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べつに初めて気付いたわけじゃない。もう何年も前からこのブックガイドの存在は知っていたけれど、あえて【発見】というカテゴリに分類してみた。私がここでわざわざ紹介するまでもなく、たいていの人は一度ぐらい目にしたことがあるのではと思われる。それは毎年夏になると、新潮文庫、角川文庫、集英社文庫から、それぞれ無料のブックガイドが発行されるのだ。おそらく長い夏休みに読む一冊を決める参考にして欲しい、と言うねらいだと思う。なので、中高生向きのブックガイドなのかもしれないが、あまりそう言う対象にこだわらなくても充分楽しめる内容となっているので、紹介しようと思う。まずは伝統あるこちらからーー【新潮文庫の100冊】私も長いこと読書を趣味にしているけれど、この薄い冊子に紹介されている100冊のうちで、私がすでに読了したものはわずか18冊。残りの82冊は全く知らない作品ばかりだ。(トホホ・・・)新潮文庫のブックガイドの特徴は、小説のカテゴリを分かりやすく5つに分けていることだ。・恋する本・シビレル本・考える本・ヤバイ本・泣ける本という具合に分類することで、読者がどんな傾向の小説を読みたいのか、その傾向に見合った作品を提案している。さらに、その小説の「コレ」というインパクトのある一行を抜粋し、作品名とともに紹介しているのだ。こう言う演出はさすが新潮と言う感じだ。【ナツイチ】〜夏の一冊 集英社文庫〜集英社文庫のブックガイドも、概ね新潮文庫と同様、小説のカテゴリを4つに分類している。・ワクワクな本・ハラハラな本・ドキドキな本・フムフムな本という、とてもざっくりとしたジャンル分けとなっている(笑)そして特徴的なのは、一冊一冊に全国の読者による一言レビューが掲載されている。ちなみに私がざっと目を通して感じたのは、「ワクワクな本」という括りは、わりとティーン向けの小説が多いような気がしたこと。(ファンタジー系というやつだろうか)「ハラハラな本」は、文字通り恐怖感を煽るものもあるので、ミステリー系が主だ。(このカテゴリに太宰治の『人間失格』が入っていたのはビックリしたけれど・・・)「ドキドキな本」は、いわゆる青春小説とか恋愛小説と言われるもの。このカテゴリもティーン向けかもしれない。「フムフムな本」、この括りは純文学系。私ぐらいの世代はこのカテゴリから選べば、わりと読みやすいのでは・・・【カドブン夏推し】角川文庫はかなり個性的な巻頭だ。フローチャート的になっていて、自分の好きな一冊、「推し」を見つけるというスタイルになっている。・しらない世界とつながる!・驚きの謎とつながる!・語りつがれる想いとつながる!・大人も子どももみんなつながる!・心揺さぶるラストへつながる!という具体的なジャンル分けをしているので、とにかく何を読んでいいのか分からないという人には、かなり良心的で丁寧なブックガイドとなっている。要は、読書感想文を書かなくちゃならないのに、何を読んだらいいのかわからない、と言う学生には持ってこいのブックガイドだと思われる。巷では、著名人がこぞってブックガイドを出版していて、もちろんそれらはとても参考になるけれど、私の経験から言わせてもらえば、かなりレベルが高くて読みにくい小説とか、小難しい学術書などが掲載されていることがある。せっかく高いお金を出して買っても、自分が望んでいたような読書案内ではない場合もあるので、実は私にとって、毎年楽しみにしているのは、上記のような無料のブックガイドだったりする。レジ横に置いてある場合もあるし、文庫コーナーに山積みになっている場合もある。ぜひ皆さんも、気軽に手に取り、暇つぶしにでも読んでみてはどうだろう。最近の小説としてのトレンドもわかるし、華やかな表紙のイラストに目を奪われたりもする。うだるような夏は、アイスコーヒーでも飲みながら、ブックガイドでも眺め、ゴロゴロするなが一番‼︎(笑)~~~~~~~~なおご参考まで。当ブログでは200冊以上の読書案内を投稿しております。ご覧いただけましたら幸いです。★吟遊映人『読書案内』 第1弾(1~99)はコチラから★吟遊映人『読書案内』 第2弾(100~199)はコチラから★吟遊映人『読書案内』 第3弾(200~ )はコチラから
