル」はオープニングに相応しい、力強さと緊張感を持った演奏であるが、スタジオ・ヴァージョンはこの演奏の時点ではまだ録音もされていなかった(数か月の遅れで録音され、「サマータイム~」のシングルB面として発売)。これに続く2.「アイ・キャント・エクスプレイン」も同じ力強さと緊張感が印象的だが、3.「フォーチュン・テラー」で力強さが全開になる。個人的にはこの部分に妙な興奮を覚える。 そうは言っても、緊張しっぱなしではなく、緊張とリラックスのバランスの取れた演奏が随所に見られるのも、本盤のよさなのだと思う。私的には4.「いれずみ(タトゥー)」、8.「アイム・ア・ボーイ」なんかにそうした部分がよく表れていて、さらには、10.「すてきな旅行/スパークス」に至っては、“余裕のある緊張感”(こんな表現で伝わるか不安ではあるけれど)が最高潮に達するように思う。 結局、ほぼ全曲近くに触れてしまったけれど、これは“聴かずに死ねないライヴ盤”である。筆者自身も未聴のデラックス版、さらにはセットリスト通りの全曲をいつか通して聴いてから死にたいと思っている(笑)。[収録曲]☆オリジナル版(1970年リリース)1. Young Man Blues2. Substitute3. Summertime Blues4. Shakin' All Over (以上、アナログA面)5. My Generation6. Magic Bus (以上、アナログB面)☆25周年版(1995年リリース)1. Heaven And Hell2. I Can't Explain3. Fortune Teller4. Tattoo 5. Young Man Blues6. Substitute7. Happy Jack8. I'm A Boy9. A Quick One, While He's Away10. Amazing Journey / Sparks11. Summertime Blues12. Shakin' All Over13. My Generation14. Magic Bus ライヴ・アット・リーズ +8/ザ・フー[SHM-CD]【返品種別A】 以下のブログランキングに参加しています。お時間の許す方は、 クリックで応援よろしくお願いします。 ↓ ↓ ↓
2019年11月22日
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破壊力抜群の高レベル演奏ライヴ盤の真価(前編) 歴史に残る名ライヴ盤を選べと言われれば、かなり多くのロック・ファンにとって間違いなく三指に入るのではないか。そう思っているのが、ザ・フー(The Who)の『ライヴ・アット・リーズ(Live At Leeds)』という盤である。今からほぼ半世紀前の1970年2月に行われたリーズ大学(イングランド北部のヨークシャーの都市リーズにある名門校)でのライヴ録音を収めたライヴ・アルバムである。 オリジナルのリリース内容(1970年発売)は、6曲で収録時間は40分足らず。しかし、その演奏の精度、内容、破壊力とどこをとっても抜きんでている。さらに、発売から四半世紀後の1995年には、25周年記念エディションなるものが発売され、リミックスによる音質の向上とともに、曲目そのものが大幅に拡充された(その後、さらに拡充されたデラックス・エディション、翌日の別公演も一緒に収録したコレクターズ・エディションが出ているが、これらは筆者は未聴)。 本盤の特徴はというと、まず何よりも演奏内容の素晴らしさにある。メンバーのピート・タウンゼントによれば、当時の彼らには“並外れた流動性”があり、“恐ろしいほどのパワー”があったと言う。この時期のザ・フーのライヴ演奏と聞けば、“パワー”ないしは“破壊力”は容易にイメージできる人も多いだろう。けれども、本盤の演奏はただ爆発的で勢いがあるというだけでない。それに加えて、タウンゼントの言う“流動性”が実は大きなカギなのだと思う。筆者はシンセが大胆にフィーチャーされた『フーズ・ネクスト』の大ファンでもあるのだけれど、“流動性”というキーワードで括ると同作と本作のつながりがきれいに見えてくるように感じる。 さて、演奏面と並行して、当時の彼らはライヴのレコーディングそのものにも工夫を凝らそうとしていた。演奏自体の出来に加えて、録音状態についても満足のいく結果となったのが本ライヴの録音だったのだという。確かに、オリジナルの盤ではさほど気になっていなかったが、現行のリミックス・リマスターのものを聴くと、音の質がそもそも高いということに改めて驚かされる。 このままだと記事が長くなりそうなので、続きは次回更新の後編で。 ライヴ・アット・リーズ +8 [ ザ・フー ] 下記のブログランキングに参加しています。 応援くださる方は、バナーをクリックお願いします! ↓ ↓
2019年11月21日
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私的好みのライヴ盤の一つ 唐突かもしれないが、実は、筆者はボブ・ディラン(Bob Dylan)のライヴ盤が好きである。通常、ライヴ盤と言えば、当たりはずれがある。オリジナル・アルバムの演奏の方がよかったとして酷評されたり、原曲をスクラップ&ビルドして新たな演奏の提示が好評を得たりと、様々な評価を受ける。といえば聞こえはいいのだけれど、要するに、ライヴ・アルバムとはこうした相反する評価のリスクを常に抱えるものでもある。 個人的な思い込みと言われればそれまでのかもしれないが、ボブ・ディランのライヴ盤はたいていどれを聴いてもハズレと感じることがなく、単なる元の曲の再現としてではない形で楽しめることが多い気がする。そんなことを思い起こしつつ、今回は1976年発表の『激しい雨(Hard Rain)』という名ライヴ盤を取り上げてみたい。 まず、表題は、“納得”でもあり、同時に“羊頭狗肉”でもある。“納得”というのは、コロラド州フォートコリンズでの野外ライヴの音源が本盤の中心となっているが、そのライヴは雨の降りしきる中で行われたという点。まさしくそのシチュエーションにぴったりの、相応しいタイトルだと言える。その一方、“羊頭狗肉”というのは、同ライヴで「はげしい雨が降る(A Hard Rain's a-Gonna Fall,旧邦題:今日も冷い雨が」が演奏されたにもかかわらず、この曲は本盤には収められなかった点である。 当時の受容はいまひとつだった(ローリング・サンダー・レヴューと題されたライヴの第2期ツアーも、本盤についても)のだが、今から見ると、ボブ・ディランのライヴ盤の中でも特に優れた作品だと思う。何よりどの曲もパフォーマンスのレベルが高い。ちょうど時期的には、前年に『欲望』をリリースし、その荒々しい感じをそのままライヴにもち込んでいると言っていいように思う。 最初に述べたように、“アルバムの再現”ではないライヴらしさがちゃんと実践されている。例えば、1.「マギーズ・ファーム」や5.「レイ・レディ・レイ」なんかは、アルバムで聴くのとは明らかに違う演奏で、本盤で聴いて別物として感動できる。なお、激しさの針が最も触れているのが、9.「愚かな風」。10分越えの長尺だが、過激にぶちまけていく感じの演奏からは、なぜか聴き終えた後に不思議な爽快感が得られる。ボブ・ディランについてはいろんな人がいろんなことを言うけれども、何と言われようが、彼のライヴ盤、とりわけこのライヴ盤は聴かねばもったいない。キャリアが長いだけに、いろんな作品があっていろんなイメージがあるだろうけれど、ボブ・ディランはこんなにまで力強いアーティストでもあるのだ。[収録曲]1. Maggie's Farm2. One Too Many Mornings3. Stuck Inside Of Mobile With The Memphis Blues Again4. Oh, Sister5. Lay Lady Lay6. Shelter From The Storm7. You're A Big Girl Now8. I Threw It All Away9. Idiot Wind1976年リリース。 激しい雨 [ ボブ・ディラン ] 以下のブログランキングに参加しています。お時間の許す方は、 クリックで応援よろしくお願いします。 ↓ ↓ ↓
2019年09月29日
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1940~50年代音楽をテーマにした、ドクター・ジョンの貫禄盤 ドクター・ジョン(Dr. John)の音楽的バックグラウンドはといえば、ミシシッピ、ニューオーリンズの豊かな伝統音楽、中でもR&Bと分類される音楽ということになるのだろうけれど、本盤『アフターグロウ(Afterglow)』でモチーフになっているのは1940年代後半から1950年代初めにかけての音楽。つまりは、ジャズ、ブルース、ポップなどといった音楽ジャンルが今ほどに厳格に分かれておらず、もう少し“音楽”なるものがひと塊に近かったと言える時代の素材である。こうした素材を、R&Bの素養やジャズ的な感覚を生かしつつ現代的アプローチで提示しているのが、この『アフターグロウ』ということになる。 ジャズ側に寄ったドクター・ジョンのアルバムと言えば、『イン・ア・センティメンタル・ムード』(1989年)という盤がある。本盤『アフターグロウ』は、上述のように40年代後半~50年代初頭に焦点を当てたものだが、ジャズ的バックグラウンドが強く出ているという点では、『イン・ア・センティメンタル…』に続く路線に位置づけられる1枚とも言っていいだろう。また、同盤と同じくトミー・リピューマがプロデュース(さらにそれ以前には『シティ・ライツ』などもプロデュース)しているというのも同じ流れに位置することを示唆している。実際、本盤はジャズ・アルバムのチャートで7位を記録した。 全体としては、カルテット演奏がベースになっていて、ストリングスやビッグ・バンドも加えられている。本盤を聴いてもっとも印象的なのは、これぞニューオーリンズ的なピアノ演奏とジャズ・ヴォーカル的なドクター・ジョンの歌の二点である。1.「アイ・ノウ・ホワット・アイヴ・ガット」、2.「ジー・ベイビー・エイント・アイ・グッド・トゥ・ユー」、5.「ソー・ロング」、6.「ニューヨーク・シティ・ブルース」なんかは、彼のピアノとヴォーカルを堪能するにはもってこいの演奏である。ドクター・ジョンと言えば『グリ・グリ』のようなイメージで聴くと、意表を突かれることだろうけれど、今となっては、これもいかにも彼らしいスタイルである(少なくとも筆者的にはそういうイメージも強く残っている)。 少し聴き込んでみると、いろんなことに気がつくのだけれど、以下の二つは本盤の特筆すべき点として挙げておきたい。まず一つめは、ビッグ・バンド、ストリングス、パーカッションといった、本盤の演奏の基本形にプラスアルファで加えられている音の使い方が抜群に効果的という点。おそらくはプロデューサーのトミー・リピューマの狙い通りなのだろうが、本当に聴けば聴くほど効果的にそれらの音が使われていると思う。もう一つは、さりげなくドクター・ジョンの自作曲が入り込んでいること。具体的には、6.「ニューヨーク・シティ・ブルース」と8.「ゼア・マスト・ビー・ア・ベター・ワールド・サムホエア」は、ドク・ポーマスとの共作で、後者はB・B・キングへの提供曲だったもの。それから、9.「アイ・スティル・シンク・アバウト・ユー」もドクター・ジョンの自作曲であるが、これらいずれもが居並ぶスタンダードの中に混じって何の違和感もない。それどころか、繰り返し聴いた筆者には、6.や9.はもはや本盤には欠かせないナンバーという気さえしてしまうほど、不思議な統一感がアルバムを通してある。 最後に余談ながら、本盤の出来の満足度はジャケット写真のドクター・ジョンの表情にそのまま表されているように見えてならない。目を閉じて優しい笑みを見せているこの写真もまた、従来のイメージとは違うという印象を持つ人が結構いるかもしれない。一般に、音楽家は丸くなると面白くなくなることが多い。でも、ドクター・ジョンのこの盤を聴いていると、それが必ずしも真ではないということがわかるように思う。[収録曲]1. I Know What I've Got2. Gee Baby Ain't I Good To You3. I'm Just A Lucky So-And-So4. Blue Skies5. So Long6. New York City Blues7. Tell Me You'll Wait For Me8. There Must Be A Better World Somewhere9. I Still Think About You10. I'm Confessin' (That I Love You)1995年リリース。 【中古】 アフター・グロウ /ドクター・ジョン 【中古】afb 次のブログのランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、“ぽちっと”クリックで応援をよろしくお願いします! ↓ ↓
2019年09月27日
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デイヴ・ウォーカー再在籍時の迫力ライヴ盤 サヴォイ・ブラウン(Savoy Brown)は、キム・シモンズ率いるブルース・ロック・バンド。1965年から既に半世紀以上存続しており、メンバーも次々と入れ替わっているが、初期のこのバンドのヴォーカルはクリス・ユールデンで、ファンの中には彼のヴォーカルこそサヴォイ・ブラウンの声だという人も少なくないだろう。 ユールデンは1970年にバンドを去り、その後に短期間(1971~72年)ヴォーカルを担ったのはデイヴ・ウォーカーだった。そのウォーカーもまたすぐにバンドを抜けてしまうのだけれど、1980年代後半になって、再びウォーカーがサヴォイ・ブラウンに合流している(1986~91年)。この時期のライヴ・パフォーマンスを収録したのが、この『ライヴ・アンド・キッキン(Live and Kickin’)』なる盤である。 そのようなわけで、この演奏がサヴォイ・ブラウンというバンドを象徴しているかと言われると、そうは言い難い。実際、代表盤を1枚・2枚挙げよと言われたなら、初期の盤に落ち着くことだろう。とはいえ、本ライヴ盤は、演奏レベルが高く、バンドとしてのまとまりも見事に体現されており、聴き逃がすにはもったいない好パフォーマンスを提示している盤なのである。 CD時代だけあって70分を超える全11曲(うち1トラックはメドレー)が収められている。圧巻は6.「メドレー(グレイテスト・ヒッツ)」。バンドの代表的ナンバー5曲を演奏しており、最後はキム・シモンズのギターソロで締め括っている。演奏後の余韻とMCが若干間延びしているように思うが、これがなかったら完璧と言っていいように思う。他に注目したい演奏としては、筆者的にサヴォイ・ブラウンの持ち曲としてお気に入りの2.「悲しいへだたり(アイ・キャント・ゲット・ネクスト・トゥ・ユー)」。元はテンプテーションズのヒット・シングルだが、ウォーカー脱退直後のアルバムで披露されたナンバーをこの編成で取り上げているというのは、時代の移ろいを感じさせる。あと、アルバム末尾の11.「ブギー(ヘイ・ヘイ・ママ)」も聴き逃がせない。この曲の演奏における勢いと迫力、そしてシモンズのギターを中心としたパフォーマンスの高さも、本盤の重要な聴きどころと言っていいように思う。[収録曲]1. Heartbreaks Make You Strong2. I Can't Get Next To You3. 15 Miles To Go4. Raise Some Thunder5. Since You've Been Gone6. Medley (Greatest Hits) (A). I'm Tired (B). Hard Way To Go (C). Louisiana Blues (D). Street Corner Talkin' (E). Hellbound Train (F). Guitar Solo 7. Bad Intentions8. Poor Girl9. Wang Dang Doodle10. All I Can Do Is Cry11. Boogie (Hey Hey Mama)1990年リリース。 【輸入盤CD】【ネコポス送料無料】SAVOY BROWN / LIVE & KICKIN (サヴォイ・ブラウン) 以下のブログランキングに参加しています。お時間の許す方は、 クリックで応援よろしくお願いします。 ↓ ↓ ↓
2019年09月17日
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キャリアを代表する名盤 ジミー・ウェッブ(Jimmy Webb)は、1960年代後半にソングライターとして成功を収め、1970年代にはコンスタントに自作のアルバムを発表していった。それら諸作の中で、『ランズ・エンド』と並んで代表的な(とはいっても、決して大きなセールスには結びつかなかったのだけれど)アルバムと言えるのが、1977年発表の本盤『エル・ミラージュ(El Mirage)』である。 他の諸作と同様、この人のキャリア全体の特色として挙げられるのは、まずもって曲の美しさであろう。特に本作では抒情的でありながら流れるようなメロディというのが印象的なように思う。その一方、本作ならではの特徴ということを考えると、2つの点での完成度の高さと言えるのではないだろうか。 まず1つめは、ヴォーカルの完成度の高さである。ウェッブの声には余裕が感じられ、以前の作品からはどこか感じられた不安さのようなものがない。それどころか、本作のヴォーカルは自信に満ちているように聞こえる。もう一つの完成度は音楽面・演奏面での完成度の高さである。この点に関しては、ウェブ自身だけでなく、プロデュースのほか、キーボード、シンセでも参加しているジョージ・マーティンの貢献度も大きいのだろう。 注目曲をいくつか挙げておきたい。抒情性に満ちた1.「ハイウェイマン(The Highwayman)」は、後にウィリー・ネルソン、ジョニー・キャッシュらがカントリーのスーパーユニットでグラミー賞を獲得したことでも知られるナンバー。全編を通じて上述の通りの美しい旋律が並ぶが、個人的に特におすすめは、2.「ゲティング・スモーラー(If You See Me Getting Smaller I'm Leaving)」、7.「ホエア・ザ・ユニヴァーシズ・アー」、ややアップテンポの8.「P.F.スローン」といったあたり。いや、他にも捨てがたい曲があるのだけれど、挙げ出すと結局は捨て曲なしということになってしまう。やはり結論としては、彼の代表作にして全曲通して聴かれるべき名盤だと言える。[収録曲]1. The Highwayman2. If You See Me Getting Smaller I'm Leaving3. Mixed-Up Guy4. Christiaan, No5. Moment in a Shadow6. Sugarbird7. Where the Universes Are8. P.F. Sloan9. Dance to the Radio10. The Moon Is a Harsh Mistress11. Skylark (A Meditation)1977年リリース。 【中古】 エル・ミラージュ /ジミー・ウェッブ 【中古】afb 下記のブログランキングに参加しています。 応援くださる方は、バナーをクリックお願いします! ↓ ↓
