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2011.07.13
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カテゴリ: 映画/時代劇

「お家を潰して役職を解かれ、ご簡略となる方が恥。決意のほどを内外に示すのです」

「噂が立てば、表も歩けぬ」
「人の噂も七十五日・・・あ、それからもう一つ」
「まだあるのか?」
「我が家はこれから細かく家計簿をつけることにいたします」

武士というものは、刀を振り回してナンボの身分である、というのは間違いである。
民間の会社組織にしろ、公的な官公庁にしろ、それぞれに担当するものがあり、細分化されている。
中でも専門職に就く者はプロフェッショナルであり、他の追随を許さない。

その企業が繁栄するも、奈落の底に突き落とされるも、この部署へいかに逸材を配置するかで大きく左右する。
本作「武士の家計簿」は、加賀藩に代々仕える、御算用者(経理係)を務めて来た藩士の物語である。20110713b
帳簿とにらめっこし、算盤をパチパチとはじく姿は決して華やかなものではない。
むしろ、武士道からは対極したところにあるようにも思える。
だがこの作品を観ると、なんとも崇高で汚れのない精神性を垣間見ることが出来るのだ。

天保13年。
加賀藩御算用者、猪山家8代目当主直之は、あまりにも膨大になってしまった借財をどうするかで苦悩していた。
しかし、代々御算用者を務めて来た猪山家にとって、帳簿の整理は朝飯前。
まずは借金返済のために、一切の家財道具から衣類までを売り払うことに決めた。
そうすることで、借金の約4割を減らすことに成功するのだ。
一方、時代は幕末から明治維新にかけての動乱期。
20110713d

この物語がおもしろいのは、時代性を感じさせる算盤や、質素倹約といった武家気質、現代にも通じる交際費や娯楽にかける金銭の出入が、事細かに触れられていることだ。
実際、この作品の出所となった入払帳の古書は、現代になってから神田神保町の古書店で発見されたというのだから、江戸時代末期のほぼ正確な物価であろう。
余談になるが、作中に登場する大村益次郎は、明治維新の十傑の一人にあげられる長州藩出身の人物だ。
司馬遼太郎の著書である「花神」に詳しいので、興味のある方はぜひ一読をおすすめする。
本作は終始一貫して、そのタイトルどおり、幕末の武士の懐具合が分かる作品であった。20110713c


【監督】森田芳光
【出演】堺雅人、仲間由紀恵

また見つかった、何が、映画が、誰かと分かち合う感動が。
See you next time !(^^)





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最終更新日  2011.07.13 08:24:47
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