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2012.09.12
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カテゴリ: 読書案内
【複雑な彼/三島由紀夫】
20120912
◆正統派、青春恋愛小説!

時折、私のような本好きが錯覚するのは、美容室や歯医者の待合室に置かれている大衆向けの週刊誌を低俗と見なしてしまうクセである。もちろん、芸能人のつまらないゴシップには辟易するし、美容整形の宣伝やダイエット特集にはいいかげんうんざりしているのも確かだ。しかし、そんな大衆誌にも侮れないページがあることを忘れてはならない。
例えば、『複雑な彼』という小説は、かの三島由紀夫が女性セブンという週刊誌に連載した小説である。
三島由紀夫と言えば代表作に、『金閣寺』や『潮騒』などがあり、『複雑な彼』というのはどちらかと言えばあまり耳慣れない作品だ。ところがこの小説がおもしろいのなんのって!!

これはいわゆるモデル小説と呼ばれるジャンルに入り、三島の十八番でもある。モデルとなったのはなんと、作家の安部譲二で、本名は直也と言うらしいが、この三島の書いた小説の主人公・譲二にあやかってペンネームを安部譲二としたらしい。こんな逸話があるだけでも愉快ではないか。
残念ながら私の知っている安部譲二は、中年以降の“オジさん”風体に変わってしまってからのその人しか知らない。が、小説によれば「日本の男であんなに優雅で巨大で、しかも精悍な背中を持った人は珍しい」と描写されるほどのスタイリッシュなイケメンだ。しかも若き日の職業はキャビンアテンダントで、英国風の英語を流暢に話すと来ている。いや~カッコイイ。
そんな安部譲二のキャビンアテンダント時代のモテ期から、ヤクザ時代にかけての20代後半までを、クールでたけどちょっぴり粗暴な男として描いているのだ。

ちまたに五万と溢れる恋愛小説がある中で、あえてこの作品を選んで読んでもらえまいか?
素直になれない若き男女の恋愛模様を、三島の流麗な文体に酔いしれながら読むことが出来る。
大衆小説、通俗小説と評価されて結構!


【余談】売れっ子作家ほど、日々連載に追われて締め切りギリギリに入稿するのが普通らしいが、三島という人は、連載前にすでに原稿を終いまで揃え、出版者に入稿していたとか。(※安部譲二の解説参照)その辺からして、三島由紀夫の人となりが分かる。

『複雑な彼』三島由紀夫・著(角川文庫)



~読書案内~   その他

■No. 1 取り替え子/大江健三郎 伊丹十三の自死の真相を突き止めよ

◆番外篇.1 新潮日本文学アルバム/太宰 治 パンドラの匣を開け走れメロスを見る!





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最終更新日  2012.10.18 14:50:40
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