2019年09月14日
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安定した時期の、安心して楽しめるアルバム シカゴ(Chicago)は、1969年にシカゴ・トランジット・オーソリティとしてデビュー(間もなくシカゴ交通局からの苦情によりバンド名を“シカゴ”に変更)し、デビュー盤を含めてセカンド作、サード作と3作品連続の2枚組、さらに4作目となるライヴ盤は4枚組と大部な作品を出し続けた。ようやく5作目以降は真っ当な(?)ヴォリュームの作品が増えた(ただし7作目と、ライヴ盤の8作目はやはり2枚組)。そんな時期にリリースされた1枚が1973年リリースの本盤『シカゴVI(遥かなる亜米利加)(Chicago VI)』である。 この前後のシカゴは、人気・セール面でも安定していた。3作目が初めて全米2位となった後、5作目が初の1位を獲得し、以降、本作も含めて第8作目までいずれのアルバム作品も全米1位を記録し続けることになった。また、本盤からは、シングルとして、2.「君とふたりで(Just You’n’Me)」が全米4位、10.「愛のきずな(Feelin' Stronger Every Day)」が全米10位のヒットとなった。 とはいえ、初期のシカゴから次のステップへと言えそうな変化も見られる。一つは、楽曲の内容が社会的・政治的で具体性のあるものから主観的で日常を想起させるある種普遍的な方向へと移っていっている点である。本盤リリースの前年には、反戦の大統領候補のキャンペーンに参加し、同年の『V』には政治性が色濃く残っていた。それが本盤では明らかに変化していっている。 次に、前作『シカゴV』と同様、ロバート・ラムが曲作りでは大きく貢献している点が目につく。成功に胡坐をかぐのではなく、曲作りの幅を着実に広げていいたということになるだろうか。曲のテーマもさることながら、長さ(本盤には長尺曲がない)もコンパクトに聴かせることをおそらくは意識していたのだろう。さらに、新たな奏者の参加にも触れておきたい。セルジオ・メンデスのバンド・メンバーだったラウヂール ヂ オリヴェイラ(パーカッション、1981年までシカゴのメンバーを務めた)が本盤から演奏に加わっている。 個人的な好みからおすすめのナンバーは、まず、冒頭の1.「お気に召すまま」。スロウ曲でシカゴらしさという意味では、2.「君とふたりで」が最も印象に残る。シカゴ特有のホーンが生かされたナンバーはいくつもあるが、私的には7.「ハリウッド」と10.「愛のきずな」が特におすすめ。[収録曲] *( )内は邦盤の曲タイトル1. Critics' Choice(お気に召すまま)2. Just You 'n' Me(君とふたりで)3. Darlin' Dear(愛しいお前)4. Jenny(ジェニー)5. What's This World Coming To(輝ける未来)6. Something in This City Changes People(誰かが僕を)7. Hollywood(ハリウッド)8. In Terms of Two(明日への願い)9. Rediscovery(自由な扉)10. Feelin' Stronger Every Day(愛のきずな)~以下、筆者の手持ち盤(2002年リマスター)収録のボーナス・トラック~11. Beyond All Our Sorrows [Terry Kath Demo]12. Tired of Being Alone [with Al Green]1973年リリース。 シカゴVI(遥かなる亜米利加)/シカゴ[CD]【返品種別A】 下記ランキングに参加しています。 お時間のある方、応援くださる方は、“ぽちっと”よろしくお願いいたします! ↓ ↓
2019年09月06日
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ジョージ・ハリスンのバックアップによるソロ・デビュー作 ジャッキー・ロマックス(Jackie Lomax)は、ビートルズ愛好者には知られた名前かもしれない。1944年、リヴァプール郊外のチェシャ―州出身で、2013年に69歳で没したヴォーカリスト、ギタリストである。アンダーテイカーズやロマックス・アライアンスなどで活動した後、1968年にジョージ・ハリスンの強い後押しでソロ作を制作することになった。それが本盤『驚異のスーパー・セッション~ジャッキー・ロマックス・ファースト(Is This What You Want?)』である。 発売当時の邦題の『驚異のスーパー・セッション~ジャッキー・ロマックス・ファースト』(なお、現在では『イズ・ディス・ホワット・ユー・ウォント?』の表記に改められている)は、何とも仰々しいタイトルだけれども、決して過大広告でもなければ、羊頭狗肉でもない。『ホワイト・アルバム』の制作と並行する頃にジョージのプロデュースでレコーディングが行われ、ジョージがリズム・ギター、ポールがベース、リンゴがドラムスで参加している。さらには、エリック・クラプトン(リード・ギター)、ニッキー・ホプキンス(ピアノ)という豪華メンバーである。ジョージが「サムシング」をロマックスに歌わせてシングルにしようかと言ったとか、ジョンが「アクロス・ザ・ユニヴァース」を彼に勧めたとかいう話が伝わるが、それほどビートルズのメンバーも乗り気だったということなのだろう。 最初に録音されたジョージ作の5.「サワー・ミルク・シー」は、9.「イーグル・ラーフス・アット・ユー」とのカップリングで、アップルからの第1弾シングルの1つとして発売された。全米チャートでは117位、全英ではチャート・インせずと振るわなかったが、カナダでは29位まで上昇した。その後引き続きレコーディングした曲をまとめた本アルバムも全米145位にとどまり、シングルの「ニュー・デイ」(各種リイシューやリマスターにボーナストラックとして収録、US盤ではアルバム本編に収録された)もチャート・インを逃した。 といったわけで、セールス的にはパッとしなかったのだけれど、中身は決して悪くなかった。上記のジョージの提供曲(5.)以外はロマックス自身の曲であるが、ジョージのプロデュースということもあって、ジョージの作品そのまんまと言ってよいような雰囲気に仕上がっている。 個人的な好みから注目曲に目を向けると、1.「スピーク・トゥ・ミー」、3.「さよならなんて(ハウ・キャン・ユー・セイ・グッドバイ)」、4.「サンセット」、最初のシングルとなった5.「サワー・ミルク・シー」、6.「フォール・インサイド・ユア・アイズ」、10.「ベイビー・ユー・アー・ア・ラヴァ―」、12.「アイ・ジャスト・ドント・ノウ」と、ミドル・テンポやバラード系の曲に行ってしまう。いやはや、別の志向で考えてみるなら、9.「イーグル・ラーフス・アット・ユー」のようにしっかりロックしているナンバーこそが聴きどころという意見もあるかもしれない。 ともあれ、どの楽曲もよくできているし、特にジョージ好きの筆者としては、聴いていて心地よい。きっとあと一歩、何某かのインパクトさえあれば、売り上げも全然違っていたのかもしれない、そんなアルバムだったのではないかと思ったりしている。[収録曲]1. Speak to Me2. Is This What You Want?3. How Can You Say Goodbye4. Sunset5. Sour Milk Sea6. Fall Inside Your Eyes7. Little Yellow Pills8. Take My Word9. The Eagle Laughs at You10. Baby You're a Lover11. You've Got Me Thinking12. I Just Don't Know~以下、筆者の手元の2004年リイシューのボーナス曲~13. New Day14. Won't You Come Back15. Going Back to Liverpool16. Thumbin' a Ride17. How the Web Was Woven1969年リリース。 【輸入盤】Is This What You Want (Rmt) [ Jackie Lomax ] ブログランキングに参加しています。 応援くださる方は、ぜひクリックをお願いします。 ↓ ↓ ↓
2019年09月03日
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タイトにきまった名盤のソロ・セカンド作 ニール・ヤング盤への参加や自身のバンド、グリンでの活動を経て1975年にソロ・デビューしたニルス・ロフグレン(Nils Lofgren)は、同年のファースト作に続けて翌76年にセカンド作を発表する。それがこの『クライ・タフ(Cry Tough)』という盤である。 上記のソロ第1作に比べ、本盤は、照準がよりはっきりしていて、全体的によりタイトな仕上がりになっているのが特徴と言える。その結果、“やや暗い”とも言われかねないし、“少々マニアック”であるのも確かかもしれない。けれども、そういう部分も含めて、筆者的には特にお気に入りの盤だったりする。 本盤の注目曲を挙げておきたい。まず、表題曲の1.「クライ・タフ」と、ヤードバーズで知られる4.「フォー・ユア・ラヴ」は、上で述べた本盤の特色をよく表している演奏で、どちらもスリリングさがあるのがよい。さらに、“いくぶん暗め”で“いくぶんマニアック”な観点からしっかりと聴いてもらいたいのがLP時代のB面(5.以降)。とくに、5.「シェアー・ア・リトル」、6.「マッド・イン・ユア・アイ」、8.「ユー・リット・ア・ファイアー」が必聴。 地味に精鋭のミュージシャンたちがサポートに入っていて、それが演奏のレベルの高さにつながっているのだろう。その筆頭は、アル・クーパーである。彼は収録曲の過半(1,2,4,8,9の計5曲)でプロデュースを担当し、キーボードでも参加している。また、これら同じ5曲でジム・ゴードン(元デレク・アンド・ザ・ドミノス)がドラムを担当しているのも目を引く。 全米32位、全英8位という本盤のチャート上の記録は、彼の作品の中では最もヒットしたものということになる。けれども、売り上げやチャートの動向は別にして、本盤が彼のベスト作だというファンも多いようで、その評判に偽りはない。1970年代のアメリカン・ロック・シーンの裏名盤のような感じで、聴き逃がせない1枚であると思う。[収録曲]1. Cry Tough2. It's Not a Crime3. Incidentally It's Over4. For Your Love5. Share a Little6. Mud in Your Eye7. Can't Get Closer8. You Lit a Fire9. Jailbait1976年リリース。 【メール便送料無料】ニルス・ロフグレン / クライ・タフ[CD][初回出荷限定盤(初回限定盤)] ブログランキングに参加しています。 応援くださる方は、ぜひクリックをお願いします。 ↓ ↓ ↓
2019年08月24日
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スタイルが定まったサード盤 若きニルス・ロフグレン(Nils Lofgren)が中心となって1971年にデビューしたバンド、グリン(Grin)のサード作が、1973年リリースの『オール・アウト(All Out)』である。 以前の2作(参考過去記事:デビュー盤、第2作)との大きな違いは、ボブ・ゴードン、ボブ・バーバリッチに加えて、4人目のメンバーが追加された点だろう。リズム・ギターとして加わったトム・ロフグレンがその人で、ニルスの実弟である。彼が加わったことで、ニルス一人のギターではできなかった様々なことが可能になり、バンドの演奏の幅が広がることになった(ついでながら、兄弟でピッキングを入れ替えてお互いのギターを弾くなんて言うライヴ・パフォーマンスも生み出されることになった)。 全体としては前作までにやってきた音楽のスタイルがしっかりと固まってきたことがよくわかる演奏内容に仕上がっている。ややハードなロック調のナンバーから、メロウでソフト・ロック的なナンバーまで含まれていて、彼らの色、“グリンらしさ”は、ここに至って完全に確立されていると言えるように思う。ジャケット・デザインもそんな自覚がどこかにあったのかもしれないと思えるもので、バンド名のグリン(ニヤッと笑う)を表す口元のデザイン。つまりは、ジャケットの絵そのものがバンド名を表すという、セルフ・タイトル盤ならぬセルフ・ジャケット盤(?)になっている。余談ながら、LP時代にはこの口元が仕掛けジャケットになっていて、めくると中には“All Out”と記されていたのだとか(残念ながら、筆者はCDしか所有したことがないので見たことはない)。 本盤収録曲のうちぜひとも聴き逃せないのは、9.「オール・アウト」。グリンのキャリア上、「ライク・レイン」と並ぶ名曲で、ボブ・バーバリッチとニルス・ロフグレンのヴォーカルによるスロウ・ナンバー。1.「サッド・レター」とシングルにもなった6.「ラヴ・オア・エルス」で、前者は上記9.と並んで本盤の中では特にメロウなナンバー。後者はロックらしさを保ちながらもキャッチ―な仕上がりで、2009年のリイシュー(筆者は未入手)では、ボーナス・トラックとしてシングル・ヴァージョンも収められている。他方、ハードにしっかりとロックしているナンバーとしては、2.「ヘヴィ・シェヴィ」と5.「シー・エイント・ライト」が特におすすめ。 結局のところ、以前書いたことの繰り返しのようになってしまうのだけれど、十分な人気を得られずに消えたこのグリンというバンド。小粒ながらしっかりとそのスタイルを確立していった彼らの楽曲と演奏は、いまさらながら、再評価がもっと進んでもいいような気がする。[収録曲]1. Sad Letter2. Heavy Chevy3. Don't Be Long4. Love Again5. She Ain't Right6. Love or Else7. Ain't Love Nice8. Heart on Fire9. All Out 10. Rusty Gun1973年リリース。 ↓ファーストからサードまでを一纏めにした盤のようです↓ 【メール便送料無料】Nils Lofgren/Grin / Grin Grin 1+1 & All Out (輸入盤CD)【K2016/9/30発売】 ブログランキングに参加しています。 応援くださる方は、ぜひクリックをお願いします。 ↓ ↓ ↓
2019年08月11日
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不評盤とされるサード作の実態は… 1968年にデビュー盤を発表した後、セカンド作と同じく翌69年にもう1枚出されたのが、チキン・シャック(Chicken Shack)の『100トン・チキン(100 Ton Chicken)』というサード・アルバムだった。前2作とは異なり、本盤はUKのアルバム・チャートに顔を出すことはなかった。それどころか、挙句の果てには、表題の“100トンのチキン”をもじって“20トンの腐った卵を産み落とした”などと言われる始末。つまりは、評判のあまりよろしからぬ盤ということになった。 というわけではあるのだけれど、3作目で見事にコケたということなのだろうか。それとも、もしかして、この“不評盤の真価”というのはあったりするのだろうか。そんなことを考えながら本盤を聴いてみると、実は面白いような気がする。 まず、特徴としては、バンド・メンバーの変更である。チキン・シャックというのは、スタン・ウェッブ(ギター、ヴォーカル)を中心としたバンドだったわけだけれど、デビューから2作品ではクリスティン・パーフェクト(クリスティン・マクヴィー)の存在感が大きかった。そのクリスティンは前作を最後にバンドを去り、ポール・レイモンド(元はジャズ畑で、後にはサヴォイ・ブラウンやダニー・カーワンとの録音を経験し、やがてUFOに参加したが、2019年4月に心筋梗塞で急死、合掌)が代わりに加入している。その影響と思われるのが、曲のヴァラエティーが増した点と、キーボードが以前より前面に出るようになった点である。 その一方、バンドとしてはブルースへの執着というのがキーワードになるように思う。曲やサウンドは変化したのに、特にスタン・ウェッブのヴォーカルとギターは、前作・前々作と同じようにブルース的なことをやろうとしている。たぶんここがかみ合っていなくて評価を下げている点だと思われる。でも、よく考えてみると、ブルース・ロックというもの自体、ブルースそのものではないわけで、多様な取り入れ方や解釈が試行錯誤されていた。言い換えると、“これぞブルース・ロック”と言えない。その意味では期待外れの盤であろう。けれども、1960年代末時点の試行錯誤の成果の一つという観点で聴くと、案外面白いのではないかと思ったりもする。[収録曲]1. The Road of Love2. Look Ma, I'm Cryin'3. Evelyn4. Reconsider Baby5. Weekend Love6. Midnight Hour7. Tears in the Wind8. Horse and Cart9. The Way It Is10. Still Worried About My Woman11. Anji1969年リリース。 輸入盤 CHICKEN SHACK / 100 TON CHICKEN [CD] 下記のランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、バナーをクリックして応援いただけると嬉しいです! ↓ ↓
2019年08月07日
