>しかし、舅の弟に言わせると(おじさんですわな)、土地を切り売りして『落ちぶれた』といってますよ。
>私や旦那の時代には売る土地なんてありませんわ~。

庄屋だったひとたちも農地解放で土地持ちになったひとたちも農業が立ち行かないこの国の農政ひいては政治の犠牲者ですね。つくづくそう思います。

(2009年02月11日 12時17分21秒)

やっぱり読書  おいのこぶみ

やっぱり読書 おいのこぶみ

2009年02月10日
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水村美苗『本格小説』(新潮社) は、嵐が丘のオマージュというからにはやっぱり語り手が女中さんだったというか、そのひとが主人公のような小説であった。

 タイトルが日本近代文学『本格小説』とちょっと仰々しいけど、おもしろく読める。戦後から昭和の時代、平成に入ったところを背景に、突き抜けた人物達が織り成すドラマはわたしたちがたどった時代を振り返らせてくれ懐かしく、また歴史風俗の変遷を思う。

 この小説では戦後もすぐ、集団就職の時代にお手伝いさんと呼び名が変わったにもかかわらず女中になってしまったひとと、零落しつつもそのことに執着した家族と、貧しさから這い上がらなければならなかった青年のとの三つ巴のドラマがすさまじい。

 その女中さんで思い出すことがある。

 わたしが結婚してからだから、姑50代なかばわたし20代のころのこと。姑がよく「おちぶれた」が口癖にしていたが、もうひとつわたしはふに落ちなかった。

 義母は父親がある県の名家の医者、広い敷地に大きなお屋敷、人手がたくさんのお嬢様、女学校を卒業してからも専門学校へいったそうな、つまり今の女子大卒と同じ。その後、行儀見習いとして行った先は華族のお屋敷。結婚しても女中さんが居た子育てだったという話をたくさん聞かされた。

 ところが夫が39歳で早死にしてしまい、そのころ戦争も始まって実家に疎開するのだが、女中さんにもひまをだして、苦労の連続になってしまったのが気の毒だったのだった。

 それから十数年、戦後の日本を皆と同じように大変な生き方をしただろうに、何かにつけて「おちぶれた」というのが、わたしにはわからない。「何をご大層な」とむしろ反感さえ持った。だって仕方がないじゃない、日本中が民主主義だの平等主義だのになってしまったのだから。

 わたしなどは何もないのが普通、女中さんが(お手伝いさんが)居たら居心地悪いものと思うけども、母に聞けばやはり居たという。母が結婚してわたしが生まれた時、妹が生まれた時実家から来てもらったという。

 わたしの「おちぶれた」という言葉への違和感は、何もなかった時代の子として幸いにしてその怨念のようなものを、味わわなくて済んだということだと思うとありがたい。

 良かった時代に執着したり、上昇志向に執着したりそれが活力になればいいのかもしれないが、時代とのずれがあると摩擦がおこるものだ。

 しかしわたしがよる年波でいまはお手伝いさんが欲しいよ~。というのも本音(笑) 








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最終更新日  2009年02月11日 07時39分35秒
コメント(8) | コメントを書く


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Re:おちぶれる (02/10)  
薔薇豪城  さん
 本格小説、読み応えがありそうですね。読んでみたいです。水村美苗さんは「続明暗」で、その才能に驚愕しました。相当な高齢でデビューしたという彼女のお母さんの小説も、読みたいです。
 女中さんでいえば、口減らしのため7歳で女中奉公に出された私の姑は、介護保険でヘルパーさんにお世話になったとき「女中さんをたのめる身分になった」と喜んでいました。良い時代になったものです。 (2009年02月11日 07時59分52秒)

Re:おちぶれる (02/10)  
ひよこ7444  さん
婚家は昔、庄屋だったらしく、舅はぼんぼん育ちらしかったんですな。
戦後の農地解放で、土地は半分以下になった。
旦那に言わせると、舅は、その後の高度成長と列島改造論で、山を売り、道が出来て、田んぼを売り、、で、女中こそいませんでしたが『ぼんぼん』らしいです。
しかし、舅の弟に言わせると(おじさんですわな)、土地を切り売りして『落ちぶれた』といってますよ。
私や旦那の時代には売る土地なんてありませんわ~。
(2009年02月11日 08時34分06秒)

薔薇豪城さん  
ばあチャル  さん

> 本格小説、読み応えがありそうですね。読んでみたいです。水村美苗さんは「続明暗」で、その才能に驚愕しました。相当な高齢でデビューしたという彼女のお母さんの小説も、読みたいです。

わたしも(笑)美苗さんのお母様の小説のような人生を小説にした本『高台にある家』をやっぱり買ってしまいましたよ♪

> 女中さんでいえば、口減らしのため7歳で女中奉公に出された私の姑は、介護保険でヘルパーさんにお世話になったとき「女中さんをたのめる身分になった」と喜んでいました。良い時代になったものです。

そう、母も施設でお風呂に入れてもらうのに「三助」さんのように男の人に洗ってもらったといっていましたよ。男性の介護士さんだったのですね。「なんてことを!」(汗)とわたしは目が点…。でも時代がめまぐるしく変化したということですよね。
(2009年02月11日 12時09分36秒)

ひよこ7444さん  
ばあチャル  さん

Re:おちぶれる (02/10)  
【亞】2  さん
こんばんは~
たまたま昨年秋に『本格小説』を読みました。
タイトルが気になって読んだのですが。
面白かったから、夜を徹して(なわけないですね、少しは寝てるから)
久々に一気に読みました。
美人老姉妹たちの若い頃が映像のように目に浮びました。
(2009年02月15日 22時40分26秒)

【亞】2さん  
ばあチャル  さん
コメントありがとう、うれしい♪

>久々に一気に読みました。

そうわたしも夢中で。読ませますよね~。
水村美苗、寡作なのが惜しい。でもだからいい小説になるのでしょう。
>美人老姉妹たちの若い頃が映像のように目に浮びました。

セピア色の映像を見るようでした(月並みな表現 笑)

(2009年02月16日 07時18分54秒)

Re:おちぶれる (02/10)  
七詩  さん
遅いコメント失礼します。
私もこの小説は面白く読みました。一見、「嵐が丘」のなぞりのようなのですが、実は全く別物ではないか。つまりキャサリンに当たる「ようこちゃん」は何をやってもダメな女として描かれており、太郎ちゃんの前にも童女の幽霊となって現れる。まあ、小説を読んでの想像としては、太郎ちゃんとようこちゃんの間には大人の男女関係はなかったのではないか。むしろ太郎と濃密な関係をもったのは女中の方で、彼女は「光り輝く男」と太郎の大人の男としての魅力もわかっていた。
太郎と富美子がようこ夫妻の骨を砕く場面まできて、これは戦後をたくましく生きてきた二人の男女の愛の物語ではないかと思いました。
最初から最後まで不可解なのはようこの夫の雅之ちゃんで、これはちょっと造形に失敗したのではないか…と思います。 (2022年11月08日 15時30分10秒)

Re[1]:おちぶれる (02/10)  
ばあチャル  さん
七詩さんへ

そうですよ!もうストーリーはうっすらとしか思い出せません。
それにわたくしの感想は自分の思い出ばかり、これではしょうがないですね。

でも、七詩さんのコメントから『嵐が丘』の熱情が日本版としてドロドロと醸された小説だったことはわかります。

水村美苗さんの文学的思考(嗜好)は本好きの心をくすぐります。

(2022年11月10日 08時34分44秒)

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