2023.07.29
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最近、本棚の整理を始めた。以前は、この先読まないであろう書籍を、近所のブックオフへ持ち込んでいたのだが、ろくな収入にもならないし、むしろ持って行く労力の方が大変なので、やめた。本棚の整理とは、文字通りのもので、新しく買った組み立て式の本棚に、キレイに収納するものである。作家ごとにあいうえお順に並べているのだが、これが意外と楽しい。一冊一冊、使い古しの歯ブラシでホコリを払いつつ、しまっていく作業である。これでは遅々として整理整頓が進まない。今ちょうど「か行」で始まる作家の文庫本を収納し終えたところだ。とても有意義な時間だった。息子が、そんな私の本棚を覗きながら、「再読したいやつとかある?」と聞いて来た。私はいろいろと悩んだ末、「か行」で始まる作家の再読したいぐらい好きな3冊を選んでみたので、今回はそれらをご紹介しようと思う。①川上弘美・著『神様』短編が9つ収められているのだが、どれも短い。短編と言うより、むしろショートショートのような作品である。ラノベ感覚で楽しめるが、れっきとした純文学である。とくに好きなのは表題作だが、何とも言えない優しい気持ちになり、生きとし生けるもの全てに愛しさを感じるものである。ドゥマゴ文学者、紫式部文学賞を受賞している。②川端康成・著『伊豆の踊子』川端康成だけは外せない。どうしても。日本初のノーベル文学賞を受賞しているからと言うだけでなく、一つ一つの作品が神秘的で美しいからだ。今回、『伊豆の踊子』を選んだのは、私も息子も伊豆の生まれで、この作品だけは親子共通の「座右の書」にしておきたいと言う願望ゆえだ。川端康成の生い立ちは、ある意味、孤独と悲哀に彩られている。文庫本の巻末にある年譜を、何となく見ていると、幼い頃に両親を亡くし、次に祖母、さらには姉、祖父と、次々に身近な人を失っている。しかも、15歳になるまでの間にだ。そんな川端康成の背景を心に留めながら『伊豆の踊子』を読むと、切なくてもの悲しい。伊豆と言う自然美に溢れた土地で、偶然出会った踊子との刹那的な恋。人生のほんの一瞬の出来事を、迸(ほとばし)るような瑞々しさに加え、静謐に描いた作品なのだ。③車谷長吉・著『赤目四十八瀧心中未遂』もともと私小説が大好きな私は、大きな声では言えないが、芸能人の暴露本も含めてゴシップを扱った作品が大好きだ。車谷長吉は、晩年こそ大胆な私小説から一線を引き、何やら紀行文とか随筆のような、つらつらと日常を描く流儀に変更してしまったが、初期の作品は本当に素晴らしいものだった。とくに、『赤目四十八瀧心中未遂』は直木賞も受賞していて、車谷の得意とする暗い闇の部分を這うような文体である。巷にはそれこそ吐いて捨てるほどの小説が量産されているけれど、そのうちどれほどの作品が後世に残るものだろうか?再読したいと思うだろうか?私は車谷が、それこそ命を削って書いたのではと思われるこの『赤目四十八瀧心中未遂』を読んだとき、必ず再読したいと思った。人間の「業」と向き合うとき、この作品のことが必ず思い出されるのだ。さて、ここまでは私の再読したい好きな3冊を紹介したけれど、筆頭管理人にもきっとあるはず(笑)何しろ文学部卒の文学青年(壮年?)