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20年を経て、『ガンボ』で示された路線への回帰 1992年に発売され、表題通り、ドクター・ジョン(Dr. John)がニューオーリンズ音楽への回帰を図ったのが、本盤『ゴーイン・バック・トゥ・ニューオーリンズ(Goin’ Back to New Orleans)』である。ニューオーリンズの音楽というと、様々な文化と音楽ジャンルが交錯する場に成り立っているという印象を持つ人も多いだろうが、実際、本盤もジャンルの枠に捕えられない(あるいは容易に当てはめられない)受け入れられ方をした。例えば、ビルボードの全米トップ200には入らなかったものの、ジャズのアルバム・チャートで1位になった。また、自身2度目のグラミー賞受賞を果たしたが、その選出ジャンルは、最優秀トラディショナル・ブルース・アルバム賞だった。 表題が示す通り、ジャケット写真も“ニューオーリンズ回帰”そのもので、マルディグラ・インディアンの衣装に身を包んだドクター・ジョンの姿となっている。演奏内容はニューオーリンズのミュージシャンを多く起用し、ニューオーリンズの伝統的ナンバーを多くカバーしている。アート・ネヴィルやアーロン・ネヴィルら地元出身のネヴィル・ブラザーズのメンバーが4曲(1.、3.、8.、18.)に参加しているのも目を引く点である。 3~4分の演奏で都合18曲も収録されていて、聴きごたえも十分なのだけれど、何曲か注目したい曲を個人的好みでピックアップしてみたい。 1.「リタニー・デ・サン」は、ドクター・ジョンのクレジットだが、19世紀半ばに活躍したルイス・モロー・ゴットシャルク(ゴッチョーク)の曲を下敷きにしたもの。3.「マイ・インディアン・レッド」は、マルディグラの伝統曲で、1940年代にダニー・バーカーも録音している「インディアン・レッド」のカバーである。4.「ミルネバーグ・ジョイス」は、“ジャズとスウィングの創始者”を自称していたジェリー・ロール・モートンのナンバー。 ルイ・アームストロングの演奏で有名な6.「ベイズン・ストリート・ブルース」は、スペンサー・ウィリアムズの曲で、本盤には同じくこの人による2.も収められている。10.「おやすみアイリーン(グッドナイト・アイリーン)」はレッドベリーの1933年の曲(元のタイトルは、単に「アイリーン」とのこと)。インスト曲の11.「フェス・アップ」はドクター・ジョンの作曲だが、かのプロフェッサー・ロングヘアーに捧げられたナンバーとのこと。13.「アイル・ビー・グラッド・ホエン・ユア・デッド」は1931年のサム・シアードの曲で、同じくルイ・アームストロングの演奏で知られる。 デイヴ・バーソロミューによる16.「ブルー・マンデイ」のほか数曲(15.と17.)はファッツ・ドミノで知られる曲であるが、ドクター・ジョンはこの二人のコンビをレノン=マッカートニーに次ぐコンビと評していたという。表題曲の18.「ゴーイン・バック・トゥ・ニューオーリンズ」はジョー・リギンズとハニードリッパーズの曲で、上記の通りネヴィル・ブラザーズとの共演での演奏は必聴。 とまあ、長々と曲を挙げることになってしまったけれど、とにかくニューオーリンズ音楽の間口は広く、それを受け止めるドクター・ジョンをはじめとする演奏者たちの器量も大きい。“19世紀後半から20世紀半ばまでのニューオーリンズ音楽祭典”と呼んでもいいようにすら思うヴァリエーションである。『ガンボ』のリリースが1972年、本盤が1992年と20年の間が空いているが、ドクター・ジョンが亡き人となったいま考えると、これら2作品は制作年代こそ離れているものの、内容的にはぜひ併せて聴きたい彼の遺産ということになるのではないだろうか。[収録曲]1. Litanie des Saints2. Careless Love3. My Indian Red4. Milneburg Joys5. I Thought I Heard Buddy Bolden Say6. Basin Street Blues7. Didn't He Ramble8. Do You Call That a Buddy?9. How Come My Dog Don't Bark (When You Come Around)10. Goodnight Irene11. Fess Up12. Since I Fell for You13. I'll Be Glad When You're Dead, You Rascal You14. Cabbage Head15. Goin' Home Tomorrow16. Blue Monday17. Scald Dog Medley/I Can't Go On18. Goin' Back to New Orleans1992年リリース。 輸入盤 DR. JOHN / GOIN’ BACK TO NEW ORLEANS [CD] 以下のブログランキングに参加しています。お時間の許す方は、 クリックで応援よろしくお願いします。 ↓ ↓ ↓
2019年08月03日
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アメリカン・ロック界のボスによる初のカバー盤 ブルース・スプリングスティーン(Bruce Springsteen)と言えば、1970年代の『明日なき暴走(ボーン・トゥ・ラン)』、1980年代の『ボーン・イン・ザ・USA』のようなロック・アルバム然とした作品が代表作と言えるのは確かである。とはいえ、米国ロック界の“ボス”と呼ばれる彼は、突如作風を変えたりする。自宅録音で弾き語り調の『ネブラスカ』(1982年)なんかはその例だったし、今回取り上げる『ウィ・シャル・オーヴァーカム:ザ・シーガー・セッションズ(We Shall Overcome: The Seeger Sessions)』は、彼がロックの王道から外れた盤としては突出した例と言える。 通りいっぺんの言い方をするならば、スプリングスティーンにとって初のカバー・アルバムである。取り上げているのは、フォーク・シンガーのピート・シーガー(1919~2014年)の楽曲である。公民権運動に関わったピート・シーガーのスタンスとか政治的・信条的な側面をスプリングスティーンと関連付けることもできるだろうが、実際にアルバムを聴いてみると、“音楽(音を楽しむ)”を地で行くような演奏や歌が何より印象的なアルバムに仕上がっている。 とはいっても、アメリカン・ロック界のボスの歌声がスティール・ギターやバンジョーなどの中で軽快に踊っている姿は想像しにくいかもしれない。しかし、スプリングスティーンの根は結局のところ、フォークやカントリー、ブルーグラスといった米国トラディショナル音楽にあることを再認識させられる(今さらながら、ウッディ・ガスリーなんかの曲だってそういえば以前からスプリングスティーンは取り上げていた)。 上述の“音を楽しむ”という観点を中心に考えながら、お勧め曲を挙げておきたい。1.「オールド・ダン・タッカー」、4.「オー、メアリー・ドント・ユー・ウィープ」、5.「ジョン・ヘンリー」、8.「マイ・オクラホマ・ホーム」、11.「ペイ・ミー・マイ・マネー・ダウン」といった楽曲は、こうした観点では本盤を代表するナンバーと言える。他方、おとなしくシンプルな曲調の哀愁漂うナンバーも見られる。あと、個人的な好みでは、10.「シェナンドー」と表題曲の12.「ウィ・シャル・オーヴァーカム」がいい。 あと、筆者所有の盤(アメリカン・ランド・エディション)のボーナストラックにも魅力的な曲が並んでいる。14.「バッファロー・ギャルズ」は本編に収録して欲しかったと思うほどの出来。16.「ハウ・キャン・ア・プア・マン・スタンド・サッチ・タイムズ・アンド・リヴ」は、スプリングティーン節の歌や演奏と本盤の楽曲たちの接点が垣間見られるという意味で興味深い。18.「アメリカン・ランド」はニューヨークでのライヴ・テイクだが、本盤の雰囲気がそのままにライヴで演奏されている。 本盤はブルース・スプリングスティーンの代表盤と言われることは決してないだろう。けれども、彼の音楽にある程度親しみ、その先(否、そのルーツなので“さかのぼる”と言った方が正確か)にあるものを垣間見たいと思った人には真っ先に勧めたくなる盤ということになる。その一方で、いわゆる“アメリカン・ロック”と“アメリカン・ルーツ・ミュージック”の関係を考えるとき、こういうところで実はつながっているのというのは、ヒット・チャートやメジャーどころのロック/ポップスだけを聴いていては決してわからない、そんな奥深い世界を垣間見させてくれるアルバムでもあると思う。[収録曲]1. Old Dan Tucker2. Jesse James3. Mrs. McGrath4. O Mary Don't You Weep5. John Henry6. Erie Canal7. Jacob's Ladder8. My Oklahoma Home9. Eyes on the Prize10. Shenandoah11. Pay Me My Money Down12. We Shall Overcome13. Froggie Went A-Courtin'~以下、手持ちの盤(アメリカン・ランド・エディション)のボーナストラック~14. Buffalo Gals15. How Can I Keep from Singing?16. How Can a Poor Man Stand Such Times and Live?17. Bring 'Em Home18. American Land2006年リリース。 ウィ・シャル・オーヴァーカム:ザ・シーガー・セッションズ [ ブルース・スプリングスティーン ] 以下のブログランキングに参加しています。お時間の許す方は、クリックで応援よろしくお願いします。 ↓ ↓ ↓
2019年07月11日
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ニューオーリンズの音楽の深みに嵌る必聴盤(後編) 前編ではドクター・ジョン(Dr. John)のこの時期やアルバム『ガンボ』の位置づけについて私見を述べてみた。後編となる今回は、アルバム所収の曲について個人的に聴きどころと思う部分を中心にいくらか見ていきたい。 収録曲は主にニューオーリンズの伝統的R&B系の楽曲で、中にはトラディショナルとしてクレジットされている曲もある。唯一4.はマック・レベナック(つまりはドクター・ジョン)の名義であるが、基本的にはほぼ全編がカバーで占められている。 シングル・カットされた1.「アイコ・アイコ」は、元は1950年代のジェイムズ・"シュガー・ボーイ"・クロフォードの曲で、現題は「ジャカモ(Jock-A-Mo)」というが、さらに元をたどると、マルディグラ・インディアンのチャントに基づいてできた曲とのこと。トラディショナル曲である8.「スタッカ・リー」は、後述の2.と並んで筆者の推しナンバー。「アイコ・アイコ」にしても、「スタッカ・リー」にしても、きっとニューオーリンズの街のあちらこちらで演奏されていたであろう楽曲を、本盤の演奏でうまく自分色に染めて提示している。 ヒューイ・"ピアノ"・スミスのナンバーである2.「ブロウ・ウィンド・ブロウ」は、個人的には本盤を象徴する演奏という印象を抱いている。なお、このヒューイ・スミスはドクター・ジョンへの影響が大きいようで、11.のメドレー(「ハイ・ブラッド・プレッシャー~ドント・ユー・ジャスト・ノウ・イット~ジョン・ブラウン」)が彼のカバーのメドレーであるほか、12.「リトル・ライザ・ジェーン」でもこの人のカバーを披露している。 他に注目したい曲としてぜひ挙げておきたいのは、5.「メス・アラウンド」。アトランティック・レコードを立ち上げたアーメット・アーティガンのペンにより、レイ・チャールズで知られる曲。さらに、ニューオーリンズと言えば外せないプロフェッサー・ロングヘアによる9.「ティピティーナ」、アール・キングの6.「レット・ザ・グッド・タイムズ・ロール」(ジミ・ヘンドリックスのカバーでも知られる)も聴き逃がせない。…というわけで、結局は過半の曲を挙げることになってしまったが、ニューオーリンズ音楽への入口としても好適なアルバムで、なおかつ、ドクター・ジョンの代表盤の一つとしてこれからも聴き継がれていくに違いない、そんな作品と言えるだろう。[収録曲]1. Iko Iko2. Blow Wind Blow3. Big Chief4. Somebody Changed The Lock5. Mess Around6. Let The Good Times Roll7. Junko Partner8. Stack-A-Lee9. Tipitina10. Those Lonely Lonely Nights11. Huey Smith Medley: High Blood Pressure~Don't You Just Know It~Well I'll Be John Brown12. Little Liza Jane1972年リリース。 ガンボ/ドクター・ジョン[CD]【返品種別A】 ガンボ [ ドクター・ジョン ] 以下のブログランキングに参加しています。お時間の許す方は、 クリックで応援よろしくお願いします。 ↓ ↓
2019年06月29日
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ニューオーリンズの音楽の深みに嵌る必聴盤(前編) 本名マルコム・ジョン・レベナック・ジュニア(Malcolm John Rebennack Jr.)、アーティスト名はドクター・ジョン(Dr. John)。怪しげな衣装と怪しげな曲のモチーフ(特にヴードゥー教関係)、それらに伴う独特の存在感で知られたこの人物は、1941年ニューオーリンズ出身で、つい先頃(2019年6月6日)亡くなったアーティストである。個人的には、彼の代表盤である『ガンボ(Dr. John's Gumbo)』を取り上げようと長らく思っていながらも、そのままにしてしまっていて、先の訃報(参考過去記事)に接して後悔している。改めて追悼の意を込めて、今回はこの盤について少し考えてみたい。 60年代~70年代にかけて、米国南部への音楽的探究なる動きがあった。ザ・バンド(参考過去記事(1) ・(2) ・(3) )なんかがわかりやすい例だが、彼らは、米国音楽の深い境地に迫ろうと意識を合衆国南部へと向けていった。この方向の動きが、ある意味では“探索”や“探検”と呼べるものだったのに対して、では、ニューオーリンズの側において何が展開していたのだろうかという見方も同時に必要だろうと思う。喩えてみれば、“コロンブスが原住民を発見した”という時、“発見された側”にも主体性はあったはずなわけだから。 そういう風に考えてみると、ドクター・ジョンの初期の音楽は、その“探求される側”の状況を如実に示していたのではないだろうか。つまるところ、多くの聴き手(さらには多くのミュージシャン)にとって“対象”となる側が、主体として繰り広げていた事柄をうまく伝わる形で外に出すことができたのが、その当時のドクター・ジョンだったのではないかと思うわけである。 ドクター・ジョンの背景にあるのは、ひとことで言ってしまえば、ブルース、R&B、ジャズといったニューオーリンズの根深い音楽文化。そうしたバックグラウンドに、ヴードゥー教文化やサイケデリックといった要素が散りばめられたのが初期のドクター・ジョンの全般的な特徴と言えるだろうが、注目すべきはそのバックグラウンドの“雑種性”にあると思う。“雑種性”というのは聞こえがよくないかもしれないが、決して悪い意味ではない。言い換えれば、これぞ“ニューオーリンズ”という一つの確固たるものがあるというよりも、様々な要素が時にごった煮になりつつ深みのあるものとして存在する、という意味である。そして、そうした深みが本盤『ガンボ』の持ち味にもなっている。 話が長くなってきたので、続きは後編で(曲目データ等は、後編に掲載しています)。 ガンボ [ ドクター・ジョン ] ガンボ/ドクター・ジョン[CD]【返品種別A】 下記のブログランキングに参加しています。 応援くださる方は、バナーをクリックお願いします! ↓ ↓
2019年06月28日
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賛否両論あれども、結局はサンタナらしい1枚 サンタナ(Santana)が1978年に発表した第10作となるアルバムが、この『太陽の秘宝(Inner Secrets)』である。ファンや批評家の間ではいろいろと言われる作品で、要は“今までの音楽を捨てて変な方向に行ってしまった”というようなことがよく言われる。 ジャケット写真は、メンバーがギャラを上げるようカルロス・サンタナに迫っている場面だと言われたりする(ほんまかいな…)。その真偽はともかく、本盤が“売れ筋”を意識したものだったことは確かである。ディスコ風な受け狙いは特に明瞭で、シングルとなった(ただしさしてヒットはしなかった)3.「ワン・チェイン」なんかはその傾向が露骨である。同じくシングル・カットされた4.「ストーミー」は、ジョージ・ベンソンみたいな方向に行きたかったのかと思ってしまう。 他にアルバム志向のロックの方向を向いていると言われたりもするけれど、少々乱暴にまとめてしまえば、大きくは“サンタナのポップ化”だったんだろうと思う。従来のラテン/フュージョン色が薄れ、通常のロック的演奏や、ディスコ風、ポップ音楽らしさが増している。収録曲のうち5曲(B面も入れると1.と8.以外の全曲)をシングルにしてしまっている辺りは、一般受けを狙った意図みたいなものを感じる(とはいえ、どれも大きなヒットにはならなかったのだけれど)。 とまあ、印象の良くないことを並べ立ててしまったものの、個人的には、このアルバムは案外気に入っている。確かにサンタナらしさとしてイメージされる個性が前面に出ているとは言い難いのだけれども、聴きやすくとっつきやすいのも事実である。そして何よりも、目先が変わろうが、ポップやディスコを志向しようが、不思議とサンタナらしさは脈々と続いている。筆者的にはそれが妙に安心して聴けると感じる要因であるように思う。とてもサンタナらしい演奏もサンタナであれば、いろいろやってみているサンタナもまた、結局はサンタナなのだと気づかされる。サンタナの作品を初めて1枚聴いてみたいと言われたならば、筆者は本盤を勧めることはない。でも、このバンドの作品をいくつか聴いていく中の1枚という位置づけであるならば、これもサンタナなのだ、という気分でぜひ勧めたくなる1枚だったりする。[収録曲]1. Dealer/Spanish Rose2. Move On3. One Chain (Don't Make No Prison)4. Stormy5. Well All Right6. Open Invitation7. Life Is a Lady/Holiday8. The Facts of Love9. Wham!1978年リリース。 【メール便送料無料】Santana / Inner Secrets (輸入盤CD)(サンタナ) 次のブログのランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、クリックで応援をよろしくお願いします! ↓ ↓
2019年06月25日
