やっぱり読書  おいのこぶみ

やっぱり読書 おいのこぶみ

2005年03月04日
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カテゴリ: 読書感想
ドキドキするようなフレーズが随所に散りばめられている、さすがはデビュー作である。

人気のあった訳がわかろうというもの。

書き手「私」の名前が最後まで出てこないので、つまり作者「北村薫」さんも覆面の作家で性別も判然としないところで、ミステリーが秘密の情緒をいや増すにさせていたのだ。

ところどころのドキドキするようなすっごいいい言葉はしかし、こんな私でも(乙女でない)夢中にさせてくれる。ということは普遍的ということ。

その捉えて話さない魅力とはこのヒロインのボーイッシュな「私」にある。
それはヒロイン「私」と仲良し3人のやりとりのなかに出てくる場面でわかる。

本ばかり沢山読んで知識はあれどうぶな「私」がからかわれて、あかくなり口をとがらせたところを、
『可愛いなー、膨れたその顔が可愛い。ボクが男ならほっとかないよ』なんて女友達にいわれてしまう。



さて、あらすじは、女子大生である「私」の日常、通学生活でのささいな出来事の中にひそむ謎を、あれ?と思う。それをひょんなことで知り合った落語家の「円紫師匠」が謎解きをしてくれるのだ。

「私」がぶつける相手「円紫師匠」の神通力がすごいのだ。人の心理の奥襞にはいりこめるのだろう。
また、その師匠との「私」の掛け合いが何ともほのぼのとしていいのだ。

ハッとさせられる真理もある。

P194の「円紫師匠」が噺を誰に向かってするのかと聞かれて、聴いてくださっているお客さんだけじゃなくて「自分に向かってだ」と答えた。すなわち落語を一生の仕事にしようと決心した、大師匠の噺を聴いていた純な中学生の自分に向かって。

今行っている行動は誰に向かってするのか、それは自分が相手、しかも若い時の、こうありたい自分というものに向かっている、絶対ごまかせない。うーんここはいい言葉だった。

ここでこの質問をしたのが「私」の友人の「正ちゃん」だから「正ちゃん」のキャラクターもいいのだ。随所で光ってる。

この「円紫師匠」シリーズ(「夜の蝉」など次々と出ている)は、なにげない日常に潜む謎ときと、「私」と「円紫師匠」の人生観を楽しむ事が出来るのではないか。

なにげない心理の謎はアガサクリスティも書いているが、北村薫さんらしさが迸っているこれもいいなーと思う。ういういしい若さの輝きがここにはある。

「織部の霊」
「砂糖合戦」

「赤頭巾」
「空飛ぶと馬」

の5編。私は「赤頭巾」一番良かった。

書き忘れた。ここにもおびただしい本の山。それも魅力だ。





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最終更新日  2005年03月04日 10時41分44秒
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