ですから‼︎それでは筆頭管理人の、「か行」で始まる作家の、再読したいぐらい好きな作品をご紹介いただこう!!筆頭管理人です。あたしゃ、青年とか言われても踊りゃしませんよ(-_-)でも呼ばれりゃノコノコ出てきます。ということで「か行」と言ったらこの御仁にしてこの一冊でしょう!当方、あと少しで前期高齢者の末席に座す身となりましたが、人生九十年として後半の人生を、小林秀雄とこの一冊のおかげで、どれほど豊かにしてくれたことでしょう。これを読んで目から鱗が落ち、難解からずっと積ん読となっていた小林の著書を読み進めることができ、かつ面白い様に頭の中に入ってきました。小林の本質って〈感情〉なんですよね。だから理論を読むのでなく、小林の感情を読み取る。すると、「なんだ、小林はゴッホや宣長やモーツァルトが大好きなんだ。つまりどれほど好きか、その好きさ加減をツラツラと綴っているようなもんだ!」と思え、小林をとても愛しく感じ、小林が大好きになりました(^_-)ということで老婆心まで(^o^)/小林秀雄をはじめてお読みになる方は、小林がどれほどその対象が好きなのか、それをお感じいただきながら、楽しんで読み進めていただければと思います。なお当方、該当書物を読んで以来、小林の大好きなゴッホを私もこよなく愛するようになりました。好きな人が好きなものは好きになるもんでしょ(*^_^*)今ではiPadの待ち受け画面はゴッホの糸杉です。~~~~~~~~なおご参考まで。当ブログでは200冊以上の読書案内を投稿しております。ご覧いただけましたら幸いです。★吟遊映人『読書案内』 第1弾(1~99)はコチラから★吟遊映人『読書案内』 第2弾(100~199)はコチラから★吟遊映人『読書案内』 第3弾(200~ )はコチラから
2023.07.22
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第二十二回※『山椒太夫・高瀬舟』(新潮文庫)では、全12篇が収められている。ここでは表題作の2篇を要約してみた。◆山椒太夫(さんしょうだゆう)昔、新潟県の春日から今津に向かう道を、母(30歳ぐらい)とその子ども2人(姉と弟)、そして女中(40歳ぐらい)が旅をしていた。主人がお役目で九州へ行ったきり帰らないため、様子をうかがいに訪ねるためだ。日も暮れようとしていたので、主従4人が泊まれる宿を探してみたところ、土地の女が言うには宿屋は一軒もないと。しかもむやみに旅人を泊まらせるなと言う掟もあるのだとか。と言うのも、悪い人買いが横行していて、お上が目を光らせているのだと言う。仕方がないので主従4人は橋の下で野宿することにした。そこへ船乗の山岡太夫と言う男が現れた。親切にも泊まる宿を用意し、芋粥などを食べさせてくれると言う。母は喜びその親切な提案を受け入れるが、一人女中だけは不安な表情をしていた。山岡太夫が言うには、西国まで陸を行くには、子どもの足では難しいという。その点、船なら問題はないとのこと。結局、急かされるように太夫の言いなりで、主従4人は船路を選んだ。ところが2人の子どもは宮崎方面の舟へ乗せられ、母と女中は佐渡方面の舟へ乗せられてしまった。北へ漕ぐ舟と南へ漕ぐ舟が、あれよあれよと分かれていく。母は子の名を、子は母を呼ぶが、その距離は縮まらない。女中はその様子を見て船頭に交渉するが、それも叶わず、終いにはあきらめ、一人海に身を投じてしまった。海に身を投じてしまった。2人の子ども、安寿(姉娘)と厨子王(弟)は、山椒太夫と言う人買いのところに売られて来た。そして安寿には汐汲、厨子王には柴刈を命じられた。過酷な労働の中、2人は身を寄せ合って過ごし、どうしたら良いものかと逃亡の方法を考えていた。