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20歳のスティーヴィーが見せたアーティストとしての大きな一歩 スティーヴィー・ワンダー(Stevie Wonder)が1970年にリリースしたスタジオ第5作がこの『涙をとどけて(Signed, Sealed and Delivered)』である。スティーヴィー・ワンダーは数々のグラミー受賞など輝かしい経歴を持っているけれども、幼いころからキャリアを積み重ねてきた。11歳でモータウンのオーディションに合格し、“リトル・スティーヴィー・ワンダー”の名でデビューし(デビュー・アルバムはこちら)、13歳にして全米ポップチャート1位(「フィンガーティップス」)を送り出した。 そんな彼にとって大きなターニング・ポイントを迎えることになったのが本盤だった。“天才児”といっても、すべての曲を自分で作詞作曲していたわけでも、プロデュースをやっていたわけでもなかった。しかし、モータウンとの契約継続の際に彼はプロデュース権を交渉した。自ら多くの楽器演奏も手掛けて共同プロデュース(細かく言うと2.と3.の2曲のセルフ・プロデュース、さらに3曲で共同プロデュース)した最初の盤がこの『涙をとどけて』になったというわけである。 以上のようなわけで、本作はスティーヴィー・ワンダーにとっての大きな転機となった作品だったと言える。とはいえ、状況の変化にもかかわらず、“天才”ぶりはそのままに作品を作っているところもまた興味深い。しっとりとしたバラードから躍動感あるアップテンポまで、ヴォーカルの冴えはもちろんのこと、楽器演奏でも天才ぶりを発揮している。歌声は確かに若々しいが、作品全体の出来としては20歳の若者の作品というには恐ろしいほど計算され、緻密に作られている。その才能が見事に花開くのは、後の『トーキング・ブック』(1972年)や『キー・オブ・ライフ』(1976年)などの名盤群であるが、その下地がどう形成されていっているのかが、本作品からは感じ取られる。 いくつか注目曲を挙げておきたい。本盤収録曲からは複数の楽曲がシングルとして発売され、ヒットした。最大のヒットは表題曲の3.「涙をとどけて」で、全米チャート3位(R&Bチャートでは1位)となった。それに次ぐのが4.「ヘブン・ヘルプ・アス・オール」で、全米9位(R&Bチャート2位)であった。とはいえ、筆者がより気に入っているのは、1.「夢の中の君(ネヴァー・八ド・ア・ドリーム・カム・トゥルー)」と2.「恋を抱きしめよう(ウィ・キャン・ワーク・イット・アウト)」。前者はアルバム発売に先立つこと半年ほど前にリリースされたシングルで、アルバム冒頭のインパクトというのも手伝って、個人的には特に印象が強いナンバーだったりする。後者は、言わずと知れたビートルズ・ナンバーのカバーだが、批評するのが憚れる見事な仕上がりになっている。あと、LPではB面トップだったバラードの7.「ドント・ワンダー・ホワイ」、アルバム末尾を締めくくる11.「歌がなければ(アイ・ガッタ・ハヴ・ア・ソング)」と12.「サムシング・トゥ・セイ」も個人的には大事な聴きどころ。20歳の若者のヴォーカルとは到底思えない余裕はどう理解すればよいのか、いまだに聴いたこちらが戸惑ってしまう。[収録曲]1. Never Had a Dream Come True2. We Can Work It Out3. Signed, Sealed, Delivered I'm Yours4. Heaven Help Us All5. You Can't Judge a Book By Its Cover6. Sugar7. Don't Wonder Why8. Anything You Want Me To Do9. I Can't Let My Heaven Walk Away10. Joy (Takes Over Me)11. I Gotta Have a Song12. Something to Say1970年リリース。 【メール便送料無料】Stevie Wonder / Signed Sealed & Delivered (輸入盤CD)(スティーヴィー・ワンダー) 次のブログのランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、“ぽちっと”クリックで応援をよろしくお願いします! ↓ ↓
2019年06月22日
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エルトン初期の密かな好盤 エルトン・ジョン(Elton John)がソロ・デビュー盤(『エルトン・ジョンの肖像(原題:エンプティ・スカイ)』、当時は米国ではリリースされず)を発表したのは1969年のこと。翌1970年のセルフ・タイトルのセカンド作『僕の歌は君の歌(原題:エルトン・ジョン)』からは「僕の歌は君の歌(ユア・ソング)」がヒットし、アルバムも全英5位、全米4位となった。その後、1972年には『ホンキー・シャトー』をリリースし、収録曲「ロケット・マン」は全英2位、全米6位となったほかアルバムも全英1位、全米2位の成功を収めた。 ところで、『僕の歌は君の歌』から『ホンキー・シャトー』の狭間で、エルトンは2枚のアルバムを発表している。第3作にあたる『エルトン・ジョン3(原題:タンブルウィード・コネクション)』と第4作の『マッドマン(原題:マッドマン・アクロス・ザ・ウォーター)』である。前者はかなりのヒット(全英2位、全米5位)だったのでさほどでもないかもしれないが、セールス的にはやや低調だった(と言っても全英41位、全米8位)『マッドマン』の方は、多作なエルトンゆえに今となっては見過ごされやすい盤になってしまっているような気がしてならない。 結論から言えば、本盤『マッドマン』は名曲ぞろいの実に好盤である。2.「リーヴォンの生涯」と1.「可愛いダンサー」がシングル発売されたが、前者は全米24位、後者は41位と大きくヒットしたわけではなかった。また、派手なステージ衣装とパフォーマンスを繰り広げていった往時のエルトンのライヴでは、ここに収録された楽曲はあまり取り上げられなかった。そんなこともあってか、好曲が居並ぶにもかかわらず、印象が薄い盤となってしまったのかもしれない。 そうした好曲群の一部を見てみたい。上記1.「可愛いダンサー」はメロディ・センスが抜群。同じくメロディの美しさでは、8.「偽りの人々」もおすすめである。他方、曲展開の素晴らしさという点で注目したいのは、シングルとなった上記2.「リーヴォンの生涯」、さらには4.「マッドマン」と5.「黄昏のインディアン」。これらの曲にとりわけ顕著に見られるもう一つの特徴として、本盤ではストリングスを生かした叙情性いっぱいの演奏が頂点を極めていると言ってもいい。“明るいエンタテイナー”のエルトン・ジョンを求めると期待が外れるかもしれないが、個人的には、エルトン・ジョンの真髄はきっとこういう楽曲や演奏にあるという気がしている。その意味では、あまり目立たないが聴き逃がすわけにはいかない1枚だと思う。[収録曲]1. Tiny Dancer2. Levon3. Razor Face4. Madman Across the Water5. Indian Sunset6. Holiday Inn7. Rotten Peaches8. All the Nasties9. Goodbye1971年リリース。 【メール便送料無料】Elton John / Madman Across The Water (輸入盤CD) (エルトン・ジョン) 以下のブログランキングに参加しています。お時間の許す方は、 クリックで応援よろしくお願いします。 ↓ ↓ ↓
2019年06月19日
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1979年のドクター・ジョン(後編) 『シティ・ライツ(City Lights)』(前編を参照)がリリースされた1979年、ドクター・ジョン(Dr. John)は、同じホライズン・レーベルでもう1枚アルバムを制作して発表している。それが『タンゴ・パレス(Tango Palace)』という作品である。 前項にも書いた通り、プロデュースはトミー・リピューマとヒュー・マクラッケン。前作とは異なり、ハリウッドで録音とのことである。管楽器を中心に多くのミュージシャンが参加しているが、前作と目立って違うのは、ドラムス/パーカッション人の充実ぶりである。スティーヴ・ガッドをはじめ3人のドラマーが参加し、パーカッション陣も前作より増強されている。このことはそのままサウンドにも反映されている。 本盤では、前作のライトでメロウなフュージョン色は鳴りを潜め、ファンキーなリズム感が前面に出ている。一言でいえば、ドクター・ジョン的、ニューオーリンズ的な音とリズムがここでは主体となっている。 では、“いつものドクター・ジョン”の作品になっているのかと言えば、どこか腑に落ちない点がある。おそらくそれはホライズンというジャズ/フュージョンを扱うレーベルで、上述のプロデューサーたちによって制作されたことによるのだろう。感覚的な言い方になってしまうが、どこかしら都会的な香りがするのである。 ドクター・ジョンらしさをベースに持つナンバーとしては、1.「キープ・ザット・ミュージック・シンプル」、3.「レネゲード」、4.「フォンキー・サイド」、5.「ボン・テンプス・ルーラー」といったところがとくにお勧め。これらをはじめ各曲にも、上述の都会風な香りを漂わせるところはあるのだけれど、表題曲の8.「タンゴ・パレス」は、その都会らしさを妙に醸し出す曲になっている気がしてならない。異国情緒あるタンゴの雰囲気で始まるかと思いきや、文化の交叉路ニューオーリンズらしくすべてをのみ込んでしまい、最後は9.「ルイジアナ・ララバイ」と違和感なくつながっていくのが不思議なところである。 結局、ドクター・ジョンがホライズン・レーベルに吹き込んだのは、前回記事の『シティ・ライツ』と今回の『タンゴ・パレス』の2作だけとなった。とはいえ、何とも対照的かつどこか共通性の残る2枚が相次いで残されたのは、当時ならずとも、いまから聴いてみようという聴き手にとっても興味深い。ドクター・ジョンは数多くのアルバムを出していて、筆者もすべては聴くことはできていないのだけれど、時系列で聴いていくと、彼自身の歩みや変遷も見えてくるようなことがあって、そういう聴き方もなかなか面白いんじゃないかと思う。[収録曲]1. Keep That Music Simple2. Disco-Therapy3. Renegade4. Fonky Side5. Bon Temps Rouler6. Something You Got7. I Thought I Heard New Orleans Say8. Tango Palace9. Louisiana Lullabye1979年リリース。 ↓本盤(プレミア中古?)の参考リンクです↓ Tango Palace【中古】 ↓こちらはベスト盤↓ 【輸入盤】Very Best Of Dr John [ Dr. John ] ブログランキングに参加しています。 応援くださる方は、ぜひクリックをお願いします。 ↓ ↓ ↓
2019年06月13日
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1979年のドクター・ジョン(前編) 先週、ドクター・ジョン(Dr. John)の訃報に際していくつか動画の入った記事(「アイコ・アイコ」ほか)は書いたものの、まだまだ取り上げたかったアルバムが多くある。ひとまず、今回はそのうちの2作について取り上げたいと思う。彼は、1970年代末にA&M傘下のホライズンなるジャズ/フュージョン系のレーベルに2枚のアルバムを吹き込んでいる。今回はこれらの作品を2回に分けて見ていきたい。 まず1枚めは、1978年に吹き込まれ、翌79年初頭にリリースされた『シティ・ライツ(City Lights)』という盤である。プロデュースは同レーベルを立ち上げたトミー・リピューマ(ちなみにこの人物は後に『イン・ア・センティメンタル・ムード』や『アフターグロウ』もプロデュースすることになる)と、ギタリストのヒュー・マクラッケンで、次に取り上げるもう1枚も同じ2人が共同プロデュースをしていて、ニューヨークで録音された。 ホライズンというレーベル(あるいはプロデューサーのリピューマ)らしく、フュージョンもしくはライト・ジャズ的なサウンドが展開される。したがって、ドクター・ジョン独特の怪しさやヴードゥー的な雰囲気は鳴りを潜めている。アレンジも演奏も入念にでき上っていて、大人の雰囲気である。管楽器の奏者にはデビッド・サンボーンをはじめ手練のミュージシャンたちが名を連ねている。 その一方で、ヴォーカルのドクター・ジョンの声はやはり彼そのものだったりもする。上記のアレンジや演奏とこのヴォーカルの組み合わせというのはギャップがあるのかと思いきや、実際に聴いてみると意外と違和感がない。あのダミ声はそのままながら、実はドクター・ジョンのヴォーカリストとしての間口の広さがわかるという結果になっているのは、本盤のなかなか興味深い部分だと思う。 個人的に、本アルバムいちばんの聴きどころは、4.「レイン」と7.「ソナタ/ヒーズ・ア・ヒーロー」。なるほどドクター・ジョンの作品としては珍しく“作り込まれた感”が強い。他には、1.「ダンス・ザ・ナイト・アウェイ・ウィズ・ユー」や2.「ストリート・サイド」もいいが、確かに若干の窮屈さを本人が抱え込んでいる感じもしなくはない。特に表題曲の8.「シティ・ライツ」は、良い曲なんだけどそんな感じが聴き手にも伝わってきてしまうようにも思う。 ちなみに、本作品のジャケットの絵はネオン・パークによるものである。この名前でピンと来ない人も、リトル・フィートのほとんどのアルバムのジャケットを手掛けたアーティストといえば、なるほど、となるのではないだろうか。[収録曲]1. Dance the Night Away With You2. Street Side3. Wild Honey4. Rain5. Snake Eyes6. Fire of Love7. Sonata/He's a Hero8. City Lights1979年リリース。[参考記事リンク]1979年のドクター・ジョン(後編) ↓こちらはベスト盤↓ ベリー・ベスト・オブ・ドクター・ジョン [ ドクター・ジョン ] ↓今回取り上げた盤↓ 【メール便送料無料】Dr. John / City Lights (輸入盤CD)(ドクター・ジョン) 下記のブログランキングに参加しています。 応援くださる方は、バナーをクリックお願いします! ↓ ↓
2019年06月12日
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人気絶頂の大ヒット作にしてバンドのラスト・アルバム いきなり個人的体験の話から始まるが、“共時性”などという難しい意味の英語の単語を知ったのは、このアルバムによってだった。ポリス(The Police)が1983年にリリースしたアルバム『シンクロニシティー(Synchronicity)』のことである。 ポリスは1970年代後半にシーンに登場し、1979年には「孤独のメッセージ」がヒットし、その後も順調にヒット曲を積み上げていった。1983年のこの作品も幅広い層から熱い支援を受け、先行シングルの7.「見つめていたい(エヴリ・ブレス・ユー・テイク)」は、米ビルボードで8週連続1位となった。アルバム自体も17週連続で1位という大ヒットとなった(イギリスでも初登場1位となり、2週連続1位を続けた)。アルバムはグラミーを逃したとはいえ、その競合相手はマイケル・ジャクソンの『スリラー』で、年間シングルでは、逆に「見つめていたい」がマイケルの「ビリー・ジーン」を抑えてグラミーを獲得している。 大ヒットにもかかわらず、ポリスの3人は、翌1984年になるや否や活動休止を発表する。その後、1986年に3人が再び集まろうとしたものの、シングルを発表するにとどまった。さらに年月を経て、恒久的ではない形で合流して演奏はしているものの、実質的なバンドとしてアクティヴだった期間は本盤の時までで、デビュー作のリリース時点から数えるとわずか5年ちょっとであった(それ以降、特にスティングがソロ・キャリアを充実させていったのは周知の通りである)。 本盤で目を引く曲はというと、まずは上記の7.「見つめていたい」であろう。英米のほかにも複数の国でチャートの1位を獲得した。さらに、9.「アラウンド・ユア・フィンガー(ラップト・アラウンド・ユア・フィンガー)」もシングルとして英チャート7位、米チャート8位の記録を残している。実はスティング好きの筆者は、後のスティングの作風とつながっているこの曲が結構お気に入りだったりする。 他に注目したい曲をと思うのだけれど、ポリスは3人のバンドであるとはいえ、どうしてもスティングの志向性に個人的には寄ってしまう。10.「サハラ砂漠でお茶を(ティー・イン・ザ・サハラ)」もまた、スティングのその後の活動を意識させるナンバーだと思う。あと、CDとカセットのボーナス曲だった11.「マーダー・バイ・ナンバーズ」もその流れでは外せない曲。最後に、3人組のポリスらしいものとして、シングルとなった6.「シンクロニシティーII」も外せない。いやはや、個人的には「シンクロニシティーI」も好きなのだけれど、これ以上挙げると全曲になってしまいそうなので、この辺にしておきたい。[収録曲]1. Synchronicity I 2. Walking in Your Footsteps3. O My God 4. Mother 5. Miss Gradenko 6. Synchronicity II7. Every Breath You Take 8. King of Pain9. Wrapped Around Your Finger10. Tea in the Sahara 11. Murder by Numbers *CD、カセットのボーナス曲(LP未収録)1983年リリース。 シンクロニシティー [ ザ・ポリス ] 下記のランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、バナーをクリックして応援いただけると嬉しいです! ↓ ↓
2019年06月11日
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ドクター・ジョン追悼 大物ミュージシャンのドクター・ジョン(Dr. John)が昨日(2019年6月6日)心臓発作で亡くなったとのことです。享年77歳です。1941年ニューオーリンズ出身で、マック・レベナック(本名はマルコム・ジョン・レベナック・Jr)の名でも活躍しました。グラミーを計6回受賞、ロックの殿堂入りも果たしています。ここ数年は調子を崩していたとのことなのですが、いきなりの訃報に接し、ショックを受けています。 彼のアルバムは、これまで本ブログでもいくつか取り上げています(例えば、『グリ・グリ』、『イン・ザ・ライト・プレイス』、『イン・ア・センチメンタル・ムード』など)。でも、まだまだこれから取り上げたいと思っていたアルバムが多すぎて、そうこうするうちに新しいアルバムが増えていって…などと想像していましたが、もう新作には出会えないということになってしまいました。 追悼の意を込めて、何曲か動画をピックアップします。まずは、彼のレパートリーの中で代表曲の1つに数えられる「アイコ・アイコ(Iko Iko)」です。彼の元のヴァージョン(トラディショナル曲)は代表盤『ガンボ』に収録されていますですが、以下のものは、1995年、モントルーのライヴ演奏のシーンです。 続いては、上と同じく1990年代の映像ですが、エリック・クラプトンとの共演で1973年のヒット曲、「ライト・プレイス・ロング・タイム」(原曲はアルバム『イン・ザ・ライト・プレイス』に収録)です。 次にもう少し時代をさかのぼって、1981年のパフォーマンスで、「サッチ・ア・ナイト」です。原曲は上の「ライト・プレイス~」と同じアルバムに収録されていてシングルにもなったものです。 さらに続けますが、もう少し新しいものということで、2012年のアルバム『ロックト・ダウン』(これも実に優れたアルバムで、そのうち取り上げたいと思っています)からのナンバーで、「レヴォリューション」です。 最後は、こちらのビデオをご覧ください。実は、リンゴ・スターのオール・スター・バンドによる「ザ・ウェイト」も脳裏によぎったのですが、その映像はリヴォン・ヘルムが亡くなった時に取り上げましたので、別のものにします。1988年のものとのことですが、ジョニー・ウィンターとセッションをやっている映像です。ジョニー・ウィンターは2014年に亡くなっていて(さらには上記のリヴォン・ヘルムも2012年に亡くなっています)、残念なことに、ドクター・ジョンもまた鬼籍に入るということになってしまいました。 でも、きっとドクター・ジョンは天国に行ってもセッション仲間を見つけて演奏するのでしょうね。そう思いたいです。ドクター・ジョンのご冥福をお祈りいたします。R.I.P. ベリー・ベスト・オブ・ドクター・ジョン/ドクター・ジョン[SHM-CD]【返品種別A】 ガンボ/ドクター・ジョン[CD]【返品種別A】 オリジナル・アルバム・シリーズ [5CD/輸入盤][CD] / ドクター・ジョン 以下のブログランキングに参加しています。お時間の許す方は、 クリックで応援よろしくお願いします。 ↓ ↓ ↓
