大正、昭和の時代色豊かな絵巻物風ものがたり、出生の謎を解くミステリー風、女の一生、結婚とは?
おおまかな内容はこのよう。作家水村美苗さんの母節子さんが小説を書いてしまった。しかも娘が書こうとした母の母、祖母の尋常一通りでない「女の一生」ものがたり。
むかしは案外こういう立場の人(婚外で子供を産まねばならない)がたくさん居たのだろう。現代は未婚の母はむしろ翔んでいるといわれるが。
「高台にある家」は上昇志向の象徴。これも今では死語かもしれない。富と貧。現代格差が戻ってきたとはいえ、むかしはそれに加えて身分人格まで貶められ、もやもやした羨みは這い上がりたい力を生むと同時に、強烈な個性を加える。
年老いた母と若い父。たくさんの異父兄姉が登場して、アンバランスな崖下の家のような暮らし。そんななかで育った少女(語り手「私」)は上つ方を志向してもがき、目覚めていく。
文学性には欠けるが、大正昭和の絵巻物としてもおもしろく、また、横浜、神戸、大阪の風情がうまく描かれていてどこか懐かしい読み物であった。
田辺聖子さんも誉め(神戸大阪の暮らしが生き生きしているからか?)娘水村美苗の手直しも入っている文章という。
『影法師』百田尚樹 2016年12月11日
悲しみよ こんにちわ 2010年08月25日 コメント(9)
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