やっぱり読書  おいのこぶみ

やっぱり読書 おいのこぶみ

2005年04月24日
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カテゴリ: 読書感想
作家が何を言わんとするのかは、その作品から知るのである。作家のエッセイなどは読まないほうがいいかなと思っている。

しかし、時には読んでみたくなる。読んで補足された気になるというか、ああそうだったのかと理解が進むというか、ぞき趣味というか、ようするに楽屋裏、屋敷内を知りたいというのである。作家自身の「苦手だ、あまり書かないなどという」フレーズが付いたものはなおさらだ。

エッセイだから日常生活、直木賞を受けた時のこまごました日記、執筆に当たっての姿勢、逡巡、苦労などもちろん面白く読んだ。

読み進むうちに桐野さんの「書評・映画評」の章で愕然となった。う、うまい。当然本職の物書きさんなのだから比べようも無いのだけれど、自分のがいやになった。

「『<詩>の誘惑』井坂洋子」の書評で桐野さんは

『書評することが気恥ずかしくてならない。いくら分析をしても的が外れているのではないかと疑い、どんな言葉を遣っても言い足りないのではないかと何度も後ろを振り返る。』

と書いていらっしゃっるにもかかわらず、その書評の的確さ、テーマを展開させる面白さ、筋の通った論理に圧倒された。私の読書感想なんか、もうやめようかしらとまで思いつめてしまった。

が、そこでちょっとうまいことが頭に浮かんだ。ネットで流している書評ともいえない感想が、本職の作家さんよりうまく書けていたら、職業を圧迫してしまうではないか。

このエッセイ集にも「知」は対価を支払って手に入れるもの、新古書店のごときはなにごとぞ!と怒っていらっしゃる場面もある。(いわゆる105円で手に入れ、ほくほく状態になってる私たちはちと恥ずかしい)図書館も「知」の濫費に手を貸しているとおっしゃっている。(それはちょっと意味が違うと思うが…)からして、ネットという垂れ流しの場合は下手のほうがいいんだもん。





本題になった最後のエッセイ「白蛇教異端審問」は桐野さんの気迫に満ち満ちていて思わず拍手する。

少しも知らなかったが、直木賞の「柔らかな頬」を駄作だといった批評があり、江戸川乱歩賞の「顔に降りかかる雨」に関するバッシングもあったらしい。論点についてはともかく、きっちりと反論するということはいいことだ。しかし、日本の文化はそれを異端とする。なさけないことに。





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最終更新日  2005年04月24日 20時33分30秒
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Re:「白蛇教異端審問」桐野夏生(文藝春秋)(04/24)  
パティP  さん
プロ然とした作家もいれば、プロか?と疑いたくなる作家もいますね。
桐野さんの作品は好悪に別れるので余計にいろいろ言われるのだと思います。

書評ですが、確かにあまりにうまいものを見ると、もう書くのがいやになるものですね。
でも、それでも書いていけるのがアマチュアの強みです。
プロはお金をもらうのだから、ちゃんとしたものを書いてくれないと!
書くことがすきでも、職業にすると、そういうキツさが出てきますね。
また、知り合いの作家のものはけなせなくなるし。
だから、素人書評も必要なんです。
そもそも本はすべての人のものですから。 (2005年04月24日 22時09分49秒)

Re:「白蛇教異端審問」桐野夏生(文藝春秋)(04/24)  
☆かよ  さん
書評って本当に難しいです=
アマチュアだから好みで書いて良いとは思うのですが、文章能力がないという一番の問題と、、、、
私が、少し前から書けなくなったのは、面白い本ほど沢山書きたくなる。
そうすると、「それで読んだ気になった」というコメントいただいてからです。
そういう本ほど、自分で読んで欲しいのに。。。
そして、面白くなかった本のけなしてばかり・・・っていうのも嫌だし・・・。
(2005年04月24日 23時26分09秒)

パティPさんRe[1]:「白蛇教異端審問」桐野夏生(文藝春秋)(04/24)  
ばあチャル  さん
>プロ然とした作家もいれば、プロか?と疑いたくなる作家もいますね。

途中で投げ出した本もありました。でも購入したものはもったいないと思ったりして、だから、遅れて読んでいたのですが、このごろは早くなったので失敗するかもしれないです。

>桐野さんの作品は好悪に別れるので余計にいろいろ言われるのだと思います。

確かに個性が「くっきり」というか「つよい」かもしれませんね。私は強いものにあこがれます。それは好き嫌いですものね~。

>また、知り合いの作家のものはけなせなくなるし。
>だから、素人書評も必要なんです。
>そもそも本はすべての人のものですから。

そうでした!読者がいなければどんな本も紙くずです。読者はお客様です。自信を持って鑑賞批評をしていきましょう(笑)
(2005年04月25日 08時25分35秒)

☆かよさんへ Re[1]:「白蛇教異端審問」桐野夏生(文藝春秋)(04/24)  
ばあチャル  さん
>書評って本当に難しいです=
>アマチュアだから好みで書いて良いとは思うのですが、文章能力がないという一番の問題と、、、、
>私が、少し前から書けなくなったのは、面白い本ほど沢山書きたくなる。
>そうすると、「それで読んだ気になった」というコメントいただいてからです。
>そういう本ほど、自分で読んで欲しいのに。。。

まず、この本を読むきっかけはかよさんの書評を読んだからです。ありがとうございました、期待通りでした!