2019年06月08日
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移ろいゆくバンド像 ドゥービー・ブラザーズ(The Doobie Brothers)というバンドの最高の時期と言えば、セカンド作『トゥールーズ・ストリート』(1972年)から、彼らの代表盤とされる『キャプテン・アンド・ミー』(1973年)を経て、『ドゥ―ビー天国』(1974年)に至るころと筆者は確信している。しかし、上記の時期を支えた中心メンバーのトム・ジョンストンは、健康を害してバンドから離脱していく。1975年にはツアーから抜け、1976年の第6作では復帰したものの、1曲だけの提供となった。それに続く本盤『運命の掟(Livin' On The Fault Line)』は、ジョンストンの名がクレジットされた最後のアルバムとなった(曲も準備していたらしいが、最終的にはそれらは含まれなかった)。 これと並行して、1975年のツアーからジョンストンに代わってバンドで存在感を発揮したのはマイケル・マクドナルドだった。スティーリー・ダンのツアー・メンバーだった彼は、第6作『ドゥ―ビー・ストリート』、続く本盤『運命の掟』、さらには次作となった『ミニット・バイ・ミニット』と存在感を見せ、特に『ミニット~』は大ヒットとなった。まさにこの変化していく過程の作品の一つが本盤ということになる。 よく言われるように、この『運命の掟』には、ジャズ的要素や“スティーリー・ダン”っぽさが漂う。かつての野性味に溢れた西海岸サウンドや、カントリー・ロック的なバンド像はもはやそこにはない。前作『ドゥ―ビー・ストリート』の方向性を推し進めて、ポップ・ソウルやR&B色を強め、都会的で洗練された響きが強い。こうした傾向の“マイケル・マクドナルド期”のドゥービー・ブラザーズは、もはや1970年代前半と同じバンドとは言えないほど変わってしまっている。 そのようなわけで、そもそも一つのバンドと見なすから“あちらがよい”“こちらがよい”といった話になるわけで、別のものとして見てもいいのかもしれない。そんな観点に立って言い直すならば、筆者は1970年代後半のドゥ―ビー・ブラザーズも好きである。 注目曲をいくつか挙げておきたい。1.「思いのままに(ユア・メイド・ザット・ウェイ)」は、マイケル・マクドナルドとジェフ・バクスター(マクドナルドの少し前にバンドに合流)という後から加わったメンバーの色がトータルな意味でよく出ている。4.「ユー・ビロング・トゥ・ミー」はマクドナルドとカーリー・サイモンの共作で、シングル・カットされたほかサイモンのヴァージョンがヒットした。 オリジナル・メンバーのパトリック・シモンズのペンによる曲も結構収録されているが、曲そのものは彼らしさ(つまりは以前のドゥ―ビーからの連続性)が見られるものの、“味つけ”は大きく異なるという印象である。例えば、表題曲の5.「運命の掟(リヴィン・オン・ザ・フォールト・ライン)」は、リズムが前面に出ているが、ヴィブラフォンなどの楽器もフィーチャーし、インプロヴィゼーショナルなソロ・プレイが印象に残る。7.「チャイナタウン」も、アレンジと演奏は一気に繊細で都会的な雰囲気になっているという感じ。繰り返しになるが、以前のドゥービー・ブラザーズをいったん忘れて聴いてみると、この路線はこの路線でなかなかいいように思うのだけれど。[収録曲]1. You're Made That Way2. Echoes of Love3. Little Darling (I Need You)4. You Belong to Me5. Livin' on the Fault Line6. Nothin' But a Heartache7. Chinatown8. There's a Light9. Need a Lady10. Larry the Logger Two-Step1977年リリース。 Doobie Brothers ドゥービーブラザーズ / Livin' On The Fault Line: 運命の掟 輸入盤 【CD】 次のブログのランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、クリックで応援をよろしくお願いします! ↓ ↓
2019年06月05日
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1980年代後半リリースの快盤 ブライアン・アダムス(Bryan Adams)は、1959年生まれでカナダ出身のロック・ミュージシャン。1980年にデビュー(デビュー盤過去記事はこちら)し、当時のロック界でヒット街道を歩んだ。特に1984年発表の『レックレス』は、同年のブルース・スプリングスティーンによるお化けアルバム『ボーン・イン・ザ・U.S.A.』に次いで年間2位のセールスを記録したし、1990年代初頭の『ウェイキング・アップ・ザ・ネイバーズ』やそれに続く映画『三銃士』のテーマのシングル・ヒット(スティング、ロッド・スチュワートとの共演)も大きなヒットとなった。 そんな彼にとって1980年代後半の唯一のスタジオ作が1987年リリースの『イントゥ・ザ・ファイヤー(Into The Fire)』だった。前作の『レックレス』(全米1位)、次作の『ウェイキング~』(全英1位)と比べると、やや控えめ(全米7位、全英10位)であったものの、ヒット作に挟まれてやや印象が薄くなってしまっているアルバムと言えるかもしれない。けれども、その内容は忘れるのがもったいないというのが個人的な感想だったりする。「ヘヴン」をヒットさせた彼が、やがて「アイ・ドゥ・イット・フォー・ユー」をヒットさせることになる前の、着実な成長と成熟の過程が感じられる好盤である。 筆者のお気に入りをいくつか挙げてみたい。まずは、少し陰のある雰囲気を醸し出すロック・ナンバーの1.「ヒート・オブ・ザ・ナイト」。ヴォーカルがカッコいいだけでなく、ギターのリフやソロも印象的である。アルバム表題曲の2.「イントゥ・ザ・ファイヤー」は、最も1980年代のブライアン・アダムスらしい曲調のナンバーと言えそうに思う。7.「反逆者(レベル)」は、「ヘヴン」なんかと同じ流れの中に位置づけられるミディアム・スローのナンバーで、曲の展開、ヴォーカル、ギター、どこをとってもお気に入りの、本盤中で特に出色の1曲。あと、個人的に妙に気に入っている曲の一つが、9.「ハーツ・オン・ファイヤー」。比較的シンプルな曲なのだけれど、この曲のサビは発表当時に聴いてすぐの頃から、どうも頭の片隅に刻み込まれて離れそうもないまま、今まで長年が経過していたりする。[収録曲]1. Heat of the Night2. Into the Fire3. Victim of Love4. Another Day5. Native Son6. Only the Strong Survive7. Rebel8. Remembrance Day9. Hearts on Fire10. Home Again1987年リリース。 Bryan Adams ブライアンアダムス / Into The Fire + 3 【SHM-CD】 イントゥ・ザ・ファイヤー +3/ブライアン・アダムス[SHM-CD]【返品種別A】 以下のブログランキングに参加しています。お時間の許す方は、 クリックで応援よろしくお願いします。 ↓ ↓ ↓
2019年05月27日
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小気味よいソロ・デビュー作 ニルス・ロフグレン(Nils Lofgren)は、1951年生まれのアメリカのロック・ギタリスト。ニール・ヤングの吹込みやクレイジー・ホースのファースト作にも参加しているが、グリン(Grin)というバンド名義で1971年にレコード・デビューしている。しかし、このバンドは大きなヒットを残すことなく1974年に解散し、翌1975年に彼自身のソロ第1作としてリリースされたのが、セルフ・タイトルのファースト作、『ニルス・ロフグレン(Nils Lofgren)』だった。 ロック少年そのままに小気味よいプレイが身上だが、アルバムを通して聴くと、ポップな曲調からシンプルかつソリッドなロック調まで含まれていることに気づく。オーヴァーチュア的な1.に続く2.「バック・イット・アップ」は、ストレートなロック・ナンバーの典型の一つ。同じく直球のロックンロール曲としては、後々も彼の代表曲になっていった6.「キース・ドント・ゴー」があり、こちらはキース・リチャーズに捧げられたナンバー。あと、本盤で密かにナンバー1かもと個人的に思っている曲として、10.「ロックンロール・クルック」も含まれている。 他方、ポップな要素の強いナンバーの存在感も際立っている。アルバム末尾の11.「一人残されて(トゥー・バイ・トゥー)」と、キャロル・キングの12.「ゴーイン・バック」の流れは見事。それ以外に筆者の好みとしては、3.「土曜の夜に(ワン・モア・サタデー・ナイト)」もいい。そして何よりも忘れてはならないのは、9.「希望の日(ザ・サン・ハズント・セット・オン・ジス・ボーイ・イェット)」。ギタリストがギターで聴かせるのは当たり前だけれど、ヴォーカルもとり、必要とあらば鍵盤も演奏する、その余裕がいい。若い頃のニルスの本盤を聴いてその“余裕”に疑問を指し挟む聴き手もいるかもしれないとは思うけれども、後々の歩みを見ると、このスタイルはずっと後にも変わっていない。つまるところ、こういうスタイルでもって成長し、やがてヴォーカリストとしても円熟していったということなのだろう。そういう意味では、粗削りな部分もあるけれども、本盤はまさしく彼の原点を示し続けているとも言えるのかもしれない。[収録曲]1. Be Good Tonight2. Back It Up 3. One More Saturday Night4. If I Say It, It's So5. I Don't Want to Know6. Keith Don't Go (Ode to the Glimmer Twin) 7. Can't Buy a Break8. Duty9. The Sun Hasn't Set on This Boy Yet 10. Rock and Roll Crook11. Two by Two12. Goin' Back1975年リリース。 [枚数限定][限定盤]ロフグレン#1/ニルス・ロフグレン[SHM-CD][紙ジャケット]【返品種別A】 ブログランキングに参加しています。 応援くださる方は、ぜひクリックをお願いします。 ↓ ↓ ↓
2019年05月24日
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疑いの余地なきクラプトン代表盤の一つ エリック・クラプトン(Eric Clapton)は、ヤードバーズ、ジョン・メイオールのバンド(ブルースブレイカーズ、参考記事)で名を上げ、クリーム(参考記事)、ブラインド・フェイス、デレク・アンド・ザ・ドミノス(参考記事)などで成功を収め、やがてソロ活動へと専念していく。1970年のファースト作(参考記事)以降、ソロとしてのスタジオ作だけで20枚以上、ライヴ盤も入れると30作を優に超える中で、最高作はどれか。そんなセレクションをするならば、多くの人にとって三指に必ず入りそうなのが、『461 オーシャン・ブールヴァード』(1974年)と本作『スローハンド(Slowhand)』(1977年)ではないだろうか。 この『スローハンド』は、久々のイギリス録音(上記『461~』以降の3作はアメリカでの録音だった)で、表題は昔からの彼のニックネームである。直訳すると“遅い手”なわけだが、音数に比して指の動きがゆっくりである(チョーキングの多用などの結果、指がゆっくり動いていてもそうとは思えない演奏が繰り出される)というのが広く採られている説明で、ヤードバーズの時代からのものである。演奏には、数年来のレギュラー・メンバーのほか、元キング・クリムゾンのメル・コリンズ(サクソフォン)も加わっている。本盤は大きなヒットとなり、全米2位(全英23位)を記録した。 どれも聴き逃がせない好曲が並ぶが、いくつか推奨曲を挙げておきたい。3.「レイ・ダウン・サリー」は最初のシングルとして発売された、カントリー風の軽快で小気味よいリズムで、全米3位となった。このシングルのB面にも収録された1.「コカイン」はJ・J・ケイルのナンバーで、クラプトンの本領が存分に発揮された演奏が繰り広げられている。2.「ワンダフル・トゥナイト」は彼の代表的バラード曲で、日本でも人気のナンバー。さらにもう少し個人的趣味で付け加えると、4.「ネクスト・タイム・ユー・シー・ハー」のようなクラプトン曲に筆者は弱い。あと、さらりとギターを聴かせるインスト曲の9.「ピーチェズ・アンド・ディーゼル」(2.のシングルのB面にも収められた)もいい。 ところで、80年代、90年代と時が下るにつれて、クラプトンが“商業化”していったように思える点が筆者は昔からどうも気になっている。もしかすると、その芽生えは、既に本盤の辺りにあったのかもしれないという気がする。曲にヴァラエティがあるが、アルバムとしてはうまくまとまっている印象がある、というのがその理由なのだけれど、ひょっとしてこの頃が転機になったのかどうか…。ともあれ、アルバムの出来としてはなるほど名盤に数えられるという内容のものなので、ロック好き、クラプトンが気に入ったクチには必聴の1枚に変わりない。[収録曲]1. Cocaine2. Wonderful Tonight3. Lay Down Sally4. Next Time You See Her5. We're All the Way6. The Core7. May You Never8. Mean Old Frisco9. Peaches and Diesel1977年リリース。 スローハンド [ エリック・クラプトン ] 【メール便送料無料】Eric Clapton / Slowhand (輸入盤CD)(エリック・クラプトン) 下記のブログランキングに参加しています。 応援くださる方は、バナーをクリックお願いします! ↓ ↓
2019年05月19日
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スターシップを脱退しての第1作 ピート・シアーズ(Pete Sears)は、1949年イギリス出身のロック・ミュージシャンで、主にベースとキーボードを演奏する。ロッド・スチュワートの『ガソリン・アレイ』や『エヴリ・ピクチャー・テルズ・ア・ストーリー』などのセッション・ミュージシャンを経て、1974年にジェファソン・スターシップに加入。その後、分裂騒動を経たスターシップにも引き続き所属した(さらに後、1990年代にはホット・ツナにも参加している)。 スターシップは『フープラ』(1985年)で成功を収めたが、次作の『ノー・プロテクション』(1987年)のリリースを前にシアーズはバンドを脱退した(クレジットはされていないが、このアルバムにも参加した曲があり、シングル・ヒットとなった「愛は止まらない」のベースは彼の演奏なのだとか)。 ともあれ、スターシップを抜けて長い音楽キャリアで初のリーダー作を1988年に発表した。それが本盤『ウォッチファイアー(かがり火)(Watchfire)』である。日本盤では“ピート・シアーズ&フレンズ”の作品と表記されているが、ジャケットの原語を見ると、“ピート・シアーズwithミミ・ファリーニャ、ジェリー・ガルシア、デヴィッド・グリスマン、ホリー・ニア&フレンズ”となっている。ミミ・ファリーニャはジョン・バエズの妹でフォーク・ミュージシャン(2001年に死去)。ジェリー・ガルシアは言わずと知れたグレイトフル・デッドのギタリスト(1995年死去)。次のグリスマンはマンドリン奏者で、ブルーグラス界で有名なミュージシャン。そして、ホリー・ニアは女優でシンガーソングライターである。 結局のところ、特に1980年代に商業化が音楽業界に疑問を持ち、世界に目を向け、地球のことを考えるといった発想から仲間の参加を得てできたアルバムだったようだ。収益も自然保護団体に寄付とされていた。4.「子供たちに何かを残そう(セイヴ・サムシング・フォー・ザ・チルドレン)」、6.「一人の問題じゃない(ナッシング・パーソナル)」、8.「雨の森(レインフォレスト)」(「熱帯雨林」と訳したほうがよかったような)といった曲目を見てもわかるように、詞の内容も地球規模の環境問題や世界平和といったテーマが取り上げられている。音楽の内容も、英米での売れ筋を狙ったロックやポップ路線ではなく、ワールド・ミュージック的な要素が多く、民族音楽的な要素は1.「グワテマラ」(「グアテマラ」)や上述の8.に見られるし、もろにラテン民謡風の9.「鳩を自由に飛び発たせよう(レット・ザ・ドーヴ・フライ・フリー)」では、英詞に続いてスペイン語詞(おそらくは共作者のミミ・ファリーニャによるのだろう)、さらには“平和は来る”というセリフが15か国語(その中には日本語も含まれている)で入っている。 インターネットなどの普及によって世界中の情報に溢れたいまの時代から見ると疑問な部分もあるかもしれないが、その当時のピート・シアーズが置かれていた環境を考えると、やはり思い切った企画だったのだろうと思う。それにしても、ここで詞に登場する様々な事象(環境問題、戦争と子供たち、など)は30年以上経っても変わっていない。そう考えると、先見の明があった作品ということなのかもしれない。[収録曲]1. Guatemala 2. The Stream3. Sanctuary 4. Save Something For The Children 5. Lands End 6. Nothing Personal 7. One More Innocent 8. Rainforest 9. Let The Dove Fly Free 10. Blood From The Rose1988年リリース。 下記のランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、バナーをクリックして”応援いただけると嬉しいです! ↓ ↓
2019年05月14日
