『永遠の夫』という題名は「理想の夫」の意味ではない。妻が愛人に走ってもその妻から離れられないダメ夫のこと。
妻がつぎからつぎへ浮気しても、気弱でうじうじしているという夫が、寝取男に復讐するのやらそうでないのやら、笑えてしまう行動に走るミステリーもどきのドストエフスキー『永遠の夫』を読了。
おもしろかった、100年以上前の小説とは思えない臨場感。もちろん革命前のロシア、乗り物は馬車という時代。会話体で終始しているためか背景は関係ない。
人間の深層心理に食い込む描写が憎い。語り手がその浮気相手、乗っ取り男、間男。しかしダメ亭主でもやるときはやるもんだ!気弱亭主にねちねちと夫に復讐されていく様子は痛快、愉快。
えーっ、ドストエフスキーって、こんなにおもしろかったの!?
重厚で饒舌、複雑怪奇の『カラマーゾフの兄弟』や深刻な『罪と罰』。作者の才能はどこまで広がるのだろうか?認識新たになった。
訳(千種堅)もよかった、わかりやすかった。

わたしはこの歳になっても相変わらずフィクションが好き。こういうおもしろいのを読むとますます生きていることが嬉しくなる。
「ダメ亭主」のダメさ加減がおかしいのではなく、そこへ持ってくる話の運び、間の取りかた。つまり構成の巧みさの天才的なひらめきを味わうと妙に嬉しくなってしまうのだ。
世に文学、小説は数々あれどもわたしに当たるのは少ない。少ないからこそ探し求めてしまう。
願わくばわたしが当たりと思った作品が、1000年後も名作であればいいなーと思うのはおごりであろうかの~。
『影法師』百田尚樹 2016年12月11日
悲しみよ こんにちわ 2010年08月25日 コメント(9)
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