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2012.07.08
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20120708


「船から落ちた英国人のことかね?」
「そうです」
「あれはおかしな話だ。この潮流で西に流れ着くはずはないんだがね・・・絶対に!」


久しぶりに本格サスペンスを見た気がする。
むやみやたらなBGMに頼っていないし、派手なアクションシーンもない。
残酷な殺人現場を見せつけるわけでもないのに、充分ミステリアスで心理的に迫って来るものを感じるから不思議だ。
主人公はゴーストライターであり、それ以上でもそれ以下でもないためなのか、役柄としての氏名はない。
そのため、ラングの自叙伝を執筆することになったゴーストライターとして、気のすすまないまま巨大な渦に巻き込まれて行くプロセスが、淡々と描かれている。

主人公が英国人という設定もあり、皮肉混じりの言葉の掛け合いが、よりいっそう知的なムードをかもし出すのに成功している。
また、場面ごとに様々な仕掛けや意味合いが込められていて、映画全体の完成度を高めていた。

元英国首相アダム・ラングの自叙伝を執筆していたゴーストライターが、謎の死を遂げたことで、その後任が募集された。
面接に合格して後任のライターに選ばれた“ゴースト”は、執筆のため急かされるようにして、アメリカ東海岸に渡った。
ラングがアメリカで講演中ということもあり、その間滞在する心寂しい島で執筆することになったのだ。
真冬の凍てつく孤島で、しかも厳重な警備に守られた屋敷での生活は息苦しく、一向に執筆はすすまない。
だが、前任者の使用していたクローゼットから数枚の写真と新聞の切り抜きなどの資料を見つけ出したことで、ラングの過去にいくつかの疑問が生じるのだった。

作中の光景は、どれも曇天か雨模様か、あるいは寒風に吹きさらされているシーンばかりだ。
だがその効果的な風景描写により、先行き不透明感が見事なまでに表現されている。
監督はロマン・ボランスキーで、代表作に『戦場のピアニスト』などがあり、その映画的センスは多方面から絶大な支持を受けている。
またキャスティングもすばらしかった。

やっぱりサスペンス映画はこうでなくちゃと思わせる、完璧なまでの完成度を誇る作品だった。

2010年(英)(仏)、2011年(日)公開
【監督】ロマン・ボランスキー
【出演】ユアン・マクレガー、ピアース・ブロスナン

また見つかった、何が、映画が、誰かと分かち合う感動が。





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最終更新日  2012.07.09 06:11:13
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