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マイペースで展開される独自世界 ドラッグが原因でフリートウッド・マックを抜け、1970年代の大半を棒に振ったピーター・グリーン(Peter Green)は、1979年の『虚空のギター』以降、年1枚のペースでアルバムを発表するようになった。フリートウッド・マックでの活動期が彼の初期活動期だとすると、この一連の時期を第二期、そして1990年代~2000年代にかけてのスプリンター・グループでの活動を第三期と分類することができる。 さて、そのうちの第二期に当たる、復帰第2作(フリートウッド・マックから脱落した直後に1枚作っているため、ソロとしては通算第3作)となった本盤『夢幻のギター(Little Dreamer)』は、前作の重い雰囲気を引きずりつつも、その延長線上としての独自世界を展開したものとなった。前作と大きく違うのは、楽曲のほとんどを実兄のマイク・グリーンが担当している点で、この傾向は本作以降しばし続くことになる。もう一つ、前作に比べるとギターが前面に出ている(ただしブルース・ロック全開のギターというのとは方向性は異なるのであしからず)。 全体としての重苦しさを湛えつつ淡々とした雰囲気(よく言えば、「アルバトロス」のような路線の延長線?)は、前作からの延長線上に位置づけられるものである。個人的にはこの独自の雰囲気は結構好きなのだけれど、往年のフリートウッド・マックをイメージする人からは期待外れに見える部分はあるのも事実である。 個人的に気に入っている曲をいくつか挙げておきたい。1.「ルーザー・トゥ・タイムズ」は、このまったりとした雰囲気がくせになる。3.「悪い星の下に」は、アルバート・キングで知られる有名ブルース曲だが、雰囲気がいかにもこの当時のピーター・グリーン風で、これはこれで一聴の価値ありだと思う。6.「ウォーキン・ザ・ロード」は本盤中、最もブルースらしさを残した演奏で、“レイド・バックしたブルース”とでも言えそうなナンバー。さらに、表題曲の9.「夢幻のギター(リトル・ドリーマー)」は、本盤中でも最もムード音楽的な雰囲気だが、個人的な好みではこういうのもありという風に思う。[収録曲]1. Loser Two Times2. Momma Don'tcha Cry3. Born Under a Bad Sign4. I Could Not Ask for More5. Baby When the Sun Goes Down6. Walkin' the Road7. One Woman Love8. Cryin' Won't Bring You Back9. Little Dreamer1980年リリース。 【中古】 Little Dreamer / Peter Green / Peter Green / Castle Music UK [CD]【メール便送料無料】 ブログランキングに参加しています。 応援くださる方は、ぜひクリックをお願いします。 ↓ ↓ ↓
2019年05月11日
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大ヒットの1978年作 ビリー・ジョエル(Billy Joel)は1970年代に入ってデビューし、当初は大きなセールスに結びつかなかったものの、好作品を積み上げてゆき、1977年の『ストレンジャー』がついに売り上げを記録する。これに続いて1978年にリリースした本盤『ニューヨーク52番街(52nd Street)』は、ビリー・ジョエルにとって初の全米No. 1ヒットのアルバムとなっただけでなく、ビルボードの年間アルバムチャート1位、さらにはグラミー賞(最優秀アルバムと最優秀男性歌手の二部門)を受賞した。 フィル・ラモーンが前作に続いてプロデュースを手掛けており、『ストレンジャー』と比較すると、統一感やコンセプトよりもよりポップで広く受け入れられる曲調のものが多い。シングルにもなった有名曲としては、3.「マイ・ライフ」(全米3位)、1.「ビッグ・ショット」(全米14位)、2.「オネスティ」(全米24位)なんかが収録されている。特に「オネスティ」は日本で絶大な人気を誇るナンバーとなった。 とはいえ、単にポップなノリなのかというとそうではない。本盤の特徴の一つとして、多彩なゲスト・ミュージシャンの参加が挙げられる。ピーター・セテラのような“同業者”がゲストで参加(2.「マイ・ライフ」)しているかと思えば、ジャズやフュージョン畑のミュージシャンも参加していて、4.「ザンジバル」の間奏と最後のソロのトランペットはフレディ・ハバートだったりする。 あと、本盤にはもう一つ重要な特徴があると思う。抽象的でうまく言葉にできないのだけれど、それは“キレ”である。収録曲は概ねどれも“端正”で“エッジ”が立っている。ヒット曲の1.「ビッグ・ショット」なんかもそうだし、5.「恋の切れ味(スティレット)」や7.「自由への半マイル(ハーフ・ア・マイル・アウェイ)」のようなナンバーにもその特徴が表れている。 余談ながら、この盤は世界で最初に商業CD化された盤としても知られる。筆者の手元にあるCDも、製品No.が「35DP1」のいわゆる“箱帯”の盤(要はソニーが最初に発売した製品番号1番のもの、35という番号は当時のCDが1枚組で3500円だったことを反映している)だったりする。LPレコードではなくてCDなのに、「このレコードを賃貸業に使用することを禁じます」なんて文言が印刷されているのも、CDが当たり前の(否、それを通り過ぎてCDすらダウンロードやストリーミングに淘汰されつつある)今となっては微笑ましい。[収録曲]1. Big Shot2. Honesty3. My Life4. Zanzibar5. Stiletto6. Rosalinda's Eyes7. Half a Mile Away8. Until the Night9. 52nd Street1978年リリース。 ニューヨーク52番街 [ ビリー・ジョエル ] 下記のブログランキングに参加しています。 応援くださる方は、バナーをクリックお願いします! ↓ ↓
2019年05月07日
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90年代“アメリカン・バンド”の代表作 もはや昔のことなのでいま一つ定かな記憶ではないのだけれど、記憶違いでなければ、筆者が初めて聴いたブルース・トラベラー(ブルース・トラヴェラー、Blues Traveler)の作品は、確かこのアルバムだった。そのような初体験の盤であるものの、今回取り上げる理由は、個人的思い入れが強いというよりは、後述の通り、時間を経ても“安心して聴ける盤”であり続けている点にある。 ブルース・トラベラーは、1987年に米東海岸のニュー・ジャージーで結成され、1990年のデビュー以降、現在まで活動を続けているアメリカのロック・バンドである。日本では残念ながら過小評価されているというか、本邦での知名度はなぜか低いのだけれど、そのキャリアの中で最も人気を集めた時期はと言うと、1994年発表の本作『フォー(four)』(全米8位)およびその次作にあたる1997年発表の『ストレイト・オン・ティル・モーニング』(全米11位)の頃だったということになるだろう。 かくして、筆者もこの頃に話題になった(本作の後にはグラミーも受賞した)のを受けてCDを手に取ってみた口だったのだと思うが、発表から20年以上経たいま聴いても、本盤の特徴である“安心できる感覚”というのには、不思議なことに何ら変わりがない。彼らのベースにあるのは、ブルース・ロック的なベースと各種ロックの伝統。70年代~80年代を経て一巡したロックの諸要素――サイケ・ロック、サザン・ロック、フォーク・ロック、カントリー・ロック、もちろん“正統派”アメリカン・ロック音楽の王道も――がひとしきり絡み合って彼らの音楽を形成していると言える。まるっきり新しいわけではないが、単なる過去の繰り返しや再生でもない。抽象的な表現ではあるが、パーツごとにはすべてどこかに親しみを感じるのだけれど、聴いているのは決して古いものの再生ではない90年代の音楽、というのが、彼らの特徴と言えるだろう。 個人的な好みのナンバーを少し挙げておこうと思う。1.「ランアラウンド」は、アルバムのオープニング曲にして、シングル・カットもされて全米8位となったナンバー。落ち着いたテンポで適度に肩の力が抜けた感じがいい。他に聴き逃がせないと思うのは、ミッドテンポの3.「ルック・アラウンド」および11.「ジャスト・ウェイト」、上記の“安心感”の象徴と言ってもいい5.「ザ・マウンテンズ・ウィン・アゲイン」、シングル・カットされた9.「フック」(全米23位止まりだったとはもったいない…)。 ともあれ、1990年代当時の作品であると同時に20年、30年(いや、きっとそれ以上)経っても同じように安心して聴ける“新たなスタンダード盤”と言える1枚だと思う。[収録曲]1. Run-Around2. Stand3. Look Around4. Fallible5. The Mountains Win Again6. Freedom7. Crash Burn8. Price to Pay9. Hook10. The Good, the Bad and the Ugly11. Just Wait12. Brother John1994年リリース。 【中古】 【輸入盤】four /ブルース・トラヴェラー 【中古】afb 下記のブログランキングに参加しています。応援くださる方は、 バナーをクリックお願いします! ↓ ↓
2019年05月04日
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人気を継続したソロ第2弾 元号が平成から令和になり、浮かれた世間のムードに乗り遅れつつも、令和元年最初の更新は元気で明るいものをと思って引っ張り出してきたのがこのアルバム(80年代特集の直後なので、頭の中が昭和のままだったりするけれど、ご容赦を)。 デイヴィッド・リー・ロス(デビッド・リー・ロス、David Lee Roth)は、ヴァン・ヘイレンのヴォーカルとして知られるアメリカ人のロック・アーティストで、“ダイアモンド・デイヴ”の愛称で呼ばれたりする。ヴァン・ヘイレンは1970年代末に登場し、1984年には『1984』を大ヒットさせたが、1985年、ヴォーカリストのデイヴはバンド脱退した(後に2007年以降、バンドに復帰している)。 脱退後、1985年にはEPを発表してヒット(全米3位)させ、さらに1986年にソロ初作を発表しヒットさせた(全米4位、全英28位)が、そのレコーディングに集められたメンバーは、フランク・ザッパのバンドやアルカトラスで活躍したスティーヴ・ヴァイ(ギター)、元タラスのビリー・シーン(ベース)、セッション・ミュージシャンのグレッグ・ビソネット(ドラムス)らであった。これら基本メンバーはそのままに、1988年に発表されたデイヴのソロ名義第2作がこの『スカイスクレイパー(Skyscraper)』だった。 ヴァン・ヘイレン人気と並んでデイヴィッド・リー・ロス人気もとどまることがなく、本盤は最高位全米6位、全英11位を記録し、シングルの2.「まるっきりパラダイス」も全米6位のヒットとなった。本盤のジャケットはヨセミテの岩を上る本人の写真だが、まさしくロック(=岩)を上り詰めていくかの勢いだった。 本盤の内容は、全体としてはデイヴ節が全開で、かつての在籍時のヴァン・ヘイレンのデイヴ色が好きな人には受け入れられやすい雰囲気になっていると思う。音の面でも派手さが際立つが、本盤発表後にビリー・シーンがデイヴのバンドから脱退したのは、こうしたところが原因だったのかもしれない。 お薦めのナンバーとしては、まずはヒット曲の2.「まるっきりパラダイス(ジャスト・ライク・パラダイス)」。さらには、同じくシングルとなった7.「スタンド・アップ」、アコギを使ったスロウ曲の5.「ダム・グッド」もいい。あと、個人的に外したくないのは、表題曲の4.「スカイスクレイパー」と8.「ヒーナ」。どちらもデイヴ節が全開で、前者の方は曲の展開に加えて演奏(とりわけドラムスとギター)のカッコよさも外せない理由だったりする。[収録曲]1. Knucklebones2. Just Like Paradise3. The Bottom Line4. Skyscraper5. Damn Good6. Hot Dog and a Shake7. Stand Up8. Hina9. Perfect Timing10. Two Fools a Minute1988年リリース。↓ジャケットイメージ(リンクはLP盤です)↓ David Lee Roth / Skyscraper【輸入盤LPレコード】(デウ゛ィッド・リー・ロス)↓こちらはベスト盤↓ David Lee Roth / Greatest Hits (w/DVD) (Deluxe Edition)(輸入盤CD)【★】(デヴィッド・リー・ロス) 以下のブログランキングに参加しています。お時間の許す方は、 クリックで応援よろしくお願いします。 ↓ ↓ ↓
2019年05月02日
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ハード・ロック史上の定番の名作 『ディープ・パープル・イン・ロック(Deep Purple in Rock)』は、ディープ・パープル(Deep Purple)が1970年に発表したスタジオ4作目となるアルバムである。全英4位のヒットを記録し、同時期のシングル「ブラック・ナイト」も2位を記録した(ただしアメリカでは、プロモーションがうまくいかなかったせいか、目立ったチャート・アクションはなかった)。 1968年のデビュー当時からバンドの方向性を担っていたのは、ジョン・ロード(キーボード)であったが、本作ではリッチー・ブラックモア(ギター)の色が濃いものとなった。クラシックとの融合路線をとってきたロードに対し、ブラックモアはよりハードなロックへのシフトを主張して、結果、とりあえず1枚作ってみてから考えようということになったとのこと。時代はちょうどレッド・ツェッペリンが人気を得ていった頃で、ハード・ロック路線への転向は、ディープ・パープル自体にとっても大きな成功への第一歩となった。 アルバム内容は、完成度やテクニックというよりも(別に完成度が低いとか技術がないと言っているわけではもちろんない)、勢いや若々しさのイメージが強い演奏と言える。とにかく思い切って演奏し、その過程でテクニックが活かされ、結果として完成度の高いものになっているという印象で、何よりも勢いのある演奏という点が目立つように思う。 知名度という点では、1.「スピード・キング」や3.「チャイルド・イン・タイム」が聴きどころに挙げられる。あと、これら2曲に加えて、個人的にはアルバム後半の6.「リヴィング・レック」や7.「ハード・ラヴィン・マン」も気に入っている。7~8分や10分といった長尺の曲が含まれるが、間延びしたり飽きがきたりのではなく、むしろそれゆえに展開が楽しめる楽曲になっているのも注目しどころだと思う。また、後のCD盤(1995年の再発)では、プロモーション用シングルだった(日本でもCMソングなどにも使用された)有名曲「ブラック・ナイト」もボーナス・トラックとして収録されている。 なお、本盤のジャケットは、米国サウスダコタ州のラシュモア山に彫られた彫刻(4人のアメリカ歴代大統領)をパロディ化したもの。アルバム名の『イン・ロック』というのは、上に書いたようにバンドとしての初のハード・ロック作という意味合いが本来あったのだろうが、この表題にひっかけて“イン・ロック”(石に刻まれた)なメンバー5人の姿を表現したものとなっている。[収録曲]1. Speed King 2. Bloodsucker3. Child In Time4. Flight Of The Rat5. Into The Fire6. Living Wreck 7. Hard Lovin' Man1970年リリース。*1995年の25周年記念盤では、「ブラック・ナイト」のシングル・ヴァージョンのほか、レコーディング時の音声、未発表曲、未発表ヴァージョンなど13トラック(まとまった楽曲としては7トラック分)が追加。 [枚数限定]IN ROCK[輸入盤]/DEEP PURPLE[CD]【返品種別A】 ブログランキングに参加しています。 応援くださる方は、ぜひクリックをお願いします。 ↓ ↓ ↓
2019年04月05日
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これぞスティーヴィーの真価 エレクトリック・ブルースにせよ、ホワイト・ブルースにせよ、どんな名前で呼んでももはやどうでもよい感じさえするのだけれど、数十年後の現在からみて、1980年代においてその真髄を極めた作品はと言うと、スティーヴィー・レイ・ヴォーン(Stevie Ray Vaughan)の『テキサス・ハリケーン(Couldn’t Stand The Weather)』はトップ級に数えられる大名盤だろうと思う。 スティーヴィーは、本盤の前年にあたる1983年に『テキサス・フラッド~ブルースの洪水~(Texas Flood)』でデビューを果たした。以降、新たなブルースの世界の王道を歩んでいったものの、1990年、不慮のヘリコプター墜落事故によって若干35歳で亡き人となってしまった。1984年リリースのセカンド作となった本盤では、上り坂にあった彼が初作以上に味と完成度を増強した演奏を繰り広げている。 本盤のよさの理由として、“現在”と“過去”がうまく組み合わされて一つの作品に仕上がっている点が挙げられると思う。冒頭の1.「スカットル・バッティン」はスティーヴィーのオリジナル。2分足らずと短いインスト曲だが、聴き手はのっけからリフのカッコよさの虜になってしまう。かと思うと、3.「ザ・シングズ・アイ・ユース・トゥ・ドゥー」はギター・スリム(エディー・ジョーンズ)のナンバーを実に渋いギタープレイとヴォーカルで解釈している。聴きどころの一つと言えそうなのは、4.「ヴードゥー・チャイル」。言わずと知れたジミ・ヘンドリクスのカバーである。他にもボブ・ゲディンズ作(本盤でのクレジットはジム・リード)の6.「ティン・パン・アレイ」なんかも取り上げているが、これがまた長い尺を存分に使って聴きごたえ十分のブルースである。アルバム終盤は、短めの演奏の自作の2曲で締めくくっている。 アルバムを通じて言えるのは、確かにブルースそのものもあれば、シャッフルの利いた演奏、どちらかというとロックに寄った演奏なども盛り込んでいながら、結局はスティーヴィーの色に統一されているという風に感じる。伝統と独自の世界を組み合わせて表現するというのは、一流のプロにしかできない技だと言ってしまえば、それまでかもしれない。けれども、この人はきっと余計な計算などなしにそれができてしまう貴重なアーティストだったのだろうと思ったりする。生きていたならば今年で65歳だったスティーヴィー・レイ・ヴォーン。叶うはずもないけれど、つくづく“枯れた”彼の演奏も聴いてみたかったと思ってしまう。[収録曲]1. Scuttle Buttin'2. Couldn't Stand The Weather3. The Things (That) I Used To Do4. Voodoo Chile (Slight Return)5. Cold Shot6. Tin Pan Alley7. Honey Bee8. Stang's Swang1984年リリース。参考:1999年のリイシュー盤では5トラック(スティーヴィーの肉声含む)追加。さらに2010年のレガシー盤ではさらなる追加曲のほか、未発表ライヴのボーナス・ディスクも付属とのこと(いずれも筆者は未聴)。 テキサス・ハリケーン [ スティーヴィー・レイ・ヴォーン&ダブル・トラブル ] 以下のブログランキングに参加しています。お時間の許す方は、 クリックで応援よろしくお願いします。 ↓ ↓ ↓
