やっぱり読書  おいのこぶみ

やっぱり読書 おいのこぶみ

2009年04月09日
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カテゴリ: 読書感想

 大正、昭和の時代色豊かな絵巻物風ものがたり、出生の謎を解くミステリー風、女の一生、結婚とは?

 おおまかな内容はこのよう。作家水村美苗さんの母節子さんが小説を書いてしまった。しかも娘が書こうとした母の母、祖母の尋常一通りでない「女の一生」ものがたり。

 むかしは案外こういう立場の人(婚外で子供を産まねばならない)がたくさん居たのだろう。現代は未婚の母はむしろ翔んでいるといわれるが。

 「高台にある家」は上昇志向の象徴。これも今では死語かもしれない。富と貧。現代格差が戻ってきたとはいえ、むかしはそれに加えて身分人格まで貶められ、もやもやした羨みは這い上がりたい力を生むと同時に、強烈な個性を加える。

 年老いた母と若い父。たくさんの異父兄姉が登場して、アンバランスな崖下の家のような暮らし。そんななかで育った少女(語り手「私」)は上つ方を志向してもがき、目覚めていく。

 文学性には欠けるが、大正昭和の絵巻物としてもおもしろく、また、横浜、神戸、大阪の風情がうまく描かれていてどこか懐かしい読み物であった。

 田辺聖子さんも誉め(神戸大阪の暮らしが生き生きしているからか?)娘水村美苗の手直しも入っている文章という。






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最終更新日  2009年04月09日 07時40分57秒
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Re:『高台にある家』水村節子(04/09)  
Rinn さん
人と違った体験がある人が、みんな物語を書けるわけではない。
よほど変わった経験でも、事実を羅列しただけではおもしろくないし、個人的な感懐ばかり書いてもつまらない。
ばあチャルさんもフィクション派ということで、読んでおもしろいのは筋そのものもですが、共感なり反感なりの感情を動かされた場合ではないでしょうか。
フィクションについて私なりに思うのは、経験(事実)を書く時はいったん書き手の意識を通って文章になる時、多少の嘘(作り事)が混じったり構成し直されたりするからおもしろくなる、と思ってます。
この本が読ませるのは、きっと誇張と省略がうまくマッチしてるのでは?読んでない本について言うのは、的はずれかもしれませんけど。
自分が知らない時代のことを、こうして切り取って再現したものを、いながらにして読めるのは、読書の醍醐味の一つですね。^^
(2009年04月10日 00時49分11秒)

Re:『高台にある家』水村節子(04/09)  
bonbon さん
ばあチャルさんの読書日記を一覧すると,私の読む本と(外国に住んでいるため入手が不可能な場合がありますが)古典を除いてほとんどかさなることはありません。唯一重なったのは野坂昭如氏の【エロ事師】でした。ばあチャルさんのブログに影響されたのか先日再読しました。
なんと,大阪の千林森小路関目の地名は私が育った町でした。
いつ頃この本を読んだのか覚えていませんが,最後のシーンだけは
記憶に残っています。
今読むと野坂さんの観念的エロティズムというのか、性愛シーンはゼロであくまで観念としてのセックスを追求されている。これは以前
alexの制服論にもちょっと出てくるけれど,男性の一方でのセックスに
対するメカニズムというのを彷彿させるようです。
脱線しましたが、今ゴッホとゴーギャンをテーマに論文を作成している最中なのですが、なぜ自分の耳を切るまで激論になったか、これを
探っていて,彼らの絵に対する哲学というかスタイルというか決定的に
違うことを発見しました。
ゴッホは自然を目にしてしか絵を描かれず,逆にゴーギャンは自然を一一旦記憶してアトリエで想像力で再現するという方法。
細かいことは省きますが,文学においても現実に起こったことを写し取るという方法のノンフィクション派。起こったことを一旦自分の意識の中で解析し自分のフィルターをかけ想像力によって再現するフィクション派。となるのかな.ゴッホの最後の70日は皮肉にもこの方法をで絵を描いている。
こういうのはコメントにならないですよね。
(2009年04月10日 02時41分44秒)

Rinnさん  
ばあチャル  さん
Rinnさんとbonbonさんのコメントを拝見して感激・感謝してしまいました!

お二人のコメントは大切にとっておきたい宝物のようです。

お読みになっていないはずのRinnさんのコメントのほうがこの本の感想ずばりです♪脱帽!

