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2008.04.13
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カテゴリ: 映画/青春

「ホント?」
「(ホントだとも)念願の自転車が買えるかもな。」
「・・・なぜ(僕が自転車を欲しがってると)知ってるの?」
「子供なら(たいてい)欲しがる。」

どこの国でも“泣かせる”作家はいるものだとつくづく感じた。
スティーヴン・キングはその代表格だ。
専門はホラーかもしれないが、なかなかどうして人の持つ感情に揺さぶりをかけてくる作家ではある。
差し当たり日本では、浅田次郎あたりがこの手の作家に相当するだろうか。

「アトランティスのこころ」も例外ではなく、ノスタルジックな世界観に浸る余り、思わず記憶の扉を開けてしまいたくなる、そんな作品なのだ。

初老に差し掛かった写真家ボビーが、生まれ育った故郷の小さな町で、かつての我が家を訪れ昔を回想するところからストーリーは展開する。
それはボビーがまだ11歳のころ、当時彼は母親と二人きりの生活。
父親やすでに他界していて、その顔は写真でしか知らなかった。
ボビーの母親は生活するために懸命だったが、若さとその美貌のためドレス代にお金をつぎ込んだり、職場の上司と研修と称して外泊するなどボビーをないがしろにしていた。
せっかくの誕生日にも欲しかった自転車は買ってもらえず、代わりにもらったのは大人用の図書館の貸し出しカードだった。
そんなある日、ボビー宅の二階に老人テッドが下宿することになった。
テッドはどこかミステリアスでインテリジェンスだったので、ボビーの知的好奇心は多いにくすぐられた。
ある時、テッドはボビーに仕事の依頼をする。
彼に与えられた週に一ドルの仕事というのは、テッドが老眼のため新聞が読みにくいので代わりに音読すること。
そして、テッドをつけねらう危険な者たちの気配を感じたらすぐに報告することだった。


しかしそのアナログな演出が効果的に作用し、テッドがリアルな人物像として存在し、作品を揺るぎないものにしている。
作中、キングらしい場面が出て来るが、これは甘ったるいメロドラマに陥らないための楔にもなっている。
それは例えば、ボビーの母親が外泊先で職場の上司に乱暴されたり、キャロルがいじめっ子からバットで殴られ片腕を脱臼するなど、かなり刺激の強い演出だ。
しかしそういう苦い経験や甘くせつない記憶の向こうに、望むと望まないにかかわらず大人への道が続いているのだと教えてくれる。
時間は限りなく永遠であるようにも思えるが、実はちっぽけな自分なんて長い歴史の一瞬のものでしかないことを実感する。


【監督】スコット・ヒックス
【出演】アンソニー・ホプキンス、アントン・イェルチン

また見つかった、何が、映画が、誰かと分かち合う感動が。
See you next time !(^^)





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最終更新日  2008.04.13 14:25:38
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