2019年04月02日
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“ロック小僧”の代表盤 ニール・ヤングのアルバムへの参加やグリンでのバンド活動を経て、1975年のセルフ・タイトル作でソロとなった後、スタジオ第3作となったのが、1977年発表の本盤『稲妻(I Came To Dance)』だった。軽快かつ骨太の(でも大ヒットにはなりそうにない)ロックを聴かせてくれる、初期ニルス・ロフグレン(Nils Lofgren)の代表作と言えるアルバムである。この当時のニルスは、ヴォーカルは特別うまいわけではないけれど、自らヴォーカルをとってメイン・ギターも弾き、ロック少年がそのまま大人になったかのような初々しさを持っていた。実際には20歳代半ばを過ぎていたのだけれど、“ロック小僧”というキャッチ・フレーズが見事に当てはまっていたという風に思う。 表題曲(アルバム邦題は『稲妻』となっているが、原語では『アイ・ケイム・トゥ・ダンス』で、1曲目がそのままの表題曲となっている)の1.「ロックン・ロール・ダンス(アイ・ケイム・トゥ・ダンス)」は、売れ筋に走らず我が道を行くロック・アーティストの心情を歌にしたもので、ニルスのギター・プレイが冴える。彼のギターがさらに本領を発揮するのは、4.「コード・オブ・ザ・ロード」。歌もギターも、曲の展開も、すべてにおいてこの曲が本盤のベストだと思う。 その一方で、派手さに欠けるものの、個人的に外せない好曲も複数含まれている。その筆頭は、7.「夢に生きて(トゥ・ビー・ア・ドリーマー)」。他にも3.「苦悩の家(ホーム・イズ・ホエア・ザ・ハート・イズ)」、6.「南へ(ゴーイン・サウス)」、8.「ジェラス・ガン」なんかが、私的には地味ながら聴き逃がせない(地味と言いつつ、随所でギター・プレイに思わず耳を奪われることも多い)。なお、アルバム最後のナンバーには、ローリング・ストーンズの曲(『メイン・ストリートのならず者』に収録され、シングルとしてもカットされた)のカバーである9.「ハッピー」も披露している。[収録曲]1. I Came to Dance2. Rock Me at Home3. Home Is Where the Hurt Is4. Code of the Road5. Happy Ending Kids6. Goin' South7. To Be a Dreamer8. Jealous Gun9. Happy1977年リリース。 【メール便送料無料】ニルス・ロフグレン / 稲妻[CD][初回出荷限定盤(初回限定盤)] 【輸入盤】I Came To Dance [ Nils Lofgren ] 下記のブログランキングに参加しています。 応援くださる方は、バナーをクリックお願いします! ↓ ↓
2019年03月31日
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ディランらしさが滲む好盤 前作『セルフ・ポートレイト』で賛否両論を巻き起こしたボブ・ディラン(Bob Dylan)が、そのわずか4か月後(1970年10月)にリリースした11作目が本盤『新しい夜明(New Morning)』であった。前作同様に英チャートで1位となり、全米でも7位を記録して、ゴールドディスクにも認定されている。 1960年代後半から70年代に入る頃のディランからは、バイク事故後に姿を消したりしたことに象徴されるように何かしら不安定さが感じられた。それは裏を返すと、模索の途中だったということなのかもしれない(その模索の途中では『ブロンド・オン・ブロンド』のような名盤も生まれているのも確かなのだけれど)。本盤の前作である『セルフ・ポートレイト』の実験性が議論の種になったのも、この『新しい夜明』によって“ディランがロックに帰ってきた”などとロック・ファンが小躍りしたのも、ある種、ディランの試行錯誤に外野が一喜一憂していたということだったのかもしれない。 一方で、はるか後の現在の観点からすると、ディランらしさみたいなものがいよいよ出来上がってきた、そんなアルバムの一つに数えていいようにも思う。ピアノを比較的多く演奏したり、南部音楽寄りの要素などが見られたのは、本盤の特徴に挙げられるだろう。とはいえ、数年の間のブランクを経て1970年代半ばに再び本格的に活動し始めた時に見られた、少なくとも多くのファンがイメージするようなディランらしさは、本盤の辺りで概ね完成の域に達していたと考えるのもあながち間違いではないように思えたりする。 個人的嗜好で注目のナンバーを挙げておきたい。まず、冒頭の1.「イフ・ナット・フォー・ユー」は、ジョージ・ハリスンがソロ作でも取り上げているが、個人的には、作者であるディランのヴァージョンの方が強く印象に残っている。次に、美曲という意味では、5.「ウィンタールード」が一番手のように思う。弾き語り調の曲は複数含まれるが、この美しさと流暢さは“きれいな方のディラン”と言える。さらに、表題曲の7.「新しい夜明(ニュー・モーニング)」は、目を閉じると詞の情景が浮かんできそうな名曲。他方、“泥臭い方のディラン”は、9.「ワン・モア・ウィークエンド」に如実に表れている。シンプルなナンバーではあるが、こういう泥臭い雰囲気を持ったディランは、実に筆者の好みだったりする。[収録曲]1. If Not for You2. Day of the Locusts3. Time Passes Slowly4. Went to See the Gypsy5. Winterlude6. If Dogs Run Free7. New Morning8. Sign on the Window9. One More Weekend10. The Man in Me11. Three Angels12. Father of Night1970年リリース。 【メール便送料無料】Bob Dylan / New Morning (輸入盤CD) (ボブ・ディラン) 【輸入盤】New Morning: 新しい夜明け (Rmt)(Digi) [ Bob Dylan ] 下記のブログランキングに参加しています。 応援くださる方は、バナーをクリックお願いします! ↓ ↓
2019年03月27日
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ジョンの初ソロ作 ボン・ジョヴィは1984年にデビューし、1986年のサード作『ワイルド・イン・ザ・ストリーツ(Slippery When Wet)』の大ヒットでスターダムにのし上がり、続く1998年の『ニュージャージー』も大きなヒットとなった。そんな中、1990年にヴォーカリストのジョン・ボン・ジョヴィ(Jon Bon Jovi)のソロ作なるものが発表された。それが本盤『ブレイズ・オブ・グローリー(Blaze of Glory)』で、全英2位、全米3位のヒットとなった。 ジャケットにも記されているように、映画作品の『ヤングガン2』に着想を得た楽曲群が収められている。事の流れとしては、西部劇である同作品の主演男優(エミリオ・エステベス、ビリー・ザ・キッド役)が、映画のためにボン・ジョヴィの楽曲使用を申し入れた。ところが、ジョンは既存の楽曲提供をするのではなく、わざわざ新たな曲を用意したとのこと。 そのようなわけで、収められた楽曲は映画作品をテーマにしたものであるが、今となってみれば、独立したアルバムとして聴いていいようにも思う。言ってみれば、ボン・ジョヴィの本流から少し外れてみてコンセプトのあるアルバムを作ったといった感じに捉えてもいいのかもしれないという風に思ってみたりもする(でも、いかにも映画サントラ盤的なジャケ写だけは、永遠にこのイメージには合わなさそうだけれど)。 いちばんの注目曲は、気がつくとボン・ジョヴィの曲になってしまっていた(ここではジョン名義だったが、後にボン・ジョヴィというバンドとしてのベスト盤に収録された)3.「ブレイズ・オブ・グローリー」。シングルとしてもヒットし、筆者的にはリリース当時にも繰り返し聴いたナンバーである。 他に個人的に気に入っているナンバーをいくつか挙げておこうと思うのだけれど、やはり5.「サンタ・フェ」と9.「バング・ア・ドラム」といったような曲に注目がいってしまう。ジョンの声に魅了されている筆者としては、こうしたタイプの曲はついつい聴き惚れてしまうというのがその理由。同じようにジョンのヴォーカルが冴える10.「ダイン・エイント・マッチ・オブ・ア・リヴィン」もお気に入りで、こちらではエルトン・ジョンがゲスト参加している。[収録曲]1. Billy Get Your Guns2. Miracle3. Blaze of Glory4. Blood Money5. Santa Fe6. Justice in The Barrel7. Never Say Die8. You Really Got Me Now9. Bang A Drum10. Dyin' Ain't Much of A Livin'11. Guano City1990年リリース。 【メール便送料無料】Jon Bon Jovi / Blaze Of Glory (輸入盤CD) (ジョン・ボン・ジョヴィ) ブログランキングに参加しています。 応援くださる方は、ぜひ“ぽちっと”お願いします。 ↓ ↓ ↓
2019年03月25日
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デビューから3年で初の“1枚組”アルバム シカゴ(Chicago, 当初のバンド名はシカゴ・トランジット・オーソリティ)は1969年にデビューし、初のアルバムから3作連続で2枚組を発表し続けた(参考過去記事(1) ・(2) )。さらに、その後に出された4作目(ライヴ盤)にいたっては4枚組セットというヴォリュームであった。そのようなわけで、珍しい話ではあるが、5作目となった本盤『シカゴV(Chicago V)』はバンドにとって初めての記念すべき“1枚組”のアルバムであった。 1枚ものになったからといって、2枚分のネタがなかったというわけではない。そもそも曲を簡潔にしてアルバム1枚に収めようという意図をもって製作されたという。特徴としては、メンバーのうちロバート・ラムによる楽曲が多く、10曲中8曲(3.と10.以外)がラムの単独もしくは共作である。セールス的には大成功を収め、初の全米1位に9週間もとどまった。また、先行シングルとしてリリースされた7.「サタデイ・イン・ザ・パーク」も3位のヒットを記録した。 アルバム全体の音としては、いくぶん洗練と落ち着きが見られるように思う。とはいっても、ブラスを効果的に用いた激しさや意外性、当時のアメリカ社会の不安や政治的な内容を含めた彼らの発信力は決して引っ込んでしまったわけではない。前者の音の面では、6.「街が眠りについて」なんかが個人的にとても気に入っているのだけれど、以下では、後者の政治性の部分について、簡潔にクローズアップしておきたい。 上記シングルの7.の詞の内容も、7月4日のアメリカ独立記念日の光景を切り取ったものである。他に注目したい曲としては、パートIとIIの二部構成になっている4.と5.の「ダイアログ」。表題通り、テリー・キャスとピーター・セテラによる、急進派学生と楽観主義的な学生の間の“対話”というスタイルになっていて、このナンバーもシングル化された。また、8.「俺達のアメリカ(ステイト・オブ・ザ・ユニオン)」も多分に政治的で、暗闇から聞こえる“体制なんかぶち壊せ”の声というのも、社会の不安の一面がうまく切り取られている。[収録曲]1. A Hit by Varèse2. All Is Well3. Now That You've Gone4. Dialogue (Part I)5. Dialogue (Part II)6. While the City Sleeps7. Saturday in the Park8. State of the Union9. Goodbye10. Alma Mater1972年リリース。 【メール便送料無料】Chicago / Chicago V (輸入盤CD)(シカゴ) ブログランキングに参加しています。 応援くださる方は、ぜひ“ぽちっと”お願いします。 ↓ ↓ ↓
2019年02月26日
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ブルースにこだわり過ぎなければ、代表盤かも クライマックス・シカゴ・ブルース・バンドとして始まったクライマックス・ブルース・バンド(Climax Blues Band)は、やがてブルース臭を薄めていく(とはいえ、捨て去ったわけではない)。ブルースという概念にこだわって聴くのであれば、明らかに初期の盤がお薦めとなるだろう。けれども、そこにこだわるのでなければ、彼らの真骨頂を示すのは、きっとこのアルバムだということになるのではないか。そんな1枚が1975年発表のこの『スタンプ・アルバム(Stamp Album)』である。 音楽的には、ブルース・ロックと呼べる部分を随所に残しつつも、キャッチ―な部分があり、心強いブギーが強く印象に残る。かと思うと、やたらファンキーな曲やレゲエ風のリズムもあったりして、アルバム全体を通して聴くと、リズムの変化が耳につく。要は、ブルース・ロックからすでに脱皮していったバンドの姿だと言っていいように思う。 冒頭の1.「ユージン・ザ・パワー」からしてメロディアスでキャッチ―な部分でのよさが出ている。人気曲の3.「アイ・アム・コンスタント」のほか、5.「スカイ・ハイ」なんかもそうした側面が成功したナンバーと言えそう。その一方、随所で展開されるギター・プレイは、やはりブルース・ロックの潮流から生じてきたバンドであるということを再確認させてくれるのも面白い。 余談ながら、本盤はジャケットも人目を引くものである。個人的な体験では、クライマックスのアルバムを買い揃えていたころ、見た目のジャケットのイメージでいちばんに欲しいと思ったのが本盤だった。“スタンプ”すなわち切手のデザインで、よくよく見ると飛行機に自由の女神と摩天楼が描かれたベタに“アメリカン”な感じの図柄だったのだけれど、ヘンテコなものやダサダサのジャケット・デザインもある彼らのアルバムの中では、『FMライヴ』と本盤のジャケットになかなかのセンスを感じたりする。[収録曲]1. Using the Power2. Mr. Goodtime3. I Am Constant4. Running Out of Time5. Sky High6. Rusty Nail / The Devil Knows7. Loosen Up8. Spirit Returning9. Cobra1975年リリース。 スタンプ・アルバム [ クライマックス・ブルース・バンド ] ブログランキングに参加しています。 応援くださる方は、ぜひ“ぽちっと”お願いします。 ↓ ↓ ↓
2019年01月15日
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派手さはなくとも病みつきになる好盤 『枯れ木(Bare Trees)』は、1972年発表のフリートウッド・マック(Fleetwood Mac)のオリジナル・アルバムとしては6作目に当たる。当初はピーター・グリーンを主役にブルース・ロック路線だった彼らだったが、そのグリーンは『ゼン・プレイ・オン』を最後にバンドを去る。これと重なって同作から参加したのがダニー・カーワン(Danny Kirwan)で、やがてボブ・ウェルチも参加して新体制へと変わっていく。 そんなバンドの変遷の中で、本盤はカーワンが主導し、かつ彼の在籍最後(カーワンもまた飲酒が原因の神経衰弱で脱退を余儀なくされる)の作品となったものである。そのようなわけで、アルバム全体のうち半数の曲をカーワンが担当し、その他はボブ・ウェルチやクリスティン・マクヴィー(ジョン・マクヴィーの妻で元チキン・シャックのメンバー)らの曲が占める。 全体的に地味な印象で、どぎつい派手さはない。どちらかというと淡々としていると言ってもいいかもしれない。上記のようにブルース・ロック路線ではなくなっているので、そういうイメージに当てはまるギターの聴きどころのようなものも目立ってあるわけではない(ただし、そういうイメージに拘らなければギターの聴きどころは多い盤であるとも思う)。ともあれ、どこかしら、ややマニアックな淡々とした雰囲気の演奏にのみこまれて中毒症が発症しそうというのが筆者の印象である。2つの全盛期に挟まれているからといって忘れ去られるのはもったいない盤で、例えば、1.「チャイルド・オブ・マイン」や、表題曲の5.「枯れ木」なんかはその中毒症の入口である。 あと、注目の曲としては、6.「悲しい女(センティメンタル・レイディ)」。アメリカやカナダでシングルとしてヒット(ビルボード8位、キャッシュボックス4位)したことから、本盤の中では比較的知られたナンバーである。アルバム全体のトーンからするとやや異なる気もするが、ボブ・ウェルチのよさが発揮された名ラヴ・ソングである。それから異彩を放つのはクリスティン・マクヴィーによる2曲、3.「ホームワード・バウンド」と8.「あなたの愛を(スペア・ミー・ア・リトル・オブ・ユア・ラヴ)」。特に前者の疾走感のカッコよさには、個人的に完全にKOされてしまう。[収録曲]1. Child of Mine2. The Ghost3. Homeward Bound4. Sunny Side of Heaven5. Bare Trees6. Sentimental Lady7. Danny's Chant8. Spare Me a Little of Your Love9. Dust10. Thoughts on a Grey Day1972年リリース。 【メール便送料無料】Fleetwood Mac / Bare Trees (輸入盤CD) (フリートウッド・マック) ブログランキングに参加しています。 応援くださる方は、ぜひ“ぽちっと”お願いします。 ↓ ↓ ↓
2019年01月07日
