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古寺や庫裏また古し菩薩心 吟遊映人寺は古くて趣があるのに、庫裏が新しいと興ざめです。古寺に古い庫裏が続くと、それだけで御利益を感じます。
2012.07.30
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「この子・・・死体の解剖が必要よ。原因を調べなくては」「言っただろ? この子は溺死だ」「疑わしいわ。開いて中を見ないと・・・」「そんな必要ない」「疑う理由があるの」「それなら教えてくれ」「・・・細菌の感染があるかも・・・」シリーズ3作目ともなると、すでにエイリアンという凶悪な宇宙生物に対しても、ある程度の免疫(?)が出来たような気がする。なので、ストーリー展開も「うん、やっぱりこうなったか」といった、予測可能な構成になっていた。とはいえ、この作品では重要な役割を担うクレメンス医師が、まさかまさかの結果に。 惑星そのものが刑務所の役割を果たす囚人だらけの流刑地にあって、リプリーと同じインテリのクレメンスは、きっと最後まで重要なポジションにいるに違いないと思い込んでいたのだが・・・残念。さらに気になったのは、エイリアンの軍事利用をもくろむ企業として“ウェイランド湯谷”という日系企業であることが前面に押し出されていることだ。もちろん、この企業名は前作にも出て来たが、今回の3作目ほど強調されてはいなかった。この演出はいかがなものかと思う。宇宙船や基地の施工主が日系企業と言うなら大いに納得するところだが、軍事利用のため生物兵器の開発を推し進めるのが日系企業だなんて。もうこの辺りからして3作目の評価は個人的にも低い。リプリー、ニュート、ヒックスを乗せた非常救命艇は、惑星フィオリーナ161に不時着した。その惑星は、染色体異常の凶悪犯罪者の収容される刑務所になっていた。睡眠カプセルの中で眠っているうちに、何らかのトラブルに巻き込まれ、ニュートもヒックスも死亡し、生き残ったのはリプリー一人だけだった。医師のクレメンスに手当てを受けたリプリーは、快復間もなくクレメンスにニュートの死体解剖を懇願する。リプリーは「コレラの危険性がある」とウソをつくのだが、実は、エイリアンの寄生を疑うのだった。この『エイリアン3』を手掛けたのは、今や飛ぶ鳥を落とす勢いのあるデヴィッド・フィンチャー監督だ。代表作に『セブン』『ソーシャル・ネットワーク』などがある。そんなフィンチャー監督も、『エイリアン3』を手掛けた時はまだ駆け出しで、多くの映画評論家たちから酷評され、興行的にも伸び悩んだようだ。ところがその後の活躍により名声を手に入れたフィンチャー監督の評価は上がり、『エイリアン3』の評価も好転した。(2005年に『エイリアン3』の未公開シーンを追加した完全版が公開されたことによる。※ウィキペディア参照)『エイリアン3』の完全版は未見だが、いずれにしてもこのシリーズは1作目と2作目が良すぎたため、3作目はキビしい世間の評価にさらされることになったのは仕方がない。可もなく不可もなくと言った作品だ。1992年公開 【監督】デヴィッド・フィンチャー 【出演】シガニー・ウィーバー ★シリーズ1作目「エイリアン」はコチラから。★シリーズ2作目「エイリアン2」はコチラから。★シリーズ4作目「エイリアン4」はコチラから。また見つかった、何が、映画が、誰かと分かち合う感動が。See you next time !(^^)
2012.07.29
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歩を進めがたしや天地夕焼けて 山口誓子
2012.07.28
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「お願い、(イングランドに)罪を認め、忠誠を誓ってちょうだい。慈悲を与えられるわ」「スコットランドへの慈悲は?」「なぶり殺しに遭わず幽閉ですむかも。助かる望みが生まれます・・・死なないで!」 「(イングランドに)忠誠を誓うことは、今あるおれが死ぬことだ」本作「ブレイブハート」は、アカデミー賞作品賞ほか5部門を受賞した歴史大作である。 脚本はもちろん、映像も音楽も役者陣も、どれを取っても甲乙つけ難い素晴らしい作品なのだ。この作品がどれだけ史実に基づいたストーリー展開であるかということは、あまり問題ではなく、メガホンを取ったメル・ギブソンの徹底したキリスト教思想が根底に流れているのが興味深い。メル・ギブソンは、業界でも知らない人はいないほどの敬虔なカトリック教徒である。 