ところがそれを山椒太夫の息子に聞かれてしまい、罰として安寿と厨子王の額に十文字の焼きごてをあてられる。その後、安寿は人が変わったようになり、ある日、それまでやっていた汐汲ではなく、厨子王と同じ柴刈に行かせて欲しいと願い出た。その願いは聞き入れてもらえたものの、女子が男の仕事をするのに髪の毛は不要だと、安寿の長い黒髪はバッサリと切られてしまう。それまで何事かを思案してきた安寿だが、いよいよ実行に移すときがやって来た。2人して山に柴刈に行った際、意を決した安寿が、厨子王に逃げる方法を伝授した。厨子王はあとに残る姉のことが心配でならない。だが安寿は、厨子王がまず先に逃げて父に連絡を取ってから自分のことを助けてくれるようにと言った。厨子王はその提案を聞き入れ、まず自分が先に逃げ延びることにしたのだ。その後、厨子王は寺の和尚に匿われ、事なきを得た。さらに、安寿が入水したことも聞いた。厨子王は姉から譲り受けた守本尊を肌身離さず持っていたおかげで、それが百済国から渡った高貴な地蔵菩薩の金像であることが知れ、由緒正しい家柄の嫡子であることが判明した。大人になった厨子王は、正道と名乗った。父の正氏はすでに亡くなっていた。正道は丹後の国守となり、まずは人身売買を禁じた。さらに山椒太夫に奴婢の解放と給与の支払いを命じた。佐渡にいるはずの母の行方はなかなか知れなかったが、やっとの思いで見つけた。母は盲人となっていたが、正道が近づくと、目が開いた。そして2人はひしと抱き合った。◆高瀬舟(たかせぶね)京都町奉行の同心は、罪人を高瀬舟に乗せて大阪まで護送していた。罪人は喜助と言って、弟殺しの罪だと言う。同心、羽田庄兵衞は、この喜助の様子が他の罪人とはだいぶ違っているので不思議に思った。と言うのも、喜助がまるで鼻歌でも歌い出しそうなほどに、いかにも楽しそうだったからである。庄兵衛はついに、役目を離れた対応とも思われるが、喜助のここまでに至った経緯やら身の上を問うた。喜助が言うには、これまで骨を惜しまず働いて来たが、いつももらった金は右から左だったと。ところが罪を犯して牢に入ると、とくに働かなくとも食べさせてもらえ、しかも牢を出る時には二百文の銭をもらうことができ、何にも増して嬉しいことこの上もないと。両親は喜助が幼い頃、流行病で亡くなってしまい、それからは弟と2人、身を寄せ合って生きて来た。ところが弟は病気で働けなくなってしまった。弟は兄一人に働かせていつもすまないすまないと謝るばかり。ある日、喜助が仕事から帰ると、弟は布団の上でのど笛を切って血だらけになっていた。聞けば、弟は早く死んで少しでも兄に楽をさせたいと自殺を図ったところ、なかなか死にきれない。頼むから手を貸してこのまま逝かせて欲しいと。喜助はしばらく逡巡したあと、弟の望むように、突き刺さったままの剃刀をのど笛から抜き取ってやることにした。だが、こうすることで喜助は弟殺しと言う罪人になってしまったのである。庄兵衛は、果たしてこれが人殺しになるのだろうかと腑に落ちなかったが、こればっかりはお上の判断に委ねるしか仕方がない。2人を乗せた高瀬舟は、夜更けの黒い水面を滑っていった。(了)(了)《過去の要約》◆第一回目の要約はこちらのです。◆第二回目の要約はこちらのです。◆第三回目の要約はこちらの~(上)~です。◆第四回目の要約はこちらの~(下)~です。◆第五回目の要約は、こちらのです。◆第六回目の要約は、こちらのです。◆第七回目の要約は、こちらのです。◆第八回目の要約は、こちらのです。◆第九回目の要約は、こちらのです。◆第十回目の要約は、こちらのです。◆第十一回目の要約は、こちらのです。◆第十二回目の要約は、こちらのです。◆第十三回目の要約は、こちらのです。◆第十四回目の要約は、こちらのです。◆第十五回目の要約は、こちらのです。◆第十六回目の要約は、こちらのです。◆第十七回目の要約は、こちらのです。◆第十八回目の要約は、こちらのです。◆第十九回目の要約は、こちらのです。◆第二十回目の要約は、こちらのです。◆第二十一回目の要約は、こちらのです。
