やっぱり読書  おいのこぶみ

やっぱり読書 おいのこぶみ

2004年10月26日
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カテゴリ: 名作の散歩道
講談社文芸文庫というのを見つけた。

純文学というジャンル。私には懐かしい作家ばかり。

前から読みたいと思っていた平林たい子があったので購入。読了した。

岡本かの子、林芙美子、佐多稲子、宮本百合子、野上弥生子、宇野千代、円地文子、平林たい子氏らをそれぞれ活躍した時代はずれるが、先駆先輩女性作家として私は興味を持ってみている部分がある。

それらの作家の内、平林たい子と宮本百合子をまだ読んでいなかったので。

短編集だ。
「こういう女」「一人行く」「私は生きる」「うた日記」「野の歌」「鬼子母神」「施療室にて」「人生実験」「人の命」

書かれている時代は昭和10年20年代。

現代の女性もこの悩みを悩んで生きている。
むしろ生き生きとしてそれが驚くほど新鮮だ。

文がうまい。日本語が生きている。簡潔な表現。これぞ日本語と思う。
たい子自身も文を書くということを芸術を極めるとしていた。

これは私小説というのだろうか。
たしかに作家の経歴を見れば、この短編は経験に基いて書かれているらしいのだ。
でも、完璧な純文学であると思う。

昭和の初期に文才に富む早熟な少女が田舎から都会に出てくる。

『文学で育った頭の中にはまだ実人生で試みたことのない反抗心と空想とが寄生虫みたいに生きて出口を求めてうごめいていたがそれを試みる機会はまだなかった。』(「人生実験」より)

時に17才のたい子。身体を張って人生経験をする。恋愛、思想、生活、投獄、別離、男達、性。

それにしても「人生実験」というタイトルは仰々しい。

が、現在読んで見るとたいして大げさに思えないところが新しかったのか、センセーショナルだったのか。

この勇猛果敢は終生貫き通したという。
文章のうまさと真摯な態度のこれらの文学は、同じような女性の作家の現代文学を軟弱に思わせる。

時代が便利で軽いのだから仕方がないのか、文化の変遷とはこういうものなのか。





「寄生虫みたいに生きて出口を求めてうごめいて」
このすごさが私より後に生まれた人はわからないかもしれない。

寄生虫、回虫といって人間の身体の中で成長するミミズのような生き物。青菜に産み付けられた卵が衛生状態が悪い時代によく人の身体に入ってしまった。

身体の中でその虫はその人の栄養をかすめとって成長する。大きくなると内臓を食い破ったり、そうまでしなくとも、食道を駆け上って口から出てくる。

実際に私は小学校高学年の級友に起こったのを見た。グループ研究を模造紙(いまでもある?)に皆で書いている時、その上に一人の口から飛び出したのだ。

みんな「ぎゃー!」
その子はいつも青白い顔して痩せていた。オカルト・ホラーみたいだが本当の話。

だから、先生は「よかったね出てきて」といって模造紙をまるめて「研究材料にする」とかいってさりげなく片付けてしまった。その子はびっくりしてしくしく泣いていたけど。





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最終更新日  2004年10月26日 14時38分13秒
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