そのせいか、主人公ウィリアム・ウォレスが処刑されるシーンは、正にイエス・キリストの受難のシーンにも似て、その残酷極まりない拷問は目を覆いたくなる。だが、このシーンには重要な意味があるのだ。ウィリアム・ウォレスがスコットランドを愛するが故に、その身を捧げ、甘んじて処刑を受け入れるという発想は、イエス・キリストが罪深き人々の身代わりとなり、あがないのために十字架に磔となる、いわば生け贄思想を彷彿とさせるのだ。その証拠に、ウィリアム・ウォレスの死によって、彼の遺志を継いだ者が決起して、スコットランドの自由と平和を勝ち取ったという件になっているからだ。(あくまで「ブレイブハート」の中でのストーリーにおいて)そこで気付かされる本作のテーマは、非常に過激ではあるが、自由や平和を手に入れるためには多くの血が流されて当然であり、またそれだけの崇高な信念と犠牲がなければ真実の解放はありえない、というものである。よって、イエス・キリストの死は正当のものであり、本作のウィリアム・ウォレスの死も重大な意味を持つものなのだ、と訴えている。13世紀末のスコットランドが舞台。イングランドとの戦争で父と兄を失ったウィリアム・ウォレスは、幼くして叔父の下に預けられる。成人してから懐かしい故郷に帰り、美しく成長したミューロンと再会し、恋に落ちる。 ある時、イングランド兵にからまれたミューロンをウィリアムが助けたものの、再びミューロンが捕まり、殺害される。復讐を誓うウィリアムは、スコットランドの自由と平和を掲げ、抵抗軍を立ち上げるのだった。世界史の好きな方は既に知っておられると思うが、もともとアイルランドとスコットランドはカトリック、イングランドはプロテスタントで、同じキリスト教圏でも派閥が違う。このことによって、同じ島国でも何度となく互いの信念を通して宗教戦争が繰り返されて来た。「ブレイブハート」は、メル・ギブソンがキリストの名のもとに“死を恐れることなかれ、信仰は永遠のものなり”と、映画を通して大絶叫しているようにも感じられる。それほどに揺るぎない神への忠誠と、祖国への愛と、そして孤高な精神を見せ付けられた気がするのだ。歴史好きの方、必見の一作である。1995年公開【監督】メル・ギブソン【出演】メル・ギブソン、ソフィー・マルソーまた見つかった、何が、映画が、誰かと分かち合う感動が。See you next time !(^^)
2012.07.26
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満天の夕焼雲が移動せり 加藤楸邨
2012.07.25
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世の中の重荷おろして昼寝哉 正岡子規
2012.07.23
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「これは生物兵器部にとって貴重な標本だ。持ち帰れば君も僕も英雄になれるぞ。一生安泰だよ」「あなた正気なの? 第一、危険な生物が検疫を通るはずないわ」「隠して持ち込めばいいさ」「私が言いつけるわ。あなたが植民者157名の死を招いたってこともね」シリーズ2作目になると、監督はリドリー・スコットからジェームズ・キャメロンに代わり、作風もガラリと変わった。当時、キャメロン監督は『ターミネーター』で大成功を収め、波に乗ってこの『エイリアン2』でも大ヒットを飛ばした。前作との明らかな違いは、やはりその道のプロが指摘したように、ホラー色よりもアクション性を重視した点だろう。1作目は、エイリアンの不気味さ、グロさが前面に押し出されていたが、2作目はエイリアンとの戦闘シーンがクローズアップされ、ドキドキハラハラ感に溢れている。どちらも特色が生かされ、甲乙付け難い完成度の高さだ。見どころは何と言っても主人公リプリーが、パワーローダーを装着し、単身エイリアンと戦うシーンだろう。そもそもパワーローダーは武器ではなく、物を持ち運ぶフォークリフトのようなものだ。 その機械を女性であるリプリーが見事に操作し、しぶといエイリアンを宇宙船から振り落とすのは、正に感動的だった。宇宙船ノストロモ号にただ一人生き残ったリプリーは、57年という長い間、冷凍睡眠カプセルの中で眠っていた。というのも、コンピューターの何らかのトラブルで宇宙空間をずっと漂い続け、発見が遅れたのだ。地球に帰還したリプリーを驚かせたのは、何と、エイリアンの巣食う惑星LV-426が、今は開拓され地球人が住民となっているという事実だった。そんな中、惑星を開拓した住民全員が消息を絶ったとの連絡が入り、リプリーの不安は的中するのだった。