2023.07.15
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【 朝井リョウ / 何者 】きっかけは息子の本棚をのぞいたときだ。どれもこれも私の読んだことのない小説で、何となく好奇心から感想を聞いてしまったのだ。とくに朝井リョウの『何者』は直木賞受賞作とカバーにうたっていて、それほどの話題作となったとは今の今まで知らなかったからだ。「俺、読んでねーし。代わりに読んで、あらすじだけ教えて」息子の大学時代、書店で何気なく手に取り、買ったのはいいが、結局読まずじまいで今に至るとのことだった。中をペラペラめくってみると、確かに新品のままで、読んだ形跡ナシ!これでは直木賞受賞作が気の毒だと思い、一読してみた。あらすじはこうだ。御山大学の拓人と光太郎はルームシェアをしている。控えめでどこか傍観者的な拓人に対し、光太郎は明るく社交的で人気者。そんな2人もいよいよ就活が始まった。留学から帰国した瑞月は光太郎の元カノだが、いまだに光太郎のことが忘れられない。そんな瑞月の健気な様子を見ている拓人は、実は密かに瑞月に想いを寄せている。拓人はもともとサークルで演劇をやっていたのだが、芝居で食べていくのは難しいためあっさり辞めた。だが、拓人のサークル仲間であったギンジは一人でも劇団を立ち上げ、脚本を書き、皆と同じような就活はしていない。その様子をどこか冷めた目で見ている拓人。拓人と光太郎の住むアパートに、瑞月の友人である理香がカレシの隆良とルームシェアをしていて、そこに度々皆が集まって就活の情報交換をしていた。だが、隆良だけは皆と一線を画し、持論を繰り広げるのだった。著者の朝井リョウは平成元年生まれの早大卒。『桐島、部活やめるってよ』で、すばる新人賞を受賞し、文壇デビューを果たしている。本作『何者』では直木賞を受賞し、映画化もされ、飛ぶ鳥を落とす勢いのある作家だ。着目すべきは、登場人物らが本心とは裏腹に、いかに充実した生活を送っているかというさりげない自慢話をTwitterにあげていることだ。一方で、もう一つの裏アカウントを使って、仲間内の誰かを誹謗中傷することで、鬱屈したストレスを解消しているいやらしさもある。そこには妬みや憎しみ、漠然とした将来への不安がうかがい知れる。この手の小説は、昔、似たようなものがジュニア向けの小説にあったような気がする。もちろん素材は違うが、時代が変わるとこんなにも話題性のある作品になるものなのか。「誰かがあなたの悪口を陰でコソコソ言っているのを想像してごらんなさい。あなたはどんな気持ちがしますか?」と言うようなイジメ対策の啓蒙書にもあったけれど、この作品はそういう類とも少し違うような気がする。若い世代の想像力の欠如を非難しているわけでもなさそうだ。じゃあ一体テーマは何なのか?私としてはテーマうんぬんより、ざっくりと若い人向けだと言い逃れしたいところだが、この作品に青春小説のような清々しさや甘酸っぱさは一切見受けられない。むしろ現実のエグいものを突き付けられた気分だ。しかも女子がとくに怖い。本当に怖い。主要キャラである瑞月と理香は、それぞれ海外留学の経験があるのだが、作者の悪意さえ感じられるほどに魅力を感じることができない。(つまり、共鳴できない)開き直って、ホンネとタテマエの垣根を取っ払い、言って良いこと悪いこと考えなしで、誰かに向けて言葉で叩きつける。あの戦意はムチャクチャだ。いやもしかして、自分を磨くと言うのはこう言うことなのか?表現するとはこう言うことなのか?アメリカナイズとはこう言うことなのか?一体、何者に向けての表現かは分からないが、「自己実現が人間にとって一番大切だ」と言う何者かに一石を投じる作品には違いない。(了)『何者』朝井リョウ・著 (第148回直木賞受賞作品) ★吟遊映人『読書案内』 第1弾(1~99)はコチラから★吟遊映人『読書案内』 第2弾(100~199)はコチラから★吟遊映人『読書案内』 第3弾(200~ )はコチラから