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トリビュート盤の成功の一例(後編) (前編からの続き) さて、ブルース・スプリングスティーン(Bruce Springsteen)のトリビュート盤、『ワン・ステップ・アップ/ツー・ステップス・バック』で何よりも楽しめるのは、有名曲に限らず、かつ原曲にとらわれないアレンジのナンバーが多い点である。前項で触れた以外の曲からあえて選んでみると、1-4のジョン・ウェズリー・ハーディングによる「ジャクソン刑務所」のアコースティク風の演奏、1-14のポール・シーバーによる、レゲエ調リズムの「ワン・ステップス・バック」、寂しさだけでなく朗らかな感じも漂うエリオット・マーフィーの2-4「盗んだ車」などがその例だと言える。 結局のところ、超有名アーティストからそうでもない人まで、スプリングスティーンの有名曲からアルバム収録のそうではない曲まで、収録曲とその演奏者はヴァラエティに富んでいる。提供曲も、このために録音をした人もいれば、提供などの理由で過去の録音を提供しているアーティストもいる。この通りやれば成功するなどという法則はないけれど、こうした要素が本盤の魅力に直結していることは確かだと思う。要するに、各曲の個性が強く、その選曲(そうでなければ、誰が「シーズ」や「ギルティ」、「シーサイド・バー・ソング」などをカバーするのだろうか!)やアレンジが必ずしも王道なのではなく、個々の解釈や独自性が全28曲分積み重なって、本盤の成功につながったのだろう。 ちなみに、表題の『ワン・ステップ・アップ/ツー・ステップス・バック』というのは、1-14の「ワン・ステップ・アップ」の歌詞に因んでいる(原曲は、『トンネル・オブ・ラヴ』に収録)。“一歩進んで2歩戻る”のなら戻ってばかりなわけだけれど、血気盛んな若者のごとく“前進あるのみ”が人生でもなければ、音楽家の神髄でもないということになるのだろうか。[収録曲](Disc 1)1. Something In The Night (Aram)2. Downbound Train (The Smithereens)3. Atlantic City (Kurt Neumann)4. Jackson Cage(ジャクソン刑務所) (John Wesley Harding) 5. Wreck On The Highway(雨のハイウェイ) (Nils Lofgren)6. Johnny 99 (John Hiatt)7. Seeds (Dave Alvin)8. Light Of Day (Joe Grushecky & The Houserockers)9. Darkness On The Edge Of Town(闇に吠える街) (Martin Zellar)10. Janey, Don't You Lose Heart (Mrs. Fun/Tina & The B-Side Movement) 11. All Or Nothin' At All (Marshall Crenshaw)12. Meeting Across The River (Syd Straw)13. 4th Of July, Asbury Park (Sandy)(7月4日のアズベリー・パーク(サンディ)) (Ben E. King)14. One Step Up (Paul Cebar)(Disc 2)1. Don't Look Back (The Knack)2. Protection (Donna Summer)3. Human Touch (Joe Cocker)4. Stolen Car(盗んだ車) (Elliott Murphy)5. It's Hard To Be A Saint In The City(都会で聖者になるのはたいへんだ) (David Bowie)6. Restless Nights (The Rocking Chairs)7. Guilty (Robbin Thompson)8. Tiger Rose (Sonny Burgess)9. Love's On The Line (Gary U.S. Bonds)10. Savin' Up (Clarence Clemons & The Red Bank Rockers)11. The Fever (Southside Johnny & The Asbury Jukes)12. Seaside Bar Song -live- (Little Bob Story)13. If I Was The Priest (Allan Clarke)14. Streets Of Philadelphia (Richie Havens)1997年リリース。 【中古】 【輸入盤】One Step Up/Two Steps Back: The Songs Of Bruce Springsteen /V/ASongsof 【中古】afb 下記のブログランキングに参加しています。 応援くださる方は、バナーをクリックお願いします! ↓ ↓
2018年11月21日
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トリビュート盤の成功の一例(前編) トリビュート盤(要は有名アーティストのカバー盤)は、ある意味、危険な賭けでもあるように思う。どんなアーティストたちが参加するのか、そのような楽曲を取り上げるのか、それらはどんなアレンジになるのか…。とにかく、うまくいくか行かないかの不確定要素が多いのではないかという気がしたりする。そんな中でも、見事に成功した例はいくつもある。レナード・コーエンのトリビュート盤しかり、エルトン・ジョンの某トリビュート盤もよかった。あるツェッペリンのトリビュート盤にいたっては特化の仕方がよかったなんてものもある。 今回取り上げるのは、アメリカン・ロック界のボスことブルース・スプリングスティーン(Bruce Springsteen)のトリビュート盤で、1997年にリリースされたものである。筆者の手元には当時発売された日本版CDがあり、いくつも存在するスプリングスティーンのトリビュート盤の中ではプロモーションも結構なされたものだったということなのだろう。 でもって、本盤が優れているのは、何よりもその収録ナンバーの多様性だと言っていいだろう。2枚組というヴォリュームということもあるけれど、とにかく収録されている曲にヴァラエティがある。下手なトリビュート盤だと、原曲とさほど変わらぬアレンジ、聞いたことのないようなアーティスト、結局は原曲を聴いた方がいいのでは、なんていう悪循環が起こるような極端なケースもあるわけだけれど、当然、その正反対のものもあり得る。その好例の一つが本盤と言えるように思う。 さて、本盤の内容の話に戻ろう。何よりも、ベン・E・キング(1-13)、ドナ・サマー(2-2)、ジョー・コッカー(2-3)、デビット・ボウイ(2-5)といった“大物”の参加が目に付く。さらに、”ボス”にゆかりのアーティストの参加も目を引く。E・ストリート・バンドのメンバーのニルス・ロフグレン(1-5)やクラレンス・クレモンズ(2-10)のほか、盟友サウスサイド・ジョニー(2-11)やジョー・グリュスキー(1-8)の演奏も収録されている。 長くなってしまいそうなので、続きは後編で。*収録曲のデータ等は次回更新の後編にアップします。次回更新まで今しばらくお待ちください。 One Step Up/Two Steps Back: The Songs Of Bruce Springsteen【中古】 ブログランキングに参加しています。 応援くださる方は、ぜひ“ぽちっと”お願いします。 ↓ ↓ ↓
2018年11月19日
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シンガーソングライターとしての安定感を見せる第5作 1943年カナダ出身の女性シンガーソングライター、ジョニ・ミッチェル(Joni Mitchell)の有名盤と言えば、『ブルー』(1971年)や『コート・アンド・スパーク』(1974年)、あるいは『逃避行』(1976年)なんかが挙げられるだろう。これらのうち前2者のはざまで埋没しがちなのが1972年リリースの『バラにおくる(For the Roses)』という盤である。 本盤は第5作めであるが、レーベルをアサイラムに移し、最初の作品となった。基本的にはアコースティックなサウンドがベースの弾き語り的な感じなのだけれど、ただのフォークらしき演奏に収まりきらないところが、この盤の魅力と言えるように思う。 具体的には、ピアノの弾き語り風と思わせておいて、アルバムの曲が次から次へと続いていくと、ベース、パーカッション、木管楽器、ハーモニカ…と様々な楽器の存在感が次々に登場してくる。そんな中にギターの弾き語り風の曲も混じっている。つまりは、決してポップでも何でもなく静かに演奏が進んでいく中で、実はバラエティに富んだ曲が並んでいるというつくりになっている。実際、『ブルー』と比べても、独自のアレンジにこだわったという感じが強く伝わってくるように感じられる。 個人的に気に入った曲を挙げると、まずは冒頭の1.「宴」とアルバムを締めくくる12.「月と星の審判」。いずれもピアノ演奏をバックにしたシンプルな演奏スタイルだけれども、この力強さを兼ね備えたヴォーカルが圧倒的で、楽器をギターに替えた表題曲6.「バラにおくる」についても同じようなことが言える。上で述べた様々な楽器のプレゼンスとアレンジという点から曲を挙げるならば、ベースの強い存在感がうまく出されている3.「バラングリル」、そしてハーモニカがフィーチャーされた9.「恋するラジオ」がおすすめと言える。[収録曲]1. Banquet2. Cold Blue Steel and Sweet Fire3. Barangrill4. Lesson in Survival5. Let the Wind Carry Me6. For the Roses7. See You Sometime8. Electricity9. You Turn Me On, I'm a Radio10. Blonde in the Bleachers11. Woman of Heart and Mind12. Judgement of the Moon and Stars (Ludwig's Tune)1972年リリース。 バラにおくる/ジョニ・ミッチェル[CD]【返品種別A】 下記のランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、バナーを“ぽちっと”応援いただけると嬉しいです! ↓ ↓
2018年11月16日
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2枚組ではなく、2枚同時発売の地力(後編) 『ヒューマン・タッチ』を制作していたブルース・スプリングスティーン(Bruce Springsteen)は、その完成直前に新たなアイデアが浮かび、アルバム1枚分をさらに録音したという。早い話、 “ついでにもう1枚できてしまった”わけで、そのこと自体、驚異的な創作力である。そうして出来上がった内容は、2枚組(つまりは1つのアルバム作品)としてまとめるには適していなかったため、別のアルバムとして『ヒューマン・タッチ』と同時発売された。それが1992年発表の『ラッキー・タウン(Lucky Town)』であり、かつて1980年発表の『ザ・リバー』の際に見せたのと同じ爆発的な創作力が再び発揮された時だったと言えるように思う。 先に企図された『ヒューマン・タッチ』に比べると、『ラッキー・タウン』の方にはストレートなアメリカン・ロック曲が並んでいる。筆者の推すナンバーは、1.「ベター・デイズ」、5.「リープ・オブ・フェイス」、7.「リヴィング・プルーフ」。いずれもスプリングスティーン節が全開の王道アメリカン・ロック・ナンバーである。 他方、いくぶん変化球と言えそうなのは、4.「イフ・アイ・シュッド・フォール・ビハインド」、6.「ザ・ビッグ・マディ」、8.「ブック・オブ・ドリームズ」、10.「マイ・ビューティフル・リワード」。これらのうち、8.と10.はスロー・ナンバーの好曲。6.は『ゴースト・オブ・トム・ジョード』なんかにつながりそうな曲調と演奏である。あと、4.は、正直なところこのアルバムを聴いたときは特段何とも思わない曲だったが、後にE・ストリート・バンド再結成によってライヴで一気に魅力を獲得したナンバーとなった(過去記事参照)。 ちなみに本盤のコンセプトは、『ヒューマン・タッチ』が自己を中心に据えていたのに対し、この『ラッキー・タウン』は他者に向けられた曲たちだったという。発売当時は、『ヒューマン・タッチ』はあまり評価が高くなく、本盤の方が広く聴衆に受け入れられたように記憶している。四半世紀以上たった今、筆者の中では、『ヒューマン・タッチ』の方も結構よかったのではないかという評価に変わってきている。つまるところ、本盤『ラッキー・タウン』は従来のスプリングスティーンのイメージに沿っていて、『ヒューマン・タッチ』の方はそこから逸脱しようとした試みでもあったのではないだろうか。結果、両作品はどちらが優れているかというのではなく、それぞれに異なるベクトルをもって評価される作品なのだろうと思う。[収録曲]1. Better Days2. Lucky Town3. Local Hero4. If I Should Fall Behind 5. Leap of Faith6. The Big Muddy7. Living Proof8. Book of Dreams9. Souls of the Departed10. My Beautiful Reward1992年リリース。 【メール便送料無料】Bruce Springsteen / Lucky Town (輸入盤CD) (ブルース・スプリングスティーン) 下記ランキングに参加しています。 お時間のある方、応援くださる方は、“ぽちっと”よろしくお願いいたします! ↓ ↓
2018年11月12日
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2枚組ではなく、2枚同時発売の地力(前編) 1980年代、『ボーン・イン・ザ・U.S.A.』で予期せぬ形でヒーローに祭り上げられたブルース・スプリングスティーン(Bruce Springsteen)は、1987年に『トンネル・オブ・ラヴ』を発表後、沈黙に向かっていった。それどころか、1988年には長年一緒に活動してきたバンド(E・ストリート・バンド)を解散してしまい、文字通り迷走(瞑想?)してしまった。 ところが、1992年にその創作意欲が爆発した結果がもたらされる。2枚の新作を同時発売という、ある種、驚きの展開であった。その2枚のアルバムのうち、先に企画されたのが、この『ヒューマン・タッチ(Human Touch)』という作品だった。 前作『トンネル・オブ・ラヴ』の内省的な部分を引き継いでいるように思えるところがこの作品には認められる。表題曲の1.「ヒューマン・タッチ」や4.「クロス・マイ・ハート」、6.「ウィズ・エヴリ・ウィッシュ」や11.「アイ・ウィッシュ・アイ・ワー・ブラインド」なんかはその例と言えるだろう。他方、スプリングスティーン節が全開のロック調ナンバーも見られる。個人的な好みでは、6.「ロール・オブ・ザ・ダイス」や10.「マンズ・ジョブ」はまさしく本領発揮のロック・チューンに仕上がっている。他には2.「ソウル・ドライバー」と5.「グロリアズ・アイズ」も聴き逃がせない好曲である。 上述の通り、E・ストリート・バンドの演奏ではないので、以前やバンド再集合以降の作品の演奏に見られるあの一体感に欠けるのは事実である(ただしロイ・ビタンが全面的に、パティ・スキャルファが一部で参加している)。とはいえ、腕の立つミュージシャン(その中には、ジェフ・ポーカロ、ティム・ピアス、初期E・ストリートのメンバーのデヴィッド・サンシャスなどの名がある)が揃っていて演奏の完成度は非常に高い。なおかつ緩急使い分けられていて、曲数も収録時間も長めだが、誰が聴いても退屈しないように仕上がっているように思う。[収録曲]1. Human Touch2. Soul Driver3. 57 Channels (And Nothin' On)4. Cross My Heart5. Gloria's Eyes6. With Every Wish7. Roll of the Dice8. Real World9. All or Nothin' at All10. Man's Job11. I Wish I Were Blind12. The Long Goodbye13. Real Man14. Pony Boy 1992年リリース。 【メール便送料無料】Bruce Springsteen / Human Touch (輸入盤CD) (ブルース・スプリングスティーン) 次のブログのランキングサイトに参加しています。 お時間の許す方は、“ぽちっと”クリックで応援をよろしくお願いします! ↓ ↓
2018年11月09日
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らしからぬ、けれども意外に好盤 レオン・ラッセル(Leon Russell,2016年に74歳で死去)は、通好みのスワンプ・ロックを得意とする一方、世間一般にはソングライターとしての存在感が認知されている。そんなせいか、「ア・ソング・フォー・ユー」(あるいは「マスカレード」)の作者、という“名曲の作者”のイメージに対して、彼の本領がそこではないところにあるという点が強調されるという現象も見られる。スワンプ・ロックの名手であることは否定しないけれども、実際のところ、優れたソングライターであることももっと強調されていいんじゃないか。このアルバム『アメリカーナ(Americana)』を聴くと、そんな風に思ってみたりもする。 “かつての泥臭さが見られない”、“若気の至りで作ったAORアルバム”などと冷たくあしらわれてしまうこともある本作だが、意外にも、曲作りの才能が見事に発揮されていると言っていいほどよくできた曲が並ぶ好盤と言えるようにもに思う。有名バラード曲の4.「男が女を愛する時」を除き、すべての曲がオリジナル(そのほとんどは共作)である。サウンド面で目立つのはホーン・セクションの使用である。けれども、“AOR盤”という評が与え得るイメージは、半分当たっていてもう半分は誤解を生むかもしれないとも思う。敢えて言うなら“粘り気のあるAOR”ぐらいの言い方なら誤解は少なくなるだろうか。 個人的な好みをいくつか挙げると、まずは、3.「フロム・メイン・トゥ・メキシコ」や7.「ハウスワイフ」。当時の状況からしてイメージを一新して一発当てたい気持ちは確かにあったのかもしれない。けれども、オシャレに決めようとしてもどこかしら“らしさ”を漂わせてしまう点が何とも彼らしい。とはいえ、都会っぽく決まっている楽曲もある。そのアレンジというよりも、筆者的には結局は楽曲の質に耳が寄って行ってしまう。2.「エルヴィスとマリリン」、5.「イッツ・オンリー・ミー」、10.「ジーザス・オン・マイ・サイド」なんかは、結局のところ、ソングライティングの能力の高さが際立っている。 そんなわけで、ファンの間では否定的な評もあり、おそらくは本人的にもあまり前面に出したくないアルバムだったのかもしれないが、一人の聴き手としては、意外と楽しめる好盤と言ってもいいのではないかと思っていたりする。[収録曲]1. Let's Get Started2. Elvis and Marilyn3. From Maine to Mexico4. When a Man Loves a Woman5. It's Only Me6. Midnight Lover7. Housewife8. Ladies of The Night9. Shadow and Me10. Jesus on My Side 1978年リリース。 アメリカーナ [ レオン・ラッセル ] 以下のブログランキングに参加しています。お時間の許す方は、 “ぽち”応援よろしくお願いします。 ↓ ↓ ↓
2018年11月05日
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