今回、日進月歩の科学技術の向上を感じさせたのは、ビショップというアンドロイドの存在だ。前作ではアッシュというアンドロイドに、リプリーは殺されかけたため、そのトラウマからビショップを嫌悪する。そんなビショップは、自分は改良型で問題はなく、人間ではないが恐怖心はあると、リプリーに穏やかに説明する。この辺りの表現方法は、さすがはキャメロン監督の演出。ターミネーターの改良型の登場を彷彿とさせ、科学技術は常に進化しているのだと訴えかけて来る。今回登場する生き残りの少女ニュート役のキャリー・ヘンは、エイリアンに脅えながらも健気に生き延びる姿が意地らしい。キュートな愛らしさで作品に癒しを与えてくれる。『エイリアン2』は、前作同様、いやそれ以上に、生きることへ執着する人間の強さを教えてくれる、素晴らしい作品だ。1986年公開【監督】ジェームズ・キャメロン【出演】シガニー・ウィーバー★シリーズ1作目「エイリアン」はコチラから。★シリーズ3作目「エイリアン3」はコチラから。★シリーズ4作目「エイリアン4」はコチラから。また見つかった、何が、映画が、誰かと分かち合う感動が。See you next time !(^^)
2012.07.22
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みずからは正しい誓願を起こしていること、これこそ人生に喜びと確信を与えるものである。~スッタニパータ(ブッダのことば)~中村元『小なる章』註より
2012.07.21
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本日はブルース・リーの命日だそうです。京都新聞のコラム「凡語」で知りました。もちろん、怪鳥音はリアルタイムで存じ上げております。謹んでブルース・リーに哀悼の意を表します、合掌(-人-)なお、吟遊映人では2009年10月24日に記事(燃えよドラゴン)を掲載しております。ブルース・リーをお偲びいただき、ついでに再見いただけましたら幸いです。『燃えよドラゴン』はコチラまで。本日の京都新聞 凡語を載せさせていただきました。弊記事のお口直しに上質なコラムをご堪能ください♪【伝説の男】 怪鳥音。この言葉だけで、あの男の顔が浮かぶのは40代以上の男性だろうか。その誰もが研ぎ澄まされた肉体に憧れ、1度や2度はヌンチャクを振り回したに違いない▼男の名は、ブルース・リー。18歳で香港から単身渡米し、大学で哲学を学びながら、独自の武術を創始した。門下には、スティーブ・マックイーンをはじめ映画スターも名を連ねる▼米テレビドラマのアクションで注目され、香港に戻ってカンフー映画3本に主演した。これらが興行記録を塗り替えるヒットとなり、ついに念願のハリウッドから声が掛かる。今も色あせない傑作映画「燃えよドラゴン」の誕生だ▼「アチョー」という怪鳥音を発する格闘シーンが目玉だが、実は、弟子に「考えるな、感じろ!」と教えを説く冒頭のシーンにこだわり、自ら監督もしたと聞く。この台詞(せりふ)は、彼の哲学を表す名言として語り継がれる▼神髄は奥深く、凡人はその境地にないが、表面的な言葉遣いは何事にも言い得て妙だ。日本の政治家に引くなら「政局ばかり考えるな、国民の声を感じろ!」といったところだろうか▼映画は世界中で公開され、空前のブームが沸き起こる。しかし、アメリカンドリームともいえる大成功を本人が知ることはなかった。公開を目前に控えた1973年のきょう、銀幕の「龍の化身」は伝説になった。32歳だった。
2012.07.20
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みずからの主体的な心のもち方により、喧噪や誘惑はないのと同様になるのも可能である。~スッタニパータ(ブッダのことば)~中村元『小なる章』註より
2012.07.20
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1987年7月17日、石原裕次郎氏が亡くなった。享年52歳、生きていれば78歳になる大兄である。映画会社の規制が厳しい中で三船敏郎氏と共演された「黒部の太陽」が大成功をおさめたのは周知の事実である。せんない事とは思いつつ・・生きていられたら、どんな歳を積まれたか。今宵は軽妙なリズムに酔いながら大兄に思いをはせてみよう、合掌。「おいらはドラマー♪」 故人老いず生者老いゆ恨みかな 菊池寛
2012.07.17
