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2004年07月31日

「麦の海に沈む果実」恩田陸

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テーマ：今日どんな本をよみましたか?(100252)

カテゴリ：読書感想

『記憶というものはゆるやかな螺旋模様を描いている。もうずいぶん歩いたなと思っていても、螺旋階段のように、すぐその足の下に古い時間が存在している。身を乗り出して下に花を投げれば、かって自分が歩いた影の上に落すことができるのだ。』

この思わせぶりな初めのところを読んだとき、ぞくぞくっとして興味をそそられた。短い文節が一枚ずつの絵のように、イメージされてくるのも好みである。

ヒロイン理瀬は14歳の少女、『鏡の国のアリス』が愛読書で、『赤毛のアン』のアンより『秘密の花園』のメアリに似ていて、北の湿原地帯にある不思議な学園に寄宿する。

だだならぬ競争、葛藤を繰り広げて幼くも人生に挑んでいる様子は、これはもうファンタジーではない、ひとつの哀しい真実（人生の機微）に深く胸をえぐられた。

ところで、作中小説『三月は深き紅の淵を』が作者の前作品だったりするらしい。解説を読んで知った。しかもそれは複雑な構成のよう。

柊♪さんの日記に詳しいのでもっとよく拝見して置けばよかったと後で知る。そこには「麦の海に沈む果実」の後編「黄昏の百合の骨」も出版されているとも。柊♪さんの感想はここ

そして他にも「睡蓮」と「水晶の朝、翡翠の夜」の２編があるという、七生子☆さんのコメントが上記のＨＰに...。

　＞「睡蓮」は『蜜の眠り』（光文社文庫）＆『図書室の海』（新潮社）に、「水晶の朝、翡翠の夜」は『殺人鬼の放課後』（角川スニーカー文庫）に収録されてます。
「睡蓮」は理瀬の幼少時の話、「水晶～」は『麦の海に沈む果実』の後日談です～。

しかし、複雑な構成はともかく、この一冊だけでもファンタジー・ミステリは充分楽しめる。夢中になって暑さを忘れる本だと思う。

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