書き手の魅力が小説のような人生をフィクションにするのですね~。

作家とは自分の人間性をそそぎこんであるものをつくるひと、なまじ奇なる経験をしたからではないのですね。
(2009年04月10日 08時44分03秒)

bonbonさん  
ばあチャル  さん

>脱線しましたが、今ゴッホとゴーギャンをテーマに論文を作成している最中なのですが、なぜ自分の耳を切るまで激論になったか、これを
>探っていて,彼らの絵に対する哲学というかスタイルというか決定的に
>違うことを発見しました。
>ゴッホは自然を目にしてしか絵を描かれず,逆にゴーギャンは自然を一一旦記憶してアトリエで想像力で再現するという方法。
>細かいことは省きますが,文学においても現実に起こったことを写し取るという方法のノンフィクション派。起こったことを一旦自分の意識の中で解析し自分のフィルターをかけ想像力によって再現するフィクション派。となるのかな.ゴッホの最後の70日は皮肉にもこの方法をで絵を描いている。
>こういうのはコメントにならないですよね。

いえ、いえ。すばらしいコメントいただきました!
相響くというのはこのことでございましょうか。
↑でもいいましたが、宝物です。
きっとRinnさんのコメントも影響あると思われます。

ゴッホとゴーギャンをテーマに論文をお書きになっていらっしゃるとのことで例をあげてくださいましたが、なるほど、文学も、絵もその芸術家を通して表現される芸術ですねー。その外からは見えないものがどのように、花開くか、枯れてしまうか、エキサイティングです。鑑賞するほうは楽ですが、芸術家は苦しむのでしょう。あるいは天才的なものを持っているのか。
(2009年04月10日 09時00分42秒)

bonbonさんへ 2  
ばあチャル  さん

>ばあチャルさんの読書日記を一覧すると,私の読む本と(外国に住んでいるため入手が不可能な場合がありますが)古典を除いてほとんどかさなることはありません。唯一重なったのは野坂昭如氏の【エロ事師】でした。ばあチャルさんのブログに影響されたのか先日再読しました。
>なんと,大阪の千林森小路関目の地名は私が育った町でした。
>いつ頃この本を読んだのか覚えていませんが,最後のシーンだけは
>記憶に残っています。
>今読むと野坂さんの観念的エロティズムというのか、性愛シーンはゼロであくまで観念としてのセックスを追求されている。これは以前
>alexの制服論にもちょっと出てくるけれど,男性の一方でのセックスに
>対するメカニズムというのを彷彿させるようです。

bonbonさんはわたしの読書感想をよく読んでくださりありがたく感謝いたしておりました。
のに、3月の読書のブログで言わずもがなのぼやきをいたしましたm(__)m

「エロティズム」も「セックス」も頭を通して初めて理解されるもの。なるほどこれも文学に(芸術に)似ていますね。
うーむ、本能のままに動くと動物になり、事件になる(笑)

>なんと,大阪の千林森小路関目の地名は私が育った町でした。

こういうことは遭遇すると嬉しいもの!いい作品だとなおさら厚みが増すようで…(笑)
(2009年04月10日 09時18分01秒)

あら、背景がかわいらしくなって。。  
Rinn さん
やわらかい色調になって、春らしくていいですね!文字がグレーというのも、目にやさしくて。^^

ばあチャルさんが喜んでくださって、私もうれしいです。
それと、alexさんの座談型コメント欄の影響かもしれませんが、自分が書いたことをもっと論理的に明晰に書いてくださるコメントが入ることで、自分のうまく書ききれなかった考えを、提示してくださるので、フィードバックされて納得する。という作用があるのですね。
ばあチャルさんは「相響く」と言ってくださったけど、bonbonさんがくみ取って解析してくださって、私のひとり言みたいなコメントの趣旨がはっきりしました。うれしかったです。
他のブログでもそういうことを感じることがあって、これは私みたいなブログ書かない者にとっても、貴重なことだなと、最近とみに思うのです。
人間性と教養の高い方たちと、こうして触れ合う場を設けてくださるのもありがたいですわ。
以上、ブログの思わぬ効用に気づいて、(今ごろかい!)うれしかったので、ご報告でした。^^;
(2009年04月11日 12時04分10秒)

Rinnさん Re:あら、背景がかわいらしくなって。。(04/09)  
ばあチャル  さん

>やわらかい色調になって、春らしくていいですね!文字がグレーというのも、目にやさしくて。^^

時々こうして背景を変えてみるのもわたしはブログの楽しみです。内容はおなじですけども(笑)

>ばあチャルさんが喜んでくださって、私もうれしいです。
>それと、alexさんの座談型コメント欄の影響かもしれませんが、自分が書いたことをもっと論理的に明晰に書いてくださるコメントが入ることで、自分のうまく書ききれなかった考えを、提示してくださるので、フィードバックされて納得する。という作用があるのですね。
>ばあチャルさんは「相響く」と言ってくださったけど、bonbonさんがくみ取って解析してくださって、私のひとり言みたいなコメントの趣旨がはっきりしました。うれしかったです。
>他のブログでもそういうことを感じることがあって、これは私みたいなブログ書かない者にとっても、貴重なことだなと、最近とみに思うのです。

わたしもブログのコメントといえどもこんな奥が深いのかと、目を見開かされました。たいへん教示を受けました。もちろんしてくださる方の知性と教養がなければそうはなりません事を知っております。ほんとに、alexさんのブログのおかげでもあります。

>人間性と教養の高い方たちと、こうして触れ合う場を設けてくださるのもありがたいですわ。
>以上、ブログの思わぬ効用に気づいて、(今ごろかい!)うれしかったので、ご報告でした。^^;

内容のあるコメントをいただけるよう、わたしも精進しなくては、とも強く思ったことでした。


(2009年04月11日 19時22分34秒)

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