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2011.12.09
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カテゴリ: 映画/犯罪

「あんたの女房を誘拐するって?」
「ああ」
「おれたちに誘拐させて、身代金8万ドル払って、半額の4万ドルをあんたが取り戻すって? 自分が払った金を取り戻すのか?」
「僕が払うんじゃないんだ。女房のおやじに出させるんだ」

この兄弟コンビの作り出す世界観はスゴイ。
サスペンスモノには必ず救いようのない犯行に及ぶキャラクターがいて、その魔の手に脅えることを一つの娯楽とするのが通常だ。
ところがこのコーエン兄弟はどうだ。
凶悪なことが、実は、なんでもないことのように表現している。

動機なんてあってないようなものなのだ。
感情的なものは皆無で、そこにあるのは凶悪という現実だけだ。
ザラついた床のように乾いていて、神仏の存在さえ忘れさせてしまう。
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『ファーゴ』のヒロインであり、警察の女署長でもある主人公が身重で、ゆったりとした動きの中、殺人現場を検証する場面が出て来るのだが、この凄惨な状況に不釣合いな体型、雰囲気が、よりリアリティーを誘うから不思議だ。
コーエン兄弟の表現する、揺るぎない悪は、日常的で珍しい行為ではなく、現実に溶け込んでいる。
だからこそ凶悪犯罪に酌量の余地はなく、絶望的なものを際立たせるのに成功しているのだ。

1987年ミネソタ州ミネアポリスが舞台。
自動車販売会社の営業部長であるジェリー・ランディガードは、投資目的で金の工面に困窮していた。
妻の父親で、社長でもある裕福な義父には融資を断られ、思い余ったジェリーは身代金目的に妻を誘拐させる計画を立てた。
実行するのはカールとゲアという二人組で、彼らには報酬として販売店から持ち出した新車のシエラと、義父に出させた8万ドルを支払うフリをして半分の4万ドルを受け取ろうという算段だった。
だが守備よくジェリーの妻を誘拐したところまでは計画通りだったが、ナンバープレートを付けていない実行犯の車を不審に思い、職務質問をして来たパトロール中の警察官を殺してしまう。

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コーエン兄弟の作り出す作品に共通するのは、脱ハッピー・エンドのような気がする。

そんなに世の中は甘くないんだと、シニカルな笑みを浮かべている製作者の表情が、目に浮かぶようだ。
人という厄介な種族が存在する限り、どこまでも絶対的な悪が横行するのだと断言している。
我々は、そんな世知辛い世の中で、何食わぬ顔をして普通の暮らしを営んでいくのだ。

『ファーゴ』は、ありきたりな勧善懲悪モノとは違い、すこぶる凶悪を現実的なものとして表現した犯罪映画だ。


【監督】ジョエル&イーサン・コーエン
【出演】フランシス・マクドーマンド、ウィリアム・H・メイシー

また見つかった、何が、映画が、誰かと分かち合う感動が。
See you next time !(^^)





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最終更新日  2011.12.09 08:16:20
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