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2011.10.01
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カテゴリ: 映画/パニック

「楽観的だな。君もテレビ局の連中と同じだ」
「どうする気だ?」
「観客を避難させる」

久しぶりに撮影のリアリズムを追求した作品に出合ったような気がする。
犯人の目線で捉えられた人々の、何気ない日常が、やがて起こるであろう惨劇とあまりにも対極にありすぎて、よけいに恐怖感を煽るのだ。
しかしその一方で、じっくりと計算されたカメラ・ワークでは、アメフトの試合会場に集う10万人もの観客の興奮する表情や熱気を、実に見事に捉えている。
この作品は、アメリカで1976年に公開された昔の映画だが、群集が半狂乱になって逃げ惑う姿や、見えない敵に脅える人々の心理状態が、驚くほどリアルに描かれた最高傑作である。
現在では当たり前ともなったCGによる編集は一切なく、すべてリアルな伝統的技法によるものだ。
20111001b


高級ホテルの一室から、サイクリングを楽しむ市民を狙った射殺事件が発生。
一方、メモリアル競技場では、地元ロサンゼルスとボルチモアのアメフトチームが、王座を決める試合を開催しようとしていた。
場内はおよそ10万人の観客で埋め尽くされ、満席状態。
そこへ、ライフル銃を入れたバッグを片手に、不審な男が競技場の中へ現れる。
この試合を全米に中継するため、空からも飛行船からTVカメラが競技場を捉えていた。

すると、スコアボードの影に潜む、ライフル銃を持った男の姿をカメラが捉えるのだった。

この作品がおもしろいのは、人々の何気ない日常を多方面から捉えているところだ。
例えば、観客の中には、失業中だが二人の子供にせがまれて家族4人で観戦に来た者や、愛人関係に苦悩する男女がいたり、莫大な借金をしている男が一攫千金を狙って大金を賭けていたり、スリをはたらき次々と他人の財布を手に入れてゆく二人組など、とにかく様々なパターンが同日同時刻にひしめき合うのだ。
そんな不特定多数の人々が集う中、誰を標的にしているのか分からない狙撃手が現れる。
20111001c

この場合の群集心理たるや、想像もつかない。
ただもうパニックを起こして、ひたすら逃げるのみ。

物語の最後まで、犯人の目的や動機などは明かされない。
しかしそれでいっこうに構わない。
この混乱した状況を、これだけ高い完成度で撮影しているため、何一つ不服は残らないのだ。

1976年(米)、1977年(日)公開
【監督】ラリー・ピアース


また見つかった、何が、映画が、誰かと分かち合う感動が。
See you next time !(^^)





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最終更新日  2011.10.01 08:24:31
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