ですから、お互い興味をもっている作家さんのこういう早い情報が必要なのですね。

かよさんがこのごろ心して簡潔に、クールに感想を書いていらっしゃるのを好もしく拝見しておりましたよ。好き好きと、べたべたも嫌だし、罵るのはもっと嫌。冷静に客観的に感想が書いてあると参考になりますね。
(2005年04月25日 08時41分28秒)

Re:「白蛇教異端審問」桐野夏生(文藝春秋)(04/24)  
柊♪  さん
柊の場合、読む本の分野にかなり偏りがある上に、
「評」といわれると身構えちゃって、書けそうにないです☆
あくまでも個人的な感想+自分用の記録!と思って日記かいてます(笑)
桐野さんのエッセイは言い口がきっぱりしていそうで読んでみたくなります。
古本屋と図書館を愛用している身には耳が痛そうですが~(^^ゞ (2005年04月25日 08時43分32秒)

柊♪さんへ Re[1]:「白蛇教異端審問」桐野夏生(文藝春秋)(04/24)  
ばあチャル  さん
>柊の場合、読む本の分野にかなり偏りがある上に、

それが私にはいいんですよ。好きなものが集まっていると思うと、楽しみに見に行くのです!

>あくまでも個人的な感想+自分用の記録!と思って日記かいてます(笑)

「評」と「感想」似て非なるものでしたね。私ちょっと気負いすぎましたよ(笑)自分用に記録したものを見たい方に見て頂くという、軽い気持ちも大事ですね、ネットは。 (2005年04月25日 09時11分56秒)

Re:「白蛇教異端審問」桐野夏生(文藝春秋)(04/24)  
るり4241  さん
ばあチャルさん、この文章、迫力ありすぎです。なんか、すごいですね。純粋に楽しめました。

 でも、文学って読み手と書き手の両方で、成り立つのですから。書き手ほど読み手が書けないのはあたりまえだ~。と開き直っています。w


 知の対価…。書き手にとってはそういう論理が成り立つのでしょうが、書き手と同様、読み手にも生活があるので、古書店を利用しないわけには行かないです。悲しい。。。ゴメンネ! 作家さん。。
(2005年04月25日 11時20分12秒)

るり4241さんへ Re[1]:「白蛇教異端審問」桐野夏生(文藝春秋)(04/24)  
ばあチャル  さん
迫力って、私かな、桐野さんの気迫が乗り移ったのかしら(笑)

> 知の対価…。書き手にとってはそういう論理が成り立つのでしょうが、書き手と同様、読み手にも生活があるので、古書店を利用しないわけには行かないです。悲しい。。。ゴメンネ! 作家さん。。

カラオケで歌う度に使用料を払う仕組みになっているけれど、本の場合どうしたらいいのでしょう?

古書店にもなんらかの版権を課すべきかどうか?105円の場合、悪いなーと思いながら買ってしまいますよ。でも捨てられるよりいいでしょう。 (2005年04月25日 13時04分49秒)

Re:「白蛇教異端審問」桐野夏生(文藝春秋)(04/24)   
ケー16  さん
私、書評を書くのは苦手です。
「おもしろかった。」としか書けないのです(笑)。

昔、私の日記を読んだ知り合いから、
「しかしあなたの感想って子どもみたいだよね」
って言われました。
全然腹は立ちませんでした。
なぜってそのとおりだからです(笑)。

でも、私にとって、本は、
「自分が楽しむためのもの」なので、
読んでよかったと思えればもうそれでOK。
感想書いてる時間があったら、
さっさと次の本にいっちゃいます。

ばあチャルさんなんてわたしからしたら
ほんとに書評書くのお上手ですよ。
「この本読んでみたい!」って思いますもん。
これからもいろんな本、紹介してください!
(←って自分が書かないくせにあつかましいですが)
(2005年04月26日 18時12分03秒)

ケー16さんへ Re[1]:「白蛇教異端審問」桐野夏生(文藝春秋)(04/24)  
ばあチャル  さん
こっぱずかしい!読みたくなるとおっしゃって下さってありがとうございます。

>感想書いてる時間があったら、
>さっさと次の本にいっちゃいます。

ほんと、ほんと。ずっとそうしていたのですが、なぜかこんなことに。この頃、読んだそばから忘れるので、それ故、まあ役に立つのではないかともくろんでいます。
(2005年04月26日 18時36分33秒)

Re:「白蛇教異端審問」桐野夏生(文藝春秋)(04/24)  
msk222  さん
>ネットという垂れ流しの場合は下手のほうがいいんだもん。

そうです、そうです。僕は、下手こそものの上手なれ(アレ、ちがったか…)で、下手を垂れ流しています。アマなんだから、プロに迫ってはいけませんよね。

それにしても、桐野夏生さん高村薫さんら、最近はとくに女性に骨太の作家が増えてきたと思うのですが、偏見でしょうか。

(2005年04月27日 20時38分01秒)

msk222さんへ Re[1]:「白蛇教異端審問」桐野夏生(文藝春秋)(04/24)  
ばあチャル  さん



そういう作家が私は気に入ります。たおやかで骨太というのが理想です。そんなにうまい具合いにはいかないでしょうがね。やっぱり珍しいのかもしれません。 (2005年04月27日 21時45分35秒)

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