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【エイリアン】「指令は何なの?」「マザーの解析を読んだだろう? 異性物を持ち帰ることさ。それが最優先だ」「ちくしょう! 俺たちの命はどうなる!?」「もちろん二の次だ」SF映画に限ったことではないが、近未来を推測、想像しての作品なだけに、時代の変遷をまざまざと突きつけられることが多い。というのも、1979年に公開された『エイリアン』において、宇宙船ノストロモ号は日系企業の所有との設定になっている。80年代に入り、バブル期に突入する日本の繁栄を予期していたかのような設定に、ある種の感慨を覚える。一方、近年公開された『MOON月に囚われた男』というSF映画では、月面に作られた基地の内部はハングル語になっている。韓国企業のたい頭を現しているのに他ならない。時代の流れを感じないではいられない。さて、『エイリアン』は今さら言うまでもないが、シガニー・ウィーバーを世に出した代表作である。これまで、美人でフェミニンな女優さんが圧倒的な優位に立っていた業界に転機を起こした作品でもある。シガニー・ウィーバーは、女性でありながら二等航海士という国家資格を持ち、当時まだまだ男性優位の職場環境で、戦う女戦士リプリーとして描かれている。そんなリプリーというキャラの登場により、これからますます女性の社会進出が進むであろうことを予感させたのだ。通商船の巨大宇宙船ノストロモ号は、長い冬眠状態を経て、地球へと帰還しようとしていた。ところが途中、見知らぬ惑星からのSOSを傍受してしまい、救出に向かうことになった。 SOS信号が発信されている宇宙船を探ることにしたケイン、ランバート、ダラスの3人だが、そこでケインが一面に卵のようなものが産みつけられているのに気付く。興味本位からか、ケインが卵の一つに顔を近づけたところ、突然、未知の生物がケインの顔面にへばりつくのだった。見どころはいろいろあるが、特にショッキングなシーンと言えば、ケイン役に扮するジョン・ハートが、食事中、突然苦しみもがき出し、そのうち腹部が内部から切り裂かれ、寄生したエイリアンの子どもが飛び出すところだ。この強烈なインパクトはスゴイ。また、リプリーをけむたがる科学者のアッシュが、丸めた雑誌をリプリーの口に突っ込んで殺そうとしたところ、他のメンバーがアッシュを取り押さえ、打ちのめす。そうしたところ、実はアッシュはアンドロイドだっというオチが、なんともSFチックで印象的だ。この夏、猛暑を乗り越えるためにも、『エイリアン』を見て背筋の寒くなる思いを味わっていただきたい。SFホラーの金字塔だ。1979年公開 【監督】リドリー・スコット 【出演】シガニー・ウィーバー★シリーズ2作目「エイリアン2」はコチラから。★シリーズ3作目「エイリアン3」はコチラから。★シリーズ4作目「エイリアン4」はコチラから。
2012.07.15
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日ざかりのお地蔵さまの顔がにこにこ 山頭火
2012.07.14
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「苦学生だったんだな」「母子家庭で僕が19の時、母が死に、奨学金が頼りだった」「そりゃ大変だな」「(でも)僕より貧しい人も(いるしね)」「このオフィスにはいない。皆ハーバード出さ」「君も?」「まさか違うよ。僕はプリンストン出さ」サスペンスにはどの作品にも共通して見られるのが、最初の“つかみ”、この“つかみ”さえ成功していれば、ほぼその作品は完璧と言っても過言ではない。サスペンスにおける“つかみ”というのは、例えば「これから何かが起こりそうな予感」めいたものを視聴者に植えつけるものである。その点、本作は充分にその“つかみ”の役割を果たしていると言えるであろう。まず、カメラはニューヨークの夜景を捉える。そして、忙しなく働くウォール街のビジネスマンたち。こういう何気ない日常の光景が一転するのだと語りかけている。お見事。ニューヨークのウォール街、某弁護士事務所に派遣されて来た会計士のジョナサン・マコーリー。彼は、一人黙々と仕事をこなす毎日であった。ある晩、弁護士のワイアット・ボースが気さくに声を掛けて来る。話し相手のいない孤独なジョナサンにとって、ワイアットは刺激的な存在で、どんどん気を許し、オフの日にはテニスをして楽しむほどの仲になる。そんな折、お互いのケータイを取り違えたことで、ジョナサンは会員制のデートクラブの存在を知る。それは、電話一本で一夜限りの情事を楽しむという秘密クラブであった。注目したのは作中に登場する、ドイツの画家ゲルハルト・リヒターの作品である。この絵に一体どんな意味が隠されているのかと、さんざん思い巡らしてみたが、謎である。ちなみに作品は『二本の蝋燭』という絵であった。単純に考えれば、ジョナサンとワイアットの二人の男を意味しているのかもしれないが、不勉強のためそこからテーマを探り出すことは出来なかった。視聴者は、このサスペンス作品から一体どんなテーマを見出すだろうか。意外にも、ラブ・ロマンスであるかもしれない。各人の楽しみ方で満喫して頂きたい。2008年公開【監督】マーセル・ランゲネッガー【出演】ヒュー・ジャックマン、ユアン・マクレガーまた見つかった、何が、映画が、誰かと分かち合う感動が。 See you next time !(^^)