2023.07.08
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今回、筆頭管理人がノリノリで提案してくれた企画は、〝無人島へ持って行きたい本〟を紹介するというもの。ここで言う〝無人島〟というのは、その名のイメージ通りで、未開の土地であり娯楽はなく、話す相手もいない。漂流物や自生の樹木で作ったほっ建て小屋に、孤独と闘いながら日々自給自足の生活を送るーーという過酷な環境の中、たまたま自分が所持していたバッグの中に、3冊だけ本が入っている。さて、あなたにとってその3冊とは何か? どんな本が思い描かれただろうか?まぁそんな状況下でのんびり本なんか読んでいられないというのが現実だろうが、仮に、娯楽のない孤独な世界をイメージして欲しい。果たして私はどんな3冊を思い浮かべるのだろう?50を過ぎた今、もう恥も外聞も捨てたわけじゃないが、無人島には純文学モノとか哲学、思想系の小説なんか絶対に持っていかない。どうせそんな過酷な環境の中、長生きは望めないだろう。つかの間のひと時を癒してくれたり、現実から逃避させてくれるようなお話を繰り返し読みたい。そんな私が選ぶ本は、ラノベ(ライトノベルの略)である。私が学生時代の頃は、〝少女小説〟と呼ばれていたジャンルに相当すると思われるが、現在では若干違うかもしれない。それでは私が無人島へ持って行くだろう3冊をご紹介したい。①『楽園の略奪者』荷鴣・著 ソーニャ文庫外界と全く接点を作らないように、生まれたときから閉ざされた世界で生きている16歳のミースが、好奇心から居室をこっそり出てしまうところからストーリーは展開する。ミースはやんごとなき血統の少女だが、ワケがあって外界とは遮断した暮らしを送っていたため、汚れを知らず純粋無垢。そんなミースが一歩外に出てしまったことで、ヨナシュという異国の冷たい目をした男に攫われてしまう。それは人違いの誘拐だったが、純粋無垢のミースには、初めての未知なる冒険だった。一方、ミースの人懐っこさと純粋さで、すっかり毒気を抜かれるヨナシュは、人違いと知った後もミースを殺さず、何かと世話を焼きつつ共に旅をする。お互い、いつの間にか惹かれ合い、心を通わせ合うが、そんな2人の旅は決して許されるものではなかったのだ。この作品はラノベとは思えないほど完成度が高く、ラストが素晴らしい! 物語の背景は重く、グロテスクなシーンもあるが、そんなことも気にならないぐらい物語は魅力的だ。16歳の小柄で細身の少女が、高身長でイケメンでめっぽう強い男性と繋がる閨のシーンは、そのギャップもさることながら官能的だし妖艶だしクセになる(?)そして何よりイラスト(挿し絵)が最高に素晴らしい‼︎無人島に持って行きたくなる筆頭書なのだ。②『黒騎士は敵国のワケあり王女を奪いたい』ふじさわさほ・著 ベリーズ文庫荒くれ者達から襲われていた美しいフェリシティを助けた、一騎当千の強者騎士であるギルバート。しかしフェリシティは敵国の王女だった。フェリシティには様々な困難がまとわりつき、可憐で儚げでギルバートは放っておけない。しかもフェリシティにはすでに婚約者がいたが、政略的なもので、決して望んだものではなかった。フェリシティは徐々にギルバートに惹かれていくが、ギルバートも同様で、フェリシティを愛さずにはいられなかったのだ。