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2008.06.13
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カテゴリ: 映画/戦争・史実

「何(の仕事)をしてるの? 仕事を断って。祖国はここよ。」
「僕の祖国は君だけだ。・・・何だよ?」
「(あははは・・・)クサい台詞ね。」
「真剣なのに。」
「分かってる。」

「見せる」ことに重点を置いた商業的センスは、スピルバーグ監督天性のものと言って差し支えないだろう。
彼の手掛けた作品の主人公の誰もが孤立感を抱き、戦争や差別の現実を目の当たりにする。
だが一方で、主人公は現実逃避しながらも聖なるものを求め、「妄想や願望の実体化」を量るのだ。

彼はエンターテイナーとしての資質を見極めることで、これまで対照的な作品を世に送り出して来た。
「ミュンヘン」は実にすばらしい映画だった。
「プライベート・ライアン」同様に、リアルで凄惨なシーンに目を覆いたくなる気持ちも隠せないが、スピルバーグ監督の表現したいのはそんな表向きの恐怖などではない。
もっと混沌としていて、複雑で、どうしようもない絶望なのだ。

1972年、ミュンヘンオリンピックの開催中、「黒い九月」と名乗るテロリスト8名がオリンピック村を襲撃。
イスラエルの選手たち11名を殺害。
これに激怒したイスラエル政府は、テロ首謀者へ報復することを決断する。
その任務のリーダーに選ばれたのはイスラエル秘密情報機関“モサド”の一員であるアヴナーであった。
彼の任務はテロ首謀者11名の暗殺。
だがこの任務遂行のためには、家族も祖国も捨てなければならない。
苦悩の末、出した結果は“正義”を全うすることだった。


非常にストレートなテロリズム批判である。
暗殺者が暗殺者を呼び、テロは繰り返される、と言うテーマ。
電話にプラスチック爆弾を仕掛けたところ、予想外にも標的である男の娘が受話器を上げてしまうところなど、正にヒッチコックばりのスリリングなワンシーンに仕上げられていた。
また、何人もの人間を容赦なく殺害していく回想シーンと、アヴナーが心のよりどころとしている妻の中へ激しく放出するシーンとがオーバーラップするカットはお見事。
心のバランスを崩した夫を、それでも「愛してるわ」と内包する彼女こそが、正にアヴナーの「祖国」なのだ。


2005年(米)、2006年(日)公開
【監督】スティーヴン・スピルバーグ
【出演】エリック・バナ、ダニエル・クレイグ

また見つかった、何が、映画が、誰かと分かち合う感動が。
See you next time !(^^)





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最終更新日  2008.06.13 06:33:10
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