2012.07.12
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「知人の遺体がここの海辺で見つかったんです」「船から落ちた英国人のことかね?」「そうです」「あれはおかしな話だ。この潮流で西に流れ着くはずはないんだがね・・・絶対に!」 久しぶりに本格サスペンスを見た気がする。むやみやたらなBGMに頼っていないし、派手なアクションシーンもない。残酷な殺人現場を見せつけるわけでもないのに、充分ミステリアスで心理的に迫って来るものを感じるから不思議だ。主人公はゴーストライターであり、それ以上でもそれ以下でもないためなのか、役柄としての氏名はない。そのため、ラングの自叙伝を執筆することになったゴーストライターとして、気のすすまないまま巨大な渦に巻き込まれて行くプロセスが、淡々と描かれている。会話は独特で、日本人には笑いづらいジョークがふんだんに盛り込まれていた。主人公が英国人という設定もあり、皮肉混じりの言葉の掛け合いが、よりいっそう知的なムードをかもし出すのに成功している。また、場面ごとに様々な仕掛けや意味合いが込められていて、映画全体の完成度を高めていた。元英国首相アダム・ラングの自叙伝を執筆していたゴーストライターが、謎の死を遂げたことで、その後任が募集された。面接に合格して後任のライターに選ばれた“ゴースト”は、執筆のため急かされるようにして、アメリカ東海岸に渡った。ラングがアメリカで講演中ということもあり、その間滞在する心寂しい島で執筆することになったのだ。真冬の凍てつく孤島で、しかも厳重な警備に守られた屋敷での生活は息苦しく、一向に執筆はすすまない。だが、前任者の使用していたクローゼットから数枚の写真と新聞の切り抜きなどの資料を見つけ出したことで、ラングの過去にいくつかの疑問が生じるのだった。作中の光景は、どれも曇天か雨模様か、あるいは寒風に吹きさらされているシーンばかりだ。だがその効果的な風景描写により、先行き不透明感が見事なまでに表現されている。監督はロマン・ボランスキーで、代表作に『戦場のピアニスト』などがあり、その映画的センスは多方面から絶大な支持を受けている。またキャスティングもすばらしかった。アダム・ラングに扮したピアース・ブロスナンなど正にハマリ役で、過去の出演作007の影響からなのか、ずっと怪しいムードをかもし出していた。やっぱりサスペンス映画はこうでなくちゃと思わせる、完璧なまでの完成度を誇る作品だった。2010年(英)(仏)、2011年(日)公開【監督】ロマン・ボランスキー【出演】ユアン・マクレガー、ピアース・ブロスナンまた見つかった、何が、映画が、誰かと分かち合う感動が。See you next time !(^^)
2012.07.08
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「パパはなぜ出てったの?」「それはね、あなたが生まれた日に“ある物”が届いたの。小さな箱よ。中身は何だと思う? ・・・“責任”というものよ。世の中には何よりも“責任”を恐れる人たちがいるの」「じゃ、パパは箱の中身が怖くて逃げ出したの? ・・・バカみたい」「ママもそう思うわ」イーストウッド監督の作品が優れていることには業界でも定評のようだが、この『チェンジリング』は申し分なく見事な作品だ。また一段と冴え渡る演出で、涙なくしては見られない出来映えだ。もともとイーストウッド作品には、生涯に渡るテーマを感じさせるものが多い。そこには、誰にも譲れないメッセージのようなものが込められていて、気付いた人だけが心を熱くさせるのだ。とりわけ強く感じるのが、権力の横暴に対する抵抗、あるいは人間が男女問わず与えられるはずの人権・誇りを死守する勇気。それこそが、クリント・イーストウッドがずっとずっと表現して来た世界観だと思うのだ。