この本の残念なのは、まず表紙のイラスト。内容と全く合っていないなぁと思うのは、私だけだろうか? さらにはタイトルも。まるで2時間ドラマの長いサブタイトルみたいだ。だがそれらを差し引いても内容は感動的である。『アーサー王と円卓の騎士』を彷彿とさせるものだし、まるで英国文学を翻訳したような文体となっている。乙女心を鷲掴みするような、愛と感動の作品なのだ。③『獣人隊長の(仮)婚約事情 突然ですが、狼隊長の仮婚約者になりました』百門一新・著 一迅社文庫アイリス男の子のようにわんぱくで活発的な少女カティは、すでに両親を亡くしていることから、伯爵貴族である伯父のもとで伸び伸びと暮らしている。ある時、獣人貴族のレオルドは、成長変化のため理性を失ってカティに発情してしまい噛みついてしまう。結果としてそれは獣人にとって求婚を示す痣を残してしまったので、慣例としてその痣が消えてなくなるまで仮婚約者になることが決まった。成長変化の時期を終了し、冷静さを取り戻したレオルドは、カティのことを男の子だと勘違いし、自分が同性に求婚してしまったような形になったのを最初こそ後悔するが、なぜかカティのことが可愛く見えて仕方がない。一方、カティは、狼獣人のレオルドの体格が大きく、いつも怒ったような表情をしているため、半ば恐怖感を隠せない。ところがしだいにレオルドがカティにお菓子をくれたりスキンシップを求めてくるため、少しずつ心を許していくようになる。この作品は〝ザ・ファンタジー〟と言った方が伝わりやすいと思う。まず獣人という種族が存在しないリアルな今を生きる私にとって、とにかく面白かったとしか言いようがない。獣人族と人族が種族の垣根を超えて愛し合うストーリーは、LGBT問題に揺れる今の時代にピッタリなテキストかもしれない。(著者はあえてそんなことは考えもせず、素直に、ユニークで心がほっこりするような作品を届けたいとペンを取ったに違いない)様々な動物や生き物に遭遇する無人島に持って行ったら、きっとつかの間の癒しになるのではと、この本を選んでみた。さて、私の選んだ3冊は上記の通りだけど、言い出しっぺの筆頭管理人が持って行く3冊はどんなものだろうか?ここからは筆頭管理人が選んだ〝無人島へ持って行きたい本〟である。では、どうぞ〜◆筆頭管理人記すでも、無人島に三冊を持って行っても読むかどうかは別問題ですよねぇ・・・(^_^;)きっと、そも、この課題は吟遊さんがあまりに暇そうで、『小人閑居して不善を為す』となりそうだったもので、「つまらないことをする前にひとつ助言をしてやろう!」と提案したわけで、まさかこちらに飛び火するとは思ってもみなかった(-_-;)まあ、私も聞かれればお答えしますが、そうは言っても当方すでに前期高齢者の仲間入りを控えて、吟遊さんより先が少ないぶん、無人島に行っても三冊は必要はないわけですよ。ということで私は一冊で十分(^_-)vそして(^o^)/その一冊と言えばこれしかありません!!中村元著 ブッダのことば(スッタニパータ)仏教をこれほど明確に定義した言葉は他にはあるでしょうか。「どのように生きたらいいのか」それを追求したら無人島でもきっと人間らしく充実した時を過ごせることでしょう。余談まで、私はこの座右本を書籍とkindleの両方で所有するものです。無人島でも使えるようにダウンロードしてあるので、その折は両方持参したいと思います(*^_^*)でも・・・問題は充電か(>_<)★吟遊映人『読書案内』 第1弾(1~99)はコチラから★吟遊映人『読書案内』 第2弾(100~199)はコチラから★吟遊映人『読書案内』 第3弾(200~ )はコチラから
2023.07.01
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