この『チェンジリング』にしても、クリスティン・コリンズというシングル・マザーの女性が、警察という国家権力に屈することなくひた向きに闘い続ける意志の強さと勇気を表現している。だが作中では、それが露骨にならないように、息子を探し出したいがゆえの、母親の情愛として心地良く仕上げられている。こういう上品な演出は、なかなかどうして難しい。さすがはイーストウッド監督ではある。1928年のロサンゼルスが舞台。クリスティン・コリンズは、9歳の息子ウォルターを育てながら電話交換局で働く女性。 ある日、休日出勤することになり、ウォルターを自宅に一人残し出掛けることになってしまった。予想外に帰宅が遅くなると、家にはウォルターの姿はなく、慌てて警察に通報する。だがウォルターの消息はつかめず、そのまま5ヶ月が過ぎる。その後、ウォルターが発見されたという連絡を受け、すぐさまクリスティンは駅まで迎えに行くものの、なんとその少年は別人であった。クリスティンは「この子はウォルターではない」と否定するが、警察はマスコミや世論に対する面子を気にして、クリスティンの意見に全く耳を貸さなかった。主人公クリスティン・コリンズに扮したのは、アンジェリーナ・ジョリーだが、この女優さんの訴えかける目力に注目していただきたい。“目は口ほどにものを言う”とは昔からの諺だが、正にこれをアンジェリーナ・ジョリーが演じている。哀しみ、怒り、希望など、そういう感情をセリフではなく、目力によって表現している。すごい。さらに、脇役だが重要な牧師の役で、ジョン・マルコヴィッチが好演。実は物凄い存在感とインパクトのある役者さんなのに、この作品ではかなり抑えられていて、それがまた輝きのある演技として光っていた。脚本といい、演技といい、何一つ文句のつけようがない、完成度の高い作品だった。2008年(米)、2009年(日)公開【監督】クリント・イーストウッド【出演】アンジェリーナ・ジョリー、ジョン・マルコヴィッチまた見つかった、何が、映画が、誰かと分かち合う感動が。See you next time !(^^)
2012.07.05
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『世界が一変した。やっと見えたのだ。全てがウソだった。母も父も・・・。今の私に残ったのは彼だけ。ピーターは私が疑った時も、傷つけた時さえも、彼に偽りはなかった』この作品の製作会社を見て驚いたのだが、アッピアン・ウェイ・プロダクションで、レオナルド・ディカプリオが代表を務める会社だ。役者として一流のディカプリオが、まさか製作者サイドとして関わっているとは思いもよらなかった。そんなわけで、この作品にはディカプリオが役者として出演することはない。作品はタイトル通り、グリム童話『赤ずきん』をベースにしたものらしいが、オリジナルとはほとんど別モノと捉えた方が無難で、カテゴリもホラーというよりファンタジーに近いものがある。ただ、グリム童話というのは、実はかなり残酷で恐怖を煽るおとぎ話。というのは周知のとおり。おかげでこの作品も全体的におどろおどろしいムードたっぷりに仕上げられている。美しい少女ヴァレリーは、幼なじみで木こりのピーターと好き合う仲だった。だがヴァレリーの母親は、村一番の金持ち一家の跡取り息子であるヘンリーと婚約させてしまう。そんな中、満月の夜、ヴァレリーの姉が何者かに殺されてしまう。それは、人狼のしわざだった。これまでこの村ではずっと動物の生け贄を捧げることで平和を保っていたが、その協定を破られてしまったのだ。激怒した村人たちは、人狼を退治した経験のあるソロモン神父を招くのだった。主人公ヴァレリーに扮したのはアマンダ・サイフリッドで、透明感のある美しい女優さんだ。代表作に『マンマ・ミーア!』などがあり、今後注目の女優さんである。さらに、ソロモン神父に扮したゲイリー・オールドマンもなかなかのキャスティングだ。 この役者さんのスゴイのは、狂信的な役柄を、まるで自分の内在する本質的なものとして演じてしまうところだ。つまり、役作りを超越したリアリティを感じさせるのだから脱帽だ。独特の映像美と、役者陣の申し分ない演技のおかげで完成度としては高い。だがストーリー展開はこじんまりとまとまり過ぎたキライもあり、まずまずと言ったところか。ファンタジー映画を好む方々におすすめしたい作品だ。2011年公開【監督】キャサリン・ハードウィック 【出演】アマンダ・サイフリッド、ゲイリー・オールドマンまた見つかった、何が、映画が、誰かと分かち合う感動が。See you next time !(^^)
2012.07.01
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